JP6601768B2 - 癌細胞接着剤及び癌細胞の検出方法 - Google Patents
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Description
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の癌細胞接着剤は、上記式(1)で表される構造単位を有する重合体を含む限り、その他の成分を含んでいてもよく、上記式(1)で表される構造単位を有する重合体を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
また、有機基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、グリセロール基、エリスリトール基等の水酸基含有アルキル基;メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基、ブトキシプロピル基等のアルコキシ基含有アルキル基;ジエチレングリコール基、トリエチレングリコール基、ジプロピレングリコール基、トリエチレングリコール基等の(モノ、ジ、トリ)アルキレングリコール基;メトキシジエチレングリコール基、エトキシジエチレングリコール基、プロポキシジエチレングリコール基、ブトキシジエチレングリコール基、メトキシトリエチレングリコール基、エトキシトリエチレングリコール基、プロポキシトリエチレングリコール基、ブトキシトリエチレングリコール基、メトキシジプロピレングリコール基、エトキシジプロピレングリコール基、プロポキシジプロピレングリコール基、ブトキシジプロピレングリコール基、メトキシトリエチレングリコール基、エトキシトリエチレングリコール基、プロポキシトリエチレングリコール基、ブトキシトリエチレングリコール基等のアルコキシ(モノ、ジ、トリ)アルキレングリコール基;メチルピロリドン基、エチルピロリドン基、プロピルピロリドン基、ブチルピロリドン基等のアルキルピロリドン基;ピロリドンエトキシエチル基、ピロリドンエトキシプロピル基等のアルコキシアルキルピロリドン基などが挙げられる。
なお、有機基とは、有機化合物に含まれる少なくとも1個の水素原子を除いた構造を有する基をいう。
*−(R2O)n−R3 (2)
(式(2)中、nは、0〜10の数を表す。R2は、同一又は異なって、炭素数2〜29のアルキレン基を表す。R3は、炭素数1〜30のアルキル基を表す。*は、式(1)の−COO−の酸素原子に結合する部位を表す。)で表される基であることが好ましい。上記式(1)におけるR1がこのような構造であると、重合体が適度な親水性を有するものとなり、癌細胞接着剤としてより好適なものとなる。
式(2)中のR2は、炭素数2〜29のアルキレン基を表すが、これらの中でも炭素数2〜25のアルキレン基が好ましい。より好ましくは、炭素数2〜20のアルキレン基であり、特に好ましくは、炭素数2〜10のアルキレン基であり、最も好ましくは、炭素数2のアルキレン基である。すなわち、式(1)におけるR1が、下記式(3);
上記式(2)、(3)におけるR3は、好ましくは、炭素数1〜28のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基であり、特に好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基である。
式(4)におけるR1の好ましい構造は、式(1)におけるR1の好ましい構造と同様である。
上記式(1)で表される構造単位を有する重合体が、共重合体である場合、ランダム重合、ブロック重合、交互重合のいずれの形態のものであってもよい。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,5−ジクロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミドなどのN置換マレイミド類が挙げられる。これらの共重合可能な他の単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましくは、アルキルエステルのアルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、特に好ましくは、(メタ)アクリル酸n−ブチルである。
重合体の重量平均分子量、及び、分子量5,000以下の成分の割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、実施例に記載の測定条件で測定することができる。
重合反応は、重合開始剤の存在下で重合反応を行うことが好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
重合開始剤の使用量としては、単量体の使用量1モルに対して、0.1g以上、25g以下であることが好ましく、0.1g以上、10g以下であることがより好ましい。
溶媒の使用量としては、単量体100質量%に対して40〜250質量%が好ましい。
このような、本発明の癌細胞接着剤を表面の少なくとも一部に有する癌細胞捕集フィルターも本発明の1つである。
本発明の癌細胞捕集フィルターは、表面の少なくとも一部に本発明の癌細胞接着剤を有していればよいが、濾過する血液と接触する側の表面全体の面積の50%以上が本発明の癌細胞接着剤で覆われていることが好ましく、80%以上が覆われていることがより好ましく、濾過する血液と接触する側の表面全体が本発明の癌細胞接着剤で覆われていることがさらに好ましい。
また、フィルターの平均開口率は、5〜50%であることが好ましい。更に好ましくは、10〜40%であり、更に好ましくは、20〜40%である。
ここで、フィルターの平均開口率とは、フィルター全体の面積に占める貫通孔の面積の割合を意味する。
流路への血液の導入には、流路の入り口方向からの加圧を用いる方法、流路の出口方向からの減圧を用いる方法、ぺリスタルティックポンプを使用する方法等が例示できる。また、使用するフィルターの面積は、例えば1mLの血液からCTCを濃縮する場合、1〜10cm2が適している。
上記医療用具(フィルターを含む)の表面に本発明の癌細胞接着剤を保持させる方法としては、医療用具の表面を癌細胞接着剤でコーティングする方法、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線によるグラフト重合を利用して医療用具の表面と癌細胞接着剤とを結合させる方法、医療用具の表面の官能基と癌細胞接着剤とを反応させて結合させる方法等、種々の方法を用いることができる。コーティング法を用いる場合、癌細胞接着剤をコーティングする方法として、塗布法、スプレー法、ディップ法等のいずれの方法を用いてもよい。コーティングは、上記式(1)で表される構造単位を含むポリマーの溶液を、浸漬法、スプレー法、スピンコート法等により基板表面に付着させた後、溶媒を除去(乾燥)することにより行われる。乾燥後の膜厚は、0.01μm〜1.0mmが好ましく、0.1〜100μmがより好ましく、0.5〜50μmが更に好ましい。膜厚が0.01μm未満であると血球成分との非接着性や癌細胞との接着性が十分発現しない場合がある。また膜厚が1.0mmを超えるとこれらの接着特性のバランスが崩れる場合がある。
<ガスクロマトグラフィー>
GC−2010(島津製作所製)を用い、キャピラリーカラム DB−17HT L30m×ID0.25mm、DF0.15mmにより測定した。
<重量平均分子量、及び、分子量5,000以下の成分の割合>
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPCシステム、東ソー社製)を用い、カラムとしてTSKgel SuperH3000と、TSKgel SuperH4000と、TSKgel SuperH5000とを連結したものを用い、溶離液にテトラヒドロフランを用いて、標準ポリスチレン換算により求めた。
撹拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管および留出液受器に繋げたトの字管を付し、2−メトキシエタノール220g、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AOMA−M)90g、シクロヘキサン150gを仕込み、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7vol%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、オイルバス(バス温100℃)で加熱を開始した。留出液に水が出てこなくなってから、チタンテトライソプロポキシド1.5gを反応容器に添加し、エステル交換反応を開始させた。生成してくるメタノールをシクロヘキサンで共沸留去しながら、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によりα−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル(AOMA−ME)/α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AOMA−M)の面積比を追跡した。GC分析でAOMA−ME/AOMA−Mの面積比が9/1を超えるまで、3時間おきにチタンテトライソプロポキシド1.5gとシクロヘキサン25gを追加した。減圧してシクロヘキサンを除去してから、室温まで冷却した。5%硫酸80gと抽出溶媒としてn−ヘキサンを加え、分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。有機層に合成吸着剤キョーワード300(協和化学工業社製)を10g添加して撹拌した後、濾過して得た濾液を蒸留精製することにより、AOMA−ME(沸点:104〜108℃/0.8〜0.9kPa)を84g得た。
攪拌翼、ガス導入管、温度計、冷却管を付した反応容器に、単量体としてAOMA−ME20.0g、溶媒としてアセトニトリル30.0gを仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌、昇温を開始した。内温が70℃で安定したのを確認した後、アゾ系ラジカル重合開始剤0.02g((株)和光純薬製、商品名:V−601)をアセトニトリル0.5gに溶解した溶液を添加し、重合を開始した。内温が69℃〜71℃になるよう調整しながら、4hr毎に0.02gのV−601をアセトニトリル0.5gに溶解した溶液を加え、最終的に16hr反応を行った。
得られた反応液をアセトニトリルで希釈し、大量のイオン交換水中に撹拌しながら投入することで再沈した。沈殿物を真空乾燥機によって、減圧下、80℃で3時間減圧乾燥し、固体の重合体を得た。得られた重合体は、重量平均分子量が9万、分子量5,000以下の成分の含有量が0.5%以下であった。
攪拌翼、ガス導入管、温度計、冷却管を付した反応容器に、単量体としてメトキシエチルアクリレート(MEA)20.0g、溶媒としてメチルエチルケトン30.0gを仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌、昇温を開始した。内温が70℃で安定したのを確認した後、アゾ系ラジカル重合開始剤0.02g((株)和光純薬製、商品名:V−601)をメチルエチルケトン0.5gに溶解した溶液を添加し、重合を開始した。内温が69℃〜71℃になるよう調整しながら、4hr毎に0.02gのV−601をメチルエチルケトン0.5gに溶解した溶液を加え、最終的に8hr反応を行った。
得られた反応液をアセトンで希釈し、大量のイオン交換水中に撹拌しながら投入することで再沈し、固体の重合体を得た。得られた重合体は、重量平均分子量が13万、分子量5,000以下の成分の含有量が0.5%以下であった。
合成例2、3で得られた重合体、及び、比較として用いる生体適合性ポリマー(リビジュアCM5206、日油株式会社製)を用いて、以下の方法により、血小板粘着試験、及び、癌細胞接着試験を行った。結果を表1に示す。なお、比較例3は、PETフィルムのみの試料の試験結果である。
<血小板粘着試験>
試験を行う材料をそれぞれ、0.2%メタノール溶液として、PETフィルム上にスピンコートによって塗布、乾燥したものを試料とした。試料上にクエン酸ナトリウムで抗凝固したヒト新鮮多血小板血漿0.2mLをピペットで滴下し、37℃で60分間静置した。続いてリン酸緩衝溶液でリンスし、グルタルアルデヒドで固定した後、基体を走査型電子顕微鏡で観察し、1×104μm2の面積に接着(粘着)した血小板数をカウントした。
<癌細胞接着試験>
試験を行う材料をそれぞれ、0.2%メタノール溶液として、PETフィルム上にスピンコートによって塗布、乾燥したものを試料とした。試料上に血清を10%添加した培地で10,000個/mLに調整した癌細胞懸濁液1.0mLをピペットで滴下し、37℃で60分間静置した。癌細胞として、ヒト線維肉腫細胞株HT−1080を使用した。続いて、生理緩衝食塩水を用いてリンスし、基体表面に接着した細胞の数をカウントした。カウントを容易にするために、ホルムアルデヒドで細胞を固定化後、4,6−diamino−2−phenylindole(DAPI)で細胞核を染色した。細胞核の数を、位相差顕微鏡を用いてカウントし、細胞の数とした。接着細胞の面積はimageソフトを用いて1画面毎にピクセル単位の数値化を行い、PET上に接着した細胞の面積との相対比較を行った。
また、癌細胞接着試験の結果では、P(AOMA−ME)はPMEAと同等の数の癌細胞を接着し、接着した細胞の面積を比較すると、PMEAよりも面積が広がっていた。このことは、癌細胞がPMEAよりもP(AOMA−ME)に対して、より強力に接着していることを示している。
これらより、P(AOMA−ME)は、生体適合性に優れるとともに、癌細胞接着性を有する材料として知られているPMEAよりも優れた癌細胞接着を有することが確認された。
Claims (5)
- 請求項1又は2に記載の癌細胞接着剤を表面の少なくとも一部に有することを特徴とする癌細胞捕集フィルター。
- 請求項3に記載の癌細胞捕集フィルターで血液を濾過する工程を含むことを特徴とする癌細胞の検出方法。
- 前記癌細胞の検出方法は、濾過工程で捕集された癌細胞を培養する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の癌細胞の検出方法。
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