JP6803285B2 - 車両の走行制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、操舵制御と車輪の制駆動力配分制御で発生するヨーモーメントにより目標コースに沿って走行する車線追従と障害物との衝突や車線からの逸脱を回避自在な車両の走行制御装置に関する。
近年、車両においては、操舵制御に加え車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを発生させ、目標コースに沿って走行する追従走行制御や障害物との衝突を回避、車線逸脱を回避する回避制御等の運転支援制御や自動運転制御を実行する技術が開発され実用化されている。例えば、特開2016−150683号公報(以下、特許文献1)では、操舵アシスト機構と左右輪のトルクベクタリング機構を備え、運転支援制御のために操舵アシスト機構により与えられる操舵アシストトルクの目標値と、運転支援制御のためにトルクベクタリング機構により与えられる左右輪の制駆動力差の目標値とを運転者による操舵トルクに基づいて決定する車両の運転支援制御装置の技術が開示されている。
特開2016−150683号公報
ところで、車両にヨーモーメントを付加するには、上述の特許文献1に開示される運転支援制御装置のように操舵制御に加え、車輪の制駆動力配分制御で行うことが可能である。このため、自動運転で走行している場合等において、車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを付加し、ステアリングホイールが不動のまま車線追従走行が行われている際に、急カーブや障害物が検出された場合、このままステアリングホイールが不動のまま車両にヨーモーメントが付加される制御が行われると、ステアリングホイールが動いていないために、ドライバは、車両が車線の逸脱回避や障害物との衝突回避を行うことが分からず、ドライバに不安感を与えてしまう虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、操舵制御や車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを適切に付加して車両の車線追従制御や車線からの逸脱回避制御や障害物との衝突回避制御を、これらの実行状況を適切にドライバに報知して精度良く、ドライバに不安感を与えることなく実行することができる車両の走行制御装置を提供することを目的としている。
本発明の車両の走行制御装置の一態様は、車線からの逸脱と障害物との衝突の少なくとも一方を回避する回避制御手段と、予め設定する目標コースに沿って追従走行する追従走行制御手段と、前記回避制御手段による回避制御の目標制御量と前記追従走行制御手段による追従走行制御の目標制御量とを比較する目標制御量比較手段と、前記回避制御と前記追従走行制御の目標制御量の比較の結果、前記回避制御が実行されると判定した場合は、前記回避制御の目標制御量に基づいて車両の操舵制御と車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを付加する一方、前記回避制御が実行されず、前記追従走行制御が実行されると判定した場合は、前記追従走行制御の目標制御量に基づいて車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを付加するヨーモーメント付加制御手段とを備えた。
本発明による車両の走行制御装置によれば、操舵制御や車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを適切に付加して車両の車線追従制御や車線からの逸脱回避制御や障害物との衝突回避制御を、これらの実行状況を適切にドライバに報知して精度良く、ドライバに不安感を与えることなく実行することが可能となる。
本発明の実施の一形態に係る車両の全体構成図である。 本発明の実施の一形態に係る制御ユニットの機能ブロック説明図である。 本発明の実施の一形態に係る自動運転制御プログラムのフローチャートである。 本発明の実施の一形態に係る、(図3の)逸脱回避目標ヨーレート算出ルーチンのフローチャートである。 図4から続くフローチャートである。 本発明の実施の一形態に係る、(図4の)衝突余裕時間算出ルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の一形態に係る、X−Y座標上における自車両及び車線と各パラメータの説明図である。 本発明の実施の一形態に係る、自車両の推定される車両軌跡と目標コースの車幅方向における位置のズレ量の説明図である。 本発明の実施の一形態に係る、自車両に対する他車両(障害物)の各パラメータの説明図である。 本発明の実施の一形態に係る、車線追従から障害物との衝突回避を経て車線追従に戻る制御の一例を示す説明図である。 本発明の実施の一形態に係る、車線追従から車線からの逸脱回避を経て車線追従に戻る制御の一例を示す説明図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号1は自車両を示し、符号2は自車両1の駆動系、符号3は自車両1の操舵系を示す。
駆動系2は、エンジン11、クラッチ機構12、第1モータ13、変速機14、減速装置15、駆動輪(左前輪16fl、右前輪16fr)から構成される前輪駆動力伝達経路と、第2モータ17、第3モータ18、減速装置(左減速装置19rl、右減速装置19rr)及び駆動輪(左後輪20rl、右後輪20rr)から構成される後輪駆動力伝達経路とを備える4輪駆動可能な構成になっている。
前輪駆動力伝達経路では、エンジン11及び第1モータ13の駆動力が、変速機14及び減速装置15を介して前側の駆動輪(左前輪16fl、右前輪16fr)に伝達される。また、後輪駆動力伝達経路では、第2モータ17の駆動力が、右減速装置19rrを介して右後輪20rrに伝達され、第3モータ18の駆動力が、左減速装置19rlを介して左後輪20rlに伝達される。
第1モータ13は、バッテリ装置21に蓄えられている電力により駆動され、またエンジン11の出力トルクによって回転して発電し、発電した電力をバッテリ装置21に蓄電する。第2モータ17及び第3モータ18は、バッテリ装置21の蓄電電力及び第1モータ13で発電された電力のうちの少なくとも一方の電力により駆動される。
そして、エンジン制御部22は、制御ユニット50から出力されるエンジントルク指令値に基づいてスロットル開度を制御することでエンジン11のトルクを制御する。変速機制御部23は、制御ユニット50から出力される変速指令値に基づいて変速機14の変速比を制御する。バッテリ制御部24は、バッテリ装置21の電圧及び電流を検出してバッテリの充電状態(State of charge:SOC)を演算する。第1モータ制御部25、第2モータ制御部26及び第3モータ制御部27は、制御ユニット50から出力される第1モータトルク指令値、第2モータトルク指令値及び第3モータトルク指令値に基づいて、第1モータ13、第2モータ17及び第3モータ18のトルクをそれぞれ制御する。
一方、自車両1の操舵系3は、ステアリングホイール31から、ステアリングシャフト31aが延出されており、ステアリングシャフト31aの前端は、ユニバーサルジョイント32a及びジョイント軸32bから成るジョイント部32を介してステアリングギヤボックス34から突出されたピニオン軸35と連結されている。
ステアリングギヤボックス34からは、左前輪16flに向けてタイロッド36flが延出される一方、右前輪16frに向けてタイロッド36frが延出されている。タイロッド36fl、36frのタイロッドエンドは、ナックルアーム37fl、37frを介して、それぞれの側の車輪16fl、16frを回転自在に支持するアクスルハウジング38fl、38frと連結されている。
また、自車両1の操舵系3には、周知のラックアシスト型等の電動パワーステアリング機構39が設けられている。この電動パワーステアリング機構39のパワーステアリング用電動モータは、図示しないパワーステアリング用モータ駆動部により駆動され、パワーステアリング用モータ駆動部は操舵制御部40からの信号に基づいて制御される。
制御ユニット50には、カメラ装置(ステレオカメラ、単眼カメラ、カラーカメラ等)、レーダ装置(レーザレーダ、ミリ波レーダ等)、ソナー等で構成され、自車両の走行する走行環境情報を検出し、走行環境を認識する走行環境認識装置41、自車位置情報(緯度・経度、移動方向等)を検出して地図情報上に自車両位置の表示、及び、目的地までの経路誘導を行うナビゲーションシステム42、車速Vを検出する車速センサ43、操舵角δを検出する操舵角センサ44、ヨーレートγを検出するヨーレートセンサ45等のセンサ、スイッチが接続されている。
走行環境認識装置41は、例えば、ステレオカメラで構成される場合、このステレオカメラは、車室内の天井前方に一定の間隔をもって取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像する1組のカメラと、このカメラからの画像データを処理するステレオ画像処理装置とから構成されている。
走行環境認識装置41のステレオ画像処理装置における、カメラからの画像データの処理は、例えば以下のように行われる。まず、カメラで撮像した自車両の進行方向の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から距離情報を求め、距離画像を生成する。
白線等の車線区画線のデータの認識では、白線は道路面と比較して高輝度であるという知得に基づき、道路の幅方向の輝度変化を評価して、画像平面における左右の車線区画線の位置を画像平面上で特定する。この車線区画線の実空間上の位置(x,y,z)は、画像平面上の位置(i,j)とこの位置に関して算出された視差とに基づいて、すなわち、距離情報に基づいて、周知の座標変換式より算出される。自車両の位置を基準に設定された実空間の座標系は、本実施の形態では、図7に示すように、カメラの中央真下の道路面を原点として、車両前後方向をX軸、車幅方向(車両横方向)をY軸、車高方向をZ軸とする。このとき、z=0のx−y平面は、道路が平坦な場合、道路面と一致する。道路モデルは、道路上の自車両の走行レーンを距離方向に複数区間に分割し、各区間における左右の車線区画線を所定に近似して連結することによって表現し、取得される。
また、走行環境認識装置41は、三次元の距離分布を表す距離画像のデータを基に周知のグルーピング処理を行い、側壁データ、立体物データ等の枠(ウインドウ)と比較し、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データを抽出すると共に、立体物を、歩行者、二輪車、四輪車(車両)、その他の立体物の種類に分類して抽出する。また、認識された車両の中で、例えば、自車両1に最も近く、同じ車両として設定時間以上連続して認識された車両を先行車として抽出する。これら立体物の情報としては、図9に示すように、上述の自車両を基準とするX−Y座標の原点を、自車両の立体物に最も近い部位(図9では、左前端部を例としている)にオフセットした座標において、上述の立体物の種類、自車両からの距離、方向、中心位置の他に、当該立体物の自車両に最も近い部位の相対的な位置(xobj,yobj)、速度Vobj、立体物の進行方向の自車両の進行方向に対するなす角度θobjの各情報が入力される。
また、上述の車線区画線情報、立体物情報については、それぞれ信頼度が走行環境認識装置41において設定され、これら信頼度情報も共に制御ユニット50に入力される。
車線区画線情報の信頼度は、例えば、カメラにて撮像された画像上のレーンの中で判定された処理領域内に存在する車線区画線の特徴量が画像上で線上に並ぶ多さによって信頼度を算出する。エリアの中に理想的な直線実車線区画線がある場合に存在する車線区画線の特徴量の多さを1と設定し、まったく特徴量が存在しない場合、もしくは線上に並んでいると判定できない場合に0と設定される。そして、予め設定しておいた閾値以上の信頼度で車線が検出される場合に車線が存在すると判定する。
また、立体物の信頼度は、例えば、設定した領域内で検出された立体物が同じ立体物と連続して認識される時間に応じて設定され、同じ立体物と連続して認識されるほど信頼度が高く1に設定され、連続して認識される時間が少ないほど信頼度が低く0に設定される。そして、予め設定しておいた閾値以上の信頼度で立体物が検出される場合に立体物が存在すると判定される。立体物が存在すると認識された場合、立体物に関する情報の立体物の自車両に対する前後方向の位置xobj、立体物の自車両に対する横方向の位置yobj、立体物の進行方向の自車両の進行方向に対するなす角度θobjは、検出される安定度(例えば、連続して認識される時間)に応じてそれぞれ信頼度が設定される。そして、それぞれのパラメータ毎に予め設定された信頼度の閾値以上の場合に、当該パラメータの検出が行われたと判定され、信頼度の閾値に達しない場合は、当該パラメータの検出が行われないと判定される。
また、ナビゲーションシステム42は、周知のシステムであり、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波信号を受信して車両の位置情報(緯度、経度)を取得し、センサ33から車速を取得し、また、地磁気センサあるいはジャイロセンサ等により、移動方向情報を取得する。そして、ナビゲーションシステム42は、ナビゲーション機能を実現するための経路情報を生成するナビECUと、地図情報(サプライヤデータ、及び、所定に更新されたデータ)を記憶する地図データベース(以上、何れも図示せず)を備え、情報を報知装置(図示せず)から出力する。
ナビECUは、利用者によって指定された目的地までの経路情報を地図画像に重ねて報知装置で表示させるとともに、検出された車両の位置、速度、走行方向等の情報に基づき、車両の現在位置を報知装置上の地図画像に重ねて表示する。また、地図データベースには、ノードデータ、施設データ等の道路地図を構成するのに必要な情報が記憶されている。ノードデータは、地図画像を構成する道路の位置及び形状に関するものであり、例えば道路(車線)の幅方向中心点、道路の分岐点(交差点)を含む道路上の点(ノード点)の座標(緯度、経度)、当該ノード点が含まれる道路の方向、種別(例えば、高速道路、幹線道路、市道といった情報)、当該ノード点における道路のタイプ(直線区間、円弧区間(円弧曲線部)、クロソイド曲線区間(緩和曲線部))及びカーブ曲率(或いは、半径)のデータが含まれる。
そして、制御ユニット50は、上述の各センサ41〜44からの各入力信号に基づき、車線からの逸脱と障害物との衝突の少なくとも一方を回避する回避制御(本実施の形態では逸脱回避制御と呼ぶ)と、予め設定する目標コースに沿って追従走行する追従走行制御(本実施の形態では車線追従制御と呼ぶ)を行うが、逸脱回避制御の目標制御量(逸脱回避目標ヨーレート)γtLoと車線追従制御の目標制御量(車線追従目標ヨーレート)γtLとを比較し、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとの差が、予め実験、計算等により設定しておいた閾値γc以上となって、逸脱回避制御が実行されると判定した場合は、逸脱回避目標ヨーレートγtLoに基づいて車両の操舵制御と車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを付加する。一方、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとの差が、予め実験、計算等により設定しておいた閾値γcより小さく、逸脱回避制御が実行されず、車線追従制御が実行されると判定した場合は、車線追従目標ヨーレートγtLに基づいて車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを付加する。
このため、制御ユニット50は、図2に示すように、走行情報取得部50a、逸脱回避目標ヨーレート算出部50b、車線追従目標ヨーレート算出部50c、制御量算出出力部50dから主要に構成されている。
走行情報取得部50aは、上述の各センサ41〜45からの各信号が入力され、逸脱回避制御と車線追従制御を行うのに必要な自車両1が走行する車線情報を取得すると共に、自車両1の走行状態を取得する。
具体的には、本実施の形態では、車線追従制御を行う自車両1の目標コースは車線中央に設定するものとし、車線について、以下の各パラメータが算出されている。
ここで、走行環境認識装置41で認識された車線区画線から求めることができるパラメータの導出について、図7を基に説明する。
自車両1の左側の車線区画線は最小自乗法により、以下の(1)式により近似される。
y=AL・x+BL・x+CL …(1)
また、自車両1の右側の車線区画線は最小自乗法により、以下の(2)式により近似される。
y=AR・x+BR・x+CR …(2)
ここで、上述の(1)式、(2)式における、「AL」と「AR」は、それぞれの曲線における曲率を示し、左側の白線の曲率κlは、2・ALであり、右側の白線の曲率κrは、2・ARである。従って、車線中央を目標コースとした場合、目標コースの曲率κは、(κl+κr)/2で算出される。
また、(1)式、(2)式における、「BL」と「BR」は、それぞれの曲線の自車両1の幅方向における傾きを示し、「CL」と「CR」は、それぞれの曲線の自車両1の幅方向における位置を示す。
このため、自車両1の走行車線(目標コース)に対して自車両1の進行方向がなす対車線ヨー角(以下、自車両1の対車線ヨー角)θyawを、上述の(1)、(2)の近似式により、以下の(3)式により算出する。
θyaw=tan−1((BL+BR)/2) …(3)
また、現時点における車線の中央(目標コース)からの自車両位置である車線幅方向車両横位置yvは、以下の(4)式により算出できる。
yv=(CL+CR)/2 …(4)
更に、車線区画線から自車両1までの距離Lは、例えば、以下の(5)式により算出される。
L=((CL−CR)−W)/2−yv …(5)
ここで、Wは車幅である。
また、予め設定する前方注視点(位置)における自車両1の幅方向における目標コースと自車位置とのズレ量Δyは、図8に示すように、例えば、以下の(6)式により算出できる。
Δy=(yl+yr)/2−yvv …(6)
この(6)式において、yvvは車両の前方注視点(位置)(0,xv)のx座標における推定車両軌跡のy座標であり、前方注視点(0,xv)の前方注視距離(z座標)であるxvは、本実施の形態では、xv=tc・Vで算出される。ここで、tcは予め設定しておいた予見時間であり、例えば、1.2secに設定されている。
従って、yvvは、車両の走行状態に基づいて車両の諸元や車両固有のスタビリティファクタAs等を用いる場合には、例えば、以下の(7)式で算出することができる。
yvv=(1/2)・(1/(1+As・V))・(δ/Lw)
・(tc・V) …(7)
ここで、Lwはホイールベースである。また、(6)式における、ylは前方注視点(0,xv)のx座標における左車線区画線のy座標であり、yrは前方注視点(0,xv)のx座標における右車線区画線のy座標である。
尚、上述のyvvは、車速Vやヨーレートγを用いて、以下の(8)式で算出することもでき、或いは、画像情報を基に、以下の(9)式で算出することもできる。
yvv=(1/2)・(γ/V)・(V・tc) …(8)
yvv=(1/2)・κ・(V・tc) …(9)
尚、tcをゼロに設定した場合、Δyは、図7中に示すように、現時点における目標コースと自車両1との位置のズレ量と同値になる。
こうして、走行情報取得部50aで算出された逸脱回避制御と車線追従制御を行うのに必要な自車両1が走行する車線情報は、上述の各センサ41〜45からの各信号と共に、逸脱回避目標ヨーレート算出部50b、車線追従目標ヨーレート算出部50c、制御量算出出力部50dに出力される。
逸脱回避目標ヨーレート算出部50bは、図4、5に示す逸脱回避目標ヨーレート算出ルーチンに従って、上述の走行情報取得部50aからの信号を基に、車線情報に基づいて操舵制御により自車両が走行する車線から逸脱することを防止する車線逸脱防止目標旋回量γ0を算出し、少なくとも立体物情報に基づいて操舵制御により自車両が立体物と衝突することを回避する立体物回避目標旋回量(γ1、γ2、γ3)を算出し、算出した車線逸脱防止目標旋回量γ0と立体物回避目標旋回量(γ1、γ2、γ3)とを比較して最も大きい目標旋回量を逸脱回避目標ヨーレートγtLoとして設定し、制御量算出出力部50dに出力する。
以下、逸脱回避目標ヨーレート算出部50bで実行される逸脱回避目標ヨーレート算出ルーチンについて説明する。
まず、ステップ(以下、「S」と略称)201で、車線が認識されているか否か判定し、車線が認識されている場合は、S202に進み、車線逸脱予想時間t_tlcを算出する。
現在の走行状態で車線から逸脱する車線逸脱予想時間t_tlcは、例えば、以下の(10)式により算出できる。
t_tlc=(L−y_offset)/(V・sin(θyaw) …(10)
ここで、y_offsetは、例えば、路面カント、道路幅、車線曲率等の条件により、予め実験・計算等により設定しておいたマップやテーブルを参照して設定する値である。
次に、S203に進み、車線逸脱防止目標旋回量(本実施の形態では、車線逸脱防止目標ヨーレート)γ0を、例えば、以下の(11)式により算出する。
γ0=−θyaw/t_tlc …(11)
また、S201の判定で、車線が認識されていない場合は、S204に進み、車線逸脱防止目標ヨーレートγ0を0(γ0=0:車線逸脱防止の目標旋回量は0)に設定する。
S203、或いは、S204で車線逸脱防止目標ヨーレートγ0の設定を行った後は、S205に進み、立体物が認識されているか否か判定される。
このS205の判定の結果、立体物が認識されていると判定された場合は、S206に進み、後述する図6に示す衝突余裕時間算出ルーチンに従って、衝突余裕時間t_ttcの算出を実行する。
S206で衝突余裕時間t_ttcの算出を実行した後はS207に進み、S206の衝突余裕時間t_ttcの算出処理の結果、衝突余裕時間t_ttcが算出されたか否か判定される。
このS207で、衝突余裕時間t_ttcが算出されたと判定された場合はS208に進み、立体物の進行方向の自車両の進行方向に対するなす角度θobjが検出されているか否か判定される。
そして、立体物の進行方向の自車両の進行方向に対するなす角度θobjが検出されている場合は、S209に進み、第1の立体物回避目標旋回量(本実施の形態では、第1の立体物回避目標ヨーレート)γ1を、例えば、以下の(12)式により算出する。
γ1=−θobj/t_ttc …(12)
すなわち、第1の立体物回避目標ヨーレートγ1は、自車両が立体物と衝突するまでに、自車両の進行方向を立体物の進行方向と同一方向になるように操舵制御し、自車両と立体物とが衝突することを確実に防止できる制御量となっている。
また、S208の判定の結果、立体物の進行方向の自車両の進行方向に対するなす角度θobjが検出されていない場合は、S210に進み、第1の立体物回避目標ヨーレートγ1を0(γ1=0:第1の立体物回避の目標旋回量は0)に設定する。
S209、或いは、S210で、第1の立体物回避目標ヨーレートγ1を設定した後はS211に進み、自車両の対車線ヨー角θyawが検出されているか否か判定する。
そして、自車両の対車線ヨー角θyawが検出されている場合は、S212に進み、第2の立体物回避目標旋回量(本実施の形態では、第2の立体物回避目標ヨーレート)γ2を、例えば、以下の(13)式により算出する。
γ2=−θyaw/t_ttc …(13)
すなわち、第2の立体物回避目標ヨーレートγ2は、少なくとも自車両が立体物と衝突しないように、自車両の走行車線から逸脱しないように操舵制御し、自車両と立体物とが衝突することを確実に防止できる制御量となっている。
また、S211の判定の結果、自車両の対車線ヨー角θyawが検出されていない場合は、S213に進み、第2の立体物回避目標ヨーレートγ2を0(γ2=0:第2の立体物回避の目標旋回量は0)に設定する。
また、前述のS207の判定の結果、衝突余裕時間t_ttcが算出されていないと判定された場合は、S214に進み、第1の立体物回避目標ヨーレートγ1を0(γ1=0:第1の立体物回避の目標旋回量は0)に設定し、S215に進んで、第2の立体物回避目標ヨーレートγ2を0(γ2=0:第2の立体物回避の目標旋回量は0)に設定する。
そして、S212、或いは、S213、或いは、S215で第2の立体物回避目標ヨーレートγ2を設定した後は、S216に進み、自車両の対車線ヨー角θyawと立体物の自車両に対する横方向の位置yobjとが検出されているか否か判定される。
S216の判定の結果、自車両の対車線ヨー角θyawと立体物の自車両に対する横方向の位置yobjとが検出されている場合は、S217に進み、第3の立体物回避目標旋回量(本実施の形態では、第3の立体物回避目標ヨーレート)γ3を、例えば、以下の(14)式により算出する。
γ3=−θyaw/((yobj−y_offset)/(V・sin(θyaw))
…(14)
すなわち、第3の立体物回避目標ヨーレートγ3は、たとえ自車両の走行車線内であっても、立体物に接近していく走行は、ドライバにとって恐怖感を与える可能性があるため、そのような車両の走行を防止する制御量となっている。
また、前述のS216の判定の結果、自車両の対車線ヨー角θyawと立体物の自車両に対する横方向の位置yobjとが検出されていない場合は、S218に進み、第3の立体物回避目標ヨーレートγ3を0(γ3=0:第3の立体物回避の目標旋回量は0)に設定する。
一方、前述のS205の判定の結果、立体物が認識されていないと判定された場合は、S219に進み、第1の立体物回避目標ヨーレートγ1を0(γ1=0:第1の立体物回避の目標旋回量は0)に設定し、S220に進んで、第2の立体物回避目標ヨーレートγ2を0(γ2=0:第2の立体物回避の目標旋回量は0)に設定し、S221に進み、第3の立体物回避目標ヨーレートγ3を0(γ3=0:第3の立体物回避の目標旋回量は0)に設定する。
そして、S217、或いは、S218、或いは、S221で第3の立体物回避目標ヨーレートγ3を設定した後は、S222に進み、逸脱回避目標ヨーレートγtLoを、例えば、以下の(15)式により算出する。
γtLo=MAX(|γ0|,|γ1|,|γ2|,|γ3|) …(15)
ここで、MAX(|γ0|,|γ1|,|γ2|,|γ3|)は、|γ0|,|γ1|,|γ2|,|γ3|の中で、最大値を求めるMAX関数であり、すなわち、各目標ヨーレートの中で、絶対値の最も大きな値が逸脱回避目標ヨーレートγtLoとして算出される。
次に、上述のS206で実行される衝突余裕時間算出ルーチンを、図6のフローチャートで説明する。
まず、S301で、立体物の自車両に対する前後方向の位置xobjが検出されているか否か判定される。
この判定の結果、立体物の自車両に対する前後方向の位置xobjが検出されている場合は、S302に進み、立体物の自車両に対する横方向の位置yobjが検出されているか否か判定される。
そして、S302の判定の結果、立体物の自車両に対する横方向の位置yobjが検出されている場合は、S303に進み、立体物と自車両との相対速度の前後方向成分Vrx_obj(=dxobj/dt)と、立体物と自車両との相対速度の横方向成分Vry_obj(=dyobj/dt)を算出する。
次いで、S304に進み、車両前後方向における衝突余裕時間t_ttc_x(=xobj/Vrx_obj)と、車両横方向における衝突余裕時間t_ttc_y(=yobj/Vry_obj)を算出する。
また、前述のS302で、立体物の自車両に対する横方向の位置yobjが検出されていない場合は、S305に進み、立体物の進行方向の自車両の進行方向に対するなす角度θobjが検出されているか否か判定される。
この判定の結果、立体物の進行方向の自車両の進行方向に対するなす角度θobjが検出されている場合は、S306に進み、立体物と自車両との相対速度の前後方向成分Vrx_obj(=dxobj/dt)を算出する。また、立体物と自車両との相対速度の横方向成分Vry_objは、Vrx_objとθobjを用いて、以下の(16)式で算出する。
Vry_obj=Vrx_obj・sin(θobj) …(16)
次いで、S307に進み、検出できない立体物の自車両に対する横方向の位置yobjを、立体物と自車両との相対速度の横方向成分Vry_objを検出できなくなってからの時間を乗算し、最後に検出された立体物の自車両に対する横方向の位置yobjに加算することで算出する。
次に、S308に進んで、車両前後方向における衝突余裕時間t_ttc_x(=xobj/Vrx_obj)と、車両横方向における衝突余裕時間t_ttc_y(=yobj/Vry_obj)を算出する。
S304、或いは、S308で、車両前後方向における衝突余裕時間t_ttc_xと、車両横方向における衝突余裕時間t_ttc_yを算出した後は、S309に進み、車両前後方向における衝突余裕時間t_ttc_xと、車両横方向における衝突余裕時間t_ttc_yとを比較する。
そして、このS309の比較の結果、小さい方の衝突余裕時間、すなわち、t_ttc_x≧t_ttc_yであれば、S310に進み、車両横方向における衝突余裕時間t_ttc_yを衝突余裕時間t_ttcとして設定し、t_ttc_x<t_ttc_yであれば、S311に進み、車両前後方向における衝突余裕時間t_ttc_xを衝突余裕時間t_ttcとして設定する。
また、前述のS305で、立体物の進行方向の自車両の進行方向に対するなす角度θobjが検出されていない場合は、S312に進み、立体物と自車両との相対速度の前後方向成分Vrx_obj(=dxobj/dt)を算出し、S313に進んで、車両前後方向における衝突余裕時間t_ttc_x(=xobj/Vrx_obj)を算出する。
そして、S314に進み、車両前後方向における衝突余裕時間t_ttc_xを衝突余裕時間t_ttcとして設定する。
一方、S301で、立体物の自車両に対する前後方向の位置xobjが検出されていない場合は、S315に進み、立体物の自車両に対する横方向の位置yobjが検出されているか否か判定される。
このS315の判定の結果、立体物の自車両に対する横方向の位置yobjが検出されている場合は、S316に進み、立体物と自車両との相対速度の横方向成分Vry_obj(=dyobj/dt)を算出し、S317に進んで、車両横方向における衝突余裕時間t_ttc_y(=yobj/Vry_obj)を算出する。
そして、S318に進み、車両横方向における衝突余裕時間t_ttc_yを衝突余裕時間t_ttcとして設定する。
また、前述のS315で、立体物の自車両に対する横方向の位置yobjが検出されていない場合は、S319に進み、衝突余裕時間t_ttcは設定しない。
以上のように、逸脱回避目標ヨーレートγtLoを算出する逸脱回避目標ヨーレート算出部50bは、回避制御手段として設けられている。
車線追従目標ヨーレート算出部50cは、上述の走行情報取得部50aからの信号を基に、例えば、以下の(17)式に基づいて、予め設定する目標コース(本実施の形態では、車線中央)に沿って追従走行するのに必要な目標追従舵角δtLを算出する。
δtL=GLff・κ+GLfb1・Δy+GLfb2・θyaw …(17)
ここで、GLffは曲率に対するフィードフォワードゲイン、GLfb1は目標コースからの横位置偏差に対するフィードバックゲイン、GLfb2は対車線ヨー角に対するフィードバックゲインであり、それぞれ、予め実験、計算等により設定しておいた値である。
そして、上述の目標追従舵角δtLを基に、例えば、以下の(18)式に基づいて、車線追従目標ヨーレートγtLを算出し、制御量算出出力部50dに出力する。
γtL=(1/(1+As・V2))・(V/Lw)・δtL …(18)
このように、車線追従目標ヨーレート算出部50cは、追従走行制御手段として設けられている。
制御量算出出力部50dは、走行情報取得部50aから上述の各信号が入力され、逸脱回避目標ヨーレート算出部50bから逸脱回避目標ヨーレートγtLoが入力され、車線追従目標ヨーレート算出部50cから車線追従目標ヨーレートγtLが入力される。
そして、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとを比較し、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとの差が、予め実験、計算等により設定しておいた閾値γc以上となって、逸脱回避制御が実行されると判定した場合は、逸脱回避目標ヨーレートγtLoに基づいて車両の操舵制御と車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを付加する。
具体的には、以下の(19)式により、目標操舵トルクTδを算出し、操舵制御部40に出力する。
Tδ=Gtff・γtLo …(19)
ここで、Gtffは予め実験、計算等により設定しておいたフィードフォワードゲインである。
更に、以下の(20)式により、付加ヨーモーメントMz(反時計回りを「+」として)を算出する。
Mz=Gmp1・(γtLo−γ)+Gmd1・d(γtLo−γ)/dt
+Gmi1・∫(γtLo−γ)dt …(20)
ここで、Gmp1、Gmd1、Gmi1は予め実験、計算等により設定しておいたフィードバックゲインである。
この付加ヨーモーメントMzに基づいて、例えば、以下の(21)、(22)式により、第3モータ18に発生させるモータトルクTrlと、第2モータ17に発生させるモータトルクTrrを算出し、モータトルクTrlは、第3モータ制御部27に、モータトルクTrrは、第2モータ制御部26に出力する。
Trl=−(rt/d)・Mz …(21)
Trr=+(rt/d)・Mz …(22)
ここで、rtはタイヤ半径、dはトレッドである。
一方、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとの差が、予め実験、計算等により設定しておいた閾値γcより小さく、逸脱回避制御が実行されず、車線追従制御が実行されると判定した場合は、車線追従目標ヨーレートγtLに基づいて車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを付加する。
具体的には、以下の(23)式により、付加ヨーモーメントMzを算出する。
Mz=Gmff2・γtL+Gmp2・(γtL−γ)
+Gmd2・d(γtL−γ)/dt
+Gmi2・∫(γtL−γ)dt …(23)
ここで、Gmff2は予め実験、計算等により設定しておいたフィードフォワードゲイン、Gmp2、Gmd2、Gmi2は予め実験、計算等により設定しておいたフィードバックゲインである。
この付加ヨーモーメントMzに基づいて、例えば、前述の(21)、(22)式により、第3モータ18に発生させるモータトルクTrlと、第2モータ17に発生させるモータトルクTrrを算出し、モータトルクTrlは、第3モータ制御部27に、モータトルクTrrは、第2モータ制御部26に出力する。
このように、制御量算出出力部50dは、目標制御量比較手段、ヨーモーメント付加制御手段として設けられている。
次に、上述の制御ユニット50で実行される自動運転制御を図4のフローチャートで説明する。
まず、S101で逸脱回避目標ヨーレート算出部50bは、前述の(15)式により、逸脱回避目標ヨーレートγtLoを算出する。
次いで、S102で車線追従目標ヨーレート算出部50cは、前述の(18)式により、車線追従目標ヨーレートγtLを算出する。
そして、S103に進み、制御量算出出力部50dは、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとを比較し、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとの差が、予め実験、計算等により設定しておいた閾値γcより小さく(|γtLo−γtL|<γc)、逸脱回避制御が実行されず、車線追従制御が実行されると判定した場合は、S104に進み、目標操舵トルクTδを0に設定し(Tδ=0)、S105に進んで目標操舵トルクTδを操舵制御部40に出力し、S106に進み、前述の(23)式により、付加ヨーモーメントMzを算出する。
一方、S103での比較の結果、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとの差が、予め実験、計算等により設定しておいた閾値γc以上(|γtLo−γtL|≧γc)となって、逸脱回避制御が実行されると判定した場合は、S107に進み、前述の(19)式により、目標操舵トルクTδを算出し、S108に進んで目標操舵トルクTδを操舵制御部40に出力し、S109に進み、前述の(20)式により、付加ヨーモーメントMzを算出する。
S106、又は、S109で付加ヨーモーメントMzを算出した後は、S110に進み、前述の(21)、(22)式により、第3モータ18に発生させるモータトルクTrlと、第2モータ17に発生させるモータトルクTrrを算出し、モータトルクTrlは、第3モータ制御部27に、モータトルクTrrは、第2モータ制御部26に出力する。
上述の自動運転制御により、車線追従から、障害物との衝突回避を経て車線追従に戻る制御の一例を図10で説明する。
まず、P1点で車線追従制御が、車線追従目標ヨーレートγtLで行われている際に、前方に障害物が検出されると、障害物との衝突を回避する経路の逸脱回避目標ヨーレートγtLoが算出され、この逸脱回避目標ヨーレートγtLoが次第に大きくなって、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとの差が、予め実験、計算等により設定しておいた閾値γc以上(|γtLo−γtL|≧γc)となると、車線追従制御から逸脱回避制御へと移行される。
この逸脱回避制御では、逸脱回避制御(逸脱回避目標ヨーレートγtLo)のフィードフォワード成分が目標操舵トルクTδとして算出され、P2点に示すように、この目標操舵トルクTδで操舵制御される(尚、逸脱回避制御(逸脱回避目標ヨーレートγtLo)のフィードバック成分は、車輪の制駆動力配分制御に用いられる)。このときのステアリングホイールの動き(回避操舵)により、ドライバは、自車両が障害物を回避する運動を行っていることを理解することができ、ドライバに不安感を与えることを防止することができるようになっている。
そして、自車両がP3点(障害物との回避を終了した点)、P4点と移動していくと、車線追従制御へと戻り、この際、車線追従制御は、車輪の制駆動力配分制御により精度良く実行される。
また、上述の自動運転制御により、車線追従から、車線からの逸脱回避を経て車線追従に戻る制御の一例を図11で説明する。
まず、Q1点で車線追従制御が、車線追従目標ヨーレートγtLで行われている際に、車線からの逸脱が検出されると、車線からの逸脱を回避する経路の逸脱回避目標ヨーレートγtLoが算出され、この逸脱回避目標ヨーレートγtLoが次第に大きくなって、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとの差が、予め実験、計算等により設定しておいた閾値γc以上(|γtLo−γtL|≧γc)となると、車線追従制御から逸脱回避制御へと移行される。
この逸脱回避制御では、逸脱回避制御(逸脱回避目標ヨーレートγtLo)のフィードフォワード成分が目標操舵トルクTδとして算出され、Q2点に示すように、この目標操舵トルクTδで操舵制御される(尚、逸脱回避制御(逸脱回避目標ヨーレートγtLo)のフィードバック成分は、車輪の制駆動力配分制御に用いられる)。このときのステアリングホイールの動き(回避操舵)により、ドライバは、自車両が車線からの逸脱を回避する運動を行っていることを理解することができ、ドライバに不安感を与えることを防止することができるようになっている。
そして、自車両がQ3点(逸脱回避を終了した点)、Q4点と移動していくと、車線追従制御へと戻り、この際、車線追従制御は、車輪の制駆動力配分制御により精度良く実行される。
このように本発明の実施の形態によれば、逸脱回避制御と車線追従制御を行うが、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとを比較し、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとの差が、予め実験、計算等により設定しておいた閾値γc以上となって、逸脱回避制御が実行されると判定した場合は、逸脱回避目標ヨーレートγtLoに基づいて車両の操舵制御と車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを付加する。一方、逸脱回避目標ヨーレートγtLoと車線追従目標ヨーレートγtLとの差が、予め実験、計算等により設定しておいた閾値γcより小さく、逸脱回避制御が実行されず、車線追従制御が実行されると判定した場合は、車線追従目標ヨーレートγtLに基づいて車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを付加する。このため、操舵制御や車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを適切に付加して車両の車線追従制御や車線からの逸脱回避制御や障害物との衝突回避制御を、これらの実行状況を適切にドライバに報知して精度良く、ドライバに不安感を与えることなく実行することが可能となる。
尚、本実施の形態では、エンジンと3つの電動モータを備えたハイブリッド車を例に説明したが、これに限ること無く、例えば、4輪にインホイールモータを備えた電動自動車や、他の形式のハイブリッド車等であっても、左右輪間の制駆動力差により車両にヨーモーメントを付加することができる車両であれば、本発明を適用できることは言うまでも無い。
1 自車両
2 駆動系
3 操舵系
11 エンジン
12 クラッチ機構
13 第1モータ
14 変速機
15 減速装置
16fl、16fr 駆動輪
17 第2モータ
18 第3モータ
19rl、19rr 減速装置
20rl、20rr 駆動輪
21 バッテリ装置
22 エンジン制御部
23 変速機制御部
24 バッテリ制御部
25 第1モータ制御部
26 第2モータ制御部
27 第3モータ制御部
31 ステアリングホイール
31a ステアリングシャフト
32 ジョイント部
34 ステアリングギヤボックス
35 ピニオン軸
38fl、38fr アクスルハウジング
39 電動パワーステアリング機構
40 操舵制御部
41 前方環境認識装置
42 ナビゲーションシステム
43 車速センサ
44 操舵角センサ
45 ヨーレートセンサ
50 制御ユニット
50a 走行情報取得部
50b 逸脱回避目標ヨーレート算出部(回避制御手段)
50c 車線追従目標ヨーレート算出部(追従走行制御手段)
50d 制御量算出出力部(目標制御量比較手段、ヨーモーメント付加制御手段)

Claims (3)

  1. 車線からの逸脱と障害物との衝突の少なくとも一方を回避する回避制御手段と、
    予め設定する目標コースに沿って追従走行する追従走行制御手段と、
    前記回避制御手段による回避制御の目標制御量と前記追従走行制御手段による追従走行制御の目標制御量とを比較する目標制御量比較手段と、
    前記回避制御と前記追従走行制御の目標制御量の比較の結果、前記回避制御が実行されると判定した場合は、前記回避制御の目標制御量に基づいて車両の操舵制御と車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを付加する一方、前記回避制御が実行されず、前記追従走行制御が実行されると判定した場合は、前記追従走行制御の目標制御量に基づいて車輪の制駆動力配分制御により車両にヨーモーメントを付加するヨーモーメント付加制御手段と、
    を備えたことを特徴とする車両の走行制御装置。
  2. 前記ヨーモーメント付加制御手段は、前記回避制御と前記追従走行制御の目標制御量の比較の結果、前記回避制御が実行されると判定した場合は、前記回避制御手段による目標制御量のフィードフォワード制御量に基づいて前記車両の操舵制御を実行すると共に、前記回避制御手段による目標制御量のフィードバック制御量に基づいて前記車輪の制駆動力配分制御を実行することを特徴とする請求項1記載の車両の走行制御装置。
  3. 前記ヨーモーメント付加制御手段は、前記回避制御と前記追従走行制御の目標制御量の比較の結果、前記回避制御が実行されず、前記追従走行制御が実行されると判定した場合は、前記追従走行制御の目標制御量のフィードフォワード制御とフィードバック制御の少なくとも一方により前記車輪の制駆動力配分制御を実行することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の走行制御装置。
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