フィラグリンは、皮膚の構成成分であり、皮膚におけるバリア機能に関与し、アレルゲン、毒素、感染性生物の侵入を防ぐ機能を有していると考えられている。フィラグリンの遺伝子の変異等による機能の低下は、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患の発症リスクと関連し、さらに重篤な場合は尋常性魚鱗癬等の皮膚疾患につながることが知られている(非特許文献1参照)。
一方、天然保湿因子(Natural Moisturizing Factors;NMF)の主成分であるアミノ酸は、ケラトヒアリン顆粒に由来するフィラグリンが角質層内で分解されて産生される。このフィラグリンは、角質層直下の顆粒層に存在する表皮ケラチノサイトでプロフィラグリンとして発現する。その後、直ちにリン酸化し、ケラトヒアリン顆粒に蓄積され、脱リン酸、加水分解を経てフィラグリンへと分解され、角質層に移行して、ケラチンフィラメントの凝集効率を高め、角質細胞の内部構築に関与することが知られている(非特許文献2参照)。近年、このフィラグリンが、皮膚の水分保持に非常に重要かつ必要不可欠であること、および乾燥等の条件によってフィラグリンの合成力が低下し、角質層におけるアミノ酸量が低下することが知られている(非特許文献3参照)。
したがって、表皮ケラチノサイトにおいて、プロフィラグリンの発現を促進することにより、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患を予防・治療または改善できると考えられる。また、プロフィラグリンの発現を促進し、それにより角質層内のアミノ酸量を増大させることで、角質層の水分環境を本質的に改善できることが期待される。
従来、プロフィラグリンmRNA発現促進作用を有するものとして、ガイヨウ抽出物(特許文献1参照)等が知られている。
皮膚細胞では、水チャンネルとして知られるアクアポリンが、細胞膜上に発現して、細胞間隙の水をはじめとする低分子物質を細胞内へ取り込む役割を担っていることが知られている。ヒトでは、13種類のアクアポリン(AQP0〜AQP12)の存在が知られている。表皮細胞においては、主としてAQP3が存在しており、水に加えて、水分保持作用に関与するグリセロールや尿素等の低分子化合物をも取り込む役割を担っていると考えられている。
しかしながら、AQP3は加齢とともに減少し、このことが水分保持機能の低下の一因であることが示唆されているため、AQP3の発現を促進することにより、水分保持機能やバリア機能等を制御することが可能であると考えられる(非特許文献4参照)。AQP3発現促進作用を有するものとして、例えば、スターフルーツの葉部からの抽出物(特許文献2参照)等が知られている。
糖質は、ヒトを初めとする生物においてエネルギー源として非常に重要である。しかし一方で、糖質はタンパク質と糖化反応(グリケーション)を起こすことが知られている。糖化反応は、糖質のカルボニル基とタンパク質等のアミノ基との非酵素的な反応を第一段階とし、シッフ塩基からアマドリ化合物を経て最終的に最終糖化産物(以下、「AGEs」ということがある。)を形成する一連の反応である。糖化反応により、タンパク質が非酵素的に糖により修飾されるため、これにより当該タンパク質の変性やタンパク質間の架橋等が起こり、その結果タンパク質の機能を低下させる。
糖化反応は、コラーゲン等の細胞外マトリックス構成タンパク質を修飾・構造変化させることにより直接的な障害を引き起こすほか、糖化タンパク質をリガンドとする受容体により認識されることで細胞応答を引き起こす等の影響をもたらす。特に、血液中のグルコース濃度が高い糖尿病の患者にとって、糖化反応の影響は深刻である。糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症等の糖尿病合併症は、タンパク質の糖化がその一因であることが知られている。また、血管壁における糖化反応は、内皮細胞の障害や変性タンパク質の蓄積などにより、動脈硬化の進展をもたらすことが知られている。さらに、コラーゲンを初めとする細胞外マトリックス成分は、骨や皮膚などの組織における乾燥重量の過半を占めている。そのため、例えば、コラーゲンが糖化され異常に架橋された状態となると、骨や軟骨組織においては骨粗鬆症や変形性関節症等を発症し、皮膚においては弾力性の低下、黄色化等によるくすみ等を生じる。さらに、異常に架橋したコラーゲン等はコラゲナーゼ等による分解を受けにくくなるため、コラゲナーゼ等の発現が誘導され、正常なコラーゲンまで分解されてしまうなどの問題が生じてしまう。
このため、糖化反応を何らかの形で抑制する、例えば、AGEsの形成を抑制したり、またAGEsの分解を促進したりすることができれば、前述した疾患、すなわち糖尿病合併症、動脈硬化、骨粗鬆症、変形性関節症などの予防又は治療に有用であると期待される。さらには、皮膚の弾力性低下やくすみ等の予防又は改善にも効果があるものと期待される。
地表に届く紫外線(UV)にはUVB(290−320nm)とUVA(320−400nm)があり、UVBは皮膚の表皮から真皮上層まで、UVAは真皮深くまで到達するとされる。太陽光に含まれるUVBの線量はわずかであるが、皮膚に対する影響は大きい。すなわち、UVBの刺激により皮膚の細胞が活性酸素やサイトカイン等を産生し、細胞自身や周りの細胞に働きかけ、日焼け等の急性炎症反応、すなわち、皮膚に水疱等の炎症が形成され、ひいては色素沈着を生じる等の悪影響をもたらす。
このような現象が起こる原因として、UVBが直接DNAに吸収され、DNAの損傷を引き起こすことが知られている。DNAに損傷が生じた細胞では、細胞内にp53と呼ばれる癌抑制遺伝子タンパク質が発現し、このタンパク質がDNA損傷の度合いにより、DNAの修復、細胞周期の停止、アポトーシスを誘導することが知られている。皮膚中におけるアポトーシスの増加は、組織再生能の低下につながり、皮膚の老化を促進する原因となり得る(非特許文献5参照)。したがって、紫外線照射によって生じる障害を予防・改善することができれば、皮膚の保湿能力、弾力性、バリア機能等の皮膚機能を維持することにもつながると考えられる。
また、紫外線の慢性的な暴露は、皮膚の老化(光老化)を促進し、シミ、しわのみならず、皮膚癌の一因であることが知られている。その結果として、皮膚の老化やしわの形成等が生じ、皮膚機能が低下すると考えられている。したがって、紫外線によって誘発される皮膚の炎症反応や、その後に生じる皮膚機能の障害を予防・改善することは、皮膚の老化や癌を予防・改善することにもつながると考えられる。
さらには、色素性乾皮症、コケイン症候群、及びブルーム症候群等、DNA損傷の修復機構の機能不全に起因する遺伝病の患者は、紫外線に対する感受性が高いため、皮膚癌の発生率が健常者よりも高いことが知られている。したがって、紫外線照射によって生じる障害を予防・改善することは、これらの紫外線感受性が高い遺伝病の治療にも貢献すると考えられる。
従来、紫外線照射による障害を予防する方法として、ベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機紫外線散乱剤を配合したサンスクリーン製品が用いられている(特許文献3〜5参照)。しかしながら、これらのサンスクリーン製品は、高い紫外線防御効果が得られるものの、使用感の問題や、耐摩擦性、耐汗性等の物理的耐久性の限界から、継続的な予防効果として満足することができるものではなく、紫外線吸収剤で炎症を起こしてしまう等、安全性の点でも問題となっている。また、紫外線に暴露された後に生じる炎症やその後に引き起こされる障害等を予防・改善することのできる製剤の開発が望まれている。このような紫外線(UVB)照射によるダメージ回復作用を有するものとして、例えば、カンゾウの根からの抽出物(特許文献6参照)等が知られている。
表皮は、外部刺激を緩和し、水分等の体内成分の逸失を制御する働きをしており、最下層である基底層から始まって、有棘層、顆粒層、角質層へと連なる4層構造から構成されている。各層に存在する大部分の細胞は、基底層から分化した角化細胞である。基底層で分裂、増殖した角化細胞は、有棘層、顆粒層を通過しながら分化し角質細胞となって、強固な架橋結合をもったケラチン蛋白線維で構成された角質層を構成し、最終的には垢として角質層から脱落する。この角質層は、皮膚の最外殻に存在しており、外界からの刺激に対する物理的なバリアとしての役割を果たしている。皮膚ではこのバリア機能を持たせるため、角化細胞が基底層で産生されてから垢となって剥がれ落ちるまでのサイクル(角化)を通常4週間の周期で繰り返し、表皮の新陳代謝を行っている。
ところが、皮膚において紫外線、著しい空気の乾燥、過度の皮膚洗浄、喫煙等の外的因子の影響を受けたり、加齢が進んだりすると、表皮細胞の活動や増殖能が低下し、それに伴い表皮のターンオーバー速度が遅延するため、表皮の菲薄化や角質層肥厚などの分化不全が引き起こされる。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、角質の異常剥離が起こり、また皮膚が老化してシワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等の変化が生じる。皮膚のターンオーバーを促進するためには、例えば、角化細胞の増殖を促進することが考えられる。
細胞の増殖を促進するためには、細胞分裂に必要なエネルギーを細胞に補給することが重要である。生体のエネルギー物質としては、ATPが挙げられ、このATPの産生量を上げることにより、細胞内のエネルギー代謝が促進され、細胞増殖につながると考えられる。しかし、上記のように、機能の低下した細胞や老化した細胞では、エネルギー物質であるATP量が正常細胞より減少することが報告されている(特許文献7参照)。
そのため、細胞におけるATPの産生を促進することができれば、その細胞を活性化して細胞分裂を促し、その細胞の増殖能を回復することができると考えられる。特に、皮膚の細胞においてATPの産生を促進することは、皮膚のターンオーバーを促進し、肌の新陳代謝機能を回復させ、シワ、くすみ、きめの消失等の皮膚の老化を予防・改善する上で重要である。従来、ATP産生促進作用を有するものとして、グリコーゲン(特許文献7参照)、モモ等の天然物からの抽出物(特許文献8参照)等が知られている。
近年、特に生体成分を酸化させる要因として、活性酸素やフリーラジカル(以下単に「ラジカル」ということがある。)が注目されており、その生体への悪影響が問題となっている。活性酸素は、生体細胞内のエネルギー代謝過程で生じるものであり、活性酸素としては、スーパーオキサイド(すなわち酸素分子の一電子還元で生じるスーパーオキサイドアニオン:・O2 −)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシラジカル(・OH)及び一重項酸素(1O2)等が挙げられる。これらの活性酸素は、食細胞の殺菌機構にとって必須であり、ウイルスや癌細胞の除去に重要な働きを果たしている。通常、生体内で生産され、他の活性酸素の出発物質ともなっているスーパーオキサイドは、細胞内に含まれているスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)の触媒作用により逐次消去されているが、スーパーオキサイドの産生が過剰である場合、またはSODの作用が低下している場合には、スーパーオキサイドの消去が不十分となり、スーパーオキサイド濃度が高くなる。過剰なスーパーオキサイドは、他の活性酸素種やフリーラジカルが生成する原因となる。
また、フリーラジカルは、活性酸素以外にも、大気汚染物質、放射線、紫外線、たばこ等の環境因子に晒されることで生成する。これらの活性酸素やフリーラジカルが過剰に生成すると、生体内の膜や組織を構成する生体内分子を攻撃し、その結果、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、各種動脈硬化症(虚血性心疾患,心筋梗塞,脳虚血,脳梗塞等)、神経変性疾患(アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン舞踏病等)、癌、喫煙等が原因の肺疾患、白内障、糖尿病、しわ、肩凝り、冷え性等の様々な疾患を誘発する。
特に、皮膚は、紫外線等の環境因子の刺激を直接受けることから、スーパーオキサイドやフリーラジカルが生成しやすい器官であるため、これらの化学種の濃度が上昇することにより、例えば、コラーゲン等の生体組織を分解し、変性し又は架橋したり、油脂類を酸化して細胞に障害を与える過酸化脂質を生成したりすると考えられており、活性酸素やフリーラジカル等の酸化ストレスによって引き起こされる障害が、皮膚のしわ形成や皮膚の弾力低下等の老化の原因になるものと考えられている(非特許文献6参照)。したがって、活性酸素や生体内ラジカルの生成を阻害・抑制することにより、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、活性酸素やフリーラジカル等による酸化ストレスが原因となって誘発される上記の疾患群を予防、治療又は改善できるものと考えられる。活性酸素消去作用、ラジカル消去作用を有するものとして、スターフルーツの果実からの抽出物(特許文献9参照)等が知られている。
グルタチオンは、グルタミン酸、システイン及びグリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドであり、細胞内の主要なシステイン残基を有する化合物である。細胞内におけるグルタチオンは、ラジカルの捕捉、酸化還元による細胞機能の調節、異物代謝、各種酵素のSH供与体としての機能を果たすものであり、活性酸素等に対する抗酸化成分としても知られている。その作用発現は、システイン残基に由来すると考えられている。しかしながら、過剰な酸化ストレスや異物の付加、加齢などにより、細胞内のグルタチオン量が欠乏又は低下することが報告されており、このことが細胞の酸化ストレスに対する防御能を低下させ、細胞のDNA及びタンパク質等の構成成分にダメージを与える一因であると考えられている。
このような、細胞内のグルタチオン量の低下又は欠乏が病態と関連することが知られている疾患として、皮膚のシミ等の色素沈着、皮膚の老化、酸化ストレスが原因となって誘発される前述した疾患群のほか、肝障害(アルコールの多飲、又は重金属や化学物質等の異物の摂取が原因となる)等が知られている。すなわち、グルタチオンの産生を促進することは、細胞の酸化ストレスに対する防御能を高め、細胞内のグルタチオン量が低下又は欠乏することに起因する上記の疾患群を予防・治療することができると考えられる。グルタチオン産生促進作用を有するものとして、琥珀熱水抽出物(特許文献10参照)等が知られている。
毛髪は、成長期、退行期及び休止期からなる周期的なヘアサイクル(毛周期)に従って成長及び脱落を繰り返している。このヘアサイクルのうち、休止期から成長期にかけての新たな毛包が形成されるステージが、発毛に最も重要であると考えられており、このステージにおける毛包上皮系細胞の増殖・分化に重要な役割を果たしているのが、毛乳頭細胞であると考えられている。毛乳頭細胞は、毛根近傍にある外毛根鞘細胞とマトリックス細胞とからなる毛包上皮系細胞の内側にあって、基底膜に包まれている毛根の根幹部分に位置する細胞であり、毛包上皮系細胞に働きかけてその増殖を促進する等、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成において重要な役割を担っている(非特許文献7参照)。
このように、毛乳頭細胞は、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成において重要な役割を果たしており、毛乳頭細胞の増殖を促進することで、脱毛症を予防・改善することができると考えられる。これまでに、毛乳頭細胞増殖促進作用を有するものとしては、例えば、ワイルドタイム抽出物(特許文献11参照)等が知られている。
近年、飽食や運動不足等の生活習慣が原因となって体脂肪が増加し、肥満が増えている。このような肥満の増加は、人間ばかりでなく、ペットや家畜においても見られる。肥満は、高脂血症や動脈硬化等の成人病の原因になるため、美容の面で問題となるばかりでなく、健康の面でも大きな問題となる。
ここで、サイクリックAMP(cAMP)は、生体内の脂肪分解に関与することが知られている。cAMPは生体内に存在するリパーゼを活性化し、活性化されたリパーゼによって脂肪が脂肪酸とグリセロールとに分解される。しかし、cAMPホスホジエステラーゼが活性化されるとcAMPの分解が誘発され、リパーゼの活性化が阻害される。そのため、cAMPホスホジエステラーゼの活性を阻害することにより細胞内におけるcAMPが増量し、脂肪の分解を促進することができるものと考えられる。
また、炎症反応を引き起こす血小板凝集は、血小板中のcAMPの濃度と関係があり、cAMPホスホジエステラーゼによってcAMPが分解されてcAMPの濃度が低下すると、血小板は凝集しやすくなることが知られている。従って、cAMPホスホジエステラーゼの作用を抑制してcAMP濃度の低下を防止すれば、血小板凝集を防止でき、これによりアレルギー性疾患や炎症性疾患等を予防、治療又は改善できると考えられる。cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有するものとして、ツベイモシドI(特許文献12参照)等が知られている。
なお、化粧料に配合し得る天然物由来の成分として、微生物の培養物が知られており、例えば、ストレプトコッカス・サーモフィルスに属する乳酸菌の培養上清がシワ形成抑制作用を有することが知られている(特許文献13参照)。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
〔ラクトバシルス・プランタラム培養上清物〕
本実施形態で用いるラクトバシルス・プランタラム培養上清物は、ラクトバシルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)に属する乳酸菌を液体培地にて培養し、得られた培養液から固形物を除去することにより得られるものである。
ここで、本明細書における「ラクトバシルス・プランタラム培養上清物」には、別段の記載がある場合を除き、ラクトバシルス・プランタラム培養液から固形物を除去して得られる培養上清液、当該培養上清液の希釈液もしくは濃縮液、当該培養上清液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
本実施形態で用いる微生物は、ラクトバシルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)である。ラクトバシルス・プランタラムは、乳酸菌の一種であるが、主として野菜漬物、キムチ、味噌などの植物性の発酵食品から分離されることから植物性乳酸菌に包含され、ヨーグルト等の発酵乳や乳酸菌飲料の製造に用いられる動物性乳酸菌とは異なるものである。
本実施形態においては、ラクトバシルス・プランタラムに分類される乳酸菌であれば何れを用いてもよいが、後述する作用効果が好ましく発揮されることから、ラクトバシルス・プランタラム 22A−1(FERM P−21409)、ラクトバシルス・プランタラム 22A−3(FERM P−21411)、およびラクトバシルス・プランタラム 22B−2(FERM P−21410)からなる群より選択される1または2以上であることが好ましく、ラクトバシルス・プランタラム 22A−3(FERM P−21411)であることが特に好ましい。
なお、上記ラクトバシルス・プランタラム 22A−1(FERM P−21409)、ラクトバシルス・プランタラム 22A−3(FERM P−21411)、およびラクトバシルス・プランタラム 22B−2(FERM P−21410)の3株は、本発明者らにより漬物から単離・同定された株であり、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている。
上記ラクトバシルス・プランタラムを培養する培地としては特に制限はされず、乳酸菌の培養に通常使用される培地やその改変培地を使用することができる。このような培地に配合される培地成分としては、例えば、グルコース等の炭素源;酵母エキス、肉エキス、カゼイン等およびこれらのタンパク加水分解物等の窒素源;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム等の無機塩類;チアミン、イノシトール等のビタミン類などの、乳酸菌の生育に好適な成分などが挙げられる。
なお、本実施形態においては、培地成分として動物の乳由来の成分を用いなくてもよい。培地成分に動物の乳由来の成分を用いた場合、乳アレルギーを惹起する可能性があることからアレルギー患者による使用が制限されることがあり、また、乳酸菌を培養することで好ましくない香気を生じさせることがあることから化粧料の配合成分として適当でない場合がある。
上記ラクトバシルス・プランタラムの培養において、培地のpH、培養温度、培養時間、培養方法等の培養条件は、特に限定されるものではなく、従来公知の条件を採用することができる。例えば、培養温度は、好ましくは25〜45℃、より好ましくは30〜37℃とすることができ、培養時間は、好ましくは4〜74時間、より好ましくは18〜48時間とすることができる。また、培養方法としては、静置、攪拌、振盪、通気等が挙げられ、いずれを採用してもよい。
本実施形態においては、このようにして得られた培養液から菌体等の固形物を分離し、上清を得る。固形物の分離方法としては、遠心分離、濾過等の公知の技術を採用することができる。
このようにして得られた培養上清液は、そのまま培養上清物として用いてもよく、または適宜希釈しもしくは濃縮して、培養上清物として用いてもよい。さらには、濃縮物をさらに乾燥してもよく、粗精製などを行ってもよい。
以上のようにして得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物は、優れた抗老化作用、美白作用、抗酸化作用、育毛作用、抗肥満作用およびサイクリックAMP(cAMP)ホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有しているため、抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤およびcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の有効成分として用いることができるとともに、化粧料に配合してこれらの作用を化粧料に付与することができる。
〔抗老化剤,美白剤,抗酸化剤,育毛剤,抗肥満剤,cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤〕
本実施形態の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤およびcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、前述のようにして得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物を有効成分として含有するものである。本実施形態の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤およびcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品等の幅広い用途に使用することができる。
ここで、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する抗老化作用は、例えば、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用、最終糖化生成物(AGEs)形成抑制作用、最終糖化生成物(AGEs)分解促進作用、紫外線ダメージ回復作用、およびATP産生促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用に基づいて発揮される。ただし、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する抗老化作用は、上記作用に基づいて発揮される抗老化作用に限定されるものではない。
また、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物は、そのプロフィラグリンmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、AGEs形成抑制作用、AGEs分解促進作用、紫外線ダメージ回復作用、またはATP産生促進作用を利用して、それぞれプロフィラグリンmRNA発現促進剤、AQP3mRNA発現促進剤、AGEs形成抑制剤、AGEs分解促進剤、紫外線ダメージ回復剤、またはATP産生促進剤の有効成分として使用してもよい。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する美白作用は、例えば、グルタチオン産生促進作用に基づいて発揮される。ただし、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する美白作用は、上記作用に基づいて発揮される美白作用に限定されるものではない。また、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物は、そのグルタチオン産生促進作用を利用して、グルタチオン産生促進剤の有効成分として使用してもよい。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する抗酸化作用は、例えば、ラジカル消去作用に基づいて発揮される。ただし、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する抗酸化作用は、上記作用に基づいて発揮される抗酸化作用に限定されるものではない。また、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物は、そのラジカル消去作用を利用して、ラジカル消去剤の有効成分として使用してもよい。
なお、本明細書において「ラジカル」とは、不対電子を1つ又はそれ以上有する分子又は原子を意味し、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、DPPH等が含まれる。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する育毛作用は、例えば、毛乳頭細胞増殖促進作用に基づいて発揮される。ただし、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する育毛作用は、上記作用に基づいて発揮される育毛作用に限定されるものではない。また、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物は、その毛乳頭細胞増殖促進作用を利用して、毛乳頭細胞増殖促進剤の有効成分として使用してもよい。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する抗肥満作用は、例えば、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用に基づいて発揮される。ただし、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する抗肥満作用は、上記作用に基づいて発揮される抗肥満作用に限定されるものではない。
本実施形態の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤およびcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物のみからなるものでもよいし、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物を製剤化したものでもよい。
本実施形態の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤およびcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤およびcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、他の組成物(例えば、化粧料等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
本実施形態の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を製剤化した場合、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
なお、本実施形態の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、必要に応じて、抗老化作用、美白作用、抗酸化作用、育毛作用、抗肥満作用またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有する他の天然抽出物等を、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物とともに配合して有効成分として用いることができる。
本実施形態の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
本実施形態の抗老化剤は、有効成分であるラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するプロフィラグリンmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、AGEs形成抑制作用、AGEs分解促進作用、紫外線ダメージ回復作用、およびATP産生促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用を通じて、皮膚のシワの形成、弾力性の低下、保湿機能の低下等の皮膚の老化症状を予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態の抗老化剤は、これらの用途以外にも、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、AGEs形成抑制作用、AGEs分解促進作用、紫外線ダメージ回復作用、またはATP産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の抗老化剤または前述したプロフィラグリンmRNA発現促進剤は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するプロフィラグリンmRNA発現促進作用を通じて、表皮ケラチノサイトにおいて、フィラグリンの産生を促進し、これにより角質層内のアミノ酸量を増大させることで、角質層の水分環境を本質的に改善することができる。これにより、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患の発症リスクを低減させることでこれらの疾患を予防または治療することができる。また、本実施形態の抗老化剤または前述したプロフィラグリンmRNA発現促進剤は、そのプロフィラグリンmRNA発現促進作用を通じて、尋常性魚鱗癬等の皮膚疾患を予防または治療することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したAQP3mRNA発現促進剤は、ジヒドロフェルラ酸が有するAQP3mRNA発現促進作用を通じて、水分保持機能やバリア機能等を改善することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したAGEs形成抑制剤もしくはAGEs分解促進剤は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するAGEs形成抑制作用またはAGEs分解促進作用を通じて、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症等の糖尿病合併症;タンパク質の糖化反応に起因する動脈硬化;タンパク質の糖化反応に起因する骨粗鬆症や変形性関節症等;などを予防または治療することができる。また、本実施形態の抗老化剤または前述したAGEs形成抑制剤は、そのAGEs形成抑制作用を通じて、タンパク質の糖化反応に起因する毛髪の損傷を予防又は抑制することができ、これにより毛髪のゴワつきを予防又は抑制し、毛髪の弾力性やしなやかさ等を回復し、また毛髪にハリ・コシを付与することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述した紫外線ダメージ回復作用剤は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する紫外線ダメージ回復作用を通じて、紫外線(UVB)の慢性的な暴露によるシミ、しわ等の皮膚の老化を予防・改善することができるとともに、紫外線によって誘発される皮膚の炎症反応や、その後に生じる皮膚機能の障害をも予防・改善することができる。また、本実施形態の紫外線ダメージ回復作用剤は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する紫外線ダメージ回復作用を通じて、紫外線からのダメージに起因する疾患(皮膚癌等)を予防・治療することができる。
本実施形態の抗老化剤または前述したATP産生促進剤は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するATP産生促進作用を通じて、ターンオーバーを促進し、皮膚においてはシワ、きめの消失、弾力性の低下等の皮膚の老化症状を予防・改善することができる。また、本実施形態のATP産生促進剤は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するATP産生促進作用を通じて、メラニンが異常蓄積した角質細胞の角質層からの脱落等、肌の新陳代謝機能を回復することにより、皮膚におけるくすみ、色素沈着等の症状を予防・改善することができる。
本実施形態の美白剤は、有効成分であるラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するグルタチオン産生促進作用を通じて、皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着を予防・改善することができる。ただし、本実施形態の美白剤は、これらの用途以外にもグルタチオン産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の美白剤または前述したグルタチオン産生促進剤は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するグルタチオン産生促進作用を通じて、肝障害(アルコールの多飲,または重金属や化学物質等の異物の摂取が原因となる)等の細胞内グルタチオン量の低下又は欠乏が病態と関連することが知られている疾患などを予防、治療または改善することができる。
本実施形態の抗酸化剤は、有効成分であるラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するラジカル消去作用を通じて、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化を予防、治療または改善できるとともに、皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着を予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態の抗酸化剤は、これらの用途以外にもラジカル消去作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の抗酸化剤または前述したラジカル消去剤は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するラジカル消去作用を通じて、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、各種動脈硬化症(虚血性心疾患,心筋梗塞,脳虚血,脳梗塞等)、神経変性疾患(アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン舞踏病等)、癌、喫煙等が原因の肺疾患、白内障、糖尿病、肩凝り、冷え性等のフリーラジカルが関与する各種疾患;などを予防、治療または改善することができる。
本実施形態の育毛剤は、有効成分であるラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する毛乳頭細胞増殖促進作用を通じて、毛乳頭細胞を活性化し、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成を促進することができるとともに、毛周期において成長期から退行期及び休止期へと移行するのを防ぎ、成長期を延長させることができる。これにより、脱毛症を予防・改善することができる。本実施形態において改善の対象となる脱毛症としては、例えば、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等が挙げられる。ただし、本発明の育毛剤は、これらの用途以外にも毛乳頭細胞増殖促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の育毛剤または前述した毛乳頭細胞増殖促進剤は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する毛乳頭細胞増殖促進作用を通じて、毛乳頭細胞を用いた毛髪再生等の再生医療分野への応用に使用することもできる。
本実施形態の抗肥満剤は、有効成分であるラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を通じて、cAMPの産生を促進し、脂肪細胞の分解をすることができ、この結果、肥満症、それに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な疾患を予防・改善することができる。
本実施形態のcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、有効成分であるラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を通じて、cAMPの産生を促進するため、血小板の凝集を抑制することができ、これによりアレルギー疾患や各種炎症性疾患等を予防、治療又は改善することができる。また、本実施形態のcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有するcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を通じて、脂肪細胞の分解を促進することができ、この結果、肥満症、およびこれに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な生活習慣病を予防・改善することができる。ただし、本実施形態のcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、これらの用途以外にもcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
また、本実施形態の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、優れた抗老化作用、美白作用、抗酸化作用、育毛作用、抗肥満作用またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有するため、例えば、皮膚外用剤や飲食品に配合するのに好適である。この場合に、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物をそのまま配合してもよいし、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物から製剤化した抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を配合してもよい。
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、後述する皮膚化粧料のほか、経皮的に使用される医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態においてラクトバシルス・プランタラム培養上清物等を配合し得る「飲食品」としては、その区分に制限はなく、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
また、本実施形態の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、優れた抗老化作用、美白作用、抗酸化作用、育毛作用、抗肥満作用またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
〔化粧料〕
本実施形態の化粧料は、前述したラクトバシルス・プランタラム培養上清物が配合されるものである。本実施形態に係る化粧料には、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物をそのまま配合してもよいし、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物から製剤化した抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を配合してもよい。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物、または上記抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤もしくはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を配合し得る化粧料の種類は特に限定されるものではないが、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物の作用をより効果的に発揮させる観点から、皮膚化粧料または頭髪化粧料であることが好ましい。皮膚化粧料または頭髪化粧料の形態は、特に限定されるものではないが、皮膚化粧料としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーション等が挙げられ、また、頭髪化粧料としては、例えば、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンス等が挙げられる。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物、または上記抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤もしくはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を化粧料に配合する場合、その配合量は、化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物の固形分に換算して約0.0001〜10質量%であり、特に好適な配合率は約0.001〜1質量%である。
本実施形態の化粧料は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する抗老化作用、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、最終糖化生成物形成抑制作用、最終糖化生成物分解促進作用、紫外線ダメージ回復作用、ATP産生促進作用、美白作用、グルタチオン産生促進作用、抗酸化作用、ラジカル消去作用、育毛作用、毛乳頭細胞増殖促進作用、抗肥満作用またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を妨げない限り、通常の化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物または上記抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤もしくはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、化粧料に配合されることにより、抗老化作用、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、最終糖化生成物形成抑制作用、最終糖化生成物分解促進作用、紫外線ダメージ回復作用、ATP産生促進作用、美白作用、グルタチオン産生促進作用、抗酸化作用、ラジカル消去作用、育毛作用、毛乳頭細胞増殖促進作用、抗肥満作用またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を化粧料に付与することができる。
これらの作用は、いずれも化粧料に付与されることで好ましい作用を発揮するものであるが、中でも、化粧料が皮膚化粧料である場合に、抗老化作用、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、最終糖化生成物形成抑制作用、最終糖化生成物分解促進作用、紫外線ダメージ回復作用、ATP産生促進作用、美白作用、グルタチオン産生促進作用、抗酸化作用、ラジカル消去作用、またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用が皮膚化粧料に付与されると、それらの作用が発揮されやすいため、特に好適である。
また、化粧料が頭髪化粧料である場合には、育毛作用、毛乳頭細胞増殖促進作用、抗老化作用、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、最終糖化生成物形成抑制作用、最終糖化生成物分解促進作用、紫外線ダメージ回復作用、ATP産生促進作用、抗酸化作用、ラジカル消去作用、またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用が頭髪化粧料に付与されると、それらの作用が発揮されやすいため、特に好適である。
本実施形態の化粧料は、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物が有する抗老化作用、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、最終糖化生成物形成抑制作用、最終糖化生成物分解促進作用、紫外線ダメージ回復作用、ATP産生促進作用、美白作用、グルタチオン産生促進作用、抗酸化作用、ラジカル消去作用、育毛作用、毛乳頭細胞増殖促進作用、抗肥満作用およびcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用からなる群より選択される1または2以上の作用を通じて、皮膚のシワの形成、弾力性の低下、保湿機能の低下等の皮膚の老化症状の予防、治療または改善;肌荒れ、乾燥肌等のほか、乾燥性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬等)の予防、治療または改善;皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着の予防、治療または改善;男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等の脱毛症の予防、治療または改善;肥満症、およびそれに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の生活習慣病の予防、治療または改善;などをすることができる。
なお、本実施形態の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、育毛剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、および化粧料は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
以下、試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
〔製造例1〕ラクトバシルス・プランタラム培養上清物の製造
ラクトバシルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)22A−3株(受託番号:FERM P−21411)を、酵母エキス0.4%およびグルコース2.0%を含む液体培地1Lに植菌し、30℃嫌気的条件下で24時間培養した。培養後の培養液濁度を波長660nmにて測定したところ、10倍希釈して1であった。得られた培養液を遠心分離(10,000×g,5分間,4℃)して菌体を分離し、上清液を回収した。得られた上清液を濃縮乾固することにより、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(15g,試料1)を得た。
〔試験例1〕プロフィラグリンmRNA発現促進作用試験
製造例1で得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)について、以下のようにしてプロフィラグリンmRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、80cm2フラスコにて正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、35mmシャーレ(FALCON社製)に2mLずつ播種し(40×104cells/シャーレ)、24時間培養した。
培養後に培地を除去し、被験試料(試料1,試料濃度は下記表1を参照)を溶解したKGM培地を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃・5%CO2−95%airの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、プロフィラグリンおよび内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR Prime Script RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2Step RT−PCR反応により行った。プロフィラグリンmRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりプロフィラグリンmRNA発現促進率(%)を算出した。
プロフィラグリンmRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表1に示す。
表1に示すように、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)は、優れたプロフィラグリンmRNA発現促進作用を有することが確認された。
〔試験例2〕アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用試験
製造例1で得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)について、以下のようにしてAQP3mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、80cm2フラスコにて正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、35mmシャーレ(FALCON社製)に2mLずつ播種し(40×104cells/シャーレ)、37℃・5%CO2−95%airの条件下で24時間培養した。
培養後に培地を除去し、被験試料(試料1,試料濃度は下記表2を参照)を溶解したKGM培地を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃・5%CO2−95%airの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、AQP3および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR Prime Script RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2Step RT−PCR反応により行った。AQP3mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりAQP3mRNA発現促進率(%)を算出した。
AQP3 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表2に示す。
表2に示すように、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)は、優れたAQP3mRNA発現促進作用を有することが確認された。
〔試験例3〕AGEs形成抑制作用試験
製造例1で得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)について、以下のようにして最終糖化生成物(AGEs)の形成抑制作用を試験した。
96ウェルのI型コラーゲンコートプレート(旭硝子社製)に、PBS(−)緩衝液にて調製した0.2mol/LのD(−)−リボースおよび被験試料(試料1,試料濃度は下記表3を参照)の混合液100μLを添加した後、37℃で2週間静置し、AGEsを形成させた。なお、陰性対照としてPBS(−)緩衝液のみを添加したもの、および陽性対照としてPBS(−)緩衝液にて調製した0.2mol/LのD(−)−リボース溶液のみを添加したものを、それぞれ同様に静置した。17日後、抗AGEs抗体(トランスジェニック社製)を用いたELISA法によりAGEs量を測定し、AGEs形成抑制作用を評価した。得られた結果から、下記式によりAGEs形成抑制率(%)を算出した。
AGEs形成抑制率(%)={(B−C)/(B−A)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:陰性対照での波長405nmにおける吸光度
B:試料無添加(陽性対照)での波長405nmにおける吸光度
C:被験試料添加での波長405nmにおける吸光度
結果を表3に示す。
表3に示すように、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)は優れたAGEs形成抑制作用を示した。
〔試験例4〕AGEs分解促進作用試験
製造例1で得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)について、以下のようにして最終糖化生成物(AGEs)の分解促進作用を試験した。
96ウェルのI型コラーゲンコートプレート(旭硝子社製)に、PBS(−)緩衝液にて調製した0.2mol/LのD(−)−リボース溶液100μLを添加し、37℃で2週間静置し、AGEsを形成させた。なお、陰性対照としてPBS(−)緩衝液のみ添加したものを同様に静置した。2週間後、PBS(−)緩衝液にて調製した被験試料(試料1,試料濃度は下記表4を参照)を100μLずつ添加し、さらに37℃で16日間静置した。なお、陽性対照として、D(−)−リボース溶液処理後PBS(−)緩衝液を添加して同様に静置し、一方陰性対照として引き続きPBS(−)緩衝液のみを同様に静置した。16日後、抗AGEs抗体(トランスジェニック社製)を用いたELISA法によりAGEs量を測定し、AGEs分解促進作用を評価した。得られた結果から、下記式によりAGEs分解促進率(%)を算出した。
AGEs分解促進率(%)={(B−C)/(B−A)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:陰性対照での波長405nmにおける吸光度
B:試料無添加(陽性対照)での波長405nmにおける吸光度
C:被験試料添加での波長405nmにおける吸光度
結果を表4に示す。
表4に示すように、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)は優れたAGEs分解促進作用を示した。
〔試験例5〕紫外線(UVB)照射によるダメージ回復作用試験
製造例1で得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)について、以下のようにして紫外線(UVB)照射によるダメージ回復作用を試験した。
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α−MEM培地を用いて前培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×105cells/mLの細胞密度になるようにα−MEM培地を用いて希釈した後、48ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ播種した。24時間培養後、培地を100μLのPBS(−)緩衝液へ交換し、1.0J/cm2のUVBを照射した。照射後、直ちに、PBS(−)緩衝液を除去し、10%FBS含有D−MEMに溶解した試料溶液(試料1,試料濃度は下記表5を参照)を各ウェルに350μLずつ添加し、24時間培養した。
紫外線(UVB)照射によるダメージ回復作用は、MTTアッセイを用いて測定した。すなわち、培養終了後、培地を除去し、終濃度0.4mg/mLで溶解したMTTを各ウェルに200μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出し、抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様に細胞を播種した後、UVBを照射しない細胞及びUVBを照射し試料溶液を添加しない細胞についても同様に測定し、それぞれ非照射群および照射群とした。得られた結果から、下記式により紫外線(UVB)照射によるダメージ回復率(%)を算出した。
UVBダメージ回復率(%)={(A−C)−(A−B)}/(A−C)×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:UVBを照射していない細胞でのブルーホルマザン生成量
B:UVBを照射し試料溶液を添加した細胞でのブルーホルマザン生成量
C:UVBを照射し試料溶液を添加していない細胞でのブルーホルマザン生成量
結果を表5に示す。
表5に示すように、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)は、優れた紫外線(UVB)照射によるダメージ回復作用を有することが確認された。
〔試験例6〕ATP産生促進作用試験
製造例1で得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)について、以下のようにしてATP産生促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×105cells/mLの細胞密度になるようKGM培地で希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を除去し、被験試料(試料1,試料濃度は下記表6を参照)を溶解したKGM培地を各ウェルに100μL添加し、2時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。
ATP産生促進作用は、ホタルルシフェラーゼ発光法を用いて細胞内のATP量を測定した。すなわち、2時間培養後、ATP測定試薬(東洋ビーネット社製,商品名「『細胞の』ATP測定試薬」)を各ウェルに100μLずつ添加し、ルシフェラーゼによる化学発光反応を行った。反応後、細胞内ATP量に比例した化学発光量を、化学発光測定装置(Bio-Tex Instruments, Inc.社製,製品名:KL-800)を用いて測定した。得られた結果から、下記式によりATP産生促進率(%)を算出した。
ATP産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料を添加した細胞での化学発光量
B:試料無添加の細胞での化学発光量
結果を表6に示す。
表6に示すように、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)は、優れたATP産生促進作用を有していると認められた。
〔試験例7〕グルタチオン産生促進作用試験
製造例1で得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)について、以下のようにしてB16メラノーマ細胞に対するグルタチオン産生促進作用を試験した。
B16メラノーマ細胞を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて前培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10×104cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有ダルベッコMEM培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。
培養後、培地を除去し、被験試料(試料1,試料濃度は下記表7を参照)を添加した1%FBS含有ダルベッコMEM培地を各ウェルに200μL添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の1%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、各ウェルから培地を除去し、400μLのPBS緩衝液にて洗浄後、150μLのM−PER(PIERCE社製)を使用して細胞を溶解した。
このうちの100μLを使用して総グルタチオンの定量を行った。すなわち、96ウェルプレートに溶解した細胞抽出液100μL、0.1mmol/Lのリン酸緩衝液50μL、2mmol/LのNADPH25μL及びグルタチオンレダクターゼ25μL(終濃度17.5unit/mL)を加え37℃で10分間加温した後、10mMの5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオン(和光純薬社製)を使用して作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式によりグルタチオン産生促進率(%)を算出した。
グルタチオン産生促進率(%)=B/A×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加の細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量(対照)
B:被験試料を添加した細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量
結果を表7に示す。
表7に示すように、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)はB16メラノーマ細胞に対して優れたグルタチオン産生促進作用を有することが確認された。
〔試験例8〕ラジカル消去作用試験(DPPH法)
製造例1で得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)について、以下のようにしてラジカル消去作用を試験した。
150μmol/L DPPH(diphenyl-p-picrylhydrazyl)エタノール溶液3mLに被験試料溶液(試料1,試料濃度は下記表8を参照)3mLを加え密栓した後、振り混ぜて30分間放置した。放置後、波長520nmにおける吸光度を測定した。ブランクとして、エタノールに被験試料溶液を3mL加えた後、直ちに波長520nmにおける吸光度を測定した。また、コントロールとして、被験試料溶液に代えて試料の溶解に使用した溶媒のみを加えて同様の操作を行い、波長520nmにおける吸光度を測定した。得られた結果から、下記式によりラジカル消去率(%)を算出した。
ラジカル消去率(%)={C−(St−Sb)}/C×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
St:被験試料添加での波長520nmにおける吸光度
Sb:被験試料添加直後(ブランク)の波長520nmにおける吸光度
C :試料無添加での波長520nmにおける吸光度
結果を表8に示す。
表8に示すように、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)は、優れたラジカル消去作用を有していると認められた。
〔試験例9〕毛乳頭細胞増殖促進作用試験
製造例1で得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)について、以下のようにして毛乳頭細胞増殖促進作用を試験した。
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞(HFDPC,男性頭頂部由来)を、1%FCSおよび増殖添加剤を含有する毛乳頭細胞用増殖培地(PCGM,東洋紡績社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、10%FBS含有DMEM培地を用いて1.0×104cells/mLの細胞密度になるように希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ播種し、3日間培養した。
その後、培地を除去し、被験試料(試料1,試料濃度は下記表9を参照)を溶解した無血清DMEM培地200μLを各ウェルに添加し、さらに4日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の無血清DMEM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、MTTアッセイにより毛乳頭細胞増殖促進作用を測定した。すなわち、培地を除去し、無血清DMEM培地で調製した0.4mg/mL MTT200μLを添加し、さらに2時間培養した後、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。この抽出液について、ブルーホルマザンの吸収極大点がある570nmの吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。測定結果から、下記式に基づいて、毛乳頭細胞増殖促進率(%)を算出した。
毛乳頭細胞増殖促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのブルーホルマザン生成量
B:試料無添加でのブルーホルマザン生成量
結果を表9に示す。
表9に示すように、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)は、優れた毛乳頭細胞増殖促進作用を有していると認められた。
〔試験例10〕サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用試験
製造例1で得られたラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)について、以下のようにしてサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を試験した。
5mmol/Lの塩化マグネシウムを含有する50mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH7.5)0.2mLに、2.5mg/mLウシ血清アルブミン溶液0.1mL、0.1mg/mLサイクリックAMPホスホジエステラーゼ溶液0.1mL、および被験試料溶液(試料1,試料濃度は下記表10を参照)0.05mLを加え、37℃にて5分間静置した。その後、0.5mg/mLサイクリックAMP溶液0.05mLを加え、37℃で60分間反応させた。その後、3分間沸騰水浴上で煮沸することにより反応を停止させ、これを遠心(2260×g,10分間,4℃)し、上清中の反応基質であるサイクリックAMPを、下記の高速液体クロマトグラフィー条件にて分析した。また、コントロールとして、試料無添加の溶媒のみを加えて同様の操作を行った。
<高速液体クロマトグラフィー条件>
機器名:Chromatocorder 12(SYSTEM INSTRUMENTS社製)
固定相:Wakosil C18−ODS 5μm(和光純薬工業社製)
カラム長:250mm
移動相:1mmol/L TBAP in 25mmol/L KH2PO4:CH3CN=90:10
移動相流速:1.0mL/min
検出:260nm
次に、サイクリックAMP標準品のピーク面積(A)、試料無添加におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B1)、および被験試料添加におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B2)を求めた。得られた結果から、下記式により試料無添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(C)及び被験試料添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(D)を算出した。
試料無添加での標準品分解率(C,%)=(1−B1/A)×100
被験試料添加での標準品の分解率(D,%)=(1−B2/A)×100
その後、上記式により算出した各分解率(C,D)に基づいて、下記式によりサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)を算出した。
cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)=(1−D/C)×100
結果を表10に示す。
表10に示すように、ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(試料1)は、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有することが確認された。
〔配合例1〕
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(製造例1) 0.01g
ホホバオイル 4.00g
1,3−ブチレングリコール 3.00g
アルブチン 3.00g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.50g
オリーブオイル 2.00g
スクワラン 2.00g
セタノール 2.00g
モノステアリン酸グリセリル 2.00g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
グリチルリチン酸ステアリル 0.10g
黄杞エキス 0.10g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.10g
イチョウ葉エキス 0.10g
コンキオリン 0.10g
オウバクエキス 0.10g
カミツレエキス 0.10g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例2〕
下記組成のクリームを常法により製造した。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(製造例1) 0.05g
クジンエキス 0.1g
オウゴンエキス 0.1g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
スクワラン 10.0g
セタノール 3.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
油溶性甘草エキス 0.1g
1,3−ブチレングリコール 6.0g
パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
香料 0.1g
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例3〕
下記組成の美容液を常法により製造した。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(製造例1) 0.01g
カミツレエキス 0.1g
ニンジンエキス 0.1g
キサンタンガム 0.3g
ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
カルボキシビニルポリマー 0.1g
1,3−ブチレングリコール 4.0g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
グリセリン 2.0g
水酸化カリウム 0.25g
香料 0.01g
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
エタノール 2.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例4〕
下記組成のヘアトニックを常法により製造した。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(製造例1) 0.4g
酢酸トコフェロール 適量
セファラチン 0.002g
イソプロピルメチルフェノール 0.1g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.15g
グリセリン 15.0g
エタノール 15.0g
香料 適量
キレート剤(エデト酸ナトリウム) 適量
防腐剤(ヒノキチオール) 適量
可溶化剤(ポリオキシエチレンセチルエーテル) 適量
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例5〕
下記組成のシャンプーを常法により製造した。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(製造例1) 0.5g
マジョラム抽出物 1.0g
ウメ果実部抽出物 0.2g
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0g
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10.0g
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0g
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0g
プロピレングリコール 2.0g
香料 適量
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例6〕
常法により、以下の組成を有する清涼飲料水を製造した。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(製造例1) 0.1g
ローヤルゼリー 3.0g
水溶性コラーゲン 8.0g
ハトムギエキス 1.0g
高麗ニンジンエキス 1.0g
プラセンタエキス 1.0g
プエラリアエキス 1.0g
パープルヤムエキス 1.0g
オリゴ糖 5.0g
ショ糖 10.0g
プルーン果汁 2.0g
ザクロ果汁 5.0g
グレープフルーツ果汁 10.0g
ビタミンC 1.0g
グレープフルーツフレーバー 0.7g
水 残部(全量を100gとする)
〔配合例7〕
常法により、以下の組成を有する錠剤を製造した。
ラクトバシルス・プランタラム培養上清物(製造例1) 5.0mg
ドロマイト(カルシウム20%、マグネシウム10%含有) 83.4mg
カゼインホスホペプチド 16.7mg
ビタミンC 33.4mg
マルチトール 136.8mg
コラーゲン 12.7mg
ショ糖脂肪酸エステル 12.0mg