JP6709587B2 - 皮膚化粧料および頭髪化粧料 - Google Patents

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Description

本発明は、抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤、ジペプチジルペプチダーゼIV活性阻害剤、皮膚化粧料、頭髪化粧料および飲食品に関するものである。
グルタチオンは、グルタミン酸、システインおよびグリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドであり、細胞内の主要なシステイン残基を有する化合物である。細胞内におけるグルタチオンは、ラジカルの捕捉、酸化還元による細胞機能の調節、異物代謝、各種酵素のSH供与体としての機能を果たすものであり、活性酸素等に対する抗酸化成分としても知られている。その作用発現は、システイン残基に由来すると考えられている。しかしながら、過剰な酸化ストレスや異物の付加、加齢などにより、細胞内のグルタチオン量が欠乏または低下することが報告されており、このことが細胞の酸化ストレスに対する防御能を低下させ、細胞のDNAおよびタンパク質等の構成成分にダメージを与える一因であると考えられている。
このような、細胞内のグルタチオン量の低下または欠乏が病態と関連することが知られている疾患として、酸化ストレスが原因となって誘発される疾患群のほか、肝障害(アルコールの多飲、または重金属や化学物質等の異物の摂取が原因となる)等が知られている。すなわち、グルタチオンの産生を促進することは、細胞の酸化ストレスに対する防御能を高め、細胞内のグルタチオン量が低下または欠乏することに起因する上記の疾患群を予防ないし治療することができると考えられる。グルタチオン産生促進作用を有するものとして、リクイリチゲニン(特許文献1参照)等が知られている。
表皮は、外部刺激を緩和し、水分等の体内成分の逸失を制御する働きをしており、最下層である基底層から始まって、有棘層、顆粒層、角質層へと連なる4層構造から構成されている。各層に存在する大部分の細胞は、基底層から分化した角化細胞である。基底層で分裂、増殖した角化細胞は、有棘層、顆粒層を通過しながら分化し角質細胞となって、強固な架橋結合をもったケラチン蛋白線維で構成された角質層を構成し、最終的には垢として角質層から脱落する。
角質層は皮膚の最外殻に存在しており、外界からの刺激に対する物理的なバリアとしての役割を果たしている。皮膚ではこのバリア機能を持たせるため、角化細胞が基底層で産生されてから垢となって剥がれ落ちるまでのサイクル(角化)を通常4週間の周期で繰り返し、表皮の新陳代謝を行っている。しかしながら、この角質層も加齢によって新陳代謝機能が衰え、こじわ、くすみ、色素沈着、肌荒れ等の皮膚トラブルを発生することになる。そのため、角化細胞の増殖を促進し、肌の新陳代謝機能を回復させることにより、こじわ、くすみ、色素沈着等の皮膚の老化を改善できるものと考えられる。従来、表皮角化細胞増殖促進作用を有するものとして、土貝母抽出物(特許文献2参照)等が知られている。
近年、皮膚の老化に伴う変化を誘導する因子として、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs;Matrix metalloproteinases)の関与が指摘されている。このMMPsの中でも、ゼラチナーゼ群に属する酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ−2(MMP−2)は、基底膜の主要構成成分であるIV型コラーゲンやラミニン5を分解する酵素として知られている。MMP−2の発現および活性は紫外線の照射により大きく増加し、紫外線による基底膜成分の減少、基底膜の構造変化の原因となり、皮膚におけるシワやたるみの形成等の大きな要因となることが明らかとなっている(非特許文献1参照)。MMP−2の活性が亢進すると、細胞外マトリックスが破壊される。細胞外マトリックスの破壊は、癌の浸潤・転移、関節リュウマチ、変形性膝関節症、歯周病、加齢黄斑変性症等、様々な疾患と関連することが知られている。さらに、MMP−2は、血管内皮細胞下に存在する基底膜を構成するIV型コラーゲン等を分解し、分解された血管内皮細胞は間質へ遊走していき、間質中で増殖し、管腔を形成し、新生血管を構築していく。そして、この新生された血管が腫瘍細胞に到達して、栄養源と酸素とを腫瘍細胞に供給し、腫瘍が大きくなっていくことが知られている(非特許文献2参照)。
したがって、MMP−2の活性を阻害することにより、基底膜成分の減少、基底膜の構造変化を抑制し、皮膚機能を改善することができるとともに、血管新生を抑制し、腫瘍細胞の増殖を抑制することができると考えられる。MMP−2阻害作用を有するものとしては、例えば、クロバナツルアズキからの抽出物(特許文献3参照)等が知られている。
セラミドは、表皮細胞の角化の過程においてセリンとパルミトイル−CoAとを基に、セラミド合成の律速酵素として知られるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)をはじめとする酵素の働きにより生成される。セラミドは、皮膚最外層を覆う角質細胞間脂質の主成分として特異的に存在し、皮膚本来が持つ生体と外界とのバリア膜としての機能維持に重要な役割を果たしている。
角質層の構造は、レンガとモルタルとに例えられ、15層ほどに積み重なった角質細胞を細胞間脂質が繋ぎ止める形で強固なバリア膜を形成している。角質細胞は、アミノ酸を主成分とする天然保湿因子を細胞内に含有することによって水分を保持し、一方、角質細胞間脂質は、約50%のセラミドを主成分とし、コレステロール、脂肪酸等の両親媒性脂質から構成されており、疎水性部分と親水性部分とが交互に繰り返される層板構造、いわゆるラメラ構造を特徴としている。
様々な内的・外的要因による皮膚のバリア機能の低下は、経表皮水分蒸散量を増加させ、皮膚のかさつき、落屑、掻痒感等を惹き起こし、いわゆる乾燥肌に陥る。また、皮膚のバリア機能の低下は、皮膚の炎症を増大させ、外界からの様々な刺激に対する防御機能が低下するという悪循環に陥る。最近の研究において、加齢により、またはバリア障害として知られるアトピー性皮膚炎患者において、角質セラミド成分(いわゆる細胞間脂質)の減少や組成変化が報告されており(非特許文献3参照)、皮膚のバリア機能の維持、改善にセラミドが重要であることが広く知られるようになっている。皮膚のバリア機能を改善する方法として、セラミドを外部から補う方法(非特許文献4参照)や皮膚内部においてセラミド産生能を高める方法(非特許文献5参照)等が知られている。
皮膚細胞では、水チャンネルとして知られるアクアポリンが、細胞膜上に発現して、細胞間隙の水をはじめとする低分子物質を細胞内へ取り込む役割を担っていることが知られている。ヒトでは、13種類のアクアポリン(AQP0〜AQP12)の存在が知られている。表皮細胞においては、主としてAQP3が存在しており、水に加えて、水分保持作用に関与するグリセロールや尿素等の低分子化合物をも取り込む役割を担っていると考えられている。
しかしながら、AQP3は加齢とともに減少し、このことが水分保持機能の低下の一因であることが示唆されているため、AQP3の発現を促進することにより、加齢による水分保持能やバリア機能等を制御することが可能であると考えられる(非特許文献6参照)。AQP3発現促進作用を有するものとして、例えば、スターフルーツの葉部からの抽出物(特許文献4参照)等が知られている。
皮膚においてメラニンは、紫外線から生体を保護する役目も果たしているが、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化やシミの原因となる。一般にメラニンは、色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、ついで5,6−ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成されるものとされている。したがって、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)、シミ、ソバカス等を予防、治療または改善するためには、メラニンの産生に関与するチロシナーゼの活性を阻害すること、またはメラニンの産生を抑制することが考えられる。
従来、皮膚色素沈着症、シミ、ソバカス等の予防、治療または改善には、ハイドロキノン等の化学合成品を有効成分とする美白剤を外用する処置が行われてきた。しかしながら、ハイドロキノン等の化学合成品は、皮膚刺激、アレルギー等の副作用のおそれがある。そこで、安全性の高い天然原料を有効成分とする美白剤の開発が望まれており、チロシナーゼ活性阻害作用を有するものとしては、例えば、ヤナギタデ抽出物(特許文献5参照)等が知られている。また、メラニン産生抑制作用を有するものとしては、例えば、サウスウレア(Saussurea)属植物からの抽出物(特許文献6参照)等が知られている。
多くのステロイドホルモンは産生臓器から分泌された分子型で受容体と結合してその作用を発現するが、アンドロゲンと総称される男性ホルモンの場合、例えば、テストステロンは標的臓器の細胞内に入ってテストステロン5α−レダクターゼにより5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)に還元されてから受容体と結合し、アンドロゲンとしての作用を発現する。
アンドロゲンは重要なホルモンであるが、それが過度に作用すると、男性型脱毛症、多毛症、脂漏症、座瘡(ニキビなど)、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等、さまざまな好ましくない症状を誘発する。そこで、従来から、これらの各種症状を改善するために過剰のアンドロゲンの作用を抑制する方法、具体的には、テストステロンを活性型5α−DHTに還元するテストステロン5α−レダクターゼの作用を阻害することにより、活性な5α−DHTが生じるのを抑制する方法や、テストステロンから生じた5α−DHTが受容体と結合するのを阻害することによりアンドロゲン活性を発現させない方法などが知られている。これまでに、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用やアンドロゲン受容体結合阻害作用を有するものとして、例えば、東紫蘇からの抽出物(特許文献7参照)等が知られている。
毛髪は、成長期、退行期および休止期からなる周期的なヘアサイクル(毛周期)に従って成長および脱落を繰り返している。このヘアサイクルのうち、休止期から成長期にかけての新たな毛包が形成されるステージが、発毛に最も重要であると考えられており、このステージにおける毛包上皮系細胞の増殖・分化に重要な役割を果たしているのが、毛乳頭細胞であると考えられている。毛乳頭細胞は、毛根近傍にある外毛根鞘細胞とマトリックス細胞とからなる毛包上皮系細胞の内側にあって、基底膜に包まれている毛根の根幹部分に位置する細胞であり、毛包上皮系細胞に働きかけてその増殖を促進する等、毛包上皮系細胞の増殖・分化および毛髪の形成において重要な役割を担っている(非特許文献7参照)。
このように、毛乳頭細胞は、毛包上皮系細胞の増殖・分化および毛髪の形成において重要な役割を果たしており、毛乳頭細胞の増殖を促進することで、脱毛症を予防ないし改善することができると考えられる。これまでに、毛乳頭細胞増殖促進作用を有するものとしては、例えば、ワイルドタイム抽出物(特許文献8参照)等が知られている。
炎症性疾患、例えば、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、アトピー性皮膚炎、その他肌荒れを伴う各種皮膚炎症性疾患、関節リウマチ、変形性関節症、喘息等の原因および発症機構は、多種多様である。その原因として、主にマクロファージから産生される腫瘍壊死因子(TNF−α)によるもの、ヒアルロニダーゼの活性の亢進によるもの、ヒスタミンの遊離によるもの、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の活性の亢進によるものなどが知られている。
TNF−αは、腫瘍を壊死させる因子として見出されたが、最近では腫瘍に対してだけでなく、正常細胞の機能を調節するメディエーター的な役割を担うサイトカインであると考えられている。TNF−αは、炎症の初発から終息までの過程において重要な役割を担っているが、その持続的かつ過剰な産生は、皮膚を含む組織の障害を引き起こし、全身的には発熱やカケクシアの原因となり、炎症の悪化を引き起こす。したがって、病的な炎症においては、TNF−αの過剰な産生を抑制することが重要となる。TNF−α産生抑制作用を有するものとして、例えば、土貝母からの抽出物(前述した特許文献2参照)等が知られている。
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸の加水分解酵素である。体組織への親和性を保つヒアルロン酸塩は、含水系の中では紫外線、酸素等によって分解され、分子量の低下に伴って保水効果も減少する。また、ヒアルロン酸は、生体内において細胞間組織として存在し、血管透過性にも関与している。さらに、ヒアルロニダーゼは、肥満細胞中に存在するが、その活性化により起こる脱顆粒により遊離され、炎症系ケミカルメディエーターとして作用する。したがって、ヒアルロニダーゼの活性を阻害することで、保湿の強化および炎症の予防または軽減が期待される。ヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有するものとして、例えば、オスベッキア属植物からの抽出物(特許文献9参照)等が知られている。
ヒスタミン遊離は、肥満細胞内のヒスタミンが細胞外に遊離する現象であり、遊離されたヒスタミンが炎症反応を引き起こす。そのため、ヒスタミン遊離を阻害または抑制する物質により、アレルギー性疾患および炎症性疾患を予防または治療する試みがなされている。しかし、ヒスタミンの遊離を直接的に評価することは困難であり、ヒスタミンの遊離と同時に遊離されることが確認されているヘキソサミニダーゼの遊離を指標にヒスタミンの遊離を評価することができる。したがって、ヘキソサミニダーゼの遊離を抑制することにより、同時にヒスタミンの遊離も抑制でき、これにより炎症性疾患等の予防、治療または改善に効果があるものと考えられる。
また、ヒスタミンは局所伝達物質として細胞間の情報伝達を仲介しており、消化器官においては胃酸分泌を亢進し、中枢神経系における神経伝達物質として機能し、覚醒状態の維持に寄与することが知られている。ここで、ヒスタミン遊離が過剰となると、消化器官においては胃酸過多による潰瘍の原因となり、中枢神経系においては睡眠障害の一因となる。前述したように、ヘキソサミニダーゼの遊離を抑制することにより、同時にヒスタミンの遊離も抑制できることから、これにより、胃酸過多を原因とする胃潰瘍、睡眠障害等を予防、治療または改善できると考えられる。ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を有するものとして、例えば、藤茶からの抽出物(特許文献10参照)等が知られている。
炎症は、発赤、浮腫、発熱、痛み、機能障害等の症状を示す複雑な反応である。微視的に見ると、炎症は、血漿漏出を起こす血管反応、白血球の浸潤、炎症性細胞による組織破壊等の共通する反応からなり、発熱反応や痛覚過敏等の中枢神経系も関与する、全身反応も引き起こす場合もある。このような炎症の個々の反応には、プロスタグランジンが重要な役割を果たしており、この炎症時におけるプロスタグランジンの産生には、主として誘導型のシクロオキシゲナーゼであるシクロオキシゲナーゼ−2が関与することが明らかとなっている。このため、炎症反応の防止および予防を図る目的で、アスピリンに代表される多くのシクロオキシゲナーゼ阻害剤が用いられている(非特許文献8参照)。
近年、飽食や運動不足等の生活習慣が原因となって体脂肪が増加し、肥満が増えている。このような肥満の増加は、人間ばかりでなく、ペットや家畜においても見られる。肥満は、高脂血症や動脈硬化等の成人病の原因になるため、美容の面で問題となるばかりでなく、健康の面でも大きな問題となる。
ここで、サイクリックAMP(cAMP)は、生体内の脂肪分解に関与することが知られている。cAMPは生体内に存在するリパーゼを活性化し、活性化されたリパーゼによって脂肪が脂肪酸とグリセロールとに分解される。しかし、cAMPホスホジエステラーゼが活性化されるとcAMPの分解が誘発され、リパーゼの活性化が阻害される。そのため、cAMPホスホジエステラーゼの活性を阻害することにより細胞内におけるcAMPが増量し、脂肪の分解を促進することができるものと考えられる。
また、炎症反応を引き起こす血小板凝集は、血小板中のサイクリックAMP(cAMP)の濃度と関係があり、cAMPホスホジエステラーゼによってcAMPが分解されてcAMPの濃度が低下すると、血小板は凝集しやすくなることが知られている。従って、cAMPホスホジエステラーゼの作用を抑制してcAMP濃度の低下を防止すれば、血小板凝集を防止でき、これによりアレルギー性疾患や炎症性疾患等を予防、治療または改善できると考えられる。cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有するものとして、ツベイモシドI(特許文献11参照)等が知られている。
肝臓は、腸で吸収された様々な栄養素を代謝、貯蔵する他、胆汁の生成や分泌、および解毒や排泄など、生命の維持に必要な多くの働きを行っており、ヒトにとって極めて重要な臓器である。しかし、肝臓は、不規則な生活、ストレス、ウイルス、薬物、アルコール、栄養不良、肝循環系障害などの様々な因子により、急性的または慢性的な障害が生じやすく、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、黄疸、肝硬変などの疾患(肝機能障害)を起こす場合がある。
ここで、肝臓においてグルタチオンは、多様な酸化ストレスから肝細胞を保護するほか、薬物や反応性化合物等の有害物質と抱合体を形成してそれらが細胞外に排出されるなど、薬物代謝などの肝機能の発現に直接的に寄与している。しかし、グルタチオンの作用が発揮されることは、同時にグルタチオンが消費されることでもあり、実際にラットにおいてガラクトサミン等により肝障害を誘導すると、肝細胞内のグルタチオン量が減少することが知られている。そのため、肝臓において、各種ストレスや薬物等に起因するグルタチオン量の低下を抑制することができれば、肝臓の障害が抑えられ、ひいては肝機能の向上につながると考えられる。
ジペプチジルペプチダーゼIV(以下、「DPPIV」ともいう。)は、セリンプロテアーゼの一つであって、N末端から2番目のプロリンまたはアラニンを認識し、そのC末端側を切断する酵素活性を有する。DPPIVは、腎臓、肝臓、腸管、胎盤等の組織の上皮および内皮細胞、ならびにT細胞の細胞表面に発現しており、その酵素活性等を介して様々な生理現象に関与すると考えられている。
DPPIVの基質として、インクレチンと呼ばれるホルモンが挙げられる。インクレチンは、栄養素の刺激により腸管から分泌され、血糖依存的に膵β細胞からインスリン分泌を促進するホルモンの総称であり、GLP−1やGIP等が知られている。これらインクレチンは、血糖依存的なインスリン分泌の促進だけでなく、膵α細胞からのグルカゴン分泌の抑制、血圧の低下、胃排出の抑制、さらには視床下部に作用しての摂食抑制等の作用を有している(非特許文献9参照)。しかし、インクレチンはDPPIVにより分解されるため、例えばGLP−1の生体内における半減期は1.5分程度であることが知られている。そのため、DPPIVの酵素活性を阻害することができれば、インクレチンの生体内における半減期を延長することができ、これにより、前述したインクレチンの作用を通じ2型糖尿病、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性等の治療に有用であると期待されている。
また、DPPIVはT細胞活性化マーカーの一つであるCD26と同一であり、多くの免疫調節ペプチドを基質とし、その活性を制御することが知られている。そのため、DPPIVの活性を制御することにより、関節リウマチ等の自己免疫疾患や移植による拒絶反応等の免疫反応を制御し得ると考えられる。さらに、DPPIVは、いくつかの神経ペプチドや成長ホルモンの代謝;癌における浸潤、転移、血管新生等;HIVのリンパ球への感染等への関与が知られている。そのため、DPPIVの活性を阻害することにより、疼痛、神経変性疾患および神経精神疾患等の神経障害(例えば坐骨神経痛、アルツハイマー病、うつ病等);成長ホルモン欠損症および成長ホルモンが治療に使用される疾患;癌(例えばT−細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、甲状腺癌、基底細胞癌、乳癌等);HIV感染症(AIDS)等の疾患を治療することができると考えられる。
なお、4−ビニルグアヤコールについては、フェルラ酸を含有する培地にてある種の乳酸菌を培養すると、4−ビニルグアヤコールが検出されることが知られている(非特許文献10)。
特開2009−269889号公報 特開2006−056854号公報 特開2007−217352号公報 特開2009−191039号公報 特開2004−083488号公報 特開2002−201122号公報 特開2010−184915号公報 特開2006−219407号公報 特開2003−055242号公報 特開2003−012532号公報 特開2006−056855号公報
Nature,1996年,Vol.379,No.6563,p.335-339 「血管新生とマトリックスメタロプロテアーゼ」,第120回日本医学会シンポジウム記録集 血管新生の基礎と臨床,2001年12月13日,p.43-49 J. Dermatol.,1993年,Vol.20,No.1,p.1-6 「フレグランスジャーナル」,2004年,Vol.32,No.11,p.23-32 Br. J. Dermatol.,2000年,Vol.143,Issue 3,p.524-531 「フレグランスジャーナル」,2006年,Vol.34,No.10,p.19-23 Trends Genet.,1992年,Vol.8,Issue 2,p.55-61 「薬理学アトラス」,福原武彦監訳,文光堂,1995年,p.184 「日本薬理学雑誌」,2005年,Vol.125,No.6,p.379-384 J. Agric. Food Chem.,2009年,Vol.57,No.2,pp.490-494
本発明は、天然物由来の化合物の中から抗老化作用、美白作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、抗肥満作用、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、グルタチオン低下抑制作用またはジペプチジルペプチダーゼIV活性阻害作用を有するものを見出し、それを有効成分とする抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびジペプチジルペプチダーゼIV活性阻害剤、ならびに当該化合物を配合した皮膚化粧料、頭髪化粧料および飲食品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびジペプチジルペプチダーゼIV活性阻害剤は、4−ビニルグアヤコールを有効成分として含有することを特徴とする。また、本発明の皮膚化粧料、頭髪化粧料および飲食品は、4−ビニルグアヤコールを配合したことを特徴とする。
本発明によれば、4−ビニルグアヤコールを有効成分として含有させることにより、作用効果に優れた抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびジペプチジルペプチダーゼIV活性阻害剤を提供することができる。さらに、4−ビニルグアヤコールを配合することにより、上記作用に優れた皮膚化粧料、頭髪化粧料および飲食品を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびジペプチジルペプチダーゼIV活性阻害剤は、4−ビニルグアヤコールを有効成分として含有するものである。また、本実施形態の皮膚化粧料、頭髪化粧料および飲食品は、4−ビニルグアヤコールが配合されるものである。
4−ビニルグアヤコール(4-vinylguaiacol)は、下記式で表される化学構造を有する化合物である。
Figure 0006709587
4−ビニルグアヤコールは、例えば、フェルラ酸もしくはフェルラ酸エチル等のフェルラ酸誘導体、またはフェルラ酸を含有する組成物(例えば、植物の破砕物または抽出物など)を、フェノール酸脱炭酸酵素を有する微生物により醗酵させ、フェルラ酸を4−ビニルグアヤコールに変換した後、得られた醗酵物を抽出・単離・精製することにより製造することができる。フェルラ酸を含有する組成物としては、例えば、コーヒー、コムギ、トウモロコシ、トマト、マテ、ヨモギ、ゴボウ等の等の植物の破砕物および抽出物などが挙げられる。さらには、フェルラ酸は木本植物におけるリグニンの構成成分であるため、フェルラ酸を含有する組成物として、リグニンまたはこれを含有する組成物を利用してもよい。一方、フェノール酸脱炭酸酵素を有する微生物としては、例えば、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus brevis、Pediococcus pentosaceus等の乳酸菌;Saccharomyces cerevisiae等の酵母;などが挙げられる。
上記植物または醗酵物などから4−ビニルグアヤコールを抽出・単離・精製する方法は特に限定されず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出処理は、抽出原料としての上記植物または醗酵物を乾燥した後、そのまままたは粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供すればよい。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて、室温または溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を抽出溶媒として使用する場合には、水と低級脂肪族アルコールとの混合比が9:1〜1:9(容量比)であることが好ましく、7:3〜2:8(容量比)であることがさらに好ましい。また、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水と低級脂肪族ケトンとの混合比が9:1〜2:8(容量比)であることが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水と多価アルコールとの混合比が5:5〜1:9(容量比)であることが好ましい。
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温または還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
以上のようにして得られた抽出液、当該抽出液の濃縮物または当該抽出液の乾燥物から4−ビニルグアヤコールを単離・精製する方法は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、抽出物を展開溶媒に溶解し、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、4−ビニルグアヤコールを含む画分を回収する方法等が挙げられる。この場合、展開溶媒は使用する固定相に応じて適宜選択すればよいが、例えば固定相としてシリカゲルを用いた順相クロマトグラフィーにより抽出物を分離する場合、展開溶媒としてはクロロホルム:メタノール=95:5等が挙げられる。さらに、カラムクロマトグラフィーにより得られた4−ビニルグアヤコールを含む画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液−液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
〔抗老化剤,美白剤,育毛剤,抗男性ホルモン剤,抗炎症剤,抗肥満剤,サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤,グルタチオン低下抑制剤,ジペプチジルペプチダーゼIV活性阻害剤〕
以上のようにして得られる4−ビニルグアヤコールは、優れた抗老化作用、美白作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、抗肥満作用、サイクリックAMP(cAMP)ホスホジエステラーゼ活性阻害作用、グルタチオン低下抑制作用およびジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)活性阻害作用を有しているため、抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびDPPIV活性阻害剤の有効成分として用いることができる。本実施形態の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびDPPIV活性阻害剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品等の幅広い用途に使用することができる。
なお、本実施形態に係る抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびDPPIV活性阻害剤の有効成分として、単離した4−ビニルグアヤコールに替えて、4−ビニルグアヤコールを含有する組成物を用いてもよい。ここで、本実施形態における「4−ビニルグアヤコールを含有する組成物」には、4−ビニルグアヤコールを含有する植物を抽出原料として得られる抽出物、4−ビニルグアヤコールを含有する醗酵物、および当該醗酵物を抽出原料として得られる抽出物が含まれる。また、「抽出物」には、抽出処理により得られる抽出液、当該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、または当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物が含まれる。
本実施形態に係る抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびDPPIV活性阻害剤の有効成分として、4−ビニルグアヤコールを含有する組成物を用いる場合は、精製して4−ビニルグアヤコールの純度を高めたものを使用することが好ましい。4−ビニルグアヤコールの純度を高めたものを有効成分として使用することによって、より一層作用効果に優れた抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびDPPIV活性阻害剤を得ることができる。
4−ビニルグアヤコールが有する抗老化作用は、例えば、グルタチオン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、マトリックスメタロプロテアーゼ−2(MMP−2)活性阻害作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用およびアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用に基づいて発揮される。ただし、4−ビニルグアヤコールが有する抗老化作用は、上記作用に基づいて発揮される抗老化作用に限定されるものではない。
また、4−ビニルグアヤコールは、そのグルタチオン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、MMP−2活性阻害作用、SPTmRNA発現促進作用またはAQP3mRNA発現促進作用を利用して、それぞれグルタチオン産生促進剤、表皮角化細胞増殖促進剤、MMP−2活性阻害剤、SPTmRNA発現促進剤またはAQP3mRNA発現促進剤の有効成分として使用してもよい。
4−ビニルグアヤコールが有する美白作用は、例えば、チロシナーゼ活性阻害作用および/またはメラニン産生抑制作用に基づいて発揮される。ただし、4−ビニルグアヤコールが有する美白作用は、上記作用に基づいて発揮される美白作用に限定されるものではない。また、4−ビニルグアヤコールは、そのチロシナーゼ活性阻害作用またはメラニン産生抑制作用を利用して、それぞれチロシナーゼ活性阻害剤またはメラニン産生抑制剤の有効成分として使用してもよい。
4−ビニルグアヤコールが有する育毛作用は、例えば、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用および毛乳頭細胞増殖促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用に基づいて発揮される。ただし、4−ビニルグアヤコールが有する育毛作用は、上記作用に基づいて発揮される育毛作用に限定されるものではない。また、4−ビニルグアヤコールは、そのテストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用または毛乳頭細胞増殖促進作用を利用して、それぞれテストステロン5α−レダクターゼ活性阻害剤、アンドロゲン受容体結合阻害剤または毛乳頭細胞増殖促進剤の有効成分として使用してもよい。
4−ビニルグアヤコールが有する抗男性ホルモン作用は、例えば、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用および/またはアンドロゲン受容体結合阻害作用に基づいて発揮される。ただし、4−ビニルグアヤコールが有する抗男性ホルモン作用は、上記作用に基づいて発揮される抗男性ホルモン作用に限定されるものではない。
4−ビニルグアヤコールが有する抗炎症作用は、例えば、腫瘍壊死因子(TNF−α)産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)活性阻害作用からなる群より選択される1または2以上の作用に基づいて発揮される。ただし、4−ビニルグアヤコールが有する抗炎症作用は、上記作用に基づいて発揮される抗炎症作用に限定されるものではない。また、4−ビニルグアヤコールは、そのTNF−α産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用またはCOX−2活性阻害作用を利用して、それぞれTNF−α産生抑制剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤またはCOX−2活性阻害剤の有効成分として使用してもよい。
4−ビニルグアヤコールが有する抗肥満作用は、例えば、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用に基づいて発揮される。ただし、4−ビニルグアヤコールが有する抗肥満作用は、上記作用に基づいて発揮される抗肥満作用に限定されるものではない。
本実施形態の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤またはDPPIV活性阻害剤は、4−ビニルグアヤコールまたは4−ビニルグアヤコールを含有する組成物のみからなるものでもよいし、4−ビニルグアヤコールまたは4−ビニルグアヤコールを含有する組成物を製剤化したものでもよい。
本実施形態の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびDPPIV活性阻害剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびDPPIV活性阻害剤は、他の組成物(例えば、皮膚化粧料、頭髪化粧料等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
本実施形態の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤またはDPPIV活性阻害剤を製剤化した場合、4−ビニルグアヤコールまたは4−ビニルグアヤコールを含有する組成物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
なお、本実施形態の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤またはDPPIV活性阻害剤は、必要に応じて、抗老化作用、美白作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、抗肥満作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、グルタチオン低下抑制作用またはDPPIV活性阻害作用を有する他の天然抽出物等を、4−ビニルグアヤコールまたは4−ビニルグアヤコールを含有する組成物とともに配合して有効成分として用いることができる。
本実施形態の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤またはDPPIV活性阻害剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防ないし治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤またはDPPIV活性阻害剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
本実施形態の抗老化剤は、有効成分である4−ビニルグアヤコールが有するグルタチオン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、MMP−2活性阻害作用、SPTmRNA発現促進作用およびAQP3mRNA発現促進作用からなる群より選択される1または2以上の作用を通じて、皮膚のシワの形成、弾力性の低下、保湿機能の低下等の皮膚の老化症状を予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態の抗老化剤は、これらの用途以外にもグルタチオン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、MMP−2活性阻害作用、SPTmRNA発現促進作用またはAQP3mRNA発現促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したグルタチオン産生促進剤は、4−ビニルグアヤコールが有するグルタチオン産生促進作用を通じて、肝障害(アルコールの多飲,または重金属や化学物質等の異物の摂取が原因となる)等の細胞内グルタチオン量の低下または欠乏が病態と関連することが知られている疾患などを予防、治療または改善することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したMMP−2活性阻害剤は、4−ビニルグアヤコールが有するMMP−2活性阻害作用を通じて、細胞外マトリックスの破壊が病態と関連していることが知られている疾患等(例えば、癌の浸潤・転移、関節リュウマチ、変形性膝関節症、歯周病、加齢黄斑変性症等)の治療・予防の用途に使用することができる。また、本実施形態の抗老化剤またはMMP−2活性阻害剤は、そのMMP−2活性阻害作用により、血管新生を抑制し、腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したSPTmRNA発現促進剤は、4−ビニルグアヤコールが有するSPTmRNA発現促進作用を通じて、皮膚のバリア機能を強化し、肌荒れ、乾燥肌等のほか、乾燥性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬等)を予防、治療または改善することができる。また、本実施形態の抗老化剤または前述したAQP3mRNA発現促進剤は、4−ビニルグアヤコールが有するAQP3mRNA発現促進作用を通じて、加齢による水分保持能やバリア機能等を改善することができる。
本実施形態の美白剤は、有効成分である4−ビニルグアヤコールが有するチロシナーゼ活性阻害作用および/またはメラニン産生抑制作用を通じて、皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着を予防または改善することができる。ただし、本実施形態の美白剤は、これらの用途以外にもチロシナーゼ活性阻害作用またはメラニン産生抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態の育毛剤は、有効成分である4−ビニルグアヤコールが有するテストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用および毛乳頭細胞増殖促進作用からなる群より選択される1種または2種以上の作用を通じて、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等の脱毛症等を予防、治療または改善することができ、特に男性型脱毛症の予防、治療または改善に好適である。ただし、本発明の育毛剤は、これらの用途以外にもテストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用または毛乳頭細胞増殖促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の育毛剤または前述した毛乳頭細胞増殖促進剤は、4−ビニルグアヤコールが有する毛乳頭細胞増殖促進作用を通じて、毛乳頭細胞を活性化し、毛包上皮系細胞の増殖・分化および毛髪の形成を促進することができるとともに、毛周期において成長期から退行期および休止期へと移行するのを防ぎ、成長期を延長させることができる。これにより、脱毛症を予防または改善することができる。また、本実施形態の育毛剤または前述した毛乳頭細胞増殖促進剤は、4−ビニルグアヤコールが有する毛乳頭細胞増殖促進作用を通じて、毛乳頭細胞を用いた毛髪再生等の再生医療分野への応用に使用することもできる。
本実施形態の抗男性ホルモン剤または前述したテストステロン5α−レダクターゼ活性阻害剤もしくはアンドロゲン受容体結合阻害剤は、有効成分である4−ビニルグアヤコールが有するテストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用および/またはアンドロゲン受容体結合阻害作用を通じて、男性ホルモンが関与する疾患、例えば、男性型脱毛症、多毛症、脂漏症、座瘡(ニキビなど)、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等を予防、治療または改善することができる。ただし、本発明の抗男性ホルモン剤は、これらの用途以外にもテストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用またはアンドロゲン受容体結合阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態の抗炎症剤は、有効成分である4−ビニルグアヤコールが有するTNF−α産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用およびCOX−2活性阻害作用からなる群より選択される1または2以上の作用を通じて、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、アトピー性皮膚炎、その他肌荒れに伴う各種皮膚炎症性疾患を予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態の抗炎症剤は、これらの用途以外にもTNF−α産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用またはCOX−2活性阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の抗炎症剤または前述したTNF−α産生抑制剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤もしくはCOX−2活性阻害剤は、4−ビニルグアヤコールが有するTNF−α産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用またはCOX−2活性阻害作用を通じて、関節リウマチ、変形性関節症、喘息などを予防、治療または改善することができる。また、本実施形態の抗炎症剤または前述したヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤は、4−ビニルグアヤコールが有するヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を通じて、胃酸過多を原因とする胃潰瘍、睡眠障害等を予防、治療または改善することができる。
本実施形態の抗肥満剤は、有効成分である4−ビニルグアヤコールが有するcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を通じて、cAMPの産生を促進し、脂肪細胞の分解をすることができ、この結果、肥満症、それに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な疾患を予防または改善することができる。
本実施形態のcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、有効成分である4−ビニルグアヤコールが有するcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を通じて、cAMPの産生を促進するため、血小板の凝集を抑制することができ、これによりアレルギー疾患や各種炎症性疾患等を予防、治療または改善することができる。また、本実施形態のcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、4−ビニルグアヤコールが有するcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を通じて、脂肪細胞の分解を促進することができ、この結果、肥満症、およびこれに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な生活習慣病を予防または改善することができる。ただし、本実施形態のcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、これらの用途以外にもcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態のグルタチオン低下抑制剤は、アルコールの多飲、重金属や化学物質等の異物の摂取などに起因する各種ストレスに肝細胞が暴露されたときに、有効成分である4−ビニルグアヤコールが有するグルタチオン低下抑制作用を通じて、有害物質の代謝(例えば、グルタチオンとの抱合体形成による細胞外排出等)を促進し、有害物質による肝障害を予防または低減することができる。これにより、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、黄疸、肝硬変などの肝障害に起因する疾患(肝機能障害)を予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態のグルタチオン低下抑制剤は、これらの用途以外にもグルタチオン低下抑制作用を発揮することに意義のある全ての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態のグルタチオン低下抑制剤は、4−ビニルグアヤコールが有するグルタチオン低下抑制作用を通じて、二日酔いの予防または改善;有害物質の蓄積に起因する症状(肌荒れ、疲労感等)の予防、治療または改善;などの用途に使用することができる。
本実施形態のDPPIV阻害剤は、4−ビニルグアヤコールが有するDPPIV阻害作用を通じて、2型糖尿病、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性等を予防または治療することができるとともに、関節リウマチ等の自己免疫疾患や移植拒絶反応を予防または治療することができる。ただし、本実施形態のDPPIV阻害剤は、これらの用途以外にもDPPIV阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。例えば、本実施形態のDPPIV阻害剤は、4−ビニルグアヤコールが有するDPPIV阻害作用を通じて、疼痛、神経変性疾患、および神経精神疾患等の神経障害(例えば坐骨神経痛、アルツハイマー病、うつ病等);成長ホルモン欠損症および成長ホルモンが治療に使用される疾患;癌(例えばT−細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、甲状腺癌、基底細胞癌、乳癌等);HIV感染症(AIDS)等の疾患を予防または治療することができる。
また、本実施形態の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤またはDPPIV活性阻害剤は、優れた抗老化作用、美白作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、抗肥満作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、グルタチオン低下抑制作用またはDPPIV活性阻害作用を有するため、例えば、皮膚外用剤に配合するのに好適である。この場合に、4−ビニルグアヤコールまたは4−ビニルグアヤコールを含有する組成物をそのまま配合してもよいし、4−ビニルグアヤコールまたは4−ビニルグアヤコールを含有する組成物から製剤化した抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤またはDPPIV活性阻害剤を配合してもよい。
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、後述する皮膚化粧料のほか、経皮的に使用される医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
また、本実施形態の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤またはDPPIV活性阻害剤は、優れた抗老化作用、美白作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、抗肥満作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、グルタチオン低下抑制作用またはDPPIV活性阻害作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
〔皮膚化粧料,頭髪化粧料〕
4−ビニルグアヤコールは、優れた抗老化作用、美白作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、抗肥満作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、グルタチオン低下抑制作用およびDPPIV活性阻害作用を有しているため、皮膚化粧料または頭髪化粧料に配合するのに好適である。この場合、4−ビニルグアヤコールまたは4−ビニルグアヤコールを含有する組成物をそのまま配合してもよいし、4−ビニルグアヤコールまたは4−ビニルグアヤコールを含有する組成物から製剤化した抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤またはDPPIV活性阻害剤を配合してもよい。
4−ビニルグアヤコールまたは上記抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤もしくはDPPIV活性阻害剤を配合することにより、皮膚化粧料または頭髪化粧料に抗老化作用、グルタチオン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、MMP−2活性阻害作用、SPTmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、美白作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、育毛作用、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、毛乳頭細胞増殖促進作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、TNF−α産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、COX−2活性阻害作用、抗肥満作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、グルタチオン低下抑制作用またはDPPIV活性阻害作用を付与することができる。
これらの作用は、いずれも皮膚化粧料または頭髪化粧料に付与されることで好ましい作用を発揮するものであるが、中でも、抗老化作用、グルタチオン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、MMP−2活性阻害作用、SPTmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、美白作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、抗炎症作用、TNF−α産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、COX−2活性阻害作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用または抗男性ホルモン作用が皮膚化粧料に付与されると、それらの作用が発揮されやすいため、特に好適である。
また、前述した作用の中でも、育毛作用、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、毛乳頭細胞増殖促進作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、TNF−α産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、COX−2活性阻害作用またはcAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用が頭髪化粧料に付与されると、それらの作用が発揮されやすいため、特に好適である。
4−ビニルグアヤコール、または上記抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤もしくはDPPIV活性阻害剤を配合し得る皮膚化粧料または頭髪化粧料の種類は特に限定されるものではなく、皮膚化粧料としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーション等が挙げられ、また、頭髪化粧料としては、例えば、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンス等が挙げられる。
4−ビニルグアヤコール、または上記抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤もしくはDPPIV活性阻害剤を皮膚化粧料または頭髪化粧料に配合する場合、その配合量は、皮膚化粧料または頭髪化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、約0.0001〜10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.001〜1質量%である。
本実施形態の皮膚化粧料または頭髪化粧料は、4−ビニルグアヤコールが有する抗老化作用、グルタチオン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、MMP−2活性阻害作用、SPTmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、美白作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、育毛作用、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、毛乳頭細胞増殖促進作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、TNF−α産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、COX−2活性阻害作用、抗肥満作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、グルタチオン低下抑制作用またはDPPIV活性阻害作用を妨げない限り、通常の皮膚化粧料または頭髪化粧料の製造に用いられる主剤、助剤またはその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
本実施形態の皮膚化粧料は、4−ビニルグアヤコールが有する抗老化作用、グルタチオン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、MMP−2活性阻害作用、SPTmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、美白作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、抗炎症作用、TNF−α産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、COX−2活性阻害作用、抗肥満作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、育毛作用、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、毛乳頭細胞増殖促進作用、抗男性ホルモン作用、グルタチオン低下抑制作用およびDPPIV活性阻害作用からなる群より選択される1または2以上の作用を通じて、皮膚のシワの形成、弾力性の低下、保湿機能の低下等の皮膚の老化症状の予防、治療または改善;創傷または熱傷の治癒の促進;肌荒れ、乾燥肌等のほか、乾燥性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬等)の予防、治療または改善;皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着の予防、治療または改善;接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れに伴う各種皮膚炎症性疾患の予防、治療または改善;脂漏症、座瘡(ニキビなど)等の予防、治療または改善;肥満症、およびそれに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の生活習慣病の予防、治療または改善;などをすることができる。
また、本実施形態の頭髪化粧料は、4−ビニルグアヤコールが有する育毛作用、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、毛乳頭細胞増殖促進作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、TNF−α産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、COX−2活性阻害作用、抗肥満作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、抗老化作用、グルタチオン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、MMP−2活性阻害作用、SPTmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、美白作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、グルタチオン低下抑制作用およびDPPIV活性阻害作用からなる群より選択される1または2以上の作用を通じて、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等の脱毛症の予防、治療または改善;接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れに伴う各種皮膚炎症性疾患の予防、治療または改善;肌荒れ、乾燥肌等のほか、乾燥性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬等)の治療;などをすることができる。
〔飲食品〕
4−ビニルグアヤコールは、優れた抗老化作用、美白作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、抗肥満作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、グルタチオン低下抑制作用およびDPPIV活性阻害作用を有しているため、飲食品に配合するのに好適である。この場合、4−ビニルグアヤコールをそのまま配合してもよいし、4−ビニルグアヤコールから製剤化した抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤またはDPPIV活性阻害剤を配合してもよい。
ここで、飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
4−ビニルグアヤコールまたは上記抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤、DPPIV活性阻害剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤もしくは美白剤を飲食品に配合することにより、抗肥満作用、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用、グルタチオン低下抑制作用、DPPIV活性阻害作用、抗老化作用、グルタチオン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、MMP−2活性阻害作用、SPTmRNA発現促進作用、AQP3mRNA発現促進作用、育毛作用、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、毛乳頭細胞増殖促進作用、抗男性ホルモン作用、抗炎症作用、TNF−α産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、COX−2活性阻害作用、美白作用、チロシナーゼ活性阻害作用またはメラニン産生抑制作用を飲食品に付与することができる。これらの作用は、飲食品に付与されることで作用効果が発揮されやすいため、好適である。
4−ビニルグアヤコール、または4−ビニルグアヤコールから製剤化した抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤もしくはDPPIV活性阻害剤を飲食品に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの抽出物摂取量が約1〜1000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象飲食品が顆粒状、錠剤状またはカプセル状の飲食品の場合、4−ビニルグアヤコール、または4−ビニルグアヤコールから製剤化した抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤もしくはDPPIV活性阻害剤の添加量は、添加対象飲食品に対して通常0.1〜100質量%であり、好ましくは5〜100質量%である。
本実施形態の飲食品は、4−ビニルグアヤコールをその活性を妨げないような任意の飲食品に配合したものであってもよいし、4−ビニルグアヤコールを主成分とする栄養補助食品であってもよい。
本実施形態の飲食品を製造する際には、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類などの任意の助剤を添加して任意の形状の飲食品にすることができる。
4−ビニルグアヤコールを配合し得る飲食品は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液および調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤などが挙げられ、これらの飲食品に4−ビニルグアヤコールを配合するときに、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
なお、本実施形態の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤、DPPIV活性阻害剤、皮膚化粧料、頭髪化粧料および飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
以下、試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。なお、本試験例においては、被験試料として4−ビニルグアヤコール(和光純薬工業社製,試料1)を使用した。
〔試験例1〕グルタチオン産生促進作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにしてグルタチオン産生促進作用を試験した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×105 cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有α−MEM培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。
培養後、1%FBS含有ダルベッコMEM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表1を参照)を各ウェルに200μL添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加の1%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、各ウェルから培地を除去し、400μLのPBS(−)緩衝液にて洗浄した後、150μLのM−PER(PIERCE社製)を使用して細胞を溶解した。
このうちの100μLを使用して総グルタチオンの定量を行った。すなわち、96ウェルプレートに、溶解した細胞抽出液100μL、0.1mol/Lリン酸緩衝液50μL、2mmol/L NADPH25μL、およびグルタチオンレダクターゼ25μL(終濃度17.5 unit/mL)を加え、37℃で10分間加温した後、10mmol/L 5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオン(和光純薬社製)を使用して作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式によりグルタチオン産生促進率(%)を算出した。
グルタチオン産生促進率(%)=B/A×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加における総タンパク量当たりのグルタチオン量
B:被験試料添加における総タンパク量当たりのグルタチオン量
結果を表1に示す。
Figure 0006709587
表1に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたグルタチオン産生促進作用を有していると認められた。
〔試験例2〕表皮角化細胞増殖促進作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにして表皮角化細胞増殖促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理にて細胞を回収した。回収した細胞を3.0×104 cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、KGM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表2を参照)を各ウェルに100μL添加し、3日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKMG培地を用いて同様に培養した。
表皮角化細胞増殖促進作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。すなわち、3日間培養後、培地を除去し、終濃度0.4mg/mLでPBS(−)緩衝液に溶解したMTTを各ウェル100μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。得られた結果から、下記式により表皮角化細胞増殖促進率(%)を算出した。
表皮角化細胞増殖促進率(%)=St/Ct×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
St:被験試料添加でのブルーホルマザン生成量
Ct:試料無添加でのブルーホルマザン生成量
結果を表2に示す。
Figure 0006709587
表2に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れた表皮角化細胞増殖促進作用を有することが確認された。
〔試験例3〕MMP−2活性阻害作用試験
MMP−2は、特開2007−217352号公報に記載の方法により調製したものを用いた。すなわち、MMP−2タンパク質を、C末端にヒスチジン6残基を持つ組換え体proMMPタンパク質として大腸菌遺伝子発現系を用い大量発現させ、Ni−NTA樹脂を用いた精製およびリフォールディングを行った後、活性型へ移行させた。これを酵素標品とし、適宜希釈し酵素溶液を調製した。
得られた酵素溶液を用い、4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにしてMMP−2活性阻害作用を試験した。
蛍光強度測定用96ウェルプレートを用い、被験試料(試料1,試料濃度は下記表3を参照)20μL、酵素溶液40μLおよび緩衝液(0.05mol/L Tris,150mmol/L NaCl,10mmol/L CaCl2 ,50μmol/L ZnSO4 ,0.02% NaN3 ,0.05% Brij35(pH7.5))20μLを混合し、37℃にて15分静置した。その後、4.16μmol/Lに調製した蛍光基質ペプチド(MOCAc/DNP peptide)120μLを添加し、直ちに励起波長340nm、蛍光波長420nmにおける蛍光強度を測定し、これを基質添加直後の蛍光強度とした。測定後直ちに37℃で120分反応させ、この間、励起波長340nm、蛍光波長420nmにおける蛍光強度を15分毎に測定し、これらを基質添加後の蛍光強度とした。また同様の方法で空試験を行い補正した。得られた結果から、下記式によりMMP−2活性阻害率(%)を算出した。
MMP−2活性阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加・基質添加120分後での波長420nmにおける蛍光強度
B:試料無添加・基質添加直後での波長420nmにおける蛍光強度
C:被験試料添加・基質添加120分後での波長420nmにおける蛍光強度
D:被験試料添加・基質添加直後での波長420nmにおける蛍光強度
結果を表3に示す。
Figure 0006709587
表3に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたMMP−2活性阻害作用を有することが確認された。
〔試験例4〕セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにしてSPTmRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、80cm2 フラスコにて正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife−KG2)を用いて37℃・5%CO2 −95%airの条件下にて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104 cells/mLの細胞密度になるようにEpilife−KG2培地で希釈した後、35mmシャーレ(FALCON社製)に2mLずつ播種し(40×104 cells/シャーレ)、37℃・5%CO2 −95%airの条件下で24時間培養した。
培養後、培地を除去し、Epilife−KG2培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表4を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO2 −95%airの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のEpilife−KG2培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-02501)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、SPTおよび内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社製)を用い、TaKaRa SYBR Prime Script RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2Step RT−PCR反応により行った。SPTの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりSPT mRNA発現促進率(%)を算出した。
SPT mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表4に示す。
Figure 0006709587
表4に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたSPTmRNA発現促進作用を有することが確認された。
〔試験例5〕アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにしてAQP3mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、80cm2 フラスコにて正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用い、37℃・5%CO2 −95%airの条件下にて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104 cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、35mmシャーレ(FALCON社製)に2mLずつ播種し(40×104 cells/シャーレ)、37℃・5%CO2 −95%airの条件下で24時間培養した。
培養後に培地を除去し、KGM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表5を参照)のKGM培地を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃・5%CO2 −95%airの条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-02501)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、AQP3および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR Prime Script RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2Step RT−PCR反応により行った。AQP3mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりAQP3mRNA発現促進率(%)を算出した。
AQP3 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表5に示す。
Figure 0006709587
表5に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたAQP3mRNA発現促進作用を有することが確認された。
〔試験例6〕チロシナーゼ活性阻害作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにしてチロシナーゼ活性阻害作用を試験した。
48ウェルプレートに、Mcllvaine緩衝液(pH6.8)0.2mL、0.3mg/mLチロシン溶液0.06mL、25%DMSO溶液に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表6を参照)0.18mLを加え、37℃で10分間静置した。これに、800units/mLチロシナーゼ溶液0.02mLを加え、引き続き37℃で15分間反応させた。反応終了後、波長475nmにおける吸光度を測定した。
また、ブランクとして、酵素溶液を添加しない場合についても同様の操作および吸光度の測定を行った。さらに、コントロールとして、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。得られた測定結果から、下記式によりチロシナーゼ活性阻害率(%)を算出した。
チロシナーゼ活性阻害率(%)={1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
St:被験試料添加・酵素添加での波長475nmにおける吸光度
Sb:被験試料添加・酵素無添加での波長475nmにおける吸光度
Ct:試料無添加・酵素添加での波長475nmにおける吸光度
Cb:試料無添加・酵素無添加での波長475nmにおける吸光度
結果を表6に示す。
Figure 0006709587
表6に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたチロシナーゼ活性阻害作用を有していると認められた。
〔試験例7〕B16メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにしてB16メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用を試験した。
B16メラノーマ細胞を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を24.0×104 cells/mLの細胞密度になるように10%FBSおよび1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEM培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェルあたり300μLずつ播種し、6時間培養した。
培養終了後、10%FBSおよび1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表7を参照)を各ウェルに300μL添加し、4日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の10%FBSおよび1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、培地を除去し、2mol/L NaOH溶液200μLを添加して超音波破砕機により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定した。測定した吸光度の値から、合成メラニン(SIGMA社製)を用いて作成した検量線をもとにメラニン量を算出した。
また、細胞生存率を測定するために、上記と同様にして培養した後、培地を除去し400μLのPBS(−)緩衝液で洗浄して、終濃度0.05mg/mLで10%FBS含有ダルベッコMEMに溶解したニュートラルレッドを各ウェルに200μL添加し、2.5時間培養した。培養後、ニュートラルレッド溶液を除去し、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各ウェルに200μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。得られた結果から、下記式により細胞生存率により補正したメラニン産生抑制率(%)を算出した。
メラニン産生抑制率(%)={1−(B/D)/(A/C)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加におけるメラニン量
B:被験試料添加におけるメラニン量
C:試料無添加での波長540nmにおける吸光度
D:被験試料添加での波長540nmにおける吸光度
結果を表7に示す。
Figure 0006709587
表7に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたメラニン産生抑制作用を有していると認められた。
〔試験例8〕テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにしてテストステロン5α−レダクターゼ阻害作用を試験した。
蓋付V底試験管にて、プロピレングリコールで調製した4.2mg/mLテストステロン(和光純薬工業社製)溶液20μLと、1mg/mL NADPHを含有する5mmol/L Tris−HCl(pH7.13)緩衝液825μLとを混合した。
さらに、50%エタノールにて調製した被験試料(試料1,試料濃度は下記表8を参照)溶液80μLと、S−9(オリエンタル酵母工業社製,ラット肝臓ホモジネート)75μLとを加えて混合し、37℃にて30分間インキュベートした。その後、塩化メチレン1mLを加えて反応を停止させた。これを遠心分離し(1600×g,10分間)、塩化メチレン層を分取して、分取した塩化メチレン層について、下記の条件にてガスクロマトグラフィー分析に供し、3α−アンドロスタンジオール、5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)およびテストステロンの濃度を定量した。なお、コントロールとして、被験試料溶液の代わりに試料溶媒を同量(80μL)用いて同様に処理し、ガスクロマトグラフィー分析に供した。
<ガスクロマトグラフィー条件>
使用装置:Shimadzu GC−2010(島津製作所社製)
カラム:DB−1701(内径:0.53mm,長さ:30m,膜厚:1.0μm)(J&W Scientific社製)
カラム温度:240℃
注入口温度:300℃
検出器:FID
試料注入量:1μL
スプリット比:1:2
キャリアガス:窒素ガス
キャリアガス流速:3mL/min
3α−アンドロスタンジオール、5α−DHTおよびテストステロンの濃度の定量は、下記の方法により行った。
3α−アンドロスタンジオール、5α−DHTおよびテストステロンの標準品を塩化メチレンに溶解し、当該溶液をガスクロマトグラフィー分析に供し、これらの化合物の濃度(μg/mL)およびピーク面積から、ピーク面積と化合物の濃度との対応関係を予め求めておいた。そして、テストステロンとS−9との反応後の3α−アンドロスタンジオール、5α−DHTおよびテストステロンのそれぞれのピーク面積あたりの濃度を、予め求めておいた対応関係を利用して、下記式(1)に基づいて求めた。
A=B×C/D・・・(1)
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:3α−アンドロスタンジオール、5α−DHTまたはテストステロンの濃度
B:3α−アンドロスタンジオール、5α−DHTまたはテストステロンのピーク面積
C:標準品の濃度
D:標準品のピーク面積
式(1)に基づいて算出された化合物濃度を用いて、下記式(2)に基づき、変換率(テストステロン5α−レダクターゼによりテストステロンが還元されて生成した3α−アンドロスタンジオールおよび5α−DHTの濃度と、テストステロンの初期濃度との濃度比)を算出した。
変換率=(E+F)/(E+F+G)・・・(2)
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
E:3α−アンドロスタンジオールの濃度(μg/mL)
F:5α−DHTの濃度(μg/mL)
G:テストステロンの濃度(μg/mL)
式(2)に基づいて算出された変換率を用いて、下記式(3)に基づき、テストステロン5α−レダクターゼ阻害率(%)を算出した。
テストステロン5α−レダクターゼ阻害率(%)=(1−H/I)×100・・・(3)
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
H:被検試料添加での変換率
I:試料無添加での変換率
結果を表8に示す。
Figure 0006709587
表8に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたテストステロン5α−レダクターゼ阻害作用を有することが確認された。
〔試験例9〕アンドロゲン受容体結合阻害作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにしてアンドロゲン受容体結合阻害作用を試験した。
マウス自然発生乳癌(シオノギ癌;SC115)よりクローニングされたアンドロゲン依存性マウス乳癌細胞(SC−3細胞)を、2%DCC−FBSを含む10-8mol/Lテストステロン含有MEM培地(MEM/2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×105 cells/μLの細胞密度になるようにMEM/2培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
その後、培地を除去し、1.0×10-9mol/L DHTを含む0.5%BSA含有HamF12+MEM培地(HMB)に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表9を参照)100μLを添加し、さらに48時間培養した。培養終了後、培地を除去し、2%DCC−FBS含有MEM/2培地で調製した0.4mg/mL MTT100μLを添加し、さらに2時間培養した後、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出した。この抽出液について、ブルーホルマザンの吸収極大点がある570nmの吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。
なお、上記と並行して、試料単独でSC−3細胞に及ぼす影響をみるため、HMB培地にDHTを添加せず被験試料のみを添加した場合についても、同様の培養および測定を行った。また、コントロールとして、試料およびDHTを添加しないHMB培地で培養した場合、ならびに試料を添加せずDHTのみを添加したHMB培地で培養した場合についても、同様の測定を行った。測定結果から、下記式によりアンドロゲン受容体結合阻害率(%)を算出した。
アンドロゲン受容体結合阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加・DHT添加でのブルーホルマザン生成量
B:試料無添加・DHT無添加でのブルーホルマザン生成量
C:被験試料添加・DHT添加でのブルーホルマザン生成量
D:被験試料添加・DHT無添加でのブルーホルマザン生成量
結果を表9に示す。
Figure 0006709587
表9に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたアンドロゲン受容体結合阻害作用を有することが確認された。
〔試験例10〕毛乳頭細胞増殖促進作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにして毛乳頭細胞増殖促進作用を試験した。
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞(HFDPC,男性頭頂部由来)を、1%FCSおよび増殖添加剤を含有する毛乳頭細胞用増殖培地(PCGM,東洋紡績社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、10%FBS含有DMEM培地を用いて1.0×104 cells/mLの細胞密度になるように希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ播種し、3日間培養した。
その後、培地を除去し、無血清DMEM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表10を参照)200μLを各ウェルに添加し、さらに4日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の無血清DMEM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、MTTアッセイにより毛乳頭細胞増殖促進作用を測定した。すなわち、培地を除去し、無血清DMEM培地で調製した0.4mg/mL MTT200μLを添加し、さらに2時間培養した後、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。この抽出液について、ブルーホルマザンの吸収極大点がある570nmの吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。測定結果から、下記式に基づいて、毛乳頭細胞増殖促進率(%)を算出した。
毛乳頭細胞増殖促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのブルーホルマザン生成量
B:試料無添加でのブルーホルマザン生成量
結果を表10に示す。
Figure 0006709587
表10に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れた毛乳頭細胞増殖促進作用を有していると認められた。
〔試験例11〕腫瘍壊死因子(TNF−α)産生抑制作用試験
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、セルスクレーパーにより細胞を回収した。回収した細胞を1.0×106 cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、4時間培養した。
培養終了後、培地を除去し、終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有ダルベッコMEM培地で溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表11を参照)を各ウェルに100μL添加し、終濃度1μg/mLで10%FBS含有ダルベッコMEMに溶解したリポポリサッカライド(LPS)(DIFCO社製,E.coli 0111;B4)を100μL加え、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有ダルベッコMEM培地等を用いて同様の操作を行った。培養終了後、各ウェルの培養上清中のTNF−α量を、サンドイッチELISA法を用いて測定した。得られた結果から、下記式によりTNF−α産生抑制率(%)を算出した。
TNF−α産生抑制率(%)={(B−A)/B}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのTNF−α量
B:試料無添加でのTNF−α量
結果を表11に示す。
Figure 0006709587
表11に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたTNF−α産生抑制作用を有することが確認された。
〔試験例12〕ヒアルロニダーゼ活性阻害作用試験
0.1mol/L酢酸緩衝液(pH3.5)に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表12を参照)0.2mLに、ヒアルロニダーゼ溶液(SIGMA社製,Type IV-S,from bovine testes,400 NF units/mL)0.1mLを加え、37℃で20分間静置した。さらに、活性化剤として2.5mmol/L塩化カルシウム0.2mLを加え、37℃で20分間静置した。これに0.8mg/mLヒアルロン酸ナトリウム溶液(from rooster comb)0.5mLを加え、37℃で40分間反応した。その後、0.4mol/L水酸化ナトリウム0.2mLを加えて反応を止め冷却した後、各反応溶液にホウ酸溶液0.2mLを加え、3分間煮沸した。氷冷後、p−DABA試薬6mLを加え、37℃で20分間反応した。その後、波長585nmにおける吸光度を測定した。
また、ブランクとして、酵素溶液を添加しない場合についても同様の操作および吸光度の測定を行った。さらに、コントロールとして、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。得られた結果から、下記式によりヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)を算出した。
ヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)={1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
St:被験試料添加・酵素添加での波長585nmにおける吸光度
Sb:被験試料添加・酵素無添加での波長585nmにおける吸光度
Ct:試料無添加・酵素添加での波長585nmにおける吸光度
Cb:試料無添加・酵素無添加での波長585nmにおける吸光度
結果を表12に示す。
Figure 0006709587
表12に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有することが確認された。また、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用の程度は、4−ビニルグアヤコールの濃度によって調節できることが確認された。
〔試験例13〕ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにしてヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を試験した。
ラット好塩基球白血病細胞(RBL−2H3)を、15%FBS含有S−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を4.0×105 cells/mLの細胞密度になるように15%FBS含有S−MEM培地で希釈し、終濃度0.5μL/mLとなるようにDNP−specific IgEを添加した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
培養後、培地を除去し、シラガニアン緩衝液100μLにて洗浄を2回行った。次に、同緩衝液に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表13を参照)10μLおよび同緩衝液30μLを各ウェルに添加し、37℃にて10分間静置した。なお、コントロールとして、試料無添加のシラガニアン緩衝液40μLを用いて同様の操作を行った。続いて、100ng/mL DNP−BSA溶液10μLを加え、37℃にて15分間静置し、ヘキソサミニダーゼを遊離させた。
その後、96ウェルプレートを氷上に静置することにより遊離を停止した。各ウェルの細胞上清10μLを新たな96ウェルプレートに採取し、各ウェルに1mmol/L p−NAG(p−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−グルコサミニド)溶液10μLを添加し、37℃で1時間反応させた。
反応終了後、各ウェルに0.1mol/L Na2CO3 /NaHCO3 250μLを加え、波長415nmおよび650nmにおける吸光度を測定し、415nmにおける吸光度から650nmにおける吸光度を減じた値を補正値とした。また、ブランクとして、細胞上清10μLと、0.1mol/L Na2CO3 /NaHCO3 250μLとの混合液の波長415nmおよび650nmにおける吸光度を測定し、補正値を算出した。得られた測定結果から、下記式によりヘキソサミニダーゼ遊離抑制率(%)を算出した。
ヘキソサミニダーゼ遊離抑制率(%)={1−(B−C)/A}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加での補正値
B:被験試料添加での補正値
C:被験試料添加・p−NAG無添加での補正値
結果を表13に示す。
Figure 0006709587
表13に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を有することが確認された。
〔試験例14〕マウスマクロファージにおけるCOX−2活性阻害作用試験(PGE2 産生抑制作用試験)
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、セルスクレーパーにより細胞を回収した。回収した細胞を2.0×105 cells/mLの濃度になるように10%FBS含有ダルベッコMEM培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、18時間培養した。
培養終了後、既に存在するCOX−1および少量発現しているCOX−2をアセチル化し失活させるため、培地を500μmol/Lアスピリン含有培地に交換し4時間培養した。その後、細胞をPBS(−)緩衝液で3回洗浄し、終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有ダルベッコMEM培地で溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表14を参照)を各ウェルに100μL添加した後、終濃度1μg/mLで10%FBS含有ダルベッコMEMに溶解したリポポリサッカライド(LPS)(DIFCO社製,E.coli 0111;B4)を100μL添加し、16時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、各ウェルの培養上清中のプロスタグランジンE2 量を、PGE2 EIA Kit(Cayman Chemical社製)を用いて定量した。得られた結果から、下記式によりCOX−2活性阻害率(%,PGE2 産生抑制率)を算出した。
マクロファージCOX−2活性阻害率(%)={1−(A−C)/(B−C)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加・LPS刺激でのプロスタグランジンE2
B:試料無添加・LPS刺激でのプロスタグランジンE2
C:試料無添加・LPS無刺激でのプロスタグランジンE2
結果を表14に示す。
Figure 0006709587
表14に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、マクロファージにおいて優れたCOX−2活性阻害作用を有することが確認された。
〔試験例15〕ケラチノサイトにおけるCOX−2活性阻害作用試験(PGE2 産生抑制作用試験)
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を12.5×104 cells/mLの細胞密度になるようKGM培地で希釈した後、コラーゲンコートした48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し(2.5×104 cells/ウェル)、一晩培養した。細胞が定着したことを確認した後、hydrocortisone(ハイドロコルチゾン)を抜いたKGM培地200μLにて、24時間培養した。
培養終了後、既に存在するCOX−1および少量発現しているCOX−2をアセチル化し失活させるため、500μmol/Lアスピリン含有KGM培地(ハイドロコルチゾン抜き)を200μL加え、4時間培養した。培養後、細胞をPBS(−)緩衝液で3回洗浄し、100μLのPBS(−)緩衝液を加えUV−B照射(50mJ/cm2 )を行い、その後KGM培地(ハイドロコルチゾン抜き)に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表15を参照)を各ウェルに400μLずつ添加し、37℃・5%CO2 条件下で24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地(ハイドロコルチゾン抜き)を用いて同様に培養した。培養終了後、各ウェルの培養上清中のプロスタグランジンE2 量を、PGE2 EIA Kit(Cayman Chemical社製)を用いて定量した。得られた結果から、下記式によりCOX−2活性阻害率(%,PGE2 産生抑制率)を算出した。
ケラチノサイトCOX−2活性阻害率(%)={1−(A−C)/(B−C)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加・紫外線照射でのプロスタグランジンE2
B:試料無添加・紫外線照射でのプロスタグランジンE2
C:試料無添加・紫外線未照射でのプロスタグランジンE2
結果を表15に示す。
Figure 0006709587
表15に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、ケラチノサイトにおいて優れたCOX−2阻害作用を有することが確認された。
〔試験例16〕サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにしてサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を試験した。
5mmol/Lの塩化マグネシウムを含有する50mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH7.5)0.2mLに、2.5mg/mLウシ血清アルブミン溶液0.1mL、0.1mg/mLサイクリックAMPホスホジエステラーゼ溶液0.1mL、および被験試料溶液(試料1,試料濃度は下記表16を参照)0.05mLを加え、37℃にて5分間静置した。その後、0.5mg/mLサイクリックAMP溶液0.05mLを加え、37℃で60分間反応させた。反応終了後、3分間沸騰水浴上で煮沸することにより反応を停止させ、これを遠心(2260×g,10分間,4℃)し、上清中の反応基質であるサイクリックAMPを、下記の高速液体クロマトグラフィー条件にて分析した。また、コントロールとして、試料無添加の溶媒のみを加えて同様の操作を行った。
<高速液体クロマトグラフィー条件>
製品名:Chromatocorder 12(SYSTEM INSTRUMENTS社製)
固定相:Wakosil C18−ODS 5μm(和光純薬工業社製)
カラム長:250mm
移動相:1mmol/L TBAP in 25mmol/L KH2PO4:CH3CN=90:10
移動相流速:1.0mL/min
検出:260nm
次に、サイクリックAMP標準品のピーク面積(A)、試料無添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B1)および被験試料添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B2)を求めた。得られた結果から、下記式により試料無添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(C)および被験試料添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(D)を算出した。
試料無添加での標準品分解率(C,%)=(1−B1/A)×100
被験試料添加での標準品の分解率(D,%)=(1−B2/A)×100
その後、上記式により算出した各分解率(C,D)に基づいて、下記式によりサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)を算出した。
cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)=(1−D/C)×100
結果を表16に示す。
Figure 0006709587
表16に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有することが確認された。
〔試験例17〕ヒト正常肝細胞を用いたグルタチオン低下抑制作用試験
正常ヒト肝細胞を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10×104 cells/mLの細胞密度になるよう10%FBS含有ダルベッコMEM培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、1%FBS含有ダルベッコMEMに溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表17を参照)200μLと、終濃度5mMのガラクトサミン塩酸塩200μLとを各ウェルに添加し、さらに24時間培養した。また、同様に細胞播種した後、ガラクトサミン塩酸塩を処理しない細胞および細胞播種後ガラクトサミン塩酸塩を処理し被験試料を添加しない細胞についても同様に測定し、それぞれ非処理群と処理群とした。培養終了後、各ウェルから培地を除去し、400μLのPBS(−)緩衝液にて洗浄後、150μLのM−PER(PIERCE社製)を用いて細胞を溶解した。
このうちの50μLを用いて総グルタチオンの定量を行った。すなわち、96ウェルプレートに、溶解した細胞抽出液50μL、0.1Mリン酸緩衝液100μL、2mM NADPH25μL、およびグルタチオンレダクターゼ25μL(終濃度17.5 unit/mL)を加え、37℃で10分間加温した後、10mM 5,5’-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオン(和光純薬社製)を用いて作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式に従いグルタチオン低下抑制率を算出した。
グルタチオン低下抑制率(%)={(Nt−C)−(Nt−Sa)}/(Nt−C)×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
Nt:ガラクトサミン塩酸塩非処理(非処理群)のにおける総タンパク量当たりのグルタチオン量
C :試料無添加・ガラクトサミン塩酸塩処理(処理群)における総タンパク量当たりのグルタチオン量
Sa:被験試料添加・ガラクトサミン塩酸塩処理における総タンパク量当たりのグルタチオン量
結果を表17に示す。
Figure 0006709587
表17に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は、優れたグルタチオン低下抑制作用を有することが確認された。
〔試験例18〕DPPIV活性阻害作用試験
4−ビニルグアヤコール(試料1)について、以下のようにしてジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)阻害作用を試験した。
96ウェルプレートにて、25mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)にて調製した被験試料(試料1,終濃度は下記表18を参照)25μLと、上記緩衝液にて調製した0.4μg/mL DPPIV(R&Dシステム社製,rhCD26)溶液25μLとを混合し、37℃にて5分間プレインキュベーションした。その後、上記緩衝液にて調製した0.5mM Gly−Pro−p−NA・Tos(ペプチド研究所社製)50μLを添加し、37℃にて90分間反応させた。反応終了後、波長415nmにおける吸光度を測定した。得られた結果から、下記式によりDPPIV阻害率(%)を算出した。
DPPIV阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加・酵素添加での波長415nmにおける吸光度
B:試料無添加・酵素無添加での波長415nmにおける吸光度
C:被験試料添加・酵素添加での波長415nmにおける吸光度
D:被験試料添加・酵素無添加での波長415nmにおける吸光度
結果を表18に示す。
Figure 0006709587
表18に示すように、4−ビニルグアヤコール(試料1)は優れたDPPIV阻害作用を示した。
〔配合例1〕
下記組成の乳液を常法により製造した。
4−ビニルグアヤコール 0.01g
ホホバオイル 4.00g
1,3−ブチレングリコール 3.00g
アルブチン 3.00g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.50g
オリーブオイル 2.00g
スクワラン 2.00g
セタノール 2.00g
モノステアリン酸グリセリル 2.00g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
グリチルリチン酸ステアリル 0.10g
黄杞エキス 0.10g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.10g
イチョウ葉エキス 0.10g
コンキオリン 0.10g
オウバクエキス 0.10g
カミツレエキス 0.10g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例2〕
下記組成のクリームを常法により製造した。
4−ビニルグアヤコール 0.05g
クジンエキス 0.1g
オウゴンエキス 0.1g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
スクワラン 10.0g
セタノール 3.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
油溶性甘草エキス 0.1g
1,3−ブチレングリコール 6.0g
パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
香料 0.1g
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例3〕
下記組成の美容液を常法により製造した。
4−ビニルグアヤコール 0.01g
カミツレエキス 0.1g
ニンジンエキス 0.1g
キサンタンガム 0.3g
ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
カルボキシビニルポリマー 0.1g
1,3−ブチレングリコール 4.0g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
グリセリン 2.0g
水酸化カリウム 0.25g
香料 0.01g
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
エタノール 2.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例4〕
下記組成のヘアトニックを常法により製造した。
4−ビニルグアヤコール 0.4g
酢酸トコフェロール 適量
セファラチン 0.002g
イソプロピルメチルフェノール 0.1g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.15g
グリセリン 15.0g
エタノール 15.0g
香料 適量
キレート剤(エデト酸ナトリウム) 適量
防腐剤(ヒノキチオール) 適量
可溶化剤(ポリオキシエチレンセチルエーテル) 適量
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例5〕
下記組成のシャンプーを常法により製造した。
4−ビニルグアヤコール 0.5g
マジョラム抽出物 1.0g
ウメ果実部抽出物 0.2g
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0g
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10.0g
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0g
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0g
プロピレングリコール 2.0g
香料 適量
精製水 残部(全量を100gとする)
〔配合例6〕
常法により、以下の組成を有する錠剤を製造した。
4−ビニルグアヤコール 5.0mg
ドロマイト(カルシウム20%、マグネシウム10%含有) 83.4mg
カゼインホスホペプチド 16.7mg
ビタミンC 33.4mg
マルチトール 136.8mg
コラーゲン 12.7mg
ショ糖脂肪酸エステル 12.0mg
〔配合例7〕
常法により、以下の組成を有する経口液状製剤を製造した。
<1アンプル(1本100mL)中の組成>
4−ビニルグアヤコール 0.3質量%
ソルビット 12.0質量%
安息香酸ナトリウム 0.1質量%
香料 1.0質量%
硫酸カルシウム 0.5質量%
精製水 残部(100質量%)
本発明の抗老化剤、美白剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗炎症剤、抗肥満剤、cAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、グルタチオン低下抑制剤およびDPPIV活性阻害剤は、皮膚の老化症状の予防、治療または改善;創傷または熱傷の治癒の促進;乾燥性皮膚疾患の予防、治療または改善;皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着の予防または改善;脱毛症、特に男性型脱毛症の脱毛症の予防、治療または改善;各種皮膚炎症性疾患の予防または改善;肥満の予防、治療または改善;肝機能の向上または改善;2型糖尿病、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性等の予防、治療または改善;などに大きく貢献できる。

Claims (3)

  1. 4−ビニルグアヤコールを有効成分とし、
    表皮角化細胞増殖促進用途、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進用途およびアクアポリン3mRNA発現促進用途からなる群より選択される1種または2種以上の用途に用いられる
    ことを特徴とする抗皮膚老化剤。
  2. 4−ビニルグアヤコールを配合した皮膚化粧料であって、
    表皮角化細胞増殖促進用途、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進用途およびアクアポリン3mRNA発現促進用途からなる群より選択される1種または2種以上の抗皮膚老化用途に用いられる皮膚化粧料。
  3. 4−ビニルグアヤコールを配合した頭髪化粧料であって、
    表皮角化細胞増殖促進用途、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進用途およびアクアポリン3mRNA発現促進用途からなる群より選択される1種または2種以上の頭部の皮膚の抗老化用途に用いられる頭髪化粧料。
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