JP2006035090A - 白血球選択除去フィルター材及びこれに用いられるポリマー - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の白血球選択除去フィルター材が有する、高圧蒸気滅菌処理による性能低下という問題と、低温において溶出しやすいという問題を克服し、かつ、血小板を透過させて白血球を選択的に除去する白血球選択除去フィルター材を提供する。
【解決手段】多孔質素子から成る白血球選択除去フィルター基材の表面に、プロトンのスピン-スピン緩和時間が1ミリ秒以上20ミリ秒以下であって、親水性基と強疎水性基の両方を含む水不溶性ポリマーを保持してなることを特徴とする白血球選択除去フィルター材。
【選択図】選択図なし

Description

本発明は、白血球を選択的に除去し、血小板は通過させる白血球選択除去フィルター材に関する。更に詳しくは、輸血や血液の体外循環を行うときに血液中の白血球を選択的に除去したり、血液から濃厚血小板を調整する際に混入している白血球を選択的に除去するための白血球選択除去フィルター材に関する。
現在、輸血の分野では、患者に必要な成分のみを輸血する成分輸血が行われるようになってきている。その際、非溶血性発熱反応、同種免疫反応、輸血後急性肺障害、輸血後移植片対宿主病(GVHD)、アレルギー反応、アナフィラキシー反応等の輸血後の副作用を防ぐため、各種血液成分製剤は十分に低い水準まで白血球除去されていることが必要である。白血球を除去する方法としては、白血球除去能に優れていること、操作が簡便であることおよびコストが低いことなどの利点を有することからフィルター法が広く用いられている。血液を各成分に分離して、各種血液成分製剤を調整した後、フィルターを用いて白血球を除去する方式では、血液成分製剤毎に白血球除去操作が必要である。一方、全血から白血球のみを除去した後、各血液成分製剤を調整する方式は白血球除去操作が1回で済むため、操作性、コストの観点から非常に有用である。しかしながら、現在市販されている全血製剤用のフィルターは血小板も除去してしまうため、ろ過後の全血製剤から血小板製剤を調整することができないという問題がある。そこで、全血から血漿、血小板、赤血球を通過させ、白血球のみを選択的に除去する高機能なフィルター材が要求されている。
現在市販されている白血球選択除去フィルターは、抗血栓性、血液適合性に優れる高分子材料をフィルター基材の少なくとも表面に何らかの方法で保持させたものが多い。よって、一般的な抗血栓性や血液適合性の良否を指標として高分子材料の選択を行うことは、ある程度可能である。しかしながら、白血球選択除去フィルター固有の特徴として、(1)プライミング等の湿潤処理を施さないため、使用前は乾燥状態であること、(2)高圧蒸気滅菌処理を受ける場合表面の親/疎水性が変化する可能性があること、があげられる。特に血小板を透過させる目的のフィルターにおいては、乾燥状態のフィルター材に血液が接触した直後の材料表面の状態が極めて重要であると考えられ、この点を考慮した材料設計が必要である。
前述したような、血液から白血球のみを選択的に除去するという目的に対し、これまで多くの技術が開示されてきている。
例えば、特許文献1、2には、アルコキシ(メタ)アクリレートを主成分としたポリマーをフィルター表面に保持させた白血球選択除去フィルターが開示されている。これはアルコキシ(メタ)アクリレートを用いる事で血小板の吸着を防ぎ白血球を選択的に除去することを目的としたフィルターであるが、これらの実施例によると、高い血小板回収性能を示すものの、白血球除去性能は低く、本発明者らが目的とする性能には依然として達していない。本発明者らが、実際に全血を用いて試験したところ、血液の流れ性が悪いばかりではなく、血小板回収率も低いことが確認され、本発明者らが目的とする白血球選択除去フィルター材が得られていないことが確認された。
また特許文献3には、ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと略す)とジメチルアミノエチルメタクリレートからなる2元系ポリマーをコーティングしたような、非イオン性親水性基と塩基性含窒素官能基とを表面に含有するフィルター材により血小板の通過性を付与することができる技術が開示されているが、より有用性を高めるため、さらに高い血小板回収率をもつフィルター材の検討が行なわれている。
例えば、エチレンオキサイド鎖は血液適合性の高い材料であることが知られており、エチレンオキサイド鎖を材料表面に導入することで材料表面特性を改質しようとする数多くの試みが為されている。しかし、これまで開示されてきた技術では、血小板通過性は高いものの、同時に白血球も通過しやすくなり、白血球除去性能が不足したり(例えば、特許文献4)、エチレンオキサイド鎖の割合の高いポリマーからなるフィルター材においては、その高い親水性のために、フィルター材を構成する高分子材料が溶出する恐れが出てくる。特に、エチレンオキサイド鎖を有する高分子材料の中には、高温より低温において溶出量が増加するものもあるため、注意が必要である。本出願人は、特許文献5〜7において、材料表面に多量のエチレンオキサイド鎖を導入したフィルター材に関する技術を開示してきているが、これらの実施例に記載されたフィルター材は、高温での溶出性は低い(例えば、特許文献6の実施例参照)ものの、その後の本出願人らの検討により、実用に供される室温付近では十分に低いとは言いきれず改善の余地があった。
このような溶出に関する問題に対し本出願人は、特許文献8において、エチレンオキサイド鎖を少量有するポリマーからなるフィルター材に関する技術を開示しており、疎水性基と塩基性基と繰り返し単位数2〜9のエチレンオキサイド鎖とを有するポリマーを用いることで、室温(25℃)での溶出が少なく、かつ高圧蒸気滅菌による性能変化が少ない白血球選択除去フィルター材を開示した。しかし、本特許文献に開示される表面改質材は3種類のモノマーを用いるために、組成が均一となるように重合を行うには、重合条件の厳密な制御が必要であった。
一方、長岡らは、高い分子運動性を発現する、エチレンオキサイド鎖を有するヒドロゲルが、良好な血液適合性を示すことを開示している(例えば非特許文献1、2)。しかし非特許文献1においては、含水状態での運動性と、長時間(3時間)血液に接触した状態、すなわち平衡状態での血小板吸着の関係が議論されており、白血球選択除去フィルターにおいて重要な性質である、乾燥状態から濡れた状態へ変化するときの分子運動性や、高圧蒸気滅菌の環境下での分子運動性は考慮されておらず、白血球選択除去フィルターとして好適なものであるか否かは不明であった。また、非特許文献2においても同様に、溶液状態での運動性と、長時間血液に接触した状態での血小板吸着の関係が議論されているのみであり、白血球選択除去フィルターにおいて重要な上記の性質が考慮されていない。しかも、ポリエチレンオキサイド鎖と血小板吸着の抑制の間に明確な関係を見いだすことができないと結論している。加えて、これらの検討においては、白血球選択除去フィルターにおけるもう一つの重要な性質である、耐溶出性について全く議論されておらず、分子運動性が耐溶出性に与える影響は不明であった。実際、これらの検討において血小板吸着の抑制効果が顕著であるポリマーは、非特許文献1においてはエチレンオキサイド鎖の繰り返し単位数が50以上、非特許文献2においては、ポリエチレンオキサイド鎖の繰り返し単位数が23のものであり、いずれも繰り返し単位が多く、溶出の可能性がきわめて高いものといえる。
このように、過去に開示された技術を検討した結果、白血球除去性能、血小板通過性能、高圧蒸気滅菌に対する耐性、溶出に関する問題等、本発明者らが白血球選択除去フィルター材に要求する特性の全てを満足させる技術は、依然存在していない。
特許第3459836号公報 特開2002−105136号公報 特公平6−51060号公報 特開平4−187206号公報 特開平5−194243号公報 特開平7−25776号公報 特開2000−245833号公報 国際公開第03/047655号パンフレット 高分子論文集、39、No.4、p165−171(1982) 高分子論文集、42、No.10、p623−628(1985)
本発明は、白血球選択除去フィルター材の本質的な要件である血小板を透過させて白血球を選択的に除去するという性能を有した上で、従来の問題点であった、高圧蒸気滅菌処理による性能低下と、低温において溶出しやすいという問題を克服した白血球選択除去フィルター材を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、親水性基と強疎水性基の両方を含む水不溶性のポリマーであって、乾燥状態で分子運動性の高いポリマーを用いることで、低温におけるポリマーのフィルター基材からの溶出を大幅に低減し、また、血液接触の初期にすばやく親水性表面を形成して血小板の吸着を最小限に抑え、さらに、高圧蒸気滅菌による性能低下を防ぐことに成功し、本発明を成すに至った。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1)多孔質素子から成る白血球選択除去フィルター基材の表面に、親水性基と強疎水性基の両方を有し、プロトンのスピン-スピン緩和時間(T2)が1ミリ秒以上20ミリ秒以下である水不溶性ポリマーを保持してなることを特徴とする、白血球選択除去フィルター材。
2)親水性基が、エチレンオキサイド鎖または/および水酸基であることを特徴とする、上記1)に記載の白血球選択除去フィルター材。
3)強疎水性基が、炭素数5以上のアルキル鎖であることを特徴とする、上記1)または2)に記載の白血球選択除去フィルター材。
4)ポリマーが、(メタ)アクリレート系ポリマーであることを特徴とする、上記1)から3)のいずれかに記載の白血球選択除去フィルター材。
5)下記式(1)で表わされるPが、20以上80以下であることを特徴とする、上記2)から4)のいずれかに記載の白血球選択除去フィルター材。
P = log(T2×100)×([O]PEO&OH) (1)
T2:ポリマーにおけるプロトンのスピン-スピン緩和時間 (単位:ミリ秒)
[O]PEO&OH : フィルター材の表面におけるエチレンオキサイド鎖および水酸基に由来する酸素濃度の和 (単位:at.%)
6)親水性基と強疎水性基の両方を有する水不溶性のポリマーであって、プロトンのスピン-スピン緩和時間(T2)が1ミリ秒以上20ミリ秒以下であることを特徴とする、生体適合性ポリマー。
上記に示す本発明におけるポリマーは、高温および室温のいずれにおいてもフィルター基材からの溶出を抑制するための強疎水性基と、血小板を効率よく透過させるための親水性基の両方を有する。また、ポリマーが乾燥状態において高い分子運動性を有することによって、血液接触の初期にすばやく親水性表面を形成することができるために、分子内に強疎水性部分を持つにもかかわらず血小板の吸着を最小限に抑えることができるものと考えている。また、乾燥状態で高い分子運動性を有することから、ポリマーが熱履歴を受けたとしても最終的に室温に戻ったときには熱履歴を受ける前の表面状態に戻ることができ、このため、高圧蒸気滅菌処理による表面特性の変化が少なく、これに基づく性能低下をも防ぐことができるものと考えられる。
本発明の白血球選択除去フィルターは、室温においてポリマーの血液への溶出が極めて少なく、高圧蒸気滅菌処理後にも血小板を効率よく透過させるという、高い安全性と優れた血液性能を有する。従って、ヒト全血に用いる白血球選択除去フィルター材、あるいは、血小板輸血や血液の体外循環白血球除去療法に用いることのできるフィルター材として極めて有用である。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明でいう親水性基と強疎水性基の両方を有するポリマーとは、水に対する親和性が高く血液適合性に優れる親水性部分と、水に対する親和性が極めて低く水に溶けにくい強疎水性部分を側鎖の一部として含み、ポリマーを構成するモノマーの数(重合度)が2以上である多量体のことである。すなわち、親水性部分を一部に含む側鎖と強疎水性部分を一部に含む側鎖の両方を有するポリマーであっても良いし、また、親水性部分と強疎水性部分を両方含む側鎖を有するポリマーであっても良い。例えば、二重結合や三重結合などの反応性に富む強疎水性の重合性モノマーと親水性の重合性モノマーとのランダム共重合体やブロック共重合体、親水性部分と強疎水性部分の両方を含む重合性モノマーからなるポリマー、親水性のポリマーに化学反応によって強疎水性基を導入したポリマー、疎水性ポリマーに化学反応によって親水性基を導入したポリマーなどが挙げられる。
本発明でいう親水性基とは、水に対する親和性が高い原子団のことであり、例えば、エチレンオキサイド鎖、水酸基、スルホン酸基、アミド基などが挙げられる。中でも、エチレンオキサイド鎖は良好な血液適合性を有するため好ましい。また、水酸基は保水性が高いため好ましい。
このような親水性基を有している重合性モノマーとしては、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またビニルアルコール(酢酸ビニルとして重合後、加水分解させる)、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドンなどを例示することができる。
本発明でいう、強疎水性基とは、酸素および窒素を結合していない炭素が5個以上連続して結合している原子団であり、水に対する親和性が極めて低い原子団のことをいう。例えば、炭素数5以上のアルキル基およびアルキレン基、フェニル基、フェニレン基、ベンジル基、ハロゲン化アルキルなどが挙げられる。このような強疎水性基を有している重合性モノマーとしては、アルキル鎖の炭素数が5以上のアルキル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびそれらの誘導体、スチレン、メチルスチレン、ハロゲン化スチレンなどのスチレン誘導体を例示することができる。中でも、炭素数5以上のアルキル基を有するモノマーは、入手が容易である等の理由から好ましい。
また、親水性基と強疎水性基の両方を有する重合性モノマーとしては、アルキル鎖の炭素数が5以上のアルコキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレンオキサイド(メタ)アクリレートなどの、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびそれらの誘導体、ヒドロキシスチレンなどのスチレン誘導体を例示することができる。
このように、本発明に用いることのできる、親水性基を有する重合性モノマー、強疎水性基を有する重合性モノマー、親水性基と強疎水性基の両方を有するモノマーにはさまざまなものがあるが、入手しやすいこと、取り扱いやすいことやポリマーの重合がしやすい等の理由により、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマーがより好ましい。
本発明でいう(メタ)アクリレートポリマーとは、アクリレートモノマーのホモポリマーまたは共重合体、メタクリレートモノマーのホモポリマーまたは共重合体およびアクリレートモノマーとメタクリレートモノマーの共重合体のいずれでも良いが、比較的重合性が高く目的の分子量、組成を得やすいことからアクリレートモノマーのホモポリマーまたは共重合体であることがより好ましい。
本発明に用いられるポリマーは、強疎水性基を有するために、高温および室温のいずれにおいてもポリマーの基材からの溶出を抑制することができる。これは、疎水性基材との親和性が高いことや、ポリマー分子間または分子内の強疎水性部分同士の絡み合いによるものと考えられる。また、同じ分子内に親水性基を有することによって、血小板を効率よく透過させることができる。
また、本発明に用いられるポリマーは、乾燥状態において高い分子運動性を有する。このことは、白血球選択除去フィルターのように使用前に乾燥状態である医療用具においては重要な性質である。高い分子運動性ゆえに、血液接触の初期にすばやく分子鎖が運動し、親水性表面を形成することができ、血液接触直後に起こる血小板のフィルターへの吸着を最小限に抑えることができるものと考えている。また、高い分子運動性を有するために、ポリマーが熱履歴を受けたとしても最終的に室温に戻ったときには熱履歴を受ける前の表面状態に戻ることができるため、高圧蒸気滅菌処理による表面特性の変化が少なく、これに基づく性能低下をも防ぐことができるものと考えられる。
ポリマーの分子運動性の指標として、本発明においては、プロトンのスピン−スピン緩和時間(以下、T2と呼ぶこともある。)を用いる。T2はパルスNMR法を用いて測定することができる。すなわち、十分に乾燥させたポリマーをNMR測定用のサンプル管に適量充填し、CPMG法またはSolid echo法を用いて測定を行う。測定時のサンプル温度は27℃、測定室の相対湿度は45%以下とする。本発明においては、T2は、磁化シグナルの減衰プロファイルが最大値の1/2になる時間と定義する。通常、プロトンのスピン−スピン緩和時間の定義は、磁化シグナルの減衰プロファイルを指数関数でフィッティングしたときの時定数であるが、減衰プロファイルが単一の指数関数でフィッティングできず、複数の指数関数を使う場合があり、その場合、フィッティングに任意性が入るため好ましくない。よって本発明においてはそのような任意性を排除するために、半減時間をもって緩和時間と定義する。T2が高いと分子運動性が高いということを示し、低いと分子運動性が低いということを示す。例えば、室温で分子運動性が低いポリマーがフィルター基材に保持されている場合には、ポリマーが基材との親和性が悪い(不安定な)状態で固定されていることがある。これが熱履歴を受けて高温になったときにポリマーの分子運動性が向上し、より安定な状態に変化しようとして、基材への保持状態が変化し、結果的にフィルター材の表面が変化することがある。これに対して、室温で運動性が十分に高いポリマーが保持されている場合には、すでに安定な状態で保持されているので、熱履歴によってフィルター材の表面が変化する可能性が少ない。
そのプロトンのスピン−スピン緩和時間(T2)は、後述の実施例に記載の方法で測定した場合に、1〜20ミリ秒である必要がある。プロトンのスピン−スピン緩和時間(T2)が1ミリ秒未満であると、血液接触直後に血小板を吸着してしまい十分な血小板回収率が得られないため、好ましくない。また、20ミリ秒を超えると、ポリマーが粘度の低い液状となり、フィルター基材にコーティングした後の固定が困難になるため好ましくない。また、ポリマーの取り扱いやすさを考慮すると、1〜10ミリ秒がより好ましく、2〜10ミリ秒がさらに好ましく、2〜6ミリ秒が最も望ましい。本発明のT2が1−20ミリ秒のポリマーは作るには例えば、側鎖の長さ等によって調整することができる。側鎖は長い方が、運動性が高く(T2は大きく)なる傾向がある。従って、ポリマーの組成が決まった後、側鎖の長さを適宜変更して、T2を測定し、最終的な側鎖を決める方法があげられる。
本発明に用いる白血球選択除去フィルター基材は、血液をろ過し得る細孔を有するもので血球にダメージを与えにくいものであれば特に限定はなく、何れの形態を有するものも含まれる。具体的には天然繊維、ガラス繊維、編布、織布、不織布などの繊維状媒体や多孔膜、三次元網目状連続孔を有するスポンジ状構造物である。
本発明のフィルター基材を成形する素材として、有機高分子材料は切断等の加工性に優れるためより好ましい素材である。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスルホン、セルロース、セルロースアセテート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラエチレンテレフタレート、あるいはそれらの混合物などが挙げられるが、本発明のフィルター基材の素材は上記例示に限定されるものではない。
フィルター基材表面にポリマーを導入する方法としては、ポリマーのフィルター基材表面へのコーティングなどの一般的な表面修飾方法を用いることができる。また、導入の前処理として、本発明のポリマーとフィルター基材との接着性をより高めるなどの効果を得るため、フィルター基材の表面を酸、アルカリなどの適当な薬品で処理をしたり、プラズマや電子線を照射したりすることもできる。更に、ポリマーを表面に導入した後に熱処理や、γ線、電子線などの放射線を照射する後加工を施し、フィルター基材と該ポリマーとの接着性を更に強化することもできる。
本発明における溶出とは、フィルター基材の表面に保持した本発明のポリマーが、室温付近または室温以下の水(実際には血液や体液なども含む)との接触により溶け出すことをいう。
そして、本発明における水不溶性とは、後述する溶出物試験を実施したときに、重量変化率が5%以下であることをいう。
親水性基と強疎水性基の両方を有する水不溶性ポリマーは公知の重合法によって得ることができる。例えば、連鎖反応である付加重合、環化重合、異性化重合、開環重合、逐次反応である脱離反応、重付加、重縮合や付加重縮合等が挙げられる。また、ポリマーは、ホモポリマー、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれでも良い。
本発明で用いられるポリマーが親水性基としてエチレンオキサイド鎖または水酸基を含む場合、分子運動性と親水性基の好ましい範囲を設定するため、下記式(1)で表わされるパラメータPを用いることが推奨される。
P = log(T2×100)×([O]PEO&OH) (1)
T2:ポリマーにおけるプロトンのスピン-スピン緩和時間 (単位:ミリ秒)
[O]PEO&OH : フィルター材の表面におけるエチレンオキサイド鎖および水酸基に由来する酸素濃度の和 (単位:at.%)
パラメータPの意味するところは、分子運動性と親水性の好適なバランスの範囲を規定することであり、パラメータPは20〜80であることが好ましく、20〜50であることがより好ましく、25〜35であることが望ましい。20以下になるとポリマーの分子運動性と親水性のいずれかが低下するため、血小板がフィルターを透過しにくくなり、好ましくない。また、80以上になるとポリマーの分子運動性と親水性のいずれかが高すぎるために、ポリマーの低粘性液状化または溶出のいずれかが起こることが懸念され、好ましくない。なお、エチレンオキサイド鎖または水酸基に由来する表面酸素濃度は、後述するフィルター材の表面組成の測定方法に基づき、X線光電子分光法を用いて求めることができる。
ポリマーのフィルター基材表面への導入量は、ろ過の対象により異なるが、全血を対象とする場合は、単位表面積あたり、60mg/m2以上300mg/m2以下が好ましい。より好ましい範囲は120mg/m2以上250mg/m2以下である。60mg/m2未満である場合では、フィルター材表面をポリマーで完全に被覆できない恐れがあり、ポリマーの機能が効果的に発揮されず、ヒト全血を用いた時に、十分な血小板回収率を得られない場合がある。逆に、300mg/m2より多い場合は、フィルター材の比表面積が小さくなり、十分な白血球除去能を得られない場合がある。一方、ろ過の対象が濃厚血小板製剤から白血球を選択的に処理する場合には、製剤中の血小板数が約10倍と多いため、全血の場合より低いポリマー量で充分な量の血小板を回収することが可能となる事が判っている。このため、ポリマーの導入量は、単位面積当り、15mg/m2以上60mg/m2以下が好ましい。より好ましい範囲は20mg/m2以上50mg/m2以下である。15mg/m2未満では、血小板の吸着量が高くなり本目的を達成でき難くなる傾向にある。一方、60mg/m2より高いと、存在する白血球の捕捉効率、特にリンパ球の捕捉効率が低下して充分な白血球除去性能を示さない場合があり好ましくない。ここで、単位表面積当たりの導入量とは、フィルター基材1m2当たりに導入されたポリマーの重量を指す。
本発明におけるフィルター基材の表面積は、吸着温度を液体窒素温度とし、吸着ガスにクリプトンガスを用いたBET吸着法により測定された比表面積から算出できる。
また、本発明におけるフィルター基材表面へのポリマーの導入量は、導入前後の重量変化から簡易的に求めることができる。また、導入前の重量が未知の場合でも、表面へ導入したポリマーのみを溶解する良溶媒が存在する場合には、良溶媒にポリマーを溶解させ、溶解前後の重量差からポリマー重量を算出することも可能である。また、フィルター材そのものを溶媒により全溶解させて核磁気共鳴分光法(NMR)により算出することも可能である。
本発明に用いられるポリマーの重量平均分子量は1万以上100万以下が好ましい。重量平均分子量が1万未満であると血液と接触した時にポリマーの血液への溶出がおこりやすい傾向にあり、また重量平均分子量が100万を超えるとコーティングが困難となり、血液接触時において血液の流れ性が悪くなる傾向にあり、何れの場合も白血球選択除去フィルターとしての性能を十分に発揮できない恐れがある。より好ましくは、重量平均分子量は2万以上50万以下、さらに好ましくは、2万以上20万以下、なお分子量は種々の公知の方法により求められるが本発明ではポリメチルメタクリレートを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)測定による値を採用している。
本発明のフィルター材の平均気孔径は1μm以上30μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上20μm以下、更に好ましくは2μm以上10μm以下である。平均気孔径が1μm未満では全血などをろ過する際の圧力損失が高すぎて実用的でない恐れがあり、30μmより大きい場合ではフィルター材と白血球との接触確率が低下し、十分な白血球除去能を示さない可能性がある。尚、ここで言う平均気孔径とは、ASTMF316−86に記載されているエアーフロー法に準じてPOROFIL(COULTER ELECTRONICS LTD.製)液中にて測定した平均気孔径を指す。
また、本発明のフィルター材の嵩密度は0.10g/cm3以上0.50g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.10g/cm3以上0.35g/cm3以下、更に好ましくは0.15g/cm3以上0.30g/cm3以下である。嵩密度が0.10g/cm3未満である場合には機械的強度が不足し血液ろ過の際にフィルター材が変形する恐れがある。また、嵩密度が0.50g/cm3より高い場合には血液の通液抵抗が高くなり、ろ過時間の延長などの不具合を起こす可能性がある。なお、ここで言う嵩密度とは、フィルター材の重量をその寸法から算出される厚みと面積を乗じて求めた体積で除した値のことであり、厚みは任意の3箇所以上の測定値を平均した値を用いる。
また、本発明でいうヒト全血とは、ACD(acid−citrate−dextrose)やCPD(citrate−phosphate−dextrose)などの抗凝固剤を含む、採血後3日以内、好ましくは1日以内、更に好ましくは8時間以内の全血製剤のことである。また、採血後からフィルターろ過するまでの間の保存温度は、4℃以上30℃以下が好ましい。より好ましくは15℃以上25℃以下の温度で保存された全血製剤であることが望ましい。採血後3日を超えて保存された全血製剤や、4℃未満の温度で保存された全血製剤は、含まれる血小板の機能が低下する恐れがあるために望ましくない。また30℃を超える温度で保存した全血製剤は、血漿タンパク質の変性などが起こりやすく、血小板回収率の向上が見られない可能性があるため好ましくない。
以下に本発明の実施例を示すがこれに限定されるものではない。
本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
(ポリマーの合成)
フィルター基材の表面をコーティングする場合に用いるポリマーの合成方法を示す。エタノール225.0gを還流及び攪拌装置を備えた反応容器に入れ、65℃で30分間窒素でのバブリング及び溶液の攪拌を行った。窒素雰囲気を維持したまま、モノマーとして、ラウロキシポリエチレングリコールアクリレート(ケン化価から求めたエチレンオキサイド鎖の繰り返し単位数の平均値は4.0;以下LEGAと略す)146.3g(0.35mol)、開始剤溶液(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.017g(0.69mmol)を、100gのエタノールに溶解させたもの)を反応容器に入れ、7時間重合を行った。重合溶液は、重合液の水への再沈殿、及びエタノールを用いた液−液相分離を繰り返すことで低分子量体及びモノマーを除去し、得られたポリマー濃厚溶液を、40℃で48時間以上真空乾燥することで目的のポリマーを得た(以下pLEGAと略す)。得られたポリマーのエチレングリコール鎖とアルキル鎖の組成をNMR測定の積分値から算出したところ、ほぼ仕込み比(エチレンオキサイド鎖の平均繰り返し長さ4:アルキル鎖の長さ12)どおりであることを確認した。エチレンオキサイド鎖の含量は42wt%であった。また、GPCで求めた重量平均分子量は4.2×10であった。
(プロトンのスピン−スピン緩和時間(T2)の測定)
ポリマーの分子運動性の指標となる、プロトンのスピン−スピン緩和時間(T2)の測定方法を記述する。十分に乾燥させたポリマーをNMR測定用の10mm径のサンプル管に適量充填し日本電子製ミュー25NMR装置にて測定を行った。測定はCPMG法を用いて行い、測定時の温度は27℃とし、測定室の相対湿度は45%以下とした。前述したように、本発明においては、スピン−スピン緩和時間(T2)は、磁化シグナルの減衰プロファイルが最大値の1/2になる時間と定義する。
上記の方法で測定した結果、スピン−スピン緩和時間(T2)は5.1ミリ秒であった。
(フィルター材の作製)
フィルター材の作製方法を次に示す。得られたポリマー10gをイソプロパノールと純水の混合溶媒90gに溶解させ、その溶液に、ポリエチレンテレフタレート製不織布(平均繊維径1.2μm、平均孔径7μm、目付け40g/m2、厚み0.23mm)を浸漬させ、余分な液を除去した後に室温で16時間乾燥させて目的のフィルター材を得た。フィルター材の嵩密度は、0.23g/cmであった。次にフィルター基材の表面積測定を行った。測定方法はBET吸着法で、測定装置は、島津アキュソープ2100E、吸着ガスはクリプトンガス、吸着温度は液体窒素温度である。測定の結果、フィルター基材の比表面積は、1.47m2/gであり、フィルター基材の単位表面積あたりのポリマー重量は183mg/m2であった。
(フィルター材表面組成の測定)
フィルター材の表面組成の測定方法を記述する。フィルター材の表面組成は、乾燥後のフィルター材の表面をX線光電子分光法により測定することによって求めた。用いた装置はVG社製ESCALAB250型X線光電子分光装置で、AlのKアルファ線を分光器を用いて単色化したものを励起源とした。アナライザーパスエネルギーは20eVとした。炭素と酸素の相対感度係数は、アセトンで洗浄した市販のPETフィルムを測定し、その表面組成が化学構造からの計算値と一致するように決定した。炭素の化学状態別の表面濃度を算出するために、装置付属のソフトウエアである、Avantageヴァージョン2.12を用いてピーク分離を行った。エチレンオキサイド鎖に由来する酸素の表面濃度は下記に示す式(2)から求めた。すなわち、全酸素の表面濃度から、エステル結合由来の酸素濃度を差し引いたものを、エチレンオキサイド鎖に由来する酸素の表面濃度とした。
[O]PEO = [O]total − [C]COO × 2 (2)
[O]PEO: フィルター材の表面におけるエチレンオキサイド鎖に由来する酸素濃度(単位:at.%)
[O]total:フィルター材表面の全酸素濃度(単位:at.%)
[C]COO:エステル結合由来の炭素の表面濃度(単位:at.%)
上記の方法で測定した結果、フィルター材の表面におけるエチレンオキサイド鎖に由来する酸素濃度は、11.3at.%であった。
(溶出物試験)
溶出物試験方法を記述する。作製したフィルター材5cm×5cmを50mlの純水中に、15℃で16時間浸漬させた後にフィルター材を真空乾燥させ、(3)式により浸漬前後のポリマーの重量変化率を算出した。
重量変化率(%)=(1−[フィルター材中のポリマー重量(浸漬後)]/[フィルター材中のポリマー重量(浸漬前)])×100 (3)
溶出物試験の結果、重量変化率は0.1%未満であった。なお、ポリマー重量は、各ポリマーの良溶媒に完全溶解させ、溶解前後の重量差から算出した。また、溶解後のフィルター材にポリマーが残っていないことは、NMR測定により確認した。
(血液評価)
白血球除去能および血小板回収率を評価する試験方法を記述する。血液評価に用いる血液は全血であり、採血直後の血液100mlあたりに対してろ過済みCPD溶液(クエン酸三ナトリウム・二水和物2.630gとクエン酸一水和物0.327gとリン酸二水素ナトリウム・二水和物0.251gとグルコース2.320gを注射用蒸留水100mlあたりに溶解させた溶液を0.2μmのフィルターでろ過したもの)を14ml加え混和し室温にて2時間静置したものである(以後、ろ過前血という)。
フィルター材16枚を有効ろ過面積30cm2、容量7mlの容器に充填し、室温の全血を流速0.7ml/min・cmでカラム内に流し、180mlを回収した(以後、ろ過後血という)。白血球除去能はフローサイトメトリー法(装置:BECTON DICKINSON社製 FACSCalibur)を用い、次の(4)式に従い計算した。
白血球除去能(%)=(1−[白血球数(ろ過後血)]/[白血球数(ろ過前血)])×100 (4)
なお、各試料の調製は、血液100μLをサンプリングし、ビーズ入りLeucocountキット(日本ベクトン・ディッキンソン社)を用いて行った。血小板回収率は、自動血球数測定装置(東亜医用電子株式会社Sysmex K4500)にて測定を行い、次の(5)式に従い計算した。
血小板回収率(%)=([血小板濃度(ろ過後血)]/[血小板濃度(ろ過前血)])×100 (5)
結果は、白血球除去能は99.9%、血小板回収率は77%であった。
また、上記フィルター材を高圧蒸気滅菌(118℃、30分)処理したものについて、同様にエチレンオキサイド鎖に由来する酸素濃度の測定、溶出物試験および血液評価を実施した。結果は、フィルター材の表面におけるエチレンオキサイド鎖に由来する酸素濃度は、11.7at.%、重量変化率が0.1%未満であり、白血球除去能が99.9%、血小板回収率が76%であった。なお、実施例1の結果も含めてこれ以降に記述されるT2緩和時間、溶出物試験結果、エチレンオキサイド鎖および/または水酸基に由来する表面酸素濃度、式(1)で計算されるP、ならびに血液評価結果については、表1にすべてまとめて示した。
[実施例2]
各モノマーの仕込み量比を、LEGA90mol%、4−ヒドロキシブチルアクリレート(以下、HBAと称す)10mol%とした以外は、実施例1と同様の方法で合成し、水への再沈殿、及びEtOH系の液−液相分離を繰り返して精製し、目的とするポリマー(以下、LBa9010と称す)を得た。得られたポリマーのGPC測定の結果、重量平均分子量は6.7×10であった。ポリマーのスピンースピン緩和時間(T2)は、実施例1と同様に測定した。
また、フィルター材の作製は、実施例1と同様の方法で行った。
一方、LBa9010は、エチレンオキサイド鎖と水酸基を有することから、エチレンオキサイド鎖と水酸基に由来する酸素の表面濃度の和は下記に示す式(6)から求めた。すなわち、全酸素の表面濃度から、エステル結合由来の酸素濃度を差し引いたものを、エチレンオキサイド鎖と水酸基に由来する酸素の表面濃度の和とした。
[O]PEO&OH = [O]total − [C]COO × 2 (6)
[O]PEO&OH: フィルター材の表面におけるエチレンオキサイド鎖と水酸基に由来する酸素濃度の和(単位:at.%)
[O]total : フィルター材表面の全酸素濃度(単位:at.%)
[C]COO : エステル結合由来の炭素の表面濃度(単位:at.%)
また、フィルター材の処理及び評価は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
各モノマーの仕込み比を、LEGA70mol%、HBA30mol%とし、実施例1と同様の方法で合成を行い、得られた重合液6に対し4の割合の重量になるようエタノールを加え静置した後、この混合液と等重量の水を加え再度静置して相分離を行なった。上清を廃棄し沈下している濃厚層に対し、2.3倍容量の水および3.3倍容量のエタノールを加え静置し、再度相分離を行なった。上清を廃棄し得られた濃厚層を回収し、乾燥させ、目的とするポリマー(以下、LBa7030と称す)を得た。このようにして得られたポリマーのGPC測定の結果、重量平均分子量は4.3×10であった。また、ポリマーのスピンースピン緩和時間(T2)の測定、フィルター材の作製、フィルター材の表面酸素濃度の測定は、実施例2と同様に行った。また、フィルター材の処理及び評価は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
各モノマーの仕込み比を、LEGA90mol%、オクトキシポリエチレングリコールアクリレート(ケン化価から求めたエチレンオキサイド鎖の繰り返し単位数の平均値は18.0)10mol%とした以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、得られた重合液に対し1/4重量の水を加え静置し相分離を行なった。上清を廃棄し沈下している濃厚層に対し、1/3重量のエタノールおよび1/16重量の水を加え静置し、再度相分離を行って得られた濃厚層に対して、さらにこれと同じ相分離をもう一度行なった。上清を廃棄し得られた濃厚層を回収し、乾燥させ、目的とするポリマー(以下、Loe18a9010と称す)を得た。得られたポリマーのGPC測定の結果、重量平均分子量は3.7×10であった。また、ポリマーのスピンースピン緩和時間(T2)の測定、フィルター材の作製、フィルター材の表面酸素濃度測定、フィルター材の処理及び評価について、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
各モノマーの仕込み比を、LEGA75mol%、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(以下、MTEGAと称す)25mol%とした以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、得られた重合液に対し1/6重量のエタノールおよび1/10重量の水を加え静置し相分離を行なった。上清を廃棄し沈下している濃厚層に対し、ほぼ等重量のエタノールを加え静置させ再度相分離を行った。上清を廃棄し得られた濃厚層に対して、さらにこれと同じ相分離をもう一度行なった。上清を廃棄し得られた濃厚層を回収し、乾燥させ、目的とするポリマー(以下、Lme3a7525と称す)を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量は4.1×10であった。また、ポリマーのスピンースピン緩和時間(T2)の測定、フィルター材の作製、フィルター材の表面酸素濃度測定、フィルター材の処理及び評価について、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
モノマーをテトラヒドロフルフリルアクリレートとした以外は、実施例1と同様の方法で合成し、水への再沈殿を繰り返して精製し、目的とするポリマー(以下、pTHFAと称す)を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量は4.1×10であった。また、ポリマーのスピンースピン緩和時間(T2)の測定、フィルター材の作製、フィルター材の表面酸素濃度測定、フィルター材の処理及び評価について、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
モノマーを2−メトキシエチルアクリレート(以下、MEAと称す)とした以外は、実施例1と同様の方法で合成し、水への再沈殿を繰り返して精製し、目的とするポリマー(以下、pMEAと称す)を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量は4.7×10であった。また、ポリマーのスピンースピン緩和時間(T2)の測定、フィルター材の作製、フィルター材の表面酸素濃度測定、フィルター材の処理及び評価について、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
モノマーをフェノキシエチルアクリレート(以下、PEAと称す)とした以外は、実施例1と同様の方法で合成し、水への再沈殿及びエタノール系での液−液相分離を繰り返し、目的とするポリマー(以下、pPEAと称す)を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量は10.3×10であった。ポリマーのスピンースピン緩和時間(T2)の測定はSolid echo法を用いた。また、フィルター材の作製、フィルター材の表面酸素濃度測定、フィルター材の処理及び評価について、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
モノマーをメトキシトリエチレングリコールアクリレート(以下、MTEGAと称す)とした以外は、実施例1と同様の方法で合成し、n−ヘキサンへの再沈殿を繰り返してポリマー(以下、pMTEGAと称す)を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量は5.0×10であった。また、ポリマーのスピンースピン緩和時間(T2)測定、フィルター材の作製、フィルター材の表面酸素濃度測定、フィルター材の処理及び重量変化率の評価は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。表1に示すように、溶出物試験の結果、フィルター材中のポリマーの殆どが溶出してしまうことがわかったため、血液評価を行わなかった。
本発明の白血球選択除去フィルター材は、ヒト全血に用いる白血球選択除去フィルター材、あるいは、血小板輸血や血液の体外循環白血球除去療法に用いることのできるフィルター材として、好適に利用できる。
Figure 2006035090

Claims (6)

  1. 多孔質素子から成る白血球選択除去フィルター基材の表面に、親水性基と強疎水性基の両方を有し、プロトンのスピン-スピン緩和時間(T2)が1ミリ秒以上20ミリ秒以下である水不溶性ポリマーを保持してなることを特徴とする、白血球選択除去フィルター材。
  2. 親水性基が、エチレンオキサイド鎖または/および水酸基であることを特徴とする、請求項1に記載の白血球選択除去フィルター材。
  3. 強疎水性基が、炭素数5以上のアルキル鎖であることを特徴とする、請求項1または2に記載の白血球選択除去フィルター材。
  4. ポリマーが、(メタ)アクリレート系ポリマーであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の白血球選択除去フィルター材。
  5. 下記式(1)で表わされるPが、20以上80以下であることを特徴とする、請求項2から4のいずれかに記載の白血球選択除去フィルター材。
    P = log(T2×100)×([O]PEO&OH) (1)
    T2:ポリマーにおけるプロトンのスピン-スピン緩和時間 (単位:ミリ秒)
    [O]PEO&OH : フィルター材の表面におけるエチレンオキサイド鎖および水酸基に由来する酸素濃度の和 (単位:at.%)
  6. 親水性基と強疎水性基の両方を有する水不溶性のポリマーであって、プロトンのスピン-スピン緩和時間(T2)が1ミリ秒以上20ミリ秒以下であることを特徴とする、生体適合性ポリマー。

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