JP6851168B2 - コンクリート構造物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート構造物の製造方法に関し、例えば橋梁等のコンクリート構造物の製造方法(構築方法)やプレキャストコンクリート等のコンクリート構造物の製造方法に関する。
橋梁やダム等をはじめとするコンクリート構造物を構築するための施工方法として、特許文献1に記載の工法が新たに用いられるようになってきている。この特許文献1に記載の工法では、コンクリート打設用の型枠を設置し、型枠の内面に予め非透水性の養生シートを貼付した状態でコンクリートの打設を行う。そして、コンクリートの打設後に型枠を脱型するものの養生シートはコンクリート側に残置し、打設したコンクリートをこの養生シートでそのまま覆い、コンクリートを長期に渡って養生する。
この特許文献1に記載の工法によれば、水との接触角が50度以上の非透水性の養生シートを打設時に用いることにより、打設後にコンクリートCが硬化する際、通常発生するブリージング水や気泡の発生を大幅に抑制することができ、脱型後の水和反応に必要な水をコンクリートCが含有している状態を打設から脱型・養生に到るまでの間、維持することが可能となる。その結果、この工法によれば、コンクリート養生の際に外部から養生水を供給することなく又は養生水をそれほど用いることなく、圧縮強度や耐久性または表面美観を向上させたコンクリート構造物Cを得ることができる。
特許第5688429号公報
特許文献1に記載の工法によれば、上述したように、圧縮強度や耐久性又は表面美観を従来の工法に比べて格段に向上させたコンクリート構造物Cを製造(構築等)することができるが、更なる表面美観の向上が望まれている。特に、コンクリート中の気泡等が抜けにくいと言われているハンチ部や階段構造等を含むコンクリート構造物では、型枠の打設面側により多くの気泡が集まりやすく、それによるコンクリート表面への気泡転写等が発生し得るので、このような余剰な気泡を取り除いて、コンクリート表面の美観を更に向上させることが望まれている。
そこで、本発明は、コンクリート構造物の表面美観を更に向上させることができるコンクリート構造物の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート打設用の型枠、型枠用の透水性シート、及び、少なくともコンクリート打設側の面の水との接触角が50度以上である非透水性シートを準備する準備工程と、型枠の打設面上に透水性シート及び非透水性シートを装着する装着工程と、型枠を所定の位置に設置する設置工程と、型枠に透水性シート及び非透水性シートが装着された状態でコンクリートの打設を行う打設工程と、コンクリートの打設後に型枠を脱型する脱型工程と、脱型工程の後に少なくとも非透水性シートをコンクリートの表面に残置させ、当該非透水性シートによりコンクリートを養生する養生工程と、を備え、装着工程では、透水性シート及び非透水性シートが少なくとも一部において互いに重なるように型枠に装着する。
このコンクリート構造物の製造方法では、透水性シート及び水との接触角が50度以上である面を有する非透水性シートを型枠に装着して、これらのシートを利用してコンクリートの打設等を行っている。この場合、上記の透水性シートにより、打設後にコンクリートが硬化する際に発生するブリージング水や気泡等のうち過度に発生した分を適度に取り除いて、外部に排出等をすることができる。そして、上記の透水性シートと共に用いられる非透水性シートにより、その発生が適度に抑制されたブリージング水となる水分や気泡を外部に排出することなくコンクリート内部に残留するようにし、脱型後の水和反応に必要な水をコンクリートが含有し且つコンクリート表面に気泡が現れない状態とすることができる。このように、このコンクリート構造物の製造方法では、透水性シートにより、上述した非透水性シートの機能を超えるブリージング水や気泡の発生があった場合であっても、そのような過剰なブリージング水や気泡を透水性シートにより、型枠の外部に排出することができる。その結果、本発明にかかる製造方法によれば、非透水性シートの利用によって圧縮強度や耐久性を向上できることに加え、透水性シート及び非透水性シートの利用によってコンクリート構造物の表面美観を更に向上させることが可能となる。なお、このような効果は、例えばハンチ部や階段構造等のように気泡等の抜けが悪くコンクリート表面に気泡等が集まりやすい構造物を構築する際に顕著に奏することができるが、ハンチ部等以外の構造物を製造(構築)する場合であっても、余剰な気泡等を取り除くことができるため、全体的にコンクリート構造物の表面美観を向上させることができる。
上記のコンクリート構造物の製造方法において、装着工程では、非透水性シートが型枠の打設面側に位置し且つ透水性シートがコンクリート側に位置するように、透水性シート及び非透水性シートを型枠に装着することが好ましい。この場合、余剰な気泡や水分を透水性シートにより予め外部に排出した上で、非透水性シートにより、脱型後の水和反応に必要な水をコンクリートが含有し且つコンクリート表面に気泡が現れない状態とすることになるため、コンクリート構造物の表面美観をより一層向上させることができる。
上記のコンクリート構造物の製造方法において、透水性シートが不織布から構成されることが好ましい。この場合、余剰な空気や水を外部に排出するだけでなく、その一部については透水性シート内部で吸収することができ、不要な水や表面気泡等をより一層取り除き易くなるため、コンクリート構造物の表面美観を更に向上させることができる。また、不織布をコンクリート側に用いた場合には、この不織布が貼付機能を奏して非透水性シートをコンクリート側に貼り付けることが可能となり、型枠脱型後の非透水性シートによる養生を確実に行うことができる。なお、透水性シートとして用いられる不織布は、コンクリート側に位置し細孔を含んで構成されるフィルタ層と、フィルタ層よりも目が粗い通水通気層とを含んで構成されていることが好ましく、このフィルタ層がコンクリート中のセメント分と水及び空気とを分離するようにしてもよい。
上記のコンクリート構造物の製造方法において、装着工程では、透水性シートが非透水性シートの略全面を覆うように透水性シートを非透水性シート上に装着してもよい。この場合、コンクリート表面の全体の美観を更に向上させることができる。一方、装着工程において、透水性シートが非透水性シートの端部を覆うように透水性シートを非透水性シートの端部上に装着するようにしてもよい。この場合であっても、端部からコンクリート内の余剰な水分や空気を外部に排出させることができるため、コンクリート表面の全体の美観を更に向上させることができる。
上記のコンクリート構造物の製造方法において、透水性シートは、少なくとも型枠の妻面までに跨がるように型枠に装着されていることが好ましい。この場合、透水性シートによって捕獲された気泡や水を型枠の外部により効率的に排出することが可能となる。
上記のコンクリート構造物の製造方法において、透水性シート及び非透水性シートは、その間に配置された粘着層又は粘着部材により互いに貼り合わされることが好ましい。この場合、コンクリートを打設した際に、透水性シート及び非透水性シートがずれて皺になってしまったりすることが抑制され、そのような皺がコンクリート表面に転写されることを防止して、より一層綺麗なコンクリート表面とすることが可能となる。
本発明によれば、コンクリート構造物の表面美観をより一層向上させることができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法の概要を示すフローチャートである。 図2は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法において、型枠へ養生シート(非透水性シート)及び透水性シートを貼り付ける工法を順に示した断面図である。 図3は、図2に示す透水性シートの層構成を示す断面図である。 図4は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法をハンチ部の構築に適用した場合を示す模式的な断面図である。 図5は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法の変形例を示す断面図である。 図6は、本発明の第2実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法において、型枠へ養生シート(非透水性シート)及び透水性シートを貼り付ける工法を順に示した断面図である。 図7は、本発明の第2実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法をハンチ部の構築に適用した場合を示す模式的な断面図である。 図8は、図7に示す工法において、コンクリート中の気泡が外部に排出される状態を模式的に示した図である。 図9は、本発明の実施例及び比較例に関して作製されるハンチ部を含むコンクリート構造物の供試体を示す斜視図である。 図10は、図9に示す供試体を作製するために用いた、養生シート及び透水性シートが貼り付けられた木製型枠を示す写真である。 図11は、図10に示す型枠を用いてコンクリート構造物の供試体を作製して脱型した際の表面形状を示す写真であり、養生シート及び透水性シートがコンクリート表面に残置された状態を示す。 図12は、図11に示すコンクリート構造物の供試体から養生シート及び透水性シートを剥離した後の表面形状を示す写真である。 図13は、図9に示す供試体を通常の木製型枠のみを用いて作製した際のコンクリートの表面形状を示す写真である。 図14は、養生シートの表面の水への接触角を示す模式図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るコンクリート構造物の製造方法について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。なお、本実施形態におけるコンクリート構造物の製造方法には、例えば橋梁やダム等のコンクリート構造物の製造方法(構築方法)や、工場等で行われるプレキャストコンクリート等のコンクリート構造物の製造方法が少なくとも含まれており、何れのコンクリート構造物の工法にも適宜、適用することができる。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法の概要を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート打設用の型枠、型枠用の透水性シート、及び、非透水性の養生シートを準備する準備工程(ステップS1)と、型枠の打設面上に透水性シート及び養生シートを装着する装着工程(ステップS2)と、型枠を所定の位置に設置する設置工程(ステップS3)と、型枠に透水性シートと養生シートが装着された状態でコンクリートの打設を行う打設工程(ステップS4)と、コンクリートの打設後に型枠を脱型する脱型工程(ステップS5)と、脱型工程の後に養生シート及び透水性シートをコンクリートの表面に残置させて、コンクリートを所定期間養生する養生工程(ステップS6)と、を含む工法である。この製造方法のフローチャートは、後述する本発明の第2実施形態でも同様である。
図2の(a)〜(d)は、上述したコンクリート構造物の製造方法(構築方法)において、型枠へ養生シート(非透水性シート)及び透水性シートを貼り付ける工法を順に示した断面図である。本実施形態に係る工法では、まず、図2の(a)に示されるように、ステップS1の準備工程として、コンクリート打設用の型枠1と、養生シート10と、透水性シート20と、を準備する。なお、一般的なコンクリート構造物を製造(構築)する際、通常は一枚の型枠1に多数の養生シート10や透水性シート20を用いることがあるが、本実施形態では説明を容易にするため、一枚の型枠1に一枚の養生シート10及び一枚の透水性シート20を相互に重なるように順に貼り付け、当該型枠1を1枚ずつ建て込む場合(いわゆる小口組みの場合)を例にとって説明する。但し、一枚の型枠1に二枚以上の養生シート10や透水性シート20を用いた場合でも同様である。
準備工程S1で準備される型枠1は、平面視した際(例えば図2(a)の左側から右側に視た際、以下同様)に矩形形状を呈する板状部材であり、例えば木製型枠又は鋼製型枠から構成される。図2の(a)では、型枠1は、その厚み方向の形状が示されている。
また、準備工程S1で準備される養生シート10は、コンクリート構造物を養生する際に用いられ、平面視した際に矩形形状を呈するシートであり、0.02mm〜2.0mm程度の厚みを有する。養生シート10は、そのコンクリート打設側の面12の水との接触角θが50度以上となるように表面処理が施された非透水性のシートであり、その接触角θが69度以上であることがより好ましく、接触角θが80度以上であることが更に好ましく、接触角θが90度以上であることがより一層好ましい。なお、「接触角θ」とは、図14の(a)に示されるように、液滴の接線と固体表面(養生シート10の表面)とのなす角度であり、以下の式(1)で示される。
Figure 0006851168

γ:固体の表面張力
γ:液体の表面張力
γSL:固体と液体の界面張力
そして、「接触角θ」は、例えば、θ/2法で測定することができる。具体的には、図14の(b)に示されるように、液滴の半径rと高さhを求める。そして、以下の式(2)、式(3)から、接触角θを求めることができる。
Figure 0006851168

Figure 0006851168
また、養生シート10としては、熱可塑性樹脂シートを用いることが好ましく、ここで用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂;ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。なお、養生シート10としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーとは、エチレンープロピレン共重合体又はポリプロピレンとエチレンープロピレンゴムの溶融混合物又は重合反応物であり、例えば、株式会社プライムポリマー製「プライムTPO(登録商標)」、日本ポリプロ株式会社製「ニューコン(登録商標)」、サンアロマー株式会社製「キャタロイ」、三菱化学社製「ゼラス(登録商標)」等を挙げることができる。
また、準備工程S1で準備される透水性シート20は、コンクリートを打設した際にバイブレータ等により型枠表面に浮き上がった水や空気(気泡)を当該シートを介して型枠1の外側に排出するためのシートである。透水性シート20は不織布から構成されており、細孔の平均径がコンクリート側で細かく、シート内部でそれよりも粗くなる段階的な層構成を有しており、例えば、図3に示すように、コンクリート側に位置し細孔を含んで構成されるフィルタ層22と、フィルタ層22よりも目が粗い通水通気層24と、透水性シート20を他の部材(本実施形態では養生シート10)に接着するための粘着層26と、を含んで構成されている。透水性シート20のフィルタ層22は、打設の際にコンクリート側となるように配置され、コンクリート中のセメント分と水及び空気とを分離する機能を有しており、フィルタ層22により、コンクリート中の余剰な水や空気を透水性シート20内に誘導し、シート内部(通水通気層24)を横断(図3の上下方向に移動)するようにして、これらを型枠1の外部に排出する。なお、透水性シート20としては、例えば、東洋紡株式会社製の「エアレックスシート(エアレックスは登録商標)」を用いることができるが、他の透水性シートであってもよい。
このような型枠1、養生シート10及び透水性シート20それぞれの準備が完了すると、次に、図2(b)〜(c)に示すように、まずは養生シート10を型枠1の打設面2の略全面に貼り付ける。なお、養生シート10の型枠1への貼付けには接着剤等を用いてもよい。
続いて、養生シート10の型枠1への貼付けが完了すると、図2(c)〜図2(d)に示すように、透水性シート20を養生シート10の一方の面12上の略全面に貼り付ける。透水性シート20の養生シート10への貼付けには透水性シート20の粘着層26を用いてもよいが、透水性シート20が粘着層を有していない場合には、接着剤等を別途用いてもよい。以上により、養生シート10及び透水性シート20が型枠1に貼り付けられた型枠体30の準備が完了する。
続いて、養生シート10及び透水性シート20が型枠1に装着された型枠体30の準備が完了すると、設置工程S3に進み、養生シート10及び透水性シート20が装着された型枠体30を所定の打設位置に設置する。本実施形態では、例えばハンチ部を有するコンクリート構造物を構築するため、例えば3つの型枠体30を、図4に示すようにその内の1つの型枠体30が斜めとなるように、設置する。
続いて、打設工程S4に進み、型枠1の打設面2に養生シート10及び透水性シート20が貼り付けられた状態でコンクリートの打設を行う。その後、コンクリートの締固めが終了すると、型枠1をはめたまま、コンクリートの湿潤養生を例えば7日〜28日程度行い、コンクリートを硬化させる。コンクリートが硬化するまでそのままの状態を維持する。
続いて、打設工程でのコンクリートの打設及びその硬化が完了したら、型枠を脱型する脱型工程S5に進み、硬化したコンクリートの表面を養生シート10及び透水性シート20が覆うように残置したまま型枠1を脱型し、コンクリートから引き離す。なお、本実施形態では、養生シート10又は透水性シート20の縁部に両面粘着テープを予め装着しておき、この両面粘着テープにより、養生シート10及び透水性シート20がコンクリートの表面により確実に残置されるようにしておいてもよい。
続いて、型枠1を脱型した後、養生工程S6に進み、コンクリートの貼付面に残置された養生シート10を用いて、コンクリートを所定期間養生する。養生シート10による養生は、型枠1の脱型後30日以上養生を続けてもよいし、型枠1の脱型後90日以上養生を続けてもよい。更に、コンクリート構造物の引き渡しに至るまで(例えば脱型後1年以上)養生を続けてももちろんよい。このような長期の養生を続けることにより、コンクリートの強度を飛躍的に高めて、その品質を向上することができる。所定期間の養生が終了すると、養生シート10及び透水性シート20をコンクリートから取り外し、これにより、コンクリート構造物が完成する。
以上、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法によれば、透水性シート20及び非透水性の養生シート10を型枠1に装着して、これらのシート10,20を利用してコンクリートの打設等を行っている。そして、透水性シート20により、コンクリート打設後にコンクリートが硬化する際に発生するブリージング水や気泡等のうち過度に発生した分を適度に取り除いて、外部に排出等をすることができる。そして、透水性シート20と共に用いられる養生シート10により、その発生が適度に抑制されたブリージング水となる水分や気泡を外部に排出することなくコンクリート内部に残留するようにし、脱型後の水和反応に必要な水をコンクリートが含有し且つコンクリート表面に気泡が現れない状態とすることができる。このように、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、透水性シート20により、上述した非透水性の養生シート10の機能を超えるブリージング水や気泡の発生があった場合であっても、そのような過剰なブリージング水や気泡を透水性シート20により、型枠1の外部に排出することができる。その結果、本実施形態に係る製造方法によれば、非透水性の養生シート10の利用によって圧縮強度や耐久性を向上できることに加え、透水性シート20及び養生シート10の併用によってコンクリート構造物の表面美観を更に向上させることが可能となる。なお、このような効果は、例えば図4に示すようなハンチ部や階段構造等のように気泡等の抜けが悪くコンクリート表面に気泡等が集まりやすい構造物を構築する際に顕著に奏することができるが、ハンチ部等以外の構造物を製造(構築)する場合に適用しても、余剰な気泡等を取り除くことができるため、全体的にコンクリート構造物の表面美観を向上させることができる。
なお、ここで、上述した非透水性の養生シートによる効果について補足する。特許第5688429号公報等で説明されているように、通常、セメントの当初の硬化に必要な量以上の余剰な水がコンクリートCに含まれていると、打設後にコンクリートCが硬化する際、ブリージング水が発生する。しかしながら、水との接触角が50度以上の養生シート10を打設時に用いることにより、ブリージング水が発生することを効果的に抑制することができる。このようにブリージング水の発生が抑制されるのは、コンクリートCの表面を覆っている養生シート10のシート面(接触面)の接触角(濡れ角とも言う)が大きいと、コンクリートC内に含まれていてその表面から外に出ようとする水や当該水中に存在する空気がシート接触面においてコンクリートC内部に押し戻される作用が働き、その結果、水及びその内部の空気がコンクリート内に残存したまま硬化が進むためと考えられる。そして、この養生シート10によれば、このようにしてブリージング水の発生が抑制されるため、脱型後の水和反応に必要な水をコンクリートが含有していることになり、コンクリート養生の際に外部から養生水を供給することなく又は養生水をそれほど用いることなく、所定の圧縮強度や耐久性などの品質を発現できるコンクリート構造物を製造することができる。本工法によれば、このような養生シートによる効果に加え、非透水性シートによる過剰な気泡の除去等を行うことができるため、コンクリートの表面美観を更に向上させることができる。
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、装着工程において、非透水性の養生シート10が型枠1の打設面2側に位置し且つ透水性シート20がコンクリート側に位置するように、透水性シート20及び養生シート10を型枠1に装着している。このため、余剰な気泡や水分を透水性シート20により予め外部に排出した上で、養生シート10により、脱型後の水和反応に必要な水をコンクリートが含有し且つコンクリート表面に気泡が現れない状態とすることになるため、コンクリート構造物の表面美観をより一層向上させることができる。
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、透水性シート20が不織布から構成されている。このため、余剰な空気や水を外部に排出できることに加え、その一部については透水性シート20内部で吸収することもでき、不要な水や表面気泡等をより一層取り除き易くなるため、コンクリート構造物の表面美観を更に向上させることができる。また、不織布である透水性シート20をコンクリート側に用いた場合には、この不織布が貼付機能を奏して非透水性の養生シート10をコンクリート側に暫定的に貼り付けることが可能となり、型枠脱型後の養生シート10によるコンクリートの養生をより確実に行うことができ、また、そのような貼付のための両面テープや接着剤等の使用を行わなくてもよくなり、本工法によりコンクリート構造物の製造をより簡易に実施することが可能となる。
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、装着工程において、透水性シート20が養生シート10の略全面を覆うように透水性シート20を養生シート10上に重なるように装着している。このため、コンクリート表面の全体の美観を更に向上させることができる。
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、透水性シート20及び養生シート10は、その間に配置された粘着層又は粘着部材により互いに貼り合わされている。このため、コンクリートを打設した際に、透水性シート20及び養生シート10がずれて皺になってしまったりすることが抑制され、そのような皺がコンクリート表面に転写されることを防止して、より一層綺麗なコンクリート表面とすることが可能となる。
なお、上述した実施形態では、透水性シート20は、養生シート10の略全面を覆うように同じ大きさのシートを用いているが、例えば、図5に示すように、養生シート10よりも大きな面積を有する透水性シート20aを用い、透水性シート20aが型枠1の妻面5までに跨がるように型枠1に装着してもよい。このような型枠体30aを用いた場合には、透水性シート20aの両端が型枠1よりも外側に位置しているため、透水性シート20aによって捕獲されたコンクリートからの水分や気泡の除去排出をより効率的に行うことが可能となる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図6及び図7を参酌しながら、説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法において、型枠へ養生シート(非透水性シート)及び透水性シートを貼り付ける工法を順に示した断面図である。図7は、本発明の第2実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法をハンチ部の構築に適用した場合を示す模式的な断面図である。なお、以下の説明では、第1実施形態との相違点を主に説明し、共通する部分についてはその説明を省略する場合がある。
本実施形態に係る工法では、まず、図6の(a)に示されるように、ステップS1の準備工程として、コンクリート打設用の型枠1と、養生シート10と、2つの透水性シート28と、を準備する。なお、型枠1、養生シート10及び透水性シート28の構成や材料等は第1実施形態と略同様であるが、透水性シート28が養生シート10の端部のみを覆う大きさでしかない点で相違する。
このような型枠1、養生シート10及び透水性シート28それぞれの準備が完了すると、まずは、図2(b)〜(c)に示すように、養生シート10を型枠1の打設面2の略全面に貼り付ける。その後、養生シート10の型枠1への貼付が完了すると、図2(c)〜図2(d)に示すように、2つの透水性シート28を養生シート10上の両端(図示ではその上端部と下端部)及び型枠1の妻面5に到るように貼り付ける。なお、この際、透水性シート28は、第1実施形態の変形例(図5参照)のように、その一端が型枠1の外部に到るようにして、コンクリート中の気泡や水分の外部排出をし易くしてもよい。また、本実施形態では、例えば2つの透水性シート28を用いて説明しているが、養生シート10のすべての端部に透水性シートが重なるようにする場合には、4つの透水性シートを用いることができる。
続いて、養生シート10及び透水性シート28が型枠1に装着された型枠体32の準備が完了すると、第1実施形態の製造方法と同様に、設置工程S3、打設工程S4、脱型工程S5、及び養生工程S6へと進み、コンクリート構造物が完成する。なお、第2実施形態の工法をハンチ部に適用した場合には、図7に示すように、型枠体32を配置して、コンクリートの打設等を行うことができる。
以上、本実施形態によるコンクリート構造物の製造方法でも、第1実施形態と同様に、透水性シート28及び水との接触角が50度以上である面を有する養生シート10を型枠1に装着して、これらのシート10,28を利用してコンクリートの打設等を行っている。そして、図8に示すように、コンクリート中の過剰な気泡Sが、透水性シート28(より具体的にはその内部の層)を介して、外部に排出される。このように、このコンクリート構造物の製造方法では、透水性シート28により、上述した非透水性の養生シート10の機能を超えるブリージング水や気泡の発生があった場合であっても、そのような過剰なブリージング水や気泡を端部に配置された透水性シート28により、型枠1の外部に排出することができる。その結果、本実施形態に係る製造方法によれば、非透水性の養生シート10の利用によって圧縮強度や耐久性を向上できることに加え、透水性シート28及び養生シート10の併用によってコンクリート構造物の表面美観を更に向上させることが可能となる。なお、その他の作用効果についても第1実施形態と同様なものを奏することが可能である。
なお、本実施形態では、装着工程において、透水性シート28が非透水性の養生シート10の端部を覆うように透水性シート28を養生シート10の端部上に重なるように装着している。このため、主に端部からコンクリート内の余剰な水分や空気を外部に排出させることができ、コンクリート表面の全体の美観を更に向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく様々な実施形態に適用することができる。例えば、上記実施形態では、本工法を主にハンチ部に適用した場合を例にとって説明したが、ハンチ部以外のコンクリート構造物に本工法を適用してもよい。また、本実施形態に用いられる養生シート10は、シートの水蒸気透過性の小さいものを用いることが好ましく、シートの水蒸気透過性が10g/m・24h以下であることが好ましく、シートの水蒸気透過性が5g/m・24h以下であることがより一層好ましい。また、養生シート10は、シートの二酸化炭素透過性の小さいものを用いることが好ましく、シートの二酸化炭素透過性が10万cc/m・24h・atm以下であることが好ましく、シートの二酸化炭素透過性が5万cc/m・24h・atm以下であることがより一層好ましい。素材の表面を各種表面加工技術によって加工することで、水蒸気透過性又は二酸化炭素透過性を小さくしたシートを作製することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、実施例として、図9に示すハンチ部を有するコンクリート構造物の供試体T1と、比較例1として、図9に示すハンチ部を有するコンクリート構造物の供試体T2とを作製した。なお、図9に示すように、供試体T1(実施例)と供試体T2(比較例1)とは、一体の供試体Tとして作製した。
図9に示す供試体Tを作製するための型枠体として、図10に示す型枠体を準備した。この型枠体では、ハンチ部にかかる傾斜面以外の型枠の打設面(垂直方向の面)には、養生シートのみを貼付け、ハンチ部にかかる傾斜面には、実施例として、型枠の設置面上に養生シートと透水性シートとをこの順に互いに重なるように貼付け、一方、比較例1として、型枠1の設置面上に養生シートのみを貼り付けた。なお、各シートの端部は、両面テープによって型枠に固定した。養生シートとしては、水との接触角が96度のPPからなる非透水性シートを用いた。また、透水性シートしては、東洋紡株式会社製の「エアレックスシート(エアレックスは登録商標)」を用いた。また、ハンチ部の傾斜角については、底辺に対するなす角が55度となるようにした。そして、上記に示した示す型枠体を所定の位置に配置した。
次に、以下の表1に記載のコンクリート材料を表2に示す配合にて混合して得たコンクリート材料をこの型枠体の内に打設した。
Figure 0006851168
Figure 0006851168
その後、コンクリートの固化後に型枠を脱型して、図11及び図12に示すように、コンクリート構造物の供試体T(T1及びT2)を得た。図11は、図10に示す型枠を用いてコンクリート構造物の供試体を作製して脱型した際の表面形状を示す写真であり、養生シート及び透水性シートがコンクリート表面に残置された状態を示す。図12は、図11に示すコンクリート構造物の供試体から養生シート及び透水性シートを剥離した後の表面形状を示す写真である。図12に示すように、実施例に示す供試体T1のハンチ部では、ほとんどコンクリート表面に気泡の跡が見られず、コンクリート構造物の表面形状が綺麗に仕上がっているのに対し、比較例に示す供試体T2のハンチ部では、そのコンクリート表面にやや気泡の跡が見られた。なお、供試体T1及びT2のいずれもハンチ部以外の面(垂直方向の面)においては、コンクリート表面に気泡の跡がほとんど見られなかった。つまり、本発明に係る工法によれば、ハンチ部のような気泡が発生しやすい場所であっても、その気泡の影響を排除して、より美しいコンクリート表面を形成することが可能でることが確認された。
また、比較例2として、木製の型枠のみを用いて、図9に示す形状のコンクリート構造物の供試体T3を作製した。図13に示すように、比較例2に示す供試体T3では、ハンチ部のみならず、ハンチ部以外の面(垂直方向の面)にも気泡の跡がみられた。
以上から、本工法によれば、コンクリート構造物の表面の品質(表面形状等)をより一層向上させることができることが確認された。
1…型枠、2…打設面、5…妻面、10…養生シート(非透水性シート)、20,20a,28…透水性シート、22…フィルタ層、24…通水通気層、26…粘着層、30,30a,32…型枠体。

Claims (4)

  1. コンクリート打設用の型枠、型枠用の透水性シート、及び、少なくともコンクリート打設側の面の水との接触角が50度以上である非透水性シートを準備する準備工程と、
    前記型枠の打設面上に前記透水性シート及び前記非透水性シートを装着する装着工程と、
    前記型枠を所定の位置に設置する設置工程と、
    前記型枠に前記透水性シート及び前記非透水性シートが装着された状態でコンクリートの打設を行う打設工程と、
    前記コンクリートの打設後に前記型枠を脱型する脱型工程と、
    前記脱型工程の後に少なくとも前記非透水性シートを前記コンクリートの表面に残置させ、当該非透水性シートにより前記コンクリートを養生する養生工程と、を備え、
    前記装着工程では、前記非透水性シートを前記型枠の打設面側に位置させて前記型枠の前記打設面の略全面に前記非透水性シートを装着し、前記透水性シートを前記コンクリート側に位置させて前記透水性シートが前記非透水性シートの端部のみを覆うように前記透水性シートを前記非透水性シートの端部上に装着し、
    前記透水性シートは、前記コンクリート側に位置し細孔を含んで構成されるフィルタ層と、前記フィルタ層よりも目が粗い通水通気層とを含んで構成されており、当該フィルタ層が前記コンクリート中のセメント分と水及び空気とを分離することを特徴とする、
    コンクリート構造物の製造方法。
  2. 前記透水性シートが不織布から構成されることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート構造物の製造方法。
  3. 前記透水性シートは、少なくとも前記型枠の妻面までに跨がるように前記型枠に装着されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の製造方法。
  4. 前記透水性シート及び前記非透水性シートは、その間に配置された粘着層又は粘着部材により互いに貼り合わされることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
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