JP6775225B2 - 医療用具用材料及びそれを用いてなる医療用具 - Google Patents

医療用具用材料及びそれを用いてなる医療用具 Download PDF

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本発明は、医療用具用材料及びそれを用いてなる医療用具に関する。より詳しくは、生体成分又は生体組織と接触して使用される医療用具の材料として好適な医療用具用材料に及びそれを用いてなる医療用具に関する。
各種医療用具用材料に適用される重合体としては、生体に対する負荷を低減する観点から生体適合性を有するものが好ましく、これまで種々の生体適合性を示す重合体が提案されている。(メタ)アクリル系重合体はラジカル重合により容易に得られることから、医療用具に加工する方法として、重合体溶液や分散液の塗布・乾燥による方法だけでなく、基材上で直接重合する方法(例えば単量体を塗布・UV硬化する等)も適用でき、加工方法の選択肢が広い点で優れた材料である。
生体適合性の(メタ)アクリル系重合体としては、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)系ポリマー、メトキシエチルアクリレート(MEA)系ポリマー、テトラヒドロフルフリルアクリレート系ポリマー、アルコキシアルキルアクリルアミド系ポリマー等、種々のものが提案されており、このうち、MPC系ポリマー(例えば、特許文献1参照)、MEA系ポリマー(例えば、特許文献2参照)が実用化され、各種の医療用具関連用途で用いられている。
MPC系ポリマーは、リン脂質類似構造を持つMPCを重合成分として含む共重合体である。MPC単独重合体は水溶性であることから、非水溶性の重合体とするために疎水性モノマーとの共重合が必要であり、重合体中のMPC由来構造の量が制限される。また、重合性基が比較的重合活性が低いメタクリロイル基であるため、UV硬化のような高重合活性を必要とするような重合方法を適用しにくい。更に、MPCはリン脂質類似構造を導入するために複雑な合成・生産プロセスが必要な単量体であり、高価である。
これに対し、MEA単独重合体は非水溶性であり、MEAは単独重合体としても用いることも、必要に応じて共重合体としても用いることもできる。また、MEAの重合性基は重合活性の高いアクリロイル基であり、重合方法・加工方法の選択肢が広い。更に、MEAは汎用単量体として安価に入手できることから、各種医療用具用材料の原料として非常に優れた単量体である。
一方、α−アリルオキシメチルアクリレート(AOMA)類を環化重合させると、主鎖にテトラヒドロフラン(THF)環構造を有する重合体となることが知られている。AOMA類は優れたラジカル重合性を有し、AOMA系重合体は、密着性、可撓性、硬さ、分散性、耐熱性、透明性など多くの優れた特性を発揮し、様々な用途に使用できることが開示されている(例えば、特許文献3〜6参照)。
特許第2890316号公報 特許第2806510号公報 特開2010−168580号公報 特開2011−137123号公報 特開2011−074068号公報 特開2012−107208号公報
上記のとおり、現在、各種の医療用具関連用途で実用化されているMPC系ポリマーは、原料となるMPCの重合性及び価格の点で充分とはいえない。MEAは、重合性や価格の点でMPCよりも優れたものであるが、その単独重合体のガラス転移温度(Tg)が−50℃と低いことから重合体中のMEAの割合が多いほどタックが生じやすく、用途によっては加工工程でトラブルが生じたり、重合体中のMEAの使用割合が制限されたりする場合があった。
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、生体適合性に優れ、且つ良好なガラス転移温度を有する重合体を含む医療用具用材料を提供することを目的とする。
本発明者は、生体適合性に優れるとともに良好なガラス転移温度を有する重合体について種々検討し、主鎖にTHF環構造を有し、特定の側鎖構造を有する重合体が、生体適合性を示すとともにMEA系ポリマーよりも高いガラス転移温度を有することを見出し、本発明に想到した。
このような構造の重合体が生体適合性を示し、医療用具用材料に好適であることはこれまでに知られておらず、本発明で初めて見出された知見である。
すなわち本発明は、下記一般式(1);
Figure 0006775225
(式中、Zは、水素原子、1〜6価の炭素数1〜30の有機基、金属原子、又は、アンモニウム基を表す。)で表される繰り返し単位を有する重合体を含む医療用具用材料である。
本発明の医療用具用材料は、上述の構成よりなり、生体適合性が高く、且つ良好なガラス転移温度を有することから、人工生体組織、治療用具、及び、生体組織と接触する研究用具(研究機器)の部材等の材料として好適に用いることができる。
合成例1で合成したAOMA−MEのH−NMRチャートを示した図である。 合成例2で合成したAOMA−MDGのH−NMRチャートを示した図である。 合成例3で合成したAOMA−MTGのH−NMRチャートを示した図である。 合成例4で合成したAOMA−BDGのH−NMRチャートを示した図である。 合成例5で合成したAOMA−THFのH−NMRチャートを示した図である。 実施例1で合成したAOMA−MEの単独重合体(重合体1)のH−NMRチャートを示した図である。 実施例2で合成したAOMA−ME/AOMA−MDG共重合体(重合体2)のH−NMRチャートを示した図である。 実施例3で合成したAOMA−BDG重合体(重合体3)のH−NMRチャートを示した図である。 実施例4で合成したAOMA−MTG/AOMA−THF共重合体(重合体4)のH−NMRチャートを示した図である。 合成例6で合成したAOMA−PEのH−NMRチャートを示した図である。 合成例7で合成したAOMA−GLのH−NMRチャートを示した図である。 実施例5で合成したAOMA−PE/BA共重合体(重合体5)のH−NMRチャートを示した図である。 実施例6で合成したAOMA−GL/BA共重合体(重合体6)のH−NMRチャートを示した図である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の医療用具用材料は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(以下、重合体Aとも記載する)を含む。重合体Aは、生体適合性が高く、医療用具用材料として好適に使用することができる。重合体Aの生体適合性が高い理由は明らかではないが、上記一般式(1)で表される繰り返し単位構造が、THF環(極性・やや柔軟)の両隣にメチレン基(非極性・柔軟)を配した構造であるために、適度な極性を有しながら柔軟であることが影響していると考えられる。またTHF環の両隣にメチレン基を配した構造は、主鎖中に環構造を含むことによるガラス転移温度の上昇と、主鎖の柔軟性とを両立することから、重合体Aは柔軟性を損なわずに類似のポリアクリレート(同様の−COOZ基を有するアクリレートの重合体)よりも高いガラス転移温度を発現すると考えられる。
このような、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を医療用具用材料として使用する方法もまた、本発明の1つであり、後述する抗血栓性材料や細胞培養基材として使用する方法、医療用具の表面処理剤として使用する方法もまた、本発明の1つである。これらの使用方法においては、重合体Aが単独で使用されてもよく、後述する溶剤や分散媒、又は、他の材料と混合された形態で使用されてもよい。
上記重合体Aは、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を構造中に複数有するが、当該複数の繰り返し単位におけるZは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、重合体Aは、上記一般式(1)で表される繰り返し単位のみからなるものであってもよく、一般式(1)で表される繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を有していてもよい。
上記一般式(1)において、Zは、水素原子、1〜6価の炭素数1〜30の有機基、金属原子、又は、アンモニウム基を表す。Zが、2〜6価の炭素数1〜30の有機基である場合、一般式(1)で表される繰り返し単位が炭素数1〜30の有機基を介して2〜6個の別の構造と結合していることになる。そのような場合としては、2〜6個の一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合鎖がZを介して結合している場合が挙げられる。この場合、重合体は、主鎖にTHF環構造を有する複数の重合鎖が−CO−O−Z−O−CO−で架橋した構造のものとなる。
Zが2〜6価の炭素数1〜30の有機基である場合の重合体の構造が、2〜6個の一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合鎖がZを介して結合している構造のみからなるとすると、重合体Aは、下記一般式(2);
Figure 0006775225
(式中、Zは、一般式(1)と同様である。nは、1〜6の数を表す。)の繰り返し単位を有する重合体と表すこともできる。
式(2)におけるnが2〜6である場合、Zは、2〜6価の炭素数1〜30の有機基であり、Zの有機基の価数は、nの数と同じである。
上記一般式(1)において、Zは−CO−O−Zが親水性基となるようなZが好ましく、そのようなZとしては、水素原子、1〜6価の炭素数1〜30の親水性有機基、金属原子、アンモニウム基が挙げられる。
有機基の価数は、好ましくは1〜3価であり、さらに好ましくは、1〜2価であり、最も好ましくは1価である。
上記一般式(1)において、Zが1〜6価の炭素数1〜30の有機基である場合、有機基としては、置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられ、置換基としては有機基Zが親水性となるような置換基が好ましく、そのような置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、リン酸構造含有基、スルホン酸構造含有基、4級アンモニウム構造含有基、4級ホスホニウム構造含有基、ベタイン構造含有基等が挙げられる。なお、本発明でいうアルコキシ基は−(OR)n−OR
(式中、Rは2価の炭化水素基を表し、Rは水素原子又は1価の環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を表す。nは、0〜15の数を表す。)で表される基を意味する。
上記リン酸構造含有基、スルホン酸構造含有基としては、アルキル基の末端にリン酸構造やスルホン酸構造が結合した基が好ましい。
上記4級アンモニウム構造含有基、4級ホスホニウム構造含有基としては、4級アンモニウム塩や4級ホスホニウム塩のアルキル基又はアリール基の1つから水素原子を除いた基が好ましい。
上記ベタイン構造含有基としては、トリメチルグリシンのメチル基の1つから水素原子を除いた基が好ましい。
上記置換基を有していてもよい1価の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル等の直鎖又は分岐状の鎖状飽和炭化水素基;メトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシエトキシエチル、フェノキシエチル、フェノキシエトキシエチル等の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をアルコキシ基で置き換えたアルコキシ置換鎖状飽和炭化水素基;ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシプロピル等の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をヒドロキシ基で置き換えたヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基;ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル等の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をアミノ基で置き換えたアミノ置換鎖状飽和炭化水素基;アセトアミドエチル、N−メチルアセトアミドエチル、プロピオアミドエチル、ピロリドニルエチル等の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をアミド基で置き換えたアミド置換鎖状飽和炭化水素基;シクロヘキシル、イソボルニル等の脂環式炭化水素基、及びその水素原子の一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基やアミノ基で置き換えた脂環式炭化水素基;テトラヒドロフルフリル、テトラヒドロフルフリルオキシエチル、テトラヒドロフルフリルオキシエトキシエチル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル等の脂環式炭化水素基の炭素原子を酸素原子で置き換えた環状エーテル構造を有する環状エーテル構造含有基;フェニル、ベンジル、ナフチル等の芳香族炭化水素基、及びその水素原子の一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基やアミノ基で置き換えた芳香族炭化水素基;これらの炭化水素基を2つ以上組み合わせたもの等が挙げられる。なお、本発明において、鎖状構造には、直鎖状構造だけでなく、分岐鎖を有する構造も含まれる。
これらの中でも、メチル基、アルコキシ置換鎖状飽和炭化水素基、環状エーテル構造含有基、ヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基、アミド置換鎖状飽和炭化水素基が好ましい。アルコキシ置換鎖状飽和炭化水素基は、鎖状エーテル構造含有基ともいうことができる。
置換基を有していてもよい2〜6価の炭化水素基の具体例としては、上述した置換基を有していてもよい1価の炭化水素基の炭化水素基部分から水素原子を1〜5個除去して得られる2〜6価の炭化水素基が挙げられる。
上記一般式(1)において、Zが金属原子である場合、金属原子としては、典型金属原子が好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム等の周期表第1族の金属原子;マグネシウム、カルシウム、バリウム等の周期表第2族の金属原子、亜鉛、アルミニウム等の周期表第12および第13族の金属原子が挙げられる。
上記一般式(1)において、Zは−CO−O−Zが親水性基となるようなZが好ましく、中でも、水素原子、メチル基、炭素数1〜30のアルコキシ置換鎖状飽和炭化水素基、炭素数1〜30の環状エーテル構造含有基、ヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基、アミド置換鎖状飽和炭化水素基が好ましい。このため、一般式(1)におけるZが、水素原子、メチル基、炭素数1〜30の鎖状エーテル構造含有基、炭素数1〜30の環状エーテル構造含有基、ヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基、アミド置換鎖状飽和炭化水素基のいずれかであることが、本発明の好適な実施形態の1つであるということができる。より好ましくは炭素数1〜30の鎖状エーテル構造含有基、または炭素数1〜30の環状エーテル構造含有基、ヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基であり、最も好ましくは炭素数1〜30の鎖状エーテル構造含有基またはヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基である。
環状エーテル構造としては、1,3−プロピレンオキシド環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、1,4−ジオキサン環、12−クラウン−4環、ベンゾ−12−クラウン−4環、15−クラウン−5環、18−クラウン−6環等の炭素数3〜20の環状エーテル構造が好ましい。
上記一般式(1)におけるZが炭素数1〜30の1価の鎖状エーテル構造含有基(アルコキシ置換鎖状飽和炭化水素基)である場合の上記一般式(1)で表される繰り返し単位は、下記一般式(3);
Figure 0006775225
(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数2〜8の2価の炭化水素基を表す。Rは、水素原子、又は、環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を表す。mは、1〜15の数を表す。Rとm個のRとに含まれる炭素数の合計は30以下である。)で表される構造であることが好ましい。
重合体Aが、一般式(3)で表される繰り返し単位を有することは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記一般式(3)におけるRの炭化水素基の炭素数は、2〜4が好ましく、より好ましくは、2〜3である。Rの炭化水素基としては、アルキレン基が好ましい。
上記一般式(3)におけるRの環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基の炭素数は、1〜8が好ましく、より好ましくは、1〜6である。Rの炭化水素基としては、アルキル基、環状エーテル構造含有基、芳香族基のいずれかが好ましい。
上記一般式(3)におけるmは、1〜10であることが好ましい。より好ましくは、1〜5である。
上記一般式(3)におけるRが環状エーテル構造を含む炭化水素基である場合の一般式(3)で表される繰り返し単位の具体例としては、例えば、下記一般式(4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
Figure 0006775225
(式中、mは、一般式(3)と同様である。)
上記重合体Aは、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体が形成されることになる限り、原料となる単量体は特に制限されないが、下記一般式(5);
Figure 0006775225
(式中、Zは、一般式(1)と同様である。)で表されるα−アリルオキシメチルアクリレート類を単量体として用い、環化重合で製造されることが好ましい。このような方法を用いると、重合体Aを効率的に製造することができる。
一般式(5)におけるZの構造の具体例や好ましい構造は、一般式(1)におけるZと同様である。
上記一般式(5)において、Zが1〜6価の炭素数1〜30の有機基である場合、一般式(5)で表されるα−アリルオキシメチルアクリレート類は、α−アリルオキシメチルアクリル酸又はそのエステルと炭素数1〜30の有機基を有する1〜6価のアルコールとの脱水反応又はエステル交換反応により得ることができる。
また上記一般式(5)において、Zが金属原子、又は、アンモニウム基である場合、一般式(5)で表されるα−アリルオキシメチルアクリレート類は、α−アリルオキシメチルアクリル酸と金属水酸化物やアンモニウム化合物との中和反応や、α−アリルオキシメチルアクリル酸エステルの加水分解反応により得ることができる。
上記一般式(5)におけるZが1〜6価の炭化水素基である場合、一般式(5)で表されるα−アリルオキシメチルアクリレート類を製造するために使用できる1〜6価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール等の炭素数1〜30の環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する1価アルコール、又は、環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する1価アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の炭素数1〜30の環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する2価アルコール、又は、環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する2価アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の炭素数1〜30の環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する3価アルコール、又は、環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する3価アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;エリスリトール、ペンタエリスリトール等の炭素数1〜30の環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する4価アルコール、又は、環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する4価アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;アラビトール、キシリトール等の炭素数1〜30の環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する5価アルコール、又は、環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する5価アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ソルビトール、ジペンタエリスリトール等の炭素数1〜30の環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する6価アルコール、又は、環状エーテル構造を含んでいてもよい炭化水素基を有する6価アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等が挙げられる。
上記炭化水素基としては、直鎖、分岐、環状のいずれの炭化水素基であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。
上記一般式(5)で表される化合物のうち、Zが水素原子、又は、1価の置換基を有していてもよい炭化水素基である化合物の具体例としては、α−アリルオキシメチルアクリル酸、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸i−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メトキシブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシプロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジメチルアミノエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジエチルアミノエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アセトアミドエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸N−メチルアセトアミドエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸プロピオアミドエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ピロリドニルエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルオキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルオキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロピラニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸(5−メチル−5−m−ジオキサニル)メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ナフチル等が挙げられる。
上記重合体Aは、一般式(1)で表される繰り返し単位のみからなる重合体であってもよく、一般式(1)で表される繰り返し単位以外の他の単量体由来の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。
重合体Aが一般式(1)で表される繰り返し単位以外の他の単量体由来の繰り返し単位を有する共重合体である場合、他の単量体は、特に制限されないが、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のビニル基含有化合物が好ましい。置換基としては、一般式(1)のZにおける置換基と同様、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、リン酸構造含有基、スルホン酸構造含有基、4級アンモニウム構造含有基、4級ホスホニウム構造含有基、ベタイン構造含有基等が挙げられる。
上記重合体Aが、一般式(1)で表される繰り返し単位以外の他の単量体由来の繰り返し単位を有するものである場合、他の単量体由来の繰り返し単位は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
上記他の単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸の直鎖、分岐又は環状アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸の芳香族エステル;(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル等の(メタ)アクリル酸の多環式アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシ置換アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸のアルコキシ置換アルキルエステル;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル等の(メタ)アクリル酸の複素環を有する鎖状又は環状アルキルエステル;(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸のアミノ置換アルキルエステル;(メタ)アクリル酸アセトアミドエチル、(メタ)アクリル酸N−メチルアセトアミドエチル、(メタ)アクリル酸ピロリドニルエチル等の(メタ)アクリル酸のアミド置換アルキルエステル;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)等の不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和酸無水物類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミドなどのN置換マレイミド類;ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム等の重合体分子鎖の片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物類;(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、アリルイソシアネート等の不飽和イソシアネート類などが挙げられる。
また、必要に応じて、他の単量体として多価(メタ)アクリル酸エステルなどの多価ビニル基含有化合物を用いてもよい。多価ビニル基含有化合物を用いると、容易に不溶化できる。
上記他の単量体としては、上述したものの中でも、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、不飽和モノカルボン酸類、不飽和多価カルボン酸類、不飽和酸無水物類、芳香族ビニル類、N−ビニル化合物類のいずれかが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、不飽和モノカルボン酸類、不飽和多価カルボン酸類、不飽和酸無水物類、N−ビニル化合物類のいずれかである。
上記重合体Aにおける一般式(1)で表される繰り返し単位の割合は、重合体Aを構成する全繰り返し単位100重量部に対して、10〜100重量部であることが好ましい。より好ましくは、20〜100重量部であり、更に好ましくは、30〜100重量部、最も好ましくは40〜100重量部である。
上記重合体Aを可溶性重合体とする場合の重量平均分子量は、3000〜1000000であることが好ましい。重量平均分子量がこのような範囲であると、取扱い性が良好で且つ生体に対する安全性が高い。より好ましくは、4000〜600000であり、更に好ましくは、5000〜400000である。
重合体Aの重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
上記重合体Aのガラス転移温度(Tg)は、−40〜100℃であることが好ましい。ガラス転移温度がこのような範囲であると、取扱い・加工性が良好で且つ優れた生体適合性を発現し易い。重合体AのTgは、より好ましくは、−35〜80℃であり、更に好ましくは、−30〜60℃である。
重合体AのTgは、実施例に記載の方法により測定することができる。
上記重合体Aの重合方法としては、バルク重合、溶液重合、乳化重合等、公知の重合方法のいずれを用いてもよく、目的、用途に応じて適宜選択すればよいが、分子量等の構造調整も容易である点で溶液重合が好ましい。重合機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合等、公知の機構に基づいた重合方法を用いることができるが、ラジカル重合機構に基づく重合方法が、環化率(一般式(3)で表される単量体から式(1)で表される構成単位が生成する割合)が高く、また工業的にも有利であるため、好ましい。
上記重合体Aを製造する際の重合開始方法は特に制限されず、公知の方法のいずれも用いることができるが、熱や電磁波(赤外線、紫外線、X線等)、電子線等のエネルギー源から重合開始に必要なエネルギーを単量体成分に供給すればよく、さらに重合開始剤を併用すれば重合開始に必要なエネルギーを大きく下げることができ、かつ反応制御が容易となり好ましい。
分子量の制御方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、重合開始剤の量や種類、重合温度、連鎖移動剤の種類や量の調整などにより制御できる。
上記重合体Aの原料となる単量体成分を溶液重合法により重合する場合、重合に使用する溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、重合機構、使用する単量体の種類や量、重合温度、重合濃度等の重合条件に応じて適宜設定すればよい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン,ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール等のグリコールモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアルキルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、水等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記溶媒の使用量としては、全単量体成分100重量部に対して、40〜1000重量部が好ましく、100〜400重量部がより好ましい。
上記単量体成分をラジカル重合機構により重合する場合、熱によりラジカルを発生する重合開始剤を併用するのが工業的に有利で好ましい。そのような重合開始剤としては、熱エネルギーを供給することによりラジカルを発生するものであれば特に限定されるものではなく、重合温度や溶媒、重合させる単量体の種類等の重合条件に応じて、適宜選択すればよい。
重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、過酸化水素、過硫酸塩等、公知の過酸化物やアゾ化合物等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、重合開始剤とともに遷移金属塩やアミン類などの還元剤を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、使用する単量体の種類や量、重合温度、重合濃度等の重合条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得るには、全単量体成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜15重量部がより好ましい。
上記単量体成分をラジカル重合機構により重合する場合、必要に応じて、公知の連鎖移動剤を使用してもよく、ラジカル重合開始剤と併用するのがより好ましい。重合時に連鎖移動剤を使用すると、分子量分布の増大やゲル化を抑制できる傾向にある。このような連鎖移動剤としては、具体的には、例えば、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸等のメルカプトカルボン酸類;メルカプト酢酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ステアリル、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプトカルボン酸エステル類;エチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、1,2−ジメルカプトエタン等のアルキルメルカプタン類;2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノール等のメルカプトアルコール類;ベンゼンチオール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、2−ナフタレンチオール等の芳香族メルカプタン類;トリス〔(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル〕イソシアヌレート等のメルカプトイソシアヌレート類;2−ヒドロキシエチルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等のジスルフィド類;ベンジルジエチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;α−メチルスチレンダイマー等の単量体ダイマー類;四臭化炭素等のハロゲン化アルキル類などが挙げられる。これらの中では、入手性、架橋防止能、重合速度低下の度合いが小さいなどの点で、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類、アルキルメルカプタン類、メルカプトアルコール類、芳香族メルカプタン類;メルカプトイソシアヌレート類などのメルカプト基を有する化合物が好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記連鎖移動剤の使用量は、使用する単量体の種類や量、重合温度、重合濃度等の重合条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得るには、全単量体成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜15重量部がより好ましい。
上記単量体成分をラジカル重合機構により、熱によりラジカルを発生する重合開始剤を用いて重合する際の重合温度としては、使用する単量体の種類や量、重合開始剤の種類や量等に応じて適宜設定すればよいが、40〜200℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
上記重合体Aを製造する方法は、原料となる単量体成分を重合する工程以外の他の工程を含んでいてもよい。単量体成分を重合する工程以外の工程としては、公知の重合体の製造方法で行われる工程が挙げられ、例えば、再沈殿や分液などの精製工程、溶媒の除去或いは追加による重合体の濃度を調整する工程などを必要に応じ用いることができる。
本発明の医療用具用材料は上記重合体Aを含むことを特徴とし、重合体Aのみからなるものであってもよいが、医療用具に加工することを容易にする観点から、上記重合体A以外に溶剤や分散媒を含んでいてもよい。溶剤としては例えば、上記溶液重合法で重合する場合に用いる溶媒が挙げられる。分散媒としては例えば、乳化重合法で重合する場合に用いる水が挙げられる。
また本発明の医療用具用材料は、生体適合性を効果的に発現する観点から、重合体Aに加え水を含んでいることが好ましい。水の含有量としては、生体適合性と機械的強度を両立する観点から、重合体A100重量部に対して1重量部以上150重量部以下であることが好ましく、2重量部以上100重量部以下がより好ましく、3重量部以上60重量部以下がさらに好ましい。
本発明の医療用具用材料は、生体成分や生体組織との親和性が高いことから、血液と接触しても血栓を生じにくい抗血栓性材料として好適に使用することができ、各種医療用具の生体成分又は生体組織と接触する部分を構成する材料としても好適に使用することができる。更に、本発明の医療用具用材料は、細胞培養基材としても好適に使用することができる。
このような、本発明の医療用具用材料を用いてなる医療用具であって、該医療用具は、生体成分又は生体組織と接触する部分の少なくとも一部が前記医療用具用材料を用いて構成される医療用具もまた、本発明の1つであり、本発明の医療用具用材料を用いてなる抗血栓性材料や細胞培養基材もまた、本発明の1つである。
本発明の医療用具用材料を用いてなる医療用具は、医療用具そのものが本発明の医療用具用材料によって形成されていてもよく、本発明の医療用具用材料とは異なる材質でできた医療用具の生体成分又は生体組織と接触する部分を本発明の医療用具用材料で表面処理し、本発明の医療用具用材料が当該部分に保持されているものであってもよい。このように、本発明の医療用具用材料は、医療用具の表面処理剤としても用いることができる。
また本発明の医療用具用材料は、単独で使用されてもよく、他の材料と混合して使用されてもよい。
各種医療用具の生体成分又は生体組織と接触する部分に本発明の医療用具用材料を保持させる方法としては、医療用具の表面を医療用具用材料でコーティングする方法、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線によるグラフト重合を利用して医療用具の表面と医療用具用材料とを結合させる方法、医療用具の表面の官能基と医療用具用材料とを反応させて結合させる方法等、種々の方法を用いることができる。コーティング法を用いる場合、医療用具用材料をコーティングする方法として、塗布法、スプレー法、ディップ法等のいずれの方法を用いてもよい。
本発明の医療用具は、生体成分又は生体組織と接触する部分の少なくとも一部が前記医療用具用材料を用いて構成されていれば良いが、好ましくは生体成分又は生体組織と接触する部分の50%以上(面積比)が前記医療用具用材料を用いて構成されていることが好ましい。より好ましくは、80%以上が前記医療用具用材料を用いて構成されていることであり、さらに好ましくは90%以上であり、最も好ましくは100%である。生体成分又は生体組織と接触する部分の一部を、例えば公知の生体適合性材料で構成しても良い。
本発明の医療用具用材料を保持させる医療用具の材質は特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル樹脂、スチロール樹脂、シリコン樹脂等の樹脂系材料;チタン、ステンレスなどの金属系材料;ガラス、ハイドロキシアパタイト等の無機系材料;のいずれの材質のものであってもよい。
本発明の医療用具用材料を細胞培養基材として使用する場合、医療用具用材料をそのまま用いてもよく、所定の基材上にコーティングして用いてもよい。
基材の材質は特に制限されず、木綿、麻等の天然高分子、ポリエステル、ナイロン、オレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリレート等の合成高分子等を用いることができる。
基材の形態も特に制限されず、成形体、繊維、不織布、多孔質体、粒子、フィルム、シート、チューブ、中空糸や粉末等のいずれの形態でもよい。
本発明の医療用具用材料は、人工血管や人工心臓等の人工生体組織用や、血液フィルター、各種カテーテル、若しくは各種ステント等の治療用具、生体組織と接触する用具用の部材として、また、細胞培養基材、血液透析装置用の部材、血液若しくは組織検査用器具の部材、検査用チップ等の検査や研究用具(研究機器)の部材;その他の生体由来成分(細胞や血液等)と接触する用具用の部材として適用することができる。
すなわち、本発明における医療用具には、生体組織と接触する用具、生体由来成分(細胞や血液等)と接触する用具等が含まれる。また、本発明における医療用具用材料は、生体組織や生体由来成分(細胞や血液等)と接触する用具、細胞培養基材、抗血栓性材料に用いられる物を言う。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<単量体の合成>
[合成例1] α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル(AOMA−ME)の合成
撹拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管および留出液受器に繋げたトの字管を付し、2−メトキシエタノール220g、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AOMA−M)90g、シクロヘキサン150gを仕込み、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、オイルバス(バス温100℃)で加熱を開始した。留出液に水が出てこなくなってから、チタンテトライソプロポキシド1.5gを反応容器に添加し、エステル交換反応を開始させた。生成してくるメタノールをシクロヘキサンで共沸留去しながら、ガスクロマトグラフィ(GC)分析によりAOMA−ME/AOMA−Mの面積比を追跡した。GC分析でAOMA−ME/AOMA−Mの面積比が9/1を超えるまで、3時間おきにチタンテトライソプロポキシド1.5gとシクロヘキサン25gを追加した。減圧してシクロヘキサンを除去してから、室温まで冷却した。5%硫酸80gと抽出溶媒としてn−ヘキサンを加え、分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。有機層に合成吸着剤キョーワード300(協和化学工業社製)を10g添加して撹拌した後、濾過して得た濾液を蒸留精製することにより、AOMA−ME(沸点:104〜108℃/0.8〜0.9kPa)を84g得た。AOMA−MEのH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図1に示す。
[合成例2] α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル(AOMA−MDG)の合成
撹拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管および留出液受器に繋げたトの字管を付し、ジエチレングリコールモノメチルエーテル125g、AOMA−M40g、シクロヘキサン80gを仕込み、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、オイルバス(バス温100℃)で加熱を開始した。留出液に水が出てこなくなってから、チタンテトライソプロポキシド0.8gを反応容器に添加しエステル交換反応を開始させた。生成してくるメタノールをシクロヘキサンで共沸留去しながら、GC分析によりAOMA−MDG/AOMA−Mの面積比を追跡した。GC分析でAOMA−MDG/AOMA−Mの面積比が9/1を超えるまで、3時間おきにチタンテトライソプロポキシド0.8gとシクロヘキサン15gを追加した。減圧してシクロヘキサンを除去してから、室温まで冷却した。5%硫酸50gと抽出溶媒としてn−ヘキサンを加え、分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。有機層にキョーワード300を5g添加して撹拌した後、濾過して得た濾液を減圧・加熱してn−ヘキサンと大半のジエチレングリコールモノメチルエーテルを除去した。n−ヘキサンとイオン交換水を加えて分液漏斗に移し、残存しているジエチレングリコールモノメチルエーテルを水層に移行させ分液した後、有機層からn−ヘキサンを留去してAOMA−MDGを50g得た。AOMA−MDGのH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図2に示す。
[合成例3] α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエトキシエチル(AOMA−MTG)の合成
ジエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりにトリエチレングリコールモノメチルエーテル125gを用いたこと以外は、合成例2と同様にしてAOMA−MTGを52g得た。AOMA−MTGのH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図3に示す。
[合成例4] α−アリルオキシメチルアクリル酸ブトキシエトキシエチル(AOMA−BDG)の合成
ジエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりにジエチレングリコールモノブチルエーテル125gを用いたこと以外は、合成例2と同様にしてAOMA−BDGを61g得た。AOMA−BDGのH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図4に示す。
[合成例5] α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル(AOMA−THF)の合成
ジエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりにテトラヒドロフルフリルアルコール125gを用いたこと以外は、合成例2と同様にしてAOMA−THFを41g得た。AOMA−THFのH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図5に示す。
[合成例6] α−アリルオキシメチルアクリル酸ピロリドニルエチル(AOMA−PE)の合成
ジエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりにヒドロキシエチルピロリドン125gを用いたこと以外は、合成例2と同様にしてAOMA−PEを41g得た。AOMA−PEのH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図10に示す。
[合成例7] α−アリルオキシメチルアクリル酸グリセリル(AOMA−GL)の合成
撹拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管および留出液受器に繋げたトの字管を付し、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール120g、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AOMA−M)70g、シクロヘキサン120gを仕込み、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、オイルバス(バス温100℃)で加熱を開始した。留出液に水が出てこなくなってから、チタンテトライソプロポキシド3.0gを反応容器に添加し、エステル交換反応を開始させた。生成してくるメタノールをシクロヘキサンで共沸留去しながら、ガスクロマトグラフィ(GC)分析によりα−アリルオキシメチルアクリル酸イソプロピリデングリセリル(AOMA−iPGL)/AOMA−Mの面積比を追跡した。GC分析でAOMA−iPGL/AOMA−Mの面積比が9/1を超えるまで、3時間おきにチタンテトライソプロポキシド1.5gとシクロヘキサン25gを追加した。減圧してシクロヘキサンを除去してから、室温まで冷却した。イオン交換水120gと抽出溶媒としてn−ヘキサンを加え撹拌後、触媒の加水分解物である酸化チタンを濾過により取り除いた。濾液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した後、有機層にイオン交換水を加えて洗浄し、残存している2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールを水層に移行させた。得られた有機層を減圧・加熱してn−ヘキサンを留去してAOMA−iPGLを100g得た。得られたAOMA−iPGL50gにイオン交換水70gと固体酸触媒アンバーリスト15JWET15g(オルガノ社製)を加え、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7%)を吹き込みながら室温で24時間撹拌した。反応液を濾過した後、減圧・加熱して水と副生物を留去し、AOMA−GL39gを得た。AOMA−GLのH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図11に示す。
<重合体の合成および分子量測定・ガラス転移温度測定・血小板粘着試験>
[実施例1]
攪拌翼、ガス導入管、温度計、冷却管を付した反応容器に、単量体としてAOMA−ME10.0g、溶媒として酢酸エチル10.0gを仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌、昇温を開始した。内温が70℃で安定したのを確認した後、アゾ系ラジカル重合開始剤0.005g((株)日本ファインケム製、商品名:ABN−V)を添加し、重合を開始した。内温が69℃〜71℃になるよう調整しながら、GC分析によりAOMA−MEの転化率を追跡した。転化率が80%を超えるまで、2時間おきにABN−V0.005gを追加し、重合を続けた。室温まで冷却した後、希釈溶媒としてテトラヒドロフラン、貧溶媒としてn−ヘキサンを用いて再沈殿操作を行い、沈殿物を得た。減圧乾燥器を用いて沈殿物を減圧下80℃で2時間乾燥し、AOMA−MEの単独重合体(重合体1)を得た。重合体1のH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図6に示す。また、重合体1の重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度(Tg)を以下のようにして測定した。更に、以下のようにして血小板粘着試験を行い、生体適合性を評価した。結果を表1に示す。
(重量平均分子量の測定)
重合体をテトラヒドロフランで溶解・希釈し孔径0.45μmのフィルターで濾過したものを、下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)装置、及び条件で測定した。
・装置:HLC−8320GPC(東ソー(株)製)
・溶出溶媒:テトラヒドロフラン
・標準物質:標準ポリスチレン(東ソー(株)製)
・分離カラム:TSKgel SuperH5000,TSKgel SuperH4000,TSKgel SuperH3000(東ソー(株)製)
(ガラス転移温度の測定)
JIS K7121に準拠し、下記の示差走査熱量計及び条件で測定し、中点法によりガラス転移温度(Tg)を求めた。
・装置:DSC3100(ブルカー・エイエックスエス(株)製)
・昇温速度10℃/分
・窒素フロー50mL/分
(血小板粘着試験)
重合体を溶媒キャスト法(溶媒:酢酸エチル)により、表面処理をしていないポリエチレンテレフタレート(未処理PET)板上にキャストし、コート被膜を形成した。材料表面にクエン酸ナトリウムで抗凝固したヒト新鮮多血小板血漿を60分間接触させ、生理食塩水でリンスし、グルタルアルデヒドで固定した後、0.1mmに付着した血小板数を電子顕微鏡で観察した。血小板の形態変化の進行度により、1型(正常)、2型(偽足形成)、3型(伸展)の3種類に分類し、MS(モルフォロジカルスコア)を以下のように定義して算出した。算出したMSから、生体適合性を5段階で評価した。
MS=n×1+n×2+n×3
(式中、nは1型の血小板数、nは2型の血小板数、nは3型の血小板数を表す。)
A:MS=0以上100未満
B:MS=100以上300未満
C:MS=300以上600未満
D:MS=600以上1000未満
E:MS=1000以上
なお、MSが小さいほど血小板が付着しにくく、生体適合性に優れることを示す。
[実施例2]
単量体として、AOMA−ME10.0gの代わりにAOMA−ME6.2gとAOMA−MDG3.8gとを混合したもの(合計10.0g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてAOMA−ME/AOMA−MDG共重合体(重合体2)を得た。また、重合体のH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図7に、Mw、Tgおよび生体適合性を表1に示す。
[実施例3]
単量体として、AOMA−ME10.0gの代わりにAOMA−BDG10.0gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてAOMA−BDG重合体(重合体3)を得た。また、重合体のH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図8に、Mw、Tgおよび生体適合性を表1に示す。
[実施例4]
単量体として、AOMA−ME10.0gの代わりにAOMA−MTG5.6gとAOMA−THF4.4gとを混合したもの(合計10.0g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてAOMA−MTG/AOMA−THF共重合体(重合体4)を得た。また、重合体のH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図9に、Mw、Tgおよび生体適合性を表1に示す。
[実施例5](AOMA−PE/BA=50/50共重合体)
単量体として、AOMA−ME10.0gの代わりにAOMA−PE5gとn−ブチルアクリレート(BA)5gとを混合したもの(合計10.0g)を用い、溶媒としてアセトニトリルを15g用いたこと以外は、実施例1と同様にしてAOMA−PE/BA共重合体(重合体5)を得た。また、重合体のH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図12に、Mw、Tgおよび生体適合性を表1に示す。
[実施例6](AOMA−GL/BA=50/50共重合体)
単量体として、AOMA−ME10.0gの代わりにAOMA−GL5gとBA5gとを混合したもの(合計10.0g)を用い、溶媒としてメタノールを15g用いたこと以外は、実施例1と同様にしてAOMA−GL/BA共重合体(重合体6)を得た。また、重合体のH−NMRスペクトル(重溶媒:重クロロホルム)を図13に、Mw、Tgおよび生体適合性を表1に示す。
[比較例1、2]
Mwが8.5万、Tgが−50℃のアクリル酸メトキシエチル(MEA)ホモポリマー、及び、Mwが10.9万、Tgが16℃のメタクリル酸メトキシエチル(MEMA)ホモポリマーについて、実施例1と同様にして血小板粘着試験を行った。生体適合性を表1に示す。
[比較例3]
重合体をコートしなかったこと以外は実施例1と同様にして血小板粘着試験を行った。すなわち、基材である未処理PETの血小板粘着試験を行った。生体適合性を表1に示す。
Figure 0006775225
実施例1〜6と比較例1〜3の対比から、本発明の重合体は比較的高いTgと優れた生体適合性とを有することがわかった。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1);
    Figure 0006775225
    (式中、Zは、水素原子、1〜6価の炭素数1〜30の有機基を表す。)で表される繰り返し単位を有する重合体を含み、生体組織や生体由来成分と接触する用具、細胞培養基材、抗血栓性材料に用いられる材料(ただし、歯科材料を除く)であることを特徴とする医療用具用材料。
  2. 前記一般式(1)のZにおける炭素数1〜30の有機基は、炭素数1〜30の炭化水素基、鎖状エーテル構造含有基、環状エーテル構造含有基、ヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基、アミド置換鎖状飽和炭化水素基のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の医療用具用材料。
  3. 請求項1又は2に記載の医療用具用材料を用いてなる医療用具であって、
    該医療用具は、生体成分又は生体組織と接触する部分の少なくとも一部が前記医療用具用材料を用いて構成されていることを特徴とする医療用具(ただし、歯科用具を除く)
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