JP5889546B2 - ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤及びグルタチオン産生促進剤 - Google Patents

ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤及びグルタチオン産生促進剤 Download PDF

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Description

本発明は、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤及びインボルクリン産生促進剤に関するものである。
ヒスタミン遊離は、肥満細胞内のヒスタミンが細胞外に遊離する現象であり、遊離されたヒスタミンが炎症反応を引き起こす。そのため、ヒスタミン遊離を阻害又は抑制する物質により、アレルギー性疾患及び炎症性疾患を予防又は治療する試みがなされている。しかし、ヒスタミンの遊離を直接的に評価することは困難であり、ヒスタミンの遊離と同時に遊離されることが確認されているヘキソサミニダーゼの遊離を指標にヒスタミンの遊離を評価することができる。したがって、ヘキソサミニダーゼの遊離を抑制することにより、同時にヒスタミンの遊離も抑制でき、これにより接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れに伴う各種皮膚疾患等、様々な炎症性疾患等の予防、治療又は改善に効果があるものと考えられる。
また、ヒスタミンは局所伝達物質として細胞間の情報伝達を仲介しており、消化器官においては胃酸分泌を亢進し、中枢神経系における神経伝達物質として機能し、覚醒状態の維持に寄与することが知られている。ここで、ヒスタミン遊離が過剰となると、消化器官においては胃酸過多による潰瘍の原因となり、中枢神経系においては睡眠障害の一因となる。上述したように、ヘキソサミニダーゼの遊離を抑制することにより、同時にヒスタミンの遊離も抑制できることから、これにより胃酸過多を原因とする胃潰瘍、睡眠障害等を予防、治療又は改善できると考えられる。
このようなヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を有する植物抽出物としては、藤茶からの抽出物(特許文献1参照)等が知られている。
幹細胞増殖因子(Stem Cell Factor,SCF)は、Mast Cell Growth Factor、C-Kit Ligand、Steel Factor等とも呼ばれ、角化細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、骨髄ストローマ細胞等から産生されるタンパク質である。幹細胞増殖因子は、多能性造血幹細胞、生殖細胞、肥満細胞、巨核球系前駆細胞、顆粒球・マクロファージ系前駆細胞、色素細胞等の増殖や分化を促進する作用を有することが知られている。また、幹細胞増殖因子は、シミ部位や紫外線照射等によって発現が亢進することが知られている(非特許文献1参照)。
幹細胞増殖因子としては、273のアミノ酸残基からなる膜結合型幹細胞増殖因子と、タンパク質分解酵素の作用により切断され、膜から遊離する分泌型幹細胞増殖因子とが知られている。膜結合型幹細胞増殖因子は、角化細胞等に結合したまま色素細胞の幹細胞増殖因子受容体に結合し、色素細胞の増殖を促進する。また、分泌型幹細胞増殖因子は、その結合部位にて切断され、細胞膜から遊離し、色素細胞の幹細胞増殖因子受容体に結合することによって、色素細胞の増殖を促進する。さらに、幹細胞増殖因子は、急性骨髄性白血病患者において、インターロイキン−3(Interleukin-3,IL−3)や顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子(Granulocyte Macrophage Colony Stimulating Factor,GM−CSF)の共存下で骨髄芽球の増殖を促進することが知られている(非特許文献2参照)。
そのため、幹細胞増殖因子の異常産生は、色素細胞の異常増殖につながり、メラニン産生を亢進させ、シミ、ソバカス、くすみ等の原因となると考えられる。また、幹細胞増殖因子の異常産生は、骨髄芽球の異常増殖につながり、それにより骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病(AML)等の疾患を引き起こすものと考えられる。したがって、幹細胞増殖因子mRNAの発現上昇を抑制することは、色素細胞の増殖を抑制し、皮膚におけるメラニンの過剰産生を抑制し、日焼け後の色素沈着、シミ、ソバカス等の予防又は抑制に有用であると考えられる。また、幹細胞増殖因子の発現上昇を抑制することは、骨髄芽球の異常増殖を抑制し、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病等の予防又は治療に有用であると考えられる。
このような考えに基づき、幹細胞増殖因子の産生・放出を抑制する作用を有するものとして、例えば、アルニカからの抽出物(特許文献2参照)、アンペロプシン(特許文献3参照)等が知られている。
近年、生体成分を酸化させる要因として活性酸素が注目されており、生体への悪影響が問題となっている。活性酸素は、主に生体細胞内におけるエネルギー代謝過程で生じるものであり、スーパーオキサイド(すなわち酸素分子の一電子還元で生じるスーパーオキシドアニオン:・O )、過酸化水素(H)、ヒドロキシラジカル(・OH)及び一重項酸素()などがある。これらの活性酸素は、好中球やマクロファージなどの食細胞による細胞内殺菌機構に関与するものであり、ウイルスや癌細胞の除去に重要な役割を果たしているが、活性酸素が過剰に生成されると、活性酸素が細胞膜や組織を構成する生体内分子を攻撃し、各種疾患を誘発するおそれがある。
例えば、過酸化水素は、炎症、過酸化脂質の生成、種々のタンパク質の変性・失活及びDNAの損傷などを引き起こすことが知られており、これらが原因となって誘発される疾患として、喫煙等が原因の肺疾患、白内障、各種動脈硬化症(虚血性心疾患、心筋梗塞、脳虚血、脳梗塞等)、加齢に伴う老化現象、皮膚におけるシミ等の色素沈着、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病等)、癌化等が知られている。
そのため、過酸化水素によって生じる細胞障害を予防・改善して、細胞の恒常性を高めることができれば、過酸化水素による酸化ストレスが原因となって誘発される上記の疾患群を予防・改善できるものと考えられる。このような過酸化水素細胞障害の予防・改善作用を有するものとして、五斂子花部の抽出物(特許文献4参照)等が知られている。
また、グルタチオンは、グルタミン酸、システイン及びグリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドであり、細胞内の主要なシステイン残基を有する化合物である。細胞内におけるグルタチオンは、ラジカルの捕捉、酸化還元による細胞機能の調節、異物代謝、各種酵素のSH供与体としての機能を果たすものであり、抗酸化成分としても知られている。その作用発現は、システイン残基に由来すると考えられている。しかしながら、過剰な酸化ストレスや異物の付加、加齢などにより、細胞内のグルタチオン量が欠乏又は低下することが報告されており、このことが細胞の酸化ストレスに対する防御能を低下させ、細胞のDNA及びタンパク質等の構成成分にダメージを与える一因であると考えられている。
このような、細胞内のグルタチオン量の低下又は欠乏が病態と関連することが知られている疾患として、酸化ストレスが原因となって誘発される上記の疾患群のほか、肝障害(アルコールの多飲、又は重金属や化学物質等の異物の摂取が原因となる)等が知られている。
すなわち、グルタチオンの産生を促進することは、細胞の酸化ストレスに対する防御能を高め、細胞内のグルタチオン量が低下又は欠乏することに起因する上記の疾患群を予防・治療することができると考えられる。このようなグルタチオン産生促進作用を有するものとして、テンニンカ抽出物(特許文献5参照)、クチナシ属植物の抽出物(特許文献6参照)等が知られている。
皮膚の表皮及び真皮は、表皮細胞、線維芽細胞及びこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するエラスチン、コラーゲン及びヒアルロン酸等の細胞外マトリックスにより構成されている。若い皮膚においては線維芽細胞の増殖は活発であり、線維芽細胞、コラーゲン等の皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、細胞外マトリックスの主要構成成分であるエラスチン、コラーゲン及びヒアルロン酸の産生量が減少するとともに、分解や変質を引き起こす。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、角質の異常剥離が生じるため、肌は張りや艶を失い、肌荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。このように、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等には、エラスチン、コラーゲン及びヒアルロン酸等の真皮マトリックス成分の減少・変性等が関与している。
上述の細胞外マトリックス成分のうち、エラスチンは、皮膚組織に弾力性を与える線維であり、加齢等に伴ってエラスチンが分解されると皮膚の張りが失われるとともに、弾力性が低下する。エラスチンを分解する酵素であるエラスターゼは、紫外線の照射により活性化され、これによりエラスチンの分解が加速する。そのため、エラスターゼの活性を阻害することによりエラスチンの分解が抑制され、張りの消失、弾力性の低下等の皮膚の老化症状を予防・改善できると考えられる。
また、喫煙等によって生体内でのエラスターゼの活性が亢進することが知られている。そして、肺の基質は、コラーゲンとエラスチンとから構成されているため、喫煙等によってエラスターゼの活性が亢進すると、肺胞壁を破壊して肺気腫等を招くおそれがあると考えられる。さらに、エラスターゼの活性の亢進により肺毛細血管が破壊され、肺水腫等の急性呼吸促進症候群(ARDS)を招くおそれがあると考えられる。そのため、生体内でのエラスターゼの活性を阻害することができれば、肺気腫、肺水腫等の呼吸器系疾患を予防・治療することができるものと考えられる。
従来、エラスターゼ活性阻害作用を有するものとして、例えば、スターフルーツ果実抽出物等が知られている(特許文献7参照)。
一方、上述の細胞外マトリックス成分のうち、IV型コラーゲンは、表皮と真皮との境界部に存在する基底膜の主要成分である。基底膜の機能は多岐にわたり、表皮の真皮への接着、表皮の極性の決定、表皮の分化・増殖の制御、さらには真皮細胞が産生する因子や血成分由来の栄養供給の制御に関与している。そのため、基底膜は、皮膚の構造、恒常性の維持にとってきわめて重要な役割を果たしている。
ところが、基底膜は、加齢により構造が変化又は機能が低下するため、これにより、しわ、たるみ等の皮膚の老化症状を呈するようになる。特に、基底膜の主要成分であるIV型コラーゲンの産生量が減少すると、基底膜の構造が変化し、しわ、たるみ等の皮膚の老化症状を呈するようになるため、IV型コラーゲンの産生を促進することで、これらの皮膚の老化症状等を予防・改善することができると考えられる。
このようなIV型コラーゲン産生促進作用を有するものとしては、例えば、フロリジン及びフロレチン(特許文献8参照)、クロバナツルアズキからの抽出物(特許文献9参照)等が知られている。
他方、上述の細胞外マトリックス成分のうち、ヒアルロン酸はムコ多糖の一種であり、加齢や紫外線の照射等に伴ってヒアルロン酸が減少・変性すると、皮膚の荒れ、しわ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下及び保湿機能の低下等の老化症状を呈するようになる。そのため、ヒアルロン酸の産生を促進することにより、皮膚の老化症状を予防・改善できると考えられる。
また、ヒアルロン酸は、皮膚組織の他にも、軟骨、関節液、臍帯、眼硝子体、その他の結合組織に存在する。ヒアルロン酸は、細胞間の間隙に充填されることにより細胞を保持する機能を有し、さらに細胞間隙への水分の保持、組織への潤滑性や柔軟性の付与、機械的障害等の外力に対する抵抗等、数多くの機能を有している。
このうち、関節液に含まれるヒアルロン酸は、関節軟骨の表面を覆い、ヒアルロン酸が有する潤滑機能、軟骨に対する被覆・保護機能等により、関節の円滑な作動に役立っている。一方、慢性関節リウマチ等の関節炎において、関節液におけるヒアルロン酸の濃度が低下していることが知られている。したがって、ヒアルロン酸の産生を促進することで、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、化膿性関節炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、又は骨関節炎等の関節炎を予防又は治療することができると考えられる。
さらに、創傷又は熱傷の治癒過程において、肉芽(組織)が形成するが、肉芽中にヒアルロン酸が著しく増加することが知られている。そのため、ヒアルロン酸の産生を促進することで、創傷又は熱傷の治癒を促進することができると考えられる。
従来、ヒアルロン酸産生促進作用を有するものとしては、クスノハガシワからの抽出物(特許文献10参照)、スターフルーツの果実からの抽出物(特許文献11参照)等が知られている。
フィラグリンは、皮膚の構成成分であり、皮膚におけるバリア機能に関与し、アレルゲン、毒素、感染性生物の侵入を防ぐ機能を有していると考えられている。フィラグリンの遺伝子の変異等による機能の低下は、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患の発症リスクと関連し、さらに重篤な場合は尋常性魚鱗癬等の皮膚疾患につながることが知られている(非特許文献3参照)。
一方、天然保湿因子(Natural Moisturizing Factors;NMF)の主成分であるアミノ酸は、ケラトヒアリン顆粒に由来するフィラグリンが角質層内で分解されて産生される。このフィラグリンは、角質層直下の顆粒層に存在する表皮ケラチノサイトでプロフィラグリンとして発現する。その後、直ちにリン酸化し、ケラトヒアリン顆粒に蓄積され、脱リン酸,加水分解を経てフィラグリンへと分解され、角質層に移行して、ケラチンフィラメントの凝集効率を高め、角質細胞の内部構築に関与することが知られている(非特許文献4参照)。近年、このフィラグリンが、皮膚の水分保持に非常に重要かつ必要不可欠であること、及び乾燥等の条件によってフィラグリンの合成力が低下し、角質層におけるアミノ酸量が低下することが知られている(非特許文献5参照)。
したがって、表皮ケラチノサイトにおいて、フィラグリンの産生を促進することにより、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患を予防・治療又は改善できると考えられる。また、フィラグリンの産生を促進し、それにより角質層内のアミノ酸量を増大させることで、角質層の水分環境を本質的に改善できることが期待される。
このようなプロフィラグリン産生促進剤又はフィラグリン産生促進剤としては、例えば、カンゾウ抽出物(特許文献12参照)、天然植物中に含まれるフラバノン配糖体として知られるリクイリチン(特許文献13参照)、Citrus属に属する植物エキス又は酵母エキス(特許文献14参照)等が知られている。
角質細胞は、ケラチン線維を主成分とし、それを包む角化外膜細胞(cornified envelope,CE)から構成される。このCEは、表皮角化細胞の分化に従って産生される複数のCE前駆体蛋白質が、酵素トランスグルタミナーゼにより架橋され、不溶化することで形成される。さらに、セラミド等が共有結合して疎水的な構造をとることで、CEの一部に細胞間脂質のラメラ構造の土台が供給され、これにより角層バリア機能の基礎が形成される。
このCE前駆体蛋白質の1つとして、インボルクリンが知られており、かかるインボルクリンの産生を促進することで、角層バリア機能を改善し、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状、アトピー性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬、乾皮症等の乾燥性皮膚疾患等を予防、治療又は改善することができると考えられる。このような考えに基づき、従来、インボルクリン産生促進作用を有するものとして、セイロンテツボクの種子抽出物等が知られている(特許文献15参照)。
特開2003−12532号公報 特開2008−169118号公報 特開2009−209050号公報 特開2006−8571号公報 特開2008−285422号公報 特開2006−347934号公報 特開2003−300893号公報 特開2007−106712号公報 特開2007−217352号公報 特開2003−146837号公報 特開2003−300893号公報 特開2002−363054号公報 特開2003−146886号公報 特開2001−261568号公報 特開2005−213187号公報
"J. Invest. Dermatol.",2001年,Vol.116,Issue 4,p.578-586 "Blood",1992年,Vol.80,No.1,p.60-67 "Nat Genet.",2006年,Vol.38,No.4,p.441-446 「フレグランスジャーナル臨時増刊」,2000年,Vol.17,p.14-19 "Arch. Dermatol. Res.",1996年,Vol.288,p.442-446
本発明は、安全性の高い天然物の中から優れたヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制作用、過酸化水素細胞障害の予防・改善作用、グルタチオン産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、プロフィラグリン産生促進作用、フィラグリン産生促進作用又はインボルクリン産生促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤は、ヒハツからの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
本発明によれば、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用に優れかつ安全性の高いヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制作用に優れかつ安全性の高い幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善作用に優れかつ安全性の高い過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進作用に優れかつ安全性の高いグルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害作用に優れかつ安全性の高いエラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進作用に優れかつ安全性の高いIV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進作用に優れかつ安全性の高いヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進作用に優れかつ安全性の高いプロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進作用に優れかつ安全性の高いフィラグリン産生促進剤、又はインボルクリン産生促進作用に優れかつ安全性の高いインボルクリン産生促進剤を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤は、ヒハツからの抽出物を有効成分として含有するものである。
ここで、本実施形態において「ヒハツからの抽出物」には、ヒハツを抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
本実施形態において使用する抽出原料は、ヒハツ(学名:Piper longum Linn.)である。
ヒハツ(Piper longum Linn.)は、コショウ科コショウ属に属する常緑のつる性植物であり、東南アジアに広く分布し、これらの地域から容易に入手することができる。また、ヒハツの果穂は、多肉質の太い円筒状であり、香辛料として利用されている。
抽出原料として使用し得るヒハツの構成部位としては、例えば、例えば果穂、根、葉、茎、花等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を抽出原料として使用することができるが、特に果穂を使用することが好ましい。
ヒハツからの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、ヒハツの極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10〜90容量部を混合することが好ましい。
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
なお、上述のようにして得られた抽出液はそのままでもヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
また、ヒハツからの抽出物は特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料等に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
以上のようにして得られるヒハツからの抽出物は、優れたヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制作用、過酸化水素細胞障害の予防・改善作用、グルタチオン産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、プロフィラグリン産生促進作用、フィラグリン産生促進作用及びインボルクリン産生促進作用を有しているため、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤及びインボルクリン産生促進剤の有効成分として用いることができる。
本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤は、ヒハツからの抽出物のみからなるものでもよいし、ヒハツからの抽出物を製剤化したものでもよい。
本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤は、他の組成物(例えば、皮膚外用剤、美容用飲食品等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤を製剤化した場合、ヒハツからの抽出物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
なお、本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤は、必要に応じて、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制作用、過酸化水素細胞障害の予防・改善作用、グルタチオン産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、プロフィラグリン産生促進作用、フィラグリン産生促進作用又はインボルクリン産生促進作用を有する他の天然抽出物等を、ヒハツからの抽出物とともに配合して有効成分として用いることができる。
本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。
また、本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤は、ヒハツからの抽出物が有するヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を通じて、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、アトピー性皮膚炎、その他肌荒れを伴う各種皮膚疾患、関節リウマチ、変形性関節症、喘息等を予防、治療又は改善することができる。また、本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤は、ヒハツからの抽出物が有するヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を通じて、胃酸過多を原因とする胃潰瘍、睡眠障害等を予防、治療又は改善することができる。ただし、本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤は、これらの用途以外にもヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態の幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤は、ヒハツからの抽出物が有する幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制作用を通じて、幹細胞増殖因子の発現の上昇を抑制することができ、これにより色素細胞の増殖やメラニンの産生を抑制し、シミ、ソバカス、皮膚色素沈着症等を予防又は改善することができ、美白効果を得ることができる。また、本実施形態の幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤は、ヒハツからの抽出物が有する幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制作用を通じて、骨髄芽球の異常増殖を抑制することができ、これにより骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病等の疾患を予防、治療又は改善することができる。ただし、本実施形態の幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤は、これらの用途以外にも幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態の過酸化水素細胞障害の予防・改善剤は、ヒハツからの抽出物が有する過酸化水素細胞障害の予防・改善作用を通じて、過酸化水素の過剰生成が病態と関連していることが知られている疾患等の治療・予防の用途に使用することができる。このような疾患として、喫煙等が原因の肺疾患、白内障、各種動脈硬化症(虚血性心疾患、心筋梗塞、脳虚血、脳梗塞等)、加齢に伴う老化現象、皮膚におけるシミ等の色素沈着、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病等)、癌化等が挙げられる。ただし、本実施形態の過酸化水素細胞障害の予防・改善剤は、これらの用途以外にも、過酸化水素細胞障害の予防・改善作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態のグルタチオン産生促進剤は、ヒハツからの抽出物が有するグルタチオン産生促進作用を通じて、細胞内グルタチオン量の低下又は欠乏が病態と関連することが知られている疾患等を予防、治療又は改善することができる。このような疾患として、喫煙等が原因の肺疾患、白内障、各種動脈硬化症(虚血性心疾患、心筋梗塞、脳虚血、脳梗塞等)、加齢に伴う老化現象、皮膚におけるシミ等の色素沈着、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病等)、癌化、肝障害(アルコールの多飲、又は重金属や化学物質等の異物の摂取が原因となる)等が挙げられる。ただし、本実施形態のグルタチオン産生促進剤は、これらの用途以外にも、グルタチオン産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態のエラスターゼ活性阻害剤は、ヒハツからの抽出物が有するエラスターゼ活性阻害作用を通じて、エラスチンの分解を抑制し、皮膚の張りの消失、弾力性の低下等の老化症状を予防、治療又は改善することができる。また、本実施形態のエラスターゼ活性阻害剤は、エラスターゼの活性亢進に起因する疾患の予防・治療用医薬品又は医薬部外品の有効成分として用いることができる。このような疾患としては、例えば、肺気腫、肺水腫等の呼吸器疾患等が挙げられる。ただし、本実施形態のエラスターゼ活性阻害剤は、これらの用途以外にも、エラスターゼ活性阻害作用を発揮することに意義あるすべての用途に用いることができる。
本実施形態のIV型コラーゲン産生促進剤は、ヒハツからの抽出物が有するIV型コラーゲン産生促進作用を通じて、表皮におけるIV型コラーゲンの産生を促進し、表皮基底膜の再構築を促進することができ、これによりしわ、たるみ等の皮膚の老化を予防又は改善することができる。ただし、本実施形態のIV型コラーゲン産生促進剤は、これらの用途以外にもIV型コラーゲン産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態のヒアルロン酸産生促進剤は、ヒハツからの抽出物が有するヒアルロン酸産生促進作用を通じて、ヒアルロン酸の産生を促進し、荒れ、しわ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下及び保湿機能の低下等の皮膚の老化症状を予防又は改善することができる。また、本実施形態のヒアルロン酸産生促進剤は、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、化膿性関節炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、又は骨関節炎等の関節炎を予防又は治療することができるとともに、創傷又は熱傷の治癒を促進することができる。ただし、本実施形態のヒアルロン酸産生促進剤は、これらの用途以外にもヒアルロン酸産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態のプロフィラグリン産生促進剤は、ヒハツからの抽出物が有するプロフィラグリン産生促進作用を通じて、細胞内でのプロフィラグリンの産生を促進し、プロフィラグリンの加水分解により得られるフィラグリン量を増加させ、皮膚の保湿能力を改善することができ、これにより、皮膚の弾力性を維持し、皮膚の老化、肌荒れ等を予防、治療又は改善することができる。また、本実施形態のプロフィラグリン産生促進剤は、ヒハツからの抽出物が有するプロフィラグリン産生促進作用を通じて、細胞内でのプロフィラグリンの産生を促進しフィラグリン量を増加させることにより、皮膚のバリア機能を高め、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患を予防、治療又は改善することができる。ただし、本実施形態のプロフィラグリン産生促進剤は、これらの用途以外にもプロフィラグリン産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態のフィラグリン産生促進剤は、ヒハツからの抽出物が有するフィラグリン産生促進作用を通じて、細胞内でのフィラグリンの産生を促進し、皮膚の保湿能力を改善することができ、これにより、皮膚の弾力性を維持し、皮膚の老化、肌荒れ等を予防、治療又は改善することができる。また、本実施形態のフィラグリン産生促進剤は、ヒハツからの抽出物が有するフィラグリン産生促進作用を通じて、細胞内でのフィラグリンの産生を促進し、皮膚のバリア機能を高めることにより、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患を予防、治療又は改善することができる。ただし、本実施形態のフィラグリン産生促進剤は、これらの用途以外にもフィラグリン産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態のインボルクリン産生促進剤は、ヒハツからの抽出物が有するインボルクリン産生促進作用を通じて、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状や、魚鱗癬、乾癬、アトピー性皮膚炎、乾皮症等の乾燥性皮膚疾患等を予防、治療又は改善することができる。ただし、本実施形態のインボルクリン産生促進剤は、これらの用途以外にもインボルクリン産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
また、本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤は、優れたヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制作用、過酸化水素細胞障害の予防・改善作用、グルタチオン産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、プロフィラグリン産生促進作用、フィラグリン産生促進作用又はインボルクリン産生促進作用を有するため、例えば、皮膚外用剤又は飲食品に配合するのに好適である。この場合に、ヒハツからの抽出物をそのまま配合してもよいし、ヒハツからの抽出物から製剤化したヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤を配合してもよい。
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、経皮的に使用される皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
飲食品としては、その区分に制限はなく、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
また、本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤は、優れたヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制作用、過酸化水素細胞障害の予防・改善作用、グルタチオン産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、プロフィラグリン産生促進作用、フィラグリン産生促進作用又はインボルクリン産生促進作用を有するので、ヒスタミンの遊離機構、幹細胞増殖因子の発現機構、過酸化水素による細胞障害の分子機構、グルタチオンの産生機構、エラスターゼの活性制御機構、IV型コラーゲンの産生機構、ヒアルロンの酸産生機構、プロフィラグリン/フィラグリンの産生機構又はインボルクリンの産生機構に関連する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
なお、本実施形態のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤又はインボルクリン産生促進剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
以下、試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。なお、本試験例においては、ヒハツからの抽出物としてヒハツ抽出液BG(丸善製薬社製,試料1)の凍結乾燥品を使用した。
〔試験例1〕ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用試験
上記ヒハツ抽出物(試料1)について、以下のようにしてヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を試験した。
ラット好塩基球白血病細胞(RBL−2H3)を15%FBS添加S−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を4.0×10cells/mLの細胞密度となるように15%FBS添加S−MEM培地で希釈し、終濃度0.5μL/mLとなるようにDNP−specific IgEを添加した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、培地を除去し、シリガリアン緩衝液100μLにて洗浄を2回行った。次に、被験試料(試料1,試料濃度は下記表1を参照)を添加した同緩衝液10μL及び同緩衝液30μL、又は試料無添加として同緩衝液40μLを各ウェルに添加し、37℃にて10分間静置した。その後、100ng/mLのDNP−BSA溶液10μLを加え、37℃にて15分間静置し、ヘキソサミニダーゼを遊離させた。
その後、96ウェルプレートを氷上に静置することにより遊離を停止した。各ウェルの細胞上清10μLを新たな96ウェルプレートに採取し、各ウェルに1mMのp−NAG(p−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−グルコサミニド)溶液10μLを添加し、37℃で1時間反応させた。
反応終了後、各ウェルに0.1MのNaCO/NaHCO250μLを加え、波長415nm及び650nmにおける吸光度を測定し、415nmにおける吸光度から650nmにおける吸光度を減じた値を補正値とした。また、空試験として、細胞上清10μLと、0.1MのNaCO/NaHCO250μLとの混合液の波長415nm及び650nmにおける吸光度を測定し、補正値を算出した。得られた測定結果から、下記式によりヘキソサミニダーゼ遊離抑制率(%)を算出した。
ヘキソサミニダーゼ遊離抑制率(%)={1−(B−C)/A}×100
式中、Aは「試料無添加での補正値」を表し、Bは「被験試料添加での補正値」を表し、Cは「被験試料添加・p−NAG無添加での補正値」を表す。
結果を表1に示す。
Figure 0005889546
表1に示すように、ヒハツ抽出物(試料1)は、優れたヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を有することが確認された。
〔試験例2〕幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制作用試験
上記ヒハツ抽出物(試料1)について、以下のようにしてSCFmRNA発現上昇抑制作用を試験した。
ヒト正常新生児表皮角化細胞(normal human epidermal keratinocyte,NHEK)を80cmフラスコでヒト正常表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)を用いて37℃、5%CO−95%airの条件下で前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×10cells/mLの細胞密度になるようにEpilife-KG2培地で希釈した後、35mmシャーレ(FALCON社製)に2mLずつ播種し(40×10cells/シャーレ)、37℃、5%CO−95%airの条件下で24時間培養した。
培養後に培地を除去し、HEPES緩衝液1mLを加えてUV−B照射(50mJ/cm)を行い、その後被験試料(試料1,試料濃度は下記表2を参照)を添加したEpilife-KG2培地又は試料無添加のEpilife-KG2培地を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で24時間培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-02501)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、SCF及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR Kit(Perfect Real Time,code No.RR063A)によるリアルタイム2 Step RT-PCR反応により行った。SCFmRNAの発現量は、紫外線未照射・試料無添加、紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHmRNAの値で補正値を求め、さらに紫外線未照射・試料無添加の補正値を100とした時の紫外線照射・試料無添加および紫外線照射・試料添加の補正値を算出した。得られた結果から、下記式によりSCFmRNA発現上昇抑制率(%)を算出した。
SCFmRNA発現上昇抑制率(%)={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
式中Aは「紫外線未照射・試料無添加時の補正値」を表し、Bは「紫外線照射・試料無添加時の補正値」を表し、Cは「紫外線照射・試料添加時の補正値」を表す。
結果を表2に示す。
Figure 0005889546
表2に示すように、ヒハツ抽出物(試料1)は、優れたSCFmRNA発現上昇抑制作用を有することが確認された。
〔試験例3〕過酸化水素に対する細胞障害抑制作用試験
上記ヒハツ抽出物(試料1)について、下記の試験方法により過酸化水素に対する細胞障害抑制作用を試験した。
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.5×10cells/mLの細胞密度になるように5%FBS含有α−MEM培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。
培養後、培地を除去し、被験試料(試料1,試料濃度は下記表3を参照)を添加した1%FBS含有α−MEM培地又は試料無添加の1%FBS含有α−MEM培地を各ウェルに200μLずつ添加し、24時間培養した。培養終了後、各ウェルから培地を除去し、400μLのPBS緩衝液で洗浄し、過酸化水素を溶解したHank’s緩衝液(過酸化水素最終濃度:1mM)又は過酸化水素無添加のHank’s緩衝液を各ウェルに200μL添加し、2時間培養した。
培養後、400μLのPBS緩衝液で洗浄し、終濃度0.05mg/mLで1%FBS含有α−MEM培地に溶解したニュートラルレッド溶液を200μLずつ添加し、2.5時間培養した。培養後、ニュートラルレッド溶液を除去し、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各ウェルに300μLずつ加え、色素を抽出した。得られた抽出液の540nmにおける吸光度を測定した。測定結果から、下記式により過酸化水素障害抑制率(%)を算出した。
過酸化水素障害抑制率(%)={1−(C−A)}/(C−B)}×100
上記式において、Aは「被験試料添加・過酸化水素処理時の吸光度」を表し、Bは「試料無添加・過酸化水素処理時の吸光度」を表し、Cは「試料無添加・過酸化水素無処理時の吸光度」を表す。
上記試験の結果を表3に示す。
Figure 0005889546
表3に示すように、ヒハツ抽出物(試料1)は、優れた過酸化水素障害抑制作用を有することが確認された。
〔試験例4〕グルタチオン産生促進作用試験−1
上記ヒハツ抽出物(試料1)について、以下のようにしてB16メラノーマ細胞に対するグルタチオン産生促進作用を試験した。
B16メラノーマ細胞を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10×10cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有ダルベッコMEM培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。
培養後、培地を除去し、被験試料(試料1,試料濃度は下記表4を参照)を添加した10%FBS含有ダルベッコMEM培地又は試料無添加の10%FBS含有ダルベッコMEM培地を各ウェルに200μL添加し、24時間培養した。培養終了後、各ウェルから培地を除去し、400μLのPBS緩衝液にて洗浄後、150μLのM−PER(PIERCE社製)を使用して細胞を溶解した。
このうちの100μLを使用して総グルタチオンの定量を行った。すなわち、96ウェルプレートに溶解した細胞抽出液100μL、0.1Mのリン酸緩衝液50μL、2mMのNADPH25μL及びグルタチオンレダクターゼ25μL(終濃度17.5unit/mL)を加え37℃で10分間加温した後、10mMの5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオン(和光純薬社製)を使用して作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式によりグルタチオン産生促進率(%)を算出した。
グルタチオン産生促進率(%)=B/A×100
式中、Aは「試料無添加時の細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量(対照)」を表し、Bは「被験試料添加時の細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量」を表す。
結果を表4に示す。
Figure 0005889546
表4に示すように、ヒハツ抽出物(試料1)はB16メラノーマ細胞に対して優れたグルタチオン産生促進作用を有することが確認された。
〔試験例5〕グルタチオン産生促進作用試験−2
上記ヒハツ抽出物(試料1)について、以下のようにして表皮角化細胞に対するグルタチオン産生促進作用を試験した。
ヒト正常新生児表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×10cells/mLの細胞密度になるようにEpiLife-KG2培地で希釈した後、コラーゲンコートした24ウェルプレートに1ウェル当たり500μLずつ播種し、一晩培養した。
培養後、培地を除去し、被験試料(試料1,試料濃度は下記表5を参照)を添加したEpiLife-KG2培地又は試料無添加のEpiLife-KG2培地を各ウェルに500μL添加し、さらに24時間培養した。培養終了後、各ウェルから培地を除去し、1mLのPBS緩衝液にて洗浄後、150μLのM−PER(PIERCE社製)を使用して細胞を溶解した。
このうちの100μLを使用し、上述した試験例4と同様にして総グルタチオンの定量を行い、グルタチオン産生促進率(%)を算出した。
結果を表5に示す。
Figure 0005889546
表5に示すように、ヒハツ抽出物(試料1)は表皮角化細胞に対しても、優れたグルタチオン産生促進作用を有することが確認された。
〔試験例6〕エラスターゼ活性阻害作用試験
上記ヒハツ抽出物(試料1)について、以下のようにしてエラスターゼ活性阻害作用を試験した。
被験試料(試料1,試料濃度は下記表6を参照)を溶解させた0.2mol/LのTris−HCl(pH8.0)緩衝液又は試料無添加の0.2mol/LのTris−HCl(pH8.0)緩衝液50μLと、エラスターゼ溶液(Sigma社製)50μLとを96ウェルプレートにて混合した。その後、0.2mol/LのTris−HCl(pH8.0)緩衝液に0.4514mg/mLとなるよう溶解した基質溶液(SIGMA社製,N−サクシニル−Ala−Ala−Ala−p−ニトロアニリド)100μLを添加し、25℃にて15分間反応させた。反応終了後、分光光度計(BIO-TEK INSTRUMENTS, INC社製)を用いて波長415nmにおける吸光度を測定した。また、同様にして酵素無添加の空試験を行い補正した。得られた結果から、下記式によりエラスターゼ活性阻害率(%)を算出した。
エラスターゼ活性阻害率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
式中、Aは「被験試料添加・酵素添加時の波長415nmにおける吸光度」を表し、Bは「被験試料添加・酵素無添加時の波長415nmにおける吸光度」を表し、Cは「試料無添加・酵素添加時の波長415nmにおける吸光度」を表し、Dは「試料無添加・酵素無添加時の波長415nmにおける吸光度」を表す。
結果を表6に示す。
Figure 0005889546
表6に示すように、ヒハツ抽出物(試料1)は、優れたエラスターゼ活性阻害作用を有することが確認された。
〔試験例7〕IV型コラーゲン産生促進作用試験
上記ヒハツ抽出物(試料1)について、以下のようにしてIV型コラーゲン産生促進作用を試験した。
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×10cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有ダルベッコMEM培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、培地を除去し、被験試料(試料1,試料濃度は下記表7を参照)を添加した0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地又は試料無添加の0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地を各ウェルに150μLずつ添加し、3日間培養した。培養終了後、各ウェルの培地中のIV型コラーゲン量を、モノクローナル抗IV型コラーゲン抗体(マウスIgG,Sigma社製)を用いたELISA法により測定した。得られた結果から、下記式により試料溶液添加時のIV型コラーゲン産生促進率(%)を算出した。
IV型コラーゲン産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「被験試料添加時のIV型コラーゲン量」を、Bは「試料無添加時のIV型コラーゲン量」を示す。
結果を表7に示す。
Figure 0005889546
表7に示すように、ヒハツ抽出物(試料1)は、優れたIV型コラーゲン産生促進作用を有することが確認された。
〔試験例8〕表皮ヒアルロン酸産生促進作用試験
上記ヒハツ抽出物(試料1)について、以下のようにして表皮ヒアルロン酸産生促進作用を試験した。
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10cells/mLの細胞密度になるようにEpilife-KG2培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、24時間培養した。
培養終了後、被験試料(試料1,試料濃度は下記表8を参照)を添加したEpilife-KG2培地又は試料無添加のEpilife-KG2培地を各ウェルに100μLずつ添加し、7日間培養した。培養後、各ウェルの培地中のヒアルロン酸量を、ヒアルロン酸結合タンパク(HABP)を用いたサンドイッチ法により測定した。測定結果から、下記式によりヒアルロン酸産生促進率(%)を算出した。
ヒアルロン酸産生促進率(%)=A/B×100
上記式において、Aは「被験試料添加時のヒアルロン酸量」を表し、Bは「試料無添加時のヒアルロン酸量」を表す。
結果を表8に示す。
Figure 0005889546
表8に示すように、ヒハツ抽出物(試料1)は、優れたヒアルロン酸産生促進作用を有することが確認された。また、ヒハツ抽出物が有するヒアルロン酸産生促進作用は、当該抽出物の濃度に依存することが確認された。
〔試験例9〕プロフィラグリン/フィラグリン産生促進作用試験
上記ヒハツ抽出物(試料1)について、以下のようにしてプロフィラグリン/フィラグリン産生促進作用を試験した。
ヒト正常新生児表皮角化細胞(NHEK)を、75cmのフラスコでヒト正常表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)を用いて37℃、5%CO−95%airの条件下で前培養し、常法により細胞を回収した。得られた細胞を1.5×10cells/mLの細胞密度になるようにEpilife-KG2培地に希釈した後、6ウェルコラーゲンコートプレートに2mLずつ播種して37℃、5%CO−95%airの条件下で3日間培養した。培養後、培地を除去し、0.25%DMSOに溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表9を参照)を添加したEpilife-KG2培地又は試料無添加のEpilife-KG2培地を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で5日間培養した。培養終了後、常法により総タンパク質の調製を行った。
10μg/列に調整したサンプルをSDS−PAGEにより展開し、PVDF膜に転写した。5%スキムミルク含有PBS緩衝液でブロッキングを行った後、抗ヒトフィラグリンモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)、ビオチン標識抗マウスIgG(Amersham Biosciences社製,Whole Ab)及びストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ複合体(CALBIOCHEM社製)を、0.1%Tween20及び0.3%スキムミルク含有PBS緩衝液にて1000倍に希釈して順次反応させ、ECL Western blotting detection reagents(Amersham Biosciences社製)の発光によりプロフィラグリン及びフィラグリンを画像撮影装置(Bio-Rad Laboratories社製,ChemiDoc XRS Plus)を用いて検出した。検出したバンドをImage Lab Software version2.0(Bio-Rad Laboratories社製)にて定量的に測定した。
結果は、試料添加及び無添加で培養した細胞のそれぞれから調製したタンパク質10μg中のプロフィラグリン及びフィラグリンのNet intensity(バンド強度)を合算した値を用いて、試料のプロフィラグリン産生促進作用を評価し、プロフィラグリン産生促進率(%)を下記式に基づいて算出した。
プロフィラグリン/フィラグリン産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「試料添加時のNet intensity(プロフィラグリン及びフィラグリンの合計値)」を表し、Bは「試料無添加時(コントロール)のNet intensity」を表す。
結果を表9に示す。
Figure 0005889546
表9に示すように、ヒハツ抽出物(試料1)は、優れたプロフィラグリン/フィラグリン産生促進作用を有することが確認された。なお、フィラグリンは、生体内でプロフィラグリンの加水分解により産生されるものであることから、プロフィラグリン産生促進作用を有するヒハツ抽出物は、プロフィラグリンの産生を促進し、細胞内におけるプロフィラグリン量を増加させることで、フィラグリン量をも増加させることができ、結果としてフィラグリン産生促進作用を有するものと考えられる。
〔試験例10〕インボルクリン産生促進作用試験
上記ヒハツ抽出物(試料1)について、以下のようにしてインボルクリン産生促進作用を試験した。
ヒト正常新生児表皮角化細胞(NHEK)を、80cmのフラスコでヒト正常表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)を用いて37℃、5%CO−95%airの条件下で前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×10cells/mLの細胞密度になるようにEpilife-KG2培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ播種し、37℃、5%CO−95%airの条件下で一晩培養した。
培養終了後、培地を除去し、被験試料(試料1,試料濃度は下記表10を参照)を添加したEpilife-KG2培地又は試料無添加のEpilife-KG2培地を各ウェルに200μLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で48時間培養した。培養終了後、培地を除去し、プレートに固定された細胞の細胞表面に発現したインボルクリンの量を、モノクローナル抗ヒトインボルクリン抗体(マウスIgG,Sigma社製)を用いたELISA法により測定した。得られた測定結果から、下記式によりインボルクリン産生促進率(%)を算出した。
インボルクリン産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「被験試料添加時の波長405nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加時の波長405nmにおける吸光度」を表す。
上記試験の結果を表10に示す。
Figure 0005889546
表10に示すように、ヒハツ抽出物(試料1)は、優れたインボルクリン産生促進作用を有することが確認された。
本発明のヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、幹細胞増殖因子mRNA発現上昇抑制剤、過酸化水素細胞障害の予防・改善剤、グルタチオン産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、プロフィラグリン産生促進剤、フィラグリン産生促進剤及びインボルクリン産生促進剤は、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、肌荒れに伴う各種皮膚疾患等の炎症性疾患;シミ、ソバカス、皮膚色素沈着症;喫煙等が原因の肺疾患、白内障、各種動脈硬化症(虚血性心疾患、心筋梗塞、脳虚血、脳梗塞等)、加齢に伴う老化現象、皮膚におけるシミ等の色素沈着、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病等)、癌化等の酸化ストレスに起因する疾患;荒れ、しわ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下及び保湿機能の低下等の皮膚の老化症状の予防、治療又は改善に大きく貢献できる。

Claims (1)

  1. ヒハツの果穂からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするインボルクリン産生促進剤(抗皮膚老化用途、アトピー性皮膚炎の予防、治療または改善用途、および飲食品の用途を除く)。
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