JP4741202B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。さらに詳しくは、成形時のフローマークやシルバーストリークといった成形外観不良の発生の少ない大型成形性およびめっき性、塗装性に優れた熱可塑性樹脂組成物、およびこれを成形した自動車の外装材などの自動車用大型成形品に関する。
ABS樹脂は、優れた加工性、耐衝撃性、機械特性、耐薬品性を有していることから、車両分野、家電分野などの広範な分野において各種構成部材の成形材料として使用されている。例えば、近年、車両分野では、ABS樹脂の優れた2次加工性、特に、めっき性および塗装性が着目されて、ドアミラーやラジエーターグリル等の自動車外装用途に使用展開が図られている。
近年、自動車業界においては、自動車部品の形状が大型化し、また、デザインが複雑化してきている。それに伴って成形時にフローマークやシルバーストリークといった外観不良が発生し易くなっており、ABS樹脂には大型成形性が要求されてきている。また、これらの外観不良は、二次加工性に大きく影響し、特に、めっき密着強度の低下から、めっき膜の膨れや未着といった商品として致命的なめっき不良が高頻度に発生することがあった。
また、めっき加工された自動車部品の性能規格も厳しくなっており、冷熱サイクル性の向上も要求されている。例えば、−40℃で1時間冷却し、ついで80℃で1時間加熱するという冷熱サイクルを3〜10回行っても、めっき製品の外観に変化がないことが求められている。
このように自動車部品の形状の大型化やデザインの複雑化、さらに、厳しいめっき製品規格に対応するために、熱可塑性樹脂組成物の成形加工性、めっき性、塗装性を改良する様々な試みが従来から行われてきた。例えば、特許文献1には、特定の溶融粘度にされて、成形加工性、耐衝撃性、めっき性および塗装性のいずれもが向上した熱可塑性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、グラフト重合体と遊離共重合体とからなるグラフト共重合体組成物を含む樹脂組成物であって、遊離共重合体中のシアン化ビニル化合物含有量と分散状態、およびグラフト重合体のグラフト鎖中のシアン化ビニル化合物含有量が規制されて、めっき性および塗装性が向上した樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、これらの特許文献には、成形加工性についてはメルトフローレートでの測定結果しか記載していない。また、めっき性についても小さな平板におけるピーリング強度および冷熱サイクル性しか評価されていない。そこで、本発明者らが複雑な形状の大型成形品について、これら特許文献の樹脂組成物を評価したところ、極めて成形性に劣り、しかもめっきトラブルの主たる要因であるシルバー性が大幅に低下し、ピーリング強度および冷熱サイクル性ともに十分な性能を有していないことが判明した。すなわち、これまで、大型成形性に優れ、かつ、めっき性および塗装性の両方が十分満足する程度にまで高くされた熱可塑性樹脂組成物は得られていなかった。
以上のことから、大型成形性に優れ、めっき性(めっき膜のピーリング強度および冷熱サイクル性)、塗装性が良好で、かつ自動車部品性能を満足させる高い耐衝撃性、剛性を持たせようとすれば、さらに高度な技術が要求される。そのため、従来このような要件を満たす熱可塑性樹脂組成物は得られていなかった。
特開平6−145467号公報 特開平7−11099号公報
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、大型成形性に優れ、めっき性(めっき膜のピーリング強度および冷熱サイクル性)、塗装性が良好で、かつ耐衝撃性と剛性とのバランスに優れた成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物、およびその成形品を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記不良の知見に基づいて詳細に検討した結果、上記課題を解決する以下の熱可塑性樹脂を発明した。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゲル含有量が50〜70質量%、かつ膨潤量が20〜50倍であるポリブタジエンからなるゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体を含有する単量体混合物の一部または全量を含浸させ、グラフト密度%の範囲でグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)10〜30質量部と、粒子径が100〜600nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が85質量%を超えて含まれ、かつ粒子径が600〜2000nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が5質量%を超えて含まれ、ゲル含有量が80〜95質量%であるポリブタジエンからなるゴム質重合体(b)に、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体がグラフト密度5〜8%の範囲でグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(B)10〜30質量部と、芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位が含まれているビニル共重合体(C)40〜80質量部とを含有する[ゴム含有グラフト共重合体(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)、およびビニル共重合体(C)の合計は100質量部である]ことを特徴とするものである。
ここで、前記ビニル共重合体(C)は、芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位のみからなることが望ましい。
また、前記ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(a)は、オクルード構造を有し、オクルード単量体量は、ゴム質重合体(a)に重合する全単量体成分中の18〜23質量%であることが望ましい。
また、前記ビニル共重合体(C)は、質量平均分子量が50,000〜100,000で、シアン化ビニル単量体を20〜30質量%含むビニル共重合体(C−I)と、質量平均分子量が100,000〜150,000で、シアン化ビニル単量体を25〜35質量%含むビニル共重合体(C−II)とを含む混合物であることが望ましい。
また、前記混合物中のビニル共重合体(C−II)含有量は、20〜50質量%であることが望ましい。
また、本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形したものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、大型成形性に優れており、この熱可塑性樹脂組成物によれば、めっき性および塗装性のいずれも優れた成形品を得ることができる。しかも、得られる成形品は、耐衝撃性(特に低温耐衝撃性)と剛性と加工性とのバランスも良好であり、十分な耐衝撃性を有している。
また、本発明の成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物からなるものであり、大型成形品としても、成形外観不良が少なく、めっき性、塗装性、耐衝撃性、剛性に優れている。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
<ゴム含有グラフト共重合体(A)>
本発明におけるゴム含有グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体を含有する単量体混合物の一部または全量を含浸させ、グラフト重合したものである。
ゴム質重合体(a)は、ジエン系単量体が重合した重合体であり、例えば、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリクロロプレンが挙げられる。
ゴム質重合体(a)は、ゲル含有量が50〜70質量%であり、かつ膨潤量が20〜50倍である。ゴム質重合体(a)のゲル含有量が50〜70質量%、かつ膨潤量が20〜50倍であることにより、熱可塑性樹脂組成物の大型成形性が大幅に向上し、それによりめっき特性の低下の主たる要因である、成形加工時に発生するフローマークやシルバーストリークよる成形品の表面外観の悪化、並びに残留ひずみを抑制することができ、めっきピーリング強度と冷熱サイクル性が向上する。
特に、ゴム質重合体(a)は、ゲル含有量が50〜70質量%であり、かつ膨潤量が20〜50倍、好ましくは25〜40倍、より好ましくは、30〜35倍である。膨潤量が20倍未満では、大型成形性が十分でなく、残留ひずみが大きく、めっき膜のピーリング強度や冷熱サイクル性が劣る。一方、膨潤量が50倍を超えると、金型への付着物が増加し、成形品の表面外観が劣るとともに表層の配向度が大きくなることにより、エッチング形態はオーバーエッチングとなり、めっき膜のピーリング強度や冷熱サイクル性が劣り、また、塗装時の吸い込み現象が発生し易い傾向にある。
ここで、ゲル含有量は、以下のようにして算出される。
ゴム質重合体(a)を含むラテックスを凝固、乾燥させた後、ゴム質重合体(a)のサンプルWc(g)をトルエンに室温(23℃)で20時間かけて溶解させ、次いで、100メッシュ金網で不溶分を分取し、不溶分を60℃にて24時間乾燥して、乾燥不溶分量Wg(g)を測定し、下記式で算出する。
ゲル含有量(質量%)=Wg/Wc×100
また、膨潤量は、以下のようにして算出される。
ゴム質重合体(a)を含むラテックスを凝固、乾燥させた後、ゴム質重合体(a)をトルエンに室温(23℃)で20時間溶解させ、次いで、100メッシュ金網で不溶分を分取した直後に膨潤状態の不溶分量Wsを測定し、ついで、不溶分を60℃にて24時間乾燥して、乾燥不溶分量Wg(g)を測定し、下記式で算出する。
膨潤量(倍)=Ws/Wg
ゴム質重合体(a)の粒子径分布は、後述するゴム含有グラフト共重合体(B)のゴム質重合体(b)の粒子径分布と同じであってもよいが、物性バランスがより高くなることから、粒子径200〜500nmのゴム質重合体粒子を40〜60質量%含むものであることが好ましい。
ゴム含有グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体を含有する単量体混合物が、グラフト密度3〜15%、好ましくは5〜8%の範囲でグラフト重合したものである。グラフト密度が3〜15%であることにより、熱可塑性樹脂組成物の大型成形性と、得られる成形品の耐衝撃性、特に低温耐衝撃性とのバランスが向上する。
ここでいうグラフト密度とは、以下のようにして求めた値である。
すなわち、ゴム含有グラフト共重合体(A)のサンプルをアセトン中に溶解させ、遠心分離器を用いて可溶分と不溶分とに分離し、得られた不溶分X(g)をオゾン分解させる。そして、メタノール不溶分m(g)を分離する。得られたメタノール不溶分について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて質量平均分子量Mwを求め、これらの結果を基に次の計算式により算出した値である。
グラフト密度(%)=グラフト率/(Mw/104
グラフト率(質量%)={m/(X−m)}×100
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられる。これらの中でも、特にスチレンが好ましい。
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらの中でも、特にアクリロニトリルが好ましい。
これらの単量体については、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、必要に応じて、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体を用いてもよい。このような他の単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等のメタクリル酸またはアクリル酸エステル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸化合物が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゴム含有グラフト共重合体(A)を合成するためのグラフト重合方法としては、いかなる公知の重合方法も採用できる。特に、あらかじめゴム質重合体(a)と単量体混合物の一部または全量とを混合、放置することによって、単量体混合物をゴム質重合体(a)に含浸させた単量体含浸ゴム質重合体を調製し、ついで、残りの単量体混合物を加えた後、全単量体を重合することが好ましい。この重合方法を採用すれば、熱可塑性樹脂組成物の大型成形性と、得られる成形品の耐衝撃性等の物性とのバランスが良好になる。
上述したグラフト重合の具体的な方法は、例えば、まず、乳化重合にて製造されたゴム質重合体(a)を撹拌翼、ジャケット付き反応器内に仕込み、次に、単量体混合物の一部または全量を一括投入または連続滴下し、撹拌しながら、40〜70℃にて15〜90分放置し、次いで、残りの単量体混合物と開始剤とを添加する。開始剤が添加される前に添加された単量体は、ゴム質重合体(a)に含浸し、ゴム質重合体(a)内にて重合して重合体になる。このように、ゴム質重合体(a)内に重合体が形成された構造をオクルード構造という。
ここで、ゴム質重合体(a)内において重合体を構成する単量体(以下「オクルード単量体」と称す)、すなわち、ゴム質重合体(a)に含浸され、重合される単量体としては、含浸後に新たに添加される単量体と同種のものを使用することができる。また、オクルード単量体としては、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体を使用することが好ましく、芳香族ビニル単量体を使用することが特に好ましい。特に、芳香族ビニル単量体を使用すれば、流動性およびめっき性がより良好となる。
このようにゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(a)がオクルード構造を有している場合、すなわち、ゴム質重合体(a)にあらかじめオクルード単量体を含浸させてから重合した場合、オクルード単量体量は、ゴム質重合体(a)に重合する全単量体成分中の20〜60質量%が好ましく、より好ましくは30〜50質量%である。オクルード単量体量が20質量%未満であると、オクルード構造を採用することによる大型成形性およびめっき性向上効果が十分に発揮されず、60質量%を超えると、物性バランス、特に、十分な耐衝撃性や剛性を得ることが難しくなり、自動車外装部品用途には適していない。
<ゴム含有グラフト共重合体(B)>
本発明のゴム含有グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体(b)に、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体がグラフト重合したものである。
ゴム質重合体(b)は、粒子径が100〜600nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が85質量%を超えて含まれ、かつ粒子径が600〜2000nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が5質量%を超えて含まれているものである。このような粒子径分布は広く、多分散粒子径分布である。ゴム質重合体(b)の粒子径分布が、上記範囲にあれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性、得られる成形品の耐衝撃性、剛性のバランス、およびめっきピーリング強度並びに冷熱サイクル性が大幅に向上する。
ここで、粒子径分布は、日機装(株)製、Microtrac Model:9230UPAを用いて動的光散乱法より求めた値である。これにより得られる値は、質量平均(体積)粒子径と粒子径分布、粒子径分布の累積質量分布である。
ゴム質重合体(b)のゲル含有量は、ゴム質重合体(a)のゲル含有量と同じ範囲内であってもよいが、物性バランスがより高くなることから、70〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは、80〜95質量%である。
ゴム質重合体(b)としては、ゴム質重合体(a)と同様に、ジエン系単量体の重合体を使用できる。
また、ゴム質重合体(b)にグラフト重合される芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、これらと共重合可能な他の単量体についても、ゴム含有グラフト共重合体(A)と同じものを使用できる。
ゴム含有グラフト共重合体(B)のグラフト密度は、ゴム含有グラフト共重合体(A)のグラフト密度と同じ範囲内であってもよいが、物性バランスがより高くなることから、5〜8%であることが好ましい。
このようなゴム質重合体(b)の製造方法は、上記の特定された広い粒子径分布を最終的に有していれば特に制限はなく、いかなる公知の重合方法も採用できる。
<ビニル共重合体(C)>
本発明におけるビニル共重合体(C)は、芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位を構成成分として含むものである。このビニル共重合体(C)は、必要に応じて、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体が共重合されていてもよいが、例えば、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルは、めっき工程で、エッチング液との濡れ性に影響して、めっき不良を生じるおそれがある点、また、マレイミド化合物は、大型成形する場合に流動性や衝撃強度の低下を生じる点で、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体のみが共重合したものが好ましい。
ここで、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、これらと共重合可能な他の単量体は、上述したゴム含有グラフト共重合体(A)で使用されたものと同様のものを使用できる。また、ビニル共重合体(C)の製造方法については、乳化、懸濁、塊状またはこれらを複合化した公知の重合方法を採用できる。
ビニル共重合体(C)は、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体を構成成分とし、かつ特定構造を有する2種類のビニル共重合体からなることが好ましい。
すなわち、質量平均分子量が50,000〜100,000で、シアン化ビニル単量体を20〜30質量%含むビニル共重合体(C−I)と、質量平均分子量が100,000〜150,000で、シアン化ビニル単量体を25〜35質量%含むビニル共重合体(C−II)とを含む混合物であり、該混合物中のビニル共重合体(C−II)含有量が20〜50質量%であることが好ましい。ビニル共重合体(C)が、このような2種類のビニル共重合体からなるものであれば、塗装性における不良現象、すなわち吸い込み現象の抑制と、めっき性能とを兼ね備えた、物性バランスのよい熱可塑性樹脂組成物が得られる。
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)を10〜30質量部、ゴム含有グラフト共重合体(B)を10〜30質量部、ビニル共重合体(C)を40〜80質量部含有する[ゴム含有グラフト共重合体(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)、およびビニル共重合体(C)の合計は100質量部である]。ここで、ゴム含有グラフト共重合体(A)およびゴム含有グラフト共重合体(B)の合計含有量が20質量部未満である(ビニル共重合体(C)の含有量が80質量部を超える)と、耐衝撃性が低くなり、また、めっき性(めっきピーリング強度)も低下する。逆に、ゴム含有グラフト共重合体(A)およびゴム含有グラフト共重合体(B)の合計含有量が60質量部を超える(ビニル共重合体(C)の含有量が40質量部未満である)と、大型成形性とめっき性(冷熱サイクル性)が低下する。
また、熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて更に、顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強剤、充填剤など各種添加剤を、その物性を損なわない範囲内において配合することができる。
熱可塑性樹脂組成物を得る方法としては特に制限はないが、ゴム含有グラフト共重合体(A)とゴム含有グラフト共重合体(B)とビニル共重合体(C)とを混合した後に溶融混練することが好ましい。溶融混練は、例えば、押出し機、バンバリーミキサー等を用いて実施することができる。
上述した熱可塑性樹脂組成物は、上述したゴム含有グラフト共重合体(A)とゴム含有グラフト共重合体(B)とビニル共重合体(C)とが特定の割合で配合されている。そのため、この熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品は、通常のABS樹脂めっき工程および塗装工程設備を用いて二次加工することができるとともに、冷熱サイクル後のめっき膨れ現象や塗装時の吸い込み現象が発生せず、また、充分なめっきピーリング強度を有している。すなわち、めっき性と塗装性の両方に優れている。しかも、成形時にフローマークやシルバーストリークと言った外観不良は発生せず、大型成形性に優れているとともに耐衝撃性、特に低温耐衝撃性と剛性のバランスも良好である。
<成形品>
本発明の成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物を成形したものである。
成形方法としては、射出成形、押出し成形、ブロー成形、真空成形など、公知の成形方法を用いることができ、特に射出成形に適している。
本発明の成形品は、大型成形性に優れた熱可塑性樹脂組成物からなるものであり、かつめっき性、塗装性、耐衝撃性、剛性に優れており、自動車用大型成形品、例えば、ラジエーターグリルやガーニッシュ等の大型外装用部品に好適である。
以下に、合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において、「部」は「質量部」を意味するものとする。
また、ゴム質重合体(a)のゲル含有量および膨潤量;ゴム含有グラフト共重合体(A)のグラフト密度およびオクルード単量体量;ゴム含有グラフト共重合体(B)に含まれる、非グラフト化スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)中のスチレン単位およびアクリロニトリル単位、並びにビニル共重合体(C)中のアクリロニトリル単位の含有量を以下のように測定した。
[ゲル含有量]
ゴム質重合体(a)のサンプルWc(g)をトルエンに室温(23℃)で20時間かけて溶解させ、次いで、100メッシュ金網で不溶分を分取し、不溶分を60℃にて24時間乾燥して、乾燥不溶分量Wg(g)を測定し、下記式で算出した。
ゲル含有量(質量%)=Wg/Wc×100
[膨潤量]
ゴム質重合体(a)をトルエンに室温(23℃)で20時間かけて溶解させ、次いで、100メッシュ金網で不溶分を分取した直後に膨潤状態の不溶分量Wsを測定し、ついで、不溶分を60℃にて24時間乾燥して、乾燥不溶分量Wg(g)を測定し、下記式で算出した。
膨潤量(倍)=Ws/Wg
[グラフト密度]
ゴム含有グラフト共重合体(A)のサンプルをアセトン中に溶解させ、遠心分離器を用いて可溶分と不溶分とに分離し、得られた不溶分X(g)をオゾン分解させた。その後、メタノールを用いてメタノール不溶分m(g)を分離、抽出した。得られたメタノール不溶分について、GPCにて質量平均分子量Mwを求め、これらの結果を基に次の計算式により算出した。
グラフト密度(%)=グラフト率/(Mw/104
グラフト率(質量%)={m/(X−m)}×100
ここで、質量平均分子量Mwは、東ソー(株)製「GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)」を用いて測定し、標準ポリスチレン換算法にて算出した。また、不溶分のオゾン分解は、次のように行った。アセトン不溶分をクロロホルム中に分散させ12時間以上静置した後、液中にオゾンを2時間通気して、ブタジエンを分解反応させた。分解反応終了は、液の透過率を測定することにより確認した。分解終了後に、液を濃縮し、メタノールを添加してポリマー成分を沈殿、濾過、乾燥してメタノール不溶分を得た。
[オクルード単量体量]
オクルード単量体量とは、ゴム質重合体の内部に位置する単量体成分の重合体量のことで、含浸前のゴム質重合体の粒子径と、グラフト重合後のゴム質重合体の粒子径を測定し、その体積増加率からオクルード単量体量を算出することができる。測定方法は、グラフト重合の前後のゴム質重合体それぞれを、オスニウム酸で染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、粒子径を計測し、平均体積増加分からオクルード単量体量として算出した。
[単量体単位含有量]
ゴム含有グラフト共重合体(B)に含まれる、非グラフト化スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)中のスチレン単位およびアクリロニトリル単位、並びにビニル共重合体(C)中のアクリロニトリル単位の含有量は、赤外スペクトルによって求めた。
<合成例1:ゴム含有グラフト共重合体(A−1)の製造>
オートクレーブに、硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、結晶ブドウ糖およびクメンハイドロパーオキサイドを除く表1の原料(ポリブタジエン(a−1)のゲル含有量は60質量%、膨潤量は32倍)を仕込み、60℃に加熱してポリブタジエン(a−1)に単量体混合物を含浸させた。そして、60℃に保持したまま30分間放置した後、その中に硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、結晶ブドウ糖およびクメンハイドロパーオキサイドを150分かけて連続添加し、続いて70℃に昇温し、これを1時間保って反応を完結させて重合体ラテックスを得た。
次いで、この重合体ラテックスに酸化防止剤を添加し、その後、硫酸を添加して重合体を凝固させ、十分水洗後、乾燥してゴム含有グラフト共重合体(A−1)を得た。
そして、得られたゴム含有グラフト共重合体(A−1)中のグラフトされた重合体の質量平均分子量、グラフト率を測定し、グラフト密度を求めた。また、オクルード単量体量を求めた。
Figure 0004741202
<合成例2:ゴム含有グラフト共重合体(A−2)の製造>
オートクレーブへの仕込量を表1に示す量に変更し、含浸時間を変更した以外は、合成例1と同様にしてゴム含有グラフト共重合体(A−2)を得た。得られたゴム含有グラフト共重合体(A−2)中のグラフトされた重合体の質量平均分子量、グラフト率を測定し、グラフト密度を求めた。また、オクルード単量体量を求めた。
<合成例3:ゴム含有グラフト共重合体(A−3)の製造>
オートクレーブに、ポリブタジエン(a−1)ラテックス70部(固形分量)、アクリロニトリル9部 、スチレン21部、表1に示す量の不均化ロジン酸カリウム、t−DMを仕込み、60℃に加熱してポリブタジエン(a−1)に単量体混合物を含浸させた。そして、60℃に保持したまま10分間放置した後、その中に、残りの単量体混合物、硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、結晶ブドウ糖およびクメンハイドロパーオキサイドを150分かけて連続添加し、続いて70℃に昇温し、これを1時間保って反応を完結させて重合体ラテックスを得た。
以後、合成例1と同様にして、ゴム含有グラフト共重合体(A−3)を得た。得られたゴム含有グラフト共重合体(A−3)中のグラフトされた重合体の質量平均分子量、グラフト率を測定し、グラフト密度を求めた。また、オクルード単量体量を求めた。
<合成例4:ゴム含有グラフト共重合体(A−4)の製造>
ポリブタジエン・ラテックスとして、ゲル含有量98質量%、膨潤量12倍のポリブタジエン(a−2)ラテックスを使用したこと以外は、合成例1と同様にして、ゴム含有グラフト共重合体(A−4)を得た。得られたゴム含有グラフト共重合体(A−4)中のグラフトされた重合体の質量平均分子量、グラフト率を測定し、グラフト密度を求めた。また、オクルード単量体量を求めた。
<合成例5:ゴム含有グラフト共重合体(A−5)の製造>
ポリブタジエン・ラテックスとして、ゲル含有量68質量%、膨潤量18倍のポリブタジエン(a−3)ラテックスを使用し、オートクレーブへの仕込量を表1に示す量に変更し、含浸時間を変更した以外は、合成例1と同様にして、ゴム含有グラフト共重合体(A−5)を得た。得られたゴム含有グラフト共重合体(A−5)中のグラフトされた重合体の質量平均分子量、グラフト率を測定し、グラフト密度を求めた。また、オクルード単量体量を求めた。
<合成例6:ゴム含有グラフト共重合体(B−1)の製造>
表2に示す粒子径分布のポリブタジエン(b−1)ラテックス(ゲル含有量は87質量%)45部(固形分量)に、スチレン40部およびアクリロニトリル15部を加え、ついでグラフト重合させてゴム含有グラフト共重合体(B−1)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(B−1)に含まれる、非グラフト化スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)の含有量は約25質量%であった。さらに、SAN中のスチレン単位とアクリロニトリル単位との質量比(スチレン単位の質量/アクリロニトリル単位の質量)は約2.7であり、SANの質量平均分子量は約98,000であった。
ここで、ポリブタジエン・ラテックスの粒子径分布は、日機装(株)製Microtrac Model:9230UPAを用いて動的光散乱法より求めた。
Figure 0004741202
<合成例7:ゴム含有グラフト共重合体(B−2)の製造>
表2に示す粒子径分布のポリブタジエン(b−2)ラテックス(ゲル含有量は85質量%)65部(固形分量)に、スチレン24.5部およびアクリロニトリル10.5部を加え、ついでグラフト重合させてゴム含有グラフト共重合体(B−2)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(B−2)に含まれる、非グラフト化スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)の含有量は約8質量%であった。さらに、SAN中のスチレン単位とアクリロニトリル単位との質量比(スチレン単位の質量/アクリロニトリル単位の質量)は約2.3であり、SANの質量平均分子量は約72,000であった。
<合成例8:ビニル共重合体(C−1)の製造>
窒素置換した反応器に表3に示す成分からなる単量体混合物を仕込み、開始温度を60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、続いて4時間反応させて重合を完結させた。その際の最終転化率は96%であり、得られたビニル共重合体(C−1)の質量平均分子量は82000 、アクリロニトリル単位の含有量は26.7質量%であった。
Figure 0004741202
<合成例9:ビニル共重合体(C−2)の製造>
反応器への仕込量を表3に示す量に変更した以外は、合成例8と同様にしてビニル共重合体(C−2)を得た。その際の最終転化率は98%で、得られたビニル共重合体(C−2)の質量平均分子量は118000 、アクリロニトリル単位の含有量は28.2質量%であった。
<合成例10:ビニル共重合体(C−3)の製造>
反応器への仕込量を表3に示す量に変更した以外は、合成例8と同様にしてビニル共重合体(C−3)を得た。その際の最終転化率は96%であり、得られたビニル共重合体(C−3)の質量平均分子量は59000、アクリロニトリル単位の含有量は39.6質量%であった。
<実施例1〜2 、比較例1〜5>
上記合成例にて得られた各重合体を表4に示す割合で配合し、220℃で2軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX−44)にて溶融混合し、ペレット化して熱可塑性樹脂組成物を得た。このペレットを2オンス射出成形機((株)東芝製)で240℃にて成形し、必要なテストピースを作成し、それぞれ以下のように評価した。その結果を表4に示す。
Figure 0004741202
[大型成形性(シルバー性)]
図1に示すような、実際のラジエーターグリルを想定した格子状の形状を持つ箱型大型成形品10(横600mm、縦200mm、奥行き40mm、肉厚2mm)を、型締め圧が550tクラスの射出成形機を用いて、市場での成形条件を参考にしてシリンダー温度235℃、射出速度50%で成形し、シルバーストリークの発生の有無を目視にて判断した。
○:シルバーストリーク発生なし。
×:シルバーストリーク発生あり。
[めっき性:ピーリング強度]
図1に示すような、ラジエーターグリルを想定した箱型大型成形品10について下記のようなめっき処理を施し、荷重測定器上でめっき膜を垂直方向に引き剥がしてその強度を測定した。
めっき工程:
次の(1)〜(15)の手順でメッキ処理した。
(1)脱脂工程(60℃×3分)→(2)水洗→(3)エッチング(CrO3 400g/l、H2SO4 200cc/l、65℃×15分)→(4)水洗→(5)酸処理(常温×1分)→(6)水洗→(7)触媒化処理(25℃×3分)→(8)水洗→(9)活性化処理(40℃×5分)→(10)水洗→(11)化学Niめっき(40℃×5分)→(12)水洗→(13)電気銅めっき(膜厚35μm 20℃×60分)→(14)水洗→(15)乾燥。
[めっき性:冷熱サイクル性]
図1に示すような、ラジエーターグリルを想定した箱型大型成形品10について下記のようなめっき処理を施し、[−40℃×1時間の冷却および80℃×1時間の加熱]を1サイクルとして5サイクルを行い、ゲート部11および格子部12におけるめっき膜の状態を観察し、下記の判定基準により評価した。
めっき工程:
次の(1)〜(17)の手順でメッキ処理した。
(1)脱脂工程(60℃×3分)→(2)水洗→(3)エッチング(CrO3 400g/l、H2SO4 200cc/l、65℃×15分)→(4)水洗→(5)酸処理(常温×1分)→(6)水洗→(7)触媒化処理(25℃×3分)→(8)水洗→(9)活性化処理(40℃×5分)→(10)水洗→(11)化学Niめっき(40℃×5分)→(12)水洗→(13)電気銅めっき(膜厚20μm 20℃×20分)→(14)水洗→(15)電気Niめっき(膜厚10μm 55℃×15分)→(16)水洗→(17)電気Crめっき(膜厚0.3μm 45℃×2分)。
判定基準:
○:変化なし。
△:若干膨れ。
×:膨れ。
××:大きく膨れ。
×××:全面に膨れ。
[塗装性]
平板テストピース(160mm×60mm×2.5mm厚)に、常温にて2液ウレタン系塗料(レタンPG60:関西ペイント社製)をスプレー塗装した。
得られた塗装成形品のサイド2点のゲート付近に発生する吸い込み現象を肉眼で観察して下記のような判断基準で評価した。
○:全く発生せず。
△:一部発生。
×:著しい発生。
[耐衝撃性]
厚みが1/4インチの試験片を用い、アイゾット衝撃強度(単位:J/m)をASTM−D256に準拠して−30℃にて測定した。
[剛性]
ASTM −D790に準拠して、曲げ弾性率(単位:MPa)を常温にて測定した。
[メルトボリュームレート(MVR)]
ISO 1133(220℃/10min)に準拠して、メルトボリュームレート(単位:cm3 /10min)を測定した。
[表面外観]
表面外観を観察するために、平板成形品(100mm×100mm×3mm厚)の金型を用いて、成形温度:260℃、金型温度:60℃、射出時間:4秒、射出圧力:SSP(最小充填圧力)+1%、の条件にて成形した。1サンプルあたり5枚成形し、成形品表面上0.1mm以上のブツの個数を数え、5枚中の合計数を求めた。0〜5個であれば○、6〜10個未満を△、10個以上を×とし、○を合格品とした。
実施例1、2の熱可塑性樹脂組成物は、成形領域幅が広く、大型成形性に優れているとともに、めっき性に優れ、塗装時の吸い込み現象が抑制され、また耐衝撃性および剛性のバランスが良好であった。
比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)のグラフト密度が本発明の範囲外であり、ゴム含有グラフト共重合体(B)が含まれていなかったので、めっき性(ピーリング強度、冷熱サイクル性)、物性バランスが低下した。
比較例2の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム質重合体(a)のゲル含有量および膨潤量が本発明の範囲外であり、ゴム含有グラフト共重合体(B)が含まれていなかったので、大型成形性、めっき性(ピーリング強度、冷熱サイクル性)、物性バランスが低下した。
比較例3の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム質重合体(a)のゲル含有量および膨潤量が本発明の範囲外であり、ゴム質重合体(b)の粒子径分布が本発明の範囲外であったので、大型成形性、耐衝撃性、めっき性(ピーリング強度、冷熱サイクル性)が低下した。
比較例4の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム質重合体(a)の膨潤量が本発明の範囲外であり、ゴム含有グラフト共重合体(B)が含まれていなかったので、大型成形性、めっき性(ピーリング強度、冷熱サイクル性)、物性バランスのいずれも低下した。
比較例5の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム質重合体(a)の膨潤量が本発明の範囲外であったので、大型成形性、めっき性(ピーリング強度、冷熱サイクル性)、物性バランスのいずれも低下した。
以上の結果から、本発明に従って、特定の2種のゴム含有グラフト共重合体とビニル共重合体とを特定樹脂組成比率で配合した熱可塑性樹脂組成物は、大型成形性、めっき性および塗装性のいずれにおいても優れており、かつ、耐衝撃性および剛性のバランスも良好であることがわかった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、大型の自動車用部品等の成形材料として、その工業的な実用価値は極めて大きい。また、本発明の成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物からなるものであり、大型成形性、めっき性、塗装性、耐衝撃性、剛性に優れ、ラジエーターグリルやガーニッシュ等の大型の自動車用外装部品等に極めて有用である。
実施例の評価に用いた、格子状の形状を持つ箱型大型成形品を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
符号の説明
10 箱型大型成形品(成形品)

Claims (6)

  1. ゲル含有量が50〜70質量%、かつ膨潤量が20〜50倍であるポリブタジエンからなるゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体を含有する単量体混合物の一部または全量を含浸させ、グラフト密度%の範囲でグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)10〜30質量部と、
    粒子径が100〜600nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が85質量%を超えて含まれ、かつ粒子径が600〜2000nmの範囲にあるゴム質重合体粒子が5質量%を超えて含まれ、ゲル含有量が80〜95質量%であるポリブタジエンからなるゴム質重合体(b)に、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体がグラフト密度5〜8%の範囲でグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(B)10〜30質量部と、
    芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位が含まれているビニル共重合体(C)40〜80質量部と
    を含有する[ゴム含有グラフト共重合体(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)、およびビニル共重合体(C)の合計は100質量部である]ことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記ビニル共重合体(C)が、芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位のみからなることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(a)が、オクルード構造を有し、オクルード単量体量が、ゴム質重合体(a)に重合する全単量体成分中の18〜23質量%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ビニル共重合体(C)が、質量平均分子量が50,000〜100,000で、シアン化ビニル単量体を20〜30質量%含むビニル共重合体(C−I)と、質量平均分子量が100,000〜150,000で、シアン化ビニル単量体を25〜35質量%含むビニル共重合体(C−II)とを含む混合物であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記混合物中のビニル共重合体(C−II)含有量が、20〜50質量%であることを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形した成形品。
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