JP6948661B2 - 体内留置物用材料 - Google Patents

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Description

本発明は、体内留置物用材料に関する。より詳しくは、人工血管、ステントやステントグラフト等の体内留置物を形成するための材料に関する。
近年、動脈瘤や狭窄等の病変のある血管を人工血管に置き換えるといったような、機能不全をおこした体内の器官を人工物に置き換える医療処置が広く行われており、患者の治療に大きく貢献している。体内の器官を代替して体内に留置される人工物は、医療用具表面と生体成分や生体組織との親和性が低い場合、生体防御機構が活性化され、血液が凝固して血栓が形成される等の不具合が生じるため、生体組織との親和性が高く、抗血栓性に優れることが求められる。一方、人工血管の原理は、多孔質になっている人工物表面に血管内皮細胞が付着し、孔内に血管が出来上がり、支持体である人工物上にあたかも血管が再生されたように変化するというものである。このため、人工血管の材料には、抗血栓性に加えて内皮細胞の接着性および増殖性が良好であることも求められる。
従来、人工血管の材料としてはポリエチレンテレフタレート(PET)繊維や延伸ポリテトラフルオロエチレン(e−PTFE)が使用されてきたが、PET繊維は抗血栓性が充分とはいえず、血栓ができるため、閉塞を起こす可能性がある小口径の血管の材料には適していない。また、e−PTFEは、比較的抗血栓性に優れるものの、内皮細胞の接着性および増殖性が充分とはいえず、人工血管に再生された内膜(パンヌス)が剥がれ、小口径の血管の場合、剥離した内膜による閉塞につながるおそれがある。
このようにPET繊維やe−PTFEを材料する人工血管に改善の余地があることを背景として、より優れた特性を有する人工血管の検討が行われており、例えば、芳香族ポリエステル繊維の編物等を基材とした管状物にポリアミノ酸ウレタン樹脂をコーティングまたは含侵被覆した人工血管(特許文献1参照)をはじめとする人工血管(特許文献2〜4参照)が開示されている。また、医療機器上に特定のポリマーをコーティングする方法(特許文献5参照)が開示されている。
特開2012−187398号公報 特開2015−134159号公報 特開2006−68401号公報 特開平9−239021号公報 特表2006−519049号公報
上述のとおり、人工血管には抗血栓性に加えて、内皮細胞の接着性および増殖性にも優れることが求められる。これらの特性は、血管内留置物であるステントやステントグラフト等の人工血管以外の体内留置物にも求められるものであり、これらの特性に優れた材料が求められている。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、抗血栓性に加え、内皮細胞の接着性および増殖性にも優れた体内留置物の材料を提供することを目的とする。
本発明者は、抗血栓性に加え、内皮細胞の接着性および増殖性にも優れた材料について種々検討したところ、グリセロール基含有単量体由来の構造単位を有する重合体を含む材料がこれらの特性に優れ、体内留置物の材料として好適に用いることができることを見出し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、グリセロール基含有単量体由来の構造単位を有する重合体を含むことを特徴とする体内留置物用材料である。
本発明の体内留置物用材料は、抗血栓性に加え、内皮細胞の接着性および増殖性にも優れ、PET繊維やe−PTFEを材料とする人工血管に比べて小口径の血管の閉塞のおそれが小さいものであることから、様々な径の人工血管や、その他の体内留置物の材料として好適に用いることができる。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
<グリセロール基含有単量体由来の構造単位を有する重合体>
本発明の体内留置物用材料はグリセロール基含有単量体由来の構造単位を有する重合体(以下においては、グリセロール基含有重合体とも記載する)を含むことを特徴とする。
グリセロール基含有単量体由来の構造単位としては、グリセロール基とエチレン性不飽和結合部位とを有する単量体由来の構造単位であれば特に制限されないが、下記式(1−1)及び/又は(1−2);
Figure 0006948661
(式中、Rは、水素原子、メチル基、又は、*−R−Yを表す。Rは−CH−または−CHCH−を表す。X、Yは、下記式(2)で表される基、もしくは*−CO−O−R(Rは炭素数1〜24の有機基)を表し、X、Yの少なくともいずれか1つは下記式(2)で表される基である。Xは、下記式(2)で表される基を表す。)
Figure 0006948661
(式中、Rは、−CH−、−CO−又は直接結合を表す、nは、0〜20の数を表す。)で表される構造単位であることが好ましい。なお、*を付けた炭素原子は、結合先の炭素原子を表す。例えば、*−R−Yは、Rが式(1−1)で表される構造単位の主鎖の炭素原子に結合することを表す。*の意味は以下の式においても同様である。
上記式(1−1)におけるRの有機基としては、炭化水素基が好ましく、より好ましくは、アルキル基である。
上記式(2)において、nは、0〜15であることが好ましい。より好ましくは、0〜10であり、更に好ましくは、0〜5である。
これらの中でも、上記グリセロール基含有単量体由来の構造単位がグリセロール(メタ)アクリレートまたはその誘導体由来の構造単位を有することが好ましい。
上記グリセロール基含有重合体は、ガラス転移温度が10℃以下、及び/又は、飽和含水時のガラス転移温度が−25℃以下であることが好ましい。上記重合体がこのようなガラス転移温度であることで、重合体が体内の温度領域で柔軟なものとなり、本発明の材料が、体内留置物の材料としてより好適なものとなる。
上記グリセロール基含有重合体が、ガラス転移温度が10℃以下の要件を満たすものである場合、ガラス転移温度は、好ましくは0℃以下である。より好ましくは、−5℃以下であり、更に好ましくは、−10℃以下である。また、ガラス転移温度に特に下限はないが、通常−100℃以上である。
上記グリセロール基含有重合体が、飽和含水時のガラス転移温度が−25℃以下の要件を満たすものである場合、飽和含水時のガラス転移温度は、好ましくは−30℃以下である。より好ましくは、−35℃以下であり、更に好ましくは、−40℃以下である。また、飽和含水時のガラス転移温度に特に下限はないが、通常−150℃以上である。
グリセロール基含有重合体のガラス転移温度及び飽和含水時のガラス転移温度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
上記グリセロール基含有重合体は、グリセロール基含有単量体由来の構造単位のみからなるものであってもよく、グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有するものであってもよいが、グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有することが好ましい。なお、「グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位」とは、グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体が重合して形成される構造を有する構造単位を表し(ただし、実際に重合された構造単位に限定されず、同一の構造を有する構造単位であればよい)、例えばアクリル酸ブチルCH=CH(COOC)に由来する構造単位であれば、−CH−CH(COOC)−で表すことができる。また、2つ以上の不飽和結合を有する単量体については、環が形成された構造であってもよい。
グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有する重合体である場合、ランダム重合、ブロック重合、交互重合、グラフト重合のいずれの形態のものであってもよい。
上記グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル等の炭素数4〜20の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,5−ジクロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等の炭素数6〜20の芳香族ビニル類;メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミドなどの炭素数4〜20のN置換マレイミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等の炭素数3〜20のカルボン酸ビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル等の炭素数2〜20のビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール等の炭素数2〜20のN−ビニル類などが挙げられる。これらのエチレン性不飽和単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
上記グリセロール基含有重合体がグリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有する場合、該エチレン性不飽和単量体由来の構造単位が、エチレン性不飽和基に炭素数4以上の有機基が結合した構造を有する不飽和単量体由来の構造単位であることは本発明の好適な実施形態の1つである。
エチレン性不飽和基に炭素数4以上の有機基が結合した構造を有する不飽和単量体としては、上記グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体の具体例に挙げた化合物のうち、エチレン性不飽和基に炭素数4以上の有機基が結合した構造を有するものが挙げられるが、上記のとおり、グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく、より好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。有機基としては、連続して炭素が4以上結合した構造を有するエステル基が好ましい。
したがって、グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類であって、エステル構造部分のアルコキシ基の炭素数が4以上のものが特に好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであって、アルキルエステル構造部分の炭素数が4以上のものが中でも特に好ましい。
上記グリセロール基含有重合体において、グリセロール基含有単量体由来の構造単位の割合は、重合体が有する全構造単位100質量%に対して、5〜90質量%であることが好ましい。このような割合で有することで、本発明の体内留置物用材料が抗血栓性、内皮細胞の接着性および増殖性により優れたものとなる。グリセロール基含有単量体由来の構造単位の割合は、より好ましくは、10〜85質量%であり、更に好ましくは、20〜80質量%である。
上記グリセロール基含有重合体が、グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位として(メタ)アクリル酸エステル類由来の構造単位を有する場合、その割合は重合体が有する全構造単位100質量%に対して、10〜95質量%であることが好ましい。より好ましくは、15〜90質量%であり、更に好ましくは、20〜80質量%である。
上記グリセロール基含有重合体が、グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位として(メタ)アクリル酸エステル類以外のその他の単量体由来の構造単位を有する場合、その割合は重合体が有する全構造単位100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以下である。
また上記グリセロール基含有重合体が、グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位としてエチレン性不飽和基に炭素数4以上の有機基が結合した構造を有する不飽和単量体由来の構造単位を有する場合、その割合は重合体が有する全構造単位100質量%に対して、10〜95質量%であることが好ましい。より好ましくは、15〜90質量%であり、更に好ましくは、20〜80質量%である。
上記グリセロール基含有重合体は、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることが好ましい。重量平均分子量がこのような範囲であると、耐久性や機械強度に優れた材料となり好ましい。重量平均分子量は、より好ましくは、5,000〜500,000であり、更に好ましくは、10,000〜300,000である。
重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、実施例に記載の測定条件で測定することができる。
また、上記グリセロール基含有重合体は、分子量が5000以下の成分の割合が重合体全体の5.0%以下であることが好ましい。分子量5000以下の成分の割合が重合体全体の5.0%以下であると、長期の使用によっても血液中への低分子量成分の溶出を抑制することができ、生体組織との親和性がより良好となる。分子量5000以下の成分の割合は、より好ましくは、重合体全体の1.0%以下であり、更に好ましくは、重合体全体の0.5%以下である。
重合体の重量平均分子量、及び、分子量5000以下の成分の割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、実施例に記載の測定条件で測定することができる。
<グリセロール基含有単量体の製造方法>
上記式(1−1)で表される構造単位のうち、Rが水素原子又はメチル基であるものを形成する下記式(3);
Figure 0006948661
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、−CH−、−C−、−CO−又は直接結合を表す。nは、0〜20の数を表す。)で表されるグリセロール基含有単量体の製造方法は特に制限されないが、下記式(4);
Figure 0006948661
(式中、Rは、式(3)と同様である。Xは、*−R−Z(Rは、直接結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、Zは、ハロゲン原子を表す。)、又は、*−R−O−(CHCHO)−R(R、nは式(3)と同様である。Rは、水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表す。)で表されるビニル化合物と下記式(5);
Figure 0006948661
で表されるグリセロール保護化合物(式中、Rは、メチル基又はエチル基を表す。)またはエピクロルヒドリンとを反応させた後、得られた生成物に水を反応させる方法が好適である。なお、上記式(4)におけるXが*−R−O−(CHCHO)−Rのとき、式(5)で表されるグリセロール保護化合物は、上記式(4)におけるRが−CO−の場合に限って使用される。エピクロルヒドリンは、上記式(4)におけるXが*−R−O−(CHCHO)−Rの場合に限って使用される。
上記式(4)で表される化合物(nが0の化合物を除く)は、下記式(6);
Figure 0006948661
(式中、R、Rは、式(3)と同様である。)で表されるビニル化合物とエチレンオキサイドとを反応させること等により製造することができる。
上記式(1−1)で表される構造単位のうち、Rが*−R−Yであるものについても、上記反応を参考に、ビニル化合物を適宜選択することで製造することができる。
また、上記(1−2)で表される構造単位は、下記式(7);
Figure 0006948661
(式中、Rは、−CH−、−CO−又は直接結合を表す。nは、0〜20の数を表す。)で表される化合物を用いること等により形成することができる。また、上記式(7)で表される化合物は、グリセロール(メタ)アクリレートの誘導体の1種である。上記式(7)で表される化合物は、上記式(6)で表されるビニル化合物の代わりに、下記式(8);
Figure 0006948661
(式中、Rは、式(7)と同様である。)で表される化合物を用いることの他は、上記式(3)で表されるグリセロール基含有単量体の製造方法と同様にして製造することができる。
上記式(8)で表される化合物の具体例としては、アリルオキシメチルアクリル酸等が挙げられる。
上記式(4)で表されるビニル化合物と上記式(5)で表されるグリセロール保護化合物またはエピクロルヒドリンとの反応は−10〜150℃の範囲で適宜設定して行うことができ、常圧、加圧、減圧のいずれの条件下で行ってもよい。
上記反応のうち、式(4)で表されるビニル化合物と式(5)で表されるグリセロール保護化合物またはエピクロルヒドリンの反応生成物に水を反応させる際には、塩酸、硫酸等の酸の他、無機固体酸、カチオン交換樹脂等の酸触媒の1種又は2種以上の触媒を用いて行うことが好ましい。
また上記反応においては、ビニル化合物の重合を抑制するために、重合禁止剤を使用することや、酸素を含むガスを反応液中にバブリングしながら反応を行うことのいずれか又は両方を行うことが好ましい。
<グリセロール基含有重合体の製造方法>
本発明におけるグリセロール基含有重合体は、上述した特徴を有するものとなるように単量体を適宜選択して重合反応を行うことにより製造することができる。
重合体の原料中におけるそれらの単量体の好ましい使用量は、本発明におけるグリセロール基含有重合体の全単量体単位におけるこれらの単量体由来の構造単位の好ましい割合と同様である。
上記グリセロール基含有重合体の製造方法における重合反応は、重合開始剤の存在下で重合反応を行うことが好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
重合開始剤の使用量としては、重合反応に使用される単量体の使用量1モルに対して、0.01g以上、10g以下であることが好ましく、0.1g以上、5g以下であることがより好ましい。
上記重合反応は、溶媒を使用せずに行っても良いが、溶媒を使用することが好ましい。溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
溶媒の使用量としては、重合反応に使用される単量体100質量%に対して40〜250質量%が好ましい。
上記重合反応は、通常、0℃以上で行われることが好ましく、また、150℃以下で行われることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。上記重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、一度または二度以上変動(加温または冷却)しても良い。
重合反応は、常圧、加圧、減圧のいずれの条件下で行ってもよい。
上記重合反応において、グリセロール基含有重合体の原料となる単量体や、重合開始剤等は、それぞれ反応器に一括で添加しても良く、逐次的に添加しても良い。
上記グリセロール基含有重合体の製造方法は、上記重合反応工程以外の他の工程を含んでいてもよい。例えば、熟成工程、中和工程、重合開始剤や連鎖移動剤の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。
<体内留置物用材料>
本発明の体内留置物用材料は、生体成分や生体組織との親和性が高く、血液と接触しても血栓を生じにくい抗血栓性に優れるとともに、血管内皮細胞等の内皮細胞の接着性および増殖性にも優れることから、人工血管や血管内留置物(ステント、ステントグラフト)等の体内留置物の材料として好適に用いることができる。このような本発明の体内留置物用材料を用いて作成された体内留置物もまた、本発明の1つであり、本発明の体内留置物用材料を用いて作成された人工血管や血管内留置物もまた、本発明の1つである。
本発明において体内留置物とは、体内の生体組織と接触した状態で一定時間以上留め置かれる器具や装置を意味し、人工血管や血管内留置物の他、カテーテル、挿管チューブ等が含まれる。
本発明の体内留置物用材料を用いて体内留置物を作成する場合、体内留置物用材料を体内留置物の形状にすることで作成してもよく、他の材料の表面に体内留置物用材料を保持させることで作成してもよい。いずれの場合でも、充分な強度を有する体内留置物を作成することができる。
他の材料の表面に体内留置物用材料を保持させる場合、他の材料の表面の少なくとも一部が本発明の体内留置物用材料で覆われていればよいが、生体成分又は生体組織と接触する部分の面積の50%以上が本発明の体内留置物用材料で覆われていることが好ましく、80%以上覆われていることがより好ましく、生体成分又は生体組織と接触する部分の全てが本発明の体内留置物用材料で覆われていることが最も好ましい。
本発明の体内留置物用材料を人工血管の形状にする場合、体内留置物用材料を溶融成形法や湿式紡糸法で中空糸状に成形する方法等を用いることができる。
本発明の体内留置物用材料を他の材料の表面に体内留置物用材料を保持させることで体内留置物を作成する場合、保持させる方法としては、他の材料の表面を体内留置物用材料でコーティングする方法、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線によるグラフト重合を利用して他の材料の表面と体内留置物用材料とを結合させる方法、他の材料の表面の官能基と体内留置物用材料とを反応させて結合させる方法等、種々の方法を用いることができる。コーティング法を用いる場合、体内留置物用材料をコーティングする方法として、塗布法、スプレー法、ディップ法等のいずれの方法を用いてもよい。なお、本発明の体内留置物用材料の原料となる単量体組成物を必須とする組成物を用いて、塗布法、スプレー法、ディップ法等でコーティングした後、加熱・活性エネルギー線の照射等により重合反応を行い、他の材料の表面に本発明の体内留置物用材料層を形成させることにより、コーティングしても良い。
上記コーティング法を用いる場合、本発明の体内留置物用材料を溶媒に溶解してコーティングすることになるが、本発明の体内留置物用材料は、含まれるグリセロール基含有重合体の構造を適切に選択することで抗血栓性に加え、内皮細胞の接着性および増殖性にも優れ、かつ、アルコールに溶解する材料とすることが可能である。このように、人体に対して安全性の高いアルコールを溶媒としてコーティングを行うことができる点は、本発明の体内留置物用材料の有利な点の1つである。
本発明の体内留置物用材料を保持させる他の材料の材質は特に制限されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル樹脂、スチロール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロース、セルロースアセテート等のいずれの材質のものであってもよい。また、金属、セラミックス及びこれらの複合材料等も例示でき、複数の基体より基材が構成されていてもよい。 金属としては、金、銀等の貴金属、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロム、チタン等の卑金属、及びこれらの金属の合金並びにこれらの表面が金めっきされたものが例示できるがこれらに限定されるものではない。金属は単体で用いてもよく、機能性を付与するために他の金属との合金又は金属の酸化物として用いてもよい。価格や入手の容易さの観点から、ニッケル、銅及びこれらを主成分とする金属を用いることが好ましい。ここで、主成分とは、上記基体を形成する材料のうち50重量%以上を占める成分をいう。基材の形態も特に制限されず、成形体、繊維、不織布、多孔質体、粒子、フィルム、シート、チューブ、中空糸や粉末等のいずれの形態でもよい。
本発明の体内留置物用材料を用いて作成される人工血管の大きさは特に制限されず、例えば、内径0.1〜40mmの範囲でいずれの内径のものであってもよい。好ましくは、内径1〜30mmであり、更に好ましくは、内径2〜20mmである。中でも、本発明の体内留置物用材料を用いて作成される人工血管は抗血栓性に加え、内皮細胞の接着性および増殖性にも優れるものであり、PETやe−PTFEでできた人工血管に比べて血管の閉塞のおそれが少なく、小口径の血管の材料として適したものであることから、本発明の体内留置物用材料を用いて作成される人工血管が、内径2〜7mmの小口径の血管であることは本発明の好適な実施形態の1つである。
人工血管の長さは特に制限されず、1〜100cmの範囲で適宜設定することができる。
<管状構造を有する部材>
本発明はまた、管状構造を有する部材でもある。
本発明の管状構造を有する部材は、内径は上記人工血管と同様であり、例えば中空糸状の部材である。本発明の管状構造を有する部材は、管状構造の部位を含めばよく、他の任意の構造部位と結合されていても良い。
本発明の管状構造を有する部材は、内表面および/または外表面の少なくとも一部に、グリセロール基含有単量体由来の構造単位を有する重合体を含む層を有している。該層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmであることが好ましい。「少なくとも一部」の割合としては、例えば、上記「体内留置用材料」と同様である。
本発明の管状構造を有する部材は、上記「人工血管」と同様の内径を有することが好ましい。外径は、内径よりも、0.02mm〜20mm程度大きいことが好ましい。
本発明の管状構造を有する部材は、上記グリセロール基含有単量体由来の構造単位を有する重合体を保持させる他の材料から選択される1又は2種以上の材料を含む層を有することが好ましく、PET、e−PTFE、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタンから選択される1又は2種以上の材料を含む層を有することがより好ましい。本発明の管状構造を有する部材は、編み構造や、織構造、細孔を有していても良い。本発明の管状構造を有する部材は、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン等から選択される1又は2種以上を含む層を有していても良い。
本発明の管状構造を有する部材は、上記「体内留置用材料」と同様の製造方法により製造することができる。本発明の管状構造を有する部材は、例えば人工血管などとして好適に使用することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
以下の実施例における各種測定は、以下のように行った。
<重量平均分子量、分子量分布、分子量5000以下の成分の割合>
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPCシステム、東ソー社製)を用い、カラムにTSKgel SuperH3000と、TSKgel SuperH4000と、TSKgel SuperH5000とを連結したものを用い、溶離液にテトラヒドロフランを用いて、ポリスチレン換算により求めた。
<Tg測定>
JIS K7121に準拠し、下記の示差走査熱量計及び条件で測定し、中点法によりガラス転移温度(Tg)を求めた。
・装置:DSC3100(ブルカー・エイエックスエス(株)社製)
・昇温速度:10℃/分
・窒素フロー:50mL/分
<飽和含水時のTg測定>
耐圧アルミパンに、ポリマーと同量の純水を加え、密閉後、1昼夜静置した後、−100℃より、5℃/minの昇温速度で40℃まで昇温し、測定した。
合成例1(GLMAの合成)
撹拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管、及び、留出液受器に繋げたトの字管を付し、アクリル酸メチル230g、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール(イソプロピリデングリセロール:iPGL)70gを仕込み、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7vol%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、オイルバス(バス温110℃)で加熱を開始した。留出液に水が出てこなくなってから、チタンテトライソプロポキシド4.5gを反応容器に添加し、エステル交換反応を開始させた。生成してくるメタノールをアクリル酸メチルで共沸留去しながら、ガスクロマトグラフィ(GC)分析によりiPGLA(イソプロピリデングリセリルアクリレート)/iPGLの面積比を追跡した。反応開始から7時間後のGC分析で、iPGLA/iPGLの面積比が9/1を超えたのを確認し、反応を終了し、室温まで冷却した。反応液に精製水150gと抽出溶媒として酢酸エチル300gを加え10分撹拌した。触媒の加水分解により生じた酸化チタンの沈殿を、吸引濾過で除いた濾液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。有機層を精製水で2回洗浄したのち、ロータリーエバポレーターに移し、残存アクリル酸メチル及び軽沸成分を留去し、iPGLA96gを得た。
撹拌子を入れたナスフラスコにガス導入管を設け、精製水160mlとiPGLA80gを加えて溶解させた後に、予め水に浸漬後に風乾した固体酸触媒アンバーリスト15Jwet(オルガノ社製)を35g加え、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7vol%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、室温下で脱保護反応を開始させた。GC分析によりGLMA/iPGLAの面積比を追跡し、面積比が99/1を超えたのを確認し、4時間で反応を終了した。固体酸触媒を濾別して得られた濾液をn−ヘキサンで洗浄し、未反応iPGLAを除いた。水層を減圧濃縮し、目的とするGLMA(グリセロールモノアクリレート)53gを得た。
合成例2(GLMMの合成)
合成例1で、アクリル酸メチルに代えてメタクリル酸メチルを用いた以外は同様にして、目的とするGLMM(グリセロールモノメタクリレート)を得た。
合成例3(AOMA−GLの合成)
撹拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管および留出液受器に繋げたトの字管を付し、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール(iPGL)120g、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AOMA−M)70g、シクロヘキサン120gを仕込み、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、オイルバス(バス温100℃)で加熱を開始した。留出液に水が出てこなくなってから、チタンテトライソプロポキシド3.0gを反応容器に添加し、エステル交換反応を開始させた。生成してくるメタノールをシクロヘキサンで共沸留去しながら、ガスクロマトグラフィ(GC)分析によりα−アリルオキシメチルアクリル酸イソプロピリデングリセリル(AOMA−iPGL)/AOMA−Mの面積比を追跡した。GC分析でAOMA−iPGL/AOMA−Mの面積比が9/1を超えるまで、3時間おきにチタンテトライソプロポキシド1.5gとシクロヘキサン25gを追加した。減圧してシクロヘキサンを除去してから、室温まで冷却した。イオン交換水120gと抽出溶媒としてn−ヘキサンを加え撹拌後、触媒の加水分解物である酸化チタンを濾過により取り除いた。濾液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した後、有機層にイオン交換水を加えて洗浄し、残存しているiPGLを水層に移行させた。得られた有機層を減圧・加熱してn−ヘキサンを留去してAOMA−iPGLを100g得た。得られたAOMA−iPGL50gにイオン交換水70gと固体酸触媒アンバーリスト15JWET15g(オルガノ社製)を加え、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7%)を吹き込みながら室温で24時間撹拌した。反応液を濾過した後、減圧・加熱して水と副生物を留去し、AOMA−GL(α−アリルオキシメチルアクリル酸グリセロール)39gを得た。
実施例1(GLMA/BA共重合体の合成)
攪拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管を付し、単量体としてグリセロールモノアクリレート(GLMA)3.0g、ブチルアクリレート(BA)7.0g、溶媒としてメチルエチルケトン15.0g、アゾ系ラジカル重合開始剤0.01g(和光純薬社製、商品名:V−601)を仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌と昇温を開始した。内温80℃で重合を開始し、6hr反応を行った。
得られた反応液をアセトンで希釈し、大量のn−ヘキサン中に撹拌しながら投入することで再沈した。沈殿物を真空乾燥機によって、減圧下、80℃で3時間減圧乾燥し、固体の重合体1を得た。得られた重合体1は、重量平均分子量が15.3万であり、分子量分布が3.1、分子量5000以下の成分の含有量は0.5%以下であった。重合体1のTgは−44℃、飽和含水時のTgは−52℃であった。
実施例2(GLMM/BA共重合体の合成)
モノマーとしてグリセロールモノメタクリレート(GLMM)4.0g、ブチルアクリレート(BA)6.0gを用いた以外はすべて実施例1と同様にして重合を行い、固体の重合体2を得た。得られた重合体2は、重量平均分子量が21.8万であり、分子量分布が2.7、分子量5000以下の成分の含有量は0.5%以下であった。重合体2のTgは−40℃、飽和含水時のTgは−50℃であった。
実施例3(AOMA−GL/BA共重合体の合成)
モノマーとしてアリルオキシメチルアクリル酸グリセロイル(AOMA−GL)5.0g、ブチルアクリレート(BA)5.0gを用いた以外はすべて実施例1と同様にして重合を行い、固体の重合体3を得た。得られた重合体3は、重量平均分子量が30.0万であり、分子量分布が5.8、分子量5000以下の成分の含有量は0.5%以下であった。重合体3のTgは−13℃、飽和含水時のTgは−35℃であった。
実施例4(GLMA/BMA共重合体の合成)
モノマーとしてグリセロールモノアクリレート(GLMA)4.0g、ブチルメクリレート(BMA)6.0gを用いた以外はすべて実施例1と同様にして重合を行い、固体の重合体4を得た。得られた重合体4は、重量平均分子量が14.1万であり、分子量分布が3.1、分子量5000以下の成分の含有量は0.5%以下であった。重合体4のTgは−25℃、飽和含水時のTgは−40℃であった。
実施例5(GLMA/St共重合体の合成)
モノマーとしてグリセロールモノアクリレート(GLMA)4.0g、スチレン(St)6.0gを用いた以外はすべて実施例1と同様にして重合を行い、固体の重合体5を得た。得られた重合体5は、重量平均分子量が7.4万であり、分子量分布が3.3、分子量5000以下の成分の含有量は0.5%以下であった。重合体5のTgは79℃、飽和含水時のTgは40℃以上であった。
実施例6(GLMA/2EHA共重合体の合成)
モノマーとしてグリセロールモノアクリレート(GLMA)5.0g、2エチルヘキシルアクリレート(2EHA)5.0gを用いた以外はすべて実施例1と同様にして重合を行い、固体の重合体6を得た。得られた重合体6は、重量平均分子量が10.8万であり、分子量分布が2.5、分子量5000以下の成分の含有量は0.5%以下であった。重合体6のTgは−46℃であった。
実施例7(GLMA/VA共重合体の合成)
モノマーとしてグリセロールモノアクリレート(GLMA)3.0g、酢酸ビニル(VA)7.0gを用いた以外はすべて実施例1と同様にして重合を行い、固体の重合体7を得た。得られた重合体7は、重量平均分子量が15.5万であり、分子量分布が2.9、分子量5000以下の成分の含有量は0.5%以下であった。重合体7のTgは16℃であった。
実施例1〜3で得られた重合体1〜3、及び、比較として用いる生体適合性ポリマー(ホスホコリン系ポリマーPMPC、商品名:リビジュアCM5206、日油株式会社製)を用いて、以下の方法により血小板粘着試験、血管内皮細胞培養試験を行った。血小板粘着試験、血管内皮細胞培養試験は、PET基材のみ(ブランク)の場合についても行った。結果を表1に示す。
<血小板粘着試験>
抗血栓性については、血小板粘着試験で評価した。試験を行う材料をそれぞれ、0.2%メタノール溶液として、PETフィルム上にスピンコートによって塗布、乾燥したものを試料とした。試料上にクエン酸ナトリウムで抗凝固したヒト新鮮多血小板血漿0.2mLをピペットで滴下し、37℃で60分間静置した。続いてリン酸緩衝溶液でリンスし、グルタルアルデヒドで固定した後、基体を走査型電子顕微鏡で観察し、1×104μmの面積に接着した血小板数をカウントした。血小板の形態変化の進行度により、1型(正常)、2型(偽足形成)、3型(伸展)の3種類に分類し、MS(モルフォロジカルスコア)を以下のように定義して算出した。算出したMSから、生体適合性を5段階で評価した。
MS=n1×1+n2×2+n3×3
(式中、n1は1型の血小板数、n2は2型の血小板数、n3は3型の血小板数を表す。)
A:MS=0以上100未満
B:MS=100以上300未満
C:MS=300以上600未満
D:MS=600以上1000未満
E:MS=1000以上
なお、MSが小さいほど血小板が付着しにくく、生体適合性に優れることを示す。
<血管内皮細胞培養試験>
準備したポリマーコーティングPETフィルム(直径14mmの円形に打ち抜いたもの)を6 well plateに収め、クリーンベンチ内で30分間UV滅菌を行った。基板をリン酸緩衝(phosphate buffered saline:PBS)溶液500μLで洗浄後、20% FBS DMEM/F−12(HUVEC用培地)を500μLずつ加え、37℃で一晩インキュベートした。HUVECが培養されている10cmディッシュをPBS溶液2mLで洗浄し、トリプシン/エチレンジアミンテトラ酢酸イオン(EDTA)酵素溶液を2mL入れ、37℃で2分間インキュベート後、細胞を回収した。その溶液を1300rpmで5分間遠心分離し、上澄みを除去後、顕微鏡にて細胞数をカウントし、20% FBS DMEM/F−12を加え播種密度を3.0×10cells/cmに調製した。プレコンディショニングで使用した培地を除去した後、調製した細胞溶液500μLと20% FBS DMEM/F−12 500μLを播種し、37℃でインキュベートした。培養は1週間行った。各試料は抗体染色により染色し、共焦点レーザー顕微鏡にて細胞数と細胞形態を観察した。
Figure 0006948661
表1の結果から、体内留置物用材料は、抗血栓性に加え、内皮細胞の接着性および増殖性にも優れることが確認された。

Claims (6)

  1. 下記式(1−1)で表されるグリセロール基含有単量体由来の構造単位を有し、該グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有する重合体である場合は、ランダム重合体、ブロック重合体、交互重合体のいずれかである重合体(ただし、下記一般式(1)で表される単量体を原料とする共重合体を除く)を含むことを特徴とする体内留置物用材料。
    Figure 0006948661
    (式(1−1)中、Rは、水素原子、メチル基、又は、*−R−Yを表す。Rは−CH−または−CHCH−を表す。X、Yは、下記式(2)で表される基、もしくは*−CO−O−R(Rは炭素数1〜24の有機基)を表し、X、Yの少なくともいずれか1つは下記式(2)で表される基である。Xは、下記式(2)で表される基を表す。)
    Figure 0006948661
    (式(2)中、Rは、−CH−、−CO−又は直接結合を表す、nは、0〜20の数を表す。)
    CH=CRCOOROR ・・・・(1)
    (式(1)中、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
  2. 前記重合体は、ガラス転移温度が10℃以下、及び/又は、飽和含水時のガラス転移温度が−25℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の体内留置物用材料。
  3. 前記重合体は、グリセロール基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の体内留置物用材料。
  4. 前記重合体は、前記式(1−1)で表されるグリセロール基含有単量体由来の構造単位としてグリセロール(メタ)アクリレート由来の構造単位を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の体内留置物用材料。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の体内留置物用材料を用いて作成された人工血管。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の体内留置物用材料を用いて作成された血管内留置物。
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