JP5777229B1 - プレキャストコンクリート製品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面の仕上がり状態が良好なプレキャストコンクリート製品の製造方法を提供する。【解決手段】 プレキャストコンクリート製品の製造方法は、コンクリート打設用の型枠1に養生シート3を貼り付ける貼付け工程と、型枠1の内面に養生シート3が貼り付けられた状態で型枠1内にコンクリート5を打設する打設工程と、打設工程で型枠1内に打設されたコンクリート5を振動及び加圧の少なくとも一方を用いて締固めし、コンクリート製品5aを形成する締固め工程と、締固め工程の後、養生シートをコンクリート製品の表面上に残置したまま型枠を脱型する脱型工程とを備え、打設工程等において用いる養生シートは非透水性である。【選択図】図1

Description

本発明は、プレキャストコンクリート製品の製造方法に関するものである。
橋梁やトンネル等のコンクリート構造物を施工する際、コンクリートの打設等の作業をすべて施工現場で行う場合と、コンクリート構造物を部品化し、部品化されたコンクリート製品を工場で予め生産しておき施工現場ではそれらを部材として使用してコンクリート構造物に仕上げる場合とがある。後者のように部品化されたコンクリート製品(プレキャストコンクリート製品)を予め工場で生産しておく場合、生産効率を向上させるため、打設されたコンクリートに振動等を付与して硬化を促進させ、即時脱型を行ったりしている。一方、即時脱型する場合、打設されたコンクリートが完全に硬化していない状態で脱型されることになり、コンクリート表面が粗面化してしまうことがある。そこで、例えば特許文献1に記載のように、透水性(透水孔)を有する離形シート及びその離形シートの外側に配置される吸水性シート(不織布)から成る二層シートを型枠の内面に貼り付けて、コンクリート表面の粗面化を防止することが提案されている。
特開平07−180348号公報
ところで、プレキャストコンクリート製品を生産効率よく且つ低コストで製造しようとした場合、例えばゼロスランプのコンクリートを用いて型枠の早期脱型を行うといったことが考えられる。しかしながら、ゼロスランプなどのスランプ値の低いコンクリートを用いた場合、含有される水分量が少ないため、製造されるコンクリート製品の表面が更に粗面化し易いといった問題があった。つまり、平滑な表面を有するコンクリート製品を取得することが難しかった。また、ゼロスランプ以外のコンクリートを用いた場合であっても、その表面の仕上がり状態がより良好なプレキャストコンクリート製品が望まれている。
そこで、本発明の課題は、表面の仕上がり状態が良好なプレキャストコンクリート製品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、プレキャストコンクリート製品の製造方法に関する。このプレキャストコンクリート製品の製造方法は、コンクリート打設用の型枠に養生シートを貼り付ける貼付け工程と、型枠の内面に養生シートが貼り付けられた状態で型枠内にコンクリートを打設する打設工程と、打設工程で型枠内に打設されたコンクリートを振動及び加圧の少なくとも一方を用いて締固めし、コンクリート製品を形成する締固め工程と、締固め工程の後、養生シートをコンクリート製品の表面上に残置したまま型枠を脱型する脱型工程と、を備え、養生シートは非透水性であることを特徴としている。
このプレキャストコンクリート製品の製造方法では、打設工程や脱型工程後の養生に用いる養生シートが非透水性となっている。この場合、型枠内に打設されるコンクリート中の水分の外部への逸散を抑制し易くなるため、製造されるコンクリート製品の表面の仕上がり状態を良好なものとすることができる。なお、ここでいう「非透水性」とは、例えば、養生シートの水蒸気透過性が10g/m・24h以下であることを意味し、より好ましくは、養生シートの水蒸気透過性が5g/m・24h以下である。また、打設コンクリートと型枠との間に養生シートが配置されることから、型枠清掃の必要性や剥離剤の使用を低減させることができる。剥離剤を使用しない場合、剥離剤の使用によってコンクリート表面に発生する色ムラを抑制することもできる。
上記のプレキャストコンクリート製品の製造方法において、打設工程で用いられる養生シートのコンクリート側の接触面の水との接触角が50度以上であることが好ましい。この場合、打設後にコンクリートが硬化する際、通常発生するブリージング水の発生を、かかる接触角を有する養生シートによって効果的に抑制することができる。このようにブリージング水の発生が抑制されるのは、コンクリート表面を覆っている養生シートのシート面(接触面)の接触角(濡れ角とも言う)が大きいと、コンクリート内に含まれていてその表面から外に出ようとする水や当該水中に存在する空気がシート接触面においてコンクリート内部に押し戻される作用が働き、その結果、水及びその内部の空気がコンクリート内に残存したまま硬化が進むためと考えられる。なお、ここでいう「接触角」は、水が常温(23℃)の場合を意味する。
また、上述した製造方法では、脱型前においてコンクリート内の空気が表面に集まることが抑制されるため、コンクリート表面の気泡(あばた)の発生を抑え、これにより、外観の良い美しいコンクリート構造物を製造することも可能である。また、上述した養生シートは、コンクリートからの剥離が容易であり、従来のように型枠とコンクリートを付着させないため、剥離剤を型枠内面に塗布する必要がなく、剥離剤によるコンクリート表面の汚れやシミの発生をより一層防止できる。
上記のプレキャストコンクリート製品の製造方法において、養生シートの線膨張係数が100μ/℃以下であることが好ましい。このような線膨張係数の養生シートを用いることにより、加温加湿養生を行った場合や貯蔵されているコンクリート製品に太陽光が照射された場合に養生シートが膨張してしまったり、適切な養生や汚れの付着防止といった機能が損なわれてしまったりといったことを防止することができる。
上記のプレキャストコンクリート製品の製造方法において、貼付け工程では、型枠を組み立てる際に養生シートを型枠の端部に挟み込ませることで養生シートの貼り付けを行ってもよい。この場合、複雑な取付け手段を用いることなく簡易な手段により養生シートを型枠に貼り付けることができる。型枠に錆等を発生させないようであれば、接着剤を用いて養生シートを型枠に貼り付けるようにしてもよい。
上記のプレキャストコンクリート製品の製造方法において、締固め工程で振動及び加圧の両方を用いて成型を行い、即時脱型を行ってもよい。この場合、振動及び加圧の両方を用いて締固めを行って硬化を促進させ即時脱型できるため、プレキャストコンクリート製品の生産効率をより一層高めることが可能となる。しかも、脱型後も養生シートがコンクリート製品の表面を覆っているため、コンクリート製品の表面状態を良好なものとすることができる。
上記のプレキャストコンクリート製品の製造方法において、締固め工程の後、蒸気養生を行う養生工程を更に備えてもよい。この場合、コンクリート製品の養生が促進されるため、品質の高いコンクリート製品を早期に取得することが可能となる。なお、本製造方法は、型枠とコンクリート製品との間に非透水性の養生シートを配置する方法であるため、かかるシートがない場合に比べて、蒸気が直接コンクリート製品の表面に触れることが抑制され、それにより、養生ムラの発生を抑制することができる。
上記のプレキャストコンクリート製品の製造方法において、養生シートが残置された状態でコンクリート製品を貯蔵及び運搬する貯蔵運搬工程を更に備えていることが好ましい。この場合、貯蔵運搬から供用に至るまでコンクリートの養生を長期に亘って続けることができることに加え、供用直前までコンクリート製品に対する汚れの付着や傷の発生を予防することができる。
上記のプレキャストコンクリート製品の製造方法において、養生シートには、光安定剤が添加されていることが好ましい。この場合、養生シートが残置されたままのコンクリート製品を長期間、屋外に貯蔵していたとしても、紫外線の曝露によるシート自体の劣化が進むことを抑制することができる。
上記のプレキャストコンクリート製品の製造方法において、養生シートは、打設側面が閉じた筒形状であることが好ましい。この場合、脱型工程で型枠を取り除いた際、コンクリート製品の外周に養生シートを簡単に残置させたままとすることができる。ここでいう「筒形状」とは、円筒形状や四角筒形状に限られるものではなく、コンクリート製品の側面を包み込む帯のような形状全般を意味し、好ましくは、底面無し又は底面に孔が形成されている。養生シートが有底の袋形状の場合、底に水がたまってしまいコンクリート製品に養生ムラが発生してしまう虞があるが、筒形状であることにより、底に水が溜まることがなく、より均質な養生を実行することができる。
上記のプレキャストコンクリート製品の製造方法において、打設工程において打設されるコンクリートは、固まらない状態のスランプ値がほぼゼロである固練りコンクリートであってもよい。このように含有水分の少ない固練りコンクリートを用いた場合であっても、本発明に係るプレキャストコンクリート製品の製造方法によれば、より平滑な表面を有するコンクリート製品を得ることができる。なお、ここでいう「スランプ値がほぼゼロ」とは、スランプ値が5cm以下であるコンクリートを意味している。
なお、上記のプレキャストコンクリート製品の製造方法に用いられるコンクリートとしては、所定のスランプ値を有する軟練りコンクリート、又は、自己充填性を有する高流動コンクリートであってもよい。また、当該コンクリートは、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、及びシリカフュームのうち少なくとも何れかを含む混合セメントコンクリートであってもよい。更に、当該コンクリートは、繊維補強コンクリートであってもよい。
本発明によれば、表面の仕上がり状態が良好なプレキャストコンクリート製品の製造方法を提供することができる。
本発明に係るプレキャストコンクリート製品の製造方法の一例を示す縦断面図であり、(a)は、型枠に養生シートを貼り付けた状態を示し、(b)は、型枠内にコンクリートを打設した状態を示し、(c)は、型枠を脱型した状態を示す。 図1に示す製造方法で製造されたコンクリート製品に養生シートが残置されたままの状態の一例を示し、(a)はその斜視図であり、(b)は上面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るプレキャストコンクリート製品の製造方法について説明する。この製造方法によって製造されるプレキャストコンクリート製品は、コンクリート二次製品とも呼ばれており、主に工場等で生産された後、施工現場に運搬され、コンクリート構造物の施工等にコンクリート部材として使用される。
まず、本実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の製造方法について、図1を参照して簡単に説明する。本実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の製造方法では、図1の(a)に示すように、まず、コンクリート打設用の型枠1を準備し、その型枠1の内面に養生シート3を貼り付ける(貼付け工程)。続いて、図1の(b)に示すように、型枠1の内面に養生シート3が貼り付けられた状態でその型枠1内にコンクリート5を打設する(打設工程)。コンクリート5の打設後、コンクリート5に対して振動や加圧を付与して締固めを行ってコンクリート5を硬化させ、コンクリート製品5aを形成する(締固め工程)。続いて、図1の(c)に示すように、締固め工程の後、養生シート3をコンクリート製品5aの表面上に残置したまま、型枠1を取り外して脱型する(脱型工程)。締固め工程の後又は脱型工程の後に、養生シート3が貼り付けられたコンクリート製品5aに対して蒸気養生等の養生を行う(養生工程)。そして、養生により所定の強度が発現するようになったコンクリート製品5aを貯蔵し又は施工現場に運搬して、使用する(貯蔵運搬工程)。
次に、上述したプレキャストコンクリート製品の製造方法における各工程をより詳細に説明する。
[貼付け工程]
貼付け工程では、まず、製造しようとするプレキャストコンクリート製品に対応する空隙を内部に有するように型枠1を組み立てる。例えば、角柱形状のプレキャストコンクリート製品5a(図2参照)を製造する場合、角柱形状の空隙が内部に形成されるように型枠1を組み立てる。そして、型枠1の組立が終了したら、型枠1の内面に非透水性の養生シート3を貼り付ける。養生シート3の型枠への貼付けは、例えば型枠1が複数の型枠部材から構成されている場合には、養生シート3の端部を型枠1の端部に挟み込ませることで行ってもよいし、型枠1に錆等を発生させない接着剤(例えばPVA水溶液(大成化薬株式会社製のマルタイト(商品名)等))を用いて養生シート3を型枠1に貼り付けてもよい。なお、養生シート3を型枠1に貼り付けてから、型枠1の組立てを行ってもよい。
ここで用いる養生シート3は、非透水性のシートであり、例えば熱可塑性樹脂シートであることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂;ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられ、透明性、耐候性等の優れたオレフィン系樹脂が好適である。又、これら熱可塑性樹脂シートの延伸シートであってもよい。更に、養生シートは、型枠の内面に沿って密着して貼付されると共に打設されるコンクリートにも密着する必要があるので、ある程度の柔軟性を有しているのが好ましく、オレフィン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーとは、エチレンープロピレン共重合体又はポリプロピレンとエチレンープロピレンゴムの溶融混合物又は重合反応物であり、例えば、株式会社プライムポリマー製「プライムTPO(登録商標)」、日本ポリプロ株式会社製「ニューコン(登録商標)」、サンアロマー株式会社製「キャタロイ」、三菱化学社製「ゼラス(登録商標)」、等が挙げられる。
また、養生シート3は、40℃〜80℃の蒸気養生等にも耐えられるように、熱に対して変質し難いシート、つまり熱膨張し難いシートであることが好ましい。このような養生シート3としては、例えば、線膨張係数が100μ/℃以下のシートであることが好ましい。このようなシートを用いることにより、蒸気養生等によってシートが変質してしまい養生ムラが発生してしまったり、または後述する貯蔵運搬の際にコンクリート製品5aを適切に保護できなくなってしまうといったことを防止することができる。また、養生シート3は、その厚みが0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。0.1mm以上であることにより、ある程度の剛性をシートに持たせることが可能となり、5.0mm以下であることにより、型枠形状に追従する柔軟性を持たせるといったことが可能となる。
また、養生シート3は、少なくとも、打設されたコンクリートに接触する側の面(接触面)の水との接触角θ(ぬれ角)が50度以上となるシートであることが好ましい。この場合、養生シート3の接触角θは高いほど好ましく、養生シート3の接触面の水との接触角θが69度以上であることが好ましく、接触角θが80度以上であることが更に好ましく、接触角θが90度以上であることがより一層好ましい。素材の表面を各種表面加工技術によって加工することで、水との接触角は適宜調整することができる。
なお、ここで、「接触角θ」とは、液滴の接線と固体表面(シート表面)とのなす角度(@常温、23℃)であり、一般に以下の式(1)で示される。
Figure 0005777229

γ:固体の表面張力
γ:液体の表面張力
γSL:固体と液体の界面張力
そして、「接触角θ」は、例えば、θ/2法で測定することができる。具体的には、液滴の半径rと高さhを求め、以下の式(2)、(3)から、接触角θを求める。
Figure 0005777229

Figure 0005777229
また、養生シート3は、その外形形状として、打設側面が閉じた筒形状であることが好ましい。これにより、図2の(a)及び(b)に示すように、脱型工程で型枠1を取り除いた際、コンクリート製品5aの外周に養生シート3を簡単に残置させたままとすることができる。なお、ここでいう「筒形状」とは、円筒形状や四角筒形状に限られるものではなく、コンクリート製品5aの側面を包み込むような帯状の形状全般を意味し、好ましくは、底面無し又は底面に孔が形成されている。養生シート3が有底の袋形状の場合、底に水がたまってしまいコンクリート製品に養生ムラが発生してしまう場合があるが、筒形状であることにより、底に水が溜まることがなく、より均質な養生を実行することができる。
なお、後述するように、コンクリート製品5aを屋外で貯蔵する場合、コンクリート製品5aに貼り付ける養生シート3には、光安定剤が添加されていることが好ましい。光安定剤には、光エネルギーを無害な熱エネルギーに変換する紫外線吸収剤(UVA)と光酸化で生成するラジカルを捕捉するヒンダードアミン系光安定剤(HALS)があり、双方の併用で相乗効果を示し、より優れた対紫外線効果が得られる。これにより、製造されたプレキャストコンクリート製品5aを屋外で貯蔵する場合であっても、コンクリート製品5aに貼り付けられた養生シート3によりコンクリート製品5aの紫外線による劣化を抑制することができ、耐候性の高いコンクリート製品5aとすることができる。特にプレキャストコンクリート製品の生産では、ある特定の形状のプレキャストコンクリート製品をまとめて生産し、実際に使用されるまで屋外に野晒状態で数年放置されていることもある。このように、プレキャストコンクリート製品5aの表面に残置される養生シート3が光安定剤を含んでいることにより、屋外に貯蔵されているプレキャストコンクリート製品5aが供用されるまで、その劣化を抑制させることができる。
[打設工程]
打設工程では、図1の(b)に示すように、型枠1の内面に養生シート3が貼り付けられた状態でコンクリート5の打設を行う。この打設の際、養生シート3における接触角が50度以上となる面はコンクリート5側の面である。そして、このような接触角の養生シート3を用いることにより、上述したようにブリージング水の発生を抑制することができる。
打設に用いるコンクリート5としては、例えば、固まらない状態のスランプ値がほぼゼロである固練りコンクリートであってもよい。このような、いわゆるゼロスランプのコンクリートであっても、養生シート3が非透水性のシートであることにより、水分の逸散を防止してコンクリート中の水分を有効に活用し、養生等を行うことができる。また、ゼロスランプのコンクリートを用いた場合、高圧力成型を行うことで均一で密な製品に仕上げることができ、凍結融解などに強いコンクリート製品とすることができ、しかも、コンクリート表面の仕上がりを良好なものとすることができる。なお、打設に用いるコンクリート5としては、ゼロスランプのコンクリート以外のコンクリートを用いることもでき、例えば、流し込み方式で製造する場合には、所定のスランプ値を有する軟練りコンクリート、又は、自己充填性を有する高流動コンクリートを用いてもよいし、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、及びシリカフュームのうち少なくとも何れかを含む混合セメントコンクリートを用いてもよい。更に、打設に用いるコンクリート5としては、繊維補強コンクリートを用いてもよい。
[締固め工程]
打設工程が終了すると、コンクリート5の締固めを行って硬化させ、コンクリート製品5aを形成する。この締固めでは、棒状バイブレータ等の内部振動機や型枠バイブレータ等の外部振動機を用いて振動により締固めを行ってもよいし、油圧装置や真空ポンプを用いて加圧により締固めを行ってもよい。若しくは、上述した振動と加圧の両方を用いてコンクリート5の締固めを行ってもよい。このような締固めの促進により、後述する型枠1の脱型を早期に実行すること(即時脱型)が可能となる。なお、この工程終了時点でのコンクリート製品5aの硬化は暫定的なものであり、後述する養生工程や貯蔵運搬工程を経て、更なる硬化が進行する。
[養生工程]
締固め工程が終了すると、コンクリート製品5aに対して、通常の養生工程又は蒸気を用いた加温加湿養生(蒸気養生)を行う。この場合、コンクリート製品5aには、養生シート3が貼り付けられているため、例えば蒸気養生において40℃〜80℃の蒸気がコンクリート製品5aに直接触れることがなく、これにより、養生ムラが抑制される。また、上述したように、養生シート3の水との接触角が50度以上となっているため、コンクリート製品5a中の水分を内部に押し戻す作用が働き、養生が適切に行われる。
また、締固め工程の後、即時脱型を行った場合には、型枠1の脱型後、養生シート3が貼り付けられたコンクリート製品5aに対して、蒸気養生や通常の養生等の養生を行ってもよい。なお、養生シート3を剥して養生を行うようにしてもよい。
[脱型工程]
締固め工程が終了し、型枠1の脱型が可能となった場合、型枠1を脱型する。型枠1の脱型は、上述したように、養生工程の後に行ってもよいし、養生工程の前に行ってもよい。即時脱型のように養生工程の前に型枠1を脱型した場合、脱型した型枠1をすぐに別のコンクリート製品5aの生産に用いることができるため、コンクリート製品5aの生産効率を向上させることができる。また、型枠1とコンクリート製品5aとの間に養生シートが配置されているため、型枠1の脱型の際にコンクリート製品5aを傷つけてしまうといったことが防止される。
[貯蔵・運搬工程]
養生工程及び脱型工程が終了したコンクリート製品5aは、供用の直前まで屋外等において貯蔵(保管)される。コンクリート製品5aは、養生シート3が貼り付けられていない状態で貯蔵及び運搬されてもよいが、図2の(a)及び(b)に示されるように、養生シート3を貼り付けた状態で貯蔵及び運搬することにより、汚れの付着や傷の発生等を抑制することができる。図2の(a)は、コンクリート製品5aに養生シート3が残置された状態の一例を示す斜視図であり、(b)は、その上面図である。また、養生シート3が光安定剤を含む場合、太陽の紫外線等によるコンクリート製品5aの劣化を長期に亘って抑制することができる。なお、脱型後のコンクリート製品5aに貼り付けられている養生シート3の付着力は、脱型後28日以上経過した際でも、5.0N/m以上であることが好ましい。
以上、本実施形態に係るプレキャストコンクリート製品5aの製造方法によれば、打設工程や脱型工程後の養生に用いる養生シート3が非透水性となっている。このため、型枠1内に打設されるコンクリート5中の水分の外部への逸散を抑制できるため、製造されるコンクリート製品5aの表面の仕上がり状態を良好なものとすることができる。また、脱型の際に型枠1とコンクリート製品5aとの間に養生シート3が残置されることで、脱型に伴ってコンクリート製品5aに傷等が形成されてしまうことが抑制される。
そして、このような表面の仕上がり状態の良好なプレキャストコンクリート製品5aを部材として、施工現場において、コンクリート構造物を施工することが可能となる。なお、養生シート3は、プレキャストコンクリート製品5aをコンクリート構造物における所定の箇所に配置された後に剥すようにしてもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態に適用できる。例えば、上記実施形態では、四角柱状のプレキャストコンクリート製品5aの製造を一例として説明したが、円柱状や中空部材のプレキャストコンクリート製品の製造に本発明を適用してもよいし、より複雑な形状のプレキャストコンクリート製品(例えば消波ブロックなど)の製造に本発明を適用してもよい。
1…型枠、3…養生シート、5…コンクリート、5a…コンクリート製品。

Claims (12)

  1. プレキャストコンクリート製品の製造方法であって、
    コンクリート側の接触面の水との接触角が50度以上である養生シートをコンクリート打設用の型枠に貼り付ける貼付け工程と、
    前記型枠の内面に前記養生シートが貼り付けられた状態で前記型枠内にコンクリートを打設する打設工程と、
    前記打設工程で前記型枠内に打設された前記コンクリートを振動及び加圧の少なくとも一方を用いて締固めし、コンクリート製品を形成する締固め工程と、
    前記締固め工程の後、前記養生シートを前記コンクリート製品の表面上に残置したまま前記型枠を脱型する脱型工程と、を備え、
    前記養生シートは非透水性であることを特徴とする、プレキャストコンクリート製品の製造方法。
  2. 前記養生シートの線膨張係数が100μ/℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
  3. 前記貼付け工程では、前記型枠を組み立てる際に前記養生シートを前記型枠の端部に挟み込ませることで前記養生シートの貼り付けを行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
  4. 前記締固め工程で振動及び加圧の両方を用いて成型を行い、即時脱型を行うことを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
  5. 前記締固め工程の後、蒸気養生を行う養生工程を更に備えることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
  6. 前記養生シートが残置された状態で前記コンクリート製品を貯蔵及び運搬する貯蔵運搬工程を更に備えることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
  7. 前記養生シートには、光安定剤が含まれていることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
  8. 前記養生シートは、打設側面が閉じた筒形状であることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
  9. 前記打設工程において打設される前記コンクリートは、固まらない状態のスランプ値がほぼゼロである固練りコンクリートであることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
  10. 前記打設工程において打設される前記コンクリートは、所定のスランプ値を有する軟練りコンクリート、又は、自己充填性を有する高流動コンクリートであることを特徴とする、請求項1〜3及び5〜8の何れか一項に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
  11. 前記打設工程において打設される前記コンクリートは、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、及びシリカフュームのうち少なくとも何れかを含む混合セメントコンクリートであることを特徴とする、請求項1〜10の何れか一項に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
  12. 前記打設工程において打設される前記コンクリートは、繊維補強コンクリートであることを特徴とする、請求項1〜11の何れか一項に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
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