<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
(1)窒化物結晶基板の製造方法
本実施形態では、以下に示すステップ1〜5を実施することで、窒化物結晶基板として、窒化ガリウム(GaN)の結晶からなる結晶基板(以下、GaN基板ともいう)を製造する例について説明する。
(ステップ1:種結晶基板の用意)
本実施形態では、GaN基板を製造する際、図1(a)に例示するような組立基板13を用いる。そこで本ステップでは、まず、組立基板13を構成する種結晶基板10(以下、基板10と略す。)を作製する際に用いられるベース材料として、AlxInyGa(1−x―y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)窒化物単結晶(例えばGaN単結晶)からなる小径種基板(結晶基板)を複数用意する。小径種基板は、作製しようとする基板10よりも大きな外径を有する円形の基板であって、例えば、サファイア基板等の下地基板上にGaN結晶をエピタキシャル成長させ、成長させた結晶を下地基板から切り出してその表面を研磨すること等により作製することができる。GaN単結晶は、気相成長法や液相成長法を問わず、公知の手法を用いて成長させることができる。現在の技術水準では、直径2インチ程度のものであれば、その主面(結晶成長の下地面)内におけるオフ角のばらつき、すなわち、オフ角の最大値と最小値との差が、例えば0.3°以内と比較的小さく、また、欠陥密度や不純物濃度の少ない良質な基板を、比較的安価に得ることができる。ここでオフ角とは、小径種基板の主面の法線方向と、小径種基板を構成するGaN単結晶の主軸方向(主面に最も近い低指数面の法線方向、すなわちオフ方向)と、のなす角をいう。
本実施形態では、一例として、直径が2インチ程度であって、厚さTが0.2〜1.0mmである基板を、小径種基板として用いる場合について説明する。また、本実施形態では、主面が極性面、非極性面(無極性面)、半極性面のうちいずれかの面であって、同一の結晶方位面を有するような基板群を、複数の小径種基板として用いる場合について説明する。例えば、小径種基板の主面すなわち結晶成長面が、GaN結晶のc面に対して平行であるか、或いは、この面に対して±5°以内、好ましくは±1°以内の傾斜を有するような基板群を、複数の小径種基板として用いる。また、本実施形態では、複数の小径種基板を用意する際、それぞれの小径種基板の主面内におけるオフ角のばらつき(オフ角の最大値と最小値との差)が0.3°以内、好ましくは0.15°以内であり、かつ、複数の小径種基板間におけるオフ角のばらつき(オフ角の最大値と最小値との差)が0.3°以内、好ましくは0.15°以内であるような基板群を、複数の小径種基板として用いる例について説明する。
なお、本明細書で用いる「極性面」という用語は、GaN単結晶の(0001)面および(000−1)面、すなわち±c面を指し、また、これらの面に対して完全に平行な面だけでなく、上述のように、これらの面に対してある程度の傾斜を有する面を含み得る。この点は、本明細書において「非極性面」、「半極性面」という用語を用いる場合も同様である。すなわち、本明細書で用いる「非極性面」という用語は、極性面に対して垂直な面を指し、また、これらの面に対して完全に平行な面だけでなく、これらの面に対して上記と同様の傾斜を有する面を含み得る。非極性面の一例として、GaN単結晶の(10−10)面(すなわちM面)や、GaN単結晶の(11−20)面(すなわちa面)が挙げられる。また、本明細書で用いる「半極性面」という用語は、極性面に対して所定角度傾いた面を指し、また、これらの面に対して完全に平行な面だけでなく、これらの面に対して上記と同様の傾斜を有する面を含み得る。半極性面の一例として、GaN単結晶の(20−21)面や、(11−22)面、(10−12)面が挙げられる。
また、本実施形態では、複数の小径種基板を用意する際、それぞれの小径種基板の結晶品質が同等であること、すなわち結晶品質が揃っていることが好ましい。例えば、それぞれの小径種基板の不純物濃度、転位密度、電気特性に差がないこと、すなわち、それぞれの小径種基板の不純物濃度、転位密度、電気特性が揃っていることが好ましい。
小径種基板を用意したら、例えば、劈開、レーザ加工法、放電加工法、機械加工法のような公知の手法を用いて小径種基板を加工することで、基板10が得られる。
本実施形態では、後述のようにステップ3において隣接する基板10間を多結晶で接合させることから、基板10の側面の結晶方位を不問とすることができる。このため、基板10の平面形状は、矩形(正方形や長方形)、三角形、平行四辺形、正六角形、台形、扇形、半円形等や、これらの形状を組み合わせた形状等の種々の形状を自由に選択することができる。本実施形態では、基板10の平面形状を矩形(正方形)とする場合、すなわち後述の領域17の平面形状を矩形とする場合について説明する。
また、本実施形態では、基板10の側面を、図1(b)に例示するように、隣接する基板10間の隙間15の幅、すなわち基板10間の接合部の幅(開口部の開口幅)が裏面側から表面側に向けて一定となるような垂直面とする場合について説明する。なお、基板10の側面を、図3(a)に例示するように、基板10間の接合部の幅が裏面側から表面側に向けて徐々に狭まるように傾斜を付けた面としてもよい。すなわち、基板10の側面形状を、基板10間の接合部(隙間15)における縦断面形状が台形となり、接合部の幅の大きさが表面近傍で極小となるような形状としてもよい。また、基板10の側面を、図3(b)に例示するように、基板10間の接合部の幅が裏面側から表面側に向けて徐々に広がるように傾斜を付けた面としてもよい。すなわち、基板10の側面形状を、基板10間の接合部における縦断面形状が逆台形となり、接合部の幅の大きさが裏面近傍で極小となるような形状としてもよい。また、複数の基板10は、垂直な側面を有する基板10と、図3(a)に例示する側面形状を有する基板10と、図3(b)に例示する側面形状を有する基板10と、が混在していてもよい。
また、本実施形態では、後述のようにステップ3において隣接する基板10間を多結晶で接合させることから、基板10の側面は、図1(c)に例示するような面粗さ(粗さ)が大きな面、すなわち粗い面(非鏡面)であってもよい。また、基板10の4方の側面でそれぞれ面粗さが異なっていてもよい。また、基板10の側面はアモルファス面であってもよい。なお、ここでいうアモルファス面とは、小径種基板の加工を例えばレーザ加工で行うことで生じたレーザ加工面(融解面)であり、例えば、結晶が一度融けた後に急激に固化することで形成されたアモルファス面等を含む面のことである。また、基板10の側面形状を、図1(d)に例示するような凹面と凸面とが交互に連なる等の非平面形状としてもよい。
なお、上述の加工を施すと、小径種基板の切粉が大量に発生して基板10に付着し、そのままでは後述の結晶成長に悪影響を及ぼす場合がある。そこで、切粉を除去する洗浄処理を行う。その手法としては、例えば、塩化水素(HCl)と過酸化水素水(H2O2)とを1対1で混合して得た薬液を用いたバブリング洗浄が挙げられる。
(ステップ2:種結晶基板の配置)
基板10を複数取得したら、ステップ2を行う。本ステップでは、GaN単結晶からなる複数の基板10を、融解させたガリウム(液状Ga)11を介して保持板12上に配置し、隣接する基板10の主面が互いに平行となり、それらの側面が互いに対向するように平面状に配置する。
また、本ステップでは、複数の基板10の主面内におけるオフ方向同士のなす角の絶対値が10°以下となるように、基板10を配置する。なお、オフ方向とは、上述のように小径種基板を構成するGaN単結晶の主軸方向を指し、例えば、小径種基板の主面がc面から所定の角度で傾斜した面である場合、小径種基板のc面の法線ベクトルを主面に投影(射影)したベクトルの向きで示されるものである。
図1(a)は、基板10の配列パターンの一例を示す平面図である。本実施形態のように、平面形状が矩形である基板10を用いる場合、基板10を配置することで、平面形状が矩形である輪郭形状を交互にずらすことなく組み合わせた格子パターンが構成される。すなわち、基板10間の接合部が互いに直交する格子パターンになる。また、平面形状が矩形である基板10を用いる場合、図2(a)に例示するような平面形状が矩形である輪郭形状を交互にずらしながら組み合わせたランニングボンドパターンを構成することも可能である。図2(a)に示す配列では、それぞれの基板10がレンガの積み上げのように互いに組み合っている。
図1(a)や図2(a)に示すような平面形状が円形である組立基板13を作製する場合、配列させた複数の基板10群のうち、組立基板13の周縁部を構成する基板10については、その周縁部を、組立基板13の外形に合わせて円弧状に切断加工する。この切断加工は、基板10を組み合わせる前、すなわちステップ1で実施してもよく、組み合わせた後、すなわち本ステップで実施してもよい。この切断加工は、レーザ加工法や機械加工法のような公知の手法を用いて行うことができる。なお、この切断加工を実施したとしても、複数の基板10のうち、少なくとも組立基板13の周縁部以外の部分を構成する基板10は、平面形状が矩形である主面を有する。
なお、ここでいう「隣接する基板10の主面が互いに平行となるように配置する」とは、隣接する基板10の主面同士が、完全に同一平面上に配置される場合だけでなく、これらの面の高さに僅かな差がある場合や、これらの面が互いに僅かな傾きを持って配置される場合を含むものとする。すなわち、隣接する基板10を、これらの主面がなるべく同じ高さとなり、また、なるべく平行となるように配置することを意味する。但し、隣接する基板10の主面の高さに差がある場合であっても、その大きさは、最も大きい箇所で例えば100μm以下、好ましくは50μm以下とするのが望ましい。また、隣接する基板10の主面間に傾きが生じた場合であっても、その大きさは、最も大きい面で例えば1°以下、好ましくは0.5°以下とするのが望ましい。
また、ここでいう「隣接する基板10の側面が互いに対向するように配置する」とは、隣接する基板10の側面間に隙間15が形成されるように対向させて配置することを意味する。但し、隙間15(隙間15の幅)が大きすぎると、後述するステップ3を実施した際に、隣接する基板10間がその界面で接合しなかったり、接合したとしてもその強度が不足したりする場合がある。このため、隙間15は、隣接する基板10間をその界面で接合でき、かつ、所定の接合強度(例えば基板20の自立状態を維持することができる程度の接合強度)を得ることができる所定の大きさとする必要がある。隙間15の幅は、例えば10μm以上、好ましくは10μm以上100μm以下とすることができる。
後述するステップ3における取り扱いを容易とするため、複数の基板10は、例えば、平板として構成された保持板(支持板)12上に配置する。図1(b)に、複数の基板10が液状Ga11を介して保持板12上に配置されてなる組立基板13の断面構成を示す。本図に示すように、基板10は、その主面(結晶成長面)が上面となるように保持板12上に配置される。
液状Ga11は、保持板12と基板10とを一時的に接着させる接着剤として機能する。すなわち、液状Ga11は、後述するステップ3において、成膜室201内へ組立基板13を搬入し、隣接する基板10間の接合が開始されるまでの間、基板10を保持板12上へ固定し、基板10の位置ずれを防止するように機能する。Ga(融点約30℃)は、一度加熱して融解した後は、常温(20〜30℃の範囲内の所定の温度、例えば300K(ケルビン)、約27℃)において、過冷却状態で液状を維持することができる。このため、図6(a)に例示するように、室温下で保持板12上の所定位置に所定量の液状Ga11を塗布(滴下)することができる。
液状Ga11の塗布量を調整することで、後述のステップ3において生成されるGa蒸気の量(生成量)を調整することができる。これにより、GaN多結晶14を、隣接する基板10間でのみ成長させたり、隣接する基板10間をはみ出て、基板10の表面周縁部にも成長させたりすることが可能となる。
保持板12の材料としては、後述するステップ3での成膜温度、成膜雰囲気に耐えられる耐熱性、耐蝕性を有する材料を用いる必要がある。但し、液状Ga11は、後述するようにステップ3を実施することで自然と消滅する。このため、本実施形態で用いる保持板12の材料はその線膨張係数を不問とすることができ、また、保持板12を、基板10よりも表層が剥離しやすい材料で形成する必要もない。保持板12の材料として、等方性黒鉛、異方性黒鉛(パイロリティックグラファイト(PG))、パイロリティックボロンナイトライド(PBN)、シリコン(Si)、石英、炭化ケイ素(SiC)、サファイア等を用いることができる。また、保持板12の材料として、等方性黒鉛、Si、石英、SiC等の平板基材の表面を、PG等の耐蝕性に優れた材料により被覆(コーティング)してなる複合材料を用いてもよい。
(ステップ3:結晶成長による接合)
組立基板13の作製が完了したら、図7に示すHVPE装置200を用い、平面状に配置させた複数の基板10間に、窒化物多結晶であるGaN多結晶14を成長させる。本実施形態では、ステップ3として、隣接する基板10間にGaN多結晶14を成長させるステップ(ステップ3A)と、基板10の主面上にGaN単結晶膜18を成長させるとともに、GaN多結晶14上にさらにGaN多結晶14を成長させるステップ(ステップ3B)と、をこの順に連続して実施する場合について説明する。
<ステップ3A>
ステップ3A,3Bで用いるHVPE装置200は、石英等の耐熱性材料からなり、成膜室201が内部に構成された気密容器203を備えている。成膜室201内には、組立基板13や基板20を保持する平坦な支持面を有する加熱台としてのサセプタ208が設けられている。サセプタ208は、回転機構216が有する回転軸215に接続されており、回転自在に構成されている。気密容器203の一端には、成膜室201内へHClガス、アンモニア(NH3)ガス、窒素(N2)ガスを供給するガス供給管232a〜232cが接続されている。ガス供給管232cには水素(H2)ガスを供給するガス供給管232dが接続されている。ガス供給管232a〜232dには、上流側から順に、流量制御器241a〜241d、バルブ243a〜243dがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aの下流には、原料としてのGa(III族金属)の融液を収容するガス生成器233aが設けられている。ガス生成器233aには、HClガスとGa融液との反応により生成されたIII族金属のハロゲン化物、すなわち塩化ガリウム(GaCl)ガスを、サセプタ208上に保持された組立基板13等に向けて供給するノズル249aが接続されている。ガス供給管232b,232cの下流側には、これらのガス供給管から供給された各種ガスをサセプタ208上に保持された組立基板13等に向けて供給するノズル249b,249cがそれぞれ接続されている。気密容器203の他端には、成膜室201内を排気する排気管230が設けられている。排気管230にはポンプ231が設けられている。気密容器203の外周にはガス生成器233a内やサセプタ208上に保持された組立基板13等を所望の温度に加熱するゾーンヒータ207が、気密容器203内には成膜室201内の温度を測定する温度センサ209が、それぞれ設けられている。HVPE装置200が備える各部材は、コンピュータとして構成されたコントローラ280に接続されており、コントローラ280上で実行されるプログラムによって、後述する処理手順や処理条件が制御されるように構成されている。
ステップ3A,3Bを連続して実施する場合、上述のHVPE装置200を用い、例えば以下の処理手順で実施することができる。まず、ガス生成器233a内に原料としてGa融液を収容し、また、基板10の表面が成膜室201内の雰囲気中に露出するようにサセプタ208上に組立基板13を保持する(図6(b))。そして、成膜室201内の加熱および排気を実施しながら、成膜室201内へ、ガス供給管232bから窒素源としてのNH3ガスを供給するとともに、ガス供給管232c,232dからH2ガス(あるいは、H2ガスとN2ガスとの混合ガス)を供給する。なお、成膜処理の過程での基板10を構成する結晶の分解を防止する等のため、NH3ガスを、HClガスよりも先行して(例えば成膜室201内の加熱前から)供給することが好ましい。また、隣接する基板10の接合強度を面内でむらなく向上させるため、ステップ3A,3Bは、サセプタ208を回転させた状態で実施するのが好ましい。
このように少なくともNH3ガスを含む雰囲気中で組立基板13を加熱することで、まず、成膜室201内の昇温に伴って、液状Ga11が徐々に気化してGa蒸気となる。そして、このGa蒸気が、基板10の裏面側から主面(表面)側に向かって隣接する基板10間を流れる際、Ga蒸気と、基板10の表面側から供給したNH3ガスと、を隣接する基板10間で反応させ、隣接する基板10間(の界面)に、Gaの窒化物多結晶、すなわちGaN多結晶14を成長させる。図6(c)に、隣接する基板10間にGaN多結晶14を成長させた様子を示す。なお、液状Ga11は、ステップ3(少なくともステップ3A)を行うことで、例えばステップ3(ステップ3A)の昇温中に、その殆ど、或いは、全てが蒸発し、自然と消滅する。
このようにGaN多結晶14の成長は、液状Ga11の気化の開始(Ga蒸気の生成の開始)とほぼ同時に開始する。すなわち、ステップ3BにおけるGaN単結晶膜18の成長温度よりも低温の条件で開始する。
隣接する基板10間にGaN多結晶14を成長させることで、隣接する基板10は、その界面でGaN多結晶14によって互いに接合され、一体化した状態となる。その結果、隣接する基板10が接合されてなる基板20が得られる。この基板20は、主面に、GaN多結晶14からなり、切れ目なく連続するように配されたGaNの多結晶領域16(以下、領域16ともいう)と、この領域16によって区分けされる複数のGaNの単結晶領域17(基板10の主面(結晶成長面)、以下、領域17ともいう)と、を有する。領域16は、格子パターンまたはランニングボンドパターンを構成する。また、本実施形態では、上述のステップ1で主面がc面に対して平行な基板群を用意していることから、図4(a)に例示するように、基板20の領域17は全てc面となる。また、上述のステップ2で主面内におけるオフ方向同士のなす角の絶対値が10°以下となるように基板10を配置していることから、図5(a)に例示するように、基板20の領域17は、そのオフ方向同士のなす角が揃うこととなる。
上述のように、本ステップでは、基板10の裏面側から表面側に向かって隣接する基板10間を流れるGa蒸気と、基板10の表面側から供給されたNH3ガスと、を隣接する基板10間で反応させることで、GaN多結晶14を成長させている。このため、GaN多結晶14は、隣接する基板10間のうち基板10の表面側の部分に局在するように成長する。
また本ステップでは、GaN多結晶14は、基板10間を徐々に埋めるように成長する。基板10間にGaN多結晶14が成長すると、Ga蒸気は隣接する基板10間を流れる際、隣接する基板10間のうちGaN多結晶14が成長していない箇所を流れる(通過する)。その結果、Ga蒸気とNH3ガスとの反応が、隣接する基板10間のみならず、例えばすでに形成されたGaN多結晶14上においても生じることがある。例えば、GaN多結晶14は、厚さ方向における断面形状で組立基板13の表面側に盛り上がった(突出した)凸形状となるように成長することがある。すなわち、図6(c)に例示するように、領域16は、その表面が領域17の表面(基板10の主面)から突出するように形成された箇所が生じることがある。このように、GaN多結晶14(領域16)の厚さは不定となる。
また、ステップ2において液状Ga11の塗布量を多くすることで、GaN多結晶14を成長させる際、Ga蒸気の生成量が多くなる。このため、Ga蒸気を、基板10の表面周縁部等にも広がるように流したり、組立基板13の周縁部(基板20の周縁部を構成する基板10の周縁部)からもGa蒸気を流したりすることができる。これらの結果、図6(c)に示すように、基板10の表面周縁部等にGaN多結晶14を成長させたり、基板20の周縁部にGaN多結晶14を成長させたりすることもできる。
ステップ3Aを実施する際の処理条件としては、以下が例示される。
処理温度(組立基板13の温度):550〜1200℃、好ましくは、900〜1000℃
処理圧力(成膜室201内の圧力):90〜105kPa、好ましくは、90〜95kPa
NH3ガスの分圧:9〜20kPa
<ステップ3B>
少なくとも隣接する基板10間にGaN多結晶14が成長し、隣接する基板10間が互いに接合された状態となったら、ガス供給管232aからガス生成器233a内へHClガスの供給を開始し、組立基板13(基板10)の主面に対し、GaClガスとNH3ガスとを供給する。
これにより、領域17上にはGaNの単結晶がエピタキシャル成長してGaN単結晶膜18が成長し、領域16上にはGaN多結晶14がさらに成長する。本ステップでは、GaN単結晶膜18とGaN多結晶14とを同時に成長させている。図6(d)に、GaN単結晶膜18を成長させた様子を示す。なお、GaN単結晶膜18を有する基板20では、その主面の領域17は、GaN単結晶膜18の主面(表面)となる。
本ステップでは、GaN単結晶膜18とGaN多結晶14とを同時に成長させていることから、GaN多結晶14の縁部の形状、すなわちGaN単結晶膜18とGaN多結晶14との間の界面(領域16と領域17との間の界面)の形状が非直線形状となる。すなわち、GaN多結晶14(領域16)の幅方向における長さが不定となる。なお、ここでいう非直線形状の一例として、波状、ジグザグ状、鋸歯状、波状鋸歯縁状、歯牙縁状、これらの形状を組み合わせた形状が挙げられる。
また、通常、GaNの多結晶の成長速度は、GaNの単結晶の成長速度と同等か、或いは、それよりも速いことから、GaN単結晶膜18の成長中においても、領域16の表面は、領域17の表面から突出した状態を維持する。その結果、図6(d)に示すように、GaN単結晶膜18を有する基板20においても、領域16は、その表面が領域17の表面から突出している。
ステップ3Bを実施する際の処理条件としては、以下が例示される。
成膜温度(組立基板の温度):500〜1100℃、好ましくは、900〜1100℃
成膜圧力(成膜室内の圧力):90〜105kPa、好ましくは、90〜95kPa
GaClガスの分圧:1〜15kPa
N2ガスの分圧/H2ガスの分圧:1〜20
NH3ガスの分圧:9〜20kPa
なお、GaN単結晶膜18の膜厚は、目的に応じ、所定の幅を有する膜厚帯から適宜選択することができ、例えば、基板20の直径をDcmとした場合に、10Dμm以上の所定の厚さとすることができる。GaN単結晶膜18の膜厚を10Dμm以上とすることで、特に基板10の側面形状が図3(a)に例示するような形状である場合においても、隣接する基板10の接合力を更に高めることができ、基板20の自立状態の維持が容易となる。
なお、GaN単結晶膜18の膜厚について特に上限はないが、ここで行う結晶成長は、あくまでも複数の基板10を接合させて自立可能な状態とする目的に止めておくようにしてもよい。言い換えれば、GaN単結晶膜18の膜厚は、後述するステップ4において、互いに接合された基板10からなる基板20を保持板12から取り外した状態であっても、隣接する基板10の接合状態、すなわち、基板20の自立状態が維持されるのに必要かつ最小の厚さに止めておくようにしてもよい。本実施形態のように、本格的な結晶成長工程としてステップ5を別途行うのであれば、ステップ3Bで成長させるGaN単結晶膜18の膜厚を厚くしすぎると、成膜に用いる各種ガスの浪費や、GaN基板のトータルでの生産性低下を招いてしまう場合があるためである。このような観点から、GaN単結晶膜18の膜厚は、例えば、基板20の外径をDcmとした場合に、100Dμm以下の厚さとしてもよい。
これらのことから、本実施形態では、基板10の外径が2インチ、基板20の外径が6〜8インチである場合、GaN単結晶膜18の膜厚は、例えば150μm以上2mm以下の範囲内の厚さとすることができる。
GaN単結晶膜18の成長が完了したら、成膜室201内へNH3ガス、N2ガスを供給し、成膜室201内を排気した状態で、ガス生成器233a内へのHClガスの供給、成膜室201内へのH2ガスの供給、ヒータ207による加熱をそれぞれ停止する。そして、成膜室201内の温度が500℃以下となったらNH3ガスの供給を停止し、その後、成膜室201内の雰囲気をN2ガスへ置換して大気圧に復帰させるとともに、成膜室201内を搬出可能な温度にまで低下させた後、成膜室201内から組立基板13を搬出する。
(ステップ4:保持板取り外し)
ステップ3が終了した後、図6(e)に示すように、隣接する基板10が接合されてなる基板20を保持板12から取り外す(基板20を自立させる)。上述したように、ステップ3を行うことで、液状Ga11はその殆ど、或いは、全てが蒸発し、自然と消滅する。すなわち、基板20は、図6(f)に示すように、自然と自立した状態となる。また、基板20の裏面から接着剤などを除去する研磨ステップや洗浄ステップも不要となるか、或いは、これらのステップの実施が必要であるとしてもその作業負担を大幅に低減させることが可能となる。
(ステップ5:結晶成長、切り出し)
本ステップでは、図7に示すHVPE装置200を再び用い、ステップ3と同様の処理手順により、自立した状態の基板20の主面上に、本格成長膜としてのGaN単結晶(GaN単結晶膜)21を成長させる(本格成長ステップ)。すなわち、自立した状態の基板20をGaClガスとNH3ガスとを含む雰囲気中で加熱する。本ステップでは、図8(a)に示すように、自立した状態の基板20を、サセプタ208上に直接載置し、ヒータ207からの熱により加熱する。なお、自立した状態の基板20を、サセプタ208上に配設した基板支持部材等の冶具上に載置し、ヒータ207からの熱により加熱してもよい。
本ステップを行うことで、基板20の領域17上(GaN単結晶膜18の主面上)にはGaN単結晶21が成長し、領域16上にはGaN多結晶14が成長する。GaN単結晶21を成長させた後においても、領域16の表面は、領域17の表面から突出した状態を維持する。図8(b)に、気相成長法により、基板20の領域17上にGaN単結晶21が厚く成長し、領域16上にGaN多結晶14が厚く成長した様子を示す。
ステップ5を実施する際の処理条件としては、以下が例示される。
成膜温度(結晶成長用基板の温度):980〜1100℃
成膜圧力(成膜室内の圧力):90〜105kPa、好ましくは、90〜95kPa
GaClガスの分圧:1.5〜15kPa
NH3ガスの分圧/GaClガスの分圧:4〜20
N2ガスの分圧/H2ガスの分圧:0〜1
GaN単結晶21を成長させた後、ステップ3(ステップ3B)終了時と同様の処理手順により成膜処理を停止し、GaN単結晶21が成長した基板20を成膜室201内から搬出する。その後、GaN単結晶21をスライスすることにより、図8(c)に示すように、1枚以上のGaN基板30を得ることができる(切り出しステップ)。その後、切り出したGaN基板30の表面を研磨する(研磨ステップ)。
(2)窒化物結晶基板の構成
上述のステップ1〜5を実施することで、図9(a)(b)に平面構成図を例示するような、窒化物結晶からなり、連続する領域16と、領域16によって区分けされる複数の領域17と、を主面に有するGaN基板30が得られる。なお、上述のステップ3Bを実施した場合には、領域16の縁部の形状(すなわち領域16と領域17との間の界面の形状)が非直線形状となり、領域16の幅方向における長さが不定となる。すなわち、上述のステップ3Bを行った場合は、領域16の幅は、上述の隙間15の幅と同じになる箇所もあるし、隙間15の幅よりも大きくなる箇所もある。領域16の幅(最大幅)は例えば2mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下であるのが望ましい。なお、基板20とGaN単結晶21との積層構造全体をGaN基板30と考えることもできる。GaN単結晶21からGaN基板30を切り出す場合には、切り出したGaN基板30やGaN基板30を切り出した後の基板20を用いてステップ5を再実施することもできる。
図8(c)に断面構成図を示すように、GaN基板30においては、領域16は、GaN基板30の表裏を貫くように形成されている。すなわち、領域16は、GaN基板30の裏面側から表面側にわたって、隣接する領域17間を埋め込むように形成されている。また、領域16は、その表裏を貫く貫通ピット等の貫通孔や、表裏を貫く極性反転領域(Inversion Domain:ID)を内包しない。また、領域16は、その表面に複数のIDが集まった領域(IDの密集領域)を有さない。
また、GaN基板30においては、領域17の表面と領域16の表面とで平坦な面(面一の面)を構成している。すなわち、領域17の厚さと領域16の厚さとが揃っている。なお、ここでいう「領域17の厚さと領域16の厚さとが揃っている」とは、これらの厚さ同士が完全に同一の場合だけでなく、これらの厚さにわずかな差がある場合も含むものとする。例えば、領域17の厚さと領域16の厚さとの差が20μm以内、好ましくは10μm以内である場合も含むものとする。領域17の厚さと領域16の厚さとを揃えることで、隣接する領域17間の接合強度の低下や、例えばGaN基板30を用いてステップ5を再実施した場合においてステップ5で成長させるGaN単結晶21の品質の低下を抑制することができる。
(3)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
(a)複数の基板10を、融解させたGa(液状Ga)11を用いて保持板12上に配置して組立基板13を作製し、この組立基板13を少なくとも窒素源を含む雰囲気中で加熱することで、隣接する基板10間を多結晶で接合させることができる。図11(a)は、液状Gaを用いて隣接する種結晶基板間をGaNの多結晶で接合させることで得られた接合基板を用いて得られた窒化物結晶基板(結晶成長用基板)の一構成例を示す写真であり、図11(b)は図11(a)の点線箇所を拡大した写真である。このように接着剤として液状Gaを用いることで、隣接する種結晶基板間を多結晶で接合させることができることを確認済みである。
(b)また、隣接する基板10間を多結晶で接合することで、本実施形態の基板20においては、平面状に配置された基板10の主面、すなわち領域17が、連続する領域16によって区分けされ、少なくとも結晶性の観点からは完全に独立した状態とすることができる。この基板20を用いて結晶成長を行うと、領域16上には多結晶が成長し続けることになる。そのため、領域17上に成長する結晶と、それに隣接する領域17上に成長する結晶とは、これらの間に介在する多結晶により遮断され、相互作用のない状態がそれらの成長終了するまで維持されることになる。結果として、複数の領域17上に成長する結晶は、それぞれ、下地である基板10の主面の影響のみを主に受けながら、領域17内で独立してエピタキシャル成長することになる。
これに対し、隣接する基板10間を単結晶で接合させて得られた基板20を用いて結晶成長を行う場合は、上述の遮断効果が得られなくなる。というのも、この基板20を用いて結晶成長を行うと、領域17上に成長する結晶と、隣接する領域17上に成長する結晶とが、成長開始の直後から、或いは、成長の経過に伴って、一体化して1つの結晶になろうとする。この際、一体化しようとする結晶が相互作用し、それらの結晶性に影響を与える場合がある。例えば、基板10の主面の結晶方位に僅かな差(オフ方向やオフ角のばらつき)がある場合、この方位の差を減らそうとする方向に、すなわち、成長面を平坦化させる方向に、結晶内部に応力が発生する。この応力は、基板20上に成長する結晶の品質低下を招いたり、結晶成長後の基板20に反りを生じさせたりする要因となる。
(c)隣接する基板10間を多結晶で接合させることから、基板10の側面について、その結晶方位を不問とすることができる。本実施形態によれば、同一の組立基板13内に例えばM面同士で対向させた箇所とa面同士で対向させた箇所とが含まれる場合(異なる等価面同士(2種以上の等価面)で対向させた箇所を含む場合)や、非等価面で対向させた箇所を含む場合等であっても、隣接する基板10間の接合強度を、基板20の面内にわたって略均等な強度とすることが可能となる。
このことは、基板20を、大径の、例えば100mm以上の外径を有する自立基板とする場合に、特に有利に働く。というのも、平面配置した複数の基板10を単結晶で接合する場合、同一の組立基板13内に異なる等価面同士で対向させた箇所を含むと、基板20内の接合強度に大きな開きが生じる可能性がある。この要因の1つとしては、例えば、M面がa面に比べて劈開しやすい等、結晶の強度には結晶方位に応じた異方性があることが挙げられる。また、結晶の成長レートが結晶方位によって異なることも、接合強度に大きな開きを生じさせる他の要因として挙げられる。基板10間の接合強度が大きく異なると、基板20の自立状態の維持や取り扱いが難しくなり、特に大径化させた場合にそれが顕著となる。また、上述の非等価面で対向させた箇所を含む場合は、そもそも単結晶を成長させることによっては実現が不可能である。
(d)上述したように、基板10の側面の結晶方位を選ばないことから、基板10の側面を、図1(c)に例示するような非鏡面としたり、図1(d)に例示するような凹面と凸面とが交互に連なる等の非平面形状としたりすることも可能となる。これらの場合、基板10が有する一つの側面内に、極性面、複数種類の非極性面、複数種類の半極性面およびアモルファス面からなる群より選択される2種以上の面が混在する可能性がある。本実施形態によれば、このような場合であっても、隣接する基板10を、確実かつ略均等な強度で接合することが可能となる。なお、基板10の側面を図1(d)に例示するような形状とすることで、隣接する基板10間で側面同士を互いに噛み合わせる(嵌合させる)ことができ、基板10を保持板12上に配列させた状態での位置ずれ、すなわち、気相成長前における基板10の位置ずれを抑制することが可能となる。また、隣接する基板10間で側面同士を互いに嵌合させることで、基板10間の接合強度を高めることができ、最終的に得られる基板30の自立状態を維持しやすくなる。
(e)上述したように隣接する基板10間を多結晶で接合させることから、基板10を接合させて大径の基板20を作製する際に、基板10の平面視形状、すなわち、領域17の平面形状を、自由に選択することができる。すなわち、隣接する基板10間を単結晶により接合させて基板20を大径化させる場合には、基板10の平面視形状を例えば正六角形等とする必要があるのに対し、基板10間を多結晶で接合させる場合にはこのような制限がない。これは、基板10間を多結晶で接合させる場合には、その接合強度が、基板10の側面の結晶方位に依存しないという上述の特性により得られる効果である。
例えば、基板10の成長面(主面)をc面とし、その平面視形状を矩形とする場合を考える。この場合、基板10の一部の側面はM面となり、それに直交する側面はa面となる等し、4方の側面全てを等価面とすることは不可能となる。そのため、このような基板10を単結晶で接合させて基板20を得ようとする場合、基板20内に、異なる等価面同士で対向させて接合した箇所が含まれたり、非等価面で対向させて接合した箇所が含まれたりすることになる。この場合、接合強度の関係から、最終的に得られる基板30を自立基板とすることは困難となる場合があるのは上述した通りである。また、基板10の側面の結晶方位によっては、そもそも単結晶による接合は不可能となる場合もある。
また、発明者等の鋭意研究によれば、単結晶接合により大径の自立可能な基板20(基板30)を得ようとする場合、基板20内における基板10間の接合を1種類の等価面とするように、例えば、全てをM面同士の接合、或いは、全てをa面同士の接合とするように、基板10の平面視形状を適正に選択する必要があることが分かっている。基板20内における基板10間の接合を1種類の等価面とするには、基板10の平面視形状を、正六角形、平行四辺形(内角60°、120°)、台形(内角60°、120°)、正三角形のいずれかから選択する必要があるが、この場合、基板10の加工に高い精度が求められ、製造コストの増加を招きやすいという課題がある。また、基板10間の接合部が連続的に連なることによって描かれるパターンを、接合部が直交する格子パターン等とすることが難しい、すなわち、上述のパターンがハニカムパターン等に限定されるという課題もある。
これに対し、隣接する基板10を多結晶で接合する本実施形態では、基板10の平面視形状を矩形とする場合であっても、基板10間を確実かつ略均等な強度で接合することが可能であることから、最終的に得られる基板30を、例えば100mm以上の外径を有する大径の自立基板とすることが可能となる。また、複数の領域17のうち、少なくとも基板20の周縁部以外の部分を構成する領域の面積を100mm2以上とすることが可能となる。さらに、GaN基板30(基板20)の平面積に対する領域16の総平面積の割合を1%以下、好ましくは0.2%以下にすることが可能となる。すなわち、GaN基板30の平面積に対する領域17の総平面積の割合を99%以上にする、言い換えると、GaN基板30の有効面積を99%以上にすることが可能となる。また、本実施形態によれば、基板10の加工について、単結晶接合の場合ほどの加工精度は要求されないことから、製造コストを大幅に抑えることも可能となる。また、本実施形態によれば、基板10間の接合部が連続的に連なることによって描かれるパターンを、単結晶接合の場合では難しかった格子パターンとすることも容易となるため、単結晶接合の場合よりも上述のパターンの設計の自由度が高くなる。例えば、上述のパターンを、例えば基板30上にデバイスを作製する際に用いるマスクパターンに合わせて容易に変更することが可能となる。
(f)本実施形態では、ステップ3Bを行い、GaN単結晶膜18とGaN多結晶14とを同時に成長させていることから、図9に示すように領域16の縁部が非直線形状となり、領域16が領域17との界面に噛み込まれている。このため、領域16の縁部が直線形状である場合よりも、領域16と領域17との界面の面積(接合面積)を増やすことができ、その結果、領域16と領域17との界面の接合強度を高めることができる。このため、基板20、GaN基板30において、隣接する領域17間の接合強度を高めることが可能となる。また、GaN単結晶膜18とGaN多結晶14との同時成長により、GaN単結晶膜18とGaN多結晶14との界面における酸素(O)等の不純物の濃度、欠陥等を、例えば基板10とGaN多結晶14との間の界面における不純物濃度、欠陥等よりも少なくすることができると考えられ、このことからも、隣接する領域17間の接合強度を高めることができると考えられる。
(g)基板20において、領域16の表面は領域17の表面から突出した状態となっていることから、GaN単結晶膜18やGaN単結晶21を成長させる際、GaN単結晶21等は、先行して成長したGaN多結晶14に囲われた領域内に成長することとなる。このため、領域16の幅を狭くした場合であっても、GaN単結晶21等の成長過程で隣接する領域17が繋がってしまうことを確実に抑制できる。その結果、上述の遮断効果を確実に得ることができる。
(h)また、上述の遮断効果により、領域16(GaN多結晶14)の表面に、断面が例えばV字状の溝部(以下、この溝部をV溝とも称する)が形成されにくくなる。上述のように領域16の表面を領域17の表面から突出させることで、例えば、隣接する領域17間で各領域17の主面の結晶方位に差がある場合(すなわち各基板10の主面の結晶方位に差がある場合)のような、単結晶接合ではその接合部にV溝が形成される接合条件であっても、領域16にV溝が形成されることを確実に抑制することができる。なお、V溝は、結晶成長時に一時的に発生するいわゆる「ピット」とは全く異なるものである。V溝は、接合部における結晶成長方向の相違により生じるものであるのに対し、ピットは、下地の表面状態の影響により結晶成長速度が局所的に異なることで一時的に発生するものである。このように、領域16において、表面(内面)がファセット面であるV溝の形成を抑制することで、結晶成長時に例えば成膜室201の雰囲気中に存在する酸素等の不純物が、V溝の表面から領域16内に取り込まれることを抑制することができる。これにより、領域16におけるO濃度等の不純物濃度の増加を抑制でき、領域16と領域17との間の界面において、酸素が混入している領域を少なくすることができる。その結果、GaN基板30(基板20)を用いてデバイスの作製を行う際、領域17の外周端に近いところまで(領域16との境目により近い箇所まで)、領域17を使用することができるようになる。
(i)本実施形態では、隣接する基板10間を流れるGa蒸気の流量を増やしたり、流速を大きくしたりすることで、隣接する基板10間からGa蒸気が噴出するように、Ga蒸気を流すことができる。これにより、領域17の表面から突出する領域16の突出高さ(凸形状のGaN多結晶14の最大高さ)を大きくすることができ、上述の遮断効果をより確実に得ることができる。なお、上述のGa蒸気の流量の調整は、例えば液状Ga11の塗布量を調整することにより行うことができる。また、上述のGa蒸気の流速の調整は、例えば、液状Ga11の塗布量や、隙間15の幅を調整することによって行うことができる。
(j)領域16は貫通ピット等の貫通孔等を内包していない。これにより、GaN基板30を用いた後工程において、例えばスピンコート法によりGaN基板30上にレジスト膜を設ける場合にレジスト液が領域16から漏れ落ちたり、GaN基板30を載置台上に真空吸着させた状態で成膜装置等へ搬送する際、領域16から空気が漏れてGaN基板30の載置台への吸着を阻害したりすることを抑制できる。
(k)基板20を構成する全ての基板10の主面をc面とし、基板10(或いはその上にエピ成長した単結晶、すなわち領域17)と、基板10を接合する領域16(或いはその上にさらに成長した多結晶)と、を同じ窒化物結晶から構成する場合(例えばともにGaN結晶から構成する場合)、これらは殆ど同等の線膨張係数を有する。そのため、基板20(基板30)に温度変化が生じた際においても、基板20(基板30)に反りが生じにくくなる。また、領域16と領域17とを同じ窒化物結晶で構成することで、これらは殆ど同等の熱伝導率を有する。そのため、加熱による基板20等の昇降温時において、基板20等の表面温度を面内均一にすることができる。
(l)本実施形態では、ステップ2において隣接する基板10間の隙間15の幅を10μm以上、好ましくは300μm以上2mm以下としている。これにより、隣接する基板10間にGaN多結晶14を確実に成長させることができる。隙間15の幅が10μm未満であると、基板10の側面から単結晶が成長して隣接する基板10間が単結晶で繋がることがあり、上述の遮断効果が得られないことがある。隙間15の幅を10μm以上とすることで、上述の遮断効果を確実に得ることができ、300μm以上とすることで、上述の遮断効果をより確実に得ることができる。隙間15の幅が2mmを超えると、隣接する基板10間の隙間15の少なくとも表面をGaN多結晶14で埋めることができないことがある。隙間15の幅を2mm以下にすることで、この課題を解決することができる。
(m)上述したように、基板10の側面の結晶方位を選ばないことから、基板10の側面を、図3(a)に例示するような基板10間の接合部の幅が裏面側から表面側に向けて徐々に狭まるように傾斜を付けた面としたり、図3(b)に例示するように、基板10間の接合部の幅が裏面側から表面側に向けて徐々に広がるように傾斜を付けた面としたりすることも可能となる。
基板10の側面を図3(a)に例示するような面とした場合、領域16の幅を最低限に抑えることができ、基板30上にデバイスを作製する際に、有効面積が減少しにくいという効果が得られる。ただし、基板10の側面を図3(a)に例示する面とすると、基板20の裏面側に結晶で埋まらない溝22ができるため、隣接する基板10間の接合強度が不足しやすくなる。このため、接合強度を高める観点からは、基板10の側面を図3(a)に例示する面とするよりも図3(b)に例示する面とする方が好ましい。
基板10の側面を図3(b)に例示する面とした場合、接合ステップの開始直後(例えば成膜室201内の加熱開始直後)に基板10間の接合部の底部でGaN多結晶14が成長する。接合ステップでNH3ガスと一緒にGaClガスを流すようにすれば、初期成長させたGaN多結晶14をさらに成長させたり、このGaN多結晶14の周囲に単結晶を成長させたりすることができる。結果として、基板10間の接合部内(基板20の表面側に形成される溝)を結晶で隙間なく埋め込むことができ、接合強度を高めることが可能となる。ただし、基板10の側面を図3(b)に例示する面とした方が、図3(a)に例示する面とする場合よりも、領域16の幅が大きくなるため、上述の有効面積が減少することがある。このため、有効面積の減少の抑制の観点からは、基板10の側面を、図3(b)に例示する面とするよりも図3(a)に例示する面とする方が好ましい。
本実施形態のように基板10の側面を垂直面とすることで、図3(a)に例示する面とすることで得られる効果、図3(b)に例示する面とすることで得られる効果の両方の効果をバランスよく得ることが可能となる。
(n)本実施形態では、基板10と保持板12との接着に液状Ga11を用いていることから、接合ステップを実施することで液状Ga11はその殆ど、或いは、全てが蒸発し、自然と消滅する。そのため、接合状態となった基板10、すなわち、基板20は、保持板12から自然と自立することとなる。また、基板20の裏面から接着剤などを除去する研磨ステップや洗浄ステップも不要となるか、或いは、これらステップの実施が必要であるとしてもその作業負担を大幅に低減させることが可能となる。
(o)基板10(或いはその上にエピ成長した単結晶)と、基板10を接合する領域16(或いはその上にさらに成長した多結晶)と、を同じ窒化物結晶から構成する場合、これらは殆ど同等の耐加工性(研磨耐性)を有することになる。そのため、スラリーを用いた通常の研磨ステップを施すことにより、基板20(基板30)の表裏面を、それぞれの領域区分によらず連続した平滑な表面とすることが容易となる。
(p)領域16は、その存在を目視により容易に確認できる。そのため、デバイス製造には適さない領域を容易に把握することが可能となる。また、領域16が描くパターンを、基板30の結晶方位を把握するためのオリエンテーションフラットやノッチ等として代替利用することも可能となる。なお、基板30(基板20)を大径化させる程、すなわち、領域16が描くパターンが大きくなるほど、結晶方位の把握を正確に行うことが可能となる。
(q)本実施形態では、基板10を接合させて自立状態とするステップを経た後、本格成長ステップを実施するようにしている。この手法に対し、図13(a)に例示するように接着剤11aを用いて保持板12上に基板10を接着した後、その状態のまま、すなわち、本願発明のような自立状態とするステップを経由せずに本格成長ステップを実施する手法も考えられる。しかしながら、この代替手法では、保持板12と基板10との間の熱伝達が、これらの間に介在する接着剤11aによって阻害され、本格成長ステップにおいて、基板10の加熱効率や冷却効率が低下しやすくなるという課題がある。また、保持板12と基板10との間の熱伝達効率は、接着剤11aの塗布量や塗布位置などによって大きな影響を受けることから、この代替手法では、基板10間における加熱効率の均一性が低下しやすくなり、このため、基板20の面内温度均一性が低下しやすくなるといった課題もある。これらの結果、生産性が低下し、また、本格成長ステップで成長させるGaN単結晶21の品質が低下することがある。
接着剤の塗布量や塗布位置のばらつきを避けるため、図13(b)に例示するように、保持板12上に、接着層11bを一様な厚さで設け、その上に基板10を平面配置するというさらなる代替手法も考えられる。しかしながら、この手法では、本格成長ステップで成長させる結晶への接着層11bによる悪影響、例えば、接着層11bに含まれる成分の結晶中への拡散等を避けるため、接合部に彫り込み部19aを設けて接着層11bを除去したり、図13(c)に例示するように接合部にマスク19bを設けて接着剤(接着層)11cの影響を遮断したりする必要が生じ、製造プロセスの複雑化やコスト増加を招いてしまう恐れがある。また、彫り込み部19aを設ける上述の手法では、熱伝導率の低い空隙19cが基板10間に形成されることから、基板10間での熱交換が行われにくくなり、基板10間の温度均一性が低下しやすくなる。結果として、本格成長ステップで成長させる結晶への悪影響、例えば、結晶性や成長レート等の面内均一性低下を招く恐れもある。
これに対し、本実施形態では、基板10を接合させた後、自立状態とするステップを経た後に本格成長ステップを実施することから、図8(a)に示すように、本格成長ステップにおいて、基板20をサセプタ208上に直接載置することができ、これらの課題を回避することが可能となる。
(r)本実施形態では、基板10,基板20の+c面(Ga極性面)に対してGaNの結晶を成長させるプロセスでステップ3,5を実施している。この手法に対し、基板10の−c面(N極性面)に対して原料ガス等を供給することで隣接する基板10間や基板10の−c面上に多結晶のIII族窒化物半導体(GaN多結晶)を形成して隣接する基板10間を接合し、その後、基板10の+c面に対して原料ガス等を供給して+c面上に単結晶のIII族窒化物半導体(GaN単結晶)を形成する手法も考えられる。
しかしながら、この代替手法では、GaN多結晶は、−c面側から+c面側に向かって成長することから、基板10間の−c面側に局在しやすくなるという課題がある。このため、隣接する基板10間に成長するGaN多結晶は、その表面が+c面まで達しないか、+c面と面一の面になるまでしか成長せず、本実施形態のようにGaN多結晶が+c面から突出しない。その結果、特に隣接する基板10間の隙間15の幅が狭い場合、GaN単結晶21等の成長中においてGaN単結晶21がオーバーハングして隣接する領域17が繋がってしまい、上述の遮断効果が得られないことがある。
またこの代替手法では、例えば、GaN多結晶を成長させる際、基板10の+c面がサセプタ208と対向するように基板10がサセプタ208上に配置されることから、基板10の+c面がサセプタ208からの伝熱等によってサーマルエッチングされるおそれがある。また例えば、GaN多結晶を成長させる際、基板10の+c面が接着剤を介してサセプタ208に固定されることから、基板10の+c面上に接着剤が付着することがある。これらの結果、この基板10の+c面上に成長させた結晶は、品質が低いものとなることがある。またこの代替手法のように、基板10の−c面上にもGaN多結晶を成長させると、−c面上に成長させたGaN多結晶を除去する研磨等の加工も必要となる。
これに対し、本実施形態では、同一の所定の極性面(+c面、Ga極性面)にGaNの結晶を成長させるプロセスでステップ3,5を実施していることから、上述の課題を回避することが可能となる。
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
(a)上述の実施形態では、ステップ3において、ステップ3Aとステップ3Bとを実施する場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、ステップ3では、ステップ3Aのみを実施し、ステップ3Bを省略してもよい。この場合、ステップ3(ステップ3A)は、基板10の裏面側に液状Ga11を配置した状態で、GaClガスを流すことなく、少なくともNH3ガスを流しながら、基板10を常温から例えば1000℃程度にまで昇温することが可能な加熱装置等の装置を用いて実施することができる。すなわち、上述のHVPE装置200よりも簡素かつ低コストな加熱装置を用いて実施することができる。また、このような加熱装置は、一度に複数の基板10の処理を実施可能に構成されていてもよく、これにより、基板10の処理コストを低減することもできる。また、ステップ3Aを、HVPE装置200を用いて実施してもよく、この場合、Ga生成器233a内にGa融液を収容する手順や、NH3ガスをHClガスよりも先行して供給する手順等を省略できる。
このように本発明では、少なくともステップ3Aを実施すれば、隣接する基板10間をGaN多結晶14で接合して一体化させることができる。すなわち、GaN単結晶からなる基板10を多結晶で接合する場合には、基板10の裏面側に液状Ga11を配置した状態で、GaClガスを流すことなく、少なくともNH3ガスを流しながら、基板10を常温から例えば1000℃程度にまで昇温するだけで、隣接する基板10間を接合することができる。この場合、領域16の縁部の形状は直線形状となり、領域16の幅(最大幅)は、上述の隙間15の幅と同じ大きさとなる。
これにより、本実施形態では、基板10間を単結晶で接合する場合に比べて、基板10間の接合を簡素な手順かつ低コストで行うことが可能である。というのも、GaN単結晶からなる基板10を単結晶で接合する場合には、HVPE装置200を用い、例えば1000〜1200℃の温度に加熱した基板10(組立基板13)に対し、GaClガスとNH3ガスとを一緒に流す必要があるからである。また、本実施形態では、接合の際にGaClガスを用いる必要がなく、また、その手順が単純であることから、接合に関するコストを低く抑えることが可能である。
なお、上述の実施形態のように、ステップ3A,3Bを実施する場合の方が、ステップ3Aのみを実施する場合に比べ、基板10間の接合強度を高めることが可能になる点で好ましいことは上述した通りである。
(b)上述の実施形態では、ステップ3において、ステップ3Aとステップ3Bとを同一のHVPE装置200を用いて連続して実施する場合を例に説明したが、これに限定されない。すなわち、ステップ3では、ステップ3Aとステップ3Bとをそれぞれ異なる装置を用いて実施してもよい。例えば、ステップ3Aは、上述の加熱装置を用いて実施し、ステップ3Bは上述のHVPE装置200を用いて実施してもよい。これにより、ステップ3A,3Bの両方を、HVPE装置200を用いて実施する場合よりも、基板10間の接合をより簡素な手順かつ低コストで行うことができる。
(c)上述の実施形態では、複数の基板10の主面が同一の結晶方位面を有する場合を例に説明したが、これに限定されない。本発明では、上述したように、隣接する基板10間を多結晶で接合し、領域17上における結晶成長は、連続する領域16によって区分けされ、独立した状態となる。
このため、基板10の主面については、その平面形状だけでなく、その結晶方位を不問とすることができる。図4(b)に例示するように、複数の基板10の主面は異なる結晶方位面を有していてもよい。なお、「複数の基板10が異なる結晶方位面を有する」とは、複数の基板10の主面が、極性面と非極性面と半極性面とを有する場合の他、複数の基板10の主面が、極性面と、非極性面または半極性面のうち少なくともいずれかの面と、を有する場合、複数の基板10の主面が、複数種類の非極性面または複数種類の半極性面のうち、2種以上の面を有する場合を含むことを意味する。
また、同様の理由により、本発明では、図5(b)に例示するように、複数の基板10は、主面内におけるオフ方向同士のなす角の絶対値が10°より大きいものを含んでいてもよい。すなわち、複数の基板10は、それぞれの主面内におけるオフ方向、オフ角が大きく異なるものを含んでいてもよい。この場合、オフ方向同士のなす角の絶対値が大きな複数の基板10の主面の結晶方位は、それぞれ同一の結晶方位面であってもよいし、異なる結晶方位面であってもよい。
なお、基板10を単結晶で接合させて得られた基板20を用いて結晶成長を行う場合は、組立基板13(基板20)の主面が同一の結晶方位面となるように基板10を選定したり、基板10の主面のオフ角の絶対値を揃えた上で、さらに、オフ角のばらつきが隣接する基板10間で同様の傾向となるように、基板10の配置を工夫したりする必要がある。これに対し、本発明によれば、このような基板10の選定や配置を工夫しなくても、隣接する基板10間を接合することが可能となる。また、本発明によれば、図4(b)に例示するように、同一の基板20内に、領域17として例えば極性面(c面)を用意しつつ、他の領域17として例えば非極性面(a面やM面)や半極性面を用意したりすることもできる。このような、1つの主面内に結晶成長面として複数の結晶方位面を有する基板20は、結晶方位の異なる結晶を同一の成長条件下で同時に成長させることが可能である等のことから、研究用途等において、極めて有用であるといえる。
(d)また、上述したように、領域17上における結晶成長は、連続する領域16によって区分けされ、独立した状態となる。そのため、基板10間の結晶品質や、形成材料について不問とすることができる。例えば、基板10間の不純物濃度(例えばSi濃度、O濃度、Fe濃度、Mg濃度、Ge濃度)が異なっていたり、欠陥密度が異なっていたりしてもよい。また、基板10として、線膨張係数に大きな違いがない限り、GaNの単結晶からなる基板だけでなく、例えば、InGaNやAlNの単結晶からなる基板を組み合わせて用いることもできる。すなわち、複数の基板10はそれぞれ例えばAlxInyGa(1−x―y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の窒化物単結晶で形成されていればよい。このように、本発明では、ステップ3において結晶品質が異なる基板10や、異種材料からなる基板10を接合させることもできる。
(e)また、複数の基板10間の結晶品質や、形成材料について不問とすることができることから、例えば、組立基板13の中心部には結晶品質の良い基板10(例えば、不純物濃度や転位密度が低い基板10)を配置し、組立基板13の外周部には結晶品質が悪い基板10を配置すること等が可能となる。このような組立基板(額縁基板)13は、例えば結晶品質の良い基板10の大きさが所定の大きさよりも小さいため、そのままでは上述のような既存のHVPE装置200を使用することができないような場合に有効に用いることができる。
(f)上述の実施形態では、領域16(GaN多結晶14)が格子パターンやランニングボンドパターンを構成する場合について説明した。しかしながら、本発明は、このような態様に限定されず、領域16は、一の直線からなるパターンや、複数の直線を組み合わせたパターンを構成していればよい。例えば、領域16は、一の直線からなるパターン又は複数の直線を組み合わせたパターンであって、直線の少なくとも一端が組立基板13(基板20、GaN基板30)の外周端まで達しているパターンか、若しくは、組立基板13の内部で閉じた環状をなしているパターンを構成していればよい。すなわち、領域16は、直線であって少なくとも一端が組立基板13の外周端まで達している直線パターンか、平面形状が多角形である輪郭形状を有する多角パターンか、これらのパターンを組み合わせた複合パターンを構成していればよい。
上述のようなパターンを有する領域16を形成するために、組立基板13を、例えば図10(a)〜(d)に平面構成図で、図12に写真で示すような構成としてもよい。すなわち、組立基板13を、図10(a)や図12に示すように平面形状が円形の基板10と矩形の基板10とを組み合わせた構成としてもよい。また、組立基板13を、図10(b)に示すように平面形状が正方形の基板10と長方形の基板10とを組み合わせた構成としてもよい。また、図10(c)に示すように平面形状が半円状の基板10を組み合わせた構成としてもよい。さらにまた、組立基板13を、図10(d)に示すように平面形状が半円状の基板10や、平面形状が矩形の基板10を組み合わせた構成としてもよい。
特に、組立基板13を図10(d)に示すような構成とすることで、領域16のパターンが非線対称であって非回転対称であるパターンとなる。これにより、組立基板13(さらには基板20、GaN基板30)の表裏面の判別ができるとともに、組立基板13の主面(結晶成長面)内の結晶方位の特定を一義的に行うことが可能となる。
また例えば、基板10の平面形状を正六角形としてもよい。この場合、平面形状が円形である小径種基板から、基板10を、最大限の大きさで効率よく取得することが可能となる。また、ステップ2において基板10を同一平面上に配置させる際、その配列はハニカムパターンを構成することになり、複数の基板10は、平面視において相互に噛み合わさる(組み合う)ように配列することになる。これにより、配列させた複数の基板10に対して面内方向に沿って外力が加わったとき、その方向によらず、基板10の配列ずれを抑制することが可能となる。さらにまた、基板10を組み合わせたハニカムパターンは、基板20の主面の中心を通りこの主面に直交する軸を中心軸として基板20を一回転させたとき、2回、3回、6回の回転対称性を有する場合がある。この場合、2回よりも、3回、さらには6回の回転対称性を有する方が、基板20(基板30)の面内にわたりより均等に応力を分散させることが可能となる。その結果、基板20(基板30)をより割れにくい良質な基板とすることが可能となる。
(g)上述の実施形態では、基板10と保持板12との接着に液状Ga11を用いる場合について説明したが、このような態様に限定されず、融解させたインジウム(In)を用いて基板10と保持板12とを接着してもよい。In(融点約150℃)は常温において固体であることから、融解させたInを用いる場合は、保持板12上の所定位置に所定量の固体のInを載置して、保持板12を所定温度に加熱してInを融解させる必要がある。なお、保持板12の加熱は、保持板12上にInを載置する前から行ってもよい。保持板12の加熱は、平坦な支持面を有するホットプレート等の加熱装置を用いて行うことができる。Inの融点は150℃であることから、加熱装置による加熱を停止することで、融解させたInを固化させることができる。このため、融解させたInを用いる方が、液状Ga11を用いる場合よりも、基板10を配列させた状態での位置ずれ(気相成長前における位置ずれ)を抑制しやすくなる点で好ましい。接着剤として融解させたInを用いた場合には、隣接する基板10間はInNの多結晶によって接合されることとなる。また、接合ステップや本格成長ステップでNH3ガスと一緒にGaClガスを流すことで、InN多結晶上には、InGaN多結晶やGaN多結晶が成長する。すなわち、領域16はInxGa(1−x)N(0<x≦1)の多結晶で形成されることとなる。図11(c)は、融解させたInを用いて隣接する種結晶基板間をInNの多結晶で接合させることで得られた接合基板の一構成例を示す写真である。このように融解させたInを用いる場合であっても隣接する種結晶基板間を多結晶接合させることができることを確認済みである。また、この結晶成長用基板は、連続する目視可能な多結晶領域と、この多結晶領域によって区分けされる複数の単結晶領域と、を有すること、および、自立可能であることも確認済みである。
(h)上述の実施形態では、配置ステップ(ステップ2)において、複数の基板10を、これらの側面間に所定の大きさの隙間が形成されるように対向させて配置した。しかしながら、本発明は、このような態様に限定されず、複数の基板10をそれらの側面が互いに当接するように配置してもよい。この場合であっても、接合ステップ(ステップ3)において組立基板13が加熱されることで、隣接する基板10間に僅かな隙間ができ、この隙間から液状Ga11が気化したGa蒸気を流すことが可能である。その結果、隣接する基板10間をGaN多結晶14で接合させることができる。
(i)上述の実施形態では、ステップ3でGaN単結晶膜18を成長させる場合を例に説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。すなわち、隣接する基板10間を多結晶で接合することができれば、GaN単結晶膜18は成長させなくてもよい。
(j)上述の実施形態では、自立した基板20を用意し、これを用いてGaN単結晶21を成長させてGaN基板30を製造する場合について説明した。しかしながら、本発明はこのような態様に限定されない。すなわち、組立基板13を用意した後、組立基板13の主面(基板10の主面)上にGaN単結晶21を厚く成長させ、その後、GaN単結晶21をスライスすることで1枚以上のGaN基板30を取得するようにしてもよい。すなわち、基板20を自立させる工程を経ることなく、組立基板13の用意からGaN基板30の製造までを一貫して行うようにしてもよい。この場合であっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。但し、ステップ3を実施し、複数の基板10間がGaN多結晶14によって接合されてなる自立可能な接合基板を作製し、これを基板20として用いる方が、基板10の位置ずれ等を確実に防止でき、その取り扱いが容易となるとともに、基板20(基板10)の加熱効率、冷却効率の低下を抑制できる点から、好ましい。またこの場合、ステップ3の気相成長工程を省略してもよい。また、ステップ3,5の成長条件を上述のように異ならせ、これらのステップをそれぞれ省略せずに行うようにしてもよい。
(k)上述の実施形態では、領域16が連続する場合を例に説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。すなわち、領域16は、窒化物多結晶を含む窒化物結晶が連続して設けられていればよく、例えば、領域16中には窒化物単結晶(GaNの単結晶)が混ざっていてもよい。
(l)本発明は、GaNに限らず、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウム(InN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)等の窒化物結晶、すなわち、AlxInyGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式で表される窒化物結晶からなる基板を製造する際にも、好適に適用可能である。
(m)上述の実施形態では、ステップ3,5において結晶成長法としてハイドライド気相成長法(HVPE法)を用いる場合について説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、ステップ3,5のうちいずれか、或いは、両方において、有機金属気相成長法(MOCVD法)や酸化物気相成長法(OVPE法)等のHVPE法以外の結晶成長法を用いるようにしてもよい。この場合であっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
(付記1)
本発明の一態様によれば、
窒化物結晶からなる基板であって、
その主面に、連続する多結晶領域と、前記多結晶領域によって区分けされる複数の単結晶領域と、を有する窒化物結晶基板が提供される。好ましくは、前記多結晶領域は、その縁部が非直線形状(その縁部の幅が不定)である。
(付記2)
付記1の基板であって、好ましくは、
前記多結晶領域の(最大)幅が100μm以下である。
(付記3)
付記1または2の基板であって、好ましくは、
前記基板の平面積に対する前記単結晶領域の総平面積の割合が99%以上である。
(付記4)
付記1〜3のいずれかの基板であって、好ましくは、
複数の前記単結晶領域の中から任意に選択された隣接する前記単結晶領域の対向する側面は互いに等価面を有する。好ましくは、2種以上の等価面を含む。
(付記5)
付記1〜3のいずれかの基板であって、好ましくは、
複数の前記単結晶領域の中から任意に選択された隣接する前記単結晶領域の対向する側面は互いに非等価面を有する。
(付記6)
付記1〜5のいずれかの基板であって、好ましくは、
前記多結晶領域の表面には断面がV字状の溝部(V溝)が形成されていない。
(付記7)
付記1〜6のいずれかの基板であって、好ましくは、
前記多結晶領域は、前記基板の表裏を貫くように形成されており、
前記多結晶領域は、その表裏を貫く貫通孔を内包しない。
すなわち、前記多結晶領域は、前記基板の一方の主面側から他方の主面側にわたって隣接する前記単結晶領域間を埋めるように形成されており、
前記多結晶領域は、貫通孔を内包しない。
(付記8)
付記1〜7のいずれかの基板であって、好ましくは、
前記多結晶領域は、その表裏を貫く極性反転領域を内包しない。
また好ましくは、前記多結晶領域は、その表面に複数の極性反転領域が集まった領域を有さない。
(付記9)
付記1〜8のいずれかの基板であって、好ましくは、
複数の前記単結晶領域の表面は、同一の結晶方位面を有する。
(付記10)
付記1〜9のいずれかの基板であって、好ましくは、
複数の前記単結晶領域は、それぞれの主面内におけるオフ方向同士のなす角の絶対値が10°以下である。
(付記11)
付記1〜8のいずれかの基板であって、好ましくは、
複数の前記単結晶領域の表面は、異なる結晶方位面を有する。
(付記12)
付記11の基板であって、好ましくは、
複数の前記単結晶領域の表面は、極性面と、非極性面または半極性面のうち少なくともいずれかの面と、を有する。
(付記13)
付記11の基板であって、好ましくは、
複数の前記単結晶領域の表面は、複数種類の非極性面または複数種類の半極性面のうち、2種以上の面を有する。
(付記14)
付記11〜13のいずれかの基板であって、好ましくは、
複数の前記単結晶領域は、それぞれの主面内におけるオフ方向同士のなす角の絶対値が10°よりも大きいものを含む。
(付記15)
付記1〜14のいずれかの基板であって、好ましくは、
複数の前記単結晶領域は、AlxInyGa(1−x―y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の単結晶からなり、
前記多結晶領域は、GaNの多結晶を含む。
(付記16)
付記1〜14のいずれかの基板であって、好ましくは、
複数の前記単結晶領域は、AlxInyGa(1−x―y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の単結晶からなり、
前記多結晶領域は、InxGa(1−x)N(0<x≦1)の多結晶を含む。
(付記17)
付記1〜16のいずれかの基板であって、好ましくは、
前記多結晶領域は、
1本の線からなるパターン又は複数の線を組み合わせたパターンを構成する。
(付記18)
付記1〜17のいずれかの基板であって、好ましくは、
前記多結晶領域は、
1本の線からなるパターン又は複数の線を組み合わせたパターンであって、前記線の少なくとも一端が窒化物結晶からなる前記基板の外周端まで達しているパターンか、若しくは、前記基板の内部で閉じた環状をなしているパターンを構成する。例えば、前記多結晶領域は、前記線が直線であって少なくともその一端が窒化物結晶からなる前記基板の外周端まで達している直線パターンか、平面形状が多角形である輪郭形状を有する多角パターンか、これらのパターンを組み合わせた複合パターンを構成する。
(付記19)
付記17または18の基板であって、好ましくは、
前記多結晶領域は、窒化物結晶からなる前記基板の表裏面の判別ができるとともに、結晶方位の特定が一義的にできるパターンを構成する。例えば、前記多結晶領域は、非線対称であって非回転対称であるパターンを構成する。
(付記20)
付記1〜18のいずれかの基板であって、好ましくは、
前記多結晶領域は、平面形状が矩形である輪郭形状を(交互にずらすことなく)組み合わせた格子パターンを構成する。
(付記21)
付記1〜18のいずれかの基板であって、好ましくは、
前記多結晶領域は、平面形状が矩形である輪郭形状を(交互にずらしながら)組み合わせたランニングボンドパターンを構成する。
(付記22)
付記1〜18のいずれかの基板であって、好ましくは、
前記多結晶領域は、平面形状が正六角形である輪郭形状を組み合わせたハニカムパターンを構成する。また、前記ハニカムパターンは、前記窒化物結晶基板の主面の中心を通り前記主面に直交する軸を中心軸として前記窒化物結晶基板を一回転させたとき、3回以上、好ましくは6回以上の対称性を有する。
(付記23)
本発明のさらに他の態様によれば、
窒化物結晶からなる複数の種結晶基板を、Ga又はInのうちの少なくともいずれかの金属を融解させた融解金属を介して保持板上に接着し、隣接する前記種結晶基板の主面が互いに平行となり、それらの側面が互いに対向するように配置する第1工程(配置ステップ)と、
前記保持板上に配置された複数の前記種結晶基板を、少なくとも窒素源を含む雰囲気中で加熱して前記融解金属を気化させ、前記種結晶基板の裏面側から主面側に向かって隣接する前記種結晶基板間を流れる前記融解金属の蒸気と、前記窒素源と、を反応させ、隣接する前記種結晶基板間に前記金属の窒化物多結晶(前記Ga又はInの少なくともいずれかを含む窒化物多結晶)を成長させてこれらを一体に接合させた基板を作製する第2工程(接合ステップ)と、
を有する窒化物結晶基板の製造方法が提供される。
(付記24)
付記23の方法であって、好ましくは、
前記第2工程では、
隣接する前記種結晶基板間の界面に前記窒化物多結晶を成長させる。
(付記25)
付記23または24の方法であって、好ましくは、
前記第2工程では、
前記種結晶基板の主面の周縁部に前記窒化物多結晶を成長させる。
(付記26)
付記23〜25のいずれかの方法であって、好ましくは、
前記第2工程では、
前記基板として、連続する多結晶領域と、前記多結晶領域によって区分けされる複数の単結晶領域と、を主面に有する基板を作製する。
(付記27)
付記23〜26のいずれかの方法であって、好ましくは、
前記第2工程では、
前記基板として、自立可能な基板を作製する。
(付記28)
付記23〜27のいずれかの方法であって、好ましくは、
前記第2工程では、複数の前記種結晶基板の温度が所定温度になったら、雰囲気中にIII族金属のハロゲン化物を供給し、前記III族金属のハロゲン化物と前記窒素源とを反応させ、複数の前記種結晶基板を、前記III族金属の窒化物単結晶と窒化物多結晶とにより一体に接合させる。
(付記29)
付記23〜28のいずれかの方法であって、好ましくは、
前記第2工程で得られた前記基板を、少なくとも窒素源を含む雰囲気中で加熱し、前記基板の温度が所定温度になったら、前記雰囲気中にIII族金属のハロゲン化物を供給し、前記III族金属のハロゲン化物と前記窒素源とを反応させ、前記種結晶基板上(前記単結晶領域上)に前記III族金属の窒化物単結晶を成長させ、前記窒化物多結晶上(前記多結晶領域上)に前記III族金属の窒化物多結晶を成長させる第3工程(本格成長ステップ)と、
前記第3工程で成長させた結晶をスライスし、主面に、連続する多結晶領域と、前記多結晶領域によって区分けされる複数の単結晶領域と、を有する自立可能な基板を取得する第4工程(切り出しステップ)と、
を有する。
(付記30)
付記29の方法であって、好ましくは、
前記第2工程および前記第3工程では、同一の所定の極性面(例えばGa極性面)上に窒化物結晶を成長させるプロセスを行う。
(付記31)
付記29または30の方法であって、好ましくは、
前記第3工程では、前記第2工程で得られた前記基板を、平坦な支持面を有する加熱台(サセプタ)上に直接載置する。
(付記32)
付記29から31のいずれかの方法であって、好ましくは、
前記第3工程では、前記種結晶基板と、この基板に隣接する他の種結晶基板との間で、これらの間に介在する前記窒化物多結晶を介して熱交換させる。