JP2016176311A - コンクリート構造物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 養生シートの継目部分のコンクリート養生をより確実に行うと共に、作業効率を向上させたコンクリート構造物の製造方法を提供する。
【解決手段】 コンクリート構造物の製造方法は、コンクリート打設用の型枠5の内面に養生シート10,12が貼付けされた状態でコンクリートの打設を行う打設工程と、コンクリートの打設後に型枠5を脱型する脱型工程と、脱型工程の後に養生シート10,12をコンクリートの表面に残置させて、コンクリートを所定期間養生する養生工程と、を備えている。この製造方法では、養生シート10,12を型枠5の内面に貼付けする際、隣接する養生シート10,12間の隙間11が帯状の継目用シート20によって覆われ、継目用シート20が養生シート10,12それぞれの継目側の縁部10c,12cに接着される。
【選択図】図3

Description

本発明は、コンクリート構造物の製造方法に関する。
コンクリート構造物を構築する際、打設したコンクリートを養生シートで覆い、コンクリートを養生することが行われている。このような養生シートによるコンクリート養生では、各養生シート間に隙間が形成されてしまうことがあるが、隙間が形成されてしまうと、かかる部分の養生が不十分となってしまう。そこで、例えば、脱型後のコンクリート表面に貼り付ける養生シート同士をガムテープで連結したり又は別のシートで隙間を覆ったり、若しくは、養生シートの端部同士を重ね合わせたりして、かかる隙間が生じないようにしてコンクリート養生を行うようにしている(例えば特許文献1,2参照)。
特開2002−089045号公報 特開2005−188241号公報
しかしながら、型枠脱型後に貼り付けた養生シートの隙間などの継目にテープ等を貼り付けたとしても、コンクリートの養生が十分にできていない場合があった。また、型枠脱型後にコンクリート表面を養生シートで覆い、その継目にテープ等を貼り付ける場合、作業効率が悪くなる場合もあった。
そこで、本発明の課題は、養生シートの継目部分のコンクリート養生をより確実に行うと共に、作業効率を向上させたコンクリート構造物の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート打設用の型枠の内面に養生シートが貼付けされた状態でコンクリートの打設を行う打設工程と、コンクリートの打設後に型枠を脱型する脱型工程と、脱型工程の後に養生シートをコンクリートの表面に残置させて、コンクリートを所定期間養生する養生工程と、を備えている。そして、この製造方法では、養生シートを型枠の内面に貼付けする際、隣接する養生シート間の継目が帯状の継目用シートによって覆われ、当該継目用シートが養生シートそれぞれの継目側の縁部に接着されることを特徴としている。
このコンクリート構造物の製造方法では、コンクリート打設前の養生シートを型枠の内面に貼付けする際、隣接する養生シート間の継目を継目用シートによって覆うようにしている。この場合、打設されたコンクリートを継目部分を含めて初期段階から養生することができるため、養生シートの継目部分を含めたコンクリート養生をより確実に行うことができる。また、この製造方法では、養生シートを型枠の内面に貼付けする際に、かかる継目用シートを養生シート間の継目を覆うように接着している。この場合、予め継目用シートを接着させてからコンクリートを打設するため、脱型後に継目部分を隠すよりも作業を効率的に行うことができる。しかも、この場合、コンクリートの打設前に養生シートの縁部を継目用シートで覆うようになるため、端部処理が施されていない養生シートであってもコンクリートへの食い込みを予防することができる。
上記のコンクリート構造物の製造方法において、継目用シートの一方の面には凸状シボ部又は凹状シボ部が形成されており、継目用シートは、凸状シボ部又は凹状シボ部が形成されている面がコンクリート打設側となるように養生シートの縁部に接着されることが好ましい。この場合、打設したコンクリート内にこれらシボ部が残置することになり、継目用シートに接着された養生シートを打設コンクリートの表面に確実に残置させることができる。なお、継目用シートの凸状シボ部の高さ又は凹状シボ部の深さは1μm以上且つ2000μm以下であることがより好ましい。シボ部の高さ又は深さが1μm以上であることにより、養生シートの残置性を高めることができる。一方、シボ部の高さ又は深さが2000μm以下であることにより、継目用シート等を養生後にコンクリートから取り外した際、コンクリート表面に残るシボ部の跡を薄くすることができ、コンクリート表面を綺麗な状態とすることが可能となる。
上記のコンクリート構造物の製造方法では、継目用シートは、コンクリート打設側が山となるように折り曲げ可能であってもよい。この場合、日射や水和熱等により養生シートに膨張(又は収縮)等が生じても、折り曲げ可能な継目用シートにより、かかる養生シートの膨張等を吸収することができる。しかも、コンクリート打設側に山となるように移動するため、かかる山の先端部分をコンクリート内に浸入させて、養生シートをより確実にコンクリート表面に残置させることも可能となる。
上記のコンクリート構造物の製造方法では、継目用シートは、養生シートのコンクリート打設側の面上の端部に接着されることが好ましい。この場合、型枠の内面に養生シートを貼り付けるといった作業を効率的に行うことが可能となる。なお、継目用シートは、養生シートの型枠側の面上の端部に接着されてもよい。
上記のコンクリート構造物の製造方法では、継目用シートは、シート本体部とシート本体部上に配置される接着部とを有しており、シート本体部には複数の貫通孔が形成されていることが好ましい。この場合、打設されたコンクリートの一部が貫通孔内に浸入して固化するため、継目用シート及び継目用シートに接着される養生シートのコンクリート表面への残置性をより一層、高めることができる。また、継目用シートに凸状シボ部が形成されている場合、凸状シボ部の頂部又は側壁部に貫通孔が形成されるのが好ましい。この場合、打設されたコンクリートの一部が貫通孔及び凸状シボ部内に浸入して固化するため、継目用シート及び継目用シートに接着される養生シートのコンクリート表面への残置性をより一層、高めることができる。
上記のコンクリート構造物の製造方法では、継目用シートは、隣接する養生シート間の継目すべてを覆うように養生シートに接着されることが好ましい。この場合、継目部分すべてのコンクリート養生をより確実に行うことができる。また、継目用シートは、養生シートの継目部分側の角部を覆うように養生シートに接着されることが好ましい。コンクリートを打設する際に養生シートの角部がしっかりと押さえられていないと、打設されるコンクリートにより養生シートの剥がれが発生してしまう虞があるが、養生シートの角部を継目用シートによりしっかりと押さえておくことで、かかる養生シートの剥がれを抑制することができる。また、型枠脱型後にコンクリート表面に残置された養生シートはその角部から剥がれてしまいやすく、そのままでは養生が適切に行えない場合があるが、養生シートの角部を継目用シートで覆っておくことにより、養生シートの剥がれを抑制することができ、コンクリートの養生をより一層、確実に行うことが可能となる。
上記のコンクリート構造物の製造方法では、継目用シートは、養生シートと同じ素材からなるシート本体を有することが好ましい。継目用シートのシート本体が養生シートと同じ素材から形成されることにより、継目部分においても養生シートと同様のレベルの養生処理を行うことが可能となる。なお、ここでいう「同じ素材」とは、まったく同じ材料からなる場合のみを意味するのではなく、素材として熱可塑性樹脂を用いる場合は同じ熱可塑性樹脂全般を含む趣旨である。例えば、低密度ポリエチレンを用いる場合は、低密度ポリエチレン全般を含むことを意味する。
また、本発明は、上記のコンクリート構造物の製造方法に用いられる継目用シートの発明としても捉えることができ、この継目用シートは、帯状のシート本体部と、シート本体部の一方の面に少なくともその端辺に沿って配置される接着部と、を備えることを特徴としている。このような継目用シートを上述した製造方法に用いることにより、養生シートの継目部分の養生をより確実に行うと共に作業効率を向上させることができる。
本発明によれば、養生シートの継目部分のコンクリート養生をより確実に行うと共に作業効率を向上させたコンクリート構造物の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法の概要を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法の概要を示す断面図である。 養生シート間の隙間を継目用シートで塞いだ状態を示す平面図である。 継目用シートの一例を示す図であり、(a)はその上面図、(b)はその下面図、(c)はC−C線に沿った断面図である。 継目用シートの他の例を示す図であり、(a)はその上面図、(b)はその下面図、(c)はC−C線に沿った断面図、(d)は当該シートが折り曲がった状態を示す断面図である。 継目用シートの別の例を示す図であり、(a)はその上面図、(b)はその下面図、(c)は、C−C線に沿った断面図である。 隙間用シートの更に別の例を示す図であり、(a)はその上面図、(b)はそのシボ部の模式的な断面図である。 実施例における試験結果を示す図であり、(a)は、中性化速度係数を示す表であり、(b)は、残置力を示す表である。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るコンクリート構造物の製造方法について説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法の概要を示すフローチャートであり、図2は、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法の概要を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法は、養生シート及び型枠を設置する設置工程(ステップS1)、コンクリートを打設する打設工程(ステップS2)、打設コンクリートの硬化後に養生シートを残置したまま型枠を脱型する脱型工程(ステップS3)、及び、残置された養生シートでコンクリート構造物を養生する養生工程(ステップS4)を含む。
ステップS1の設置工程では、まず、図2の(a)に示されるように、コンクリート構造物7aを養生する際に用いる複数の養生シート10,12を準備する。なお、一般的なコンクリート構造物を製造する際、通常は多数の養生シートを用いるが、本実施形態では説明を容易にするため2枚の養生シート10,12を用いた場合を例にとって説明する。但し、3枚以上の養生シートを用いた場合でも同様である。本実施形態に用いられる養生シート10,12は、例えば矩形形状のシートであり、0.02mm〜2.0mm程度の厚みを有する。養生シート10,12としては、熱可塑性樹脂シートを用いることが好ましく、ここで用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂;ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。なお、養生シート10,12や後述する継目用シート20としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーとは、エチレンープロピレン共重合体又はポリプロピレンとエチレンープロピレンゴムの溶融混合物又は重合反応物であり、例えば、株式会社プライムポリマー製「プライムTPO(登録商標)」、日本ポリプロ株式会社製「ニューコン(登録商標)」、サンアロマー株式会社製「キャタロイ」、三菱化学社製「ゼラス(登録商標)」、等が挙げられる。
養生シート10,12及び型枠5の準備が終了すると、図2の(b)に示すように、養生シート10,12を型枠5の内面(コンクリート打ち込み側の面)に貼り付ける。この貼り付けの際、複数の養生シート10,12の一方の面10a,12aがコンクリート打設側の面となり、他方の面10b,12bが型枠5側の面となる。養生シート10,12を型枠5に貼り付ける際、両養生シート10,12は、例えば互いに隣接して配置され、型枠5に貼り付けられる(図3参照)。そして、両養生シート10,12間の継目部分(隙間)は継目用シートにより覆われ、継目部分が打設コンクリートへ露出しないようにされる。詳細については後述する。
続いて、ステップS2の打設工程に進み、図2(c)に示すように、型枠5の内面に養生シート10,12が貼り付けられた状態でコンクリート7の打設を行う。その後、コンクリートの締固めが終了すると、型枠5をはめたまま、コンクリート7の湿潤養生を例えば7日〜28日程度行い、コンクリートを硬化させる。コンクリート7が硬化するまでそのままの状態を維持する。
続いて、打設工程でのコンクリートの打設及びその硬化が完了したら、ステップS3の型枠を脱型する脱型工程に進み、図2(d)に示すように、硬化したコンクリート7の表面を養生シート10,12が覆うように残置したまま型枠5を脱型し、コンクリート7から引き離す。
続いて、型枠5を脱型した後、ステップS4の養生工程に進み、コンクリート7の貼付面に残置された養生シート10,12を用いて、コンクリート7を所定期間養生する。養生シート10,12による養生は、型枠5の脱型後30日以上養生を続けてもよいし、型枠5の脱型後90日以上養生を続けてもよい。更に、コンクリート構造物の引き渡しに至るまで(例えば脱型後1年以上)養生を続けてももちろんよい。このような長期の養生を続けることにより、コンクリート7の強度を飛躍的に高めて、その品質を向上することができる。所定期間の養生が終了すると、図2(e)に示すように、養生シート10,12をコンクリート7から取り外し、これにより、コンクリート構造物7aが完成する。
次に、図3を参照して、設置工程S1において、養生シート10,12間の継目部分を継目用シート20で覆い、その後の打設工程S2等においても、この継目に対応する部分も含めてコンクリートを確実に養生するための方法についてより詳細に説明する。
図3は、養生シート間の隙間を継目用シートで塞いだ状態を示す平面図である。図3に示すように、養生シート10,12間の継目部分には、養生シート10,12を型枠5に貼り付ける際に隙間11が生じてしまうことがある。本実施形態にかかるコンクリート構造物の製造方法では、かかる隙間11に対応するコンクリート部分も確実に養生されるように、継目用シート20により隙間11をすべて覆うようにしている。この際、継目用シート20は、養生シート10,12の継目側の両角部10d,10e,12d,12eも覆っている。また、継目用シート20は接着部を有しており、隣接する養生シート10,12間の継目部分である隙間11を覆うように継目用シート20が養生シート10,12それぞれの継目側の縁部10c,12cに当該接着部により接着され固定されている。なお、図3の例では、1枚の型枠5に2枚の養生シート10,12を設置しているが、これに限定される訳ではなく、各型枠に一枚の養生シートをそれぞれ設置するようにしてもよいし、適宜、変更することが可能である。本実施形態にかかる製造方法では、このように隙間11を塞いで、コンクリートの打設や養生を実施する。
次に、図4を参照して、隙間を塞ぐ継目用シート20をより詳細に説明する。図4は、継目用シートの一例を示す図であり、(a)はその上面図、(b)はその下面図、(c)はC−C線に沿った断面図である。図4に示すように、継目用シート20は、所定の厚みを有する帯状のシート本体部22と、シート本体部22の一方の面22b上に配置される接着部24とを備えている。
シート本体部22は、例えば、熱可塑性樹脂シートから構成されており、養生シート10,12と同種の材料から構成されていることが好ましい。但し、シート本体部22は、コンクリートの養生を行うことが可能な材料から構成されていればよく、養生シート10,12と異なった材料から構成されていてもよい。シート本体部22は、養生シート10,12と同様に0.02mm〜2.0mm程度の厚みを有し、平面視した際に帯状となる縦長の矩形形状を呈している。
接着部24は、例えば、両面テープ又は各種の接着剤等から構成されている。接着部24は、図4に示す例では、シート本体部22の端辺に沿った両端部にのみ配置されているが、シート本体部22の裏面22b全体を覆うように配置されていてもよい。なお、接着部24を設ける代わりに、シート本体部22の一部を熱で溶融させて養生シート10,12に接着固定して、隙間11を覆うようにしてもよい。
このような構成を備えた継目用シート20は、例えば、図3に示すように、表面22aが打設コンクリート側を向き、裏面22bが型枠5側を向くように、打設コンクリート側から養生シート10,12に接着されることが好ましい。但し、継目用シート20は、表面22aが型枠5側を向き、裏面22bが打設コンクリート側を向くように、型枠側から養生シート10,12に接着されてもよい。
このように、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法によれば、コンクリート打設前の養生シート10,12を型枠5の内面に貼付けする際、隣接する養生シート10,12間の継目部分(隙間11)を継目用シート20によって覆うようにしている。このため、打設されたコンクリートを継目部分を含めて初期段階から養生することができるため、養生シート10,12の継目部分を含めたコンクリート養生をより確実に行うことができる。また、この製造方法では、養生シート10,12を型枠5の内面に貼付けする際に、かかる継目用シート20を養生シート10,12の隙間11を覆うように接着している。このように予め継目用シート20を接着させてからコンクリートを打設するため、脱型後に継目部分を隠すよりも作業を効率的に行うことができる。しかも、この場合、コンクリートの打設前に養生シート10,12の縁部を継目用シートで覆うようになるため、端部処理が施されていない養生シート10,12であってもコンクリートへの食い込み等を予防することができる。
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、継目用シート20は、養生シート10,12のコンクリート打設側の面10a,12a上の縁部10c,12cに接着されている。このため、型枠5の内面に養生シート10,12を貼り付けるといった作業を効率的に行うことが可能となる。
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、継目用シート20は、隣接する養生シート10,12間の継目である隙間11すべてを覆うように養生シート10,12に接着固定されている。このため、継目部分である隙間11全体に対応するコンクリート部分を含めて養生をより確実に行うことができる。また、継目用シート20は、養生シート10,12の継目部分側の角部10d,10e,12d,12eを覆うように養生シート10,12に接着されている。コンクリートを打設する際に養生シートの角部がしっかりと押さえられていないと、打設されるコンクリートにより養生シートの剥がれが発生してしまう虞があるが、本実施形態では、養生シート10,12の角部10d,10e,12d,12eを継目用シート20によりしっかりと押さえておくことで、かかる養生シート10,12の剥がれを抑制することができる。また、型枠脱型後にコンクリート表面に残置された養生シートはその角部から剥がれてしまいやすく、そのままでは養生が適切に行えない場合があるが、本実施形態では、養生シート10,12の角部10d,10e,12d,12eを継目用シート20で覆って接着しておくことにより、養生シート10,12の剥がれを抑制することができ、コンクリートの養生をより一層、確実に行うことが可能となる。
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、継目用シート20は、養生シート10,12と同じ素材からなるシート本体部22を有している。このように、継目用シート20のシート本体部22が養生シート10,12と同じ素材から形成されることにより、継目部分においても養生シート10,12と同様のレベルの養生処理を行うことが可能となる。なお、ここでいう「同じ素材」とは、まったく同じ材料からなる場合のみを意味するのではなく、素材として熱可塑性樹脂を用いる場合は同じ熱可塑性樹脂全般を含む趣旨である。例えば、低密度ポリエチレンを用いる場合は、低密度ポリエチレン全般を含むことを意味する。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく様々な実施形態に適用することができる。例えば、上記実施形態では、養生シート10,12間の隙間11を覆う継目用シートとして、図4に示す継目用シート20を例示したが、継目用シートはこれに限定される訳ではなく、種々のシートを用いることができる。例えば、図5に示す継目用シート30は、継目用シート20と同様なシート本体32とその裏面32bに設けた接着部34とを備えた構成であるが、図5の(a)及び(c)に示すように、コンクリート打設側の面30aに長手方向に沿って延びる折り曲げ用の溝30cを更に備えている。継目用シート30では、この折り曲げ用の溝30cにより、図5の(d)に示すように、コンクリート打設側(表面32a側)が山となるように折り曲げることが可能となる。折り曲げ用の溝30cを設けて折り曲げ可能とすることにより、この継目用シート30によれば、日射や水和熱等により養生シート10,12に膨張(又は収縮)等が生じても、折り曲げ可能な継目用シート30により、かかる膨張等を吸収することができる。しかも、コンクリート打設側に山となるように変化するため、かかる山の先端部分をコンクリート内に浸入させて、養生シート10,12をより確実にコンクリート表面に残置させることも可能となる。
また別の例として、図6に示す継目用シート40は、継目用シート20と同様なシート本体42とその裏面42bに設けた接着部44とを備えた構成であるが、図6の(a)及び(c)に示すように、コンクリート打設側の表面42aに微小突起である凸状又は凹状のシボ部46を更に備えている。図6に示すシボ部46は、これら微小な突起の集合体を示している。このシボ部46は、継目用シート40の長手方向に沿って延びている。継目用シート40は、凸状シボ部46又は凹状シボ部46が形成されている面42aがコンクリート打設側となるように養生シート10,12の縁部に接着されることが好ましい。このような継目用シート40を用いた場合、打設したコンクリート内にこれらシボ部46が残置されることになり、継目用シート40に接着された養生シート10,12を打設コンクリートの表面により確実に残置させることができる。継目用シート40の凸状シボ部46の高さ又は凹状シボ部46の深さは1μm以上且つ2000μm以下であることが好ましい。シボ部46の高さ又は深さが1μm以上であることにより、養生シート10,12のコンクリートへの残置性を高めることができる。一方、シボ部46の高さ又は深さが2000μm以下であることにより、継目用シート40等を養生後にコンクリートから取り外した際、コンクリート表面に残るシボ部の跡を薄くすることができ、コンクリート表面を綺麗な状態とすることが可能となる。なお、継目用シート40にシボ部46を設けてコンクリートへの残置性を高めることができるため、継目用シート40を用いた場合、特に残置機能がない養生シート10,12を用いたとしても、継目用シート40により、養生シート10,12をより確実にコンクリート表面に残置させることができる。また、図5等に示す継目用シート30に、これらシボ部46を更に設けるようにしてもよい。なお、継目用シートに凸状シボ部を形成する場合において、凸状シボ部の頂部又は側壁部に貫通孔を形成するようにしてもよい。この場合、打設されたコンクリートの一部が貫通孔及び凸状シボ部内に浸入して固化するため、継目用シート及び継目用シートに接着される養生シートのコンクリート表面への残置性をより一層、高めることができる。
また、更に別の例として、図7に示す継目用シート50では、凸状シボ部56をシートの表面に列状に形成すると共に、その両端部に複数の貫通孔58を設けることも可能である。なお、図7では、接着部の記載を省略し、凸状シボ部56が各微小突起を示している。このような貫通孔58を継目用シート50に設けた場合、打設されたコンクリートの一部が貫通孔58内に浸入して固化するため、継目用シート50に接着される養生シート10,12のコンクリート表面への残置性をより一層高めることができる。なお、ここで用いる凸状シボ部56の高さHは、例えば1μm以上且つ2000μm以下である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、実施例1として、以下の材料からなる養生シート及び継目用シートを準備した。なお、養生シートは19.8cm×39.8cmの大きさを有しており、継目用シートは、幅56.0mm×長さ39.7cmの大きさを有していた。また、継目用シートには、図4に示したように、その両端部に両面テープを接着して接着部を形成した。
養生シート:ポリプロピレン
継目用シート:ポリプロピレン
次に、コンクリートの打設に用いる型枠を準備した。準備した型枠の寸法は、40cm×40cm×10cmであった。そして、上述した養生シートをポリビニルアルコール水溶液(10重量%)により型枠の内面に貼付けると共に、養生シート間の継目部分(隙間)を覆うように継目用シートを接着部により、隣接する養生シートに接着固定した。その後、以下の表1に記載のコンクリート材料を表2に示す配合にて混合して得たコンクリート材料を型枠内に打設し、コンクリートの固化後に型枠を脱型して、コンクリート構造物の試験体を得た。
Figure 2016176311
Figure 2016176311
また、比較例1として、養生シート間の隙間を継目用シートで覆わない点以外は、実施例1と同様にして、コンクリート構造物の試験体を得た。
その後、図8の(a)に示すように、比較例1の合板部(隙間部)、実施例1の養生シート部、及び、実施例1の継目用シート部それぞれに対応するコンクリートにおける中性化速度係数(中性化深さ)をJIS A 1152に準じて測定した。その結果、実施例1における継目用シート部に対応するコンクリートでの中性化速度係数は、実施例1における養生シート部に対応するコンクリートでの中性化速度係数と略同程度であり、比較例1に示すように継目用シートを用いなかった場合に比べ、中性化速度係数を低くすることができた。つまり、実施例1のように養生シート間の継目(隙間)を継目用シートで覆うことで、継目に対応する部分も含めて、コンクリートの養生を確実に行うことができ、コンクリート構造物の耐久性を全体的に向上させることができることが確認された。
次に、継目用シートによるコンクリートへの残置力の試験を行った。なお、本試験の実施例2に用いた継目用シートのコンクリート打設側の表面には、シート1m(幅12mm)あたりの凹凸度(凸部面積の比率)が0.031[m/m]となるように複数の凸状シボ部が設けられていた。また、シートの一方の側辺には長手方向に連続する所定ピッチ(4mm)の貫通孔(孔径1.5mm)が形成されていた。なお、この継目用シートは、ポリプロピレンから構成されていた。
このような構成の継目用シートを用いた場合の残置力の試験を以下の通り実施した。まず、予め釣り治具をセットした継目用シート(長さ30cm)を底板の型枠へ接着した。そして、その型枠に上記と同様のコンクリートを打ち込み、材齢3日で型枠を脱型し、実施例2に係るコンクリート試験体を得た。一方、アムスラー式試験機(UH-500kNI)に高性能フォースゲージ(FG-5005)を設置した。
その後、実施例2に係るコンクリート試験体に設置していた釣り治具を高性能フォースゲージに引っ掛けると共に、高性能フォースゲージを一定位置に保った状態で、継目用シートが貼り付けられたコンクリート試験体を載せた台を60mm/分で降下させた。その降下の際、コンクリートから継目用シートが剥がれる荷重を0.2秒ごとに測定し、その平均を残置力(g)として測定した。実施例2に係る試験体では、この残置力が500gであった。このように残置力が5g以上であると、型枠と養生シートとの間の接着力よりも残置力の方を大きくすることができ、型枠を脱型した際に養生シートをコンクリート側に残置させ易くなるが、実施例2にかかる継目用シートによれば、残置力を5g以上とすることができた。
また、実施例2に用いた継目用シートの凹凸度を0.02[m/m]又は0.0096[m/m]とそれぞれ変更した継目用シートを用いて、実施例3,4に係るコンクリート試験体を得て、その後、同様に残置力を測定した。
その結果、凹凸度が0.02[m/m]である実施例3に係るコンクリート試験体では、残置力が150gであり、凹凸度が0.0096[m/m]である実施例4に係るコンクリート試験体では、残置力が100gであり、共に、基準となる5gより大きい残置力とすることができた。つまり、実施例2〜4に係る継目用シートを用いることにより、継目用シートに接着される養生シートをコンクリート表面に確実に残置できることが確認された。なお、凹凸度が0.07[m/m]を超えた場合、コンクリートに転写される凹凸形状が目立ち始めるため、継目用シートの凹凸度は0.07[m/m]以下であることが好ましい。
5…型枠、7…コンクリート、7a…コンクリート構造物、10,12…養生シート、10c,12c…縁部、10d,10e,12d,12e…角部、11…隙間、20,30,40,50…継目用シート、22,32,42…シート本体部、24,34,44…接着部、46,56…シボ部、58…貫通孔。

Claims (10)

  1. コンクリート打設用の型枠の内面に養生シートが貼付けされた状態でコンクリートの打設を行う打設工程と、
    前記コンクリートの打設後に前記型枠を脱型する脱型工程と、
    前記脱型工程の後に前記養生シートを前記コンクリートの表面に残置させて、前記コンクリートを所定期間養生する養生工程と、を備え、
    前記養生シートを前記型枠の内面に貼付けする際、隣接する前記養生シート間の継目が帯状の継目用シートによって覆われ、当該継目用シートが前記養生シートそれぞれの継目側の縁部に接着されることを特徴とする、コンクリート構造物の製造方法。
  2. 前記継目用シートの一方の面には凸状シボ部又は凹状シボ部が形成されており、
    前記継目用シートは、前記凸状シボ部又は凹状シボ部が形成されている面がコンクリート打設側となるように前記養生シートの縁部に接着されることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート構造物の製造方法。
  3. 前記継目用シートの前記凸状シボ部の高さ又は前記凹状シボ部の深さが1μm以上且つ2000μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のコンクリート構造物の製造方法。
  4. 前記継目用シートは、コンクリート打設側が山となるように折り曲げ可能であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
  5. 前記継目用シートは、前記養生シートのコンクリート打設側の面上の前記縁部に接着されることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
  6. 前記継目用シートは、シート本体部と前記シート本体部上に配置される接着部とを有しており、前記シート本体部には複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
  7. 前記継目用シートは、隣接する前記養生シート間の継目すべてを覆うように前記養生シートに接着されることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
  8. 前記継目用シートは、前記養生シートの前記継目側の角部を覆うように前記養生シートに接着されることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
  9. 前記継目用シートは、前記養生シートと同じ素材からなるシート本体を有することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
  10. 請求項1〜9の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法に用いられる継目用シートであって、
    帯状のシート本体部と、前記シート本体部の一方の面に少なくともその端辺に沿って配置される接着部と、を備えたことを特徴とする継目用シート。
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