JP6938180B2 - ポリアセタールコポリマーの製造方法 - Google Patents

ポリアセタールコポリマーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリアセタールコポリマーの製造方法に関し、より具体的には、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを重合触媒の存在下で重合させて得られるポリアセタールコポリマーの製造方法に関するものである。
ポリアセタール樹脂は、優れた機械物性や成形加工性を有することから、電気・電子材料分野、自動車分野、各種工業材料分野などの幅広い分野で用いられているエンジニアリングプラスチックである。特に、近年では、屋内および車室内での過酷な環境においてもポリアセタール樹脂が使用される要求が高まっており、熱安定性が高いポリアセタール樹脂を、安定的に製造することのできる方法が求められている。
ここで、ポリアセタール樹脂の製造においては、しばしば、重合により得られたポリアセタール重合体から、不安定な末端を除去する操作が行われることがある。この不安定な末端を除去する方法は、過去にいくつか報告されているが、熱安定性の高いポリアセタール樹脂を得るためには、不安定な末端を除去する操作以前に、重合により得られるポリアセタール重合体自体の熱安定性を高めておくことが望まれている。
ところで、ポリアセタール樹脂の製造方法として、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを重合して、ポリアセタール樹脂の一種であるポリアセタールコポリマーを製造する方法が、数多く提案されている。例えば、上述したポリアセタールコポリマーを、三フッ化ホウ素またはその配位化合物を重合触媒として用いて製造する方法や、ヘテロポリ酸やイソポリ酸またはその酸製塩を重合触媒として用いて製造する方法(例えば、特許文献1〜2参照)、あるいは、パーフルオロアルキルスルホン酸やその誘導体を重合触媒として用いて製造する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
特開平9−59332号公報 特開平9−100329号公報 特開平4−145115号公報
しかしながら、三フッ化ホウ素またはその配位化合物を重合触媒として用いる場合には、一般的に、重合触媒由来のタール状析出物の発生により、重合触媒のフィード量の乱れが発生し、ポリマーの析出に偏りが生じることがある。これにより、使用する重合反応機等の装置が大きく振動するとともに、装置内部のスクリュー等の部品が削れる、といった製造上の弊害をきたす虞、ひいては、削れた部品由来の金属がポリマー中に混入する虞がある。
一方、パーフルオロメタンスルホン酸やその誘導体、または、ヘテロポリ酸やイソポリ酸またはその酸性塩を重合触媒として用いる場合には、上述したようなタール状析出物の発生は起こらない。しかし、これらの重合触媒は、触媒活性が高い上に重合速度が非常に速いため、重合反応機等の装置内の一部分で急激に重合し、ポリマーが析出することでスクリュー等の部品に負荷がかかり、装置が振動する、といった製造上の弊害をもたらすことがある。
さらに、上述した重合触媒は、いずれも、水への溶解性が高く、重合後の除去が比較的容易であるものの、酸性度の高い超強酸であることから、ポリアセタールコポリマー中にわずかに残存しただけでも、熱安定性を悪化させる。熱安定性の悪化したポリアセタールコポリマーを用いて押し出しや成形を行うと、押出機や成形機内で大量のホルムアルデヒドが発生し、発泡あるいはベントアップ等の問題が生じる。
そこで、本発明は、重合反応用装置を安定的に運転または使用しながら熱安定性の高いポリアセタールコポリマーを得ることが可能な、ポリアセタールコポリマーの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、特定の重合触媒を使用することにより、重合反応用装置を安定的に運転または使用しつつ、熱安定性の高いポリアセタールコポリマーが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを重合触媒の存在下で重合させることによりポリアセタールコポリマーを製造する方法において、該重合触媒が、周期表の第3周期から第6周期、かつ、第3族から第16族である金属元素を有する金属ハロゲン化物である、ポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔2〕
前記重合触媒は、20℃における水100gへの溶解度が1g以上である、項目〔1〕に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔3〕
前記重合触媒が金属塩化物である、項目〔1〕または〔2〕に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔4〕
前記重合触媒は、100℃における蒸気圧が30kPa以下である、項目〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔5〕
前記重合触媒の添加量が、トリオキサン1molに対して、1×10−8〜1×10−3molの範囲である、項目〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔6〕
前記重合触媒が、三塩化鉄または三塩化ガリウムである、項目〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
本発明のポリアセタールコポリマーの製造方法によれば、重合反応用装置を安定的に運転または使用しながら、熱安定性の高いポリアセタールコポリマーを得ることが可能である。
本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について、以下詳細に説明する。本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態のポリアセタールコポリマーの製造方法は、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを重合触媒の存在下で重合させることによりポリアセタールコポリマーを製造する方法において、該重合触媒が、周期表の第3周期から第6周期、かつ、第3族から第16族である金属元素を有する金属ハロゲン化物である、ことを特徴とする。
<トリオキサン>
本実施の形態に用いるトリオキサンは、例えば、酸性触媒の存在下でホルムアルデヒドを反応させることにより製造することができる。このようにして得られるトリオキサンは、通常、水、ギ酸などの連鎖移動可能な成分(不純物)を含有している。これら連鎖移動可能な成分が含まれていると、重合により得られるポリアセタールコポリマーのポリマー末端基が熱的に不安定な状態となり、熱安定性の高いポリアセタールコポリマーを得ることが難しくなる。そのため、これら連鎖移動可能な成分(不純物)を、重合開始までに、一定濃度まで精製除去することが好ましい。トリオキサンにおけるこれら連鎖移動可能な成分(不純物)の合計含有量は、トリオキサンに対して100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることが好ましく、30質量ppm以下であることがさらに好ましい。これら連鎖移動可能な成分(不純物)の含有量が前記範囲内にあるトリオキサンを用いれば、熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
<環状エーテルおよび/または環状ホルマール>
本実施の形態に用いる環状エーテルおよび/または環状ホルマールは、トリオキサンと共重合可能な成分(コモノマー成分)である。具体的に、環状エーテルおよび/または環状ホルマールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキセタン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合時における、環状エーテルおよび/または環状ホルマールの添加量は、トリオキサン1molに対して、0.01〜0.2mol以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.15molの範囲であり、さらにこの好ましくは0.01〜0.1molの範囲であり、特に好ましくは0.01〜0.05molの範囲である。環状エーテルおよび/または環状ホルマールの添加量が前記範囲内であれば、重合速度がある程度速く、重合収率も十分高くなり、安定的にポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
<重合触媒>
本実施の形態に用いる重合触媒は、周期表の第3周期から第6周期、かつ、第3族から第16族である金属元素を有する、金属ハロゲン化物である。この重合触媒を用いることで、熱安定性の高いポリアセタールコポリマーを得ることができる。加えて、この重合触媒を用いることで、タール状ポリマーや塊状ポリマーの析出を抑え、重合反応用装置の振動やスクリュー等の部品の削れが抑制されて、装置を安定的に運転または使用することができる。
金属元素としては、例えば、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム等が挙げられる。また、前記金属元素を有する金属ハロゲン化物としては、鉄、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、インジウム、またはビスマスを有する金属塩化物、金属フッ化物、金属臭化物または金属ヨウ化物であることが好ましい。
これらの金属ハロゲン化物を重合触媒として用いた場合には、重合反応用装置内で重合触媒が揮発することなく、一定に重合触媒をフィードできるため、重合収率のばらつきが少なく(収率安定性が高く)、より安定的にポリアセタールコポリマーを製造できる傾向にある。
また、本実施の形態に用いる重合触媒は、金属塩化物であることが好ましい。金属塩化物としては、例えば、前述した金属元素を有する金属塩化物であることが好ましく、鉄、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、インジウム、ビスマスを有する金属塩化物であることがより好ましい。さらに好ましくは、三塩化鉄、塩化亜鉛、三塩化ガリウム、四塩化チタン、三塩化アルミニウム、四塩化ジルコニウム、四塩化ハフニウム、三塩化インジウム、三塩化ビスマスであり、特に好ましくは、三塩化鉄、三塩化ガリウムである。これらの重合触媒を用いることで、重合速度が速すぎず、重合反応用装置中の一部分で急激に重合することなく、重合反応用装置の振動がより小さくなることに加え、ポリマー中に残存する重合触媒によるポリアセタールコポリマーの熱分解が少ないため、熱的により安定なポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
なお、本実施の形態に用いる重合触媒は、重合反応に悪影響のない不活性な有機溶媒で希釈して用いることが望ましい。重合触媒を希釈することで、重合反応を均一に行うことができ、一部分でポリマーが急激に析出することを抑制し、重合反応用装置の振動などをより確実に抑えることができる。
有機溶媒としては、水酸基を有さない炭化水素化合物であることが好ましい。炭化水素化合物の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素化合物;n−ヘキサン、n−へプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル化合物;等が挙げられ、用いる重合触媒の溶解性に応じて適宜選択することができる。上記水酸基を有さない炭化水素化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このような水酸基を有さない炭化水素化合物を有機溶媒として用いることで、ポリアセタールコポリマーの分子量を容易にコントロールすることができる。
本実施の形態に用いる重合触媒は、20℃における水100gへの溶解度が1g以上であることが好ましく、より好ましくは5g以上であり、さらに好ましくは10g以上である。なお、本明細書において、水への溶解とは、水へ溶解すること、および、水との反応により変質し、重合触媒性能を失うことの両方を含むものとする。20℃における水100gへの溶解度が前記範囲内にある重合触媒を用いれば、重合後の重合触媒洗浄工程において、容易に除去することができ、ポリマー中に重合触媒が残存することに起因するポリアセタールコポリマーの熱分解を十分に抑えることができ、熱的により安定なポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
なお、重合触媒の20℃における水100gへの溶解度は、実施例に記載の方法により、測定することができる。
また、本実施の形態に用いる重合触媒は、100℃における蒸気圧が30kPa以下であることが好ましく、より好ましくは20kPa以下であり、さらに好ましくは10kPa以下である。100℃における蒸気圧が前記範囲内にある重合触媒を用いれば、重合反応中に容易に揮発しないため、安定して重合反応を行うことができるとともに、フィード量等に依存することなく重合収率を安定化することができる、すなわち、収率安定性が高まる傾向にある。
なお、重合触媒の100℃における蒸気圧は、実施例に記載の方法により、測定することができる。
重合時における、重合触媒の添加量は、トリオキサン1molに対して、好ましくは1.0×10−8〜1.0×10−3molの範囲であり、より好ましくは1.0×10−7〜1.0×10−4molの範囲であり、さらに好ましくは1.0×10−6〜1.0×10−4molであり、特に好ましくは1.0×10−5〜1.0×10−4molの範囲である。重合触媒の添加量が前記範囲内であれば、触媒としての役割を十分に果たしつつ、ポリマー中に重合触媒が残存することに起因するポリアセタールコポリマーの熱分解を十分に抑えることができ、熱的により安定なポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
<分子量調整剤>
本実施の形態においては、分子量調整剤として、低分子量アセタール化合物を使用してもよい。低分子量アセタール化合物は、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとの重合時に連鎖移動剤として機能するものであり、分子量が200以下、好ましくは60〜170のアセタール化合物である。具体的に、分子量調整剤としては、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラールを好適に挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合時における低分子量アセタール化合物の添加量は、ポリアセタールコポリマーの分子量を好適な範囲に制御する観点から、トリオキサン1molに対して0.1×10−4〜0.6×10−2molの範囲内であることが好ましい。
<ポリアセタールコポリマー>
ポリアセタールコポリマーは、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを、上述した重合触媒の存在下で重合させて得ることができる。ポリアセタールコポリマーは、塊状法でのカチオン重合により重合されるものである。また、使用する重合反応用装置の形状(構造)としては、特に限定するものではないが、一般的には、ジャケットに熱媒を通すことのできる2軸のパドル式やスクリュー式の撹拌混合型重合反応機を好適に使用することができる。
重合させる方法としては、例えば、トリオキサン、環状エーテルおよび/または環状ホルマール、重合触媒、ならびに任意の分子調整剤を重合反応用装置に供給し、重合させる方法が挙げられる。あるいは、重合前に、環状エーテルおよび/または環状ホルマールと、重合触媒と、分子調整剤とをあらかじめ混合してプレ混合液を得た後、このプレ混合液およびトリオキサンを重合反応用装置に供給し、重合させる方法も挙げられる。
重合反応温度は、63〜135℃の範囲に保つことが好ましく、70〜120℃の範囲に保つことがより好ましく、70〜100℃の範囲に保つことがさらに好ましい。
重合反応用装置内の滞留(反応)時間は、0.1〜30分であることが好ましく、0.1〜25分であることがより好ましく、0.1〜20分であることがさらに好ましい。
重合反応温度および重合反応用装置内の滞留時間をそれぞれ上記の範囲に調整することにより、ポリアセタールコポリマーの熱分解をより効果的に抑えることができ、熱的により安定なポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
そして、重合後には、例えば、得られたポリアセタールコポリマーから重合触媒を洗浄除去することができる。重合触媒の洗浄除去方法としては、従来から提案されている方法を用いることができ、例えば、水のみ、あるいは、アンモニア、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアミン類、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩類、有機酸塩等の少なくとも1種以上の失活剤を含む水溶液に、重合反応用装置から排出されたポリアセタールコポリマーを投入し、スラリー状態で数分〜数時間、室温〜100℃以下の範囲で連続撹拌しながら重合触媒を洗浄除去することができる。ポリアセタールコポリマーが大きな塊状の場合には、重合触媒の洗浄除去効率を高める観点から、ポリアセタールコポリマーを粉砕し、微細化することにより、洗浄除去し易くすることが好ましい。重合触媒の洗浄除去後、遠心分離機等でろ過し、窒素環境下などで乾燥することにより、目的とするポリアセタールコポリマーを得ることができる。
以下、実施例および比較例にて、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例および比較例で使用した重合触媒を、表1に示す。また、実施例および比較例においてした各種測定または評価の方法を、以下に示す。
Figure 0006938180
<重合触媒の蒸気圧の測定>
各重合触媒の100℃における蒸気圧を、静止法により測定した。具体的には、真空引きした密閉装置内に各重合触媒を封入し、圧力計を用いて、100℃における平衡蒸気圧を測定した。そして、100℃における蒸気圧が、10kPaに満たないものを「<10kPa」、10kPa以上20kPa未満のものを「<20kPa」、20kPa以上30kPa未満のものを「<30kPa」、30kPa以上のものを「≧30kPa」とした。結果を表1に示す。
<重合触媒の水への溶解度の測定>
各重合触媒の20℃における水100gへの溶解度を測定した。具体的には、20℃の水100gに各重合触媒を添加し、分離することなく溶解する添加量を最大で10gまで評価した。重合触媒の添加量が10gでも分離することなく溶解するものは、「≧10g」とし、溶解度は高いと評価した。また、水と混合した際に白煙を生じる等の反応性があるものについては、溶解度の測定を最後まで行わず、「分解する」とした。結果を表1に示す。
<収率安定性の評価>
重合反応機から排出されたポリアセタールコポリマーの単位時間当たりの排出量を計量し、この計量値を重合反応機にフィードした全モノマーの単位時間当たりの量で割り返して、重合収率を求めた。具体的には、2点のトリオキサンフィード量の条件(2000g/hrおよび4000g/hr)での重合収率の測定をそれぞれ実施し、変動値(両者の重合収率の差)が3%以下の場合は、○(収率安定性が高い)と評価した。また、変動値が3%より大きい場合は△(収率安定性が低い)と評価した。
<重合反応機の振動の評価>
ホソカワミクロン株式会社製のパウダーテスターPT−E型に付属の安息角測定用脚付円盤(直径8cm)に、市販のポリエチレン(旭化成株式会社製、「サンテック−LD L1850A」)のペレットを、円盤面から10cmの高さから、ロートを用いて円盤面からこぼれ落ちるまで堆積させた。ペレットを堆積させた脚付円盤を重合反応機上に配置し、重合反応に起因した重合反応機の振動によりこぼれたペレットの量を数えた。こぼれたペレットが50粒以下の場合は○とし、振動が小さいと評価し、また、こぼれたペレットが50粒より多い場合は×とし、振動が大きいと評価して、重合反応用装置を安定的に運転できるか否かの尺度とした。
<スクリューの削れ度合いの評価>
洗浄除去および乾燥後に得られたポリアセタールコポリマーの内、100gをるつぼに入れ、電気炉で450℃で2時間加熱した。加熱後、るつぼ中の残存物量を、スクリュー削れによりコンタミした金属量として計量した。残存物量が50mg以上の場合はスクリュー削れ「多」とし、10mg以上50mg未満の場合はスクリュー削れ「少」とし、10mg未満の場合はスクリュー削れ「無」として、重合反応用装置を安定的に運転できるか否かの尺度とした。
<熱安定性の測定>
乾燥させて得られたポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機設定温度200℃、滞留時間5分で不安定末端部の分解を行い、押出機ダイス部よりストランドとして押し出してペレタイズした。このペレットにさらに、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]を添加混合し、ベント付き短軸押出機で溶融混練することにより、ポリアセタール樹脂組成物を得た。窒素気流下において、ポリアセタール樹脂組成物1gを190℃で加熱溶融し、30分間で発生するホルムアルデヒドを水に吸収した後、亜硫酸ソーダ法により適定し測定した。測定に用いたポリアセタール樹脂組成物量に対し、30分間の加熱で発生した総ホルムアルデヒド量の割合を算出し、これによりポリアセタール樹脂組成物の熱安定性を評価した。上記の方法で測定した総ホルムアルデヒド量が500ppm以下の時は〇とし、熱安定性に優れるとした。一方で、総ホルムアルデヒド量が500ppmより多く、1000ppm以下の時は△とし、熱安定性はやや高いとした。さらに、総ホルムアルデヒド量が1000ppmより多い、あるいは発泡等によりペレタイズが不可または困難であった時は×とし、熱安定性が低いと評価した。
[実施例1]
(収率安定性およびポリアセタールコポリマーの熱安定性の評価のためのポリアセタールコポリマーの製造)
重合反応用装置として、80℃に設定した同方向回転の2軸型パドル式連続重合反応機(株式会社栗本鐵工所社製、径2B、L/D=14.8)を用いた。なお、酸素混入を防止するため、重合反応機のフィード口付近から、1時間当たり60Lの窒素を流した。そして、重合反応機に、トリオキサン(水分濃度:4ppm、ギ酸濃度:5ppm)を2000g/hrでフィードした。また、トリオキサン1molに対して0.045mol(74.0g/hr)の環状エーテルおよび/または環状ホルマールとしての1,3−ジオキソランを、重合反応機にフィードした。さらに、トリオキサン1molに対して4×10−3mol(6.8g/hr)のメチラール(分子量調整剤)を重合反応機にフィードした。また、重合触媒としてのCAT−1を、あらかじめ有機溶媒としての1,4−ジオキサンを用いて3.5×10−3mol/Lの濃度になるように希釈し、トリオキサン1molに対して重合触媒が0.2×10−4molとなるように、重合反応機にフィードした(7.1×10−2g/hr)。以下、各成分に関するこのフィード条件を、「フィード条件1」と称することとする。
なお、トリオキサン、1,3−ジオキソランおよびメチラールの原料モノマーと、重合触媒の希釈溶液とは、重合反応機に設置したパドル部に達するまで互いに接触することがないように別々のラインで供給した。
重合反応開始から1時間後、上述した方法で重合収率(トリオキサンのフィード量が2000g/hrの時)を測定した。その後、トリオキサンのフィード量を4000g/hrまで増量し、それに伴い、1,3−ジオキソランを148.0g/hr、メチラールを13.6g/hr、重合触媒を14.2×10−2g/hrに増量した。以下、各成分に関するこのフィード条件を、「フィード条件2」と称することとする。そして、フィード条件2に変更してから1時間後、上記同様に重合収率(トリオキサンのフィード量が4000g/hrの時)を測定した。これらの測定値を用い、収率安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
その後、重合反応機より排出されたポリアセタールコポリマーを水中に投入し、室温で1時間撹拌することで重合触媒の洗浄除去を行った。重合触媒を洗浄除去したポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、水酸化コリンギ酸塩(トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有する水溶液1質量部を添加し、均一に混合した後、120℃で3時間乾燥させた。得られたポリアセタールコポリマーを用い、熱安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
(重合反応機の振動およびスクリューの削れ度合いの評価のためのポリアセタールコポリマーの製造)
上記と同様の重合反応機を用いるとともに、酸素混入を防止するため、重合反応機のフィード口付近から、1時間当たり60Lの窒素を流した。そして、上述のフィード条件1で、各成分をフィードした。
なお、トリオキサン、1,3−ジオキソランおよびメチラールの原料モノマーと、重合触媒の希釈溶液とは、重合反応機に設置したパドル部に達するまで互いに接触することがないように別々のラインで供給した。
上記条件で1時間重合を行った後、フィード条件1からフィード条件2に変更し、10分間重合を行った。以後、10分ごとにフィード条件1および2の切り替えを繰り返し、合計3時間、重合を行った。そして、この間で、重合反応機の振動の評価を行った。結果を表2に示す。
次いで、振動の評価の際に重合反応機より排出されたポリアセタールコポリマーを水中に投入し、室温で1時間撹拌することで重合触媒の洗浄除去を行った。重合触媒を洗浄除去したポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、水酸化コリンギ酸塩(トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有する水溶液1質量部を添加し、均一に混合した後、120℃で3時間乾燥させた。得られたポリアセタールコポリマーを用い、スクリューの削れ度合いの評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例2]
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−2に変更し、有機溶媒としての1,4−ジオキサンをシクロヘキサンに変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
[実施例3]
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1を、トリオキサン1molに対して重合触媒が1.5×10−4molとなるように重合反応機にフィードした以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
[実施例4]
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−2に変更し、有機溶媒としての1,4−ジオキサンをシクロヘキサンに変更して調整して、重合触媒としてのCAT−2を、トリオキサン1molに対して重合触媒が1.5×10−4molとなるように重合反応機にフィードした以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
比較例5]
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−3に変更し、有機溶媒としての1,4−ジオキサンをトルエンに変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
[実施例6]
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−4に変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
[比較例1]
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−5に変更し、有機溶媒としての1,4−ジオキサンをシクロヘキサンに変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
[比較例2]
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−6に変更し、有機溶媒としての1,4−ジオキサンをジエチレングリコールジメチルエーテルに変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
[比較例3]
表2に示す通り、実施例1において、重合触媒としてのCAT−1をCAT−7に変更して調整した以外は、実施例1と同様に重合、評価を行った。
Figure 0006938180
表2より、特定の金属ハロゲン化物を重合触媒として用いた実施例1〜4,6では、得られたポリアセタールコポリマーの熱安定性が良好である上、重合反応機の振動が抑制され、スクリューの削れ度合いも小さいので、装置を安定的に運転しながらポリアセタールコポリマーを製造することができることが分かる。中でも、実施例1および2は、いずれの評価結果においても特に良好であった。
これに対し、比較例1〜3では、少なくとも、重合反応用装置の安定的な運転およびポリアセタールコポリマーの高熱安定化の両方を同時に達成することができないことが分かる。
本発明のポリアセタールコポリマーの製造方法によれば、重合反応用装置を安定的に運転または使用しながら、熱安定性の高いポリアセタールコポリマーを得ることが可能である。

Claims (6)

  1. トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを重合触媒の存在下で重合させることによりポリアセタールコポリマーを製造する方法において、該重合触媒が、アルミニウム、鉄、コバルト、銅、亜鉛及びガリウムから選択される金属元素を有する金属ハロゲン化物である、ポリアセタールコポリマーの製造方法。
  2. 前記重合触媒は、20℃における水100gへの溶解度が1g以上である、請求項1に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
  3. 前記重合触媒が金属塩化物である、請求項1または2に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
  4. 前記重合触媒は、100℃における蒸気圧が30kPa以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
  5. 前記重合触媒の添加量が、トリオキサン1molに対して、1×10−8〜1×10−3molの範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
  6. 前記重合触媒が、三塩化鉄または三塩化ガリウムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
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