JP7215761B2 - 経口組成物、皮膚化粧料および頭髪化粧料 - Google Patents

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Description

本発明は、天然物由来の化合物を有効成分とする、抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤および肝機能向上剤に関するものである。さらに本発明は、当該化合物を配合した経口組成物、皮膚化粧料および頭髪化粧料にも関する。
近年、飽食や運動不足等の生活習慣が原因となって体脂肪が増加し、肥満が増えている。このような肥満の増加は、人間ばかりでなく、ペットや家畜においても見られる。肥満は、高脂血症や動脈硬化等のメタボリックシンドロームの原因になるため、美容の面で問題となるばかりでなく、健康の面でも大きな問題となる。
ここで、サイクリックAMP(cAMP)は、生体内の脂肪分解に関与することが知られている。cAMPは生体内に存在するリパーゼを活性化し、活性化されたリパーゼによって脂肪が脂肪酸とグリセロールとに分解される。しかし、cAMPホスホジエステラーゼが活性化されるとcAMPの分解が誘発され、リパーゼの活性化が阻害される。そのため、cAMPホスホジエステラーゼの活性を阻害することにより細胞内におけるcAMPが増量し、脂肪の分解を促進することができるものと考えられる。
また、炎症反応を引き起こす血小板凝集は、血小板中のサイクリックAMP(cAMP)の濃度と関係があり、cAMPホスホジエステラーゼによってcAMPが分解されてcAMPの濃度が低下すると、血小板は凝集しやすくなることが知られている。従って、cAMPホスホジエステラーゼの作用を抑制してcAMP濃度の低下を防止すれば、血小板凝集を防止でき、これによりアレルギー性疾患や炎症性疾患等を予防、治療又は改善できると考えられる。cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有するものとして、ツベイモシドI(特許文献1参照)等が知られている。
ジペプチジルペプチダーゼIV(以下、「DPP IV」ともいう。)は、セリンプロテアーゼの一つであって、N末端から2番目のプロリン又はアラニンを認識し、そのC末端側を切断する酵素活性を有する。DPP IVは、腎臓、肝臓、腸管、胎盤等の組織の上皮及び内皮細胞、並びにT細胞の細胞表面に発現しており、その酵素活性等を介して様々な生理現象に関与すると考えられている。
DPP IVの基質として、インクレチンと呼ばれるホルモンが挙げられる。インクレチンは、栄養素の刺激により腸管から分泌され、血糖依存的に膵β細胞からインスリン分泌を促進するホルモンの総称であり、GLP-1やGIP等が知られている。これらインクレチンは、血糖依存的なインスリン分泌の促進だけでなく、α細胞からのグルカゴン分泌の抑制、血圧の低下、胃排出の抑制、さらには視床下部に作用しての摂食抑制等の作用を有している(非特許文献1参照)。しかし、インクレチンはDPP IVにより分解されるため、例えばGLP-1の生体内における半減期は1.5分程度であることが知られている。そのため、DPP IVの酵素活性を阻害することができれば、インクレチンの生体内における半減期を延長することができ、これにより、前述したインクレチンの作用を通じ、2型糖尿病、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性等のメタボリックシンドロームの治療に有用であると期待されている。
また、DPP IVはT細胞活性化マーカーの一つであるCD26と同一であり、多くの免疫調節ペプチドを基質とし、その活性を制御することが知られている。そのため、DPP IVの活性を制御することにより、関節リウマチ等の自己免疫疾患や移植による拒絶反応等の免疫反応を制御し得ると考えられる。さらに、DPP IVは、いくつかの神経ペプチドや成長ホルモンの代謝;癌における浸潤、転移、血管新生等;HIVのリンパ球への感染等への関与が知られている。そのため、DPP IVの活性を阻害することにより、疼痛、神経変性疾患及び神経精神疾患等の神経障害(例えば坐骨神経痛、アルツハイマー病、うつ病等);成長ホルモン欠損症及び成長ホルモンが治療に使用される疾患;癌(例えばT-細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、甲状腺癌、基底細胞癌、乳癌等);HIV感染症(AIDS)等の疾患を治療することができると考えられる。
皮膚においてメラニンは、紫外線から生体を保護する役目も果たしているが、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化やシミの原因となる。一般にメラニンは、色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、ついで5,6-ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成されるものとされている。したがって、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)、シミ、ソバカス等を予防、治療又は改善するためには、メラニンの産生に関与するチロシナーゼの活性を阻害すること、又はメラニンの産生を抑制することが考えられる。
従来、皮膚色素沈着症、シミ、ソバカス等の予防、治療又は改善には、ハイドロキノン等の化学合成品を有効成分とする美白剤を外用する処置が行われてきた。しかしながら、ハイドロキノン等の化学合成品は、皮膚刺激、アレルギー等の副作用のおそれがある。そこで、安全性の高い天然原料を有効成分とする美白剤の開発が望まれており、チロシナーゼ活性阻害作用を有するものとしては、例えば、ヤナギタデ抽出物(特許文献2参照)等が知られている。また、メラニン産生抑制作用を有するものとしては、例えば、サウスウレア(Saussurea)属植物からの抽出物(特許文献3参照)等が知られている。
皮膚の表皮および真皮は、表皮細胞、線維芽細胞ならびにこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等の細胞外マトリックスにより構成されている。若い皮膚においては線維芽細胞の増殖は活発であり、線維芽細胞、細胞外マトリックス成分等の皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲン、エラスチンおよびヒアルロン酸の産生量が減少するとともに、分解や変質を引き起こす。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、角質の異常剥離が生じるため、肌は張りや艶を失い、肌荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。このように、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの変化、弾力性の低下等には、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等のマトリックス成分の減少・変性等が関与している。したがって、コラーゲン、エラスチンまたはヒアルロン酸の産生を促進することは、皮膚の老化を予防、治療または改善する上で重要である。
ここで、これらの細胞外マトリックス成分のうち、コラーゲンは、皮膚組織の構造および機械的強度の維持に寄与する繊維状タンパク質である。コラーゲンの産生を促進することができれば、しわ、たるみが起こりにくくなり、きめが粗くなり、張りが消失し、弾力性が低下する等といった皮膚の老化症状を予防、治療または改善することができると考えられる。
また、コラーゲンは、骨、腱、靱帯、角膜、血管等にも多く存在し、加齢等によるコラーゲン産生の低下が、骨粗鬆症等の原因になることが知られている。さらに、創傷の治癒過程において、コラーゲンの産生量が亢進し、線維芽細胞等の足場となることで、創傷の治癒を促進することが知られている。そのため、コラーゲンの産生を促進することは、骨粗鬆症等の予防又は治療、創傷治癒の促進といった観点からも重要である。コラーゲン産生促進作用を有するものとしては、例えば、クスノハガシワからの抽出物(特許文献4参照)等が知られている。
一方、前述した細胞外マトリックス成分のうち、エラスチンは、皮膚組織に弾力性を与える線維である。エラスチンの産生を促進することができれば、しわ、たるみが起こりにくくなり、張りの消失、弾力性の低下等の皮膚の老化症状を予防、治療または改善できると考えられる。
また、エラスチンは、エラスターゼという酵素により分解されるところ、エラスターゼは紫外線の照射により活性化され、これによりエラスチンの分解が加速する。そのため、エラスターゼの活性を阻害することによりエラスチンの分解が抑制され、張りの消失、弾力性の低下等の皮膚の老化症状を予防・改善できると考えられる。
さらに、エラスチンは皮膚組織の他に、肺や血管等、身体において弾力性を要する組織に広く発現している。加齢に伴ってこれらの組織から正常なエラスチンが減少すると、肺や血管等において弾力性が低下し、肺気腫等の肺疾患や高血圧、動脈瘤等の血管性疾患の原因となることが知られている。また、喫煙等によって生体内でのエラスターゼの活性が亢進することが知られており、肺胞壁を破壊して肺気腫等を招くおそれがあると考えられる。さらに、エラスターゼの活性の亢進により肺毛細血管が破壊され、肺水腫等の急性呼吸促進症候群(ARDS)を招くおそれがあると考えられる。
そのため、エラスチンの産生を促進することができれば、肺や血管等における弾力性の低下が起こりにくくなり、肺気腫等の肺疾患や高血圧、動脈瘤等の血管性疾患等を予防・治療できると考えられる。また、生体内でのエラスターゼの活性を阻害することができれば、肺気腫、肺水腫等の呼吸器系疾患を予防・治療することができるものと考えられる。
エラスチン産生促進作用を有するものとして、例えば、グミ科ヒッポファエ属に属する植物からの抽出物が知られている(特許文献5参照)。また、エラスターゼ活性阻害作用を有するものとして、例えば、スターフルーツ果実抽出物等が知られている(特許文献6参照)。
他方、前述の細胞外マトリックス成分のうち、ヒアルロン酸は、ムコ多糖の一種であり、細胞間の間隙に充填されることにより細胞を保持する機能を有し、さらに細胞間隙への水分の保持、組織への潤滑性や柔軟性の付与、機械的障害等の外力に対する抵抗等、数多くの機能を有している。ヒアルロン酸の産生を促進することができれば、皮膚の荒れ、しわ、くすみ、きめの変化、弾力性の低下及び保湿機能の低下等といった皮膚の老化症状を予防、治療または改善できると考えられる。また、表皮ヒアルロン酸の合成促進に関与するヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)の発現を促進することで、皮膚の老化を予防、治療または改善することができるものと考えられる。
また、ヒアルロン酸は、皮膚組織の他にも、軟骨、関節液、臍帯、眼硝子体、その他の結合組織に存在する。このうち、関節液に含まれるヒアルロン酸は、関節軟骨の表面を覆い、ヒアルロン酸が有する潤滑機能、軟骨に対する被覆・保護機能等により、関節の円滑な作動に役立っている。一方、慢性関節リウマチ等の関節炎において、関節液におけるヒアルロン酸の濃度が低下していることが知られている。したがって、ヒアルロン酸の産生を促進することで、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、化膿性関節炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、又は骨関節炎等の関節炎を予防又は治療することができると考えられる。さらに、創傷又は熱傷の治癒過程において、肉芽(組織)が形成するが、肉芽中にヒアルロン酸が著しく増加することが知られている。そのため、ヒアルロン酸の産生を促進することで、創傷又は熱傷の治癒を促進することができると考えられる。ヒアルロン酸産生促進作用を有するものとしては、クスノハガシワからの抽出物(前述した特許文献4参照)等が知られている。また、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)発現促進作用を有するものとして、甘草葉部抽出物(特許文献7参照)等が知られている。
一方、皮膚を構成する表皮と真皮との境界部には、基底膜が存在する。基底膜は、表皮と真皮とを繋ぎ止めるだけでなく、皮膚機能の維持に重要な役割を果たしている(非特許文献2参照)。基底膜の主要骨格は、IV型コラーゲンからなる網目構造をしている。基底膜と表皮との境界に存在し、基底膜と表皮とを繋ぎとめているのがラミニン-332を主成分とする各種糖蛋白質で、かかるラミニン-332は、表皮に存在する表皮角化細胞より産生される。若い皮膚においては、基底膜の働きにより表皮、真皮の相互作用が恒常性を保つことで水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、基底膜の主要構成成分であるラミニン-332は分解・変質を起こし、基底膜構造が破壊される(非特許文献3参照)。その結果、皮膚は保湿機能や弾力性が低下し、角質は異常剥離を始めるから、肌は張りや艶を失い、荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。このように、皮膚の老化に伴う変化、即ち、シワ、くすみ、きめの変化、弾力性の低下等には、基底膜成分の減少、基底膜の構造変化が関与しており、ラミニン-332の産生を促進することにより、皮膚の老化症状を予防・改善することができると考えられる。
ラミニンは、α鎖、β鎖及びγ鎖の種々の組み合わせからなり、現在のところ15種類(ラミニン1~ラミニン15)が知られている。このうちラミニン-332(α3β3γ2)は、皮膚、消化器、腎臓、肺等の上皮組織の基底膜に多量に存在する。ラミニン-332の各鎖をコードする遺伝子の先天的な異常に起因する遺伝子疾患(致死型先天性表皮水疱症,Herlitz junctional epidermolysis bullosa)においては、全身の表皮が剥離する致死性の症状を示すことが知られている。そして、ラミニン-332は、他の細胞外マトリックス分子と比べ、強度に細胞を接着させ(細胞接着活性が高く)、細胞運動を強く促進する(細胞運動活性が高い)ことが知られている。
このように、ラミニン-332は、細胞運動活性が高いことから、損傷皮膚中の細胞移動を促進し、損傷治癒を促すことが知られている(特許文献8参照)。すなわち、ラミニン-332の産生を促進することは、基底膜の構造が破壊されるような皮膚損傷の治癒を促す上で重要である。
表皮は、外部刺激を緩和し、水分等の体内成分の逸失を制御する働きをしており、最下層である基底層から始まって、有棘層、顆粒層、角質層へと連なる4層構造から構成されている。各層に存在する大部分の細胞は、基底層から分化した角化細胞である。基底層で分裂、増殖した角化細胞は、有棘層、顆粒層を通過しながら分化し角質細胞となって、強固な架橋結合をもったケラチン蛋白線維で構成された角質層を構成し、最終的には垢として角質層から脱落する。
角質層は皮膚の最外殻に存在しており、外界からの刺激に対する物理的なバリアとしての役割を果たしている。皮膚ではこのバリア機能を持たせるため、角化細胞が基底層で産生されてから垢となって剥がれ落ちるまでのサイクル(角化)を通常4週間の周期で繰り返し、表皮の新陳代謝を行っている。しかしながら、この角質層も加齢によって新陳代謝機能が衰え、こじわ、くすみ、色素沈着、肌荒れ等の皮膚トラブルを発生することになる。そのため、角化細胞の増殖を促進し、肌の新陳代謝機能を回復させることにより、こじわ、くすみ、色素沈着等の皮膚の老化を改善できるものと考えられる。従来、表皮角化細胞増殖促進作用を有するものとして、土貝母抽出物(特許文献9参照)等が知られている。
また、細胞の増殖を促進するためには、細胞分裂に必要なエネルギーを細胞に補給することが重要である。生体のエネルギー物質としては、ATPが挙げられ、このATPの産生量を上げることにより、細胞内のエネルギー代謝が促進され、細胞増殖につながると考えられる。しかし、上記のように、機能の低下した細胞や老化した細胞では、エネルギー物質であるATP量が正常細胞より減少することが報告されている(特許文献10参照)。
そのため、細胞におけるATPの産生を促進することができれば、その細胞を活性化して細胞分裂を促し、その細胞の増殖能を回復することができると考えられる。特に、皮膚の細胞においてATPの産生を促進することは、皮膚のターンオーバーを促進し、肌の新陳代謝機能を回復させ、シワ、くすみ、きめの消失等の皮膚の老化を予防・改善する上で重要である。従来、ATP産生促進作用を有するものとして、グリコーゲン(特許文献10参照)、モモ等の天然物からの抽出物(特許文献11参照)等が知られている。
グルタチオンは、グルタミン酸、システイン及びグリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドであり、細胞内の主要なシステイン残基を有する化合物である。細胞内におけるグルタチオンは、ラジカルの捕捉、酸化還元による細胞機能の調節、異物代謝、各種酵素のSH供与体としての機能を果たすものであり、活性酸素等に対する抗酸化成分としても知られている。その作用発現は、システイン残基に由来すると考えられている。しかしながら、過剰な酸化ストレスや異物の付加、加齢などにより、細胞内のグルタチオン量が欠乏又は低下することが報告されており、このことが細胞の酸化ストレスに対する防御能を低下させ、細胞のDNA及びタンパク質等の構成成分にダメージを与える一因であると考えられている。
このような、細胞内のグルタチオン量の低下又は欠乏が病態と関連することが知られている疾患として、皮膚におけるシミの生成等の酸化ストレスが原因となって誘発される疾患群のほか、肝障害(アルコールの多飲、又は重金属や化学物質等の異物の摂取が原因となる)等が知られている。すなわち、グルタチオンの産生を促進することは、細胞の酸化ストレスに対する防御能を高め、細胞内のグルタチオン量が低下又は欠乏することに起因する上記の疾患群を予防・治療することができると考えられる。グルタチオン産生促進作用を有するものとして、リクイリチゲニン(特許文献12参照)等が知られている。
また、表皮を構成する基底層、有棘層、顆粒層、および角質層のうち、特に、顆粒層においては、細胞膜が肥厚して肥厚細胞膜を形成するとともに、トランスグルタミナーゼ-1の作用により、蛋白分子間がグルタミル-リジン架橋され、強靭なケラチン蛋白線維が形成される。さらに、その一部にセラミド等が共有結合し、疎水的な構造をとることで、細胞間脂質のラメラ構造の土台を供給し、角質バリア機能の基礎が形成される。
しかし、加齢とともに表皮におけるトランスグルタミナーゼ-1の産生量が減少すると、角質バリア機能及び皮膚の保湿機能が低下するため、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状を呈したり、乾燥性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬等)を発症したりするようになる。そのため、表皮におけるトランスグルタミナーゼ-1の産生を促進することにより、皮膚の老化症状や乾燥性皮膚疾患等を予防、治療又は改善することができると考えられる。トランスグルタミナーゼ-1発現促進作用を有するものとして、湖南甜茶からの抽出物(特許文献13参照)等が知られている。
セラミドは、表皮細胞の角化の過程においてセリンとパルミトイル-CoAとを基に、セラミド合成の律速酵素として知られるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)をはじめとする酵素の働きにより生成される。セラミドは、皮膚最外層を覆う角質細胞間脂質の主成分として特異的に存在し、皮膚本来が持つ生体と外界とのバリア膜としての機能維持に重要な役割を果たしている。
角質層の構造は、レンガとモルタルとに例えられ、15層ほどに積み重なった角質細胞を細胞間脂質が繋ぎ止める形で強固なバリア膜を形成している。角質細胞は、アミノ酸を主成分とする天然保湿因子を細胞内に含有することによって水分を保持し、一方、角質細胞間脂質は、約50%のセラミドを主成分とし、コレステロール、脂肪酸等の両親媒性脂質から構成されており、疎水性部分と親水性部分とが交互に繰り返される層板構造、いわゆるラメラ構造を特徴としている。
様々な内的・外的要因による皮膚のバリア機能の低下は、経表皮水分蒸散量を増加させ、皮膚のかさつき、落屑、掻痒感等を惹き起こし、いわゆる乾燥肌に陥る。また、皮膚のバリア機能の低下は、皮膚の炎症を増大させ、外界からの様々な刺激に対する防御機能が低下するという悪循環に陥る。最近の研究において、加齢により、又はバリア障害として知られるアトピー性皮膚炎患者において、角質セラミド成分(いわゆる細胞間脂質)の減少や組成変化が報告されており(非特許文献4参照)、皮膚のバリア機能の維持、改善にセラミドが重要であることが広く知られるようになっている。皮膚のバリア機能を改善する方法として、セラミドを外部から補う方法(非特許文献5参照)や皮膚内部においてセラミド産生能を高める方法(非特許文献6参照)等が知られている。
皮膚細胞では、水チャンネルとして知られるアクアポリンが、細胞膜上に発現して、細胞間隙の水をはじめとする低分子物質を細胞内へ取り込む役割を担っていることが知られている。ヒトでは、13種類のアクアポリン(AQP0~AQP12)の存在が知られている。表皮細胞においては、主としてAQP3が存在しており、水に加えて、水分保持作用に関与するグリセロールや尿素等の低分子化合物をも取り込む役割を担っていると考えられている。
しかしながら、AQP3は加齢とともに減少し、このことが水分保持機能の低下の一因であることが示唆されているため、AQP3の発現を促進することにより、加齢による水分保持機能やバリア機能等を制御することが可能であると考えられる(非特許文献7参照)。AQP3発現促進作用を有するものとして、例えば、スターフルーツの葉部からの抽出物(特許文献14参照)等が知られている。
フィラグリンは、皮膚の構成成分であり、皮膚におけるバリア機能に関与し、アレルゲン、毒素、感染性生物の侵入を防ぐ機能を有していると考えられている。フィラグリンの遺伝子の変異等による機能の低下は、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患の発症リスクと関連し、さらに重篤な場合は尋常性魚鱗癬等の皮膚疾患につながることが知られている(非特許文献8参照)。
一方、天然保湿因子(Natural Moisturizing Factors;NMF)の主成分であるアミノ酸は、ケラトヒアリン顆粒に由来するフィラグリンが角質層内で分解されて産生される。このフィラグリンは、角質層直下の顆粒層に存在する表皮ケラチノサイトでプロフィラグリンとして発現する。その後、直ちにリン酸化し、ケラトヒアリン顆粒に蓄積され、脱リン酸、加水分解を経てフィラグリンへと分解され、角質層に移行して、ケラチンフィラメントの凝集効率を高め、角質細胞の内部構築に関与することが知られている(非特許文献9参照)。近年、このフィラグリンが、皮膚の水分保持に非常に重要かつ必要不可欠であること、および乾燥等の条件によってフィラグリンの合成力が低下し、角質層におけるアミノ酸量が低下することが知られている(非特許文献10参照)。
したがって、表皮ケラチノサイトにおいて、フィラグリン(プロフィラグリン)の発現を促進することにより、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患を予防・治療または改善できると考えられる。また、フィラグリンの発現を促進し、それにより角質層内のアミノ酸量を増大させることで、角質層の水分環境を本質的に改善できることが期待される。フィラグリン発現促進作用を有するものとして、ガイヨウ抽出物(特許文献15参照)等が知られている。
従来は、皮膚のバリア機能は角質層のみが担っていると考えられていたが、近年、表皮顆粒層に存在するタイトジャンクション(以下「TJ」と表記することがある。)の構成タンパク質を遺伝子レベルで欠損させると皮膚のバリア機能が崩壊することが見いだされ、TJも皮膚のバリア機能に重要な役割を担うと考えられるようになっている(非特許文献11参照)。TJは、隣接する細胞同士を密着させるだけでなく、細胞と細胞との隙間をシールすることで物質の透過を制御する細胞間接着構造である。TJを構成しているのは、細胞膜タンパク質であるクローディンやオクルディン、裏打ちタンパク質であるZO-1やZO-2等であり、これらのタンパク質はTJストランドの骨格を構成し、TJのバリア機能を制御すると考えられている(非特許文献12参照)。ここで、クローディンやオクルディンの発現が何らかの原因で減少した場合、TJの構造的な破壊が起こり、物質の透過バリアとして機能しなくなることによって、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎や各種感染症などの皮膚症状の一因になると考えられる。
そのため、表皮においてクローディンやオクルディンの産生を促進することにより表皮角化細胞のTJ形成を促すことで、皮膚のバリア機能および水分保持機能を高め、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎や各種感染症などの皮膚症状を予防または改善することができると考えられる。クローディン産生促進作用およびオクルディン産生促進作用を有するものとして、アスパラサスリネアリス抽出物(特許文献16)等が知られている。
糖質は、ヒトを初めとする生物においてエネルギー源として非常に重要である。しかし一方で、糖質はタンパク質と糖化反応(グリケーション)を起こすことが知られている。糖化反応は、糖質のカルボニル基とタンパク質等のアミノ基との非酵素的な反応を第一段階とし、シッフ塩基からアマドリ化合物を経て最終的に最終糖化産物(以下、「AGEs」ということがある。)を形成する一連の反応である。糖化反応により、タンパク質が非酵素的に糖により修飾されるため、これにより当該タンパク質の変性やタンパク質間の架橋等が起こり、その結果タンパク質の機能を低下させる。
糖化反応は、コラーゲン等の細胞外マトリックス構成タンパク質を修飾・構造変化させることにより直接的な障害を引き起こすほか、糖化タンパク質をリガンドとする受容体により認識されることで細胞応答を引き起こす等の影響をもたらす。特に、血液中のグルコース濃度が高い糖尿病の患者にとって、糖化反応の影響は深刻である。糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症等の糖尿病合併症は、タンパク質の糖化がその一因であることが知られている。また、血管壁における糖化反応は、内皮細胞の障害や変性タンパク質の蓄積などにより、動脈硬化の進展をもたらすことが知られている。さらに、コラーゲンを初めとする細胞外マトリックス成分は、骨や皮膚などの組織における乾燥重量の過半を占めている。そのため、例えば、コラーゲンが糖化され異常に架橋された状態となると、骨や軟骨組織においては骨粗鬆症や変形性関節症等を発症し、皮膚においては弾力性の低下、黄色化等によるくすみ等を生じる。さらに、異常に架橋したコラーゲン等はコラゲナーゼ等による分解を受けにくくなるため、コラゲナーゼ等の発現が誘導され、正常なコラーゲンまで分解されてしまうなどの問題が生じてしまう。
このため、糖化反応を何らかの形で抑制する、例えば、AGEsの形成を抑制したり、またAGEsの分解を促進したりすることができれば、前述した疾患、すなわち糖尿病合併症、動脈硬化、骨粗鬆症、変形性関節症などの予防又は治療に有用であると期待される。さらには、皮膚の弾力性低下やくすみ等の予防又は改善にも効果があるものと期待される。AGEs形成抑制作用やAGEs分解促進作用を有するものとして、キンモクセイ抽出物(特許文献17参照)等が知られている。
多くのステロイドホルモンは産生臓器から分泌された分子型で受容体と結合してその作用を発現するが、アンドロゲンと総称される男性ホルモンの場合、例えば、テストステロンは標的臓器の細胞内に入ってテストステロン5α-レダクターゼにより5α-ジヒドロテストステロン(5α-DHT)に還元されてから受容体と結合し、アンドロゲンとしての作用を発現する。
アンドロゲンは重要なホルモンであるが、それが過度に作用すると、男性型脱毛症、多毛症、脂漏症、座瘡(ニキビなど)、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等、さまざまな好ましくない症状を誘発する。そこで、従来から、これらの各種症状を改善するために過剰のアンドロゲンの作用を抑制する方法、具体的には、テストステロンを活性型5α-DHTに還元するテストステロン5α-レダクターゼの作用を阻害することにより、活性な5α-DHTが生じるのを抑制する方法が知られている。これまでに、テストステロン5α-レダクターゼ阻害作用を有するものとして、例えば、東紫蘇からの抽出物(特許文献18参照)等が知られている。
毛髪は、成長期、退行期及び休止期からなる周期的なヘアサイクル(毛周期)に従って成長及び脱落を繰り返している。このヘアサイクルのうち、休止期から成長期にかけての新たな毛包が形成されるステージが、発毛に最も重要であると考えられており、このステージにおける毛包上皮系細胞の増殖・分化に重要な役割を果たしているのが、毛乳頭細胞であると考えられている。毛乳頭細胞は、毛根近傍にある外毛根鞘細胞とマトリックス細胞とからなる毛包上皮系細胞の内側にあって、基底膜に包まれている毛根の根幹部分に位置する細胞であり、毛包上皮系細胞に働きかけてその増殖を促進する等、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成において重要な役割を担っている(非特許文献13参照)。
このように、毛乳頭細胞は、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成において重要な役割を果たしており、毛乳頭細胞の増殖を促進することで、脱毛症を予防・改善することができると考えられる。これまでに、毛乳頭細胞増殖促進作用を有するものとしては、例えば、ワイルドタイム抽出物(特許文献19参照)等が知られている。
炎症性疾患、例えば、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、アトピー性皮膚炎、その他肌荒れを伴う各種皮膚炎症性疾患、関節リウマチ、変形性関節症、喘息等の原因及び発症機構は、多種多様である。その原因として、主に一酸化窒素(NO)の過剰な産生によるもの、ヒスタミンの遊離によるもの、ヒアルロニダーゼの活性の亢進によるもの、プロスタグランジンE(PGE)の産生によるものなどが知られている。
一酸化窒素(NO)は、大気汚染、酸性雨等の要因となる窒素酸化物であるが、近年、この一酸化窒素が、血管内皮由来弛緩因子(EDRF)、神経伝達物質、生体防御における微生物・腫瘍細胞の障害因子等、生体内で多彩な機能を示す生理活性物質であることが見出されている。生体防御においては、特にマクロファージから産生される一酸化窒素が、細菌やウイルスの感染を防御している。
しかし、一酸化窒素が大量に生合成されると、生体にとって無毒ではなく、自己組織の破壊を引き起こし、炎症の悪化、リウマチ、糖尿病等の病態の原因となっている。また、大量に生合成された一酸化窒素が血管平滑筋の弛緩と過剰な透過性の増大をもたらし、著しい血圧の低下によってエンドトキシン・ショックを引き起こすことも知られている。
したがって、炎症性疾患においては、一酸化窒素の過剰な産生を抑制することが重要となる。一酸化窒素の産生抑制作用を有するものとして、例えば、唐独活、タラ根皮、和続断、車前子、遠子、茜草根、半枝連、槐花、花椒(非特許文献14参照)、ハイドロコタイル属に属する植物からの抽出物(特許文献20参照)、マルツロシルアルギニン(特許文献21参照)等が知られている。
ヒスタミン遊離は、肥満細胞内のヒスタミンが細胞外に遊離する現象であり、遊離されたヒスタミンが炎症反応を引き起こす。そのため、ヒスタミン遊離を阻害又は抑制する物質により、アレルギー性疾患及び炎症性疾患を予防又は治療する試みがなされている。しかし、ヒスタミンの遊離を直接的に評価することは困難であり、ヒスタミンの遊離と同時に遊離されることが確認されているヘキソサミニダーゼの遊離を指標にヒスタミンの遊離を評価することができる。したがって、ヘキソサミニダーゼの遊離を抑制することにより、同時にヒスタミンの遊離も抑制でき、これにより炎症性疾患等の予防、治療又は改善に効果があるものと考えられる。
また、ヒスタミンは局所伝達物質として細胞間の情報伝達を仲介しており、消化器官においては胃酸分泌を亢進し、中枢神経系における神経伝達物質として機能し、覚醒状態の維持に寄与することが知られている。ここで、ヒスタミン遊離が過剰となると、消化器官においては胃酸過多による潰瘍の原因となり、中枢神経系においては睡眠障害の一因となる。前述したように、ヘキソサミニダーゼの遊離を抑制することにより、同時にヒスタミンの遊離も抑制できることから、これにより、胃酸過多を原因とする胃潰瘍、睡眠障害等を予防、治療又は改善できると考えられる。ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を有するものとして、例えば、藤茶からの抽出物(特許文献22参照)等が知られている。
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸の加水分解酵素である。体組織への親和性を保つヒアルロン酸塩は、含水系の中では紫外線、酸素等によって分解され、分子量の低下に伴って保水効果も減少する。また、ヒアルロン酸は、生体内において細胞間組織として存在し、血管透過性にも関与している。さらに、ヒアルロニダーゼは、肥満細胞中に存在するが、その活性化により起こる脱顆粒により遊離され、炎症系ケミカルメディエーターとして作用する。したがって、ヒアルロニダーゼの活性を阻害することで、保湿の強化及び炎症の予防・軽減が期待される。ヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有するものとして、例えば、オスベッキア属植物からの抽出物(特許文献23参照)等が知られている。
炎症は、発赤、浮腫、発熱、痛み、痒み、機能障害等の症状を示す複雑な反応である。例えば、皮膚においては、紫外線が曝露されたり、刺激性物質と接触したりすると、皮膚内で炎症性サイトカイン等が生成され、皮膚炎症が引き起こされる。その結果、皮膚組織がダメージを受け、肌荒れ、発赤、浮腫、色素沈着等の諸症状が生じるようになる。
炎症性サイトカインの一つとして、プロスタグランジンE(PGE)が挙げられる。PGEは、皮膚においては例えば角化細胞(ケラチノサイト)等で産生され、皮膚炎症を誘発する原因となる。この炎症時におけるプロスタグランジンの産生には、主として誘導型のシクロオキシゲナーゼであるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)が関与することが明らかとなっている。このため、皮膚炎症を治療または予防する方法として、角化細胞でのPGEの産生を抑制し、あるいはCOX-2の活性を阻害することが考えられる。角化細胞に対しPGE産生抑制作用を有する成分として、ペンタエリスリトール等が知られている(特許文献24参照)。
肝臓は、代謝の中心的な役割を担う生命維持に不可欠の臓器であり、その主な機能だけでも、糖・たんぱく質・脂質・ホルモンの代謝、有害物質の解毒、胆汁の生成、血液の貯蔵などが挙げられる。肝臓は障害を受けても症状が現れにくい臓器であるが、それでも飲酒、栄養過多、薬剤の乱用、肝炎ウイルス等により肝機能が障害を受けると、疲労感、倦怠感、食欲不振等を示し、さらには黄胆等を呈する場合がある。そして、肝機能障害が進行すると、肝炎、肝硬変等の生活習慣病につながるおそれがあり、肝機能を向上させること、障害から保護することは、健康な生活を維持するうえで極めて重要である。
肝臓を保護する生体内成分として、グルタチオンが知られている。グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドであり、細胞内の主要なシステイン残基を有する化合物である。グルタチオンは、主に肝臓で産生されて全身に供給され、細胞内においてラジカルの捕捉、酸化還元による細胞機能の調節、各種酵素のSH供与体等としての役割のほか、特に肝臓においては解毒機構に関与し、肝機能を保護することが知られている。肝臓のグルタチオンは、飲酒によりエタノールを代謝する過程、あるいは薬剤を代謝・解毒する過程等において大量に消費され、肝臓グルタチオン量が低下すると、急性または慢性アルコール性肝炎、薬剤性肝炎等の肝機能障害の原因となるほか、全身のグルタチオン量が減少し、白内障、パーキンソン病、皮膚におけるシミの生成等、多様な症状の原因となることが知られている。
したがって、肝臓(肝細胞)におけるグルタチオンの産生を促進することができれば、肝機能を向上させ、またグルタチオン減少に起因した各種障害の予防、治療または改善が期待できると考えられる。肝細胞においてグルタチオン産生促進作用を有するものとして、リクイリチン(前述した特許文献11参照)等が知られている。
肝機能を向上させる成分として、アデノシン三リン酸(ATP)が知られている。ATPは、ブドウ糖や脂肪の代謝により産生され、エネルギー源として利用される。肝臓においては、エタノールや薬剤の代謝・解毒等、肝臓で行われる多くの化学反応におけるエネルギー源としてATPが利用されており、ATPの産生量が低下すると、これらの代謝・解毒等の効率が低下するほか、労働や運動等の活動に必要なエネルギーが不足し、その結果として疲労を招くと考えられている。
そのため、肝臓においてATPの産生を促進することができれば、エタノール摂取に起因した諸症状(例えば、二日酔い等)の予防または改善、薬剤に起因した肝障害の予防、治療または改善のほか、疲労回復を促進することができると考えられる。肝細胞においてATP産生促進作用を有するものとして、ヒハツ抽出物(特許文献25参照)等が知られている。
特開2006-056855号公報 特開2004-083488号公報 特開2002-201122号公報 特開2003-146837号公報 特開2005-022993号公報 特開2003-300893号公報 特開2010-090035号公報 特開2006-063033号公報 特開2006-056854号公報 特開2003-321373号公報 特開2009-256272号公報 特開2009-269889号公報 特開2007-099698号公報 特開2009-191039号公報 特開2012-219047号公報 特開2009-256244号公報 特開2013-023487号公報 特開2010-184915号公報 特開2006-219407号公報 特開2006-28036号公報 特開2010-90076号公報 特開2003-012532号公報 特開2003-055242号公報 特開2015-214533号公報 特開2011-184381号公報
「日本薬理学雑誌」,2005年,Vol.125,No.6,p.379-384 J. Cell Biol.,1992年,Vol.119,No.3,p.695‐703 J. Invest. Dermatol.,1979年,Vol.73,No.1,p.59‐66 J. Dermatol.,1993年,Vol.20,No.1,p.1-6 「フレグランスジャーナル」,2004年,Vol.32,No.11,p.23-32 Br. J. Dermatol.,2000年,Vol.143,Issue 3,p.524-531 「フレグランスジャーナル」,2006年,Vol.34,No.10,p.19-23 "Nat Genet.",2006年,Vol.38,No.4,p.441-446 「フレグランスジャーナル臨時増刊」,2000年,Vol.17,p.14-19 "Arch. Dermatol. Res.",1996年,Vol.288,p.442-446 J. Cell Biol.,2002年,vol.156,pp.1099-1111 日本香粧品科学会誌,2007年,vol.31,pp.296-301 Trends Genet.,1992年,Vol.8,Issue 2,p.55-61 「和漢医薬学雑誌」,1998年,Vol.15,p.302-303
本発明は、天然物由来の化合物の中から、抗メタボリックシンドローム作用、美白作用、抗老化作用、育毛作用、抗炎症作用または肝機能向上作用において優れた作用を有するものを見出し、それらを有効成分とする抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤および肝機能向上剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、抗メタボリックシンドローム作用、美白作用、抗老化作用、育毛作用、抗炎症作用または肝機能向上作用において優れた作用を有する天然物由来化合物を配合した、抗メタボリックシンドローム用途、美白用途、抗老化用途、育毛用途、抗炎症用途または肝機能向上用途に好適な経口組成物、皮膚化粧料および頭髪化粧料を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤および肝機能向上剤は、下記一般式(I)で表される化合物1~3からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とする。
また、本発明の経口組成物、皮膚化粧料および頭髪化粧料は、下記一般式(I)で表される化合物1~3からなる群より選択される1種または2種以上を配合することを特徴とする。
Figure 0007215761000001
本発明によれば、上記一般式(I)で表される化合物1~3からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることにより、優れた作用効果を有する抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤および肝機能向上剤を提供することができる。
また、上記一般式(I)で表される化合物1~3からなる群より選択される1種または2種以上を配合することにより、抗メタボリックシンドローム用途、美白用途、抗老化用途、育毛用途、抗炎症用途または肝機能向上用途に好適な経口組成物、皮膚化粧料および頭髪化粧料を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
〔フェニルプロピオン酸類〕
本実施形態に係る抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤および肝機能向上剤は、下記一般式(I)で表される化合物1~3からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とする。
また、本実施形態に係る経口組成物、皮膚化粧料および頭髪化粧料は、下記一般式(I)で表される化合物1~3からなる群より選択される1種または2種以上を配合することを特徴とする。
Figure 0007215761000002
上記一般式(I)で表される化合物は、いずれもフェニルプロピオン酸誘導体であり、化合物1は、3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸(3,4-Dihydroxyhydrocinnamic acid)である。また、化合物2は、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(3-(4-Hydroxyphenyl)propionic acid)であり、化合物3は、3-フェニルプロピオン酸(3-phenylpropionic acid)である。
以下、本明細書において、上記式(I)で表される化合物を「フェニルプロピオン酸類」ということがある。
上記フェニルプロピオン酸類は、例えば、フェニルプロピオン酸類を含有する植物抽出物から単離・精製することにより製造することができる。この場合、このようなフェニルプロピオン酸類を含有する植物抽出物は、植物の抽出に一般に用いられている方法によって得ることができる。上記フェニルプロピオン酸類を含有する植物としては、例えば、米、大麦、小麦、大豆、小豆、とうもろこし等が挙げられる。
また、上記フェニルプロピオン酸類は、例えば、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、4-ヒドロキシ桂皮酸もしくは桂皮酸(以下、これら3種化合物を「桂皮酸類」と総称することがある)、またはこれらを含有する組成物(例えば、植物の破砕物もしくは抽出物等)を、フェノール酸還元酵素を有する微生物により醗酵させ、桂皮酸類をフェニルプロピオン酸類に変換した後、得られた醗酵物を抽出・単離・精製することにより製造することもできる。桂皮酸類を含有する組成物としては、例えば、コーヒー、コムギ、トウモロコシ、トマト、マテ、ヨモギ、ゴボウ等の植物の破砕物及び抽出物などが挙げられる。また、桂皮酸類は木本植物及び草本植物におけるリグニンの構成成分であるため、リグニンまたはこれを含有する組成物を醗酵原料として利用してもよい。一方、フェノール酸還元酵素を有する微生物としては、例えば、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus amylovorus、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus kefiranofaciens、Lactobacillus gallinarum、Enterococcus faecalis等の乳酸菌などが挙げられる。
上記植物または醗酵物などから上記フェニルプロピオン酸類を抽出・単離・精製する方法は特に限定されず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出処理は、抽出原料としての上記植物または醗酵物を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供すればよい。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて、室温または溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン等が挙げられる。
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は任意であり、適宜調整することができる。例えば、水と親水性有機溶媒との混合液を抽出溶媒として使用する場合には、任意の比率、すなわち0:100超、100:0未満(容量比,以下同様に表記)の間で混和して用いることができ、適宜調整することができる。
例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を抽出溶媒として使用する場合には、水と低級脂肪族アルコールとの混合比(容量比)を9:1以上とすることができ、さらには7:3以上とすることができ、あるいは水と低級脂肪族アルコールとの混合比を1:9以下、さらには2:8以下とすることができる。また、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水と多価アルコールとの混合比を8:2以上、あるいは1:9以下とすることができ、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水と低級脂肪族ケトンとの混合比を9:1以上、あるいは2:8以下とすることができる。
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温または還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
以上のようにして得られた抽出液、当該抽出液の濃縮物または当該抽出液の乾燥物から上記フェニルプロピオン酸類を単離・精製する方法は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、抽出物を展開溶媒に溶解し、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、フェニルプロピオン酸類を含む画分を回収する方法等が挙げられる。この場合、展開溶媒は使用する固定相に応じて適宜選択すればよいが、例えば固定相としてシリカゲルを用いた順相クロマトグラフィーにより抽出物を分離する場合、展開溶媒としてはクロロホルム:メタノール=95:5等が挙げられる。さらに、カラムクロマトグラフィーにより得られたフェニルプロピオン酸類を含む画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液-液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
〔抗メタボリックシンドローム剤,美白剤,抗老化剤,育毛剤,抗炎症剤,肝機能向上剤〕
以上のようにして得られる上記フェニルプロピオン酸類は、抗メタボリックシンドローム作用、美白作用、抗老化作用、育毛作用、抗炎症作用および肝機能向上作用において優れた作用を有しているため、抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤および肝機能向上剤の有効成分として用いることができる。また、抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤を製造するために、上記フェニルプロピオン酸類を使用することができる。
本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤および肝機能向上剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品等の幅広い用途に使用することができる。
ここで、上記フェニルプロピオン酸類が有する抗メタボリックシンドローム作用は、サイクリックAMP(cAMP)ホスホジエステラーゼ活性阻害作用および/またはジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)活性阻害作用に基づいて発揮されることが好ましい。ただし、上記フェニルプロピオン酸類が有する抗メタボリックシンドローム作用は上記作用に基づいて発揮される抗メタボリックシンドローム作用に限定されるものではない。
また、上記フェニルプロピオン酸類は、そのcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用またはDPP IV活性阻害作用を利用して、それぞれcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害用途、またはDPP IV活性阻害用途に用いることができる。すなわち、本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤は、上記フェニルプロピオン酸類を有効成分とするcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤またはDPP IV活性阻害剤として用いることもできる。
上記フェニルプロピオン酸類が有する美白作用は、チロシナーゼ活性阻害作用および/またはメラニン産生抑制作用に基づいて発揮されることが好ましい。ただし、上記フェニルプロピオン酸類が有する美白作用は上記作用に基づいて発揮される美白作用に限定されるものではない。
また、上記フェニルプロピオン酸類は、そのチロシナーゼ活性阻害作用またはメラニン産生抑制作用を利用して、それぞれチロシナーゼ活性阻害用途またはメラニン産生抑制用途に用いることができる。すなわち、本実施形態の美白剤は、上記フェニルプロピオン酸類を有効成分とするチロシナーゼ活性阻害剤またはメラニン産生抑制剤として用いることもできる。
上記フェニルプロピオン酸類が有する抗老化作用は、I型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、HAS3 mRNA発現促進作用、ラミニン-332産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、ATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、トランスグルタミナーゼ-1(TGM1)mRNA発現促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、クローディン-1mRNA発現促進作用、クローディン-4mRNA発現促進作用、オクルディンmRNA発現促進作用、最終糖化産物(AGEs)形成抑制作用、および最終糖化産物(AGEs)分解促進作用からなる群より選択される1種または2種以上の作用に基づいて発揮されることが好ましい。ただし、上記フェニルプロピオン酸類が有する抗老化作用は上記作用に基づいて発揮される抗老化作用に限定されるものではない。
また、上記フェニルプロピオン酸類は、そのI型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、HAS3 mRNA発現促進作用、ラミニン-332産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、ATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、TGM1 mRNA発現促進作用、SPT mRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、クローディン-1mRNA発現促進作用、クローディン-4mRNA発現促進作用、オクルディンmRNA発現促進作用、AGEs形成抑制作用、またはAGEs分解促進作用を利用して、それぞれI型コラーゲン産生促進用途、エラスチン産生促進用途、ヒアルロン酸産生促進用途、エラスターゼ活性阻害用途、HAS3 mRNA発現促進用途、ラミニン-332産生促進用途、表皮角化細胞増殖促進用途、ATP産生促進用途、グルタチオン産生促進用途、TGM1 mRNA発現促進用途、SPT mRNA発現促進用途、AQP3 mRNA発現促進用途、フィラグリンmRNA発現促進用途、クローディン-1mRNA発現促進用途、クローディン-4mRNA発現促進用途、オクルディンmRNA発現促進用途、AGEs形成抑制用途、またはAGEs分解促進用途に用いることができる。
すなわち、本実施形態の抗老化剤は、上記フェニルプロピオン酸類を有効成分とするI型コラーゲン産生促進剤、エラスチン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、HAS3 mRNA発現促進剤、ラミニン-332産生促進剤、表皮角化細胞増殖促進剤、ATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、TGM1 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤、オクルディン mRNA発現促進剤、AGEs形成抑制剤、またはAGEs分解促進剤として用いることもできる。
上記フェニルプロピオン酸類が有する育毛作用は、テストステロン5α-レダクターゼ活性阻害作用および/または毛乳頭細胞増殖促進作用に基づいて発揮されることが好ましい。ただし、上記フェニルプロピオン酸類が有する育毛作用は上記作用に基づいて発揮される育毛作用に限定されるものではない。
また、上記フェニルプロピオン酸類は、そのテストステロン5α-レダクターゼ活性阻害作用または毛乳頭細胞増殖促進作用を利用して、それぞれテストステロン5α-レダクターゼ活性阻害用途または毛乳頭細胞増殖促進用途に用いることができる。すなわち、本実施形態の育毛剤は、上記フェニルプロピオン酸類を有効成分とするテストステロン5α-レダクターゼ活性阻害剤または毛乳頭細胞増殖促進剤として用いることもできる。
上記フェニルプロピオン酸類が有する抗炎症作用は、一酸化窒素(NO)産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、およびプロスタグランジンE(PGE)活性阻害作用からなる群より選択される1種または2種以上の作用に基づいて発揮されることが好ましい。ただし、上記フェニルプロピオン酸類が有する抗炎症作用は上記作用に基づいて発揮される抗炎症作用に限定されるものではない。
また、上記フェニルプロピオン酸類は、そのNO産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、またはPGE産生促進作用を利用して、それぞれNO産生抑制用途、ヒアルロニダーゼ活性阻害用途、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制用途、またはPGE産生促進用途に用いることができる。すなわち、本実施形態の抗炎症剤は、上記フェニルプロピオン酸類を有効成分とするNO産生抑制剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、またはPGE産生促進剤として用いることもできる。
上記フェニルプロピオン酸類が有する肝機能向上作用は、肝細胞グルタチオン産生促進作用および/または肝細胞アデノシン三リン酸(ATP)産生促進作用に基づいて発揮されることが好ましい。ただし、上記フェニルプロピオン酸類が有する肝機能向上作用は上記作用に基づいて発揮される肝機能向上作用に限定されるものではない。
また、上記フェニルプロピオン酸類は、その肝細胞グルタチオン産生促進作用または肝細胞ATP産生促進作用を利用して、それぞれ肝細胞グルタチオン産生促進用途、または肝細胞ATP産生促進用途に用いることができる。すなわち、本実施形態の肝機能向上剤は、上記フェニルプロピオン酸類を有効成分とする肝細胞グルタチオン産生促進剤または肝細胞ATP産生促進剤として用いることもできる。
なお、本実施形態に係る抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤の有効成分として、単離した上記フェニルプロピオン酸類に替えて、フェニルプロピオン酸類を含有する組成物を用いてもよい。ここで、本実施形態における「フェニルプロピオン酸類を含有する組成物」には、上記フェニルプロピオン酸類を含有する植物を抽出原料として得られる抽出物、フェニルプロピオン酸類を含有する醗酵物、及び当該醗酵物を抽出原料として得られる抽出物が含まれる。また、「抽出物」には、抽出処理により得られる抽出液、当該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、または当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物が含まれる。
本実施形態に係る抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤の有効成分として、上記フェニルプロピオン酸類を含有する組成物を用いる場合は、組成物中にフェニルプロピオン酸類が0.1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。フェニルプロピオン酸類の純度を高めたものを有効成分として使用することによって、より一層作用効果に優れた抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤を得ることができる。
本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤は、上記フェニルプロピオン酸類またはフェニルプロピオン酸類を含有する組成物のみからなるものでもよいし、フェニルプロピオン酸類またはフェニルプロピオン酸類を含有する組成物を製剤化したものでもよい。
本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤および肝機能向上剤は、他の組成物(例えば、後述する経口組成物、皮膚化粧料等)に配合して使用することができるほか、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤を製剤化した場合、上記フェニルプロピオン酸類またはフェニルプロピオン酸類を含有する組成物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
なお、本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤は、必要に応じて、抗メタボリックシンドローム作用、美白作用、抗老化作用、育毛作用、抗炎症作用または肝機能向上作用を有する他の天然抽出物等を、上記フェニルプロピオン酸類またはフェニルプロピオン酸類を含有する組成物とともに配合して有効成分として用いることができる。
本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤の患者に対する投与方法としては、経口投与、経皮投与、腹腔内投与、静脈投与、皮下投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防又は治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤は、その抗メタボリックシンドローム作用、好ましくはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を通じて、脂肪の分解を促進することができ、この結果、肥満症、およびこれに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な生活習慣病を予防・改善することができる。また、本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤は、その抗メタボリックシンドローム作用、好ましくはDPP IV活性阻害作用を通じて、2型糖尿病、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性等を予防・治療することができる。ただし、本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤は、これらの用途以外にも、抗メタボリックシンドローム作用、好ましくは、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用またはDPP IV活性阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤または前述したcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、cAMPの分解を抑制するため、血小板の凝集を抑制することができ、これによりアレルギー疾患や各種炎症性疾患等を予防、治療又は改善することができる。
また、本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤または前述したDPP IV活性阻害剤は、そのDPP IV活性阻害作用を通じて、関節リウマチ等の自己免疫疾患や移植拒絶反応を予防・治療することができるとともに、疼痛、神経変性疾患、及び神経精神疾患等の神経障害(例えば坐骨神経痛、アルツハイマー病、うつ病等);成長ホルモン欠損症及び成長ホルモンが治療に使用される疾患;癌(例えばT-細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、甲状腺癌、基底細胞癌、乳癌等);HIV感染症(AIDS)等の疾患を予防・治療することができる。
本実施形態の美白剤は、その美白作用、好ましくはチロシナーゼ活性阻害作用および/またはメラニン産生抑制作用を通じて、皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着を予防・改善することができる。ただし、本実施形態の美白剤は、これらの用途以外にも、美白作用、好ましくはチロシナーゼ活性阻害作用またはメラニン産生抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態の抗老化剤は、その抗老化作用、好ましくはI型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、HAS3 mRNA発現促進作用、ラミニン-332産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、ATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、TGM1 mRNA発現促進作用、SPT mRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、フィラグリン mRNA発現促進作用、クローディン-1 mRNA発現促進作用、クローディン-4 mRNA発現促進作用、オクルディン mRNA発現促進作用、AGEs形成抑制作用、およびAGEs分解促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用を通じて、皮膚のシワの形成、弾力性の低下、保湿機能の低下等の皮膚の老化症状を予防、治療または改善することができる。
ただし、本実施形態の抗老化剤は、これらの用途以外にも、抗老化作用、好ましくは、I型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、HAS3 mRNA発現促進作用、ラミニン-332産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、ATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、TGM1 mRNA発現促進作用、SPT mRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、フィラグリン mRNA発現促進作用、クローディン-1 mRNA発現促進作用、クローディン-4 mRNA発現促進作用、オクルディン mRNA発現促進作用、AGEs形成抑制作用、またはAGEs分解促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の抗老化剤または前述したI型コラーゲン産生促進剤は、そのI型コラーゲン産生促進作用を通じて、骨粗鬆症等のコラーゲン産生の低下に起因する疾患の予防、治療又は改善;損傷した腱や靱帯の再生促進;創傷又は熱傷の治癒の促進;等の用途に用いることができる。また、本実施形態の抗老化剤または前述したエラスチン産生促進剤もしくはエラスターゼ活性阻害剤は、そのエラスチン産生促進作用またはエラスターゼ活性阻害作用により、肺気腫等の肺疾患;高血圧、動脈瘤等の血管性疾患;などの予防、治療または改善の用途に用いることができる。さらに、本実施形態の抗老化剤または前述したヒアルロン酸産生促進剤は、そのヒアルロン酸産生促進作用により、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、化膿性関節炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、骨関節炎等の関節炎の予防、治療または改善;創傷または熱傷の治癒の促進;などの用途に用いることができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したラミニン-332産生促進剤は、そのラミニン-332産生促進作用を通じて、基底膜構造の再構築を誘導し、皮膚における創傷を治療・改善することができる。また、本実施形態の抗老化剤または前述したラミニン-332産生促進剤は、ラミニン-332の欠乏(欠損)に起因する疾患(表皮水疱症等)の予防又は治療剤として用いることができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述した表皮角化細胞増殖促進剤は、その表皮角化細胞増殖促進作用を通じて、肌の新陳代謝を回復させ、こじわ、くすみ、色素沈着等の予防、治療または改善;再生医療;などの用途に使用することができる。また、本実施形態の抗老化剤または前述したATP産生促進剤は、そのATP産生促進作用を通じて、ターンオーバーを促進し、皮膚においてはシワ、きめの消失、弾力性の低下等の皮膚の老化症状を予防・改善することができるとともに、メラニンが異常蓄積した角質細胞の角質層からの脱落等、肌の新陳代謝機能を回復することにより、皮膚におけるくすみ、色素沈着等の症状を予防・改善することができる。さらに、本実施形態の抗老化剤または前述したATP産生促進剤もしくはグルタチオン産生促進剤は、後述する肝細胞ATP産生促進作用または肝細胞グルタチオン産生促進作用にそれぞれ基づく用途に用いることもできる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したTGM1 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤もしくはフィラグリン mRNA発現促進剤は、そのTGM1 mRNA発現促進作用、SPT mRNA発現促進作用またはフィラグリン mRNA発現促進作用を通じて、皮膚のバリア機能を強化し、肌荒れ、乾燥肌等のほか、乾燥性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬等)を予防、治療または改善することができる。また、本実施形態の抗老化剤または前述したフィラグリン mRNA発現促進剤もしくはAQP3 mRNA発現促進剤は、そのフィラグリン mRNA発現促進作用またはAQP3 mRNA発現促進作用を通じて、加齢による水分保持機能やバリア機能等を改善することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したクローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤、もしくはオクルディン mRNA発現促進剤は、そのクローディン-1 mRNA発現促進作用、クローディン-4 mRNA発現促進作用またはオクルディン mRNA発現促進作用を通じて、表皮角化細胞におけるタイトジャンクションの形成を促すことができ、これにより、皮膚のバリア機能および水分保持機能を高め、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎や各種感染症などの皮膚症状を予防または改善することができる。また、本実施形態の抗老化剤または前述したクローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤、もしくはオクルディン mRNA発現促進剤は、消化管におけるバリア機能を改善し、炎症性腸疾患や食物アレルギー、消化管から感染する各種感染症などを予防または改善することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したAGEs形成抑制剤もしくはAGEs分解促進剤は、そのAGEs形成抑制作用またはAGEs分解促進作用を通じて、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症等の糖尿病合併症;タンパク質の糖化反応に起因する動脈硬化;タンパク質の糖化反応に起因する骨粗鬆症や変形性関節症等;などを予防または治療することができる。また、本実施形態の抗老化剤または前述したAGEs形成抑制剤は、そのAGEs形成抑制作用を通じて、タンパク質の糖化反応に起因する毛髪の損傷を予防又は抑制することができ、これにより毛髪のゴワつきを予防又は抑制し、毛髪の弾力性やしなやかさ等を回復し、また毛髪にハリ・コシを付与することができる。
本実施形態の育毛剤は、その育毛作用、好ましくはテストステロン5α-レダクターゼ活性阻害作用および/または毛乳頭細胞増殖促進作用を通じて、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等の脱毛症等を予防、治療または改善することができ、特に男性型脱毛症の予防、治療または改善に好適である。ただし、本発明の育毛剤は、これらの用途以外にも、育毛作用、好ましくはテストステロン5α-レダクターゼ活性阻害作用または毛乳頭細胞増殖促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の育毛剤または前述したテストステロン5α-レダクターゼ活性阻害剤は、そのテストステロン5α-レダクターゼ活性阻害作用を通じて、男性ホルモンが関与する疾患、例えば、多毛症、脂漏症、座瘡(ニキビなど)、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等を予防、治療又は改善することができる。また、本実施形態の育毛剤または前述した毛乳頭細胞増殖促進剤は、その毛乳頭細胞増殖促進作用を通じて、毛乳頭細胞を用いた毛髪再生等の再生医療分野への応用に使用することもできる。
本実施形態の抗炎症剤は、その抗炎症作用、好ましくはNO産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、およびPGE産生促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用を通じて、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、アトピー性皮膚炎、その他肌荒れに伴う各種皮膚炎症性疾患を予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態の抗炎症剤は、これらの用途以外にも、抗炎症作用、好ましくは、NO産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、またはPGE産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の抗炎症剤または前述したNO産生抑制剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、もしくはPGE産生促進剤は、そのNO産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、またはPGE産生促進作用を通じて、関節リウマチ、変形性関節症、喘息などを予防、治療または改善することができる。また、本実施形態の抗炎症剤または前述したヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤は、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を通じて、胃酸過多を原因とする胃潰瘍、睡眠障害等を予防、治療又は改善することができる。
本実施形態の肝機能向上剤は、その肝機能向上作用、好ましくは肝細胞グルタチオン産生促進作用および/または肝細胞ATP産生促進作用により、肝機能を向上させることができる。肝機能向上用途に包含されるものとして:エタノール摂取に起因した症状(例えば二日酔い等)の予防、治療または改善;糖や脂肪等の代謝・分解の促進;脂肪肝、アルコール性肝炎や薬剤性肝炎等の肝炎、肝硬変等の予防、治療または改善;などの用途が挙げられる。
ただし、本実施形態の肝機能向上剤は、これらの用途以外にも、肝機能向上作用、好ましくは、肝細胞グルタチオン産生促進作用または肝細胞ATP産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の肝機能向上剤または前述した肝細胞グルタチオン産生促進剤は、その肝細胞グルタチオン産生促進作用を通じて、白内障、パーキンソン病等、生体内グルタチオン濃度の低下と関連した疾患の予防、治療または改善;皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着の予防、治療または改善;などの用途に用いることができる。また、本実施形態の肝機能向上剤または前述した肝細胞ATP産生促進剤は、その肝細胞ATP産生促進作用を通じて、疲労感・倦怠感の回復等の用途に用いることができる。
また、本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤および肝機能向上剤は、それぞれ抗メタボリックシンドローム作用、美白作用、抗老化作用、育毛作用、抗炎症作用および肝機能向上作用において優れた作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
〔経口組成物〕
上記フェニルプロピオン酸類は、抗メタボリックシンドローム作用、美白作用、抗老化作用、育毛作用、抗炎症作用および肝機能向上作用において優れた作用を有しているため、経口組成物に配合するのに好適である。この場合、上記フェニルプロピオン酸類またはフェニルプロピオン酸類を含有する組成物をそのまま配合してもよいし、フェニルプロピオン酸類から製剤化した、抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤を配合してもよい。
上記フェニルプロピオン酸類もしくはフェニルプロピオン酸類を含有する組成物、またはフェニルプロピオン酸類もしくはフェニルプロピオン酸類を含有する組成物から製剤化した抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤もしくは肝機能向上剤を経口組成物に配合することにより、それぞれ抗メタボリックシンドローム用途、美白用途、抗老化用途、育毛用途、抗炎症用途または肝機能向上用途に好適な経口組成物とすることができる。これらの中でも、抗メタボリックシンドローム作用および肝機能向上作用は、経口組成物に付与されることで作用効果が発揮されやすいため、好適である。
ここで、経口組成物とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「経口組成物」は、経口的に摂取される一般食品、飼料、健康食品、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示飲食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。本実施形態に係る経口組成物は、当該経口組成物またはその包装に、上記フェニルプロピオン酸類が有する好ましい作用を表示することのできる経口組成物であることが好ましく、保健機能食品(特定保健用食品,機能性表示食品,栄養機能食品)、医薬部外品または医薬品であることが特に好ましい。
上記フェニルプロピオン酸類もしくはフェニルプロピオン酸類を含有する組成物、またはフェニルプロピオン酸類もしくはフェニルプロピオン酸類を含有する組成物から製剤化した抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤もしくは肝機能向上剤を経口組成物に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる経口組成物の一般的な摂取量を考慮して、フェニルプロピオン酸類の成人1日あたりの摂取量が約1~1000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象経口組成物が顆粒状、錠剤状またはカプセル状の経口組成物の場合、上記フェニルプロピオン酸類もしくはフェニルプロピオン酸類を含有する組成物、またはフェニルプロピオン酸類もしくはフェニルプロピオン酸類を含有する組成物から製剤化した抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤もしくは肝機能向上剤の添加量は、添加対象経口組成物に対して通常0.1~100質量%であり、好ましくは5~100質量%である。
本実施形態の経口組成物は、上記フェニルプロピオン酸類をその活性を妨げないような任意の経口組成物に配合したものであってもよいし、上記フェニルプロピオン酸類を主成分とする栄養補助食品であってもよい。
本実施形態の経口組成物を製造する際には、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類などの任意の助剤を添加して任意の形状の経口組成物にすることができる。
上記フェニルプロピオン酸類を配合し得る経口組成物は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤などが挙げられ、これらの経口組成物に上記フェニルプロピオン酸類を配合するときに、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
〔皮膚化粧料,頭髪化粧料〕
上記フェニルプロピオン酸類は、抗メタボリックシンドローム作用、美白作用、抗老化作用、育毛作用、抗炎症作用および肝機能向上作用において優れた作用を有しているため、皮膚化粧料または頭髪化粧料に配合するのに好適である。この場合、上記フェニルプロピオン酸類をそのまま配合してもよいし、上記フェニルプロピオン酸類から製剤化した抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤または肝機能向上剤を配合してもよい。
上記フェニルプロピオン酸類または上記抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤もしくは肝機能向上剤を配合することにより、皮膚化粧料または頭髪化粧料に抗メタボリックシンドローム作用、美白作用、抗老化作用、育毛作用、抗炎症作用または肝機能向上作用を付与することができ、抗メタボリックシンドローム用途、美白用途、抗老化用途、育毛用途、抗炎症用途または肝機能向上用途に用いることのできる皮膚化粧料または頭髪化粧料とすることができる。
これらの中でも、美白作用、抗老化作用および抗炎症作用は、皮膚化粧料に配合したときに作用効果が発揮されやすく、すなわち美白用途、抗老化用途または抗炎症用途に特に好適な皮膚化粧料とすることができる。また、育毛作用、抗老化作用および抗炎症作用は、頭髪化粧料に配合したときに作用効果が発揮されやすく、すなわち育毛用途、抗老化用途または抗炎症用途に特に好適な頭髪化粧料とすることができる。
上記フェニルプロピオン酸類、または上記抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤もしくは肝機能向上剤を配合し得る皮膚化粧料または頭髪化粧料の種類は特に限定されるものではなく、皮膚化粧料としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、化粧水、ローション、ジェル、美容オイル、パック、ファンデーション等が挙げられ、また、頭髪化粧料としては、例えば、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンス等が挙げられる。
上記フェニルプロピオン酸類、または上記抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤もしくは肝機能向上剤を皮膚化粧料または頭髪化粧料に配合する場合、その配合量は、皮膚化粧料または頭髪化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、約0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.001~1質量%である。
本実施形態の皮膚化粧料または頭髪化粧料は、上記フェニルプロピオン酸類が有する抗メタボリックシンドローム作用、美白作用、抗老化作用、育毛作用、抗炎症作用または肝機能向上作用を妨げない限り、通常の皮膚化粧料または頭髪化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
本実施形態の皮膚化粧料は、上記フェニルプロピオン酸類が有する美白作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用;抗老化作用、I型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、HAS3 mRNA発現促進作用、ラミニン-332産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、ATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、TGM1 mRNA発現促進作用、SPT mRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、フィラグリン mRNA発現促進作用、クローディン-1 mRNA発現促進作用、クローディン-4 mRNA発現促進作用、オクルディン mRNA発現促進作用、AGEs形成抑制作用、AGEs分解促進作用;育毛作用、テストステロン5α-レダクターゼ活性阻害作用、毛乳頭細胞増殖促進作用;抗炎症作用、NO産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、PGE産生促進作用;抗メタボリックシンドローム作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、DPP IV活性阻害作用;肝機能向上作用、肝細胞グルタチオン産生促進作用、肝細胞ATP産生促進作用;からなる群より選択される1または2以上の作用を通じて、皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着の予防、治療または改善;皮膚のシワの形成、弾力性の低下、保湿機能の低下等の皮膚の老化症状の予防、治療または改善;創傷又は熱傷の治癒の促進;肌荒れ、乾燥肌等のほか、乾燥性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬等)の予防、治療または改善;脂漏症、座瘡(ニキビなど)等の男性ホルモンが関与する疾患の予防、治療または改善;接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れに伴う各種皮膚炎症性疾患の予防、治療または改善;肥満症、およびそれに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の生活習慣病の予防、治療または改善;などをすることができる。
また、本実施形態の頭髪化粧料は、上記フェニルプロピオン酸類が有する育毛作用、テストステロン5α-レダクターゼ活性阻害作用、毛乳頭細胞増殖促進作用;抗炎症作用、NO産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、PGE産生促進作用;抗老化作用、I型コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、HAS3 mRNA発現促進作用、ラミニン-332産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、ATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、TGM1 mRNA発現促進作用、SPT mRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、フィラグリン mRNA発現促進作用、クローディン-1 mRNA発現促進作用、クローディン-4 mRNA発現促進作用、オクルディン mRNA発現促進作用、AGEs形成抑制作用、AGEs分解促進作用;抗メタボリックシンドローム作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、DPP IV活性阻害作用;美白作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用;肝機能向上作用、肝細胞グルタチオン産生促進作用、肝細胞ATP産生促進作用;からなる群より選択される1または2以上の作用を通じて、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等の脱毛症の予防、治療または改善;接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れに伴う各種皮膚炎症性疾患の予防、治療または改善;肌荒れ、乾燥肌等のほか、乾燥性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬等)の治療;などをすることができる。
なお、本実施形態の抗メタボリックシンドローム剤、美白剤、抗老化剤、育毛剤、抗炎症剤、肝機能向上剤、経口組成物、皮膚化粧料および頭髪化粧料は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
以下、試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。なお、本試験例においては、被験試料として、以下の市販の化合物を使用した。
Figure 0007215761000003
〔試験例1〕サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにしてサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を試験した。
5mmol/Lの塩化マグネシウムを含有する50mmol/L Tris-HCl緩衝液(pH7.5)0.2mLに、2.5mg/mLウシ血清アルブミン溶液0.1mL、0.1mg/mLサイクリックAMPホスホジエステラーゼ溶液0.1mL、および被験試料溶液(試料1,最終濃度は下記表2を参照)0.05mLを加え、37℃にて5分間静置した。その後、0.5mg/mLサイクリックAMP溶液0.05mLを加え、37℃で60分間反応させた。反応終了後、3分間沸騰水浴上で煮沸することにより反応を停止させ、これを遠心(2260×g,10分間,4℃)し、上清中の反応基質であるサイクリックAMPを、下記の高速液体クロマトグラフィー条件にて分析した。また、コントロールとして、試料無添加の溶媒のみを加えて同様の操作を行った。
<高速液体クロマトグラフィー条件>
製品名:Chromatocorder 12(SYSTEM INSTRUMENTS社製)
固定相:Wakosil C18-ODS 5μm(富士フィルム和光純薬社製)
カラム長:250mm
移動相:1mmol/L TBAP in 25mmol/L KHPO:CHCN=90:10
移動相流速:1.0mL/min
検出:260nm
次に、サイクリックAMP標準品のピーク面積(A)、試料無添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B1)及び被験試料添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B2)を求めた。得られた結果から、下記式により試料無添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(C)及び被験試料添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(D)を算出した。
試料無添加での標準品の分解率(C,%)=(1-B1/A)×100
被験試料添加での標準品の分解率(D,%)=(1-B2/A)×100
その後、上記式により算出した各分解率(C,D)に基づいて、下記式によりサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)を算出した。
cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)=(1-D/C)×100
結果を表2に示す。
Figure 0007215761000004
表2に示すように、化合物1(試料1)は、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有することが確認された。
〔試験例2〕DPP IV活性阻害作用試験
化合物1~3(試料1~3)について、以下のようにしてジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)活性阻害作用を試験した。
96ウェルプレートにて、25mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)にて調製した被験試料(試料1~3,最終濃度は下記表3を参照)25μLと、上記緩衝液にて調製した0.4μg/mLDPP IV(R&Dシステム社製,rhCD26)溶液25μLとを混合し、37℃にて5分間プレインキュベーションした。その後、上記緩衝液にて調製した0.5mM Gly-Pro-p-NA・Tos(ペプチド研究所社製)50μLを添加し、37℃にて90分間反応させた。反応終了後、波長415nmにおける吸光度を測定した。得られた結果から、下記式によりDPP IV活性阻害率(%)を算出した。
DPP IV活性阻害率(%)={1-(C-D)/(A-B)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加・酵素添加での波長415nmにおける吸光度
B:試料無添加・酵素無添加での波長415nmにおける吸光度
C:被験試料添加・酵素添加での波長415nmにおける吸光度
D:被験試料添加・酵素無添加での波長415nmにおける吸光度
結果を表3に示す。
Figure 0007215761000005
表3に示すように、化合物1(試料1)、化合物2(試料2)、および化合物3(試料3)は、いずれも優れたDPP IV阻害作用を示した。
〔試験例3〕チロシナーゼ活性阻害作用試験
化合物3(試料3)について、以下のようにしてチロシナーゼ活性阻害作用を試験した。
48ウェルプレートに、Mcllvaine緩衝液(pH6.8)0.2mL、0.3mg/mLチロシン溶液0.06mL、25%DMSO溶液に溶解した被験試料(試料3,最終濃度は下記表4を参照)0.18mLを加え、37℃で10分間静置した。これに、1000units/mLチロシナーゼ溶液0.02mLを加え、引き続き37℃で15分間反応させた。反応終了後、波長475nmにおける吸光度を測定した。
また、ブランクとして、酵素溶液を添加しない場合についても同様の操作および吸光度の測定を行った。さらに、コントロールとして、試料溶液を添加せずに25%DMSO溶液を添加した場合についても同様の測定を行った。得られた測定結果から、下記式によりチロシナーゼ活性阻害率(%)を算出した。
チロシナーゼ活性阻害率(%)={1-(A-B)/(C-D)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加・酵素添加での波長475nmにおける吸光度
B:被験試料添加・酵素無添加での波長475nmにおける吸光度
C:試料無添加・酵素添加での波長475nmにおける吸光度
D:試料無添加・酵素無添加での波長475nmにおける吸光度
結果を表4に示す。
Figure 0007215761000006
表4に示すように、化合物3(試料3)は、優れたチロシナーゼ活性阻害作用を有していると認められた。
〔試験例4〕B16メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用試験
化合物1~3(試料1~3)について、以下のようにしてB16メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用を試験した。
B16メラノーマ細胞を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を24.0×10cells/mLの細胞密度になるように10%FBSおよび1mmol/Lテオフィリン含有DMEMで希釈した後、48ウェルプレートに1ウェルあたり300μLずつ播種し、6時間培養した。
培養終了後、10%FBSおよび1mmol/Lテオフィリン含有DMEMに溶解した被験試料(試料1~3,最終濃度は下記表5を参照)を各ウェルに300μL添加し、4日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の10%FBSおよび1mmol/Lテオフィリン含有DMEMを用いて同様に培養した。培養終了後、培地を除去し、2mol/L NaOH溶液200μLを添加して超音波破砕機により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定した。測定した吸光度の値から、合成メラニン(SIGMA社製)を用いて作成した検量線をもとにメラニン量を算出した。
また、細胞生存率を測定するために、上記と同様にして培養した後、培地を除去し400μLのPBS(-)緩衝液で洗浄して、終濃度0.05mg/mLで10%FBS含有DMEMに溶解したニュートラルレッドを各ウェルに200μL添加し、2.5時間培養した。培養後、ニュートラルレッド溶液を除去し、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各ウェルに200μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。得られた結果から、下記式により細胞生存率により補正したメラニン産生抑制率(%)を算出した。
メラニン産生抑制率(%)={1-(B/D)/(A/C)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加におけるメラニン量
B:被験試料添加におけるメラニン量
C:試料無添加での波長540nmにおける吸光度
D:被験試料添加での波長540nmにおける吸光度
結果を表5に示す。
Figure 0007215761000007
表5に示すように、化合物1(試料1)、化合物2(試料2)、および化合物3(試料3)は、いずれも優れたメラニン産生抑制作用を有していると認められた。
〔試験例5〕I型コラーゲン産生促進作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにしてI型コラーゲン産生促進作用を試験した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×10cells/mLの細胞密度になるように0.25%FBS含有DMEMで希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、0.25%FBS含有DMEMに溶解した被験試料(試料1,最終濃度は下記表6を参照)を各ウェルに100μLずつ添加し、3日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の0.25%FBS含有DMEMを用いて同様に培養した。培養後、各ウェルの培地中のI型コラーゲン量をELISA法により測定した。測定結果から、下記式によりI型コラーゲン産生促進率(%)を算出した。
I型コラーゲン産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのI型コラーゲン量
B:試料無添加でのI型コラーゲン量
結果を表6に示す。
Figure 0007215761000008
表6に示すように、化合物1(試料1)は、優れたI型コラーゲン産生促進作用を有することが確認された。
〔試験例6〕エラスチン産生促進作用試験
化合物2(試料2)および化合物3(試料3)について、以下のようにしてエラスチン産生促進作用を試験した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.2×10cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、培地を除去し、0.25%FBS含有DMEMに溶解した被験試料(試料2および3,最終濃度は下記表7を参照)を各ウェルに150μL添加し、5日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の0.25%FBS含有DMEMを用いて同様に培養した。培養終了後、上清を回収し、培養上清に遊離したエラスチン量をELISA法により測定した。測定結果から、下記式によりエラスチン産生促進率(%)を算出した。
エラスチン産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのエラスチン量
B:試料無添加でのエラスチン量
結果を表7に示す。
Figure 0007215761000009
表7に示すように、化合物2(試料2)および化合物3(試料3)はいずれも優れたエラスチン産生促進作用を示した。
〔試験例7〕エラスターゼ活性阻害作用試験
化合物1~3(試料1~3)について、以下のようにしてエラスターゼ活性阻害作用を試験した。
96穴マイクロプレートにて、0.2mol/L Tris-HCl緩衝液(pH8.0)で調製した被験試料(試料1~3,最終濃度は下記表8を参照)50μLと、20μg/mL エラスターゼ・タイプIII(SIGMA-Aldrich社製)溶液50μLとを混合した。その後、上記緩衝液にて調製した0.4514mg/mL N-succinyl-Ala-Ala-Ala-p-nitroanilide(SIGMA-Aldrich社製)100μL添加して、25℃にて15分間反応させた。反応終了後、波長415nmにおける吸光度を測定した。また、同様にして酵素無添加の空試験を行い補正した。得られた結果から、下記式によりエラスターゼ活性阻害率(%)を算出した。
エラスターゼ活性阻害率(%)={1-(C-D)/(A-B)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加・酵素添加での波長415nmにおける吸光度
B:試料無添加・酵素無添加での波長415nmにおける吸光度
C:被験試料添加・酵素添加での波長415nmにおける吸光度
D:被験試料添加・酵素無添加での波長415nmにおける吸光度
結果を表8に示す。
Figure 0007215761000010
表8に示すように、化合物1~3(試料1~3)は、優れたエラスターゼ活性阻害作用を有していると認められた。
〔試験例8〕ヒアルロン酸産生促進作用試験
化合物1(試料1)および化合物2(試料2)について、以下のようにしてヒアルロン酸産生促進作用を試験した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×10cells/mLの細胞密度になるよう0.25%FBS含有DMEMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、0.25%FBS含有DMEMに溶解した被験試料(試料1および2,最終濃度は下記表9を参照)を各ウェルに100μL添加し、3日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の0.25%FBS含有DMEMを用いて同様に培養した。培養後、各ウェルの培地中のヒアルロン酸量を、ヒアルロン酸結合タンパク(HABP)を用いたサンドイッチ法により測定した。得られた結果から、下記式によりヒアルロン酸産生促進率(%)を算出した。
ヒアルロン酸産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのヒアルロン酸量
B:試料無添加でのヒアルロン酸量
結果を表9に示す。
Figure 0007215761000011
表9に示すように、化合物1(試料1)および化合物2(試料2)は、優れたヒアルロン酸産生促進作用を有することが確認された。
〔試験例9〕ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにしてHAS3 mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を15×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに2mLずつ播種し(30×10cells/ウェル)、37℃・5%COの条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGMに増殖添加剤(hEGF,BPE,インスリン,抗菌剤,ハイドロコーチゾン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
24時間培養後、培地を除去し、KBMに溶解した被験試料(試料1,最終濃度は下記表10を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃・5%COの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、150ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、HAS3および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)TB Green (R) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。プライマーはタカラバイオ社製のものを使用した。HAS3 mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりHAS3 mRNA発現促進率(%)を算出した。
HAS3 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表10に示す。
Figure 0007215761000012
表10に示すように、化合物1(試料1)は、優れたHAS3 mRNA発現促進作用を有していた。
〔試験例10〕ラミニン-332産生促進作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにしてラミニン-332産生促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、75cmフラスコにて正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×105 cell/mLの細胞密度となるように、KGMからBPEを除いた培地(KGM-BPE)で希釈した後、24ウェルプレートに1ウェルあたり500μLずつ播種し、一日間培養した。
培養終了後、培地を除去し、KGM-BPEに溶解した被験試料(試料1,最終濃度は下記表11を参照)を各ウェルに500μLずつ添加し、48時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM-BPEを用いて同様に培養した。培養終了後、培地上清100μLをELISAプレートに移し換え、37℃で2時間プレートに吸着させた後、吸着させたラミニン-332の量をELISA法により測定した。得られた測定結果から、下記式によりラミニン-332産生促進率(%)を算出した。
ラミニン-332産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのラミニン-332量
B:試料無添加でのラミニン-332量
結果を表11に示す。
Figure 0007215761000013
表11に示すように、化合物1(試料1)は優れたラミニン-332産生促進作用を有することが確認された。
〔試験例11〕表皮角化細胞増殖促進作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにして表皮角化細胞増殖促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理にて細胞を回収した。回収した細胞を3.0×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、KGMに溶解した被験試料(試料1,最終濃度は下記表12を参照)を各ウェルに100μL添加し、3日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGMを用いて同様に培養した。
表皮角化細胞増殖促進作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。3日間培養後、培地を除去し、終濃度0.4mg/mLでPBS(-)緩衝液に溶解したMTTを各ウェルに100μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2-プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。得られた結果から、下記式により表皮角化細胞増殖促進率(%)を算出した。
表皮角化細胞増殖促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのブルーホルマザン生成量
B:試料無添加でのブルーホルマザン生成量
結果を表12に示す。
Figure 0007215761000014
表12に示すように、化合物1(試料1)は優れた表皮角化細胞増殖促進作用を有していると認められた。
〔試験例12〕ATP産生促進作用試験(表皮角化細胞)
化合物1(試料1)および化合物2(試料2)について、以下のようにしてATP産生促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10cells/mLの細胞密度になるようKGMで希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を除去し、被験試料(試料1および2,最終濃度は下記表13を参照)を添加したKGMを各ウェルに100μL添加し、2時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGMを用いて同様に培養した。
ATP産生促進作用は、ホタルルシフェラーゼ発光法を用いて細胞内のATP量を測定した。すなわち、2時間培養後、ATP測定試薬(東洋ビーネット社製,商品名「『細胞の』ATP測定試薬」)を各ウェルに100μLずつ添加し、ルシフェラーゼによる化学発光反応を行った。反応後、細胞内ATP量に比例した化学発光量を、化学発光測定装置(Thermo Fisher Scientific社製,製品名:Varioskan LUX マルチモードマイクロプレートリーダー)を用いて測定した。得られた結果から、下記式によりATP産生促進率(%)を算出した。
ATP産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での化学発光量
B:試料無添加での化学発光量
結果を表13に示す。
Figure 0007215761000015
表13に示すように、化合物1(試料1)および化合物2(試料2)は、優れたATP産生促進作用を有していると認められた。
〔試験例13〕グルタチオン産生促進作用試験(皮膚線維芽細胞)
化合物1~3(試料1~3)について、以下のようにして、皮膚線維芽細胞におけるグルタチオン産生促進作用を試験した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α改変型イーグル最小必須培地(α-MEM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×105 cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有α-MEMで希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、48時間培養した。
培養後、培地を除去し、1%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)に溶解した被験試料(試料1~3,最終濃度は下記表14を参照)を各ウェルに200μL添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加の1%FBS含有DMEMを用いて同様に培養した。培養終了後、各ウェルから培地を除去し、400μLのPBS(-)緩衝液にて洗浄した後、150μLのM-PER(PIERCE社製)を使用して細胞を溶解した。
このうちの100μLを使用して総グルタチオンの定量を行った。すなわち、96ウェルプレートに、溶解した細胞抽出液100μL、0.1mol/Lリン酸緩衝液50μL、2mmol/L NADPH25μL、および3.2unit/mLのグルタチオンレダクターゼ25μLを加え、37℃で10分間加温した後、10mmol/L 5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオン(富士フィルム和光純薬社製)を使用して作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式によりグルタチオン産生促進率(%)を算出した。
グルタチオン産生促進率(%)=B/A×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加における総タンパク量当たりのグルタチオン量
B:被験試料添加における総タンパク量当たりのグルタチオン量
結果を表14に示す。
Figure 0007215761000016
表14に示すように、化合物1(試料1)、化合物2(試料2)および化合物3(試料3)は、いずれも線維芽細胞において優れたグルタチオン産生促進作用を有していると認められた。
〔試験例14〕トランスグルタミナーゼ-1(TGM1)mRNA発現促進作用試験
化合物1~3(試料1~3)について、以下のようにしてTGM1 mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を15×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに2mLずつ播種し(30×10cells/ウェル)、37℃・5%COの条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGMに増殖添加剤(hEGF,BPE,インスリン,抗菌剤,ハイドロコーチゾン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
24時間培養後、培地を除去し、KBMに溶解した被験試料(試料1~3,最終濃度は下記表15を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃・5%COの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、150ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、TGM1および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)TB Green (R) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。プライマーは、それぞれ5'-AGGTGGAGCTTAGCCCTGTG-3'および5'-GCAAGTGAAGACTGACTCCCTCTC-3'の配列を有するものを用いた。
TGM1 mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりTGM1 mRNA発現促進率(%)を算出した。
TGM1 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表15に示す。
Figure 0007215761000017
表15に示すように、化合物1(試料1)、化合物2(試料2)および化合物3(試料3)は、いずれも優れたTGM1 mRNA発現促進作用を有していた。
〔試験例15〕セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにしてSPT mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を15×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに2mLずつ播種し(30×10cells/ウェル)、37℃・5%COの条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGMに増殖添加剤(hEGF,BPE,インスリン,抗菌剤,ハイドロコーチゾン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
24時間培養後、培地を除去し、KBMに溶解した被験試料(試料1,最終濃度は下記表16を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃・5%COの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、150ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、SPTおよび内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)TB Green (R) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。プライマーはタカラバイオ社製のものを使用した。SPT mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりSPT mRNA発現促進率(%)を算出した。
SPT mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表16に示す。
Figure 0007215761000018
表16に示すように、化合物1(試料1)は、優れたSPT mRNA発現促進作用を有していた。
〔試験例16〕アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにしてAQP3 mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を15×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに2mLずつ播種し(30×10cells/ウェル)、37℃・5%COの条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGMに増殖添加剤(hEGF,BPE,インスリン,抗菌剤,ハイドロコーチゾン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
24時間培養後、培地を除去し、KBMに溶解した被験試料(試料1,最終濃度は下記表17を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃・5%COの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、150ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、AQP3および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)TB Green (R) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。プライマーはタカラバイオ社製のものを使用した。AQP3 mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりAQP3 mRNA発現促進率(%)を算出した。
AQP3 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表17に示す。
Figure 0007215761000019
表17に示すように、化合物1(試料1)は優れたAQP3 mRNA発現促進作用を有していた。
〔試験例17〕フィラグリン(FLG)mRNA発現促進作用試験
化合物1~3(試料1~3)について、以下のようにしてFLG mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を15×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに2mLずつ播種し(30×10cells/ウェル)、37℃・5%COの条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGMに増殖添加剤(hEGF,BPE,インスリン,抗菌剤,ハイドロコーチゾン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
24時間培養後、培地を除去し、KBMに溶解した被験試料(試料1~3,最終濃度は下記表18を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃・5%COの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、150ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、FLGおよび内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)TB Green (R) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。プライマーはタカラバイオ社製のものを使用した。FLG mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりFLG mRNA発現促進率(%)を算出した。
FLG mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表18に示す。
Figure 0007215761000020
表18に示すように、化合物1(試料1)、化合物2(試料2)および化合物3(試料3)は、いずれも優れたFLG mRNA発現促進作用を有していた。
〔試験例18〕クローディン-1(CLDN1)mRNA発現促進作用試験
化合物1(試料1)および化合物3(試料3)について、以下のようにしてCLDN1 mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を15×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに2mLずつ播種し(30×10cells/ウェル)、37℃・5%COの条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGMに増殖添加剤(hEGF,BPE,インスリン,抗菌剤,ハイドロコーチゾン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
24時間培養後、培地を除去し、KBMに溶解した被験試料(試料1および3,最終濃度は下記表19を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃・5%COの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、150ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、CLDN1および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)TB Green (R) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。プライマーはタカラバイオ社製のものを使用した。CLDN1 mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりCLDN1 mRNA発現促進率(%)を算出した。
CLDN1 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表19に示す。
Figure 0007215761000021
表19に示すように、化合物1(試料1)および化合物3(試料3)は、いずれも優れたCLDN1 mRNA発現促進作用を有していた。
〔試験例19〕クローディン-4(CLDN4)mRNA発現促進作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにしてCLDN4 mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を15×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに2mLずつ播種し(30×10cells/ウェル)、37℃・5%COの条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGMに増殖添加剤(hEGF,BPE,インスリン,抗菌剤,ハイドロコーチゾン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
24時間培養後、培地を除去し、KBMに溶解した被験試料(試料1,最終濃度は下記表20を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃・5%COの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、150ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、CLDN4および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)TB Green (R) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。プライマーはタカラバイオ社製のものを使用した。CLDN4 mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりCLDN4 mRNA発現促進率(%)を算出した。
CLDN4 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表20に示す。
Figure 0007215761000022
表20に示すように、化合物1(試料1)は優れたCLDN4 mRNA発現促進作用を有していた。
〔試験例20〕オクルディン(OCLN)mRNA発現促進作用試験
化合物1(試料1)および化合物3(試料3)について、以下のようにしてOCLN mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を15×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに2mLずつ播種し(30×10cells/ウェル)、37℃・5%COの条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGMに増殖添加剤(hEGF,BPE,インスリン,抗菌剤,ハイドロコーチゾン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
24時間培養後、培地を除去し、KBMに溶解した被験試料(試料1および3,最終濃度は下記表21を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃・5%COの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、150ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、OCLNおよび内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)TB Green (R) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。プライマーはタカラバイオ社製のものを使用した。OCLN mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりOCLN mRNA発現促進率(%)を算出した。
OCLN mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表21に示す。
Figure 0007215761000023
表21に示すように、化合物1(試料1)および化合物3(試料3)は、いずれも優れたOCLN mRNA発現促進作用を有していた。
〔試験例21〕最終糖化生成物(AGEs)形成抑制作用試験
化合物1(試料1)および化合物2(試料2)について、以下のようにしてAGEsの形成抑制作用を試験した。
96ウェルのI型コラーゲンコートプレート(旭硝子社製)に、PBS(-)緩衝液にて調製した0.2M D(-)-リボースおよび被験試料(試料1および2,最終濃度は下記表22を参照)の混合液100μLを添加した後、37℃で20日間静置し、AGEsを形成させた。なお、陰性対照としてPBS(-)緩衝液のみ、および陽性対照としてPBS(-)緩衝液にて調製した0.2M D(-)-リボース溶液を、それぞれ同様に静置した。20日後、抗AGEs抗体(トランスジェニック社製)を用いたELISA法によりAGEs量を測定し、AGEs形成抑制作用を評価した。得られた結果から、下記式によりAGEs形成抑制率(%)を算出した。
AGEs形成抑制率(%)={(B-C)/(B-A)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:陰性対照での波長405nmにおける吸光度
B:陽性対照での波長405nmにおける吸光度
C:被験試料添加での波長405nmにおける吸光度
結果を表22に示す。
Figure 0007215761000024
表22に示すように、化合物1(試料1)および化合物2(試料2)は優れたAGEs形成抑制作用を示した。
〔試験例22〕最終糖化生成物(AGEs)分解促進作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにしてAGEsの分解促進作用を試験した。
96ウェルのI型コラーゲンコートプレート(旭硝子社製)に、PBS(-)緩衝液にて調製した0.2MD (-)-リボース溶液100μLを添加し、37℃で2週間静置し、AGEsを形成させた。なお、陰性対照としてPBS(-)緩衝液のみ添加したものを同様に静置した。2週間後、PBS(-)緩衝液にて調製した被験試料(試料1,最終濃度は下記表23を参照)を100μLずつ添加し、さらに37℃で20日間静置した。なお、陽性対照として、被験試料に代えてPBS(-)緩衝液のみ、および陰性対照として引き続きPBS(-)緩衝液のみを、それぞれ同様に静置した。20日後、抗AGEs抗体(トランスジェニック社製)を用いたELISA法によりAGEs量を測定し、AGEs分解促進作用を評価した。得られた結果から、下記式によりAGEs分解促進率(%)を算出した。
AGEs分解促進率(%)={(B-C)/(B-A)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:陰性対照での波長405nmにおける吸光度
B:陽性対照での波長405nmにおける吸光度
C:被験試料添加での波長405nmにおける吸光度
結果を表23に示す。
Figure 0007215761000025
表23に示すように、化合物1(試料1)は優れたAGEs分解促進作用を示した。
〔試験例23〕テストステロン5α-レダクターゼ阻害作用試験
化合物1~3(試料1~3)について、以下のようにしてテストステロン5α-レダクターゼ阻害作用を試験した。
蓋付V底試験管にて、プロピレングリコールで調製した4.2mg/mLテストステロン(富士フィルム和光純薬社製)溶液20μLと、1mg/mL NADPHを含有する5mmol/L Tris-HCl(pH7.13)緩衝液825μLとを混合した。
さらに、80%エタノールにて調製した被験試料(試料1~3,最終濃度は下記表24を参照)溶液80μLと、S-9(オリエンタル酵母工業社製,ラット肝臓ホモジネート)75μLとを加えて混合し、37℃にて60分間インキュベートした。その後、塩化メチレン1mLを加えて反応を停止させた。これを遠心分離し(1600×g,10分間)、塩化メチレン層を分取して、分取した塩化メチレン層について、下記の条件にてガスクロマトグラフィー分析に供し、3α-アンドロスタンジオール、5α-ジヒドロテストステロン(5α-DHT)およびテストステロンの濃度を定量した。なお、コントロールとして、被験試料溶液の代わりに試料溶媒を同量(80μL)用いて同様に処理し、ガスクロマトグラフィー分析に供した。
<ガスクロマトグラフィー条件>
使用装置:Shimadzu GC-2010(島津製作所社製)
カラム:DB-1701(内径:0.53mm,長さ:30m,膜厚:1.0μm)(J&W Scientific社製)
カラム温度:240℃
注入口温度:300℃
検出器:FID
試料注入量:1μL
スプリット比:1:2
キャリアガス:窒素ガス
キャリアガス流速:12mL/min
3α-アンドロスタンジオール、5α-DHT及びテストステロンの濃度の定量は、下記の方法により行った。
3α-アンドロスタンジオール、5α-DHT及びテストステロンの標準品をエタノールに溶解し、当該溶液をガスクロマトグラフィー分析に供し、これらの化合物の濃度(μg/mL)及びピーク面積から、ピーク面積と化合物の濃度との対応関係を予め求めておいた。そして、テストステロンとS-9との反応後の3α-アンドロスタンジオール、5α-DHTおよびテストステロンのそれぞれのピーク面積あたりの濃度を、予め求めておいた対応関係を利用して、下記式(1)に基づいて求めた。
A=B×C/D・・・(1)
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:3α-アンドロスタンジオール、5α-DHTまたはテストステロンの濃度
B:3α-アンドロスタンジオール、5α-DHTまたはテストステロンのピーク面積
C:標準品の濃度
D:標準品のピーク面積
式(1)に基づいて算出された化合物濃度を用いて、下記式(2)に基づき、変換率(テストステロン5α-レダクターゼによりテストステロンが還元されて生成した3α-アンドロスタンジオールおよび5α-DHTの濃度と、テストステロンの初期濃度との濃度比)を算出した。
変換率=(E+F)/(E+F+G)・・・(2)
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
E:3α-アンドロスタンジオールの濃度(μg/mL)
F:5α-DHTの濃度(μg/mL)
G:テストステロンの濃度(μg/mL)
式(2)に基づいて算出された変換率を用いて、下記式(3)に基づき、テストステロン5α-レダクターゼ阻害率(%)を算出した。
テストステロン5α-レダクターゼ阻害率(%)=(1-H/I)×100・・・(3)
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
H:被検試料添加での変換率
I:試料無添加での変換率
結果を表24に示す。
Figure 0007215761000026
表24に示すように、化合物1(試料1)、化合物2(試料2)および化合物3(試料3)は、優れたテストステロン5α-レダクターゼ阻害作用を有することが確認された。
〔試験例24〕毛乳頭細胞増殖促進作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにして毛乳頭細胞増殖促進作用を試験した。
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞(HFDPC,男性頭頂部由来)を、1%FCSおよび増殖添加剤を含有する毛乳頭細胞用増殖培地(PCGM,東洋紡績社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて1.0×10cells/mLの細胞密度になるように希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ播種し、3日間培養した。
その後、培地を除去し、無血清DMEMに溶解した被験試料(試料1,最終濃度は下記表25を参照)200μLを各ウェルに添加し、さらに4日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の無血清DMEMを用いて同様に培養した。培養終了後、MTTアッセイにより毛乳頭細胞増殖促進作用を測定した。すなわち、培地を除去し、無血清DMEMで調製した0.4mg/mL MTTを各ウェルに100μLを添加し、さらに2時間培養した後、細胞内に生成したブルーホルマザンを2-プロパノール100μLで抽出した。この抽出液について、ブルーホルマザンの吸収極大点がある570nmの吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。測定結果から、下記式に基づいて、毛乳頭細胞増殖促進率(%)を算出した。
毛乳頭細胞増殖促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのブルーホルマザン生成量
B:試料無添加でのブルーホルマザン生成量
結果を表25に示す。
Figure 0007215761000027
表25に示すように、化合物1(試料1)は、優れた毛乳頭細胞増殖促進作用を有していると認められた。
〔試験例25〕一酸化窒素(NO)産生抑制作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにして一酸化窒素(NO)産生抑制作用を試験した。
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7)を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて培養した後、セルスクレーパーにより細胞を回収した。回収した細胞を3.0×10cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有フェノールレッド不含有DMEMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、4時間培養した。
培養後、培地を除去し、終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有フェノールレッド不含有DMEMに溶解した被験試料(試料1,最終濃度は下記表26を参照)を各ウェルに100μL添加し、10%FBS含有フェノールレッド不含有DMEMに溶解したリポポリサッカライド(LPS,終濃度1μg/mL,E. coli 0111:B4,DIFCO社製)を100μL加え、48時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料溶液に代えて、試料無添加の終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有フェノールレッド不含有DMEMを用い、同様にLPS処理を行った。
一酸化窒素(NO)産生量は、亜硝酸イオン(NO )量を指標に測定した。培養終了後、各ウェルの培養液に、培養上清と同量のグリス試薬(1質量%スルファニルアミド及び0.1質量% N-1-naphthyl ethylendiamine dihydrochlorideを含む5質量%リン酸溶液)を添加し、10分間室温にて反応させた。反応後、波長540nmにおける吸光度を測定した。一酸化窒素(NO)産生抑制率(%)は、試料無添加時(コントロール)の一酸化窒素(NO)産生量を基に、下記式により算出した。
NO産生抑制率(%)={(B-A)/B}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加時のNO量
B:被験試料添加時のNO量
結果を表26に示す。
Figure 0007215761000028
表26に示すように、化合物1(試料1)は、優れた一酸化窒素産生抑制作用を有することが確認された。
〔試験例26〕ヒアルロニダーゼ活性阻害作用試験
化合物1~3(試料1~3)について、以下のようにしてヒアルロニダーゼ活性阻害作用を試験した。
0.1mol/L酢酸緩衝液(pH3.5)に溶解した被験試料(試料1~3,最終濃度は下記表27を参照)0.2mLに、ヒアルロニダーゼ溶液(SIGMA社製,Type IV-S,from bovine testes,400 NF units/mL)0.1mLを加え、37℃で20分間静置した。さらに、活性化剤として2.5mmol/L塩化カルシウム0.2mLを加え、37℃で20分間静置した。これに0.8mg/mLヒアルロン酸ナトリウム溶液(from rooster comb)0.5mLを加え、37℃で40分間反応した。その後、0.4mol/L水酸化ナトリウム0.2mLを加えて反応を止め冷却した後、各反応溶液にホウ酸溶液0.2mLを加え、3分間煮沸した。氷冷後、p-DABA試薬6mLを加え、37℃で20分間反応した。その後、波長585nmにおける吸光度を測定した。
また、ブランクとして、酵素溶液を添加しない場合についても同様の操作および吸光度の測定を行った。さらに、コントロールとして、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。得られた結果から、下記式によりヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)を算出した。
ヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)={1-(A-B)/(C-D)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加・酵素添加での波長585nmにおける吸光度
B:被験試料添加・酵素無添加での波長585nmにおける吸光度
C:試料無添加・酵素添加での波長585nmにおける吸光度
D:試料無添加・酵素無添加での波長585nmにおける吸光度
結果を表27に示す。
Figure 0007215761000029
表27に示すように、化合物1(試料1)、化合物2(試料2)および化合物3(試料3)は、いずれも優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有することが確認された。
〔試験例27〕ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用試験
化合物2(試料2)について、以下のようにしてヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を試験した。
ラット好塩基球白血病細胞(RBL-2H3)を、15%FBS含有スピナー改変型イーグル最小必須培地(S-MEM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を4.0×10cells/mLの細胞密度になるように15%FBS含有S-MEMで希釈し、終濃度0.5μg/mLとなるようにDNP-specific IgEを添加した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
培養後、培地を除去し、シラガニアン緩衝液100μLにて洗浄を2回行った。次に、同緩衝液30μLと、同緩衝液に溶解した被験試料(試料2,最終濃度は下記表28を参照)10μLとを各ウェルに添加し、37℃にて10分間静置した。なお、コントロールとして、試料無添加のシラガリアン緩衝液40μLを用いて同様の操作を行った。続いて、400ng/mL DNP-BSA溶液10μLを加え、37℃にて15分間静置し、ヘキソサミニダーゼを遊離させた。
その後、96ウェルプレートを氷上に静置することにより遊離を停止した。各ウェルの細胞上清10μLを新たな96ウェルプレートに採取し、各ウェルに1mmol/L p-ニトロフェニル-N-アセチル-β-D-グルコサミニド(p-NAG)溶液10μLを添加し、37℃で1時間反応させた。
反応終了後、各ウェルに0.1mol/L NaCO/NaHCO250μLを加え、波長415nm及び650nmにおける吸光度を測定し、415nmにおける吸光度から650nmにおける吸光度を減じた値を補正値とした。得られた測定結果から、下記式によりヘキソサミニダーゼ遊離抑制率(%)を算出した。
ヘキソサミニダーゼ遊離抑制率(%)={1-(B/A)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加での波長415-650nmにおける吸光度
B:被験試料添加での波長415-650nmにおける吸光度
結果を表28に示す。
Figure 0007215761000030
表28に示すように、化合物2(試料2)は、優れたヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を有することが確認された。
〔試験例28〕マウスマクロファージにおけるプロスタグランジンE(PGE)産生抑制作用試験
化合物1(試料1)について、以下のようにしてPGE産生抑制作用を試験した。
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7)を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて培養した後、セルスクレーパーにより細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10cells/mLの濃度になるように10%FBS含有DMEMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、18時間培養した。
培養終了後、既に存在するCOX-1および少量発現しているCOX-2をアセチル化し失活させるため、培地を500μmol/Lアスピリン含有培地に交換し4時間培養した。その後、細胞をPBS(-)緩衝液で3回洗浄し、終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有DMEMで溶解した被験試料(試料1,最終濃度は下記表29を参照)を各ウェルに100μL添加した後、終濃度1μg/mLで10%FBS含有DMEMに溶解したリポポリサッカライド(LPS)(DIFCO社製,E.coli 0111;B4)を100μL添加し、16時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有DMEMを用いて同様に培養した。培養終了後、各ウェルの培養上清中のプロスタグランジンE量を、PGE EIA Kit(Cayman Chemical社製)を用いて定量した。得られた結果から、下記式によりPGE産生抑制率(%)を算出した。
PGE産生抑制率(%)={1-(A-C)/(B-C)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加・LPS刺激でのPGE
B:試料無添加・LPS刺激でのPGE
C:試料無添加・LPS無刺激でのPGE
結果を表29に示す。
Figure 0007215761000031
表29に示すように、化合物1(試料1)は、マクロファージにおいて優れたPGE産生抑制作用を有することが確認された。
〔試験例29〕グルタチオン産生促進作用試験(肝細胞)
化合物1~3(試料1~3)について、肝細胞におけるグルタチオン産生促進作用を以下のように試験した。
正常ヒト肝細胞(Hepatocyte)を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10×10 cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有DMEMで希釈した後、48wellプレートに1wellあたり200μLずつ播種し、一晩培養した。
培養後、培地を除去し、1%FBS含有DMEMに溶解した被験試料(試料1~3,最終濃度は下記表30を参照)を各wellに200μLずつ添加し、さらに24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の1%FBS含有DMEMを用いて同様に培養した。培養終了後、各wellから培地を除去し、400μLのPBS(-)にて洗浄した後、150μLのM-PER(PIERCE社製)を用いて細胞を溶解した。
このうちの100μLを用いて総グルタチオンの定量を行った。すなわち、96wellプレートに溶解した細胞抽出液100μL、0.1mol/Lのリン酸緩衝液50μL、2mmol/LのNADPH25μLおよび3.2unit/mLのグルタチオンレダクターゼ25μLを加え37℃で10分間加温した後、10mmol/Lの5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオン(富士フィルム和光純薬社製)を使用して作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式に基づいてグルタチオン産生促進率(%)を算出した。
グルタチオン産生促進率(%)=B/A×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加における総タンパク量当たりのグルタチオン量
B:被験試料添加における総タンパク量当たりのグルタチオン量
結果を表30に示す。
Figure 0007215761000032
表30に示すように、化合物1(試料1)、化合物2(試料2)および化合物3(試料3)は、いずれも肝細胞において優れたグルタチオン産生促進作用を有しているものと認められた。
〔試験例30〕肝細胞におけるATP産生促進作用試験
化合物1~3(試料1~3)について、肝細胞におけるATP産生促進作用を以下のように試験した。
正常ヒト肝細胞(Hepatocyte)を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有DMEMで希釈した後、96wellプレートに1wellあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、培地を除去し、10%FBS含有DMEMに溶解した被験試料(試料1~3,最終濃度は下記表31を参照)を各wellに100μLずつ添加し、2時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の10%FBS含有DMEMを用いて同様に培養した。
ATP産生促進作用は、ホタルルシフェラーゼ発光法を用いて細胞内のATP量を測定することにより評価した。すなわち、2時間培養後、ATP測定試薬(東洋ビーネット社製,商品名「『細胞の』ATP測定試薬」)を各ウェルに100μLずつ添加し、ルシフェラーゼによる化学発光反応を行った。反応後、細胞内ATP量に比例した化学発光量を、化学発光測定装置(Thermo Fisher Scientific社製,製品名:Varioskan LUX マルチモードマイクロプレートリーダー)を用いて測定した。得られた結果から、下記式によりATP産生促進率(%)を算出した。
ATP産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での化学発光量
B:試料無添加での化学発光量
結果を表31に示す。
Figure 0007215761000033
表31に示すように、化合物1(試料1)、化合物2(試料2)および化合物3(試料3)は、いずれも肝細胞において優れたATP産生促進作用を有しているものと認められた。
〔配合例1〕
常法により、以下の組成を有する錠剤を製造した。
化合物1 5.0mg
ドロマイト(カルシウム20%、マグネシウム10%含有) 83.4mg
カゼインホスホペプチド 16.7mg
ビタミンC 33.4mg
マルチトール 136.8mg
コラーゲン 12.7mg
ショ糖脂肪酸エステル 12.0mg
〔配合例2〕
常法により、以下の組成を有する経口液状製剤を製造した。
<1アンプル(1本100mL)中の組成>
化合物2 0.3質量%
ソルビット 12.0質量%
安息香酸ナトリウム 0.1質量%
香料 1.0質量%
硫酸カルシウム 0.5質量%
精製水 残部(100質量%)
〔配合例3〕
常法により、以下の組成を有するカプセル剤を製造した。なお、カプセルとしては、1号ハードゼラチンカプセルを使用した。
<1カプセル(1錠200mg)中の組成>
化合物3 10.0mg
コーンスターチ 70.0mg
乳糖 100.0mg
乳酸カルシウム 10.0mg
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L) 10.0mg
〔配合例4〕
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
化合物1 0.01g
ホホバオイル 4.00g
1,3-ブチレングリコール 3.00g
アルブチン 3.00g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.50g
オリーブオイル 2.00g
スクワラン 2.00g
セタノール 2.00g
モノステアリン酸グリセリル 2.00g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
グリチルレチン酸ステアリル 0.10g
黄杞エキス 0.10g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.10g
イチョウ葉エキス 0.10g
コンキオリン 0.10g
オウバクエキス 0.10g
カミツレエキス 0.10g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例5〕
下記組成のクリームを常法により製造した。
化合物2 0.05g
クジンエキス 0.1g
オウゴンエキス 0.1g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
スクワラン 10.0g
セタノール 3.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
油溶性甘草エキス 0.1g
1,3-ブチレングリコール 6.0g
パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
香料 0.1g
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例6〕
下記組成の美容液を常法により製造した。
化合物3 0.01g
カミツレエキス 0.1g
ニンジンエキス 0.1g
キサンタンガム 0.3g
ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
カルボキシビニルポリマー 0.1g
1,3-ブチレングリコール 4.0g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
グリセリン 2.0g
水酸化カリウム 0.25g
香料 0.01g
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
エタノール 2.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例7〕
下記組成のヘアトニックを常法により製造した。
化合物1 0.2g
化合物2 0.1g
化合物3 0.1g
酢酸トコフェロール 適量
セファラチン 0.002g
イソプロピルメチルフェノール 0.1g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.15g
グリセリン 15.0g
エタノール 15.0g
香料 適量
キレート剤(エデト酸ナトリウム) 適量
防腐剤(ヒノキチオール) 適量
可溶化剤(ポリオキシエチレンセチルエーテル) 適量
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例8〕
下記組成のシャンプーを常法により製造した。
化合物1 0.2g
化合物2 0.2g
化合物3 0.2g
マジョラム抽出物 1.0g
ウメ果実部抽出物 0.2g
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0g
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10.0g
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0g
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0g
プロピレングリコール 2.0g
香料 適量
精製水 残部(全量を100gとする)

Claims (5)

  1. 下記一般式(I)で表される化合物1~3からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とする抗老化剤。
    Figure 0007215761000034
  2. 下記一般式(I)で表される化合物1~3からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とする育毛剤。
    Figure 0007215761000035

  3. 下記一般式(I)で表される化合物1~3からなる群より選択される1種または2種以上を配合した経口組成物であって、
    抗老化用途、および/または、育毛用途に用いられることを特徴とする経口組成物。
    Figure 0007215761000036
  4. 下記一般式(I)で表される化合物1~3からなる群より選択される1種または2種以上を配合したことを特徴とする抗老化用皮膚化粧料。
    Figure 0007215761000037
  5. 下記一般式(I)で表される化合物1~3からなる群より選択される1種または2種以上を配合したことを特徴とする育毛用頭髪化粧料。
    Figure 0007215761000038
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