JP7128632B2 - 医療用具用コーティング剤、医療用具用硬化性コーティング剤、医療用具用重合体、コーティング方法、医療用具及びその製造方法 - Google Patents
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Description
なお、本発明において、生体適合性という用語は、生体防御機構を活性化しない、すなわち、生体組織から異物と認識されない性質という意味で用いられる。
本発明はまた、下記一般式(2)で表される単量体を含むことを特徴とする医療用具用硬化性コーティング剤である。
本発明はまた、上記一般式(1)で表される構造単位を有し、重量平均分子量が2000000以下であることを特徴とする医療用具用重合体である。
本発明はまた、基材と、上記基材表面上にコーティング層を有する医療用具のコーティング方法であって、上記コーティング方法は、上述の医療用具用コーティング剤を基材表面に塗布する工程、及び、塗布物を乾燥させて該基材表面上にコーティング層を形成する工程を有することを特徴とする医療用具のコーティング方法でもある。
本発明はまた、基材と、上記基材表面上にコーティング層を有する医療用具のコーティング方法であって、上記コーティング方法は、上述の医療用具用硬化性コーティング剤を基材表面に塗布する工程、及び、塗布物に対して活性エネルギー線照射をして上記基材表面上にコーティング層を形成する工程を含むことを特徴とする医療用具のコーティング方法でもある。
本発明はまた、基材と、上記基材表面上にコーティング層を有する医療用具の製造方法であって、上記製造方法は、上述の医療用具用硬化性コーティング剤を基材表面に塗布する工程、及び、塗布物に対して活性エネルギー線照射をしてコーティング層を形成する工程を含むことを特徴とする医療用具の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を意味し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
本発明は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を含むことを特徴とする医療用具用コーティング剤である。本発明の医療用具用コーティング剤は、特定の構造単位を有する重合体を含むため、生体適合性、特に抗血栓性に優れたコーティング膜を形成することができる。
上記一般式(1)において、Xは、水素原子又はメチル基を表す。
上記一般式(1)において、R1は、水素原子、アルキル基又は-(CH2)nOH(nは1~9の整数を表す。)を表す。上記アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。
上記-(CH2)nOH(nは1~9の整数を表す。)としては、nが1~4の整数であるものが好ましく、1~3の整数であるものがより好ましく、1又は2であるものが更に好ましい。
R1としては、水素原子、アルキル基又は-(CH2)nOH(nは1~3の整数を表す。)であることが好ましく、水素原子、メチル基又は-(CH2)nOH(nは1~3の整数を表す。)であることがより好ましい。
なかでも、抗血栓性がより一層優れる点で、-CH2OH、-CH2CH2OH、-CH(OH)-CH2OH、-CH2-CH(OH)-CH2OH、-CH(CH2OH)2、又は-C(CH2OH)3が好ましく、-CH2-CH(OH)-CH2OH、又は-CH(CH2OH)2がより好ましい。
R11は、より好ましくは、水素原子、メチル基、-CH2OH又は-CH2CH2OHを表す。
上記重合体(A)は、上記一般式(1)で表される構造単位として、1種のみを有してよいし、2種以上を有していてもよい。
上記一般式(1)で表される構造単位を与える単量体としては、好ましくは、下記一般式(2)で表される単量体を挙げることができる。
上記一般式(2)において、R5は、水素原子、アルキル基又は-(CH2)nOH(nは1~9の整数を表す。)を表す。上記アルキル基及び-(CH2)nOH(nは1~9の整数を表す。)としては、上記一般式(1)におけるR1が表すアルキル基及び-(CH2)nOHと同様のものが好ましく挙げられる。
上記一般式(2)における-CR6R7R8としては、上記一般式(1)における-CR2R3R4と同様のものが好ましく挙げられる。
R12は、より好ましくは、水素原子、メチル基、-CH2OH又は-CH2CH2OHを表す。
上記一般式(1)で表される構造単位の含有量は、重合体(A)の全構造単位100質量%に対して、10質量%以上であることが好ましく、100質量%以下であることが好ましい。上記一般式(1)で表される構造単位の含有量が上述の範囲であると、抗血栓性がより一層優れる。
上記一般式(1)で表される構造単位の含有量は、重合体(A)の全構造単位100質量%に対して、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、また、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸s-アミル、(メタ)アクリル酸t-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β-メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β-エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、α-ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α-ヒドロキシメチルアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、o-クロロスチレン、2,5-ジクロロスチレン、3,4-ジクロロスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミドなどのN置換マレイミド類等。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましく、アルキルエステルのアルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更により好ましく、(メタ)アクリル酸n-ブチルが特に好ましい。
上記重合体(A)は、上記他の構造単位として、これらの1種又は2種以上を有していてもよい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、実施例に記載の測定条件で測定することができる。
上記ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)により測定することができる。
上記重合体(A)は、好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミド100質量部に対して0.1質量部以上溶解することができ、より好ましくは1質量部以上溶解することができ、更に好ましくは10質量部以上溶解することができる。
上記重合体(A)を製造する方法としては、特に制限されず、例えば、上述した一般式(1)で表される構造単位を与える単量体と、必要に応じて上記他の構造単位を与える単量体とを含む単量体成分を含む重合用単量体組成物を公知の方法で重合する方法が挙げられる。上記一般式(1)で表される構造単位を与える単量体としては、好ましくは上記一般式(2)で表される単量体が挙げられる。
2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシカルボキニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2-トリクロロメチル-5-(2’-ベンゾフリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2’-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-フリル-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’ -テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’ -テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ),2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9-フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン系化合物;等が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
熱重合開始剤および光重合開始剤は併用してもよく、その場合、熱重合と光重合を併用することで、より高反応率で重合反応を行うことができる。
溶媒の使用量としては、重合反応に使用される単量体成分の総量100質量部に対して10~10000質量部が好ましく、50~1000質量部がより好ましい。
なお、本明細書において、「膜形成成分総量」とは、コーティング剤中の、溶媒以外の成分の総量を意味する。
以上のように、本発明の医療用具用コーティング剤は、上記重合体(A)を含有することにより、生体適合性及び抗血栓性に優れたコーティング膜を形成することができる。
上記重合体(A)は、上記一般式(1)で表される構造単位を有するものであるが、更に重量平均分子量が2000000以下である場合、コーティング剤としてより一層好適に使用でき、生体適合性、特に抗血栓性に優れたコーティング膜を容易に形成することができる。このような、上記一般式(1)で表される構造単位を有し、重量平均分子量が2000000以下である医療用具用重合体も本発明の一つである。
上記医療用具用重合体の構造、特性、製造方法としては、上述した重合体(A)と同様の構造、特性、製造方法が好ましく挙げられる。
上述のように、上記重合体(A)は、例えば、上記一般式(2)で表される単量体を含む単量体成分を重合することにより得られる。このような、上記重合体(A)を形成し得る単量体成分を含む医療用具用硬化性コーティング剤も本発明の好ましい態様の一つである。すなわち、本発明はまた、上記一般式(2)で表される単量体を含むことを特徴とする医療用具用硬化性コーティング剤である。単量体成分を含む医療用具用硬化性コーティング剤を用いれば、当該コーティング剤を基材に塗布した後に、活性エネルギー線照射して塗布物を硬化させることで、重合体(A)を含む塗布物を乾燥させる場合と比べて、密着性や塗膜強度がより一層優れたコーティング膜を形成することができる。
上記一般式(2)で表される単量体の含有量は、全単量体成分100質量%に対して20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、また、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
上記医療用具用硬化性コーティング剤における上記他の単量体成分の含有量は、全単量体成分100質量%に対して0~90質量%であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、また、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。
本発明の医療用具用コーティング剤又は医療用具用硬化性コーティング剤を用いて医療用具をコーティングする方法について説明する。
<コーティング方法(1)>
上述の医療用具用コーティング剤を用いて医療用具をコーティングする方法としては、例えば、上述の医療用具用コーティング剤を基材表面に塗布し、塗布物を乾燥させて上記基材表面上にコーティング層を形成する方法が挙げられる。
このように、基材と、上記基材表面上にコーティング層を有する医療用具のコーティング方法であって、上記コーティング方法は、上述の医療用具用コーティング剤を基材表面に塗布する工程、及び、塗布物を乾燥させて上記基材表面上にコーティング層を形成する工程を有する医療用具のコーティング方法(以下、「コーティング方法(1)」とも記載する)もまた、本発明の一つである。
上記基材の形態も特に制限されず、成形体、繊維、不織布、多孔質体、粒子、フィルム、シート、チューブ、中空糸や粉末等のいずれの形態でもよい。
上記基材としては、例えば、医療用具に用いられる基材が挙げられ、上記医療用具としては、上述の「2.医療用具用コーティング剤」に記載の医療用具と同様のものが挙げられる。
上記基材表面上に上記医療用具用コーティング剤を塗布する場合、基材表面の一部に塗布してもよいし、基材表面の全部に塗布してもよい。
乾燥方法としては、塗布物中の溶媒が揮発してコーティング層が充分に形成されるのであれば特に制限されず、窒素等を循環させて乾燥してもよいし、風乾等の自然乾燥でもよいし、オーブン等を用いて加熱することにより乾燥を行ってもよい。乾燥温度としては、例えば20~200℃、好ましくは30~150℃、より好ましくは50~100℃が挙げられる。乾燥時間としては、例えば0.5~72時間、好ましくは2~24時間が挙げられる。
上述の医療用具用硬化性コーティング剤を用いて医療用具をコーティングする方法としては、例えば、本発明の医療用具用硬化性コーティング剤を基材表面に塗布し、塗布物に活性エネルギー線を照射して、上記基材表面上にコーティング層を形成する方法が挙げられる。このように、基材と、上記基材表面上にコーティング層を有する医療用具のコーティング方法であって、上記コーティング方法は、上述の医療用具用硬化性コーティング剤を基材表面に塗布する工程、及び、塗布物に対して活性エネルギー線照射をして上記基材表面上にコーティング層を形成する工程を有する医療用具のコーティング方法(以下、「コーティング方法(2)」とも記載する。)もまた、本発明の一つである。塗布物に対して活性エネルギー線照射をすることにより、より一層架橋されたコーティング層を形成することができ、生体適合性、特に抗血栓性をより一層向上させることができる。
また、活性エネルギー線を照射した後、更に加熱する工程を有していてもよい。更に加熱することにより、硬化率を補完することができる。加熱温度としては、40~200℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。
また、塗布物に対して活性エネルギー線照射する前に、塗布物を乾燥させてもよい。塗布物の乾燥は、上記コーティング方法(1)における塗布物の乾燥方法と同様の方法で行うことができる。
また、塗布物が乾燥する前に活性エネルギー線照射を行ってもよい。
上述したコーティング方法により、医療用具の基材表面に、コーティング層を形成することができる。上述の医療用具用コーティング剤又は医療用具用硬化性コーティング剤により形成されたコーティング層を有する医療用具の表面は、生体適合性に優れ、抗血栓性に優れる。このような、基材と、上記基材表面上に、上述の医療用具用コーティング剤又は医療用具用硬化性コーティング剤を用いてなるコーティング層を有する医療用具もまた本発明の一つである。上記医療用具は、表面の一部又は全部において上記コーティング層を有するのが好ましい。
上述した医療用具用コーティング剤又は医療用具用硬化性コーティング剤を使用して、医療用具を製造する方法も本発明の好ましい態様の一つである。すなわち、基材と、上記基材表面上にコーティング層を有する医療用具の製造方法であって、上記製造方法は、上述した医療用具用コーティング剤を基材表面に塗布する工程、及び、塗布物を乾燥させてコーティング層を形成する工程を含む、医療用具の製造方法もまた本発明の一つである。
上記医療用具の製造方法において、塗布物に対して活性エネルギー線照射をしてコーティング層を基材表面上に形成する工程を有する場合、使用するコーティング剤として、上述した単量体成分を含む医療用具用硬化性コーティング剤が好ましく挙げられる。
なお、製造例等において、各種物性等の評価は以下のようにして行った。
重合体をN,N-ジメチルホルムアミドで溶解・希釈し(0.1%)、孔径0.45μmのフィルターで濾過したものを、下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置、及び条件で、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した。測定されたMw及びMnの値から、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
・装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
・溶出溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド
・標準物質:標準ポリスチレン(東ソー(株)製)
・分離カラム:TSKgel SuperAWM-H、TSKgel SuperAW2500(東ソー(株)製)
JIS K7121に準拠し、下記の示差走査熱量計及び条件で測定し、中点法によりガラス転移温度(Tg)を求めた。
・装置:DSC3100(ブルカー・エイエックスエス(株)製)
・昇温速度:10℃/分
・窒素フロー:50mL/分
実施例で作製したコーティング膜上にクエン酸ナトリウムで抗凝固したヒト新鮮多血小板血漿0.2mLをピペットで滴下し、37℃で60分間静置した。続いてリン酸緩衝溶液でリンスし、グルタルアルデヒドで固定した後、基体を走査型電子顕微鏡(×2000倍)で観察し、1×104μm2の面積に接着した血小板数をカウントした。血小板の形態変化の進行度により、1型(正常)、2型(偽足形成)、3型(伸展)の3種類に分類し、MS(モルフォロジカルスコア)を以下のように定義して算出した。算出したMSから、生体適合性を5段階(A~E)で評価した。結果を表2に示す。
MS=n1×1+n2×2+n3×3
(式中、n1は1型の血小板数、n2は2型の血小板数、n3は3型の血小板数を表す。)
A:MS=0以上100未満
B:MS=100以上300未満
C:MS=300以上600未満
D:MS=600以上1000未満
E:MS=1000以上
なお、MSが小さいほど血小板が付着しにくく、生体適合性に優れることを示す。
実施例で作製したコーティング膜上に十文字に薄くカッターで切り込みを入れ、撹拌した純水中に24時間浸漬した。純水から取り出した後、クロス部分を顕微鏡(×100倍)を用いて確認し、下記の基準にて評価した。
〔評価基準〕
◎:剥がれなし
○:わずかに剥がれある
△:剥がれや塗膜浮きがある
×:剥がれが多い
攪拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管を付し、単量体Aとして2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリルアミド(以下、「DHPMA」とも記載する。)4g、単量体Bとしてブチルアクリレート(以下、「BA」とも記載する。)6g、溶媒としてメタノール40g、アゾ系ラジカル重合開始剤0.02g(和光純薬社製、商品名:V-65)を仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌と昇温を開始した。内温65℃で重合を開始し、6時間反応を行った。
得られた反応液をアセトンで希釈し、大量のn-ヘキサン中に撹拌しながら投入することで再沈した。沈殿物を真空乾燥機によって、減圧下、40℃で12時間減圧乾燥し、固体の重合体1を得た。
得られた重合体1の重量平均分子量、分子量分布、ガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
単量体Aとして2,3-ジヒドロキシプロピルアクリルアミド(以下、「DHPAA」とも記載する。)4g、単量体Bとしてブチルアクリレート(BA)6g、溶媒としてメタノール15g、アゾ系ラジカル重合開始剤0.05g(和光純薬社製、商品名:V-65)を用いた以外は製造例1と同様にして、固体の重合体2を得た。得られた重合体2の重量平均分子量、分子量分布、ガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
単量体A及び単量体Bとして表1に記載のものを用いた以外は製造例2と同様にして、重合体3~6を得た。得られた重合体の重量平均分子量、分子量分布、ガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
攪拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管を付し、単量体として2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリルアミド(DHPMA)10g、溶媒として精製水90g、アゾ系ラジカル重合開始剤0.05g(和光純薬社製、商品名:V-50)を仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌と昇温を開始した。内温65℃で重合を開始し、3時間反応を行った。
得られた反応液を大量のアセトン中に撹拌しながら投入することで再沈した。沈殿物を真空乾燥機によって、減圧下、40℃で12時間減圧乾燥し、固体の重合体7を得た。
得られた重合体7の重量平均分子量、分子量分布、ガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
攪拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管を付し、単量体としてブチルアクリレート(BA)10g、溶媒としてエタノール6.7g、アゾ系ラジカル重合開始剤0.001g(和光純薬社製、商品名:V-601)を仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌と昇温を開始した。内温80℃で重合を開始し、6時間反応を行った。
得られた反応液をアセトンで希釈し、大量の精製水中に撹拌しながら投入することで再沈した。沈殿物を真空乾燥機によって、減圧下、80℃で4時間減圧乾燥し、固体の重合体8を得た。
得られた重合体8の重量平均分子量、分子量分布、ガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
DHPMA:N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)メタクリルアミド
DHPAA:N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アクリルアミド
HEAA:2-ヒドロキシエチルアクリルアミド
THMAA:[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド
2DHPMA:N-[(1-ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]メタクリルアミド
2DHPAA:N-[(1-ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]アクリルアミド
BA:ブチルアクリレート
上記で得られた重合体1~6及び重合体8の1%メタノール溶液をそれぞれ調製してコーティング剤を得た。上記コーティング剤をPETフィルム上にスピンコートによって塗布し、25℃で24時間乾燥させた後、厚み0.1μmのコーティング膜を形成した。得られたコーティング膜において、血小板粘着試験、及び、密着性について評価した。比較例1は基材のみとし、同様に評価した。結果を表2に示す。
上記で得られた重合体7の100部、光重合開始剤IRGACURE819(BASFジャパン社製)の3部を、エタノールに溶解させ、溶液中の重合体濃度1%のコーティング剤を調製した。上記コーティング剤をPETフィルム上にスピンコートにより塗布し、25℃で24時間乾燥させた後、紫外線照射(高圧水銀ランプ、10分)を行い、厚み0.1μmのコーティング膜を形成した。コーティング膜が形成されたフィルムを、50℃のメタノールに2時間浸漬することで、残存モノマー等の可溶分を抽出除去し、真空乾燥器を用いて60℃で3時間、減圧乾燥した。
得られたコーティング膜において、血小板粘着試験、及び、密着性について評価した。結果を表2に示す。
単量体として、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリルアミド(DHPMA)1.2g、ブチルアクリレート(BA)1.8g、架橋剤としてネオペンチルグリコールジアクリレート(以下、「NPDA」とも称する。)0.045g、光重合開始剤(IRGACURE819、BASFジャパン社製)0.09gを混合して硬化性コーティング剤を調製した。上記硬化性コーティング剤をPETフィルム上にスピンコートによって塗布し、紫外線を照射して(高圧水銀ランプ、3分)を行い、厚み0.1μmのコーティング膜を形成した。
得られたコーティング膜において、血小板粘着試験、及び、密着性について評価した。結果を表2に示す。
また、上記一般式(2)で表される単量体成分を含むコーティング剤を使用して得られたコーティング膜も、抗血栓性に優れ、密着性に優れたものであることが確認された。以上より、上記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体は、抗血栓性に優れたコーティング膜を形成するための材料として好適であることがわかった。
Claims (9)
- 下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体を含み、
該構造単位の含有量が、該重合体の全構造単位100質量%に対して、10質量%以上、100質量%以下である
ことを特徴とする医療用具用コーティング剤(但し、下記一般式(a)で表される構造単位を有する重合体を含むものを除く。)。
- 下記一般式(2)で表される単量体を含み、
該単量体の含有量が、全単量体成分100質量%に対して10~100質量%であることを特徴とする医療用具用硬化性コーティング剤(但し、下記一般式(d)で表される単量体を含むものを除く。)。
- 下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体であり、
該構造単位の含有量が、該重合体の全構造単位100質量%に対して、10質量%以上、100質量%以下であり、
重量平均分子量が2000000以下であることを特徴とする医療用具用重合体(但し、下記一般式(a)で表される構造単位を有するものを除く。)。
- 溶剤溶解性を有することを特徴とする請求項3に記載の医療用具用重合体。
- 基材と、該基材表面上に、請求項1に記載の医療用具用コーティング剤、又は、請求項2に記載の医療用具用硬化性コーティング剤を用いてなるコーティング層を有することを特徴とする医療用具。
- 医療用具のコーティング方法であって、
該コーティング方法は、請求項1に記載の医療用具用コーティング剤を基材表面に塗布する工程、及び、塗布物を乾燥させて該基材表面上にコーティング層を形成する工程を有することを特徴とする医療用具のコーティング方法。 - 医療用具のコーティング方法であって、
該コーティング方法は、請求項2に記載の医療用具用硬化性コーティング剤を基材表面に塗布する工程、及び、塗布物に対して活性エネルギー線照射をして該基材表面上にコーティング層を形成する工程を含むことを特徴とする医療用具のコーティング方法。 - 基材と、該基材表面上にコーティング層を有する医療用具の製造方法であって、
該製造方法は、請求項1に記載の医療用具用コーティング剤を基材表面に塗布する工程、及び、塗布物を乾燥させてコーティング層を形成する工程を含むことを特徴とする医療用具の製造方法。 - 基材と、該基材表面上にコーティング層を有する医療用具の製造方法であって、
該製造方法は、請求項2に記載の医療用具用硬化性コーティング剤を基材表面に塗布する工程、及び、塗布物に対して活性エネルギー線照射をしてコーティング層を形成する工程を含むことを特徴とする医療用具の製造方法。
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