JP6853737B2 - ポリアセタールコポリマーの製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1,2では、上述したポリアセタールコポリマーを、三フッ化ホウ素またはその配位化合物を重合触媒として用いて製造する方法や、ヘテロポリ酸やイソポリ酸またはその酸製塩を重合触媒として用いて製造する方法が提案されている。また、例えば、特許文献3では、上述したポリアセタールコポリマーを、パーフルオロアルキルスルホン酸やその誘導体を重合触媒として用いて製造する方法が提案されている。
〔1〕
トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとの重合を行う工程を含む、ポリアセタールコポリマーの製造方法であって、
前記重合は、カチオン重合触媒および触媒助剤の存在下で行われ、
前記カチオン重合触媒が、周期表の第3周期から第6周期、かつ、第3族から第16族の金属元素を有する金属ハロゲン化物であり、
前記触媒助剤が、ハロゲン化水素である、
ことを特徴とする、ポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔2〕
前記カチオン重合触媒が金属塩化物である、項目〔1〕に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔3〕
前記カチオン重合触媒の添加量が、トリオキサン1molに対して、1×10−8〜1×10−5molの範囲である、項目〔1〕または〔2〕に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔4〕
前記カチオン重合触媒が、三塩化鉄または三塩化ガリウムである、項目〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
本実施の形態に用いるトリオキサンは、例えば、酸性触媒の存在下でホルムアルデヒドを反応させることにより製造することができる。このようにして得られるトリオキサンは、通常、水、ギ酸などの連鎖移動可能な成分(不純物)を含有している。これら連鎖移動可能な成分が含まれていると、重合により得られるポリアセタールコポリマーのポリマー末端基が熱的に不安定な状態となり、熱安定性の高いポリアセタールコポリマーを得ることが難しくなる。そのため、これら連鎖移動可能な成分(不純物)を、重合開始までに、一定濃度まで精製除去することが好ましい。トリオキサンにおけるこれら連鎖移動可能な成分(不純物)の合計含有量は、トリオキサンに対して100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、30質量ppm以下であることがさらに好ましい。これら連鎖移動可能な成分(不純物)の含有量が前記範囲内にあるトリオキサンを用いれば、熱安定性により優れたポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
本実施の形態に用いる環状エーテルおよび/または環状ホルマールは、トリオキサンと共重合可能な成分(コモノマー成分)である。具体的に、環状エーテルおよび/または環状ホルマールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキセタン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施の形態に用いるカチオン重合触媒は、周期表の第3周期から第6周期、かつ、第3族から第16族の金属元素を有する、金属ハロゲン化物である。
これらの金属ハロゲン化物をカチオン重合触媒として用いた場合には、重合反応機内で重合触媒が揮発することなく、一定にカチオン重合触媒をフィードできるため、重合収率のばらつきが少なく、より安定的にポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
本実施の形態に用いる触媒助剤は、ハロゲン化水素である。また、本実施の形態に用いる触媒助剤は、通常、それ単独では重合触媒作用を有さないものである。本発明者らは、驚くべきことに、ハロゲン化水素である触媒助剤を、上述した特定のカチオン重合触媒と併用して重合を行うことで、得られるポリアセタールコポリマーの高分子量化およびホルムアルデヒド発生量の低減、ならびに、高い重合収率、および製造時の安定化を、同時に達成することができることを見出した。
さらに、本実施の形態では、上述した併用により、ポリアセタールコポリマーの高重合収率化を短時間で達成できる、という効果を得ることもできる。
本実施の形態においては、分子量調整剤として、低分子量アセタール化合物を使用してもよい。低分子量アセタール化合物は、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとの重合時に連鎖移動剤として機能するものであり、分子量が200以下、好ましくは60〜170のアセタール化合物である。具体的に、分子量調整剤としては、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラールを好適に挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合時における低分子量アセタール化合物の添加量は、ポリアセタールコポリマーの分子量を好適な範囲に制御する観点から、トリオキサン1molに対して0.1×10−4〜0.6×10−2molの範囲内であることが好ましい。
ポリアセタールコポリマーは、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを重合させて得ることができる。ポリアセタールコポリマーは、例えば、塊状法でのカチオン重合により重合されるものである。また、使用する重合反応機の形状(構造)としては、特に限定するものではないが、一般的には、ジャケットに熱媒を通すことのできる2軸のパドル式やスクリュー式の撹拌混合型重合反応機を好適に使用することができる。
重合反応機内の滞留(反応)時間は、好ましくは0.1〜30分であり、より好ましくは0.1〜25分であり、さらに好ましくは0.1〜20分である。
重合反応温度および重合反応機内の滞留時間をそれぞれ上記の範囲に調整することにより、ポリアセタールコポリマーの熱分解をより効果的に抑えることができ、熱的により安定なポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
ガラス試験管に対し、撹拌子を入れ、また、各例における重合反応機へのフィード組成に従うようにして、トリオキサン10mLと、環状エーテルおよび/または環状ホルマールとしての1,3−ジオキソラン0.4mLと、触媒助剤の希釈液(比較例1〜9では不使用)とを添加した後、重合触媒の希釈液を添加して、重合を開始した。そして、重合触媒を添加してから反応液が白濁するまでの時間(秒)を測定した。測定値が小さいほど、より短時間で高い重合収率のポリアセタールコポリマーが得られることを示す。なお、60秒以上経過しても反応液が白濁しなかった場合は、「−(測定値なし)」と評価した。
重合を行う際に、重合触媒の希釈液および触媒助剤の希釈液のフィード開始から1時間慣らし運転を行った後、重合反応機から排出されたポリアセタールコポリマーの1時間当たりの排出量を計量した。そして、この計量値を、重合反応機にフィードした全モノマー成分の1時間当たりの量で割り返して、重合収率(質量%)を求めた。
重合を行う際に、トリオキサンや重合触媒等のフィード口の詰まり等による重合停止が起こらず、50時間連続で運転できた場合を「○」、50時間連続で運転できず、途中で重合停止が発生した場合を「×」とし、また、重合が開始すらしなかった場合を「−」として評価した。
ポリアセタールコポリマー乾燥パウダーに関して、熱重量分析計(株式会社リガク製、TG/DTA)を用い、窒素雰囲気下で30℃/minで200℃まで昇温した後、90分ホールドした。そして、そのときの重量減少率(質量%)を測定した。測定値が小さいほど、熱安定性に優れるとともに、ホルムアルデヒドの発生量が少ないことを示す。なお、ポリアセタールコポリマーが重合反応機より全く又は極めて少量だけしか排出されなかった場合には、「−(測定値なし)」と評価した。
ポリアセタールコポリマー乾燥パウダーを1mg/mLの濃度でヘキサフルオロイソプロパノール中に溶解させ、溶液を得た。得られた溶液を用い、ゲル濾過クロマトグラフィー(装置:東ソー株式会社製HLC−8120、検出器:示差屈折計(RI)、カラム:東ソー株式会社製PLgel10μmミニミックスB)により、分子量分布の測定を行った。なお、キャリア溶媒としては、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いた。この測定により得られたチャートに関して、分子量既知のポリメチルメタクリレートを標準物質とした検量線を用いて分子量換算し、最大ピークのピークトップの値を読み取り、ピークトップ分子量MPとして比較に用いた。なお、ポリアセタールコポリマーが重合反応機より全く又は極めて少量だけしか排出されなかった場合には、「−(測定値なし)」と評価した。
重合反応機として、80℃に設定した同方向回転の2軸型パドル式連続重合反応機(株式会社栗本鐵工所社製、径2B、L/D=14.8)を用いた。なお、酸素混入を防止するため、重合反応機のフィード口付近から、1時間当たり60Lの窒素を流した。そして、重合反応機に、トリオキサン(水分濃度:4ppm、ギ酸濃度:5ppm、表中では「TOX」とも示す。)を4000g/hrでフィードした。また、トリオキサン1molに対して0.045mol(148.0g/hr)の環状エーテルおよび/または環状ホルマールとしての1,3−ジオキソランを、重合反応機にフィードした。さらに、触媒助剤としての塩化水素を、希釈溶媒としての1,4−ジオキサンを用いて希釈し(触媒助剤:希釈溶媒=1.0×10−4:0.01(モル比)となるような割合で)、得られた触媒助剤の希釈液を、触媒助剤の添加量が表1に示す量となるように重合反応機にフィードした。その後、重合触媒としての三塩化鉄を希釈溶媒としての1,4−ジオキサンを用いて適切な割合で希釈し、得られた重合触媒の希釈液を、重合触媒の添加量および希釈溶媒の添加量が表1に示す量となるように重合反応機にフィードした。この重合触媒の希釈液のフィードにより、重合を開始した。そして、この重合の際に、重合収率の測定および安定運転性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
なお、トリオキサン、1,3−ジオキソラン、触媒助剤の希釈液、および重合触媒の希釈液は、重合反応機に設置したパドル部に達するまで互いに接触することができないように別々のラインで供給した。
重合触媒の種類、重合触媒の添加量および触媒助剤の種類の少なくともいずれかを表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、各成分を重合反応機にフィードし、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
触媒助剤およびその希釈溶媒を用いなかったこと、ならびに、重合触媒の種類、重合触媒の添加量および重合触媒用の希釈溶媒の種類の少なくともいずれかを表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、各成分を重合反応機にフィードし、各種測定・評価を行った。なお、比較例5では、2種類の重合触媒の希釈液を重合反応機にフィードした。結果を表1に示す。
重合触媒およびその希釈溶媒を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、各成分を重合反応機にフィードし、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
触媒助剤として、塩化水素に代えて臭化水素を用いたこと以外は、比較例10と同様にして、各成分を重合反応機にフィードし、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
重合触媒の種類、重合触媒の添加量および重合触媒用の希釈溶媒の種類の少なくともいずれかを表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、各成分を重合反応機にフィードし、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
これに対し、比較例1〜13では、ポリアセタールコポリマーの高分子量化、ホルムアルデヒド発生量の低減、高い重合収率、および製造時の安定化の少なくともいずれかが達成できていないことが分かる。
Claims (4)
- トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとの重合を行う工程を含む、ポリアセタールコポリマーの製造方法であって、
前記重合は、カチオン重合触媒および触媒助剤の存在下で行われ、
前記カチオン重合触媒が、周期表の第3周期から第6周期、かつ、第3族から第16族の金属元素を有する金属ハロゲン化物であり、
前記触媒助剤が、ハロゲン化水素である、
ことを特徴とする、ポリアセタールコポリマーの製造方法。 - 前記カチオン重合触媒が金属塩化物である、請求項1に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
- 前記カチオン重合触媒の添加量が、トリオキサン1molに対して、1×10−8〜1×10−5molの範囲である、請求項1または2に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
- 前記カチオン重合触媒が、三塩化鉄または三塩化ガリウムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
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