JP2004161855A - 熱可塑性樹脂組成物及びこれを用いた自動車用成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗装性及びメッキ性に優れているとともに、耐衝撃性、剛性並びに加工性のバランスにも優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂組成物が、ゲル含有量が50〜70%であるゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル単量体が、グラフト密度1〜15%の範囲でグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)10〜20質量部と、直径が200〜300nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が40質量%を超えて含まれ、かつ、直径200〜400nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が70質量%を超えて含まれているゴム質重合体(b)に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体がグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(B)10〜20質量部と、芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位が含まれているビニル共重合体(C)60〜80質量部とを含有している。
【選択図】 なし
【解決手段】熱可塑性樹脂組成物が、ゲル含有量が50〜70%であるゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル単量体が、グラフト密度1〜15%の範囲でグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)10〜20質量部と、直径が200〜300nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が40質量%を超えて含まれ、かつ、直径200〜400nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が70質量%を超えて含まれているゴム質重合体(b)に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体がグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(B)10〜20質量部と、芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位が含まれているビニル共重合体(C)60〜80質量部とを含有している。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の外装材などに使用される熱可塑性樹脂組成物に関する。さらには、これを用いた自動車用成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ABS樹脂は、優れた加工性、耐衝撃性、機械特性、耐薬品性を有していることから、車両分野、家電分野などの広範な分野において各種構成部材の成形材料として使用されている。例えば、近年、車両分野では、ABS樹脂の優れた2次加工性、特に、塗装性及びメッキ性が着目されて、ドアミラーやラジエーターグリル等の自動車外装用途に使用展開が図られている。その展開の中で、ユーザからは、生産工程上のコストダウンを目的として、塗装及びメッキのどちらも適用できるものが要求されている。
【0003】
ところが、塗装性は、ABS樹脂の特性や成形条件、塗装方法、塗装環境などの因子により影響を受け易く、これらの条件によっては著しい塗装不良を起こすことがあった。代表的な塗装不良としては、塗料に含まれるシンナー等の溶媒が作用して起こるブリスター現象(塗装面に小さな穴が多数個発生する現象)、吸い込み現象(塗装面に微細な凹凸が発生し、光沢むらとして観察される現象)が挙げられる。そして、これらの不良によって最終製品の商品価値を著しく損なわせることがあった。
【0004】
また、メッキ性についても、ABS樹脂の特性や成形条件、メッキ方法及び条件などの因子により影響を受け易い。そのため、これらの条件の僅かな設定の違いによって、メッキ密着強度やヒートサイクル後のメッキ膨れ現象など、商品として致命的なメッキ不良が高頻度に発生することがあった。
【0005】
このように、塗装性またはメッキ性が十分満足な程度になる条件の範囲は狭いので、両方の特性を満足させるのは一層困難であった。
そこで、塗装性及びメッキ性の両特性を向上させるために、様々なことが従来から試されてきた。例えば、特許文献1には、特定の溶融粘度にされて、成形加工性、耐衝撃性、塗装性及びメッキ性のいずれもが向上した熱可塑性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、グラフト重合体と遊離共重合体とからなるグラフト共重合体組成物を含む樹脂組成物であって、遊離共重合体中のシアン化ビニル化合物含有量と分散状態、及び、グラフト重合体のグラフト鎖中のシアン化ビニル化合物含有量が規制されて、塗装性及びメッキ性が向上した樹脂組成物が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−145467号公報
【特許文献2】
特開平7−11099号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの公報には、主要な塗装不良の一つであるブリスター現象については何ら記述されていないばかりか、本発明者らが追試したところ、これら樹脂組成物はブリスター現象が生じることが判明した。また、メッキ性についても小さな平板におけるピーリング強度及びヒートサイクル性しか調査されておらず、本発明者らが実際の製品程の比較的大きくて複雑な成形品によって調査してみたところ、ピーリング強度及びヒートサイクル性共に十分な性能を有していないことが判明した。すなわち、従来、塗装性及びメッキ性の両方が十分満足する程度にまで高くされた熱可塑性樹脂組成物は得られていなかった。
【0008】
また、近年、省資源やコストダウンのために、ABS樹脂などのゴム変性スチレン系樹脂を使用した大型成形品、例えば、電話機、ノートパソコン及びテレビ等の弱電用筐体等を薄肉化する傾向にあり、また、自動車部品においても上記の観点から薄肉化傾向にある。
しかしながら、自動車部品の中でも、特にラジエーターグリル等の外装材を薄肉化した場合、耐衝撃性、特に低温耐衝撃性が低いことが問題となっていた。つまり、ゴム含有スチレン系樹脂の諸物性は、一般に、使用するゴム相の組成、ゲル含率、粒子径、粒子径の分布、ゴム含有量などの因子によって影響されるが、成形加工性を向上させ、薄肉化を実現させるために、樹脂粘度を低下させ、樹脂中のゴム含有量を減量させると、樹脂の重要な特性である耐衝撃性、特に低温耐衝撃性などの機械的性質が低下した。したがって、そのような樹脂を用いた場合、自動車の品質を低下させることになる。
【0009】
以上のことから、塗装性及びメッキ性という異なる特性を兼備させた上で、高い耐衝撃性、剛性及び加工性を持たせようとすれば、さらに高度な技術力が要求される。そのため、従来、このような要件を満たす熱可塑性樹脂組成物は得られていなかった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、塗装性及びメッキ性に優れているとともに、耐衝撃性、剛性並びに加工性のバランスにも優れており、成形品の薄肉化が可能な熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的としている。また、この熱可塑性樹脂組成物を用いた自動車用成形品を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
一般に、塗装不良の一つとされるブリスター現象は、射出成形時に成形品が冷却される過程で発生した残留応力に起因すると考えられる。すなわち、ブリスター現象とは、塗料が塗られた際、残留応力が大きな部分に、塗料のシンナー等の溶剤がアタックして成形品表面にクラックを生じさせ、さらに溶媒がそのクラック内に残留し、乾燥工程で膨張して塗装膜を突き破る現象であると考えられる。また、吸い込み現象とは、射出成形過程で成形品に発生する樹脂の表層配向によりゴムが変形し、塗料のシンナー等の溶剤により成形品の応力緩和されるに伴って、塗装面に微細なクレーズが発生し光沢の低下をもたらす現象と考えられる。また、メッキ不良の一つとされるメッキ密着強度不足は、メッキする際の一工程であるエッチング処理によって樹脂基材(成形品)に発生する孔の大きさ、深さ、数などの影響を受けていると考えられる。また、ヒートサイクル後のメッキ膨れ現象は、上記影響因子に加え、樹脂基材のエッチング液に対する耐溶剤性、メッキ金属面と樹脂基材との線膨張係数の差などに起因していると推測される。
【0011】
本発明者らは、上記不良についての知見に基づいて詳細に検討した結果、上記課題を解決する以下の熱可塑性樹脂を発明した。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゲル含有量が50〜70%であるゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル単量体が、グラフト密度1〜15%の範囲でグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)10〜20質量部と、
直径が200〜300nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が40質量%を超えて含まれ、かつ、直径が200〜400nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が70質量%を超えて含まれているゴム質重合体(b)に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体がグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(B)10〜20質量部と、
芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位が含まれているビニル共重合体(C)60〜80質量部とを含有することを特徴としている。
ここで、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)とゴム含有グラフト共重合体(B)とビニル共重合体(C)とは、合計で100質量部である。
また、本発明の自動車用成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
ゴム含有グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(a)に芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル単量体が、グラフト密度1〜15%、好ましくは1〜8%、特に好ましくは2〜6%の範囲でグラフト重合したものである。グラフト密度が1〜15%であることにより、熱可塑性樹脂組成物の流動性と耐衝撃性、特に低温耐衝撃性とのバランスが向上する。
【0013】
ここでいうグラフト密度とは、以下のようにして求めた値である。すなわち、サンプルをアセトン中に溶解させ、遠心分離器を用いて可溶分と不溶分とに分離し、得られた不溶分(X)をオゾン分解させる。そして、メタノール不溶分(m)を抽出し、さらに得られたメタノール不溶分をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて質量平均分子量(Mw)を求め、これらの結果を基に次の計算式により算出した値である。
グラフト密度(%)=グラフト率/(Mw/104)
グラフト率(%)={m/(X−m)}×100
【0014】
上述したゴム質重合体(a)は、ジエン系単量体が重合した重合体からなるものであり、例えば、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリクロロプレンが挙げられる。
また、ゴム質重合体(a)のゲル含有量は50〜70質量%である。ゴム質重合体(a)のゲル含有量が50〜70質量%であることにより、熱可塑性樹脂組成物のメッキピーリング強度が向上するとともに、メッキのヒートサイクル性が高くなる。
ここでいうゲル含有量とは、ゴム含有グラフト共重合体を含むラテックスを凝固、乾燥させた後、トルエンに室温(23℃)で20時間溶解させ、次いで、100メッシュ金網で分取した不溶解分の質量割合を意味する。
【0015】
ゴム質重合体(a)の粒子径・粒子径分布は、後述するゴム含有グラフト共重合体(B)のゴム質重合体(b)の粒子径・粒子径分布と同じ範囲内であってもよいが、物性バランスがより高くなることから、粒子径200〜500nmのゴム質重合体粒子が40〜60質量%であることが好ましい。
【0016】
ゴム質重合体(a)にグラフトした芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、これらの中でも、特にスチレンが好ましい。また、シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらの中でも、特にアクリロニトリルが好ましい。これらの単量体については、1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
ゴム含有グラフト共重合体(A)においては、ゴム質重合体(a)に、必要に応じて、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体がグラフトしてもよい。このような他の単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等のメタクリル酸またはアクリル酸エステル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸化合物が挙げられ、それぞれ1種または2種以上用いることができる。
【0018】
ゴム含有グラフト共重合体(A)を合成するためのグラフト重合方法としては、いかなる公知重合方法も採用できるが、予め、ゴム質重合体(a)とこれにグラフト重合させる単量体とを混合、放置することによって、単量体をゴム質重合体(a)に含浸させた単量体含浸ゴム質重合体を調製し、これに、新たに単量体を添加し、グラフト重合することが好ましい。この重合方法の採用すれば、熱可塑性樹脂組成物の成形性と耐衝撃性等の物性がより良好になる。
【0019】
上述したグラフト重合の具体的な方法は、例えば、まず、乳化重合にて製造されたゴム質重合体(a)を撹拌翼、ジャケット付き反応器内に仕込み、次に、グラフト重合させる単量体を一括投入または連続滴下し、撹拌しながら、40〜70℃にて5〜60分放置し、次いで、残りの単量体と開始剤とを添加する。開始剤が添加される前に添加された単量体は、ゴム質重合体(a)に含浸し、ゴム質重合体(a)内にて重合して重合体になる。このように、ゴム質重合体(a)内に重合体が形成された構造をオクルージョン構造という。
【0020】
ここで、ゴム質重合体(a)内の重合体を構成する単量体(以下「オクルード単量体」と称す)、すなわち、ゴム質重合体(a)に含浸され、重合される単量体としては、含浸後に新たに添加される単量体と同種のものを使用することができる。また、オクルード単量体としては、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体を使用することが好ましく、芳香族ビニル単量体を使用することが特に好ましい。特に、芳香族ビニル単量体を使用すれば、流動性及びメッキ性がより良好となる。
【0021】
このようにゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(a)がオクルージョン構造を有している場合、すなわち、ゴム質重合体(a)に予めオクルード単量体を含浸させてから重合した場合、オクルード単量体量は、ゴム質重合体(a)に重合する全単量体成分中の5〜30質量%であることが好ましい。オクルード単量体量が5質量%未満であると、オクルージョン構造を採用することによる流動性及びメッキ性向上効果が十分に発揮されず、30質量%を超えると物性バランス、特に、十分な耐衝撃性を得ることが難しくなる。
【0022】
ゴム含有グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体(b)に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体がグラフト重合したものである。
さらに、ゴム質重合体(b)は、直径が200〜300nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が40質量%を超えて含まれ、かつ直径が200〜400nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が70質量%を超えて含まれているものである。このような粒子径分布は狭く、ほぼ単分散粒子径分布である。ゴム質重合体(b)の粒子径分布が、上記範囲にあれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性、剛性のバランスが向上する。
ここで、粒子径分布は、日機装(株)製Microtrac Model:9230UPAを用いて動的光散乱法より求めた値である。これにより得られる値は、質量平均(体積)粒子径と粒子径分布、粒子径分布の累積質量分布である。このようなゴム質重合体(b)の製造方法は、上記の特定された狭い粒子径分布を最終的に有していれば特に制限はなく、いかなる公知重合方法も採用できる。
ゴム質重合体(b)のゲル含有量は、ゴム質重合体(a)のゲル含有量と同じ範囲内であってもよいが、物性バランスがより高くなることから、80〜99質量%であることが好ましい。
【0023】
ゴム含有グラフト共重合体(B)において、ゴム質重合体(b)は、ゴム含有グラフト共重合体(A)のゴム質重合体(a)に用いられたジエン系単量体の重合体を使用できる。また、ゴム質重合体(b)にグラフト重合された芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、これらと共重合可能な他の単量体についても、ゴム含有グラフト共重合体(A)と同じものを使用できる。
ゴム含有グラフト共重合体(B)のグラフト密度は、ゴム含有グラフト共重合体(A)のグラフト密度と同じ範囲内であってもよいが、物性バランスがより高くなることから、2〜8%であることが好ましい。
【0024】
ビニル共重合体(C)は、芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位を構成成分として含むものである。このビニル共重合体(C)は、必要に応じて、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体が共重合されていてもよい。
ここで、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、これらと共重合可能な他の単量体は、上述したゴム含有グラフト共重合体(A)で使用されたものと同様のものを使用できる。また、ビニル共重合体(C)の製造方法については、乳化、懸濁、塊状またはこれらを複合化した公知の重合方法を採用できる。
【0025】
ビニル共重合体(C)は、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を構成成分とし、特定構造を有する2種類のビニル共重合体からなることが好ましい。すなわち、質量平均分子量が100,000〜200,000で、シアン化ビニル単量体を20〜30質量%含むビニル共重合体(C−I)と、質量平均分子量が100,000未満で、シアン化ビニル単量体を35〜50質量%含むビニル共重合体とを含む混合物であり、該混合物中のビニル共重合体(C−II)含有量が20〜50質量%であることが好ましい。ビニル共重合体(C)が、このような2種類のビニル共重合体からなれば、塗装性における不良現象、すなわち、吸い込み、ブリスター現象と、物性バランスを両立させることができる。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)を10〜20質量部、ゴム含有グラフト共重合体(B)を10〜20質量部、ビニル共重合体(C)を60〜80質量部含有する。ここで、ゴム含有グラフト共重合体(A)及びゴム含有グラフト共重合体(B)の合計含有量が20質量部未満である(ビニル共重合体(C)の含有量が80質量部を超える)と、塗装性、耐衝撃性が低くなり、また、メッキ性(特にピーリング強度)も低下する。逆に、ゴム含有グラフト共重合体(A)及びゴム含有グラフト共重合体(B)の合計含有量が40質量部を超える(ビニル共重合体(C)の含有量が60質量部未満である)と、塗装性、メッキ性(特にヒートサイクル性)が低下する。
【0027】
また、熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて更に、顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強剤、充填剤など各種添加剤を、その物性を損なわない範囲内において配合することができる。
【0028】
熱可塑性樹脂組成物を得る方法としては特に制限はないが、ゴム含有グラフト共重合体(A)とゴム含有グラフト共重合体(B)とビニル共重合体(C)とを混合した後に溶融混練することが好ましい。溶融混練は、例えば、押出し機、バンバリーミキサー等を用いて実施することができる。
【0029】
上述した熱可塑性樹脂組成物は、上述したゴム含有グラフト共重合体(A)とゴム含有グラフト共重合体(B)とビニル共重合体(C)とを特定の割合で配合されている。そのため、この熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品は、ブリスター現象及び吸い込み現象の発生が無い上に、比較的大きな成形品においても十分なメッキ密着強度を有し、ヒートサイクル後のメッキ膨れ現象が生じない。すなわち、塗装性及びメッキ性の両方に優れている。しかも、耐衝撃性、特に低温耐衝撃性と剛性と加工性とのバランスも良好であるので、十分な耐衝撃性を有しつつ、成形品の薄肉化を達成できる。
【0030】
また、本発明の自動車用成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物からなるものである。この自動車用成形品は、塗装性、メッキ性、耐衝撃性、剛性に優れており、自動車の外装用部品、例えば、ドアミラーやラジエーターグリルに好適に利用できる。
【0031】
【実施例】
以下に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において、「部」は「質量部」を意味するものとする。
また、下記に示すゴム含有グラフト共重合体(A−1〜6)においては、ゴム質重合体のゲル含有量及びグラフト密度(%)を以下のように測定した。
[ゴム質重合体のゲル含有量]
ゴム質重合体のサンプルWc(g)をトルエンに溶解し、15000rpmで60分間遠心分離後、上澄液をデカンテーションし、不溶成分を60℃にて24時間乾燥して、乾燥不溶分量Wg(g)を求め下記式で算出した。
ゲル含有量(質量%)=Wg/Wc×100
[グラフト密度]
サンプルをアセトン中に溶解させ、遠心分離器を用いて可溶分と不溶分とに分離し、得られた不溶分X(g)をオゾン分解させた。次いで、メタノール不溶分m(g)を抽出し、さらに得られたメタノール不溶分をGPCにて質量平均分子量Mwを求め、これらの結果を基に次の計算式により算出した。
グラフト密度(%)=グラフト率/(Mw/104)
グラフト率(%)=m/(X−m)×100
なお、質量平均分子量Mwは、東ソー(株)製「GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)」を用いて測定し、標準ポリスチレン換算法にて算出した。
【0032】
<合成例1:ゴム含有グラフト共重合体(A−1)の製造>
オートクレーブに表1の原料A(ポリブタジエン・ラテックスのゲル含有量は60質量%)を仕込み、60℃に加熱してポリブタジエンに単量体(オクルード単量体としてスチレンを使用)を含浸させた。そして、60℃に保持したまま90分間放置し、反応率が70%以上に達したことを確認した後、さらに原料Bのうちのアクリロニトリル(AN)、スチレン(ST)、不均化ロジン酸カリウムを仕込んだ。次いで、その中に硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、結晶ブドウ糖及びクメンハイドロパーオキサイドを100分かけて連続添加し、続いて70℃に昇温し、これを1時間保って反応を完結させて重合体ラテックスを得た。次いで、この重合体ラテックスに硫酸を添加して、重合体を凝固させ、十分水洗後、乾燥してゴム含有グラフト共重合体(A−1)を得た。
そして、得られたゴム含有グラフト共重合体(A−1)中のグラフトされた重合体の質量平均分子量、グラフト率を測定し、グラフト密度を求めた。グラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
<合成例2:ゴム含有グラフト共重合体(A−2)の製造>
原料Aにおいて、ポリブタジエンに含浸させるオクルード単量体を、ST単独10部に代えて、AN2部及びST8部からなる単量体混合物としたこと以外は、合成例1と同様にしてゴム含有グラフト共重合体(A−2)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−2)のグラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0036】
<合成例3:ゴム含有グラフト共重合体(A−3)の製造>
オートクレーブに、表1に示す原料Cのうちの蒸留水、不均化ロジン酸カリウム、ポリブタジエン・ラテックス(ゲル含有量:60質量%)及びAN 、ST 、t−DM を仕込み、60℃に加熱した後、硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、結晶ブドウ糖及びクメンハイドロパーオキサイドを2時間かけて連続添加し、続いて70℃に昇温し、これを1時間保って反応を完結して重合体ラテックスを得た。
このようにして得た重合体ラテックスに酸化防止剤を添加し、その後硫酸により凝固させ、十分水洗後、乾燥してゴム含有グラフト共重合体(A−3)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−3)のグラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0037】
<合成例4:ゴム含有グラフト共重合体(A−4)の製造>
原料Cのポリブタジエン・ラテックスとして、ゲル含有量95質量%のポリブタジエン・ラテックスを使用し、t−DMの添加量を0.2部にしたこと以外は合成例3と同様にして、ゴム含有グラフト共重合体(A−4)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−4)のグラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0038】
<合成例5:ゴム含有グラフト共重合体(A−5)の製造>
原料Aのポリブタジエン・ラテックスとして、ゲル含有量35質量%のポリブタジエン・ラテックスを使用したこと以外は合成例1と同様にして、ゴム含有グラフト共重合体(A−5)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−5)のグラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0039】
<合成例6:ゴム含有グラフト共重合体(A−6)の製造>
原料Aのポリブタジエン・ラテックスとして、ゲル含有量60質量%のポリブタジエン・ラテックスを使用し、更に、t−DMを0.2部添加したこと以外は合成例1と同様にして、ゴム含有グラフト共重合体(A−6)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−6)のグラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0040】
<合成例7:ゴム含有グラフト共重合体(B−1)の製造>
表3に示す粒子径分布のポリブタジエン・ラテックス(ゲル含量は87質量%)65質量部にスチレン26質量部及びアクリロニトリル9質量部をグラフト重合させてゴム含有グラフト共重合体(B−1)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(B−1)に含まれる、非グラフト化スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)の含有量は約6質量%であった。さらに、SAN中のスチレン対アクリロニトリルの質量比(スチレンの質量/アクリロニトリルの質量)は約2.7であり、SAN の質量平均分子量は約62,000であった。
なお、ポリブタジエン・ラテックスの粒子径分布は日機装(株)製Microtrac Model:9230UPAを用いて動的光散乱法より求めた。
【0041】
【表3】
【0042】
<合成例8:ゴム含有グラフト共重合体(B−2)の製造>
表3に示す粒子径分布のポリブタジエン・ラテックス(ゲル含量は95質量%)65.2質量部にスチレン26.5質量部及びアクリロニトリル8.3質量部をグラフト重合させてゴム含有グラフト共重合体(B−2)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(B−2)に含まれる、非グラフト化スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)の含有量は約6.3質量%であった。さらに、SAN中のスチレン対アクリロニトリルの質量比(スチレンの質量/アクリロニトリルの質量)は約2.7であり、SANの質量平均分子量は約78,000であった。
【0043】
<合成例9:ゴム含有グラフト共重合体(B−3)の製造>
表3に示す粒子径分布のポリブタジエン・ラテックス(ゲル含量は95質量%)67.5質量部にスチレン25.4質量部及びアクリロニトリル7.1質量部をグラフト重合させてゴム含有グラフト共重合体(B−3)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(B−3)に含まれる、非グラフト化スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)の含有量は約8質量%であった。さらに、SAN中のスチレン対アクリロニトリルの質量比(スチレンの質量/アクリロニトリルの質量)は約2.8であり、SANの質量平均分子量は約108,000であった。
【0044】
<合成例10:ビニル共重合体(C−1)の製造>
窒素置換した反応器に表4に示す成分からなる単量体混合物を添加し、開始温度を60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、続いて4時間反応させて重合を完結させた。その際の最終転化率は96%であり、得られたビニル共重合体(C−1)の質量平均分子量は130000 、アクリロニトリル含有量は26.3%であった。
【0045】
【表4】
【0046】
<合成例11:ビニル共重合体(C−2)の製造>
t−DM を1.0部にしたこと以外は合成例10と同様に重合してビニル共重合体(C−2)を得た。その際の最終転化率は98%で、得られたビニル共重合体(C−2)の質量平均分子量は60000 、アクリロニトリル含有量は25.7%であった。
【0047】
<合成例12:ビニル共重合体(C−3)の製造>
窒素置換した反応器に表4に示す成分からなる単量体混合物を添加し、開始温度を60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、続いて4時間反応させて重合を完結させた。その際の最終転化率は96%であり、得られたビニル共重合体(C−3)の質量平均分子量は54000、アクリロニトリル含有量は41.3%であった。
【0048】
<合成例13:ビニル共重合体(C−4)の製造>
t−DMを0.01部にしたこと以外は合成例12と同様に重合してビニル共重合体(C−4)を得た。その際の最終転化率は97%であり、得られたビニル共重合体(C−4)の質量平均分子量は150000、アクリロニトリル含有量は40.5%であった。
【0049】
<実施例1〜3 、比較例1〜6>
上記方法にて得られた各重合体を表5に示す割合で配合し、0.5質量部の滑剤(「PRN−208」日本油脂(株)製)と共にヘンシェリングさせた。次いで、220℃で2軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX−44)にて溶融混合し、ペレット化して熱可塑性樹脂組成物を得た。このペレットを4オンス射出成形機((株)日本製鋼所製)で240℃にて成形し、必要なテストピースを作成し、それぞれ以下のように評価した。その結果を表5に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
[塗装性]
平板テストピース(160mm×60mm、肉厚2.5mm)に、常温にて2液ウレタン系塗料(レタンPG60:関西ペイント社製)をスプレー塗装した。得られた塗装成形品のサイド2点のゲート付近とテストピース側端部の部分とに発生するブリスター現象、及び、主にゲート付近に現れる吸い込み現象を肉眼で観察してブリスター現象、吸い込み現象ともに以下の判断基準で評価した。
○: 全く発生せず
△: 一部発生
×: 著しい発生
[メッキ性]
箱型成形品(250mm×300mm×30mm)について下記のようなメッキ処理を施しピーリング試験及びヒートサイクル試験を行った。なお、メッキ処理に必要な試薬は全て奥野製薬工業製のものを用いた。
【0052】
<メッキ処理>
次の(1)〜(9)の手順でメッキ処理した。
(1)脱脂工程
CRPクリーナー40g/リットルにより50℃、5分間処理し、3回の純水により洗浄した。
(2)エッチング工程
無水クロム酸400g/リットル、3価クロム30g/リットル、硫酸380g/リットルの混合液に68℃で15分間浸し、純水にて洗浄した。
(3)中和工程
35%塩酸50ml/リットル、CRPレデュサー10ml/リットルの混合液に25℃で2分間浸け、純水にて洗浄した。
(4)プレディップ工程
35%塩酸200ml/リットルに25℃で1分間浸けた。
(5)触媒化工程
35%塩酸300ml/リットル、CRPキャタリスト60ml/リットルの混合液に45℃で7分間浸け、純水にて洗浄した。
(6)導体化工程
導体化工程CRPアクセレーターA200ml/リットル、CRPアクセレーターB200ml/リットルの混合液に50℃で7分間浸け、純水にて洗浄した。
【0053】
(7)電気銅メッキ工程
(6)の工程を終了したサンプルを、硫酸銅200g/リットル、硫酸50g/リットル、塩素イオン70ml/リットル、CRPカッパーMU5ml/リットル、CRPカッパーA0.5ml/リットルの混合液に浸け、25℃で電流密度が6A/dm2 で30μmの膜厚のメッキを形成させた。また、ピーリング試験用サンプルについては60μmの膜厚になるまで処理した。
(8)電気ニッケルメッキ工程
硫酸ニッケル280g/リットル、塩化ニッケル50g/リットル、硼酸50g/リットル、CRPカッパーMU5ml/リットル、CRPカッパーA0.5ml/リットルの混液に浸け、電流密度が6A/dm2 で10μmの膜厚のメッキを形成させた。
(9)電気クロムメッキ工程
無水クロム酸200g/リットル、硫酸3g/リットルの混液に浸け、電流密度が30A/dm2 で0.25μmの膜厚のメッキを形成させた。
【0054】
<ピーリング試験>
電気銅メッキ工程までで終了させた成形品について4cm×10cmで試験片を切り出し、メッキ被膜を1cm幅で切削した後、この試験片から90°の角度にてメッキ被膜を引張って、剥離強度を測定した。
【0055】
<ヒートサイクル試験>
電気クロムメッキ工程まで行った成形品について、−40℃×2時間→23℃×30分→90℃×2時間→23℃×30分を1サイクルとして10サイクルの試験を行い、メッキ被膜のふくれ及びクラックの有無を観察し、下記基準で評価した。
○: ふくれ、クラックが全く発生せず。
△: ふくれ、クラックのどちらかが僅かに発生。
×: ふくれ、クラックが激しく発生。
【0056】
[耐衝撃性]
厚みが1/4インチの試験片を用い、アイゾット衝撃強度(単位:J/m)をASTM−D256に準拠して−30℃にて測定した。
[剛性]
ASTM −D790に準拠して、曲げ弾性率(単位:MPa )を常温にて測定した。
【0057】
実施例1〜3の熱可塑性樹脂組成物は、ブリスター現象と吸い込み現象が抑制され、メッキ性にも優れ、また耐衝撃性及び剛性のバランスが良好であった。
【0058】
比較例1,2の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体のゲル含有量が本願請求項1の範囲外であったので、メッキ性(ピーリング強度、ヒートサイクル性)、物性バランスが低下した。
また、比較例3の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト密度が本願請求項1の範囲外であったので、メッキ性(ピーリング強度、ヒートサイクル性)、物性バランスが低下した。
また、比較例4、5の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(B)中のゴム質重合体の粒子径分布が本願請求項1の範囲外であったので、物性バランスが低下した。
また、比較例6の熱可塑性樹脂組成物は、2種類のゴム含有グラフト共重合体の合計とビニル共重合体との配合割合が本願請求項1の範囲外であったので、塗装性及びメッキ性に劣り、物性バランスも劣っていた。
【0059】
以上の結果から、本発明に従って、特定の2種のゴム含有グラフト共重合体とビニル共重合体とを特定樹脂組成比率で配合した熱可塑性樹脂組成物は、塗装性及びメッキ性の両方に優れており、かつ、耐衝撃性及び剛性のバランスも良好であるため、耐衝撃性を低下させずに、成形品の薄肉化できることが判明した。
【0060】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、塗装性及びメッキ性の両方に優れている。しかも、耐衝撃性、特に低温耐衝撃性と剛性と加工性とのバランスも良好であるので、十分な耐衝撃性を有しつつ、成形品の薄肉化を達成できる。すなわち、ABS樹脂に代表されるゴム含有スチレン系樹脂の従来からの欠点が改良された画期的な高性能成形材料を提供できる。従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、自動車用部品等の成形材料として、その工業的な実用価値は極めて大きい。
【0061】
また、本発明の自動車用成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物からなるものであり、塗装性、メッキ性、耐衝撃性、剛性に優れ、ラジエーターグリル等の自動車用外装部品等に極めて有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の外装材などに使用される熱可塑性樹脂組成物に関する。さらには、これを用いた自動車用成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ABS樹脂は、優れた加工性、耐衝撃性、機械特性、耐薬品性を有していることから、車両分野、家電分野などの広範な分野において各種構成部材の成形材料として使用されている。例えば、近年、車両分野では、ABS樹脂の優れた2次加工性、特に、塗装性及びメッキ性が着目されて、ドアミラーやラジエーターグリル等の自動車外装用途に使用展開が図られている。その展開の中で、ユーザからは、生産工程上のコストダウンを目的として、塗装及びメッキのどちらも適用できるものが要求されている。
【0003】
ところが、塗装性は、ABS樹脂の特性や成形条件、塗装方法、塗装環境などの因子により影響を受け易く、これらの条件によっては著しい塗装不良を起こすことがあった。代表的な塗装不良としては、塗料に含まれるシンナー等の溶媒が作用して起こるブリスター現象(塗装面に小さな穴が多数個発生する現象)、吸い込み現象(塗装面に微細な凹凸が発生し、光沢むらとして観察される現象)が挙げられる。そして、これらの不良によって最終製品の商品価値を著しく損なわせることがあった。
【0004】
また、メッキ性についても、ABS樹脂の特性や成形条件、メッキ方法及び条件などの因子により影響を受け易い。そのため、これらの条件の僅かな設定の違いによって、メッキ密着強度やヒートサイクル後のメッキ膨れ現象など、商品として致命的なメッキ不良が高頻度に発生することがあった。
【0005】
このように、塗装性またはメッキ性が十分満足な程度になる条件の範囲は狭いので、両方の特性を満足させるのは一層困難であった。
そこで、塗装性及びメッキ性の両特性を向上させるために、様々なことが従来から試されてきた。例えば、特許文献1には、特定の溶融粘度にされて、成形加工性、耐衝撃性、塗装性及びメッキ性のいずれもが向上した熱可塑性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、グラフト重合体と遊離共重合体とからなるグラフト共重合体組成物を含む樹脂組成物であって、遊離共重合体中のシアン化ビニル化合物含有量と分散状態、及び、グラフト重合体のグラフト鎖中のシアン化ビニル化合物含有量が規制されて、塗装性及びメッキ性が向上した樹脂組成物が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−145467号公報
【特許文献2】
特開平7−11099号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの公報には、主要な塗装不良の一つであるブリスター現象については何ら記述されていないばかりか、本発明者らが追試したところ、これら樹脂組成物はブリスター現象が生じることが判明した。また、メッキ性についても小さな平板におけるピーリング強度及びヒートサイクル性しか調査されておらず、本発明者らが実際の製品程の比較的大きくて複雑な成形品によって調査してみたところ、ピーリング強度及びヒートサイクル性共に十分な性能を有していないことが判明した。すなわち、従来、塗装性及びメッキ性の両方が十分満足する程度にまで高くされた熱可塑性樹脂組成物は得られていなかった。
【0008】
また、近年、省資源やコストダウンのために、ABS樹脂などのゴム変性スチレン系樹脂を使用した大型成形品、例えば、電話機、ノートパソコン及びテレビ等の弱電用筐体等を薄肉化する傾向にあり、また、自動車部品においても上記の観点から薄肉化傾向にある。
しかしながら、自動車部品の中でも、特にラジエーターグリル等の外装材を薄肉化した場合、耐衝撃性、特に低温耐衝撃性が低いことが問題となっていた。つまり、ゴム含有スチレン系樹脂の諸物性は、一般に、使用するゴム相の組成、ゲル含率、粒子径、粒子径の分布、ゴム含有量などの因子によって影響されるが、成形加工性を向上させ、薄肉化を実現させるために、樹脂粘度を低下させ、樹脂中のゴム含有量を減量させると、樹脂の重要な特性である耐衝撃性、特に低温耐衝撃性などの機械的性質が低下した。したがって、そのような樹脂を用いた場合、自動車の品質を低下させることになる。
【0009】
以上のことから、塗装性及びメッキ性という異なる特性を兼備させた上で、高い耐衝撃性、剛性及び加工性を持たせようとすれば、さらに高度な技術力が要求される。そのため、従来、このような要件を満たす熱可塑性樹脂組成物は得られていなかった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、塗装性及びメッキ性に優れているとともに、耐衝撃性、剛性並びに加工性のバランスにも優れており、成形品の薄肉化が可能な熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的としている。また、この熱可塑性樹脂組成物を用いた自動車用成形品を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
一般に、塗装不良の一つとされるブリスター現象は、射出成形時に成形品が冷却される過程で発生した残留応力に起因すると考えられる。すなわち、ブリスター現象とは、塗料が塗られた際、残留応力が大きな部分に、塗料のシンナー等の溶剤がアタックして成形品表面にクラックを生じさせ、さらに溶媒がそのクラック内に残留し、乾燥工程で膨張して塗装膜を突き破る現象であると考えられる。また、吸い込み現象とは、射出成形過程で成形品に発生する樹脂の表層配向によりゴムが変形し、塗料のシンナー等の溶剤により成形品の応力緩和されるに伴って、塗装面に微細なクレーズが発生し光沢の低下をもたらす現象と考えられる。また、メッキ不良の一つとされるメッキ密着強度不足は、メッキする際の一工程であるエッチング処理によって樹脂基材(成形品)に発生する孔の大きさ、深さ、数などの影響を受けていると考えられる。また、ヒートサイクル後のメッキ膨れ現象は、上記影響因子に加え、樹脂基材のエッチング液に対する耐溶剤性、メッキ金属面と樹脂基材との線膨張係数の差などに起因していると推測される。
【0011】
本発明者らは、上記不良についての知見に基づいて詳細に検討した結果、上記課題を解決する以下の熱可塑性樹脂を発明した。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゲル含有量が50〜70%であるゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル単量体が、グラフト密度1〜15%の範囲でグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)10〜20質量部と、
直径が200〜300nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が40質量%を超えて含まれ、かつ、直径が200〜400nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が70質量%を超えて含まれているゴム質重合体(b)に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体がグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(B)10〜20質量部と、
芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位が含まれているビニル共重合体(C)60〜80質量部とを含有することを特徴としている。
ここで、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)とゴム含有グラフト共重合体(B)とビニル共重合体(C)とは、合計で100質量部である。
また、本発明の自動車用成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
ゴム含有グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(a)に芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル単量体が、グラフト密度1〜15%、好ましくは1〜8%、特に好ましくは2〜6%の範囲でグラフト重合したものである。グラフト密度が1〜15%であることにより、熱可塑性樹脂組成物の流動性と耐衝撃性、特に低温耐衝撃性とのバランスが向上する。
【0013】
ここでいうグラフト密度とは、以下のようにして求めた値である。すなわち、サンプルをアセトン中に溶解させ、遠心分離器を用いて可溶分と不溶分とに分離し、得られた不溶分(X)をオゾン分解させる。そして、メタノール不溶分(m)を抽出し、さらに得られたメタノール不溶分をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて質量平均分子量(Mw)を求め、これらの結果を基に次の計算式により算出した値である。
グラフト密度(%)=グラフト率/(Mw/104)
グラフト率(%)={m/(X−m)}×100
【0014】
上述したゴム質重合体(a)は、ジエン系単量体が重合した重合体からなるものであり、例えば、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリクロロプレンが挙げられる。
また、ゴム質重合体(a)のゲル含有量は50〜70質量%である。ゴム質重合体(a)のゲル含有量が50〜70質量%であることにより、熱可塑性樹脂組成物のメッキピーリング強度が向上するとともに、メッキのヒートサイクル性が高くなる。
ここでいうゲル含有量とは、ゴム含有グラフト共重合体を含むラテックスを凝固、乾燥させた後、トルエンに室温(23℃)で20時間溶解させ、次いで、100メッシュ金網で分取した不溶解分の質量割合を意味する。
【0015】
ゴム質重合体(a)の粒子径・粒子径分布は、後述するゴム含有グラフト共重合体(B)のゴム質重合体(b)の粒子径・粒子径分布と同じ範囲内であってもよいが、物性バランスがより高くなることから、粒子径200〜500nmのゴム質重合体粒子が40〜60質量%であることが好ましい。
【0016】
ゴム質重合体(a)にグラフトした芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、これらの中でも、特にスチレンが好ましい。また、シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらの中でも、特にアクリロニトリルが好ましい。これらの単量体については、1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
ゴム含有グラフト共重合体(A)においては、ゴム質重合体(a)に、必要に応じて、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体がグラフトしてもよい。このような他の単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等のメタクリル酸またはアクリル酸エステル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸化合物が挙げられ、それぞれ1種または2種以上用いることができる。
【0018】
ゴム含有グラフト共重合体(A)を合成するためのグラフト重合方法としては、いかなる公知重合方法も採用できるが、予め、ゴム質重合体(a)とこれにグラフト重合させる単量体とを混合、放置することによって、単量体をゴム質重合体(a)に含浸させた単量体含浸ゴム質重合体を調製し、これに、新たに単量体を添加し、グラフト重合することが好ましい。この重合方法の採用すれば、熱可塑性樹脂組成物の成形性と耐衝撃性等の物性がより良好になる。
【0019】
上述したグラフト重合の具体的な方法は、例えば、まず、乳化重合にて製造されたゴム質重合体(a)を撹拌翼、ジャケット付き反応器内に仕込み、次に、グラフト重合させる単量体を一括投入または連続滴下し、撹拌しながら、40〜70℃にて5〜60分放置し、次いで、残りの単量体と開始剤とを添加する。開始剤が添加される前に添加された単量体は、ゴム質重合体(a)に含浸し、ゴム質重合体(a)内にて重合して重合体になる。このように、ゴム質重合体(a)内に重合体が形成された構造をオクルージョン構造という。
【0020】
ここで、ゴム質重合体(a)内の重合体を構成する単量体(以下「オクルード単量体」と称す)、すなわち、ゴム質重合体(a)に含浸され、重合される単量体としては、含浸後に新たに添加される単量体と同種のものを使用することができる。また、オクルード単量体としては、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体を使用することが好ましく、芳香族ビニル単量体を使用することが特に好ましい。特に、芳香族ビニル単量体を使用すれば、流動性及びメッキ性がより良好となる。
【0021】
このようにゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(a)がオクルージョン構造を有している場合、すなわち、ゴム質重合体(a)に予めオクルード単量体を含浸させてから重合した場合、オクルード単量体量は、ゴム質重合体(a)に重合する全単量体成分中の5〜30質量%であることが好ましい。オクルード単量体量が5質量%未満であると、オクルージョン構造を採用することによる流動性及びメッキ性向上効果が十分に発揮されず、30質量%を超えると物性バランス、特に、十分な耐衝撃性を得ることが難しくなる。
【0022】
ゴム含有グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体(b)に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体がグラフト重合したものである。
さらに、ゴム質重合体(b)は、直径が200〜300nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が40質量%を超えて含まれ、かつ直径が200〜400nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が70質量%を超えて含まれているものである。このような粒子径分布は狭く、ほぼ単分散粒子径分布である。ゴム質重合体(b)の粒子径分布が、上記範囲にあれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性、剛性のバランスが向上する。
ここで、粒子径分布は、日機装(株)製Microtrac Model:9230UPAを用いて動的光散乱法より求めた値である。これにより得られる値は、質量平均(体積)粒子径と粒子径分布、粒子径分布の累積質量分布である。このようなゴム質重合体(b)の製造方法は、上記の特定された狭い粒子径分布を最終的に有していれば特に制限はなく、いかなる公知重合方法も採用できる。
ゴム質重合体(b)のゲル含有量は、ゴム質重合体(a)のゲル含有量と同じ範囲内であってもよいが、物性バランスがより高くなることから、80〜99質量%であることが好ましい。
【0023】
ゴム含有グラフト共重合体(B)において、ゴム質重合体(b)は、ゴム含有グラフト共重合体(A)のゴム質重合体(a)に用いられたジエン系単量体の重合体を使用できる。また、ゴム質重合体(b)にグラフト重合された芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、これらと共重合可能な他の単量体についても、ゴム含有グラフト共重合体(A)と同じものを使用できる。
ゴム含有グラフト共重合体(B)のグラフト密度は、ゴム含有グラフト共重合体(A)のグラフト密度と同じ範囲内であってもよいが、物性バランスがより高くなることから、2〜8%であることが好ましい。
【0024】
ビニル共重合体(C)は、芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位を構成成分として含むものである。このビニル共重合体(C)は、必要に応じて、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体が共重合されていてもよい。
ここで、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、これらと共重合可能な他の単量体は、上述したゴム含有グラフト共重合体(A)で使用されたものと同様のものを使用できる。また、ビニル共重合体(C)の製造方法については、乳化、懸濁、塊状またはこれらを複合化した公知の重合方法を採用できる。
【0025】
ビニル共重合体(C)は、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を構成成分とし、特定構造を有する2種類のビニル共重合体からなることが好ましい。すなわち、質量平均分子量が100,000〜200,000で、シアン化ビニル単量体を20〜30質量%含むビニル共重合体(C−I)と、質量平均分子量が100,000未満で、シアン化ビニル単量体を35〜50質量%含むビニル共重合体とを含む混合物であり、該混合物中のビニル共重合体(C−II)含有量が20〜50質量%であることが好ましい。ビニル共重合体(C)が、このような2種類のビニル共重合体からなれば、塗装性における不良現象、すなわち、吸い込み、ブリスター現象と、物性バランスを両立させることができる。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)を10〜20質量部、ゴム含有グラフト共重合体(B)を10〜20質量部、ビニル共重合体(C)を60〜80質量部含有する。ここで、ゴム含有グラフト共重合体(A)及びゴム含有グラフト共重合体(B)の合計含有量が20質量部未満である(ビニル共重合体(C)の含有量が80質量部を超える)と、塗装性、耐衝撃性が低くなり、また、メッキ性(特にピーリング強度)も低下する。逆に、ゴム含有グラフト共重合体(A)及びゴム含有グラフト共重合体(B)の合計含有量が40質量部を超える(ビニル共重合体(C)の含有量が60質量部未満である)と、塗装性、メッキ性(特にヒートサイクル性)が低下する。
【0027】
また、熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて更に、顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強剤、充填剤など各種添加剤を、その物性を損なわない範囲内において配合することができる。
【0028】
熱可塑性樹脂組成物を得る方法としては特に制限はないが、ゴム含有グラフト共重合体(A)とゴム含有グラフト共重合体(B)とビニル共重合体(C)とを混合した後に溶融混練することが好ましい。溶融混練は、例えば、押出し機、バンバリーミキサー等を用いて実施することができる。
【0029】
上述した熱可塑性樹脂組成物は、上述したゴム含有グラフト共重合体(A)とゴム含有グラフト共重合体(B)とビニル共重合体(C)とを特定の割合で配合されている。そのため、この熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品は、ブリスター現象及び吸い込み現象の発生が無い上に、比較的大きな成形品においても十分なメッキ密着強度を有し、ヒートサイクル後のメッキ膨れ現象が生じない。すなわち、塗装性及びメッキ性の両方に優れている。しかも、耐衝撃性、特に低温耐衝撃性と剛性と加工性とのバランスも良好であるので、十分な耐衝撃性を有しつつ、成形品の薄肉化を達成できる。
【0030】
また、本発明の自動車用成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物からなるものである。この自動車用成形品は、塗装性、メッキ性、耐衝撃性、剛性に優れており、自動車の外装用部品、例えば、ドアミラーやラジエーターグリルに好適に利用できる。
【0031】
【実施例】
以下に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において、「部」は「質量部」を意味するものとする。
また、下記に示すゴム含有グラフト共重合体(A−1〜6)においては、ゴム質重合体のゲル含有量及びグラフト密度(%)を以下のように測定した。
[ゴム質重合体のゲル含有量]
ゴム質重合体のサンプルWc(g)をトルエンに溶解し、15000rpmで60分間遠心分離後、上澄液をデカンテーションし、不溶成分を60℃にて24時間乾燥して、乾燥不溶分量Wg(g)を求め下記式で算出した。
ゲル含有量(質量%)=Wg/Wc×100
[グラフト密度]
サンプルをアセトン中に溶解させ、遠心分離器を用いて可溶分と不溶分とに分離し、得られた不溶分X(g)をオゾン分解させた。次いで、メタノール不溶分m(g)を抽出し、さらに得られたメタノール不溶分をGPCにて質量平均分子量Mwを求め、これらの結果を基に次の計算式により算出した。
グラフト密度(%)=グラフト率/(Mw/104)
グラフト率(%)=m/(X−m)×100
なお、質量平均分子量Mwは、東ソー(株)製「GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)」を用いて測定し、標準ポリスチレン換算法にて算出した。
【0032】
<合成例1:ゴム含有グラフト共重合体(A−1)の製造>
オートクレーブに表1の原料A(ポリブタジエン・ラテックスのゲル含有量は60質量%)を仕込み、60℃に加熱してポリブタジエンに単量体(オクルード単量体としてスチレンを使用)を含浸させた。そして、60℃に保持したまま90分間放置し、反応率が70%以上に達したことを確認した後、さらに原料Bのうちのアクリロニトリル(AN)、スチレン(ST)、不均化ロジン酸カリウムを仕込んだ。次いで、その中に硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、結晶ブドウ糖及びクメンハイドロパーオキサイドを100分かけて連続添加し、続いて70℃に昇温し、これを1時間保って反応を完結させて重合体ラテックスを得た。次いで、この重合体ラテックスに硫酸を添加して、重合体を凝固させ、十分水洗後、乾燥してゴム含有グラフト共重合体(A−1)を得た。
そして、得られたゴム含有グラフト共重合体(A−1)中のグラフトされた重合体の質量平均分子量、グラフト率を測定し、グラフト密度を求めた。グラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
<合成例2:ゴム含有グラフト共重合体(A−2)の製造>
原料Aにおいて、ポリブタジエンに含浸させるオクルード単量体を、ST単独10部に代えて、AN2部及びST8部からなる単量体混合物としたこと以外は、合成例1と同様にしてゴム含有グラフト共重合体(A−2)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−2)のグラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0036】
<合成例3:ゴム含有グラフト共重合体(A−3)の製造>
オートクレーブに、表1に示す原料Cのうちの蒸留水、不均化ロジン酸カリウム、ポリブタジエン・ラテックス(ゲル含有量:60質量%)及びAN 、ST 、t−DM を仕込み、60℃に加熱した後、硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、結晶ブドウ糖及びクメンハイドロパーオキサイドを2時間かけて連続添加し、続いて70℃に昇温し、これを1時間保って反応を完結して重合体ラテックスを得た。
このようにして得た重合体ラテックスに酸化防止剤を添加し、その後硫酸により凝固させ、十分水洗後、乾燥してゴム含有グラフト共重合体(A−3)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−3)のグラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0037】
<合成例4:ゴム含有グラフト共重合体(A−4)の製造>
原料Cのポリブタジエン・ラテックスとして、ゲル含有量95質量%のポリブタジエン・ラテックスを使用し、t−DMの添加量を0.2部にしたこと以外は合成例3と同様にして、ゴム含有グラフト共重合体(A−4)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−4)のグラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0038】
<合成例5:ゴム含有グラフト共重合体(A−5)の製造>
原料Aのポリブタジエン・ラテックスとして、ゲル含有量35質量%のポリブタジエン・ラテックスを使用したこと以外は合成例1と同様にして、ゴム含有グラフト共重合体(A−5)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−5)のグラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0039】
<合成例6:ゴム含有グラフト共重合体(A−6)の製造>
原料Aのポリブタジエン・ラテックスとして、ゲル含有量60質量%のポリブタジエン・ラテックスを使用し、更に、t−DMを0.2部添加したこと以外は合成例1と同様にして、ゴム含有グラフト共重合体(A−6)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−6)のグラフト密度の算出結果を表2に示す。
【0040】
<合成例7:ゴム含有グラフト共重合体(B−1)の製造>
表3に示す粒子径分布のポリブタジエン・ラテックス(ゲル含量は87質量%)65質量部にスチレン26質量部及びアクリロニトリル9質量部をグラフト重合させてゴム含有グラフト共重合体(B−1)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(B−1)に含まれる、非グラフト化スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)の含有量は約6質量%であった。さらに、SAN中のスチレン対アクリロニトリルの質量比(スチレンの質量/アクリロニトリルの質量)は約2.7であり、SAN の質量平均分子量は約62,000であった。
なお、ポリブタジエン・ラテックスの粒子径分布は日機装(株)製Microtrac Model:9230UPAを用いて動的光散乱法より求めた。
【0041】
【表3】
【0042】
<合成例8:ゴム含有グラフト共重合体(B−2)の製造>
表3に示す粒子径分布のポリブタジエン・ラテックス(ゲル含量は95質量%)65.2質量部にスチレン26.5質量部及びアクリロニトリル8.3質量部をグラフト重合させてゴム含有グラフト共重合体(B−2)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(B−2)に含まれる、非グラフト化スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)の含有量は約6.3質量%であった。さらに、SAN中のスチレン対アクリロニトリルの質量比(スチレンの質量/アクリロニトリルの質量)は約2.7であり、SANの質量平均分子量は約78,000であった。
【0043】
<合成例9:ゴム含有グラフト共重合体(B−3)の製造>
表3に示す粒子径分布のポリブタジエン・ラテックス(ゲル含量は95質量%)67.5質量部にスチレン25.4質量部及びアクリロニトリル7.1質量部をグラフト重合させてゴム含有グラフト共重合体(B−3)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(B−3)に含まれる、非グラフト化スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)の含有量は約8質量%であった。さらに、SAN中のスチレン対アクリロニトリルの質量比(スチレンの質量/アクリロニトリルの質量)は約2.8であり、SANの質量平均分子量は約108,000であった。
【0044】
<合成例10:ビニル共重合体(C−1)の製造>
窒素置換した反応器に表4に示す成分からなる単量体混合物を添加し、開始温度を60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、続いて4時間反応させて重合を完結させた。その際の最終転化率は96%であり、得られたビニル共重合体(C−1)の質量平均分子量は130000 、アクリロニトリル含有量は26.3%であった。
【0045】
【表4】
【0046】
<合成例11:ビニル共重合体(C−2)の製造>
t−DM を1.0部にしたこと以外は合成例10と同様に重合してビニル共重合体(C−2)を得た。その際の最終転化率は98%で、得られたビニル共重合体(C−2)の質量平均分子量は60000 、アクリロニトリル含有量は25.7%であった。
【0047】
<合成例12:ビニル共重合体(C−3)の製造>
窒素置換した反応器に表4に示す成分からなる単量体混合物を添加し、開始温度を60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、続いて4時間反応させて重合を完結させた。その際の最終転化率は96%であり、得られたビニル共重合体(C−3)の質量平均分子量は54000、アクリロニトリル含有量は41.3%であった。
【0048】
<合成例13:ビニル共重合体(C−4)の製造>
t−DMを0.01部にしたこと以外は合成例12と同様に重合してビニル共重合体(C−4)を得た。その際の最終転化率は97%であり、得られたビニル共重合体(C−4)の質量平均分子量は150000、アクリロニトリル含有量は40.5%であった。
【0049】
<実施例1〜3 、比較例1〜6>
上記方法にて得られた各重合体を表5に示す割合で配合し、0.5質量部の滑剤(「PRN−208」日本油脂(株)製)と共にヘンシェリングさせた。次いで、220℃で2軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX−44)にて溶融混合し、ペレット化して熱可塑性樹脂組成物を得た。このペレットを4オンス射出成形機((株)日本製鋼所製)で240℃にて成形し、必要なテストピースを作成し、それぞれ以下のように評価した。その結果を表5に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
[塗装性]
平板テストピース(160mm×60mm、肉厚2.5mm)に、常温にて2液ウレタン系塗料(レタンPG60:関西ペイント社製)をスプレー塗装した。得られた塗装成形品のサイド2点のゲート付近とテストピース側端部の部分とに発生するブリスター現象、及び、主にゲート付近に現れる吸い込み現象を肉眼で観察してブリスター現象、吸い込み現象ともに以下の判断基準で評価した。
○: 全く発生せず
△: 一部発生
×: 著しい発生
[メッキ性]
箱型成形品(250mm×300mm×30mm)について下記のようなメッキ処理を施しピーリング試験及びヒートサイクル試験を行った。なお、メッキ処理に必要な試薬は全て奥野製薬工業製のものを用いた。
【0052】
<メッキ処理>
次の(1)〜(9)の手順でメッキ処理した。
(1)脱脂工程
CRPクリーナー40g/リットルにより50℃、5分間処理し、3回の純水により洗浄した。
(2)エッチング工程
無水クロム酸400g/リットル、3価クロム30g/リットル、硫酸380g/リットルの混合液に68℃で15分間浸し、純水にて洗浄した。
(3)中和工程
35%塩酸50ml/リットル、CRPレデュサー10ml/リットルの混合液に25℃で2分間浸け、純水にて洗浄した。
(4)プレディップ工程
35%塩酸200ml/リットルに25℃で1分間浸けた。
(5)触媒化工程
35%塩酸300ml/リットル、CRPキャタリスト60ml/リットルの混合液に45℃で7分間浸け、純水にて洗浄した。
(6)導体化工程
導体化工程CRPアクセレーターA200ml/リットル、CRPアクセレーターB200ml/リットルの混合液に50℃で7分間浸け、純水にて洗浄した。
【0053】
(7)電気銅メッキ工程
(6)の工程を終了したサンプルを、硫酸銅200g/リットル、硫酸50g/リットル、塩素イオン70ml/リットル、CRPカッパーMU5ml/リットル、CRPカッパーA0.5ml/リットルの混合液に浸け、25℃で電流密度が6A/dm2 で30μmの膜厚のメッキを形成させた。また、ピーリング試験用サンプルについては60μmの膜厚になるまで処理した。
(8)電気ニッケルメッキ工程
硫酸ニッケル280g/リットル、塩化ニッケル50g/リットル、硼酸50g/リットル、CRPカッパーMU5ml/リットル、CRPカッパーA0.5ml/リットルの混液に浸け、電流密度が6A/dm2 で10μmの膜厚のメッキを形成させた。
(9)電気クロムメッキ工程
無水クロム酸200g/リットル、硫酸3g/リットルの混液に浸け、電流密度が30A/dm2 で0.25μmの膜厚のメッキを形成させた。
【0054】
<ピーリング試験>
電気銅メッキ工程までで終了させた成形品について4cm×10cmで試験片を切り出し、メッキ被膜を1cm幅で切削した後、この試験片から90°の角度にてメッキ被膜を引張って、剥離強度を測定した。
【0055】
<ヒートサイクル試験>
電気クロムメッキ工程まで行った成形品について、−40℃×2時間→23℃×30分→90℃×2時間→23℃×30分を1サイクルとして10サイクルの試験を行い、メッキ被膜のふくれ及びクラックの有無を観察し、下記基準で評価した。
○: ふくれ、クラックが全く発生せず。
△: ふくれ、クラックのどちらかが僅かに発生。
×: ふくれ、クラックが激しく発生。
【0056】
[耐衝撃性]
厚みが1/4インチの試験片を用い、アイゾット衝撃強度(単位:J/m)をASTM−D256に準拠して−30℃にて測定した。
[剛性]
ASTM −D790に準拠して、曲げ弾性率(単位:MPa )を常温にて測定した。
【0057】
実施例1〜3の熱可塑性樹脂組成物は、ブリスター現象と吸い込み現象が抑制され、メッキ性にも優れ、また耐衝撃性及び剛性のバランスが良好であった。
【0058】
比較例1,2の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体のゲル含有量が本願請求項1の範囲外であったので、メッキ性(ピーリング強度、ヒートサイクル性)、物性バランスが低下した。
また、比較例3の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト密度が本願請求項1の範囲外であったので、メッキ性(ピーリング強度、ヒートサイクル性)、物性バランスが低下した。
また、比較例4、5の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(B)中のゴム質重合体の粒子径分布が本願請求項1の範囲外であったので、物性バランスが低下した。
また、比較例6の熱可塑性樹脂組成物は、2種類のゴム含有グラフト共重合体の合計とビニル共重合体との配合割合が本願請求項1の範囲外であったので、塗装性及びメッキ性に劣り、物性バランスも劣っていた。
【0059】
以上の結果から、本発明に従って、特定の2種のゴム含有グラフト共重合体とビニル共重合体とを特定樹脂組成比率で配合した熱可塑性樹脂組成物は、塗装性及びメッキ性の両方に優れており、かつ、耐衝撃性及び剛性のバランスも良好であるため、耐衝撃性を低下させずに、成形品の薄肉化できることが判明した。
【0060】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、塗装性及びメッキ性の両方に優れている。しかも、耐衝撃性、特に低温耐衝撃性と剛性と加工性とのバランスも良好であるので、十分な耐衝撃性を有しつつ、成形品の薄肉化を達成できる。すなわち、ABS樹脂に代表されるゴム含有スチレン系樹脂の従来からの欠点が改良された画期的な高性能成形材料を提供できる。従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、自動車用部品等の成形材料として、その工業的な実用価値は極めて大きい。
【0061】
また、本発明の自動車用成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物からなるものであり、塗装性、メッキ性、耐衝撃性、剛性に優れ、ラジエーターグリル等の自動車用外装部品等に極めて有用である。
Claims (4)
- ゲル含有量が50〜70%であるゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル単量体が、グラフト密度1〜15%の範囲でグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)10〜20質量部と、
直径が200〜300nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が40質量%を超えて含まれ、かつ、直径が200〜400nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が70質量%を超えて含まれているゴム質重合体(b)に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体がグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(B)10〜20質量部と、
芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位が含まれているビニル共重合体(C)60〜80質量部とを含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 前記ビニル共重合体(C)が、芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位のみからなることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ゴム含有グラフト共重合体(A)及び/または前記ゴム含有グラフト共重合体(B)には、さらに、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体がグラフト重合したことを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする自動車用成形品。
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