JP6781595B2 - 重合体の表面親水化処理方法、表面親水化物品の製造方法および表面親水化物品 - Google Patents

重合体の表面親水化処理方法、表面親水化物品の製造方法および表面親水化物品 Download PDF

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Description

本発明は、重合体の表面親水化処理方法等に関する。より詳しくは、重合体の表面を親水化し、医療用具の材料として好適な重合体にする処理方法等に関する。
高分子化合物は、原料となる単量体を選択することで様々な特性のものを設計することが可能であり、工業製品から日用品まで様々な用途に幅広く用いられている。このような高分子化合物の用途の1つに医療用具用途がある。医療用具は、血液等の生体成分や生体組織と接触する環境下で使用され、医療用具表面と生体成分や生体組織との親和性が低い場合、生体防御機構が活性化され、血液が凝固して血栓が形成される等の不具合が生じる。このため、医療用具は少なくとも生体成分や生体組織と接触する表面が生体適合性の高い材料で形成されていることが必要となる。
このような医療分野で使用される高分子材料として、2種類の特定のモノマーを含む原料モノマーから得られた共重合体、架橋剤および溶媒を含む生体関連物質吸着防止用コーティング組成物を接触させて加熱することにより形成される被膜を表面に有する生体関連物質用物品(特許文献1参照)等が知られている。
特開2006−158961号公報
医療用具の材料として使用される重合体には、生体適合性が高いことの他に、重合体塗膜表面にべたつきがなく、使用しやすい材料であることも重要である。上記特許文献1に具体的に記載された重合体は、重合体塗膜の表面にべたつきがあり、使用のしやすさの点で改善の余地がある。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、良好な生体適合性を有しながら塗膜表面のべたつきがなく、使用のしやすい医療用具重合体を提供することを目的とする。
本発明者は、良好な生体適合性を有しながら塗膜表面のべたつきもない重合体について検討したところ、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体を該重合体のガラス転移温度以上の水及び/又は水蒸気で処理すると、表面のべたつきが抑制され、かつ、生体適合性が良好な重合体が得られることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体を上記重合体のガラス転移温度以上の水及び/又は水蒸気で処理することを特徴とする重合体の表面親水化処理方法である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
<重合体の表面親水化処理方法>
本発明の重合体の表面親水化処理方法は、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体を、該重合体のガラス転移温度以上の水及び/又は水蒸気で処理することを特徴とする。重合体が良好な生体適合性を有するものであるためには、重合体表面が親水性であることが必要となる。ガラス転移温度が40℃以上の重合体は、表面のべたつきのない重合体である一方、重合体表面の親水化が十分に進行しにくい。しかしこのようなガラス転移温度が高い重合体でも、該重合体のガラス転移温度よりも高い温度の水及び/又は水蒸気で処理することで、重合体表面の親水化を進行させることが可能となる。
ここで、水及び/又は水蒸気で処理するとは、重合体に対して水及び/又は水蒸気を接触させることを意味し、水を用いる場合であれば重合体を水中に浸漬する方法や、水を噴きつける方法、水蒸気を用いる場合であれば、重合体に対して水蒸気を吹き付ける方法や、例えば、相対湿度80%以上の高湿度条件下に置く方法等を用いることができる。また、重合体のガラス転移温度より低い温度の水と、予め加熱した若しくは加熱している重合体とを用い、水と重合体とが接触する時点で重合体のガラス転移温度より高い温度になるように処理を行っても良い。水での処理と水蒸気での処理は、いずれか一方のみを行ってもよく、両方を行ってもよい。
なお、水及び/又は水蒸気での処理は、水及び/又は水蒸気のみを用いてもよく、水及び/又は水蒸気と他の成分とを混合したものを用いてもよい。他の成分としては、水に溶解または分散する無機成分、有機成分等が挙げられ、有機成分としては他の溶剤及び/又はその蒸気等が挙げられる。
上記水及び/又は水蒸気による処理は、重合体のガラス転移温度以上の水及び/又は水蒸気を用いて行われればよいが、重合体のガラス転移温度より5℃以上高い水及び/又は水蒸気を用いて行うことが好ましい。温度が高い水や水蒸気を用いるほど、より短時間で重合体表面の親水化を行うことができる。より好ましくは、重合体のガラス転移温度より10℃以上高い水及び/又は水蒸気を用いることであり、更に好ましくは、重合体のガラス転移温度より20℃以上高い水及び/又は水蒸気を用いることである。
重合体を該重合体のガラス転移温度以上の水及び/又は水蒸気で処理する時間は、水及び/又は水蒸気の温度にも影響されるが、重合体表面の親水化を充分に行うことと、重合体の表面親水化処理を効率的に行うことの両方を考えると、0.1〜60分であることが好ましい。より好ましくは、1〜40分であり、更に好ましくは、2〜20分である。
上記水及び/又は水蒸気による処理に用いる水や水蒸気の量は、重合体の表面が親水化される限り特に制限されないが、重合体の重量に対して、0.1倍以上であることが好ましい。このような割合で水や水蒸気を用いることで、重合体の表面をより充分に親水化することができる。
本発明の重合体の表面親水化処理方法には、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体を用いる。
重合体が有する親水性基は特に制限されず、アミノ基、アミド基、イミノ基、アンモニウム基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、カルボキシル基、(モノ、ジ、トリ)アルキレングリコール基、ピロリドン基、グリセロール基、エリスリトール基等のいずれのものであってもよく、これらの1種を有していてもよく、2種以上を有していてもよいが、重合体がより良好な生体適合性を有するものとなる点から、グリセロール基を有することが好ましい。
上記重合体は、ガラス転移温度が40℃以上のものであればよいが、ガラス転移温度が50℃以上のものであると、より重合体のべたつきが少ない点で好ましい。より好ましくは、ガラス転移温度が60℃以上のものである。
また、水及び/又は水蒸気による親水化処理を簡便に行う点から、ガラス転移温度は200℃以下であることが好ましい。より好ましくは、150℃以下である。
重合体のガラス転移温度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
上記のとおり、本発明の重合体の表面親水化処理方法に用いる重合体は、親水性基としてグリセロール基を有するものが好ましい。より好ましくは、下記式(1−1)及び/又は(1−2);
Figure 0006781595
(式中、Rは、水素原子、メチル基、又は、−R−Yを表す。Rは−CH−または−CHCH−を表す。X、Yは、下記式(2)で表される基、もしくは−CO−O−R(Rは炭素数1〜24の有機基)を表し、X、Yの少なくともいずれか1つは下記式(2)で表される基である。)
Figure 0006781595
(式中、Rは、−CH−、−CO−又は直接結合を表す、nは、0〜20の数を表す。)で表される構造単位を有する重合体であることが好ましい。この場合、式(1−1)又は(1−2)で表される構造単位を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
なお、本発明において、有機基とは、有機化合物に含まれる少なくとも1の水素原子を除いた構造を有する基をいう。
上記式(1−1)におけるRの有機基としては、炭化水素基が好ましく、より好ましくは、アルキル基である。
上記式(2)において、nは、0〜15であることが好ましい。より好ましくは、0〜10であり、更に好ましくは、0〜5である。
本発明の重合体の表面親水化処理方法に用いる重合体が、上記式(1−1)及び/又は(1−2)で表される構造単位を有するものである場合、重合体は、上記式(1−1)又は(1−2)で表される構造単位のみからなるものであってもよく、その他の構造単位を有するものであってもよい。その他の構造単位を有する場合、重合体が有する全構造単位100モル%に対して、上記式(1−1)又は(1−2)で表される構造単位の割合(上記式(1−1)で表される構造単位と(1−2)で表される構造単位とを共に有する場合には、その合計)が5〜90モル%であることが好ましい。医療用具用途に用いられる重合体には、生体成分や生体組織に対する高い親和性や、医療用具の基材として用いられる材料への密着性に優れることが求められるが、同時に、生体成分や生体組織に溶解しないことも必要である。これら両方の要求を満たすため、式(1−1)又は(1−2)で表される構造単位をこのような割合で有することが好ましい。
上記式(1−1)又は(1−2)で表される構造単位の割合は、より好ましくは、10〜60モル%であり、更に好ましくは、20〜50モル%である。
上記その他の構造単位としては、例えば、以下のいずれかの単量体の炭素−炭素二重結合(C=C)が炭素−炭素単結合(−C−C−)になった構造単位が挙げられる。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,5−ジクロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミドなどのN置換マレイミド類。これらの他の単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、スチレン等の芳香族ビニル単量体や、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキル単量体が好ましい。
本発明の重合体の表面親水化処理方法に用いる重合体が、上記その他の構造単位を有する場合、その割合は、重合体が有する全構造単位100モル%に対して、10〜95モル%であることが好ましい。より好ましくは、40〜90モル%であり、更に好ましくは、50〜80モル%である。
本発明の重合体の表面親水化処理方法に用いる重合体は、重量平均分子量が1,000〜10,000,000であることが好ましい。重量平均分子量がこのような範囲であると、耐久性や機械強度に優れた材料となり好ましい。重量平均分子量は、より好ましくは、5,000〜2,000,000であり、更に好ましくは、10,000〜500,000である。
また、上記重合体は、分子量が5000以下の成分の割合が重合体全体の5.0%以下であることが好ましい。分子量5000以下の成分の割合が重合体全体の5.0%以下であると、長期の使用によっても血液中への低分子量成分の溶出を抑制することができ、生体組織との親和性がより良好となる。分子量5000以下の成分の割合は、より好ましくは、重合体全体の1.0%以下であり、更に好ましくは、重合体全体の0.5%以下である。
重合体の重量平均分子量、及び、分子量5000以下の成分の割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、実施例に記載の測定条件で測定することができる。
本発明の重合体の表面親水化処理方法によって表面親水化処理を行った重合体は、水(25℃)への溶解度が、1質量%以下であることが好ましい。後述する医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤等として用いる材料には、通常、水に対して溶解性が低いことが求められる。上記重合体の水(25℃)への溶解度が、1質量%以下であると、重合体が医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤等としてより好適なものとなる。上記重合体の水(25℃)への溶解度は、より好ましくは、0.1質量%以下であり、更に好ましくは、0.05質量%以下である。
なお、表面親水化処理を行った後、および/又は、行う前に架橋反応を行うことにより、水に対する溶解度を調整してもよい。
上記式(1−1)又は(1−2)で表される構造単位を有する重合体の製造方法、及び、上記式(1−1)又は(1−2)で表される構造単位の原料となるグリセロール基含有単量体の製造方法については後述する。
<表面親水化物品の製造方法>
本発明の重合体の表面親水化処理方法を用いることで、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体でその物品の一部(表面部分)又は全部が形成された物品を親水化処理して表面を親水化した物品を製造することができる。
このような表面親水化物品を製造する方法、すなわち、40℃以上のガラス転移温度を有し、表面が親水化された重合体を含む物品を製造する方法であって、上記製造方法は、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で物品の一部又は全部を形成する工程と、上記重合体のガラス転移温度以上の水及び/又は水蒸気で該重合体を処理する工程とを含む表面親水化物品の製造方法もまた、本発明の1つである。
なお、本発明における物品とは、ガラス転移温度が40℃以上の重合体や該重合体と他の材料とで形成されるあらゆる構造物を意味し、形状や大きさは制限されないが、後述する医療用具のいずれかであることが好ましい。
上記親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で物品の一部又は全部を形成する工程は、ガラス転移温度が40℃以上の重合体のみで物品を形成する工程であってもよく、該重合体と他の材料とで物品を形成する工程であってもよい。該重合体と他の材料とで物品を形成する工程である場合、物品を形成する方法は特に制限されないが、他の材料の表面を該重合体でコーティングする方法が好ましい。
本発明の表面親水化物品の製造方法において用いる、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体としては、上述した本発明の重合体の表面親水化処理方法において用いる重合体と同様のものを用いることができる。
また、本発明の表面親水化物品の製造方法における、重合体のガラス転移温度以上の水及び/又は水蒸気で該重合体を処理する工程は、本発明の重合体の表面親水化処理方法と同様にして行うことができる。
本発明における表面親水化物品が、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で物品の全部が形成されたものである場合、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で物品の全部を形成する工程の具体的な方法としては、重合体を押出成型する方法、射出成型する方法、圧縮成型する方法、中空成形する方法、カレンダー成形する方法等の1つ又は2つ以上を用いることができる。
また、本発明における表面親水化物品が、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で物品の一部が形成されたものである場合、すなわち、表面親水化物品が、ガラス転移温度が40℃以上の重合体と他の材料とで構成されたものである場合、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で物品の一部を形成する工程の具体的な方法としては、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で他の材料をコーティングする方法;放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線によるグラフト重合を利用して他の材料の表面と親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体とを結合させる方法;他の材料の表面の官能基と親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体とを反応させて結合させる方法、上記材料を他の材料と混練したのち成形する方法等の1つ又は2つ以上を用いることができる。
上記コーティングする方法を用いる場合、塗布法、スプレー法、ディップ法等のいずれの方法を用いてもよい。なお、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体の原料となる単量体成分を必須とする組成物を用いて、塗布法、スプレー法、ディップ法等でコーティングした後、加熱・活性エネルギー線の照射等により重合反応を行い、他の材料の表面に親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体の層を形成させることにより、コーティングしても良い。
本発明の表面親水化物品の製造方法は、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で物品の一部又は全部を形成する工程と、上記重合体のガラス転移温度以上の水及び/又は水蒸気で該重合体を処理する工程とを含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で物品の一部又は全部を形成する工程で得られた物品を乾燥する工程等が挙げられる。
本発明における表面親水化物品が、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で物品の一部が形成されたものである場合、表面親水化物品を構成する、該重合体以外の材料としては特に制限されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、(ハロゲン化)ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル樹脂、スチロール樹脂、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル等の合成高分子;木綿、麻等の天然高分子等;金属、セラミックス及びこれらの複合材料等を用いることができる。金属としては、金、銀等の貴金属、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロム等の卑金属、及びこれらの金属の合金並びにこれらの表面が金めっきされたものが例示できるがこれらに限定されるものではない。金属は単体で用いてもよく、機能性を付与するために他の金属との合金又は金属の酸化物として用いてもよい。
表面親水化物品の形態も特に制限されず、成形体、繊維、不織布、多孔質体、粒子、フィルム、シート、チューブ、中空糸や粉体等のいずれの形態でもよい。
本発明における表面親水化物品が、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で物品の一部が形成されたものである場合、物品の表面の少なくとも一部が親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で形成されていればよいが、物品の表面全体の10%以上が親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で形成されていることが好ましい。より好ましくは、20%以上であり、更に好ましくは、30%以上である。
本発明における表面親水化物品は、生体適合性を有するとともに、表面のべたつきがなく扱いやすい物品であることから、後述する医療用具や細胞培養基材の他、水処理膜、各種塗料、防曇処理剤、光学材料、レンズ表面処理、フィルム表面処理等の用途に用いることができる。
<グリセロール基含有重合体>
上述したとおり、本発明の重合体の表面親水化処理方法を用いることで、表面が親水化処理されて良好な生体適合性を有するとともに、表面のべたつきがなく扱いやすい重合体を得ることができる。このような重合体の生体適合性は、気泡法により該重合体表面の接触角を測定することで評価することができ、例えば、接触角が150°以上であれば、生体適合性が良好となる傾向がある。
このような良好な生体適合性を有する重合体、すなわち、グリセロール基を有する重合体であって、上記重合体は、ガラス転移温度が40℃以上であり、気泡法により測定した該重合体表面の接触角が150°以上であることを特徴とするグリセロール基含有重合体もまた、本発明の1つであり、このようなグリセロール基含有重合体を用いてなる表面親水化物品もまた、本発明の1つである。
本発明のグリセロール基含有重合体の1つは、気泡法により測定した該重合体表面の接触角が150°以上であるが、生体適合性が向上する傾向にあることから、接触角は、155°以上であることが好ましい。より好ましくは、160°以上であり、更に好ましくは、165°以上である。
気泡法による重合体表面の接触角測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
本発明のグリセロール基含有重合体は、グリセロール基を構造中に有する重合体であればその構造は特に制限されないが、上述した式(1−1)及び/又は式(1−2)で表される構造単位を有する重合体であることが好ましく、好ましい構造や重量平均分子量の好ましい範囲も同様である。
本発明のグリセロール基含有重合体は、生体適合性を有するとともに、表面のべたつきがなく扱いやすい重合体であることから、表面が親水性であり、生体適合性を有する物品の材料として好適に用いることができる。
このような、本発明のグリセロール基含有重合体を用いてなる表面親水化物品もまた本発明の1つである。本発明のグリセロール基含有重合体を用いてなる物品は、良好な生体適合性を有することから、医療用具として用いられることが好ましい。したがって、本発明のグリセロール基含有重合体を用いてなる表面親水化物品が医療用具であることは好適な実施形態である。
<グリセロール基含有単量体の製造方法>
上記式(1−1)で表される構造単位を形成する下記式(3);
Figure 0006781595
(式中、R、Xは、式(1−1)と同様である。)で表されるグリセロール基含有単量体の製造方法は特に制限されないが、下記式(4);
Figure 0006781595
(式中、Rは、水素原子、メチル基、又は、−R−Yを表す。Rは、式(1−1)と同様である。X、Yは、下記式(5)で表される基、もしくは−CO−O−R(Rは式(1−1)と同様)を表し、X、Yの少なくともいずれか1つは下記式(5)で表される基である。)
Figure 0006781595
(式中、R、nは、式(2)と同様である。Rは、水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)で表されるビニル化合物と下記式(6);
Figure 0006781595
で表されるグリセロール化合物またはエピクロルヒドリンとを反応させた後(ただし、エピクロルヒドリンを反応させるときは、式(5)のRは水素原子である。)、得られた生成物に水を反応させる方法が好適である。
上記式(4)で表されるビニル化合物は、下記式(7);
Figure 0006781595
(式中、Rは、水素原子、メチル基、又は、−R−Yを表す。Rは、式(1−1)と同様である。X、Yは、下記式(8)で表される基、もしくは−CO−O−R(Rは式(1−1)と同様)を表し、X、Yの少なくともいずれか1つは下記式(8)で表される基である。)
Figure 0006781595
(式中、Rは、式(2)と同様である。)で表されるビニル化合物とエチレンオキサイドとを反応させること等により製造することができる。
また、上記(1−2)で表される構造単位は、下記式(9);
Figure 0006781595
(式中、Rは、−CH−、−CO−又は直接結合を表す。nは、0〜20の数を表す。)で表される化合物を用いること等により形成することができる。上記式(9)で表される化合物は、上記式(7)で表されるビニル化合物の代わりに、下記式(10);
Figure 0006781595
(式中、Rは、式(9)と同様である。)で表される化合物を用いることの他は、上記式(3)で表されるグリセロール基含有単量体の製造方法と同様にして製造することができる。
上記式(10)で表される化合物の具体例としては、アリルオキシメチルアクリル酸等が挙げられる。
上記式(4)で表されるビニル化合物と上記式(6)で表されるグリセロール化合物またはエピクロルヒドリンとの反応は−10〜150℃の範囲で適宜設定して行うことができ、常圧、加圧、減圧のいずれの条件下で行ってもよい。
上記反応のうち、式(4)で表されるビニル化合物と式(6)で表されるグリセロール化合物またはエピクロルヒドリンとの反応生成物に水を反応させる際には、塩酸、硫酸等の酸の他、無機固体酸、カチオン交換樹脂等の酸触媒の1種又は2種以上の触媒を用いて行うことが好ましい。
また上記反応においては、ビニル化合物の重合を抑制するために、重合禁止剤を使用することや、酸素を含むガスを反応液中にバブリングしながら反応を行うことのいずれか又は両方を行うことが好ましい。
<グリセロール基を有する重合体の製造方法>
本発明の、ガラス転移温度が40℃以上であり、気泡法により測定した該重合体表面の接触角が150°以上であるグリセロール基を有する重合体は、このようなガラス転移温度及び接触角の要件を満たす重合体となるようにグルセロール基を有する単量体と必要に応じてその他の単量体とを適宜選択し、それらを含む単量体成分を重合することにより製造することができる。
本発明のグリセロール基を有する重合体としては、上記式(1−1)及び/又は式(1−2)で表される構造単位を有する重合体が好ましいため、以下においては、これらの構造単位を有する重合体の製造方法について記載するが、これらの構造単位を有さない重合体についても下記方法を参考に、適宜条件を変更して製造することができる。
上記式(1−1)及び/又は式(1−2)で表される構造単位を有する重合体は、上記式(3)及び/又は式(9)で表されるグリセロール基含有単量体を含む単量体成分を重合することにより製造することができる。
重合体の原料中におけるそれらの単量体の好ましい使用量は、本発明の医療用具用重合体の全単量体単位におけるこれらの単量体由来の構造単位の好ましい割合と同様である。
上記式(1−1)及び/又は式(1−2)で表される構造単位を有する重合体の製造方法における重合反応は、重合開始剤の存在下で重合反応を行うことが好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
重合開始剤の使用量としては、重合反応に使用される単量体の使用量1モルに対して、0.01g以上、10g以下であることが好ましく、0.1g以上、5g以下であることがより好ましい。
上記重合反応は、溶媒を使用せずに行っても良いが、溶媒を使用することが好ましい。溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
溶媒の使用量としては、重合反応に使用される単量体100質量%に対して40〜250質量%が好ましい。
上記重合反応は、通常、0℃以上で行われることが好ましく、また、150℃以下で行われることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。上記重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、一度または二度以上変動(加温または冷却)しても良い。
重合反応は、常圧、加圧、減圧のいずれの条件下で行ってもよい。
上記重合反応において、重合体の原料となる単量体や、重合開始剤等は、それぞれ反応器に一括で添加しても良く、逐次的に添加しても良い。
上記式(1−1)及び/又は式(1−2)で表される構造単位を有する重合体の製造方法は、上記重合反応工程以外の他の工程を含んでいてもよい。例えば、熟成工程、中和工程、重合開始剤や連鎖移動剤の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。
<医療用具用材料、抗血栓性コーティング剤及び医療用具>
本発明のグリセロール基含有重合体は、良好な生体適合性や抗血栓性を有しながら、表面のべたつきが抑制された重合体であることから、医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤として好適に用いることができる。このような本発明のグリセロール基含有重合体を含む医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤もまた、本発明の1つであり、本発明の医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤を用いてなる医療用具であって、該医療用具は、生体成分又は生体組織と接触する部分の少なくとも一部が前記医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤を用いて構成される医療用具もまた、本発明の1つである。
本発明の医療用具用材料は更に、細胞培養基材としても好適に使用することができる。このような、本発明の医療用具用材料を用いてなる細胞培養基材もまた、本発明の1つである。
また、本発明の表面親水化物品の製造方法で得られる表面親水化物品は、ガラス転移温度以上の水及び/又は水蒸気で処理されることで、良好な生体適合性や抗血栓性を有しながら、表面のべたつきが抑制されたものとなった重合体によって全部又は一部が形成されたものであり、医療用具として好適に用いることができる。したがって、本発明の表面親水化物品の製造方法で得られる表面親水化物品もまた、医療用具用材料として好適に用いることができる。
本発明の医療用具は、生体成分又は生体組織と接触する部分の少なくとも一部が前記医療用具用材料を用いて構成されていればよいが、生体成分又は生体組織と接触する部分の面積の50%以上が前記医療用具用材料で覆われていることが好ましく、80%以上覆われていることがより好ましく、生体成分又は生体組織と接触する部分の全てが前記医療用具用材料で覆われていることが最も好ましい。
本発明の医療用具は、いずれの生体成分や生体組織と接触する用途にも用いることができるが、血液と接触する用途に用いられることは、本発明の医療用具の好適な実施形態の1つである。
各種医療用具の生体成分又は生体組織と接触する部分に本発明の医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤を保持させる方法としては、医療用具又はその部品の表面を医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤でコーティングする方法、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線によるグラフト重合を利用して医療用具の表面と医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤とを結合させる方法、医療用具の表面の官能基と医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤とを反応させて結合させる方法等、種々の方法を用いることができる。コーティング法を用いる場合、医療用具又はその部品の表面を医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤でコーティングする方法として、塗布法、スプレー法、ディップ法等のいずれの方法を用いてもよい。なお、上記医療用具用重合体の原料となる単量体成分を必須とする組成物を用いて、塗布法、スプレー法、ディップ法等でコーティングした後、加熱・活性エネルギー線の照射等により重合反応を行い、医療用具もしくは医療用具の材料の表面に本発明の医療用具材料や抗血栓性コーティング剤の層を形成させることにより、コーティングしても良い。
本発明の医療用具用材料や抗血栓性コーティング剤を保持させる医療用具の材質は特に制限されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル樹脂、スチロール樹脂等、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロース、セルロースアセテートのいずれの材質のものであってもよい。また、金属、セラミックス及びこれらの複合材料等も例示でき、複数の基体より基材が構成されていてもよい。 金属としては、金、銀等の貴金属、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロム、チタン等の卑金属、及びこれらの金属の合金並びにこれらの表面が金めっきされたものが例示できるがこれらに限定されるものではない。金属は単体で用いてもよく、機能性を付与するために他の金属との合金又は金属の酸化物として用いてもよい。価格や入手の容易さの観点から、ニッケル、銅及びこれらを主成分とする金属を用いることが好ましい。ここで、主成分とは、上記基体を形成する材料のうち50重量%以上を占める成分をいう。基材の形態も特に制限されず、成形体、繊維、不織布、多孔質体、粒子、フィルム、シート、チューブ、中空糸や粉末等のいずれの形態でもよい。
本発明の医療用具用材料を細胞培養基材として使用する場合、医療用具用材料をそのまま用いてもよく、所定の基材上にコーティングして用いてもよい。
基材の材質は特に制限されず、木綿、麻等の天然高分子、ポリエステル、ナイロン、オレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリカーボネート、スチロール樹脂、シリコン樹脂等の合成高分子等を用いることができる。また、金属、セラミックス及びこれらの複合材料等も例示でき、複数の基体より基材が構成されていてもよい。 金属としては、金、銀等の貴金属、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロム、チタン等の卑金属、及びこれらの金属の合金並びにこれらの表面が金めっきされたものが例示できるがこれらに限定されるものではない。金属は単体で用いてもよく、機能性を付与するために他の金属との合金又は金属の酸化物として用いてもよい。価格や入手の容易さの観点から、ニッケル、銅及びこれらを主成分とする金属を用いることが好ましい。ここで、主成分とは、上記基体を形成する材料のうち50重量%以上を占める成分をいう。
基材の形態も特に制限されず、成形体、繊維、不織布、多孔質体、粒子、フィルム、シート、チューブ、中空糸や粉末等のいずれの形態でもよい。
本発明の医療用具用材料は、人工血管や人工臓器等の人工生体組織用や、血液フィルター、各種カテーテル、若しくは各種ステント等;生体組織と接触する用具用の部材として、また、細胞培養基材、血液透析装置用の部材、血液若しくは組織検査用器具の部材等;生体由来成分(細胞や血液等)と接触する用具用の部材として適用することができる。
すなわち、本発明における医療用具には、生体組織と接触する用具、生体由来成分(細胞や血液等)と接触する用具等が含まれる。
すなわち、本発明における医療用具用材料は、生体組織や生体由来成分(細胞や血液等)と接触する医療用具、細胞培養基材、抗血栓性材料に用いられる物を言う。
本発明の重合体の表面親水化処理方法は、上述の構成よりなり、親水性基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体を良好な生体適合性や抗血栓性を有しながら、表面のべたつきが抑制された重合体にすることができる優れた方法である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
合成例、実施例及び比較例におけるGC測定、重量平均分子量は以下の方法により行った。
<GC(ガスクロマトグラフィー)>
GC−2010(島津製作所製)を用い、キャピラリーカラム DB−17HT L30m×ID0.25mm、DF0.15mmにより測定した。
ピーク面積の測定の際には、ピークの左右のベースラインを直線で繋ぎ、該ベースラインとピークとで囲まれた部分の面積をピーク面積として測定した。
<重量平均分子量>
重合体をテトラヒドロフランで溶解・希釈し孔径0.45μmのフィルター(クラボウ社製クロマトディスク非水系タイプ)で濾過したものを、下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)装置、及び条件で測定した。
・装置:HLC−8320GPC(東ソー(株)製)
・溶出溶媒:テトラヒドロフラン
・標準物質:標準ポリスチレン(東ソー(株)製)
・分離カラム:TSKgel SuperH5000,TSKgel SuperH4000,TSKgel SuperH3000(東ソー(株)製)
<合成例>
(1)GLMA(グリセロールモノアクリレート)の合成
撹拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管、及び、留出液受器に繋げたトの字管を付し、アクリル酸メチル230g、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール(DOM)70gを仕込み、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7vol%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、オイルバス(バス温110℃)で加熱を開始した。留出液に水が出てこなくなってから、チタンテトライソプロポキシド4.5gを反応容器に添加し、エステル交換反応を開始させた。生成してくるメタノールをアクリル酸メチルで共沸留去しながら、ガスクロマトグラフィ(GC)分析によりiPGLMA(イソピリデングリセリルアクリレート)/DOMの面積比を追跡した。反応開始から7時間後のGC分析で、iPGLMA/DOMの面積比が9/1を超えたのを確認し、反応を終了し、室温まで冷却した。反応液に精製水150gと抽出溶媒として酢酸エチル300gを加え10分撹拌した。触媒の加水分解により生じた酸化チタンの沈殿を、吸引濾過で除いた濾液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。有機層を精製水で2回洗浄したのち、ロータリーエバポレーターに移し、残存アクリル酸メチル及び軽沸成分を留去し、iPGLMA96gを得た。
撹拌子を入れたナスフラスコにガス導入管を設け、精製水160mlとiPGLMA80gを加えて溶解させた後に、予め水に浸漬後に風乾した固体酸触媒アンバーリスト15Jwet(オルガノ社製)を35g加え、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7vol%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、室温下で脱保護反応を開始させた。GC分析によりGLMA/iPGLMAの面積比を追跡し、面積比が99/1を超えたのを確認し、4時間で反応を終了した。固体酸触媒を濾別して得られた濾液をn−ヘキサンで洗浄し、未反応iPGLMAを除いた。水層を減圧濃縮し、目的とするGLMA53gを得た。
<合成例(1)>PGM46の製造
攪拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管を付し、単量体としてGLMA2.0g、メチルメタクリレート(MMA)3.0g、溶媒としてメチルエチルケトン5.0g、アゾ系ラジカル重合開始剤0.025g(和光純薬社製、商品名:V−601)を仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌と昇温を開始した。内温80℃で重合を開始し、6hr反応を行った。
得られた反応液をアセトンで希釈し、大量のn−ヘキサン中に撹拌しながら投入することで再沈した。沈殿物を真空乾燥機によって、減圧下、80℃で3時間減圧乾燥し、固体の重合体(PGM46)を得た。得られた重合体は、重量平均分子量が11.3万であり、分子量5000以下の成分の含有量は0.5%以下であった。重合体をメタノールに溶解して1%溶液としたが、目視で不溶物は観測されなかった。更に、0.45μmのフィルター(クラボウ社製クロマトディスク非水系タイプ)でろ過し、フィルターの重量増加より不溶分量を求めたが、フィルター上にろ別された塊上の重合体はなく、フィルターの重量変化は0.1%以下であった。
<合成例(2)>PGS37の製造
単量体としてGLMA1.5g、スチレン(ST)3.5g、溶媒として1,4−ジオキサンを用いた以外は合成例(1)と同様にして、固体の重合体(PGS37)を得た。得られた重合体は、重量平均分子量が9.3万であり、分子量5000以下の成分の含有量は0.5%以下であった。重合体を1,4−ジオキサンに溶解して1%溶液としたが、目視で不溶物は観測されなかった。更に、0.45μmのフィルターでろ過し、フィルターの重量増加より不溶分量を求めたが、フィルター上にろ別された塊上の重合体はなく、フィルターの重量変化は0.1%以下であった。
<合成例(3)>PGB46の製造
単量体としてGLMA2.0g、ブチルアクリレート(BA)3.0gを用いた以外は合成例(1)と同様にして、固体の重合体(PGB46)を得た。得られた重合体は、重量平均分子量が13.4万であり、分子量5000以下の成分の含有量は0.5%以下であった。重合体をメタノールに溶解して1%溶液としたが、目視で不溶物は観測されなかった。更に、0.45μmのフィルターでろ過し、フィルターの重量増加より不溶分量を求めたが、フィルター上にろ別された塊上の重合体はなく、フィルターの重量変化は0.1%以下であった。
合成例(1)〜(3)で製造した重合体について、以下の方法により、ガラス転移温度の測定、親水化処理、接触角の測定、血小板粘着試験、タックの評価を行った。結果を表1に示す。
<Tgの測定方法>
JIS K7121に準拠し、下記の示差走査熱量計及び条件で測定し、中点法によりガラス転移温度(Tg)を求めた。
・装置:DSC3100(ブルカー・エイエックスエス(株)社製)
・昇温速度:10℃/分
・窒素フロー:50mL/分
<製膜条件(1)>
試験を行う重合体をそれぞれ、0.2%メタノール溶液として、PETフィルム上にスピンコートによって塗布、乾燥したものを試料とし、以下の接触角測定、血小板粘着試験をおこなった。
<製膜条件(2)>
試験を行う重合体をそれぞれ、2%メタノール溶液として、PETフィルム上にスピンコートによって塗布、乾燥したものを試料とし、以下のタック評価をおこなった。
<表面親水化処理>
試料フィルムを試料フィルムの50倍以上の重量の80℃の純水中に1hr浸漬した後、取り出し、室温で1昼夜乾燥した。
上記の処理を親水化処理(熱水処理)と称して、以下の評価において、親水化処理を行った試料と、行わなかった試料について比較した。
<接触角(気泡法)>
試料フィルム裏面に両面テープを張り付け、試料台に固定し、接触角計を用いて、水中で1.5μlの空気泡を膜表面に接触させ、接触角を測定した。
<血小板粘着試験>
試料上にクエン酸ナトリウムで抗凝固したヒト新鮮多血小板血漿0.2mLをピペットで滴下し、37℃で60分間静置した。続いてリン酸緩衝溶液でリンスし、グルタルアルデヒドで固定した後、基体を走査型電子顕微鏡で観察し、1×10μmの面積に接着した血小板数をカウントした。血小板の形態変化の進行度により、1型(正常)、2型(偽足形成)、3型(伸展)の3種類に分類し、MS(モルフォロジカルスコア)を以下のように定義して算出した。算出したMSから、生体適合性を5段階で評価した。
MS=n×1+n×2+n×3
(式中、nは1型の血小板数、nは2型の血小板数、nは3型の血小板数を表す。)
A:MS=0以上100未満
B:MS=100以上300未満
C:MS=300以上600未満
D:MS=600以上1000未満
E:MS=1000以上
なお、MSが小さいほど血小板が付着しにくく、生体適合性が良好であることを示す。
対照実験として行ったPETフィルムのMSはEであった。
<タック(指触法)>
ポリエチレン製の保護手袋((株)精宏社製、サクラメン手袋、スタンダードタイプ)を着用し、指で試料表面を5回、押す、離すを繰り返した際にベタツキを感じるかどうかで表面のタックの有無を判定した。
Figure 0006781595
表1の結果から、本発明の所定の要件を満たす重合体は、良好な生体適合性を有し、塗膜表面のべたつきがなく、使用のしやすい医療用具の材料として好適であることが確認された。

Claims (2)

  1. グリセロール基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体を該重合体のガラス転移温度以上の水及び/又は水蒸気で処理することを特徴とする重合体の表面親水化処理方法。
  2. 40℃以上のガラス転移温度を有し、表面が親水化された重合体を含む物品を製造する方法であって、該製造方法は、グリセロール基を有し、ガラス転移温度が40℃以上の重合体で物品の一部又は全部を形成する工程と、該重合体のガラス転移温度以上の水及び/又は水蒸気で該重合体を処理する工程とを含むことを特徴とする表面親水化物品の製造方法。
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