以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
[実施例1]
図1は、実施例1によるシフト装置100の外観斜視図である。図1では、シフト装置100のシフトノブ112からの操作レバー2の一部(シフトノブ112に繋がる部位)の図示が簡略化されている。図1には、一例として、3つの傾倒方向(D1方向〜D3方向)が示される。また、図1には、直交する3軸X,Y,Zが定義されている。Z軸は、高さ方向に対応する。尚、シフト装置100の設置状態において、Z軸は、必ずしも重力方向に平行である必要はない。
シフト装置100は、車両に設けられるのが好適である。但し、シフト装置100は、航空機や鉄道等に設けられてもよいし、ゲーム機に適用されてもよい。
シフト装置100は、操作レバー2と、操作レバー2を傾倒可能に支持する支持体3(図3A参照)と、ケース本体110と、ケース本体110の上側の開放部分を覆うカバー111とを有する。ケース本体110内には、後述の吸引力発生機構1や摺動抵抗発生機構300等が収容されている。尚、ケース本体110は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂材を射出成形することによって形成されている。尚、ケース本体110及びカバー111は、筐体の一例である。
カバー111はケース本体110と同じように、PBT等の樹脂により成形されている。カバー111の中央部分には円形の貫通穴111aが形成されており、この貫通穴111aには操作レバー2が挿通され、操作レバー2の先端はカバーの上面側に突出され、操作レバー2の先端には操作レバー2を傾倒操作するためのシフトノブ112が取付けられている。
シフト装置100は、シフトノブ112が変速機に直接接続されている機械制御方式ではなく、シフトバイワイヤ方式である。シフトバイワイヤ方式のシフト装置100は、リンク機構等の機械的な構成が不要になるため、小型化が図れる。したがって、車両内におけるシフト装置100のレイアウトに自由度を持たせることができる。また、操作レバー2を比較的小さな力で操作できるので、シフトチェンジの操作が簡単になる。
図2は、シフト装置100のシフト操作の一例の説明図である。
操作レバー2がホームポジションH(操作基準位置の一例)から第1傾倒方向(D1方向)に傾倒操作されると、操作レバー2はポジションF1に移動される。ポジションF1は第1傾倒方向(D1方向)側の第1段ポジションF1となる。操作レバー2が第1段ポジションF1から第1傾倒方向(D1方向)へさらに傾倒操作されると、操作レバー2はポジションF2に移動される。ポジションF2は第1傾倒方向(D1方向)側の第2段ポジションF2となる。
第1傾倒方向(D1方向)側の第1段ポジションF1または第2段ポジションF2に位置する操作レバー2の傾倒操作が解除されると、操作レバー2は第2傾倒方向(D2方向)に自動的に傾倒操作され、操作レバー2はホームポジションHに戻される。その際に車両のシフト状態は、F1またはF2の状態のまま維持される。
操作レバー2がホームポジションHから第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒操作されると、操作レバー2はポジションR1に移動される。ポジションR1は第2傾倒方向(D2方向)側の第1段ポジションR1となる。操作レバー2が第1段ポジションR1から第2傾倒方向(D2方向)へさらに傾倒操作されると、操作レバー2はポジションR2に移動される。ポジションR2は第2傾倒方向(D2方向)側の第2段ポジションR2となる。
第2傾倒方向(D2方向)側の第1段ポジションR1または第2段ポジションR2に位置する操作レバー2の傾倒操作が解除されると、操作レバー2は第1傾倒方向(D1方向)へ自動的に傾倒され、操作レバー2はホームポジションHに戻される。その際に車両のシフト状態は、R1またはR2の状態のまま維持される。
操作レバー2がホームポジションHから第3傾倒方向(D3方向)へ傾倒操作されると、操作レバー2はポジションM(操作基準位置の他の一例)に移動される。ポジションMに位置する操作レバー2の傾倒操作が解除されても操作レバー2はポジションMの位置へ傾倒した状態で維持される。ポジションMへ傾倒操作された操作レバー2が第1傾倒方向(D1方向)へ傾倒操作されると、操作レバー2はM+に移動させられる。ポジションMに位置する操作レバー2が第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒操作されると、操作レバー2はM−に移動される。M+またはM−に位置する操作レバー2の傾倒操作が解除されると、事前の傾倒操作とは逆方向に自動的に傾倒され、操作レバー2はポジションMに戻される。その際に車両のシフト状態は、M+またはM−の状態のまま維持される。
図3Aは、吸引力発生機構1を含む内部構造の斜視図である。図3Bは、吸引力発生機構1を含む内部構造の上面図である。図4は、枠体15を取り除いた状態の内部構造の側面図である。図5は、第1可動部材4の斜視図である。図6は、第2可動部材8の斜視図である。図7は、枠体15及び永久磁石6の断面図である。図8は、永久磁石6が形成する磁束の説明図である。
吸引力発生機構1は、操作基準位置から第1傾倒方向(D1方向)への操作レバー2の傾倒に連動して第1傾倒方向(D1方向)へ傾倒操作される第1可動部材4を有している。第1可動部材4は、鉄等の磁性材料により形成されている。
吸引力発生機構1は、操作レバー2が操作基準位置にある状態において第1可動部材4と対向するように支持体3に支持された永久磁石6を有している。永久磁石6は、後述する磁石保持部30に保持されている。
支持体3は、亜鉛ダイキャスト等の非磁性体により成形された矩形状の枠体15を有している。枠体15は、互いに対向する第1枠部15Aと第2枠部15Bと、第1枠部15A及び第2枠部15Bと直交する方向で互いに対向する第3枠部15Cと第4枠部15Dを有し、枠体15の上下面は開放されている。第1枠部15Aと第2枠部15Bには対向するように軸受け部15aが形成されており、軸受け部15aには支持体3を構成する磁性材料により形成された第1傾倒軸16の両端部が回転可能に嵌合されている。
操作レバー2の基端は、第1傾倒軸16に一体的に取付けられている。第1傾倒軸16の両端が軸受け部15a、15aに回転可能に支持されることによって、操作レバー2は第1傾倒方向(D1方向)または第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒操作が可能に支持されている。
また、支持体3の第3枠部15Cと第4枠部15Dには、一対の軸部17A、17Bが外方に同軸状に突出するように形成されている。軸部17A、17Bはケース本体110内で回転可能に支持されている。軸部17A、17Bの組み合わせによって第2傾倒軸が構成され、操作レバー2は第3傾倒方向(D3方向)へ傾倒操作が可能に支持されている。このような構成により、操作レバー2は、第1傾倒方向(D1方向)、第2傾倒方向(D2方向)、及び第3傾倒方向(D3方向)のそれぞれへの傾倒操作が可能とされる。
吸引力発生機構1は、第1可動部材4を永久磁石6に近づく方向へ付勢する第1板バネ7と、第1板バネ7を備え操作レバー2に連動して第1傾倒方向(D1方向)へ傾倒操作される第2可動部材8と、第2可動部材8に備えられた一対の第2磁性体9とを有する。第2磁性体9は、永久磁石6の側面を覆う態様でZ方向にも延在する。
操作レバー2が操作基準位置にある場合には、第1可動部材4と第2磁性体9は互いに近づけられて永久磁石6の第1傾倒方向(D1方向)側に配置されるとともに、第1可動部材4及び第2磁性体9がそれぞれ永久磁石6によって吸引される。
また、吸引力発生機構1は、第3可動部材10を有する。第3可動部材10は、永久磁石6を間に置き第1可動部材4と反対側に配置される。第3可動部材10は、操作基準位置から第2傾倒方向(D2方向)への操作レバー2の傾倒に連動して第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒操作される。第3可動部材10は、鉄等の磁性材料により形成されている。
また、吸引力発生機構1は、第3可動部材10を永久磁石6に近づく方向へ付勢する第2板バネ12と、第2板バネ12を備え操作レバー2に連動して第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒動作される第4可動部材13と、第4可動部材13に備えられた一対の第4磁性体14とを有する。第4磁性体14は、永久磁石6の側面を覆う態様でZ方向にも延在する。
操作レバー2が操作基準位置にある場合には、第3可動部材10と第4磁性体14が互いに近づけられて永久磁石6の第2傾倒方向(D2方向)側に配置されるともに、第3可動部材10及び第4磁性体14がそれぞれ永久磁石6によって吸引される。
なお、第3可動部材10は第2傾倒方向(D2)側に配設された可動部材であり、第1傾倒方向(D1)側に配設された第1可動部材4と構成が同一である。また、第4可動部材13は第2傾倒方向(D2)側に配設された可動部材であり、第1傾倒方向(D1)側に配設された第2可動部材8と構成が同一である。また、第4磁性体14は第2傾倒方向(D2)側に配設され、第1傾倒方向(D1)側に配設された第2磁性体9と構成が同一である。また、第1板バネ7と第2板バネ12の構成は同一である。
第1可動部材4が第1傾倒軸16を中心に傾倒操作されるので、操作レバー2のスムーズな傾倒操作が可能となる。
第1可動部材4は鉄等の磁性材料によって板状に形成されている。第1可動部材4自体が第1磁性体を兼ねている。第1可動部材4の両側部の基端側には、図5に示すように、一対の取り付け片部4Aが屈曲形成されている。取り付け片部4Aには軸受け部4aが対向して形成されている。軸受け部4aには第1傾倒軸16の両端が嵌合され、第1可動部材4は枠体15内で第1傾倒軸16を中心に回転可能に支持されている。
第1可動部材4には第1板バネ7の先端が当接する板バネ受け部4Bが水平に形成されている。第1板バネ7の先端は板バネ受け部4Bの表面側に垂下するように形成されている。第1板バネ7の先端は第1可動部材4の板バネ受け部4Bに当接され受止められている。
第1可動部材4の基端の背面は操作レバー2の基端に一体に突設された支持ブロック部(図示せず)によって受け止められる。なお、操作レバー2が操作基準位置にあるとき、操作レバー2は第1可動部材4と永久磁石6との間の吸引力によっても支持される。
第2可動部材8は樹脂によって板状に成形されている。第2可動部材8の両側部の基端側には、図6に示すように、一対の取り付け片部8Aが対向するように形成されている。取り付け片部8Aには軸受け部8aが対向して形成されている。軸受け部8aには第1可動部材4と同じように第1傾倒軸16の両端が嵌合され、第2可動部材8は枠体15内で第1傾倒軸16を中心に回転可能に支持されている。
このように、第1可動部材4及び第2可動部材8が第1傾倒軸16を中心として傾倒操作されるので、操作レバー2のスムーズな傾倒操作が可能となる。また、第1傾倒軸16が第1可動部材4及び第2可動部材8の兼用の傾倒軸となるので、部品点数の削減が図られるとともに、ケース本体110内の収納スペースの使用効率が高くなり、小型化が図られる。
第2可動部材8の先端側には、図6に示すように、鉄等の磁性材料により板状に形成された一対の第2磁性体9が隙間をおいて並列に配置されている。第2磁性体9は、例えば第2可動部材8にインサート成形されてよい。
第2磁性体9の先端にはストッパー片部9Aが形成されている。ストッパー片部9Aが第3枠部15Cの上面に当接されるときが、操作レバー2が操作基準位置にあるときに対応する。なお、操作レバー2が操作基準位置にあるとき、操作レバー2は第1板バネ7および第1可動部材4を介して第2磁性体9と永久磁石6との間の吸引力によっても保持される。
第2磁性体9の先端側には脚片部9Bが対向するように立ち上がり形成されている。脚片部9Bの先端は前方に突出する横長なリング状の取付け枠部9Cによって連結されている。
第2可動部材8は、脚片部9Bが第1可動部材4の先端側に形成された切り欠き部4C(図5参照)のX軸正側に位置した状態で第1可動部材4の表面より上方に突出するように配置されている。
枠体15の第3枠部15Cとケース本体110との間には操作レバー2を第3傾倒方向(D3方向)に間欠的に傾倒操作するための間欠駆動機構20が設けられている。
間欠駆動機構20は、ケース本体110に一体的に取付けられた軸受け板21と、第2可動部材8に一体形成された第1カム部8Dとを有している。第4可動部材13にも第2カム部13Dが形成されている。
軸受け板21の上端部には第1カム部8Dと嵌合する第1カム案内部22が形成されている。軸受け板21の下端部にも第2カム部13Dと嵌合する第2カム案内部(図3Aでは可視でない)が形成されている。
第1カム部8Dは第2磁性体9と永久磁石6との間の吸引力によって第1カム案内部22に押し付けられている。また、第2カム部13Dも第4磁性体14と永久磁石6との間の吸引力によって第2カム案内部に押し付けられている。
軸受け板21の中央部分には第3枠部15Cに突出形成された第2傾倒軸を構成する軸部17Aが嵌合される軸受け部21Aが形成されている。
永久磁石6は、図7に示すように、ネオジウムやサマリウムコバルト磁石等により平板状に成形された第1永久磁石6Aと、ネオジウムやサマリウムコバルト磁石等により平板状に成形された第2永久磁石6Bからなる。第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bは支持体3の第1枠部15Aと第2枠部15Bの間の位置に設けられた磁石保持部30に保持されている。磁石保持部30は仕切り用壁部31によって第1永久磁石6Aを保持する第1磁石保持部30Aと第2永久磁石6Bを保持する第2磁石保持部30Bに分離されている。第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bは第1磁石保持部30Aと第2磁石保持部30Bにそれぞれ保持されることによって、幅方向に並列となるように配置されている。第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bは第2磁性体9と第4磁性体14との間に配置された状態になっている。
第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bはそれぞれ第1可動部材4(第1磁性体)と対向する厚さ方向にN極とS極が直列に着磁された、一つの面に一つの極がある同一の永久磁石である。第2永久磁石6BはN極とS極の位置が第1永久磁石6AのN極とS極と逆になるように第2磁石保持部30Bに保持されている。
したがって、永久磁石6は、第1可動部材4(第1磁性体)と対向する厚さ方向にN極とS極が直列に着磁され、かつ当該厚さ方向に対して交差する幅方向に上記N極と並列してS極が着磁されるとともに上記厚さ方向に着磁されたS極と並列してN極が着磁された状態になる。
第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bが一つの面に一つの極がある永久磁石であることによって、永久磁石をコイル着磁で着磁形成することができ、着磁工程が容易となる。
また、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bとして一つの面に一つの極がある同一の永久磁石を使用するので部品コストの削減が図られる。
枠体15の第1枠部15Aには第1永久磁石6Aを第1磁石保持部30Aに挿入するための第1磁石挿入口30aが形成されている。枠体15の第2枠部15Bには第2永久磁石6Bを第2磁石保持部30Bに挿入するための第2磁石挿入口30bが形成されている。
第1磁石保持部30Aに保持された第1永久磁石6Aと第2磁石保持部30Bに保持された第2永久磁石6Bは仕切り用壁部31を介して前記厚さ方向に対して交差する幅方向に吸引し合い、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bは仕切り用壁部31に押し付けられ、第1磁石保持部30Aと第2磁石保持部30Bにそれぞれ保持される。
磁性材料により形成された第1可動部材4と、第2磁性体9と、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bと、磁性材料により形成された第3可動部材10と、第4磁性体14が配置されるとともに、第1可動部材4及び第3可動部材10の一端側が磁性材料により形成された第1傾倒軸16に係合されることによって、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bから発生した磁束が、第1可動部材4と、第1傾倒軸16と、第3可動部材10とを経て第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bへと戻る磁束の流路と、第1永久磁石6Aから発生した磁束が、第4磁性体14を通り第2永久磁石6Bへ入り、さらに第2磁性体9を通って第1永久磁石6Aへと戻る流路が形成される。
第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bが第1磁石保持部30Aと第2磁石保持部30Bにそれぞれ近づいて保持されることによって、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bとの間には、図8中破線で示すような磁束が発生する。第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bとが近づいた中央部分の磁束密度が高くなる。
したがって、第1可動部材4が第2可動部材8における第2磁性体9間(Y方向)の開口を介して第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bと対向し、第1可動部材4に対して磁束が効率よく作用し、第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bと、第1可動部材4または第2磁性体9との間の吸引力が強くなる。また、第2磁性体9は第1磁石挿入口30aおよび第2磁石挿入口30bを覆う形態であるので、Y方向で第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bと対向でき、漏れ磁束を低減できる。
また、第3可動部材10が第4可動部材13における第4磁性体14間(Y方向)の開口を介して第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bと対向し、第3可動部材10に対して磁束が効率よく作用し、第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bと、第3可動部材10または第4磁性体14との間の吸引力が強くなる。また、第4磁性体14は第1磁石挿入口30aおよび第2磁石挿入口30bを覆う形態であるので、Y方向で第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bと対向でき、漏れ磁束を低減できる。
また、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bは吸引し合い、仕切り用壁部31に押し付けられ、第1磁石保持部30Aと第2磁石保持部30Bにそれぞれ保持されるので、特別な抜け止め手段を用いなくても第1永久磁石6Aの第1磁石挿入口30aからの抜け落ちを防ぐことができる。また、第2永久磁石6Bの第2磁石挿入口30bからの抜け落ちも防ぐことができる。また、第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bの組立も簡単となる。
次に、操作レバー2の第1傾倒方向(D1方向)の傾倒操作時の吸引力発生機構1の機能について説明する。第2傾倒方向(D2方向)の傾倒操作については省略するが、第1傾倒方向(D1方向)の傾倒操作と実質的に同一である。
先ず、操作レバー2の第1傾倒方向(D1方向)への傾倒操作について説明する。
前出の図4は、操作レバー2が操作基準位置(図4ではホームポジションH)に保持されている状態を示す。操作レバー2を図4に示す状態から第1傾倒方向(D1方向)へ傾倒操作する。そうすると、操作レバー2は第1傾倒軸16を中心に回転させられる。操作レバー2の回転によって、操作レバー2の支持ブロック部は第1可動部材4と永久磁石6との間の吸引力及び第1板バネ7の付勢力に抗して第1可動部材4を押上げる。第1可動部材4が押上げられ、第1可動部材4が永久磁石6から引き剥がされる力でクリック感が発生する。そうすると、操作レバー2はクリック感を伴って第1段ポジションF1へ傾倒操作される。
なお、操作レバー2が第1段ポジションF1へ傾倒操作されるとき、第1可動部材4と永久磁石6との間の吸引力は弱くなり、強い吸引状態から弱い吸引状態へ変化して、操作レバー2の操作荷重が急激に軽くなるが、その軽くなった荷重を第1板バネ7の付勢力によって補うことができる。したがって、操作レバー2は操作感触の良い荷重によって傾倒操作される。また、操作レバー2が第1段ポジションF1へ傾倒操作されるとき、操作レバー2の操作荷重が急激に変化することがないので、操作レバー2の傾倒操作時の衝撃音の発生も防げる。
操作レバー2の傾倒操作を解除すると、操作レバー2は自動的に第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒操作され、第1段ポジションF1からホームポジションHへ戻る。つまり、第1可動部材4は第1可動部材4に対する永久磁石6の吸引力及び第1板バネ7の付勢力によって第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒されるので、操作レバー2の支持ブロック部が第1可動部材4により押下げられ、操作レバー2は第1傾倒軸16を中心に回転させられてホームポジションHへ傾倒操作される。
次に、操作レバー2を第1段ポジションF1から第1傾倒方向(D1方向)側の第2段ポジションF2へ傾倒操作するためには、操作レバー2を第1傾倒方向(D1方向)にさらに傾倒操作する。操作レバー2の第1傾倒方向(D1方向)への傾倒操作によって、操作レバー2は第1傾倒軸16を中心に回転させられる。操作レバー2の回転により、第1可動部材4が第1傾倒軸16を中心に回転させられると、第1可動部材4の板バネ受け部4Bは第1板バネ7を介して第2可動部材8を第2磁性体9と永久磁石6との間の吸引力に抗して押上げる。第2可動部材8が押上げられ、第2可動部材が永久磁石6から引き剥がされる力でクリック感が発生する。そうすると、操作レバー2はクリック感を伴って第2段ポジションF2へ傾倒操作される。
なお、操作レバー2の第2段ポジションF2への傾倒操作を解除すると、操作レバー2は第1段ポジションF1の状態を経てホームポジションHに戻る。このときは、操作レバー2は第2傾倒方向(D2方向)へ自動的に傾倒操作される。つまり、第2磁性体9が永久磁石6に吸引され第2可動部材8が第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒し、第1可動部材4が永久磁石6の吸引力及び第1板バネ7の付勢力によって傾倒することで、操作レバー2はホームポジションHへ戻される。
このようにして実施例1によれば、カム面に圧接して操作レバーの保持力を発生するアクチュエータに代えて、磁石の吸引力でのみで操作レバーの保持力を発生させる吸引力発生機構1を設けることで、シフト装置100の薄型化を図ることができる。
次に、図9以降を参照して、摺動抵抗発生機構300について説明する。
図9は、摺動抵抗発生機構300の第2摺動面320の説明図であり、支持体3の斜視図である。図10は、摺動抵抗発生機構300の第1摺動面310の説明図であり、第2可動部材8の斜視図である。図11は、第1傾倒方向(D1方向)へ傾倒した状態の第2可動部材8および第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒した状態の第4可動部材13を示す、シフト装置100の一部の側面図である。
摺動抵抗発生機構300は、操作レバー2の操作基準位置を中心とした所定の傾倒に連動した第2可動部材8及び第4可動部材13(共に可動部材の一例)の回転に対して摺動抵抗を発生することで、操作レバー2の操作基準位置への復帰の際の振動を低減する。以下、このような摺動抵抗発生機構300の機能を、「振動低減機能」と称する。実施例1では、一例として、所定の傾倒は、第1傾倒方向(D1方向)及び第2傾倒方向(D2方向)の傾倒を含み、第3傾倒方向(D3方向)の傾倒は含まない。
摺動抵抗発生機構300は、第1傾倒軸16(回転軸の一例)まわりに設けられる。摺動抵抗発生機構300は、第1傾倒軸16のY方向の両側にそれぞれ設けられる。
具体的には、摺動抵抗発生機構300は、所定の傾倒に連動した第2可動部材8及び第4可動部材13の回転に際して摺動し合う第1摺動面310及び第2摺動面320を含む。
第1摺動面310は、第2可動部材8及び第4可動部材13のそれぞれに形成される。図3Bに示すように、第1摺動面310は、第2可動部材8の一対の取り付け片部8Aのうち、支持体3に隣接する方(Y軸負側)の取り付け片部8Aの外側に形成される。即ち、第1摺動面310は、支持体3との間の摺動面である。同様に、図3Bに示すように、第1摺動面310は、第4可動部材13の一対の取り付け片部13Aのうち、支持体3に隣接する方(Y軸正側)の取り付け片部13Aの外側に形成される。なお、図3Bには、第3可動部材10の一対の取り付け片部10Aも示されている。
第1摺動面310は、第1傾倒軸16の方向で高低差を有する。実施例1では、一例として、第1摺動面310はそれぞれ、図10に示すように、凸部312を有する。従って、第1摺動面310はそれぞれ、第1傾倒軸16の方向で、凸部312の範囲と他の範囲との間で高低差を有する。凸部312の配置に応じて決まる第1摺動面310の高低差プロフィール(第1傾倒軸16の方向の高さに関する第1傾倒軸16まわりの高低差プロフィール)は、第2可動部材8及び第4可動部材13のそれぞれで異なる。具体的には、第2可動部材8及び第4可動部材13のそれぞれの第1摺動面310は、互いに対して上下反転した関係の高低差プロフィールを有する。即ち、操作レバー2が操作基準位置にあるとき、第2可動部材8の第1摺動面310は、第1傾倒軸16を中心として、Z軸正側とX軸正側の位置に凸部312を有するのに対して、第4可動部材13の第1摺動面310は、第1傾倒軸16を中心として、Z軸負側とX軸正側の位置に凸部312を有する。以下では、区別するときは、第2可動部材8の第1摺動面310を、「第1摺動面310A」と表記し、第4可動部材13の第1摺動面310を、「第1摺動面310B」と表記する。
第2摺動面320は、支持体3に形成される。支持体3は、上述のように第1傾倒軸16を回転可能に支持する部材(回転軸を支持する部材の一例)である。第2摺動面320は、第2可動部材8及び第4可動部材13のそれぞれの第1摺動面310に対応して、支持体3のY方向の両側にそれぞれ設けられる。
第2摺動面320は、第1傾倒軸16の方向で高低差を有する。実施例1では、一例として、第2摺動面320はそれぞれ、図9に示すように、第1凸部321と、第2凸部322とを有する。従って、第2摺動面320はそれぞれ、第1傾倒軸16の方向で、第1凸部321及び第2凸部322の範囲と他の範囲との間で高低差を有する。尚、第1凸部321及び第2凸部322は、図9に示すように、直角に立ち上がる必要はなく、傾斜面を介して立ち上がる態様であってよい。第1凸部321及び第2凸部322の配置に応じて決まる第2摺動面320それぞれの高低差プロフィール(第1傾倒軸16まわりの高低差プロフィール)は、第2可動部材8及び第4可動部材13のそれぞれで異なる第1摺動面310の高低差プロフィールに対応して、支持体3のY方向の両側でそれぞれ異なる。以下では、区別するときは、第2可動部材8の第1摺動面310Aと摺動関係となる第2摺動面320を、「第2摺動面320A」と表記し、第4可動部材13の第1摺動面310Bと摺動関係となる第2摺動面320を、「第2摺動面320B」と表記する。具体的には第2摺動面320Aと第2摺動面320Bは互いに対して上下反転した関係の高低差プロフィールを有する。すなわち第2摺動面320A(Y方向負側)では第1凸部321が第1傾倒軸16を中心として上側(Z方向正側)に位置にあるのに対して、第2摺動面320B(Y方向正側)では第1凸部321が第1傾倒軸16を中心として下側(Z方向負側)の位置にある。
図12A及び図12Bは、第1摺動面310Bの高低差プロフィールと第2摺動面320Bの高低差プロフィールとの関係の説明図である。尚、第1摺動面310Aの高低差プロフィールと第2摺動面320Aの高低差プロフィールとの関係についても、上下方向が反転するだけで実質的に同一である。図12Aは、操作レバー2が操作基準位置にあるときの状態を示し、図12Bは、操作レバー2が操作基準位置から第2傾倒方向(D2方向)に傾倒したときの状態を示す。図12A及び図12Bでは、第2傾倒方向に対応する回転方向が矢印S1で示される。
図12A及び図12Bに示すように、操作レバー2が操作基準位置から第2傾倒方向(D2方向)に傾倒する際は、第1摺動面310Bの凸部312は、第2摺動面320Bの第1凸部321及び第2凸部322が存在しない範囲を摺動し第1摺動面310B及び第2摺動面320B同士の接触圧が弱いので摩擦力が弱く、発生する摺動抵抗が比較的低い。他方、第2傾倒方向に傾倒した操作レバー2が操作基準位置に復帰する際は、第1摺動面310Bの凸部312は、第2摺動面320Bの第1凸部321及び第2凸部322に乗り上げ第1摺動面310B及び第2摺動面320B同士の接触圧が強くなり摩擦力も強くなるので、発生する摺動抵抗が比較的高くなる。即ち、第1摺動面310B及び第2摺動面320B同士の接触圧は操作レバー2の移動に伴い変化(強弱)する。このようにして、第1摺動面310Bと第2摺動面320Bとの間に発生する摺動抵抗は、操作レバー2が操作基準位置に近づくほど大きくなる特性を有する。尚、操作レバー2が操作基準位置に近づくほど大きくなる特性とは、徐々に大きくなる特性である必要はなく、ステップ状に大きくなる特性であってもよい。以下、このような摺動抵抗の特性を、「操作基準位置に近づくほど大きくなる摺動抵抗特性」と称する。
ところで、ユーザが操作レバー2を第1傾倒方向又は第2傾倒方向に傾倒させた後に操作を解除すると、上述の吸引力発生機構1の機能に起因して、操作レバー2が操作基準位置へ戻る。この際、操作レバー2の慣性に起因して、操作レバー2が操作基準位置を超えて反対側へ(第1傾倒方向からの復帰時には第2傾倒方向へ、第2傾倒方向からの復帰時には第1傾倒方向へ)と僅かに傾倒しうる。特に上述の吸引力発生機構1の機能によれば、操作基準位置に向かうにつれて強い吸引力が作用するので、操作レバー2の加速度が増加し易い(それに伴い慣性力が増加し易い)。このため、吸引力発生機構1を備える構成では、カム面に圧接して操作レバーの保持力を発生するアクチュエータを備える構成に比べて、操作基準位置を中心とした操作レバーの振動が発生し易く、また、かかる振動の持続時間が長くなり易い。
この点、実施例1によれば、上述のように、摺動抵抗発生機構300が設けられるので、操作基準位置へ戻る際の操作レバー2の慣性を低減できる。また、操作レバー2の慣性に起因して、操作レバー2が操作基準位置を超えて反対側へと僅かに傾倒した場合でも、更なる操作基準位置への復帰に際して減衰力を作用させることができる。この結果、実施例1によれば、操作基準位置を中心とした操作レバーの振動の発生を抑制でき、また、かかる振動が発生した場合でも持続時間を低減できる。
実施例1によれば、摺動抵抗発生機構300の第1摺動面310及び第2摺動面320は、操作基準位置に近づくほど大きくなる摺動抵抗特性を有するので、操作レバー2が操作基準位置へ戻る際、振動低減機能を比較的強く働かせることができ、操作レバー2の操作基準位置への復帰の際の振動を効果的に低減できる。他方、操作レバー2が操作基準位置から第1傾倒方向又は第2傾倒方向に傾倒する際は、振動低減機能を実質的に働かせないようにでき、第1傾倒方向又は第2傾倒方向の傾倒操作の操作性を良好に維持できる。
また、実施例1によれば、上述のように、摺動抵抗発生機構300は、第1傾倒軸16まわりの摺動部を利用するので、エアや磁気を利用したダンパ機構に比べて簡易な構成で実現でき、シフト装置100を薄型化(Z方向の寸法の低減)を図ることができる。
また、実施例1によれば、上述のように、摺動抵抗発生機構300は、第1傾倒軸16まわりに設けられるので、スペース効率良く筐体内に配置でき、シフト装置100全体を薄型化できる。
また、実施例1によれば、上述のように、摺動抵抗発生機構300は、既存の部品を利用して形成できるので、部品点数の増加を伴うことなく実現できる。
また、実施例1によれば、上述のように、摺動抵抗発生機構300は、第1摺動面310及び第2摺動面320の高低差(凸部312等)により形成されるので、例えば樹脂成型時に形成でき、製造性が良好である。
尚、実施例1では、組み付け性に関して、第2可動部材8及び第4可動部材13は、図11に示すような姿勢で組み付けられることで、摺動抵抗発生機構300の影響を実質的に受けずに、良好な組み付け性を実現できる。また、図11に示すような姿勢では、第2可動部材8の第2磁性体9及び第4可動部材13の第4磁性体14によって第1磁石挿入口30a及び第2磁石挿入口30bが塞がれることがない。従って、第1磁石挿入口30a及び第2磁石挿入口30bへの第1永久磁石6A及び第2永久磁石6Bの組み付け(挿入)が併せて可能である。
尚、実施例1では、摺動抵抗発生機構300は、第2可動部材8及び第4可動部材13と支持体3との間に設けられるが、これに限られない。摺動抵抗発生機構300は、第1傾倒軸16の軸方向で隣接する任意の2つの部材間に設けられてもよい。例えば、摺動抵抗発生機構300は、第1可動部材4の取り付け片部4Aと第2可動部材8の取り付け片部8Aとの間に設けられてもよい。この場合、第1可動部材4の取り付け片部4A及び第2可動部材8の取り付け片部8Aの間の摺動面が、上述した第1摺動面310及び第2摺動面320と同様の態様で形成されればよい。また、第1傾倒軸16の軸方向で隣接する任意の2つの部材間として、操作レバー2の基部と、該基部に隣接する部材(例えば第1可動部材4におけるY軸方向正側の取り付け片部4A)との間が利用されてもよい。
[実施例2]
実施例2によるシフト装置は、上述した実施例1によるシフト装置100に対して、摺動抵抗発生機構300が摺動抵抗発生機構400で置換された点が異なる。以下では、実施例2において上述した実施例1と実質的に同一であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
摺動抵抗発生機構400は、上述した摺動抵抗発生機構300と同様、操作レバー2の操作基準位置を中心とした所定の傾倒に連動した第2可動部材8及び第4可動部材13(共に可動部材の一例)の回転に対して摺動抵抗を発生することで、操作レバー2の操作基準位置への復帰の際の振動を低減する。即ち、摺動抵抗発生機構400は、振動低減機能を有する。実施例2においても、一例として、所定の傾倒は、第1傾倒方向(D1方向)及び第2傾倒方向(D2方向)の傾倒を含み、第3傾倒方向(D3方向)の傾倒は含まない。
摺動抵抗発生機構400は、第1傾倒軸16(回転軸の一例)まわりに設けられる。摺動抵抗発生機構400は、第1傾倒軸16のY方向の両側にそれぞれ設けられる。
具体的には、摺動抵抗発生機構400は、所定の傾倒に連動した第2可動部材8及び第4可動部材13の回転に際して摺動し合う第1摺動面410及び第2摺動面420を含む。
第1摺動面410は、第2可動部材8及び第4可動部材13のそれぞれに形成される。図13に示すように、第1摺動面410は、第2可動部材8の一対の取り付け片部8Aのうち、支持体3に隣接する方の取り付け片部8Aに形成される。即ち、第1摺動面410は、支持体3との間の摺動面である。同様に、図13に示すように、第1摺動面410は、第4可動部材13の一対の取り付け片部13Aのうち、支持体3に隣接する方の取り付け片部13Aに形成される。
第1摺動面410は、第1傾倒軸16の方向で高低差を有する。実施例2では、一例として、第1摺動面410はそれぞれ、図14Bに示すように、テーパ面412を有する。テーパ面412は、第1傾倒軸16の方向の高さH1が第1傾倒軸16まわりの周方向で連続的に変化する。以下では、区別するときは、第2可動部材8の第1摺動面410を、「第1摺動面410A」と表記し、第4可動部材13の第1摺動面410を、「第1摺動面410B」と表記する。
第2摺動面420は、支持体3に形成される。第2摺動面420は、第2可動部材8及び第4可動部材13のそれぞれの第1摺動面410に対応して、支持体3の両側(Y方向の両側)にそれぞれ設けられる。
第2摺動面420は、第1傾倒軸16の方向で高低差を有する。実施例2では、一例として、第2摺動面420はそれぞれ、図14Aに示すように、テーパ面422を有する。テーパ面422は、第1傾倒軸16の方向の高さH2が第1傾倒軸16まわりの周方向で変化する。以下では、区別するときは、第2可動部材8の第1摺動面410Aと摺動関係となる第2摺動面420を、「第2摺動面420A」と表記し、第4可動部材13の第1摺動面410Bと摺動関係となる第2摺動面420を、「第2摺動面420B」と表記する。
図15A及び図15Bは、第1摺動面410Bの高低差プロフィールと第2摺動面420Bの高低差プロフィールとの関係の説明図である。尚、第1摺動面410Aの高低差プロフィールと第2摺動面420Aの高低差プロフィールとの関係についても、実質的に同一である。図15Aは、操作レバー2が操作基準位置から第2傾倒方向(D2方向)に傾倒したときの状態を示し、図15Bは、操作レバー2が操作基準位置にあるときの状態を示す。
図15A及び図15Bは、模式図であり、Iは、第1傾倒軸16の方向を表す。40は、Iを中心軸とする円柱を示し、Cは、中心軸Iに対して傾斜した平面を示す。41は、円柱40を平面Cでカットしたときの一方側の円柱体を示し、42は、円柱40を平面Cでカットしたときの他方側の円柱体を示す。
このとき、第1摺動面410Bの高低差プロフィールは、円柱体41のカット面(平面Cでカットされた面)の高低差プロフィールに対応し、第2摺動面420Bの高低差プロフィールは、円柱体42のカット面の高低差プロフィールに対応する。即ち、中心軸Iに対して傾斜した平面Cでカットすることで、テーパ面412,422が形成されている。
ここで、平面Cでカットしたときの状態(図15A)では、第1摺動面410Bと第2摺動面420Bとは完全な相補関係であり、互いに平行な状態で面接触する。以下、この状態を、「平行な面接触状態」と称する。他方、平行な面接触状態から、円柱体42を中心軸Iまわりに回転させると、図15BにてQ部で模式的に示すように、第1摺動面410Bと第2摺動面420Bは、平行な面接触状態でなくなり軸方向に干渉するので、第1摺動面410B及び第2摺動面420B同士の接触圧が強くなり摩擦力が強くなって、発生する摺動抵抗が増大する。従って、第1摺動面410Bの高低差プロフィールと第2摺動面420Bの高低差プロフィールとの関係によって、第1摺動面410Bと第2摺動面420Bとの間の摺動抵抗の特性を調整できることが分かる。
実施例2でも、上述した実施例1と同様、第1摺動面410Bと第2摺動面420Bとの間に発生する摺動抵抗は、操作レバー2が操作基準位置に近づくほど大きくなる特性を有する。即ち、第1摺動面410Bと第2摺動面420Bとの間の摺動抵抗は、操作基準位置に近づくほど大きくなる摺動抵抗特性を有する。
具体的には、第1摺動面410Bと第2摺動面420Bとは、操作レバー2が操作基準位置に近づくほど平行な面接触状態から遠ざかる角度関係で、形成される。例えば、第1摺動面410Bと第2摺動面420Bとは、操作レバー2が第2傾倒方向(D2方向)に傾倒した状態で平行な面接触状態が実現されるように形成される。これにより、第2傾倒方向に傾倒した操作レバー2が操作基準位置に復帰する方向は、第1摺動面410Bのテーパ面412と第2摺動面420Bのテーパ面422との干渉(第1傾倒軸16の方向での干渉)が強まる方向となる。干渉が強くなるほど面同士の接触圧が強くなり摩擦力が強くなって、発生する摺動抵抗が大きくなるので、操作基準位置に近づくほど大きくなる摺動抵抗特性が実現される。
従って、実施例2によっても、上述した実施例1と同様の効果が得られる。即ち、実施例2によれば、上述のように、摺動抵抗発生機構400が設けられるので、操作基準位置へ戻る際の操作レバー2の慣性を低減できる。また、操作レバー2の慣性に起因して、操作レバー2が操作基準位置を超えて反対側と僅かに傾倒した場合でも、更なる操作基準位置への復帰に際して減衰力を作用させることができる。この結果、実施例2によれば、操作基準位置を中心とした操作レバーの振動の発生を抑制でき、また、かかる振動が発生した場合でも持続時間を低減できる。
実施例2によれば、摺動抵抗発生機構400の第1摺動面410及び第2摺動面420は、操作基準位置に近づくほど大きくなる摺動抵抗特性を有するので、操作レバー2が操作基準位置へ戻る際、振動低減機能を比較的強く働かせることができ、操作レバー2の操作基準位置への復帰の際の振動を効果的に低減できる。他方、操作レバー2が操作基準位置から第1傾倒方向又は第2傾倒方向に傾倒する際は、振動低減機能が弱まる方向となり、第1傾倒方向又は第2傾倒方向の傾倒操作の操作性を良好に維持できる。
また、実施例2によれば、上述のように、摺動抵抗発生機構400は、第1傾倒軸16まわりの摺動部を利用するので、エアや磁気を利用したダンパ機構に比べて簡易な構成で実現でき、シフト装置100を薄型化(Z方向の寸法の低減)を図ることができる。
また、実施例2によれば、上述のように、摺動抵抗発生機構400は、第1傾倒軸16まわりに設けられるので、スペース効率良く筐体内に配置でき、シフト装置100全体を薄型化できる。
また、実施例2によれば、上述のように、摺動抵抗発生機構400は、既存の部品を利用して形成できるので、部品点数の増加を伴うことなく実現できる。
また、実施例2によれば、上述のように、摺動抵抗発生機構400は、第1摺動面410及び第2摺動面420の高低差(テーパ面412等)により形成されるので、例えば樹脂成型時に形成でき、製造性が良好である。
尚、実施例2では、組み付け性に関して、第2可動部材8及び第4可動部材13は、それぞれ第1傾倒方向及び第2傾倒方向に傾倒した姿勢(前出の図11参照)で組み付けられることで、摺動抵抗発生機構400の影響を実質的に受けずに、良好な組み付け性を実現できる。また、図11に示したような姿勢では、第2可動部材8の第2磁性体9及び第4可動部材13の第4磁性体14によって第1磁石挿入口30a及び第2磁石挿入口30bが塞がれることがない。従って、第1磁石挿入口30a及び第2磁石挿入口30bへの第1永久磁石6A及び第2永久磁石6Bの組み付け(挿入)が併せて可能である。
尚、実施例2では、摺動抵抗発生機構400は、第2可動部材8及び第4可動部材13と支持体3との間に設けられるが、これに限られない。摺動抵抗発生機構400は、第1傾倒軸16の軸方向で隣接する任意の2つの部材間に設けられてもよい。例えば、摺動抵抗発生機構400は、第1可動部材4の取り付け片部4Aと第2可動部材8の取り付け片部8Aとの間に設けられてもよい。この場合、第1可動部材4の取り付け片部4A及び第2可動部材8の取り付け片部8Aの間の摺動面が、上述した第1摺動面410及び第2摺動面420と同様の態様で形成されればよい。また、第1傾倒軸16の軸方向で隣接する任意の2つの部材間として、操作レバー2の基部と、該基部に隣接する部材(例えば第1可動部材4におけるY軸方向正側の取り付け片部4A)との間が利用されてもよい。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
本国際出願は、2017年7月11日に出願した日本国特許出願2017−135783号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。