JP5829569B2 - ポリアセタール共重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は以下の通りである。
トリオキサンと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとを、少なくとも一種のカチオン活性触媒の存在下で、共重合させる重合工程と、
該重合工程により得られた粗ポリアセタール共重合体を、pH5〜7の水溶液と接触させて、前記カチオン活性触媒の失活化を行なう失活工程と、
を含み、
前記pH5〜7の水溶液が、蒸留水、脱イオン水、及び水道水からなる群より選ばれる少なくともいずれか1種である、
ポリアセタール共重合体の製造方法。
〔2〕
前記失活工程が30℃〜95℃の範囲で行われる、前項〔1〕に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
〔3〕
前記失活工程において、前記粗ポリアセタール共重合体を、前記水溶液と、スラリー状態で接触させる、前項〔1〕又は〔2〕に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
〔4〕
前記カチオン活性触媒が、フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、及び三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラートからなる群より選ばれる少なくともいずれか1種である、前項〔1〕乃至〔3〕のいずれか1項に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
〔5〕
前記重合工程前に、前記環状エーテル及び/又は前記環状ホルマールと、前記カチオン活性触媒と、有機溶剤とを予め混合し、プレ混合物を得るプレ混合工程を有する、前項〔1〕乃至〔4〕いずれか一項に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
〔6〕
前記プレ混合工程において、前記カチオン活性触媒と前記有機溶剤とを、15℃以上有機溶剤の沸点未満の温度条件下で混合する、前項〔5〕に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
〔7〕
前記有機溶剤が、n−ヘキサン、n−ヘプタン、及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくともいずれか1種である、前項〔5〕又は〔6〕に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
本実施形態のポリアセタール共重合体の製造方法は、トリオキサンと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとを、少なくとも一種のカチオン活性触媒の存在下で、共重合させる重合工程と、
該重合工程により得られた粗ポリアセタール共重合体を、pH7以下の水溶液と接触させて、前記カチオン活性触媒の失活化を行なう失活工程と、を含む。
本実施形態のポリアセタール共重合体の製造方法において用いる材料について説明する。
トリオキサンとは、ホルムアルデヒドの環状3量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルマリン水溶液を反応させることにより得られる。このトリオキサンは、水、メタノール、蟻酸、蟻酸メチル等の連鎖移動させる不純物を含有している場合があるので、例えば蒸留等の方法でこれら不純物を除去精製することが好ましい。
環状エーテル及び/又は環状ホルマールは、トリオキサンと共重合可能な成分である。環状エーテル及び/又は環状ホルマールは、特に限定されないが、具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクルロルヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキサタン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられる。この中でも、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
重合触媒としては、少なくとも1種のカチオン活性触媒を用いれば特に限定されないが、具体的には、ルイス酸に代表されるホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモン化物が挙げられる。この中でも、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素系水和物、又は酸素原子若しくは硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましい。このようなカチオン活性触媒としては、例えば、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、及び三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラートからなる群より選ばれる少なくともいずれか1種であることが好ましい。このようなカチオン活性触媒であれば、pH7以下の水溶液で失活しやすい。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
pH7以下の水溶液は、触媒の失活工程で用いる。このようにpH7以下である水溶液を使うことで、従来のアルカリ性化合物を用いる場合と比較し、潜在的に発生するホルムアルデヒドの発生量を抑制することができる。
本実施形態のポリアセタール共重合体の製造方法では、低分子量アセタール化合物を、後述する重合工程において連鎖移動剤として用いることができる。このような低分子量アセタール化合物は、特に限定されないが、具体的には、好ましくは分子量が200以下、より好ましくは60〜170のアセタール化合物である。このような低分子量アセタール化合物としては、特に限定されないが、具体的には、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラールを好適例として挙げることができる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のポリアセタール共重合体の製造方法では、後述するプレ混合工程において、有機溶剤を用いることができる。このような有機溶剤としては、特に限定されないが、具体的には、ベンゼン(沸点80℃)、トルエン(沸点110.63℃)、キシレン(沸点144℃)のような芳香族炭化水素;n−ヘキサン(沸点69℃)、n−ヘプタン(沸点98℃)、シクロヘキサン(沸点80.74℃)のような脂肪族炭化水素;クロロホルム(沸点61.2℃)、ジクロロメタン(沸点40℃)、四塩化炭素(沸点76.8℃)のようなハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル(沸点35℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、1,4−ジオキサン(沸点101.1℃)のようなエーテル類等が挙げられる。この中でも、特に重合反応機内でのタール状析出物の抑制の観点から、n−ヘキサン、n−ヘプタン、及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくともいずれか1種であることが好ましい。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のポリアセタール共重合体の製造方法は、後述する重合工程の前に、前記環状エーテル及び/又は前記環状ホルマールと前記カチオン活性触媒と前記有機溶剤とを予め混合し(以下、「プレ混合」ともいう。)、プレ混合物を得るプレ混合工程を有することができる。
本実施形態のポリアセタール共重合体の製造方法において、重合工程は、トリオキサンと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとを、少なくとも一種のカチオン活性触媒の存在下で、共重合させる工程である。この重合工程により、失活工程前の粗ポリアセタール共重合体を得る。
本実施形態のポリアセタール共重合体の製造方法において、失活工程は、重合工程により得られた粗ポリアセタール共重合体を、pH7以下の水溶液と接触させて、カチオン活性触媒の失活化を行なう工程である。
<重合収率>
重合反応機から排出された粗ポリアセタール共重合体の単位時間当りの排出量を、全モノマーの単位時間当りのフィード量で除した値の百分率(%)を、重合収率として算出した。
後述するように押出機でペレタイズされた、ポリアセタールペレット20.0gを蒸留水40.0gに60℃で3時間浸漬させ、蒸留水に抽出されたホルムアルデヒドをアセチルアセトン法により定量した。これにより、潜在的なホルムアルデヒド発生量を定量した。
失活工程中の失活槽内の流れを目視にて確認し、流動が均一に行なわれているかを判定した。
均一な流動が見られる場合 ○
均一な流動が見られない場合 ×
失活工程に用いる水溶液を、pH試験紙(東洋濾紙製)により測定した。具体的には、調合した水溶液をスポイトで吸い取り、pH試験紙に一滴たらし、色を確認することでpHを測定した。
失活工程後のポリアセタール共重合体溶液をろ過後、ポリアセタール共重合体15kgを、真空乾燥器(東京理化器械製:VOS―451SD)に仕込み120℃に設定した。乾燥開始5時間後、出口側の配管をはずし、内部を以下の基準で目視にて確認した。
何も付着が無い場合 ○
付着物があった場合 ×
付着物は僅かに確認できた場合 △
失活工程後のポリアセタール共重合体溶液をろ過したろ液を80g採取し、100mlのガラス瓶に入れ、5℃で3時間に冷却後、晶析した白色固形物の高さと、ろ液の高さ(mm)を計測した。固形物の高さをろ液の高さ(mm)で除した数値を記載した。数値が高いほど単位ろ液当りの白色固形物回収率が高いことを示す。
失活工程後のポリアセタール共重合体溶液をろ過したろ液を80g採取し、300mlのナスフラスコに入れサンプル液とした。これを、90℃にてエバポレーターを用い蒸留性の確認を行なった。揮発成分は凝縮され、凝縮液として回収した。
(i)残ったサンプル液の性状、及び(ii)回収した凝縮液を確認した。
(i)については、残渣の有無、ある場合はその性状を記載した。
(ii)については、トリオキサン、ホルムアルデヒド、又は1,3−ジオキソラン以外の匂いがあった場合、その匂いの種類について記載した。
熱媒を通すことのできるジャケット付き2軸パドル型連続重合反応機(栗本鐵工所製、径2B、L/D=14.8(L:重合反応機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合反応機の内径(m)。以下、同じ。))を80℃に調整した。
重合触媒として三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラート0.11g/hr、有機溶剤としてシクロヘキサン(沸点:80.74℃)6.5g/hrを先ず温度28℃にて連続的に混合し、次に環状エーテル及び/又は環状ホルマールとして1,3−ジオキソラン120.9g/hrを、温度25℃、混合時間2分にて連続的にプレ混合し、プレ混合液を得た。このプレ混合にはスタティックミキサーを用いた。
前記プレ混合液127.58g/hrと、トリオキサン3500g/hrに低分子量アセタール化合物としてメチラール2.4g/hrを配管にて連続的に混合した混合液とを、別々の配管にて同時に重合反応機に連続的に供給し重合を行い、粗ポリアセタール共重合体を得た。運転は終始安定に運転され、10時間運転後、重合機供給部にはスケールが確認されなかった。収率は77%であった。この方法で製造する粗ポリアセタール共重合体をPOM−1とした。
熱媒を通すことのできるジャケット付き2軸パドル型連続重合反応機(栗本鐵工所製、径2B、L/D=14.8)を80℃に調整した。
重合触媒として三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラート0.18g/hrと、有機溶剤としてシクロヘキサン6.5g/hrとを温度10℃にて連続的に混合した混合液と、低分子量アセタール化合物としてメチラール2.4g/hrと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとして1,3−ジオキソラン120.9g/hrを、トリオキサン3500g/hrに連続的に混合した混合液とを、別々の配管にて同時に重合反応機に連続的に供給し重合を行い、粗ポリアセタール共重合体を得た。運転は終始安定に運転され、10時間運転後、重合機供給部に若干のスケールが確認された。収率は75%であった。この方法で製造する粗ポリアセタール共重合体をPOM−2とした。
メチラールを0.2g/hrの条件で使用した以外は製造例1と同様に実施し、粗ポリアセタール共重合体を得た。運転は終始安定に運転され、10時間運転後、重合機供給部にはスケールが確認されなかった。収率は77%であった。この方法で製造する粗ポリアセタール共重合体をPOM−3とした。
メチラールを0.2g/hrの条件で使用した以外は製造例2と同様に実施し、粗ポリアセタール共重合体を得た。運転は終始安定に運転され、10時間運転後、重合機供給部に若干のスケールが確認された。収率は75%であった。この方法で製造する粗ポリアセタール共重合体をPOM−4とした。
(失活工程)
重合反応機から排出されたPOM−1を、撹拌タービン翼及びバッフル、失活槽上部のベントガスラインに還流冷却器、失活槽側面にオーバーフローラインを具備する15リットルのジャケット付き失活槽に連続的に導入した。プランジャーポンプにより、失活槽に14.5kg/hrの流量で蒸留水(pH7)を送液した。失活槽は60℃に制御され、滞留時間は52分であった。オーバーフローラインより排出されるスラリーをろ過し、ポリアセタール共重合体を得た。
失活槽の容積、粗ポリアセタールの種類、洗浄槽の温度、洗浄槽に供給する水溶液の量、水溶液に溶解させた添加剤の種類及び量を、下記表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様にして失活工程及びポリアセタール共重合体のペレット化を行なった。
評価結果を下記表1に示す。
粗ポリアセタールの種類、洗浄槽の温度、洗浄槽に供給する水溶液の量、水溶液に溶解させた添加剤の種類及び量を、下記表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様にして失活工程及びポリアセタール共重合体のペレット化を行なった。
評価結果を下記表2に示す。
Claims (7)
- トリオキサンと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとを、少なくとも一種のカチオン活性触媒の存在下で、共重合させる重合工程と、
該重合工程により得られた粗ポリアセタール共重合体を、pH5〜7の水溶液と接触させて、前記カチオン活性触媒の失活化を行なう失活工程と、
を含み、
前記pH5〜7の水溶液が、蒸留水、脱イオン水、及び水道水からなる群より選ばれる少なくともいずれか1種である、
ポリアセタール共重合体の製造方法。 - 前記失活工程が30℃〜95℃の範囲で行われる、請求項1に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
- 前記失活工程において、前記粗ポリアセタール共重合体を、前記水溶液と、スラリー状態で接触させる、請求項1又は2に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
- 前記カチオン活性触媒が、フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、及び三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラートからなる群より選ばれる少なくともいずれか1種である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
- 前記重合工程前に、前記環状エーテル及び/又は前記環状ホルマールと、前記カチオン活性触媒と、有機溶剤とを予め混合し、プレ混合物を得るプレ混合工程を有する、請求項1乃至4いずれか一項に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
- 前記プレ混合工程において、前記カチオン活性触媒と前記有機溶剤とを、15℃以上有機溶剤の沸点未満の温度条件下で混合する、請求項5に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
- 前記有機溶剤が、n−ヘキサン、n−ヘプタン、及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくともいずれか1種である、請求項5又は6に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
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