JP6818573B2 - トナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法及びトナージェット方式記録法を利用した記録方法に用いられるトナーの製造方法に関する。
樹脂粒子は、高い機能を有する粉体として塗料、インク、トナーなどの幅広い分野で利用され、その機能を制御するために粒度分布が狭い、単分散な樹脂粒子を要求されることが多くなっている。
特に、トナーの分野においては、粒子間の性能の均一性が画像の高画質化に大きな影響を与えるため、トナー粒子の粒径を均等にして粒度分布をシャープにすることが重要となる。
トナー粒子の粒度分布のシャープ化を容易に達成することができる製造方法として、溶解懸濁法が挙げられる。
さらに、近年、分散媒体として液体または超臨界状態の二酸化炭素を用いるトナー粒子の製造方法が提案されている。
この方法では、液状又は超臨界状態の二酸化炭素中にて樹脂溶液による液滴の分散体を形成する液滴形成工程の後、さらに二酸化炭素を導入し、液滴中の有機溶媒を分散媒体中に抽出して除去する脱溶剤工程を行い、トナー粒子を得る。この方法によれば、脱溶剤工程後に脱圧することで、得られたトナー粒子を分散媒体である二酸化炭素から容易に分離することが可能である。また、従来の水系の分散媒体を用いる方法に比べて、洗浄工程、乾燥工程を必要とせず、省エネルギーかつ低コストでの製造が可能である。
溶解懸濁法においては、液滴の分散安定性を確保するために分散剤が使用される。分散剤としては、分散媒体に可溶な高分子により構成される高分子分散剤や、界面活性剤、シリカやアパタイト、微粒子分散剤などの固体分散剤が使用される。
高分子分散剤は、液滴に対する親和性が高い部位と、分散媒体に対する親和性が高い部位を有する。そして、界面活性剤と比較して液滴に対する親和性が高い部位を多く有するため、液滴表面への多点吸着が可能であり、吸着能に優れる。また、分散媒体に対する親和性が高い部位は分散媒体へと広がることで、液滴同士の衝突を抑制する、いわゆる「排除体積効果」が生じる。従って、高分子分散剤は分散安定化能に優れている。
特許文献1には、液状又は超臨界状態の二酸化炭素を分散媒体として利用し、ジメチルシロキサン基及びフッ素を含有する官能基の少なくとも一方の基を有する高分子分散剤と微粒子を併用して樹脂粒子を作製する方法が提案されている。
特開2007−277511号公報
しかしながら、特許文献1の手法に基づいて本発明者らが樹脂粒子の製作を検討したところ、使用した高分子分散剤の液滴に対する親和性が十分でなく、液滴への吸着性が不足し、分散安定化が十分に図れていないことが分かった。
そのため、液滴同士の合一が生じ、必ずしも良好な粒度分布の樹脂粒子が得られないことが分かった。また、上記手法にワックスと着色剤を添加して製作したトナーを評価に供したところ、過酷環境下における耐熱保存性や連続通紙による耐久性においても期待した結果を得ることができなかった。
従って、高分子分散剤を用いた溶解懸濁法におけるトナーの製造方法において、粒度分布の更なるシャープ化と、過酷環境下における耐熱保存性及び連続通紙による耐久性とを両立するには課題を有していた。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、小粒径かつ粒度分布がシャープなトナー粒子が安定して得られるとともに、過酷環境下における耐熱保存性及び連続通紙による耐久性に優れたトナーの製造方法を提供するものである。
本発明は、トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
(a)結着樹脂A、高分子分散剤B、着色剤、ワックス、ワックス表面改質剤C及び有機溶媒を含有する樹脂溶液を調製する工程、
(b)該樹脂溶液と分散媒体とを混合し、表面が該高分子分散剤Bで覆われた該樹脂溶液の液滴が該分散媒体に分散された分散体を形成する工程、及び、
(c)該液滴に含まれる該有機溶媒を除去してトナー粒子を得る工程、
を有し、
該結着樹脂Aと該高分子分散剤Bは、該有機溶媒に可溶であり、
該ワックス表面改質剤Cの該ワックスに対する吸着率をad(C)(%)とし、
該高分子分散剤Bの該ワックスに対する吸着率をad(B)(%)としたとき、
該ad(C)の該ad(B)に対する比〔ad(C)/ad(B)〕が0.7以上であることを特徴とするトナーの製造方法に関する。
本発明によれば、小粒径かつ粒度分布がシャープなトナー粒子が安定して得られるとともに、過酷環境下における耐熱保存性及び連続通紙による耐久性に優れたトナーの製造方法を提供することができる。
トナーの製造装置の一例を示す概略図 ヒートサイクルのタイムチャート図
本開示において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○〜××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
また、モノマーユニットとは、ポリマー又は樹脂中のモノマー物質の反応した形態をいう。
本発明は、トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
(a)結着樹脂A、高分子分散剤B、着色剤、ワックス、ワックス表面改質剤C及び有機溶媒を含有する樹脂溶液を調製する工程、
(b)該樹脂溶液と分散媒体とを混合し、表面が該高分子分散剤Bで覆われた該樹脂溶液の液滴が該分散媒体に分散された分散体を形成する工程、及び、
(c)該液滴に含まれる該有機溶媒を除去してトナー粒子を得る工程、
を有し、
該結着樹脂Aと該高分子分散剤Bは、該有機溶媒に可溶であり、
該ワックス表面改質剤Cの該ワックスに対する吸着率をad(C)(%)とし、
該高分子分散剤Bの該ワックスに対する吸着率をad(B)(%)としたとき、
該ad(C)の該ad(B)に対する比〔ad(C)/ad(B)〕が0.7以上であることを特徴とするトナーの製造方法である。
本発明者らは、高分子分散剤を用いたトナーの製造において、従来の課題であった粒度分布や耐熱保存性、耐久性が低下する原因について検討した。
その結果、高分子分散剤がワックスに対しても親和性を有しており、高い吸着性を示すことが分かった。そして、トナー粒子における粒度分布のブロード化は、該吸着による有効な高分子分散剤量の減少によって生じており、耐熱保存性や耐久性の低下は、該吸着により、液滴形成時に高分子分散剤がワックスをトナー粒子表面に偏在させることによって生じていることが分かった。
また、高分子分散剤を改良して液滴に対する吸着性を向上させると、これに伴ってワックスへの吸着性も増大し、さらに耐熱保存性や耐久性を低下させることも分かった。
そこで、本発明者らは、ワックス表面改質剤Cをワックスの表面に吸着させることで、高分子分散剤Bの吸着を抑制することを試みた。そして、ワックスに対する高分子分散剤Bと、ワックス表面改質剤Cの吸着率の関係について詳細な検討を行った。
検討の結果、ワックスに対する高分子分散剤Bの吸着率と、ワックスに対するワックス表面改質剤Cの吸着率の比を特定の範囲とすることで、粒度分布のシャープ化と、耐熱保存性及び耐久性との両立が可能となることを見出し、本発明に至った。
開示の製造方法において、ワックス表面改質剤Cのワックスに対する吸着率をad(C)(%)とし、高分子分散剤Bのワックスに対する吸着率をad(B)(%)としたとき、ad(C)のad(B)に対する比〔ad(C)/ad(B)〕は、0.7以上である。好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.1以上である。一方、3.0以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましい。
〔ad(C)/ad(B)〕が上記範囲であることで、ワックス表面改質剤Cは、ワックスの表面に吸着し、高分子分散剤Bがワックスに吸着することを抑制する。そうすることで、高分子分散剤Bは、ワックスへの吸着により生じる高分子分散剤量のロスを低減でき、添加した全量を有効に活用することができる。
また、トナー粒子表面近傍へのワックスの偏在が抑制できる。その結果、粒度分布のシャープ化が可能となるとともに、過酷環境下における耐熱保存性と耐久性を確保することができる。
〔ad(C)/ad(B)〕が0.7より小さい場合、高分子分散剤Bがワックスと吸着しやすくなり、液滴の分散安定性が低くなるとともに、ワックスが表面近傍に偏在しやすくなる。その結果、トナー粒子の粒径が大きくなり、粒度分布が広がるとともに、過酷環境下における耐熱保存性と耐久性が低下する。
以下に、本開示の製造方法における各工程について、詳細を例示して説明するが、該説明に限定されるわけではない。
樹脂溶液を調製する工程(a)では、結着樹脂A、高分子分散剤B、着色剤、ワックス、ワックス表面改質剤C、並びに、結着樹脂A及び高分子分散剤Bを溶解することのできる有機溶媒を混合する。そして、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機のような分散機によって、各材料を溶解又は均一分散させて、樹脂溶液を調製する。
また、工程(a)では、有機溶媒中で、ワックス表面改質剤C及びワックスを予め混合しておくことも好ましい態様である。
有機溶媒は、結着樹脂A及び高分子分散剤Bを溶解することができるものであれば特に限定されない(すなわち、結着樹脂A及び高分子分散剤Bは有機溶媒に可溶である)。
該有機溶媒の具体例として、以下のものが挙げられる。
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトンのようなケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテートのようなエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブのようなエーテル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶剤;トルエン、キシレン、エチルベンゼンのような芳香族炭化水素系溶剤。
分散体を形成する工程(b)では、樹脂溶液と分散媒体とを混合し、表面が高分子分散剤Bで覆われた樹脂溶液の液滴が分散媒体に分散された分散体を形成する。
分散媒体としては、低極性の分散媒体を含有することが好ましい。低極性の分散媒体とは、有機溶媒よりも極性が低い分散媒体を意味する。例えば以下のものが挙げられる。
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ヘキサデカン、シクロヘキサンのような炭化水素系溶剤;ポリジメチルシロキサンのようなシリコーン系溶剤;液体状態又は超臨界状態の二酸化炭素。これらの中でも、液体状態又は超臨界状態の二酸化炭素炭素が好ましい。
以下に、液体状態又は超臨界状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を用いる場合について説明する。
分散体の形成は、樹脂溶液と高圧状態の二酸化炭素を耐圧容器内で混合し、撹拌手段を用いてせん断を付与することによって行う。ここで、高圧状態の二酸化炭素とは、圧力1.5MPa以上の二酸化炭素であることが好ましい。
樹脂溶液と高圧状態の二酸化炭素を耐圧容器内で共存させると、樹脂溶液による相と二酸化炭素による相が形成される。このとき、樹脂溶液による相に含まれる有機溶媒の一部は、二酸化炭素による相に抽出される。この状態で撹拌手段を用いてせん断を付与することで樹脂溶液による液滴(分散相)が、二酸化炭素と有機溶媒で構成される分散媒体(連続相)に分散した分散体を形成することができる。
また、高分子分散剤Bは、液滴と分散媒体の双方に対する親和性を有しており、液滴表面に偏在し、液滴を安定化する役割を担う。
分散体を形成する方法としては、具体的には以下の方法が挙げられる。
(1)樹脂溶液に高圧状態の二酸化炭素を加え、撹拌手段を用いて撹拌する方法。
(2)高圧状態の二酸化炭素に、樹脂溶液を加え、撹拌手段を用いて撹拌する方法。
液滴を安定に形成するためには、耐圧容器内の圧力は、1.5MPa以上6.0MPa以下であることが好ましい。圧力の制御は、二酸化炭素の導入量の調整により行うことが可能である。
耐圧容器内の圧力を上記範囲にすることで、分散相と連続相との相分離を促進し、液滴の形成を容易にすることができ、また、樹脂溶液中から分散媒体側に抽出される有機溶媒の量を適切にし、均一な液滴を容易に形成させることができる。
上記(2)の方法のように、先に高圧状態の二酸化炭素が存在するところに、後から樹脂溶液を加える場合は、高圧ポンプを用いて導入することができる。また、樹脂溶液に、先に導入した二酸化炭素よりもさらに高圧の二酸化炭素を混合して導入することもできる。
なお、該圧力とは、分散媒体中に二酸化炭素以外の成分が含まれる場合には、その全圧を示す。
耐圧容器内の温度(すなわち、分散媒体の温度)に関し、造粒性(液滴形成のし易さ)や、結着樹脂A、高分子分散剤B、ワックス表面改質剤Cなどの成分の分散媒体への溶解性に注意するとよい。
例えば、温度条件によっては、これらの成分が、分散媒体に溶解することがある。通常、低温になるほど前記成分の分散媒体への溶解性は抑制されるが、形成した液滴が凝集・合一を起こし易くなり、造粒性は低下する傾向にある。一方、高温になるほど造粒性は向上するものの、前記成分が分散媒体に溶解し易くなる傾向を示す。
したがって、本開示のトナーの製造において、分散媒体の温度は10℃以上40℃以下であることが好ましい。
トナー粒子を得る工程(c)では、液滴に含まれる有機溶媒を除去してトナー粒子を得る。液滴に含まれる有機溶媒の除去方法としては、液滴が分散された分散体にさらに二酸化炭素を混合し、分散媒体中の二酸化炭素濃度を高くすることで残留する有機溶媒を分散媒体側に抽出するとよい。分散媒体中の有機溶媒の除去は、この有機溶媒を含む二酸化炭素を、さらに有機溶媒を含まない二酸化炭素で置換することによって行う。
分散体と二酸化炭素の混合は、分散体に、これよりも高圧の二酸化炭素を加えてもよく
、また、分散体を、これよりも低圧の二酸化炭素中に加えてもよい。
そして、有機溶媒を含む二酸化炭素をさらに二酸化炭素で置換する方法としては、耐圧容器内の圧力を一定に保ちつつ、二酸化炭素を流通させる方法が挙げられる。このとき、形成されるトナー粒子は、フィルターで捕捉するとよい。また、このときの耐圧容器内の圧力は、3.0MPa以上15.0MPa以下であることが好ましい。
二酸化炭素による置換が十分でなく、分散媒体中に有機溶媒が残留した状態であると、得られたトナー粒子を回収するために耐圧容器を減圧する際、分散媒体中に溶解した有機溶媒が凝縮してトナー粒子が再溶解する場合がある。さらに、トナー粒子同士が合一したりするといった不具合が生じる場合もある。したがって、二酸化炭素による置換は、有機溶媒が完全に除去されるまで行うことが好ましい。
流通させる二酸化炭素の量は、分散媒体の体積に対して1倍以上100倍以下が好ましく、より好ましくは1倍以上50倍以下であり、さらに好ましくは1倍以上30倍以下である。
耐圧容器を減圧し、トナー粒子が分散した二酸化炭素を含む分散体からトナー粒子を取り出す際は、一気に常圧まで減圧してもよいが、独立に圧力制御された容器を多段に設けることによって段階的に減圧してもよい。なお、使用された有機溶媒や、二酸化炭素は、リサイクルすることが可能である。
結着樹脂Aは、特に限定されることなく、トナーに用いられる公知の樹脂を用いることができる。なかでも、結着樹脂Aが、スチレン、アクリレート、メタクリレート及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを含む組成物の重合体、並びに、ポリエステルの少なくとも一方を含有することが好ましい。
スチレンの誘導体としては、特に限定はないが、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレンなどが挙げられる。
アクリレート、メタクリレート及びこれらの誘導体としては、特に限定はないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、4−メチルベンジルアクリレート、4−エチルベンジルアクリレートなどのアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレートなどのメタクリレートが挙げられる。
スチレン、アクリレート、メタクリレート及びこれらの誘導体は、2種以上を併用してもよい。
上記では、化合物中に1個のラジカル重合性不飽和基を有する化合物を例示したが、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジアクリレート、1,6−ヘキサンジメタクリレートなどのように、化合物中に複数のラジカル重合性不飽和基を有する化合物を用いてもよい。
本開示の製造方法において、結着樹脂Aがポリエステルを含有する場合、該ポリエステルとしては、結晶性ポリエステル、非晶性ポリエステルのいずれも使用可能である。
結晶性ポリエステルとは、ポリマーの分子鎖が規則的に配列した構造を有する樹脂である。このような樹脂は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量測定において、明瞭な融点ピークを示し、融点より低い温度領域ではほとんど軟化せず、融点を越えると
融解が生じ急激に軟化する。従って、結晶性ポリエステルを用いたトナーは、このようなシャープメルト性を発現することで、良好な低温定着性を達成することができる。
結晶性ポリエステルの融点は、50℃以上90℃以下であることが好ましい。
結晶性ポリエステルとしては、脂肪族ラクトンを開環重合して得られるポリエステル、又は脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を反応して得られるポリエステルを挙げることができる。
脂肪族ラクトンとしては、例えば、δ−ヘキサラノラクトン、δ−オクタノラクトン、ε−カプロラクトン、δ−ドデカノラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、グリコリッド、ラクタイドなどが挙げられる。これらの中でも、ε−カプロラクトンが、反応性及び入手性の観点から好ましい。
脂肪族ジオールは、炭素数2〜20の脂肪族ジオールであることが好ましい。さらに脂肪族ジオールは結晶性の観点から、直鎖型であることがより好ましい。
炭素数2〜20の直鎖型脂肪族ジオールとしては、以下の化合物が挙げられる。
1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール及び1,20−エイコサンジオール。
これらの中でも、融点の観点から、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることも可能である。
また、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、以下の化合物を挙げることができる。
2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール及び4−オクテン−1,8−ジオール。
脂肪族ジカルボン酸は、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。さらに、脂肪族ジカルボン酸は結晶性の観点から、直鎖型であることがより好ましい。
炭素数2〜20の直鎖型脂肪族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。
蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸及び1,18−オクタデカンジカルボン酸、及びそれらの低級アルキルエステルや酸無水物。
これらのうち、セバシン酸、アジピン酸、及び1,10−デカンジカルボン酸、並びにそれらの低級アルキルエステルや酸無水物が特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることも可能である。
また、芳香族ジカルボン酸を併用することもできる。芳香族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。
テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸。
これらの中でも、テレフタル酸が入手の容易性や低融点のポリマーを形成しやすいという点で好ましい。
結晶性ポリエステルの製造方法は、特に制限はなく、一般的なポリエステルの重合法に
よって製造することができる。
例えば、脂肪族ラクトンの開環重合を用いた結晶性ポリエステルの製造は、重合温度が100℃以上180℃以下の間で行うのが好ましく、溶媒中で行うことができる。
溶媒は、脂肪族ラクトン、重合触媒、重合開始剤と反応しない不活性溶媒であり、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族又は脂環式炭化水素を用いることができる。これらの溶媒は、実質的には、無水のものが好ましい。
開環重合に使用可能な重合開始剤としては、公知の以下の重合開始剤を用いることができる。モノオール、ジオール、トリオール、ポリオール。これらは、単独でも2種類以上を併用してもよい。
また、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との反応による結晶性ポリエステルの製造は、直接重縮合法又はエステル交換法を用い、モノマーの種類によって使い分けて製造することができる。
重合は、180℃以上230℃以下で行うのが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧し、重縮合反応時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させるのが好ましい。
結晶性ポリエステルの製造時に使用可能な触媒としては、以下の化合物を挙げることができる。チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド及びチタンテトラブトキシドのようなチタン触媒、又は、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド及びジフェニルスズオキシドのようなスズ触媒。
非晶性ポリエステルは、ポリマーの分子鎖が不規則に配列した構造を有する樹脂である。このような樹脂は、示差走査熱量測定において、明確な最大吸熱ピークを示さないが、ポリマー分子の主鎖が回転や振動を始めるガラス転移温度(Tg)を有する。
非晶性ポリエステルのTgは、50℃以上130℃以下であることが好ましく、55℃以上110℃以下であることがより好ましい。
非晶性ポリエステルの製造に使用可能なモノマーとしては、従来公知の2価又は3価以上のカルボン酸と、2価又は3価以上のアルコールが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。
2価のカルボン酸としては、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸のような二塩基酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル、並びに、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸。
また、3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2価のアルコールとしては、アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド)付加物。
アルキレングリコール及びアルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。
また、3価以上のアルコールとしては、以下の化合物を挙げることができる。グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、酸価や水酸基価の調整を目的として、必要に応じて酢酸及び安息香酸のような1価の酸、シクロヘキサノール及びベンジルアルコールのような1価のアルコールも併用することができる。
非晶性ポリエステルの合成方法については特に限定されないが、例えばエステル交換法や直接重縮合法を単独で又は組み合わせて用いることができる。
結着樹脂Aは、上記ビニル系重合体やポリエステルを単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。また、他の重合体との共重合体の形態で用いてもよい。
高分子分散剤Bは、部分構造X及び部分構造Yを有する重合体であることが好ましい。
また、結着樹脂Aの溶解度パラメータをSP(A)とし、
部分構造Xの溶解度パラメータをSP(X)とし、
部分構造Yの溶解度パラメータをSP(Y)としたときに、
SP(A)、SP(X)及びSP(Y)が、下記式(1)及び(2)を満たすことが好ましく、下記式(1)’及び(2)’を満たすことがより好ましい。
│SP(A)―SP(Y)│≦2.0 (1)
SP(Y)―SP(X)≧3.0 (2)
│SP(A)―SP(Y)│≦1.8 (1)’
6.0≧SP(Y)―SP(X)≧3.0 (2)’
上記式(1)及び(2)を満たす条件下で、トナー粒子を製造することにより、高分子分散剤Bは、液滴への吸着と分散媒体への広がりを両立することができる。
その結果、液滴の分散安定性が向上し、トナー粒子の小粒径化及び粒度分布のシャープ化を達成することができる。
ここで、溶解度パラメータ(以下、SP値ともいう、[単位:(J/cm1/2])は、ある物質がある物質にどのくらい溶解するかを示す溶解性の指標である。SP値が近いもの同士は溶解性が高く、SP値が離れているものは溶解性が低い。すなわち、異なる物質同士の親和性を示す指標であり、SP値が近いもの同士は親和性が高く、離れているもの同士は親和性が低いことになる。
SP値は溶解度パラメータ計算ソフトウェア(Hansen Solubility Parameters in Practice:HSPiP 4th Edition
4.1.03)により算出することができる。
上記式(1)を満たすことで、部分構造Yの溶解度パラメータが、液滴中に存在する結着樹脂Aに対して近い値をとる。すなわち、部分構造Yは、結着樹脂Aを含む液滴に対して十分な親和性を持ち、高い吸着性を示す部位とすることができる。
さらに、上記式(2)を満たすことで、部分構造Xの溶解度パラメータは部分構造Yに比べ十分に小さい値となる。これにより結着樹脂Aや部分構造Yに比べ溶解度パラメータが小さい分散媒体に対して十分な親和性を持ち、かつ高い分散性を示す部位とすることができる。
以上により高分子分散剤Bは、液滴に対して高い吸着性を示す部分構造Yと、分散媒体に対して高い分散性を持つ部分構造Xを同時に有することから、液滴の分散安定性が向上する。そして、得られたトナー粒子について、小粒径化かつ粒度分布のシャープ化を達成することができる。
上記式(1)において│SP(A)―SP(Y)│の値が2.0以下であることで、部分構造Yの結着樹脂Aに対する親和性が向上する。また、結着樹脂Aを含む液滴への高分子分散剤Bの吸着性が十分に得られ、液滴の分散安定性が向上する。
また、上記式(2)においてSP(Y)―SP(X)の値が3.0以上であることで、部分構造Xの分散媒体に対する親和性が向上し、高分子分散剤Bの分散性が十分に得られる。その結果、液滴の分散安定性が向上する。
結着樹脂AのSP値は、結着樹脂Aを構成する主成分の樹脂を用いることによって算出する。また、主成分とする樹脂に対して他成分の樹脂を少量含む場合についても、主成分の樹脂を用いてSP値を算出する。ここで、主成分とは、結着樹脂Aを構成する全樹脂中の含有割合が最も多い樹脂をいう。
部分構造Xは、下記式(C1)で示される有機ポリシロキサン構造を有することが好ましい。
Figure 0006818573
(C1)

[式(C1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1以上3以下のアルキル基を表し、nは2以上160以下(好ましくは、3以上133以下)の整数を表す。]
有機ポリシロキサン構造とは、SiO結合の繰り返し単位を持ち、Siにアルキル基が二つ結合した構造である。その特性は低極性であり、また、Si−O結合は、C−C結合と比べて結合間距離が長いことから、非常に柔軟性の高い構造となっている。
従って、高分子分散剤Bが有する部分構造Xが、極性の低い分散媒体へと容易に広がることが可能であり、排除体積効果を十分に発揮することができ、液滴の分散性を得ることが可能となる。
高分子分散剤B中の部分構造Xの含有割合は、20.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
一方、部分構造Yは、スチレン、アクリレート、メタクリレート及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを含む組成物の重合体(以下、ビニル系重合体ともいう)、ポリエステル、又は、ポリエーテルを含有することが好ましい。
部分構造Yが該構造を含有することで、結着樹脂Aを含有する液滴との親和性を高くすることができ、液滴との十分な吸着性を得ることができる。
部分構造Yは、結着樹脂Aを構成する重合体と同種の構造にすることがより好ましい。高分子分散剤Bが、該部分構造X及び部分構造Yを有することにより、上記式(1)及び(2)を満たすことが可能となり、液滴の分散安定性を向上させることが可能となる。
高分子分散剤B中の部分構造Yの含有割合は、20.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
ビニル系重合体の構造については、結着樹脂Aの説明で述べたモノマーを重合して得られるビニル系重合体を用いることができる。
ポリエステルについては、結着樹脂Aの説明で述べた結晶性ポリエステルや非晶性ポリエステルを用いることができる。
ポリエーテルは、例えば、下記式(C2)で表されるポリエーテル構造を有するものが挙げられる。
Figure 0006818573
(C2)

式(C2)中、mは1以上3以下の整数であり、xは0又は1であり、Rは水素原子
又は炭素数1以上3以下のアルキル基を表し、pは1以上(好ましくは、5以上90以下)の整数であることが好ましい。
上記式(C2)の具体例として、下記式(C3)〜(C7)が挙げられる。これらは、式(C2)を満たせば、複数種を併用してもよい。
Figure 0006818573
高分子分散剤Bは、部分構造Xを有するモノマーXと部分構造Yを有するモノマーYを含有するモノマー組成物の重合体であることが好ましい。
モノマーXは、有機ポリシロキサン構造の片末端に、重合性不飽和基を有する化合物であることが好ましい。該モノマーXを含有するモノマー組成物を重合させることによって、連続相に親和性を有する構造の高分子分散剤Bを作製することができる。
有機ポリシロキサン構造の片末端に重合性不飽和基を有する化合物の一例を式(C8)に示す。
Figure 0006818573
(C8)

ここで、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1以上3以下のアルキル基を表し、Rは炭素数1以上3以下のアルキレン基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。上記化合物の合成方法としては、カルビノール変性ポリシロキサンと、アクリル酸クロライド又はメタクリル酸クロライドの脱塩酸反応による方法が挙げられる。
モノマーYは、分散相に対して親和性を有する部分構造Yの片末端に、重合性不飽和基を有する化合物であることが好ましい。該モノマーYを含有するモノマー組成物を重合させることによって、分散相に親和性を有する構造の高分子分散剤Bを作製することができる。
部分構造Yの片末端に重合性不飽和基を有する化合物の一例を式(C9)に示す。
Figure 0006818573
(C9)

ここで、Rは水素原子又はメチル基を表す。上記化合物の合成方法としては、スチレンのリビングアニオン重合により、ポリスチレンアニオンを合成し、エチレンオキサイドに続いてアクリル酸クロライド又はメタクリル酸クロライドにより脱塩酸反応をする方法が挙げられる。
ポリエステルの片末端に重合性不飽和基を有する化合物の製造方法として、以下の方法が挙げられる。
(1)ラクトン環の開環重合により作製したポリエステルとビニル系化合物とをカップリングさせる方法。
具体的には、以下の手法が挙げられる。
(1−1)脂肪族ラクトンを開環重合して得られる末端にヒドロキシ基を有するポリエステルと、カルボキシ基を含有するビニル系化合物とを、縮合反応によってカップリングさせる方法。
(1−2)脂肪族ラクトンを開環重合して得られる末端にヒドロキシ基を有するポリエステルと、酸ハロゲン化物を脱塩酸反応によってカップリングさせる方法。
(1−1)の方法で使用するカルボキシ基を含有するビニル系化合物は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、2−メタクリロキシエチルサクシニク酸、2−メタクリロキシエチルヘキサハイドロフタル酸、2−メタクリロキシエチルグルタレート;(無水)マレイン酸,フマル酸,(無水)イタコン酸のようなジカルボン酸及びその無水物;モノメチルマレイン酸、モノエチルマレイン酸、モノブチルマレイン酸、モノオクチルマレイン酸、モノメチルフマル酸、モノエチルフマル酸、モノブチルフマレイン酸、モノオクチルフマル酸、モノメチルイタコン酸、モノエチルイタコン酸、モノブチルイタコン酸、モノオクチルイタコン酸などのジカルボン酸のモノアルキルエステルなどが挙げられるが、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
カルボキシ基を含有するビニル系化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(1−2)の方法で使用する前記酸ハロゲン化物は、例えば、カルボン酸塩化物としてアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドが挙げられる。
(2)ジカルボン酸とジオールの重縮合により作製したポリエステルとビニル系化合物をカップリングさせる方法。
カップリングでは、ポリエステルの末端官能基との反応が可能な官能基を含有するビニル系化合物を直接カップリングさせてもよい。また、ポリエステルの末端を、ビニル系化
合物が含有する官能基との反応が可能になるよう、結合剤を用いて修飾してカップリングさせてもよい。具体的には、以下の方法が挙げられる。
(2−1)末端にカルボキシ基を有するポリエステルとヒドロキシ基を含有するビニル系化合物を、縮合反応によってカップリングさせる方法。
この場合、ポリエステルの調製ではジカルボン酸とジオールのモル比(ジカルボン酸/ジオール)は1.02以上1.20以下であることが好ましい。
(2−2)末端にヒドロキシ基を有するポリエステルと、イソシアネート基を有するビニル系化合物を、ウレタン化反応によってカップリングさせる方法。
(2−3)末端にヒドロキシ基を有するポリエステルとヒドロキシ基を有するビニル系化合物を、結合剤であるジイソシアネートを用いてウレタン化反応によってカップリングさせる方法。
(2−2)と(2−3)の方法で使用するポリエステルの調製ではジカルボン酸とジオールのモル比(ジオール/ジカルボン酸)は1.02以上1.20以下であることが好ましい。
ヒドロキシ基を有するビニル系化合物としては、ヒドロキシスチレン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテルが挙げられる。これらのうち、好ましいものはヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートである。
イソシアネート基を有するビニル系化合物としては、以下のものが挙げられる。
2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート。これらの中でも、好ましいものは2−イソシアナトエチルアクリレート及び2−イソシアナトエチルメタクリレートである。
ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。
炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物。以下、変性ジイソシアネートともいう)。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられる。m−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート。
脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
これらのうちで好ましいものはXDI及びHDI、IPDIである。
ポリエーテル構造の片末端に重合性不飽和基を有する化合物の製造方法としては、以下の方法が例示できる。
末端にヒドロキシ基を有するポリエーテル構造と、イソシアネート基と、重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物とを、ウレタン化反応によってカップリングさせる方法。
末端にヒドロキシ基を有するポリエーテル構造と、ヒドロキシ基と、重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物とを、結合剤であるジイソシアネートを用いてウレタン化反応によってカップリングさせる方法。
高分子分散剤Bは、モノマーX及びモノマーYに加えて、他のビニル系モノマーを使用してもよく、以下のものが挙げられる。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン;アルカジエン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン。
脂環式ビニル炭化水素:モノ−又はジ−シクロアルケン及びアルカジエン類、例えばシクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン;テルペン類、例えばピネン、リモネン、インデン。
芳香族ビニル炭化水素:スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体、例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン;及びビニルナフタレン。
カルボキシ基含有ビニル系モノマー及びその金属塩:炭素数3以上30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸並びにその無水物及びそのモノアルキル(炭素数1以上27以下)エステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸のカルボキシ基含有ビニル系モモノマー。
ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1以上11以下のアルキル基(直鎖若しくは分岐)を有するアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖若しくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖若しくは脂環式の基である)、ポリアリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール
(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレートラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類及びポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレート及びポリメタクリレート。
高分子分散剤Bをラジカル重合により作製する場合、一般的なラジカル重合によって製造可能である。例えば、モノマーX、モノマーY、他のビニル系モノマー、及び、重合開始剤を有機溶媒中に溶解させ、脱気後に加熱することにより重合させることができる。
ラジカル重合に使用可能な重合開始剤としては、例えば以下のものが挙げられる。
2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチル−パーオキシピバレートのような過酸化物系重合開始剤。
重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、モノマー100質量部に対して、0.1質量部以上20.0質量部以下である。
重合開始剤の種類は、重合法により異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独又は混合して使用される。
また、高分子分散剤Bは、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)、ニトロキシド媒介ラジカル重合(NMP)などのリビングラジカル重合によっても得ることができる。
高分子分散剤Bの重量平均分子量(Mw)は、50,000以上500,000以下であることが好ましく、80,000以上300,000以下であることがより好ましい。
Mwが上記範囲であることで、高分子分散剤Bに含まれる部分構造Xは、上記工程(b)において分散媒体へと広がることが可能となり、排除体積効果を十分に発揮でき、液滴の安定性の維持が容易になる。その結果、粒度分布のさらなるシャープ化が可能となる。
また、工程(b)において、分散相の粘度上昇に伴うせん断力低下を防止しやすく、液滴の粒径及び粒度分布を適切な範囲に制御しやすい。
なお、高分子分散剤Bの添加量は、結着樹脂A100質量部に対して、5.0質量部以上50.0質量部以下であることが好ましく、15.0質量部以上35.0質量部以下であることがより好ましい。
ワックス表面改質剤Cは、ワックスに対して親和性を有する部位(以下、ワックス親和性部位とも称する)を有する重合体であることが好ましい。該ワックス親和性部位は、炭化水素基を有するモノマーユニットであることが好ましい。
また、ワックス表面改質剤Cは、該ワックスに対して親和性を有する部位と結着樹脂Aに対して親和性を有する部位を分子構造に有する重合体であることがより好ましい。
該結着樹脂Aに対して親和性をする部位としては、前述した高分子分散剤Bの部分構造Yと同様の構造を有する部位を挙げることができる。
ワックス表面改質剤Cが、ワックス親和性部位を介してワックスの表面に吸着することで、ワックスに高分子分散剤Bが吸着することを抑制する。そのため、工程(b)において、液滴の分散安定性が向上するとともに、ワックスが表面近傍に偏在しにくくなる。その結果、トナー粒子の粒度分布が狭くなるとともに、トナーの過酷環境下における耐熱保存性及び耐久性も向上する。
ワックス親和性部位としての炭化水素基の炭素数は、12以上40以下であることが好ましく、18以上22以下であることがより好ましい。
炭化水素基の炭素数が上記範囲である場合、ワックスとワックス親和性部位との親和性がより向上するため、ワックスに対する吸着率が向上し、トナー粒子の粒径及び粒度分布をより適切に制御することができ、過酷環境下における耐熱保存性及び耐久性をより向上させることが可能となる。
また、ワックス表面改質剤Cは、炭化水素基を有するモノマーユニットを5.0質量%以上70.0質量%以下含有することが好ましく、15.0質量%以上50.0質量%以下含有することがより好ましい。
炭化水素基を有するモノマーユニットの含有量が上記範囲である場合、ワックスに対するワックス表面改質剤Cの吸着性と、結着樹脂Aに対する親和性とを両立させることができる。
その結果、トナー粒子の粒径及び粒度分布をより適切に制御することができ、過酷環境下における耐熱保存性及び耐久性をより向上させることが可能となる。
なお、ワックス表面改質剤Cの重量平均分子量(Mw)は、5000以上50000以下であることが好ましく、10000以上30000以下であることがより好ましい。
ワックス表面改質剤Cは、炭化水素基を側鎖に有するモノマーユニットを含む重合体であることがより好ましい。ワックス表面改質剤Cのワックスの表面に対する吸着性をより高めるためには、炭化水素基が柔軟性のある構造であること、すなわち、炭化水素基が側鎖として存在し、自由末端を有する構造であることが好ましい。
さらに、側鎖は、主鎖とエステル基を介して結合していることが好ましい。側鎖が、主鎖とエステル基を介して結合していることで、エステル基を介していない構造と比べて、炭化水素基の柔軟性をより向上させることができ、ワックス粒子との吸着率をさらに向上させることができる。
ワックス表面改質剤Cにおいて、結着樹脂Aに対して親和性をする部位は、スチレン、アクリレート、メタクリレート及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを含む組成物の重合体、ポリエステル、又はポリエーテルを含有することが好ましい。該部位については、前述した高分子分散剤Bの部分構造Yと同様の構造を有する部位を挙げることができる。
一方、炭化水素基を有するモノマーユニットを形成させるための化合物としては、炭素数12以上40以下のアクリル系モノマー、炭素数12以上40以下のメタクリル系モノマーを挙げることができる。
具体的には、n−ラウリルアクリレート、n−トリデシルアクリレート、n−ミリスチルアクリレート、n−ペンタデシルアクリレート、n−パルミチルアクリレート、n−マルガリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、n−ノナデシルアクリレート、n−アラキジルアクリレート、n−ヘンエイコシルアクリレート、n−ベヘニルアクリレート、n−トリコシルアクリレートのようなアクリル系モノマー;n−ラウリルメタクリレート、n−トリデシルメタクリレート、n−ミリスチルメタクリレート、n−ペンタデシルメタクリレート、n−パルミチルメタクリレート、n−マルガリルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、n−ノナデシルメタクリレート、n−アラキジルメタクリレート、n−ヘンエイコシルメタクリレート、n−ベヘニルメタクリレート、n−トリコシルメタクリレートのようなメタクリレート系モノマーが例示できる。
該炭化水素基の導入方法としては、ワックス表面改質剤Cを合成する際、結着樹脂Aに対して親和性をする部位を形成するビニル系モノマーを含むモノマー組成物中に、炭素数12以上40以下のアクリル系モノマーやメタクリル系モノマーを添加する方法が挙げられる。
トナーの製造方法において、ワックスの添加量は、結着樹脂A100.0質量部に対し
て、2.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましく、3.0質量部以上8.0質量部以下であることがさらに好ましい。
ワックスは、示差走査熱量計(DSC)による測定において、60℃以上120℃以下に最大吸熱ピーク(すなわち、融点)を有することが好ましい。より好ましくは60℃以上90℃以下である。ワックスの融点が上記範囲である場合、トナーの保管中にトナー表面にワックスが露出しにくく、耐熱保存性を向上させることができる。また、定着時に適切にワックスが溶融し、低温定着性や耐オフセット性がより向上する。
また、ワックスに対するワックス表面改質剤Cの質量比は、0.2以上2.0以下であることが好ましく、0.4以上0.8以下であることがより好ましい。
ワックスに対するワックス表面改質剤Cの質量比(ワックス表面改質剤Cの質量部/ワックスの質量部)を上記範囲にすることで、ワックス表面改質剤Cをワックス表面に安定して吸着させることが可能となり、高分子分散剤Bの吸着を効果的に抑制することができる。
ワックスとしては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルの一部又は全部を脱酸化したもの;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物。
これらのうち、脂肪族炭化水素系ワックス及びエステルワックスが好ましい。
また、エステルワックスは、エステル結合を3つ以上有するエステルワックスであることが好ましく、より好ましくはエステル結合を4つ以上のエステルワックス、さらに好ましくはエステル結合を6つ以上のエステルワックスである。
エステル結合を3つ以上有するエステルワックスは、例えば、3価以上のカルボン酸と長鎖直鎖飽和モノアルコールとの縮合、又は3価以上のアルコールと長鎖直鎖飽和脂肪酸との合成によって得られる。
3価以上のアルコールとしては以下を挙げることができるが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール。また、これらの縮合物も用いることができる。例えば、グリセリンの縮合したジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン及びデカグリセリンなどのいわゆるポリグリセリン、トリメチロールプロパンの縮合したジトリメチロールプロパン、トリストリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールの縮合したジペンタエリスリトール及びトリスペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらのうち、分岐構造をもつ構造が好ましく、ペンタエルスリトール、又はジペンタエリスリトールがより好ましく、特にジペンタエリスリトールが好ましい。
長鎖直鎖飽和脂肪酸は、一般式C2n+1COOHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。
以下を挙げることができるが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。カプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、ノニル酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられる。ワックスの融点の観点からミリスチン酸、パルミチン酸、ステ
アリン酸、ベヘン酸が好ましい。
3価以上のカルボン酸としては以下を挙げることができるが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸。
長鎖直鎖飽和モノアルコールはC2n+1OHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。
以下を挙げることができるが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。ワックスの融点の観点からミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましい。
ワックスは微粒子化して、ワックス粒子として使用されることが好ましい。ワックスをワックス粒子にする方法については、特に制限はなく、公知の方法を使用することができる。
着色剤としては、有機顔料、有機染料、無機顔料、黒色着色剤としてのカーボンブラック、及び磁性体が挙げられ、従来トナーに用いられている着色剤を用いることができる。
イエロー用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の観点から選択される。
着色剤の添加量は、結着樹脂A100.0質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。着色剤として磁性体を用いる場合、その添加量は、結着樹脂A100.0質量部に対して、40.0質量部以上150.0質量部以下であることが好ましい。
トナー粒子は、必要に応じて荷電制御剤を含有してもよい。
荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化させ、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。
トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン、四級アンモニウム塩、高級脂肪酸の金属塩、ジオルガノスズボレート類、グアニジン化合物
、イミダゾール化合物。
荷電制御剤の添加量は、結着樹脂A100.0質量部に対して、0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
また、トナー粒子に、流動性向上剤などの外添剤を添加してトナーとしてもよい。
流動性向上剤としては、無機微粒子が好ましく、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子又はそれらの複酸化物微粒子のような微粒子が挙げられる。該無機微粒子の中でもシリカ微粒子及び酸化チタン微粒子が好ましい。
シリカ微粒子としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。
なかでも、表面及びシリカ微粒子の内部にあるシラノール基が少なく、またNaO、SO 2−の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタンのような金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって製造された、シリカと他の金属酸化物の複合微粒子であってもよい。
無機微粒子は疎水化処理されることによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるため、疎水化処理された無機微粒子を用いることがより好ましい。
無機微粒子の疎水化処理に用いられる処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で又は併用して用いてもよい。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粒子が好ましい。より好ましくは、無機微粒子をカップリング剤で疎水化処理すると同時又は処理した後に、シリコーンオイルにより処理したシリコーンオイル処理された疎水化処理無機微粒子が高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上で好ましい。
無機微粒子の添加量は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.1質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上3.5質量部以下である。
以下に、トナー及び各材料の物性についての測定方法を記す。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定方法>
重合体及びトナー粒子の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調製する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A
−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<ワックスの融点の測定方法>
ワックスの融点は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、ワックス約2mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、リファレンスとして空の銀製のパンを用い、示差走査熱量測定を行う。
測定は、一度180℃まで昇温させ、続いて20℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度20℃から180℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを示す温度をワックスの融点とする。上記最大吸熱ピークとは、ピークが複数存在する場合には、最も吸熱量の大きいピークをいう。
<ワックス粒子及び着色剤粒子の粒子径の測定方法>
粒子の粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、0.001μm〜10μmのレンジ設定で測定を行い、体積平均粒子径(μm又はnm)として測定する。なお、希釈溶媒としては水を選択する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)及び粒度分布(D4/D1)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)及び粒度分布(D4/D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビ
ルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。また、D4/D1を粒度分布とする。
<ワックス表面改質剤C及び高分子分散剤Bのワックスに対する吸着率の測定方法>
ワックス表面改質剤Cのワックスに対する吸着率〔ad(C)(%)〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温でワックス表面改質剤Cをスチレンに溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してワックス表面改質剤Cが溶解した吸着前のサンプル溶液を得る。吸着前のサンプル溶液からGPC測定用のサンプル溶液を採取する。なお、吸着前サンプル溶液は、ワックス表面改質剤Cの濃度が約0.5質量%となるように調製する。
次に、この吸着前サンプル溶液、ワックス、ガラスビーズを耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて4時間分散を行い、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、ワックス表面改質剤Cを表面に吸着させたワックスの分散液を得る。
なお、ワックスの分散液は、ワックスの濃度が約5.0%となるように調製する。このワックスの分散液に含まれるワックス表面改質剤Cを吸着したワックスを遠心分離機により分離する。以下に遠心分離の条件を示す。
・遠心分離機:H−9R(KOKUSAN社製)
・ローター:BN1ロ―タ(KOKUSAN社製)
・装置内設定温度:4℃
・回転数:14500rpm
・時間:20分間
その後、上澄みを吸着前のサンプル溶液と同様に濾過処理することにより吸着後のサンプル溶液を得る。
最後に、得られた吸着前サンプル溶液と吸着後サンプル溶液を上述した数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定方法で用いたGPCにより測定して各面積を求め、下記式を用いることでad(C)(%)を求める。
なお、以下で吸着前サンプル溶液と吸着後サンプル溶液のGPC面積比を求める際に、
吸着前サンプル溶液と吸着後サンプル溶液のGPC面積を求めるチャート(縦軸:濃度に依存した電気的強度、横軸:リテンションタイム)は、同じ縮尺度の縦軸及び横軸を用いたチャートを作成する。
高分子分散剤Bのワックスに対する吸着率〔ad(B)(%)〕は、ワックス表面改質剤Cを高分子分散剤Bに置き換え、同様の操作を行うことにより求める。
ad(C)(%)=(1−(Aafter(C)/Abefore(C))×100
ad(B)(%)=(1−(Aafter(B)/Abefore(B))×100
before(C):ワックス表面改質剤Cが溶解した吸着前のサンプル溶液のGPC面積
after(C):ワックス表面改質剤Cが溶解した吸着後のサンプル溶液のGPC面積
before(B):高分子分散剤Bが溶解した吸着前のサンプル溶液のGPC面積
after(B):高分子分散剤Bが溶解した吸着後のサンプル溶液のGPC面積
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。なお、実施例及び比較例の部数及び%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<結着樹脂A1の製造例>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・スチレン 52.0部
・アクリル酸ブチル 38.0部
・メタクリル酸 10.0部
・トルエン 130.0部
・N,N−ジメチルホルムアミド 50.0部
上記のモノマー組成物を70℃まで昇温した後、重合開始剤としてターシャリーブチルパーオキシピバレートを0.9部混合し、70℃にて6時間撹拌を行った。さらに、撹拌を続けながら80℃まで昇温し、1時間保持した後、空冷し、反応を停止させた。メタノールに再沈殿した後、濾別した濾物を乾燥することで結着樹脂A1を得た。
結着樹脂A1の数平均分子量(Mn)は25,000、重量平均分子量(Mw)は40,000であった。また、結着樹脂A1の溶解度パラメータSP(a)を溶解度パラメータ計算ソフトウェア(Hansen Solubility Parameters in Practice:HSPiP 4th Edition 4.1.03)により、算出した。結果を表1に示す。
<結晶性ポリエステル1の製造例>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・1,6−ヘキサンジオール 76.0部
・セバシン酸 124.0部
・酸化ジブチルスズ 0.1部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、結晶性ポリエステル1を合成した。
得られた結晶性ポリエステルの数平均分子量(Mn)は8,700、重量平均分子量(Mw)は14,100であった。
<結着樹脂A2の製造例>
攪拌装置及び温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。
・結晶性ポリエステル1 210.0部
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 56.0部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 34.0部
・テトラヒドロフラン(THF) 300.0部
50℃まで加熱し、15時間かけてウレタン化反応を施した。溶媒であるTHFを留去し、結着樹脂A2を得た。結着樹脂A2の数平均分子量(Mn)は12,300、重量平均分子量(Mw)は31,400、融点は60.1℃であった。結着樹脂A2の溶解度パラメータSP(a)を計算ソフトウェアで算出した結果を表1に示す。
<結着樹脂A3の製造例>
窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・ビスフェールAエチレンオキサイド付加物(2.0mol付加) 100.0部
・ビスフェールAプロピレンオキサイド付加物(2.3mol付加) 38.4部
・イソソルビド 25.5部
・テレフタル酸 37.3部
・イソフタル酸 31.1部
・ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ 1.3部
窒素雰囲気下、200℃で6時間かけて反応させた。さらに、210℃にて無水トリメリット酸8.3部を添加して、40mmHgの減圧下にて5時間反応を行い、その後、空冷し、反応を停止させた。メタノールに再沈殿した後、濾別した濾物を乾燥することで結着樹脂A3を得た。結着樹脂A3の数平均分子量(Mn)は8,300、重量平均分子量(Mw)は18,600であった。結着樹脂A3の溶解度パラメータSP(a)の算出した結果を表1に示す。
Figure 0006818573
<結着樹脂A1溶液〜A3溶液の製造例>
攪拌装置のついたビーカーに、アセトン500.0部、結着樹脂A1〜A3を500.0部投入し、温度40℃で完全に溶解するまで攪拌を続け、結着樹脂A1溶液〜A3溶液を調製した。
<モノマーX1〜X3>
モノマーX1〜X3は、下記式(C10)で示される構造である。詳細を表2に示す。モノマーXについての溶解度パラメータSP(X)は、結着樹脂Aと同様に計算ソフトウェアを用いて算出した。その結果を表2に示す。
Figure 0006818573
(C10)
Figure 0006818573

表2中の分子量は、製造メーカのカタログ記載値である。
<モノマーY1の製造例(部分構造Y:ポリエステル)>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら表3に示すように以下の原料を仕込んだ。
・ε−カプロラクトン 200.0部
・ステアリルアルコール 28.1部
・酸化ジブチルスズ 0.1部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて2時間攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、片末端にヒドロキシ基を有するポリエステルを合成した。その後、テトラヒドロフラン150.0部を加えて溶解させ、トリエチルアミン25.9部を加えた。そして、氷浴下でアクリル酸クロリド38.8部をゆっくりと滴下した。滴下終了後、氷浴下で3時間攪拌し、さらに室温で2時間攪拌した。溶媒を留去し、メタノールでの再沈殿を行うことで、ポリエステル構造を有するモノマーY1を得た。
モノマーY1の物性を表4に示す。また、部分構造YがポリエステルであるモノマーY1についての溶解度パラメータSP(Y)を上記計算ソフトウェアで算出した。その結果を表4に示す。
<モノマーY2及びY3の製造例(部分構造Y:ポリエステル)>
モノマーY1の製造例において、使用する原料の仕込み量を表3のように変更する以外は同様にして、モノマーY2及びY3を製造した。モノマーY2及びY3の物性を表4に示す。
Figure 0006818573
<モノマーY4の製造例(部分構造Y:ポリエステル)>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・1,6−ヘキサンジオール 76.0部
・セバシン酸 124.0部
・酸化ジブチルスズ 0.1部
減圧操作により系内を窒素置換した後、200℃にて2時間攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、更に2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止した。
得られた重合体200.0部に対して、テトラヒドロフラン150.0部を加えて溶解
させ、トリエチルアミン25.9部を加えた。その後、氷浴下でアクリル酸クロリド6.0部をゆっくりと滴下した。滴下終了後、氷浴下で3時間攪拌し、さらに室温で2時間攪拌した。溶媒留去、メタノールでの再沈殿を行うことで、ポリエステル構造を有するモノマーY4を得た。
モノマーY4の数平均分子量(Mn)は2,500、重量平均分子量(Mw)は3,000であった。また、部分構造YがポリエステルであるモノマーY4についての溶解度パラメータSP(Y)を計算ソフトウェアで算出した。その結果を表4に示す。
<モノマーY5の製造例(部分構造Y:ポリエーテル)>
モノマーY5として下記式(C11)で表される化合物(商品名:ライトエステル041MA、共栄社化学(株)社製)を用いた。その物性を表4に示す。
Figure 0006818573
(C11)
<モノマーY6の製造例(部分構造Y:ポリスチレン)>
モノマーY6として下記式(C12)で表される化合物(商品名:AS−6、東亜合成(株)社製)を用いた。その物性を表4に示す。
Figure 0006818573
(C12)
Figure 0006818573
<高分子分散剤B1の製造例(モノマーXとモノマーYとの重合体)>
攪拌装置及び温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら表5に示すように以下の原料を仕込んだ。
・モノマーX1 30.0部
・モノマーY1 50.0部
・スチレン 10.0部
・メタクリル酸 10.0部
・アゾビスイソブチロニトリル(開始剤) 0.20部
・トルエン 200.0部
上記混合物を80℃まで加熱し、5時間反応を行った。室温まで冷却後、反応液をテトラヒドロフランに溶かした後、メタノールに投入して析出、洗浄することで、高分子分散剤B1を得た。得られた高分子分散剤B1の物性を表6に示す。
<高分子分散剤B2〜B8の製造例>
高分子分散剤B1の製造例において、使用する原料の種類、仕込み量及び反応温度、反応時間を表5のように変更する以外は同様にして、高分子分散剤B2〜B8を製造した。高分子分散剤B2〜B8の物性を表6に示す。
Figure 0006818573
Figure 0006818573
<高分子分散剤B1溶液〜B8溶液の製造例>
攪拌装置のついたビーカーに、アセトン50.0部、高分子分散剤B1〜B8をそれぞれ50.0部投入し、温度40℃で完全に溶解するまで攪拌を続け、高分子分散剤B1溶液〜B8溶液を製造した。
<モノマーZ1〜Z3>
モノマーZ1〜Z4は、下記式(C13)で示される構造である。詳細を表7に示す。
Figure 0006818573
(C13)
Figure 0006818573

表7中の分子量は、製造メーカのカタログ記載値である。
<ワックス表面改質剤C1の製造例>
攪拌装置及び温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら表8に示すように以下の原料を仕込んだ。
・スチレン 48.0部
・アクリル酸ブチル 12.0部
・モノマーZ1 40.0部
・アゾビスイソブチロニトリル(開始剤) 0.20部
・キシレン 100.0部
80℃まで加熱した後、5時間重合を行った。次いで脱溶剤を行い、ワックス表面改質剤C1を得た。得られたワックス表面改質剤C1の物性を表9に示す。
Figure 0006818573
<ワックス表面改質剤C2〜C6の製造例>
ワックス表面改質剤C1の製造例において、使用する原料の種類、使用する仕込み量を表8のように変更する以外は同様にして、ワックス表面改質剤C2〜C6を製造した。ワックス表面改質剤C2〜C6の物性を表9に示す。
<ワックス表面改質剤C7の製造例>
攪拌装置及び温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら以下の原料を仕込んだ。
・低分子ポリエチレン 15.0部
(三洋化成工業社サンワックス171P:数平均分子量1500)
・スチレン 60.0部
・アクリル酸ブチル 25.0部
・キシレン 100.0部
得られた混合物を175℃まで加熱した後、ジ−t−ブチルパーオキサイド4.0部、及びキシレン70.0部の混合溶液を2時間かけて滴下し、さらにこの温度で1時間保持して重合を行った。次いで脱溶剤を行い、ワックス表面改質剤C7を得た。得られたワックス表面改質剤Cの物性を表9に示す。
Figure 0006818573
<ワックス粒子分散液W1の製造例>
撹拌装置及び温度計を備えた容器内に以下の原料を投入し、系内を70℃に加熱することによりワックス及びワックス表面改質剤Cをアセトンに溶解させた。
・ジペンタエリスリトールステアリン酸エステルワックス 16.0部
(DP−18、日清オイリオグループ株式会社)
・ワックス表面改質剤C1 8.0部
・アセトン 76.0部
ついで、系内を50rpmの条件にて緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、3時間かけて25℃にまで冷却して乳白色の液体を得た。
この溶液を1mmのガラスビーズ20部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカーにて4時間の分散を行った後、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、ワックス表面改質剤Cを吸着させたワックス粒子分散液W1を得た。得られたワックス粒子分散液W1の物性を表11に示す。
<ワックス粒子分散液W2〜W9及びW11の製造例>
ワックス粒子分散液W1の製造例において、使用するワックス表面改質剤の種類、使用する仕込み量を表10のように変更する以外は同様にして、ワックス表面改質剤Cを吸着させたワックス粒子分散液W2〜W9及びW11を製造した。得られたワックス粒子分散液W2〜W9及びW11の物性を表11に示す。
<ワックス粒子分散液W10の製造例>
ワックス粒子分散液W1の製造例において、ワックス表面改質剤Cを添加せず、使用する仕込み量を表10のように変更して、ワックス粒子分散液W10を製造した。得られたワックス粒子分散液W10の物性を表11に示す。
Figure 0006818573

表10中、パラフィンワックスは、製品名が「HNP10」であり、製造元は「日本精蝋株式会社」である。
Figure 0006818573
<着色剤分散液の製造例>
・着色剤 100.0部
(C.I.Pigment Blue15:3)
・アセトン 150.0部
・ガラスビーズ(1mm) 300.0部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて5時間分散を行い、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、体積平均粒径が200nm、固形分量が40.0質量%の着色剤分散液を得た。
<トナー1の製造例>
・高分子分散剤B1溶液 40.0部
・結着樹脂A1溶液 200.0部
・着色剤分散液 12.0部
・ワックス粒子分散液W1 45.0部
・アセトン 20.0部
上記材料を容器に順番に投入し、ディスパー(特殊機化社製)を用い1000rpmで1分間攪拌することにより樹脂組成物1を得た。
図1に示す装置において、バルブV1、圧力調整バルブV2を閉じた状態で造粒タンクT1に、樹脂組成物1を投入し、30℃に温調した。
造粒タンクT1の内部を回転速度300rpmで撹拌しながら、バルブV1を開き、ボンベB1から二酸化炭素(純度99.99%)を造粒タンクT1に導入し、内部圧力がゲージ圧力3.0MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。
導入した二酸化炭素の質量は、質量流量計を用いて測定したところ、320.0部であった。造粒タンクT1内の温度が30.0℃であることを確認し、回転速度1000rpmで10分間撹拌して造粒を行い、表面が高分子分散剤Bで覆われた樹脂溶液の液滴が分散媒体に分散された分散体の調製を行った。
次に、回転速度を300rpmまで落とし、バルブV1を開き、二酸化炭素を導入し、造粒タンクT1内のゲージ圧力を5.0MPaにした後、バルブV1を閉じた。
5分後、バルブV1を開け、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素を造粒タンクT1内に導入した。この際、圧力調整バルブV2をゲージ圧力8.0MPaに設定し、
造粒タンクT1の内部圧力をゲージ圧力8.0MPaに保持しながら、さらに二酸化炭素を流通させた。この操作により、造粒後の液滴中から抽出された有機溶媒(アセトン)を含む二酸化炭素を、溶媒回収タンクT2に排出し、有機溶媒と二酸化炭素を分離した。
1時間後にポンプP1を停止し、バルブV1を閉じ、圧力調整バルブV2を少しずつ開き、造粒タンクT1の内部圧力を大気圧まで減圧することで、フィルターに捕捉されているトナー粒子1を回収した。
100部のトナー粒子1に対して、ヘキサメチルジシラザンで処理された疎水性シリカ微粒子1.8部(一次粒子の個数平均粒径:7nm)、及び、ルチル型酸化チタン微粒子0.15部(一次粒子の個数平均粒径:30nm)を三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)にて5分間乾式混合して、トナー1を得た。
<トナー2〜21、及び、比較トナー1〜4の製造例>
トナー1の製造例において、使用する原材料の種類や仕込み量を表12に記載するように変更した以外は、トナー1の製造例と同様にしてトナー2〜21、及び、比較トナー1〜4を得た。
Figure 0006818573
<実施例1>
得られたトナー粒子1の粒度分布(D4/D1)について評価を行った。評価結果を表13に示す。なお、評価基準は以下の通りである。なお、Cランクまでを良好な粒度分布が得られていると判断した。
A:D4/D1値が1.15未満
B:D4/D1値が1.15以上1.25未満
C:D4/D1値が1.25以上1.35未満
D:D4/D1値が1.35以上
Figure 0006818573
<過酷環境下(ヒートサイクル試験後)の耐熱保存性>
約10gのトナー1を100mLのポリプロピレン製カップ(以下単に、ポリカップともいう)に入れ、低温低湿環境下(15℃、10%RH)に12時間放置後、12時間かけて高温高湿環境下(55℃、95%RH)に変化させた。この環境下に12時間放置後、12時間かけて再び低温低湿環境(15℃、10%RH)に変化させた。以上の操作を3サイクル繰り返した後、トナーを取り出し凝集を確認した。ヒートサイクルのタイムチャートを図2に示す。評価結果を表14に示す。
(評価基準)
A:まったく凝集物は確認されず、初期とほぼ同様の状態。
B:若干、凝集気味であるが、ポリカップを軽く5回振る程度で崩れる状態であり、特に問題とならない。
C:凝集気味であるが、指でほぐすと簡単にほぐれる状態である。
D:凝集が激しく発生。
E:固形化している。
なお、Cランクまでを良好な耐熱保存性と判断した。
<耐久性>
市販のキヤノン製プリンターLBP9200Cを使用し、耐久性の評価を行った。
LBP9200Cは、一成分接触現像を採用しており、トナー規制部材によって現像担持体上のトナー量を規制している。評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、トナー1を260g充填したものを使用した。
該カートリッジを、シアンステーションに装着し、その他にはダミーカートリッジを装着することで評価を実施した。
温度15℃、湿度10%RHの低温低湿環境下にて、印字率が1%の画像を連続して出力した。100枚出力する毎にベタ画像及びハーフトーン画像を出力し、規制部材へのトナー融着に起因する縦スジ、いわゆる現像スジ発生の有無を目視で確認した。最終的に20,000枚の画像出力を行った。評価結果を表14に示す。
(評価基準)
A:20,000枚以上でも発生なし
B:18,500枚以上19,900枚以下で発生
C:17,000枚以上18,400枚以下で発生
D:15,000枚以上16,900枚以下で発生
E:14,900枚以下で発生
なお、Cランクまでを良好な耐久性と判断した。
<実施例2〜21、並びに、比較例1〜4>
トナー(粒子)2〜21、及び、比較トナー(粒子)1〜4を用いて、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表13又は表14に示す。
Figure 0006818573
T1:造粒タンク、T2:溶媒回収タンク、B1:ボンベ、P1:ポンプ、V1:バルブ、V2:圧力調整バルブ

Claims (13)

  1. トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
    (a)結着樹脂A、高分子分散剤B、着色剤、ワックス、ワックス表面改質剤C及び有機溶媒を含有する樹脂溶液を調製する工程、
    (b)該樹脂溶液と分散媒体とを混合し、表面が該高分子分散剤Bで覆われた該樹脂溶液の液滴が該分散媒体に分散された分散体を形成する工程、及び、
    (c)該液滴に含まれる該有機溶媒を除去してトナー粒子を得る工程、
    を有し、
    該結着樹脂Aと該高分子分散剤Bは、該有機溶媒に可溶であり、
    該ワックス表面改質剤Cの該ワックスに対する吸着率をad(C)(%)とし、
    該高分子分散剤Bの該ワックスに対する吸着率をad(B)(%)としたとき、
    該ad(C)の該ad(B)に対する比〔ad(C)/ad(B)〕が0.7以上であることを特徴とするトナーの製造方法。
  2. 前記〔ad(C)/ad(B)〕が1.0以上である、請求項1に記載のトナーの製造方法。
  3. 前記結着樹脂Aが、スチレン、アクリレート、メタクリレート及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを含む組成物の重合体、並びに、ポリエステルの少なくとも一方を含有する、請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
  4. 前記高分子分散剤Bは、部分構造X及び部分構造Yを有する重合体であり、
    該部分構造Xは、下記式(C1)で示される有機ポリシロキサン構造を有し、
    前記結着樹脂Aの溶解度パラメータをSP(A)とし、
    該部分構造Xの溶解度パラメータをSP(X)とし、
    該部分構造Yの溶解度パラメータをSP(Y)としたときに、
    該SP(A)、該SP(X)及び該SP(Y)が、下記式(1)及び(2)を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
    │SP(A)−SP(Y)|≦2.0 (1)
    SP(Y)−SP(X)≧3.0 (2)
    Figure 0006818573
    (C1)

    [式(C1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1以上3以下のアルキル基を表し、nは2以上160以下の整数を表す。]
  5. 前記部分構造Yが、スチレン、アクリレート、メタクリレート及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを含む組成物の重合体、ポリエステル、又は、ポリエーテルを含有する、請求項4に記載のトナーの製造方法。
  6. 前記高分子分散剤Bの重量平均分子量が、50,000以上500,000以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
  7. 前記ワックス表面改質剤Cが、炭化水素基を有するモノマーユニットを含む重合体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
  8. 前記炭化水素基の炭素数が、12以上40以下である、請求項7に記載のトナーの製造方法。
  9. 前記ワックス表面改質剤Cは、前記炭化水素基を有するモノマーユニットを5.0質量%以上70.0質量%以下含有する、請求項7又は8に記載のトナーの製造方法。
  10. 前記ワックス表面改質剤Cが、前記炭化水素基を側鎖に有するモノマーユニットを含む重合体である、請求項7〜9のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
  11. 前記側鎖が、主鎖とエステル基を介して結合している、請求項10に記載のトナーの製造方法。
  12. 前記ワックスの添加量が、前記結着樹脂A100.0質量部に対して、2.0質量部以上10.0質量部以下であり、
    前記ワックスに対する前記ワックス表面改質剤Cの質量比が0.2以上2.0以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
  13. 前記分散媒体が、液体状態又は超臨界状態の二酸化炭素を含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
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