JP6938180B2 - ポリアセタールコポリマーの製造方法 - Google Patents
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Description
〔1〕
トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを重合触媒の存在下で重合させることによりポリアセタールコポリマーを製造する方法において、該重合触媒が、周期表の第3周期から第6周期、かつ、第3族から第16族である金属元素を有する金属ハロゲン化物である、ポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔2〕
前記重合触媒は、20℃における水100gへの溶解度が1g以上である、項目〔1〕に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔3〕
前記重合触媒が金属塩化物である、項目〔1〕または〔2〕に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔4〕
前記重合触媒は、100℃における蒸気圧が30kPa以下である、項目〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔5〕
前記重合触媒の添加量が、トリオキサン1molに対して、1×10−8〜1×10−3molの範囲である、項目〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔6〕
前記重合触媒が、三塩化鉄または三塩化ガリウムである、項目〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
本実施の形態に用いるトリオキサンは、例えば、酸性触媒の存在下でホルムアルデヒドを反応させることにより製造することができる。このようにして得られるトリオキサンは、通常、水、ギ酸などの連鎖移動可能な成分(不純物)を含有している。これら連鎖移動可能な成分が含まれていると、重合により得られるポリアセタールコポリマーのポリマー末端基が熱的に不安定な状態となり、熱安定性の高いポリアセタールコポリマーを得ることが難しくなる。そのため、これら連鎖移動可能な成分(不純物)を、重合開始までに、一定濃度まで精製除去することが好ましい。トリオキサンにおけるこれら連鎖移動可能な成分(不純物)の合計含有量は、トリオキサンに対して100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることが好ましく、30質量ppm以下であることがさらに好ましい。これら連鎖移動可能な成分(不純物)の含有量が前記範囲内にあるトリオキサンを用いれば、熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
本実施の形態に用いる環状エーテルおよび/または環状ホルマールは、トリオキサンと共重合可能な成分(コモノマー成分)である。具体的に、環状エーテルおよび/または環状ホルマールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキセタン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施の形態に用いる重合触媒は、周期表の第3周期から第6周期、かつ、第3族から第16族である金属元素を有する、金属ハロゲン化物である。この重合触媒を用いることで、熱安定性の高いポリアセタールコポリマーを得ることができる。加えて、この重合触媒を用いることで、タール状ポリマーや塊状ポリマーの析出を抑え、重合反応用装置の振動やスクリュー等の部品の削れが抑制されて、装置を安定的に運転または使用することができる。
これらの金属ハロゲン化物を重合触媒として用いた場合には、重合反応用装置内で重合触媒が揮発することなく、一定に重合触媒をフィードできるため、重合収率のばらつきが少なく(収率安定性が高く)、より安定的にポリアセタールコポリマーを製造できる傾向にある。
なお、重合触媒の20℃における水100gへの溶解度は、実施例に記載の方法により、測定することができる。
なお、重合触媒の100℃における蒸気圧は、実施例に記載の方法により、測定することができる。
本実施の形態においては、分子量調整剤として、低分子量アセタール化合物を使用してもよい。低分子量アセタール化合物は、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとの重合時に連鎖移動剤として機能するものであり、分子量が200以下、好ましくは60〜170のアセタール化合物である。具体的に、分子量調整剤としては、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラールを好適に挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合時における低分子量アセタール化合物の添加量は、ポリアセタールコポリマーの分子量を好適な範囲に制御する観点から、トリオキサン1molに対して0.1×10−4〜0.6×10−2molの範囲内であることが好ましい。
ポリアセタールコポリマーは、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを、上述した重合触媒の存在下で重合させて得ることができる。ポリアセタールコポリマーは、塊状法でのカチオン重合により重合されるものである。また、使用する重合反応用装置の形状(構造)としては、特に限定するものではないが、一般的には、ジャケットに熱媒を通すことのできる2軸のパドル式やスクリュー式の撹拌混合型重合反応機を好適に使用することができる。
重合反応用装置内の滞留(反応)時間は、0.1〜30分であることが好ましく、0.1〜25分であることがより好ましく、0.1〜20分であることがさらに好ましい。
重合反応温度および重合反応用装置内の滞留時間をそれぞれ上記の範囲に調整することにより、ポリアセタールコポリマーの熱分解をより効果的に抑えることができ、熱的により安定なポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
各重合触媒の100℃における蒸気圧を、静止法により測定した。具体的には、真空引きした密閉装置内に各重合触媒を封入し、圧力計を用いて、100℃における平衡蒸気圧を測定した。そして、100℃における蒸気圧が、10kPaに満たないものを「<10kPa」、10kPa以上20kPa未満のものを「<20kPa」、20kPa以上30kPa未満のものを「<30kPa」、30kPa以上のものを「≧30kPa」とした。結果を表1に示す。
各重合触媒の20℃における水100gへの溶解度を測定した。具体的には、20℃の水100gに各重合触媒を添加し、分離することなく溶解する添加量を最大で10gまで評価した。重合触媒の添加量が10gでも分離することなく溶解するものは、「≧10g」とし、溶解度は高いと評価した。また、水と混合した際に白煙を生じる等の反応性があるものについては、溶解度の測定を最後まで行わず、「分解する」とした。結果を表1に示す。
重合反応機から排出されたポリアセタールコポリマーの単位時間当たりの排出量を計量し、この計量値を重合反応機にフィードした全モノマーの単位時間当たりの量で割り返して、重合収率を求めた。具体的には、2点のトリオキサンフィード量の条件(2000g/hrおよび4000g/hr)での重合収率の測定をそれぞれ実施し、変動値(両者の重合収率の差)が3%以下の場合は、○(収率安定性が高い)と評価した。また、変動値が3%より大きい場合は△(収率安定性が低い)と評価した。
ホソカワミクロン株式会社製のパウダーテスターPT−E型に付属の安息角測定用脚付円盤(直径8cm)に、市販のポリエチレン(旭化成株式会社製、「サンテック−LD L1850A」)のペレットを、円盤面から10cmの高さから、ロートを用いて円盤面からこぼれ落ちるまで堆積させた。ペレットを堆積させた脚付円盤を重合反応機上に配置し、重合反応に起因した重合反応機の振動によりこぼれたペレットの量を数えた。こぼれたペレットが50粒以下の場合は○とし、振動が小さいと評価し、また、こぼれたペレットが50粒より多い場合は×とし、振動が大きいと評価して、重合反応用装置を安定的に運転できるか否かの尺度とした。
洗浄除去および乾燥後に得られたポリアセタールコポリマーの内、100gをるつぼに入れ、電気炉で450℃で2時間加熱した。加熱後、るつぼ中の残存物量を、スクリュー削れによりコンタミした金属量として計量した。残存物量が50mg以上の場合はスクリュー削れ「多」とし、10mg以上50mg未満の場合はスクリュー削れ「少」とし、10mg未満の場合はスクリュー削れ「無」として、重合反応用装置を安定的に運転できるか否かの尺度とした。
乾燥させて得られたポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機設定温度200℃、滞留時間5分で不安定末端部の分解を行い、押出機ダイス部よりストランドとして押し出してペレタイズした。このペレットにさらに、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]を添加混合し、ベント付き短軸押出機で溶融混練することにより、ポリアセタール樹脂組成物を得た。窒素気流下において、ポリアセタール樹脂組成物1gを190℃で加熱溶融し、30分間で発生するホルムアルデヒドを水に吸収した後、亜硫酸ソーダ法により適定し測定した。測定に用いたポリアセタール樹脂組成物量に対し、30分間の加熱で発生した総ホルムアルデヒド量の割合を算出し、これによりポリアセタール樹脂組成物の熱安定性を評価した。上記の方法で測定した総ホルムアルデヒド量が500ppm以下の時は〇とし、熱安定性に優れるとした。一方で、総ホルムアルデヒド量が500ppmより多く、1000ppm以下の時は△とし、熱安定性はやや高いとした。さらに、総ホルムアルデヒド量が1000ppmより多い、あるいは発泡等によりペレタイズが不可または困難であった時は×とし、熱安定性が低いと評価した。
(収率安定性およびポリアセタールコポリマーの熱安定性の評価のためのポリアセタールコポリマーの製造)
重合反応用装置として、80℃に設定した同方向回転の2軸型パドル式連続重合反応機(株式会社栗本鐵工所社製、径2B、L/D=14.8)を用いた。なお、酸素混入を防止するため、重合反応機のフィード口付近から、1時間当たり60Lの窒素を流した。そして、重合反応機に、トリオキサン(水分濃度:4ppm、ギ酸濃度:5ppm)を2000g/hrでフィードした。また、トリオキサン1molに対して0.045mol(74.0g/hr)の環状エーテルおよび/または環状ホルマールとしての1,3−ジオキソランを、重合反応機にフィードした。さらに、トリオキサン1molに対して4×10−3mol(6.8g/hr)のメチラール(分子量調整剤)を重合反応機にフィードした。また、重合触媒としてのCAT−1を、あらかじめ有機溶媒としての1,4−ジオキサンを用いて3.5×10−3mol/Lの濃度になるように希釈し、トリオキサン1molに対して重合触媒が0.2×10−4molとなるように、重合反応機にフィードした(7.1×10−2g/hr)。以下、各成分に関するこのフィード条件を、「フィード条件1」と称することとする。
なお、トリオキサン、1,3−ジオキソランおよびメチラールの原料モノマーと、重合触媒の希釈溶液とは、重合反応機に設置したパドル部に達するまで互いに接触することがないように別々のラインで供給した。
重合反応開始から1時間後、上述した方法で重合収率(トリオキサンのフィード量が2000g/hrの時)を測定した。その後、トリオキサンのフィード量を4000g/hrまで増量し、それに伴い、1,3−ジオキソランを148.0g/hr、メチラールを13.6g/hr、重合触媒を14.2×10−2g/hrに増量した。以下、各成分に関するこのフィード条件を、「フィード条件2」と称することとする。そして、フィード条件2に変更してから1時間後、上記同様に重合収率(トリオキサンのフィード量が4000g/hrの時)を測定した。これらの測定値を用い、収率安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
その後、重合反応機より排出されたポリアセタールコポリマーを水中に投入し、室温で1時間撹拌することで重合触媒の洗浄除去を行った。重合触媒を洗浄除去したポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、水酸化コリンギ酸塩(トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有する水溶液1質量部を添加し、均一に混合した後、120℃で3時間乾燥させた。得られたポリアセタールコポリマーを用い、熱安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
上記と同様の重合反応機を用いるとともに、酸素混入を防止するため、重合反応機のフィード口付近から、1時間当たり60Lの窒素を流した。そして、上述のフィード条件1で、各成分をフィードした。
なお、トリオキサン、1,3−ジオキソランおよびメチラールの原料モノマーと、重合触媒の希釈溶液とは、重合反応機に設置したパドル部に達するまで互いに接触することがないように別々のラインで供給した。
上記条件で1時間重合を行った後、フィード条件1からフィード条件2に変更し、10分間重合を行った。以後、10分ごとにフィード条件1および2の切り替えを繰り返し、合計3時間、重合を行った。そして、この間で、重合反応機の振動の評価を行った。結果を表2に示す。
次いで、振動の評価の際に重合反応機より排出されたポリアセタールコポリマーを水中に投入し、室温で1時間撹拌することで重合触媒の洗浄除去を行った。重合触媒を洗浄除去したポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、水酸化コリンギ酸塩(トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有する水溶液1質量部を添加し、均一に混合した後、120℃で3時間乾燥させた。得られたポリアセタールコポリマーを用い、スクリューの削れ度合いの評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−2に変更し、有機溶媒としての1,4−ジオキサンをシクロヘキサンに変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1を、トリオキサン1molに対して重合触媒が1.5×10−4molとなるように重合反応機にフィードした以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−2に変更し、有機溶媒としての1,4−ジオキサンをシクロヘキサンに変更して調整して、重合触媒としてのCAT−2を、トリオキサン1molに対して重合触媒が1.5×10−4molとなるように重合反応機にフィードした以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−3に変更し、有機溶媒としての1,4−ジオキサンをトルエンに変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−4に変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−5に変更し、有機溶媒としての1,4−ジオキサンをシクロヘキサンに変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−6に変更し、有機溶媒としての1,4−ジオキサンをジエチレングリコールジメチルエーテルに変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−7に変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
これに対し、比較例1〜3では、少なくとも、重合反応用装置の安定的な運転およびポリアセタールコポリマーの高熱安定化の両方を同時に達成することができないことが分かる。
Claims (6)
- トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを重合触媒の存在下で重合させることによりポリアセタールコポリマーを製造する方法において、該重合触媒が、アルミニウム、鉄、コバルト、銅、亜鉛及びガリウムから選択される金属元素を有する金属ハロゲン化物である、ポリアセタールコポリマーの製造方法。
- 前記重合触媒は、20℃における水100gへの溶解度が1g以上である、請求項1に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
- 前記重合触媒が金属塩化物である、請求項1または2に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
- 前記重合触媒は、100℃における蒸気圧が30kPa以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
- 前記重合触媒の添加量が、トリオキサン1molに対して、1×10−8〜1×10−3molの範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
- 前記重合触媒が、三塩化鉄または三塩化ガリウムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
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