以下、本発明のIII族窒化物半導体基板およびIII族窒化物半導体基板の製造方法の実施形態について図面を用いて説明する。なお、図はあくまで発明の構成を説明するための概略図であり、各部材の大きさ、形状、数、異なる部材の大きさの比率などは図示するものに限定されない。
<<第1の実施形態>>
図1に、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1の断面模式図の一例を示す。図2及び図3に、図1のIII族窒化物半導体基板1を第1の主面3側から(図中、上から下方向に)観察した平面模式図の一例を示す。図4及び図5に、図1のIII族窒化物半導体基板1を第2の主面4側から(図中、下から上方向に)観察した平面模式図の一例を示す。図2と図4が対応し、図3と図5が対応する。
図1乃至図5に示すように、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、複数の結晶片10と、バインダー20とを備える第1の層2を有する。複数の結晶片10は、互いの間に隙間30を挟んで配置されている。バインダー20は、隙間30に介在し、複数の結晶片10を保持する。隙間30は、第1の層2の第1の主面3(図1中、上側の面)から第2の主面4(図1中、下側の面)に向けて幅が広がっている。なお、図示する結晶片10の数は一例であり、これに限定されない。
結晶片10は、III族窒化物半導体の単結晶で構成されている。バインダー20を介して互いにくっついた複数の結晶片10は、同じ種類のIII族窒化物半導体(AlxGa1−x−yInyN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)、かつ、結晶片10同士のx及びyが一致)であるのが好ましい。結晶片10は、III族窒化物半導体の基板や当該基板の破片等から切り出されたものとすることができる。
バインダー20は、多結晶のIII族窒化物半導体で構成される。バインダー20は、結晶片10と同じ種類のIII族窒化物半導体であってもよいし、異なる種類であってもよい。
結晶片10は、2つの主面(第1の主面11及び第2の主面12)と、側面13とを有する板状体である。第1の主面11と第2の主面12は表裏の関係にある。第1の主面11と第2の主面12は、互いに平行であってもよい。第1の主面11の形状は、例えば図2及び図3に示すように長方形であり、その大きさは、例えば縦2mm以上100mm以下、横2mm以上100mm以下である。また、第2の主面12の形状は、例えば図4及び図5に示すように長方形であり、その大きさは、例えば縦2mm以上100mm以下、横2mm以上100mm以下である。なお、第1の主面11及び第2の主面12の形状はその他の形状であってもよい。
結晶片10が備える側面13の少なくとも一部は、図1に示すように斜め加工される。具体的には、第1の主面11から第2の主面12に向かうに従い、側面13が主面(第1の主面11及び第2の主面12に平行な面)の中心に向かうように斜め加工される。換言すれば、第2の主面12と側面13とのなす角が90°より大、第1の主面11と当該側面13とのなす角が90°より小、となるように斜め加工される。側面13の斜め加工されない部分は、第1の主面11及び第2の主面12と垂直になっていてもよい。
第1の主面11及び第2の主面12の形状が四角形である場合、結晶片10は4つの側面13を持つ。この場合、4つの側面13のうち、1つが斜め加工されてもよいし、2つ、3つまたは4つすべてが斜め加工されてもよい。
結晶片10の厚さ(第1の主面11及び第2の主面12間の距離)は、例えば50μm以上20mm以下である。
複数の結晶片10の形状及び大きさ、特に第1の主面11の形状及び大きさは揃っているのが好ましい。「形状及び大きさが揃っている」とは、形状及び大きさが完全に一致する状態、及び、加工誤差によるズレが存在する状態を含む概念である。
第1の主面11は、所定の面方位の面である。例えば、第1の主面11は、+c面、m面又はa面であってもよい。その他、第1の主面11は、{hk−(h+k)l}面(h、k及びlは整数)、又は、当該{hk−(h+k)l}面を所定角度傾けた面であって+c面、m面及びa面と異なる面であってもよい。
例えば、第1の主面11は+c面、+c面を所定角度(例:±10°以下)傾けた面、m面、m面を所定角度(例:±10°以下)傾けた面、a面、a面を所定角度(例:±10°以下)傾けた面、{11−22}面、{11−22}面を所定角度(例:±10°以下)傾けた面、{11−24}面、{11−24}面を所定角度(例:±10°以下)傾けた面、{10−12}面、{10−12}面を所定角度(例:±10°以下)傾けた面、{10−11}面、{10−11}面を所定角度(例:±10°以下)傾けた面、{20−21}面、{20−21}面を所定角度(例:±10°以下)傾けた面、{20−23}面、及び、{20−23}面を所定角度(例:±10°以下)傾けた面の中のいずれかの面であってもよい。
複数の結晶片10の第1の主面11の面方位は揃っているのが好ましい。「面方位が揃っている」とは、複数の結晶片10の第1の主面11の面方位が互いに一致する状態、及び/又は、所望の基準となる面方位と、複数の結晶片10各々の第1の主面11の面方位との差が±0.5°以下である状態を含む概念である。
図1乃至図3に示すように、第1の主面11は露出している。第1の主面11が、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1の成長面(III族窒化物半導体結晶を成長させる面)となる。
複数の結晶片10は、第1の主面11の向く方向が揃っているのが好ましい。「第1の主面11の向く方向が揃っている」とは、複数の結晶片10の第1の主面11の法線方向が互いに一致する状態、及び/又は、所望の基準となる方向と、複数の結晶片10各々の第1の主面11の法線方向との差が±0.5°以下である状態を含む概念である。
また、複数の結晶片10は、第1の主面11に平行な方向における方位精度が±0.5°以下であるのが好ましい。すなわち、複数の結晶片10は、図2乃至図5における紙面に平行な方向の方位精度、換言すれば、紙面に垂直な回転軸周りに回転して調整される方位精度が±0.5°以下であるのが好ましい。「方位精度が±0.5°以下」とは、所望の基準となる方向からの差が±0.5°以下であることを意味する。
図1に示すように、複数の結晶片10は、側面13どうしで互いに対向するように配置される。対向する側面13の少なくとも一方が、上述した斜め加工された側面13となる。この場合、図1に示すように、これらの結晶片10間の隙間30は、第1の層2の第1の主面3から第2の主面4に向けて幅が広がった構成となる。
図1に示す例の場合、第1の層2の第1の主面3において、隣接する結晶片10は互いに接している。このため、図2及び図3に示すように、隣接する結晶片10間の隙間30は、第1の層2の第1の主面3側で開口していない。一方、第1の層2の第2の主面4において、隣接する結晶片10は互いに接していない。このため、図4及び図5に示すように、隣接する結晶片10間の隙間30は、第1の層2の第2の主面4側で開口している。結果、当該開口においてバインダー20が露出している。第2の主面4側の開口の幅G2は、例えば、50μm以上10mm以下である。
図1乃至図5に示す例では、バインダー20は、隙間30のみならず、複数の結晶片10の外周沿いに存在し、複数の結晶片10を内包している。また、バインダー20は、第1の主面11及び第2の主面12上には存在していない。
複数の結晶片10は、所定の規則性に従い配列されているのが好ましい。例えば図2及び図3に示すように、長方形の第1の主面11の長手方向が互いに平行になるように複数の結晶片10が配列されてもよい。また、複数の結晶片10は、直線的に一列又は複数の列で並ぶように配列されてもよい。
なお、各結晶片10の外周沿いの少なくとも一部に隙間30が存在し、当該隙間30にバインダー20が介在して、当該結晶片10と他の結晶片10とを接合していてもよい。例えば、結晶片10の外周沿いすべてに隙間30が存在し、当該結晶片10の外周沿いに存在するすべての結晶片10と、バインダー20を介して接合していてもよい。または、結晶片10の外周沿いの一部のみに隙間30が存在し、当該結晶片10と、当該隙間30を挟んで当該結晶片10と対向する結晶片10のみとを、バインダー20を介して接合していてもよい。
ここで、III族窒化物半導体基板1の変形例を示す。なお、ここで示す複数の変形例を組み合わせた変形例とすることもできる。
<第1の変形例>
図6に示すように、バインダー20は結晶片10の第2の主面12上まで延在していてもよい。そして、バインダー20は、第2の主面12の一部または全部を覆ってもよい。第1の層2の第2の主面4上に、バインダー20により第2の層5が形成されてもよい。第2の主面12上のバインダー20の厚さ(第2の層5の厚さ)Mは、例えば0μmより大20mm以下であり、好ましくは0μmより大1mm以下である。なお、図1に示す例の場合、上記Mの値は0となる。
<第2の変形例>
図7に示すように、斜め加工された側面13どうしが対向するように、複数の結晶片10を配置してもよい。
<第3の変形例>
図8に示すように、複数の結晶片10の外周沿いには、バインダー20が存在しなくてもよい。図9及び図10に、図8のIII族窒化物半導体基板1を第1の主面3側から(図中、上から下方向に)観察した平面模式図を示す。
<第4の変形例>
図11に示すように、結晶片10の側面13の少なくとも一部は、第1の主面11に対して垂直になった第1の部分13−1と、斜め加工された第2の部分13−2と、を有し、第1の主面11から第2の主面12に向かってこれら2つの部分がこの順に現れるように加工されてもよい。図12に、このような結晶片10を有するIII族窒化物半導体基板1の断面模式図の一例を示す。
<第5の変形例>
図13に示すように、隙間30はバインダー20で完全に埋め込まれず、隙間30の一部が、残存隙間31として残っていてもよい。この場合、隙間30に介在するバインダー20の高さ(第2の主面4における隙間30の開口面からの高さ)は、隙間30の深さの3分の1以上、好ましくは2分の1以上、さらに好ましくは3分の2以上である。
<第6の変形例>
図14に示すように、第1の層2の第1の主面3において、隣接する結晶片10は互いに接していなくてもよい。すなわち、隣接する結晶片10間の隙間30は、第1の層2の第2の主面4、及び、第1の主面3の両方において開口していてもよい。第1の層2の第1の主面3における開口の幅G1は、第1の層2の第2の主面4における開口の幅G2よりも小さい。第1の層2の第1の主面3における開口の幅G1は、例えば、0μm以上10mm以下である。
図14に示す例の場合、バインダー20は隙間30を埋め尽くし、第1の層2の第1の主面3において、結晶片10の第1の主面11とバインダー20とが面一となっている。
図15及び図16に、図14のIII族窒化物半導体基板1を第1の主面3側から(図中、上から下方向に)観察した平面模式図を示す。
<第7の変形例>
図17に示すように、第6の変形例を採用する場合、隙間30はバインダー20で完全に埋め込まれなくてもよい。この場合、隙間30に介在するバインダー20の高さ(第2の主面4における隙間30の開口面からの高さ)は、隙間30の深さの3分の1以上、好ましくは2分の1以上、さらに好ましくは3分の2以上である。
当該例の場合、第1の主面3において、結晶片10とバインダー20とが露出し、結晶片10が凸部に、バインダー20が凹部になっている。隣接する結晶片10とバインダー20との段差Dの上限は、基板厚(III族窒化物半導体基板1の厚さ)に応じた所定の値にすることができる。例えば、段差Dは1μm以上、(基板厚−100)μm以下とすることができる。すなわち、基板厚が400μmの場合、段差Dは1μm以上300μm以下とし、基板厚が600μmの場合、段差Dは1μm以上500μm以下とし、基板厚が800μmの場合、段差Dは1μm以上700μm以下とすることができる。このようにすれば、バインダー20の厚さを、100μm以上とすることができる。結果、バインダー20による複数の結晶片10の保持力を、十分に強くすることができる。
次に、図18のフローチャートを用いて、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1の製造方法の一例を説明する。図示するように、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1の製造方法は、準備工程S10と、配置工程S20と、形成工程S30とを有する。
準備工程S10では、III族窒化物半導体で構成された板状の結晶片10であって、側面13の少なくとも一部が、主面とのなす角が90°と異なっている複数の結晶片10を準備する。「主面とのなす角が90°と異なっている部分」が、上述した斜め加工された側面13に相当する。当該工程では、側面13の中に、第1の主面11とのなす角が90°より小さく、第2の主面12とのなす角が90°より大きい部分(斜め加工された側面13)を有する結晶片10を準備する。以下、当該工程の一例を説明する。
例えば、III族窒化物半導体基板や、当該基板の破片などから、所定形状の結晶片10を切り出すことで、複数の結晶片10を準備する。
切り出す手段は特段制限されず、バンドソー、内周刃、外周刃などを用いて結晶片10を切り出してもよいし、劈開面で劈開することで結晶片10を切出してもよい。また、切り出した結晶片10に対して研磨等の加工を施すことで、結晶片10の形状及び大きさを調整してもよい。
図19及び図20を用いて、III族窒化物半導体基板から結晶片10を切り出す処理の一例を説明する。図19はIII族窒化物半導体基板40の側面模式図、図20はIII族窒化物半導体基板40の平面模式図である。III族窒化物半導体基板40は、図示するように+c面成長して得られた基板であってもよいし、その他であってもよい。
例えば、図19及び図20に示すように、m軸方向に平行な第1の切断面41、及び、m軸方向に垂直な第2の切断面42により、III族窒化物半導体基板40から複数の結晶片10を切り出してもよい。第1の切断面41、及び、第2の切断面42各々の間隔を調整することで、第1の切断面41、又は、第2の切断面42を、結晶片10の第1の主面11とすることができる。第2の切断面42はm面となる。第1の切断面41の+c軸方向に対する傾きを調整することで、第1の主面11の面方位を、a面又は所望の半極性面とすることができる。
この場合、+c面及び−c面が側面13となる。また、第1の切断面41及び第2の切断面42の一方が、側面13となる。
次に、側面13を斜め加工する処理について説明する。図21は、図19に示すように切り出した結晶片10を、m軸方向に観察した側面図である。例えば、図21に示すように、図中左側の側面13はそのまま残し、図中右側の側面13を、(1)又は(2)の点線で示すように加工してもよい。なお、(2)の傾きは適宜調整可能である。
(1)の点線で加工した場合、図中左側の側面13が、斜め加工された側面13となる。そして、図中右側の側面13は、第1の主面11に対して垂直な側面13となる。一方、(2)の点線で加工した場合、図中左側の側面13及び右側の側面13の両方が、斜め加工された側面13となる。
図22は、図21の結晶片10を、図中左右方向に観察した側面図である。当該2つの側面13は、図示するように第1の主面11に対して垂直な状態を維持してもよい。または、(1)の点線での斜め加工、及び(2)の点線での斜め加工の少なくとも一方を行ってもよい。当該加工により、図中左側の側面13及び右側の側面13の少なくとも一方を、斜め加工された側面13とすることができる。なお、(1)及び(2)の傾きは適宜調整可能である。
図23及び図24を用いて、III族窒化物半導体基板から結晶片10を切り出す処理の他の一例を説明する。図23はIII族窒化物半導体基板40の側面模式図、図24はIII族窒化物半導体基板40の平面模式図である。III族窒化物半導体基板40は、図示するように+c面成長して得られた基板であってもよいし、その他であってもよい。
例えば、図23及び図24に示すように、m軸方向に平行な第1の切断面41、及び、m軸方向に垂直な第2の切断面42により、III族窒化物半導体基板40から複数の結晶片10を切り出してもよい。第1の切断面41、及び、第2の切断面42各々の間隔を調整することで、III族窒化物半導体基板40の露出面43を、結晶片10の第1の主面11とすることができる。図23及び図24に示す例の場合、第1の主面11は+c面となる。そして、m面及びa面が側面13となる。
当該例の場合、いずれの側面13も、図22に示すような形状となる。少なくとも1つの側面13に対して、(1)又は(2)の点線で示すような加工を行うことで、上述したような斜め加工された側面13を得ることができる。
図18に戻り、配置工程S20では、載置台上に、複数の結晶片10を、互いの間に隙間30を挟んで配置する。具体的には、第1の主面11を載置台の載置面と当接させ、第2の主面12を露出させ、側面13が他の結晶片10の側面13と対向するように、載置台上に並べて配置する。対向する側面13の少なくとも一方は、斜め加工された側面13とする。これにより、載置台と接する接触側から露出側に向かって、隣接する結晶片10間の隙間30の幅が広がることとなる。
例えば、図25に示すように、載置台50上に複数の結晶片10を並べて配置する。載置台50は、複数の結晶片10が載置される載置面51を有する。複数の結晶片10は、例えば所定の規則性に従い、当該載置面51上に配列される。隣接する結晶片10は、第1の主面11において、互いに接している。
図26乃至図28に、第1の主面11において隣接する結晶片10が互いに接するように複数の結晶片10を並べた場合の平面模式図(図25を、図中上から下方向に観察したものに相当)の一例を示す。これらの図においては、結晶片10の平面図及び側面図をさらに表示している。図26は、3つの側面13が斜め加工された結晶片10を並べた例である。図27は、4つの側面13が斜め加工された結晶片10を並べた例である。図28は、2つの側面13が斜め加工された結晶片10を並べた例である。
図29に、載置台50上に複数の結晶片10を並べて配置した他の例を示す。当該例では、隣接する結晶片10は、第1の主面11において、互いに接していない。
図30に、図29を図中上から下方向に観察した平面模式図の一例を示す。載置台50上には、結晶片10の第1の主面11に平行な方向の向きを合わせるための調整部材53が存在する。調整部材53は、結晶片10の所定の側面13が面接触又は辺接触する方位調整面を有する。図30に示すように、すべての結晶片10が、「所定の側面13が調整部材53の方位調整面と面接触又は辺接触する状態」で配置される。結晶片10は、当該状態で配置された場合、第1の主面11に平行な方向の向きが所望の状態となるように加工されている。
調整部材53を用いた当該配置方法によれば、容易に、複数の結晶片10各々の第1の主面11に平行な方向の向きを所望の状態とするころができる。図30に示すように、調整部材53に平行な方向に隣接する結晶片10どうしは、第1の主面11において接していなくてもよい。
図31を用いて、調整部材53を用いた配置方法における変形例を示す。図31に示すように、調整部材53に平行な方向に隣接する結晶片10どうしの少なくとも一部は、第1の主面11において、互いに接する状態となっていてもよい。ただし、調整部材53を用いた配置方法の場合、「調整部材53に平行な方向に隣接する結晶片10間の接触」よりも、「所定の側面13が調整部材53の方位調整面と面接触又は辺接触した状態」の方が優先される。「所定の側面13が調整部材53の方位調整面と面接触又は辺接触した状態」を確保しつつ、調整部材53に平行な方向に隣接する結晶片10どうしを接触させることができる場合、これらの結晶片10どうしを接触させてもよい。しかし、例えば対向する側面13の加工精度が悪く、「所定の側面13が調整部材53の方位調整面と面接触又は辺接触した状態」を確保した状態では、調整部材53に平行な方向に隣接する結晶片10どうしを接触させることができない場合、図31に示すように、これらの間には隙間31が形成される。
調整部材53は載置台50から取り外し可能であってもよい。そして、結晶片10が所望の状態で配置され、その位置に固定されると、形成工程S30の前に、調整部材53は載置台50から取り外されてもよい。この場合、調整部材53が取り外された後、調整部材53が存在した場所は隙間30となる。調整部材53の幅は、例えば、50μm以上10mm以下である。
なお、調整部材53は、形成工程S30の間も載置台50上に位置してもよい。この場合、図32に示すように、調整部材53の高さは、結晶片10の厚さよりも小さく構成される。図32は、図30及び図31を図中、左から右方向に見た側面図の一例である。この場合、図32に示すように、結晶片10の間であって、調整部材53の上方に、例えば幅が50μm以上10mm以下である隙間30が形成される。
載置台50に結晶片10を保持させる手段は特段制限されないが、例えば、不純物汚染を起こさず、バインダー20の形成に悪影響を与えにくい接着剤を用いて複数の結晶片10を接着保持させてもよい。載置台50は例えばセラミック等で構成されてもよい。
図18に戻り、形成工程S30では、複数の結晶片10の上に、隙間30に介在するように、多結晶のIII族窒化物半導体からなるバインダー20を形成する(図33及び図34参照)。図33及び図34に示すように、バインダー20は、隙間30に介在するとともに、第2の主面12上に形成される。バインダー20を形成する手法としては、気相エピタキシャル成長法(例えばHVPE法、MOVPE法)、ナトリウムフラックス液相成長法、アモノサーマル成長法、スパッタ法、分子線エピタキシャル成長法、焼結法などが考えられる。
形成条件は一般的なものと同様とすることができる。本実施形態の場合、結晶片10間の隙間30の開口の幅G2が50μm以上である。このため、例えばHVPE法の一般的な成長条件でIII族窒化物半導体結晶を形成すると、隙間30に原料ガスが侵入し、例えば隙間30に介在したバインダー20が形成される。
形成工程S30の後、載置台50からIII族窒化物半導体基板1を取り外し、その後、CMP等の研磨、及び/又は、薬液によるエッチング等による表面加工を行ってもよい。同様に、III族窒化物半導体基板1の側面を加工してもよい。
以上により、上述した例のIII族窒化物半導体基板1が得られる。なお、隙間30へのバインダー20の埋め込みが不十分になると、図13に示すような状態が得られる。
本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、その上に電子デバイスや光デバイスを形成される自立基板、また、その上にIII族窒化物半導体層を形成して自立基板を得るための下地基板として用いることができる。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、図1乃至図17に示すように、複数の結晶片10で構成される。複数の結晶片10の間には、隙間30が存在する。そして、当該隙間30にバインダー20が存在し、結晶片10を保持している。このように、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は複数の結晶片10で構成されるが、それらが互いの間に存在するバインダー20により保持されている。すなわち、複数の結晶片10が一塊になっている。
複数の結晶片10が互いに分離している場合、複数の結晶片10からなる基板を移動させる際、複数の結晶片10各々を保持し、それらを移動させる必要がある。また、複数の結晶片10からなる基板を所定位置にセットする際、複数の結晶片10各々を所定の位置関係で、所定の位置にセットする必要がある。このように、複数の結晶片10が互いに分離している場合、作業性が悪い。本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、上述の通り、バインダー20により複数の結晶片10が一塊となっている。このため、III族窒化物半導体基板1を移動させたり、所定の位置にセットしたりする際の作業性が良好である。
また、複数の結晶片10が互いに分離しているままであると、複数の結晶片10からなる基板の作製工程や、後工程での当該基板のハンドリング時に割れる恐れがある。また、分離している複数の結晶片10部分を加工除去するとした場合にも、分離部分への応力集中により割れる恐れがある。本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、このような不都合を軽減できる。
また、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、図1乃至図17に示すように、隣接する結晶片10間において対向する側面13の少なくとも一方を、斜め加工した側面13とすることができる。すなわち、結晶片10間の隙間30の幅が、一方の主面(第1の主面3)から他方の主面(第2の主面4)に向けて広がっていく構成とすることができる。この場合、側面13が第1の主面11に対して垂直な場合に比べて、結晶片10間の隙間30における内側面の面積が大きくなる。結果、結晶片10の側面13と、バインダー20との接触面積が大きくなり、結晶片10とバインダー20との接合力が大きくなる。
また、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、図1乃至図17に示すように、結晶片10間の隙間30の幅が、第1の層2の第1の主面3から第2の主面4に向けて広がる構成とすることができる。本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、第1の層2の第1の主面3が成長面となる。第1の主面3上に形成するIII族窒化物半導体の結晶性を良好なものにする観点から、第1の主面3におけるバインダー20の露出面積は小さいのが好ましい。すなわち、第1の主面3における隙間30の開口は小さいのが好ましい。一方で、隙間30の間にバインダー20の原料を侵入させ、隙間30に介在したバインダー20を形成する観点から、第2の主面4における隙間30の開口は大きいのが好ましい。
隙間30の幅が第1の層2の第1の主面3から第2の主面4に向けてほとんど変わらない構成とした場合、これら両方の要求を満たすのは困難である。本実施形態の場合、上述の通り、結晶片10間の隙間30の幅が、第1の層2の第1の主面3から第2の主面4に向けて広がる構成とすることができる。このため、上記相反する2つの要求を満たすことができる。すなわち、第1の主面3における隙間30の開口を小さくし、第1の主面3におけるバインダー20の露出面積を小さくすることができる。また、第2の主面4における隙間30の開口を大きくし、隙間30の間に効率的にバインダー20の原料を侵入させ、隙間30に介在したバインダー20を形成することができる。
なお、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、第2の変形例として図7を用いて説明したように、斜め加工された側面13どうしが対向するように、複数の結晶片10を配置することができる。このようにすれば、上述した効果が顕著となる。
また、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、結晶片10の大きさを所定の大きさに制御することができる。例えば、結晶片10の主面(第1の主面11及び第2の主面12)は、縦2mm以上100mm以下、横2mm以上100mm以下の四角形とすることができる。主面の大きさの上限をこのように設定した場合、結晶片10が大きくなりすぎる不都合を抑制できる。結果、結晶片10が剥がれ落ちにくくなる。また、主面の大きさの下限をこのように設定した場合、主面の大きさを、デバイスを形成するために十分な大きさとすることができる。
また、III族窒化物半導体基板10の厚さを、50μm以上20mm以下とすることができる。厚さの下限をこのように設定した場合、結晶片10間の隙間30に存在するバインダー20と、結晶片10の側面13との接触面積を十分に大きくすることができる。結果、バインダー20により結晶片10を十分な強度で保持することができる。また、厚さの上限をこのように設定した場合、III族窒化物半導体基板1の厚さが不要に厚くなる不都合を回避できる。結果、III族窒化物半導体基板1の軽量化及び薄型化が実現され、III族窒化物半導体基板1の持ち運び時の作業性が良好になったり、保管時に場所を取らなくなったりする効果が期待される。
なお、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、第1の主面3を成長面とする。図1乃至図13に示す構成の場合、第1の主面3においてバインダー20が露出する不都合を抑制することができる。結果、当該成長面上に結晶性の良好なIII族窒化物半導体の単結晶を成長させることができる。なお、結晶片10間の界面の上方は、他の部分に比べて多少結晶性が劣ることを、本発明者らは確認している。
一方、図14乃至図17に示す構成の場合、第1の主面3(成長面)においてバインダー20が露出する。本発明者らは、このような成長面上にIII族窒化物半導体の単結晶を成長させた場合、バインダー20の上方には多くの転位が発生するが、第1の主面11の上方の結晶性は良好であることを確認した。すなわち、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1によれば、III族窒化物半導体基板1上の適切なエリア(結晶性が良好な第1の主面11の上方のエリア)を選択することで、所定のデバイスを形成することができる。
また、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、複数の結晶片10の形状及び大きさ、特に第1の主面11の形状及び大きさを揃えることができる。上述の通り、図1乃至図13に示すIII族窒化物半導体基板1、及び、図14乃至図17に示すIII族窒化物半導体基板1いずれの上にデバイスを形成する場合も、結晶片10間の界面上やバインダー20上を避けて、デバイスを形成するのが好ましい。本実施形態のように、第1の主面11の形状及び大きさが揃い、複数の結晶片10が規則的に配列されている場合、当該規則性に基づいて、III族窒化物半導体基板1の成長面上における第1の主面11が露出する位置を容易に特定することが可能となる。結果、デバイス作成時の作業性が良好となる。
また、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、第2の主面4における結晶片10間の隙間30の幅G2を、50μm以上とすることができる。隙間30の下限をこのように設定すると、バインダー20を形成する処理時に、バインダー20の原料となるガスが隙間30に十分に入り込むことができる。結果、隙間30内にバインダー20を形成することができる。
また、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、図1乃至図5に示すように、バインダー20が複数の結晶片10の外周沿いに、複数の結晶片10を内包するように存在する構成とすることもできる。当該構成によれば、結晶片10とバインダー20との接触面積が大きくなる。結果、バインダー20による結晶片10の保持力が大きくなり好ましい。
なお、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、第3の変形例として図8乃至図10を用いて説明したように、バインダー20が複数の結晶片10の外周沿いに存在せず、結晶片10間の隙間30のみに存在する構成とすることもできる。当該構成によれば、III族窒化物半導体基板1の軽量化及び小型化(表面の面積の小型化)が実現される。また、デバイスの歩留向上や、III族窒化物半導体基板1の側面を利用したオリフラ方位の測定が可能となる。
また、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、第1の変形例として図6を用いて説明したように、バインダー20が隙間30から第2の主面12側に延在した構成とすることができる。そして、側面13及び第2の主面12において結晶片10と接し、密着したバインダー20により、複数の結晶片10を保持することができる。当該構成によれば、結晶片10とバインダー20との接触面積が大きくなる。結果、バインダー20による結晶片10の保持力が大きくなり好ましい。
この場合、バインダー20の第2の主面12からの厚さM(第2の層5の厚さ)を1mm以上20mm以下とすることができる。このようにすると、裏打ち層としてのバインダー20の強度が十分になる。結果、III族窒化物半導体基板1全体としての折れ曲がりに対する強度が大きくなり、III族窒化物半導体基板1が折れ曲がったり割れたりする不都合や、結晶片10がバインダー20から剥がれ落ちる不都合等を抑制できる。
なお、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、図1乃至図5に示すように、バインダー20が第1の主面11及び第2の主面12には延在せず、隙間30のみに存在する構成とすることができる。当該構成によれば、III族窒化物半導体基板1の軽量化及び薄型化が実現される。また、裏面電極を必要とするデバイス作製時には、裏面側の結晶片10と電極とのコンタクトが必要となるが、当該構成の場合、バインダー20を落とす必要が無くなったり、基板厚みを落とすとしても設計自由度が高くなる。
また、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、隙間30に介在するバインダー20の高さ(第2の主面4における隙間30の開口面からの高さ)が、隙間30の深さの3分の1以上、好ましくは2分の1以上、さらに好ましくは3分の2以上、さらに好ましくはバインダー20の露出面と結晶片10の第1の主面11とが面一となる状態とすることができる。このように、隙間30に十分にバインダー20を介在させることができるので、結晶片10とバインダー20との接触面積を大きくすることができる。結果、結晶片10とバインダー20との接着力をより強くすることができる。
また、第5の変形例として図13を用いて説明したように、隙間30はバインダー20で完全に埋め込まれず、隙間30の一部が、残存隙間31として残っていてもよい。
このような場合であっても、側面13の少なくとも一部とバインダー20とが接するため、バインダー20により結晶片10を保持することができる。
また、隙間30の一部を残存隙間31として残してもよいため、バインダー20の原料となるガスを隙間30の奥で侵入させる工夫が不要となる。結果、隙間30の奥まで完全にバインダー20を介在させる場合に比べて、バインダー20を形成する処理の設計の自由度が広がる。
さらに、第1の主面3におけるバインダー20の露出が小さくなるほか、第1の主面からバインダー20までの距離が大きくなる効果も得られる。このため、III族窒化物半導体基板1の第1の主面3上にIII族窒化物半導体の単結晶を形成する際、バインダー20の影響で当該単結晶の結晶性が悪くなる不都合を軽減できる。
また、第4の変形例として図11及び図12を用いて説明したように、結晶片10の側面13の少なくとも一部は、第1の主面11に対して垂直になった第1の部分13−1と、斜め加工された第2の部分13−2と、を有し、第1の主面11から第2の主面12に向かってこれら2つの部分がこの順に現れるように加工されてもよい。当該例の場合、III族窒化物半導体基板1の第1の主面3におけるバインダー20の露出が小さくなり、さらに、第1の主面からバインダー20までの距離が大きくなる。このため、III族窒化物半導体基板1の第1の主面3上にIII族窒化物半導体の単結晶を形成する際、バインダー20の影響で当該単結晶の結晶性が悪くなる不都合を軽減できる。
また、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1の製造方法では、図30乃至図32を用いて説明した例のように、すべての結晶片10が、「所定の面方位の側面13が調整部材53と面接触又は辺接触する状態」となるように配置することができる。これにより、複数の結晶片10各々の第1の主面11に平行な方向の向きが所望の状態となる。このような製造方法で製造された本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、複数の結晶片10が他の結晶片10と接触していない面(調整部材53と面接触又は辺接触していた側面13)を有する構成となる。
ところで、複数の結晶片10を並べて配置する手法として、隣接する結晶片10どうしを互いに接触させて配置する方法が考えられる。結晶片10間の隙間を小さくすることを優先して配置する場合、当該配置方法が好ましい。しかし、この方法の場合、ある結晶片10の第1の主面11に平行な方向における向きは、他の結晶片10の状態(他の結晶片10の向き、他の結晶片10の側面の精度等)の影響を受けてしまう。このため、結晶片10の側面13における加工精度を十分に高める必要がある。上記影響について、図35を用いて説明する。
図35に示す矢印Aは、結晶片10の所定の軸方向(例:m軸方向)である。所望の配置状態は、結晶片10の所定の軸方向(例:m軸方向)が第1の方向と平行になる状態である。
図35に示す左側の結晶片10は、矢印Aで示される所定の軸方向が第1の方向と平行になっている。しかし、右側の結晶片10は、矢印Aで示される所定の軸方向が第1の方向と平行になっていない。これは、左側の結晶片10の右側側面の加工精度が悪く、やや斜めに切り出されていること、及び、当該側面に、右側の結晶片10の側面を接触させて配置したことに起因する。
このように、複数の結晶片10を互いの側面どうしで接する状態で配列する場合は、ある箇所で結晶片10の配置の向きがずれてしまった場合や、結晶片10の個々に平行度・垂直度等の加工精度が存在することにより、他の結晶片10の状態の影響を受けてしまう。さらに、結晶片10の数が多くなるほど接触する箇所が多くなり、結晶片10の状態の影響が蓄積されて、方位ずれが増大する可能性が高くなる。結果、第1の主面11に平行な方向における向きが所望の状態からずれた結晶片10が多く存在することとなってしまう。
本実施形態の場合、すべての結晶片10が、「所定の面方位の側面13が調整部材53の方位調整面と面接触又は辺接触する状態」で配置することができる。このため、上述のような不都合を回避できる。結果、複数の結晶片10の第1の主面11に平行な方向における方位精度を、±0.5°以下を容易に実現することができる。このような方位精度を持ったIII族窒化物半導体基板1によれば、III族窒化物半導体基板1の上に成長するIII族窒化物半導体の結晶性が良好となる。
また、本実施形態の場合、バインダー20を多結晶のIII族窒化物半導体で構成することができる。この場合、単結晶のIII族窒化物半導体でバインダー20を構成する場合に比べて、短時間で、所望の厚さのバインダー20を形成することができる。
また、本実施形態の場合、単結晶のIII族窒化物半導体の破片などから結晶片10を切り出して、利用することができる。このような破片は、従来、破棄等されていた。本実施形態によれば、従来破棄等されていた破片を利用することができるので、コスト面において有益である。
また、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、第7の変形例として図17を用いて説明したように、III族窒化物半導体基板1の第1の主面3(成長面)において、結晶片10が凸部となり、バインダー20が凹部となっていてもよい。この場合、III族窒化物半導体基板1の第1の主面3(成長面)においてバインダー20が露出しているが、バインダー20による悪影響を軽減できる。すなわち、当該成長面の上に単結晶のIII族窒化物半導体をエピタキシャル成長させた場合に、結晶片10とバインダー20との界面部分で異常成長等の不都合が発生することを軽減できる。例えば、成長の過程で凹部内に多結晶が形成されたとしても、多結晶が凸部よりも上方に突出することが抑制される。結果、デバイス作製時のリソグラフィー工程などへの影響が軽減される。また、凹部を挟んで互いに隣接する2つの凸部各々から成長した結晶どうしが、互いの間の凹部から成長した結晶に覆い被さる状態で互いに接合する。結果、凸部から成長した結晶が凹部から成長した結晶に覆い被さる状態となる。このため、凹部から成長した結晶が成長面に現れる不都合を軽減できる。すなわち、多結晶のIII族窒化物半導体(バインダー20)から成長した結晶が成長面に現れる不都合を軽減できる。
また、第7の変形例の場合、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、隣接する結晶片10とバインダー20との段差Dが1μm以上(基板厚(μm)−100(μm))μm以下とすることができる。段差Dを1μm以上とすることで、上述した、凹部上の多結晶が凸部よりも突出することが抑制されたり、凸部から成長した結晶が凹部から成長した結晶に覆い被さる状態が得られやすくなる。また、段差Dを(基板厚−100)μm以下とすることで、バインダー20の厚さを100μm以上とすることができる。結果、ハンドリング時の基板割れを防止し、デバイス作製時の基板厚みを落とす際に結晶片が分割されるのを抑制する等の効果が得られる。
<<第2の実施形態>>
図39は、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1の製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。図示するように、準備工程S10と、配置工程S20と、形成工程S30と、露出工程S40とを有する。
準備工程S10は第1の実施形態で説明した準備工程S10と同様である。
例えば、図23及び図24に示すように、+c面成長したIII族窒化物半導体基板40から、m軸方向に平行かつ+c軸方向に平行な第1の切断面41、及び、m軸方向に垂直な第2の切断面42により、III族窒化物半導体基板40から複数の結晶片10を切り出してもよい。第1の切断面41及び第2の切断面42の間隔を適切に調整することで、III族窒化物半導体基板40の露出面43を結晶片10の第1の主面11とすることができる。
配置工程S20では、図36に示すように、保持部材60上に、複数の結晶片10を横方向(図中、左右方向、及び、紙面に対して垂直な方向)に並べて配置する。この時、複数の結晶片10各々の所定の軸方向が、当該横方向に対して垂直になるように、複数の結晶片10を並べる。
所定の軸方向は、III族窒化物半導体基板1の成長面とする所望の面方位に応じて定まる。III族窒化物半導体基板1の成長面を+c面とする場合、所定の軸方向は+c軸方向である。III族窒化物半導体基板1の成長面をm面とする場合、所定の軸方向はm軸方向である。III族窒化物半導体基板1の成長面をa面とする場合、所定の軸方向はa軸方向である。III族窒化物半導体基板1の成長面を所定の半極性面とする場合、所定の軸方向は当該所定の半極性面と垂直な軸方向である
例えば、図36に示すように結晶片10を並べることができる。図36における上下方向が、III族窒化物半導体基板1の厚さ方向となる。複数の結晶片10は、上述した所定の軸方向が結晶片層の厚さ方向と平行になるように並べられている。このような配列は、例えば、図36に示すように、複数の結晶片10を所定角度傾けて並べて配置可能とする保持部材50を利用することで実現してもよい。図示する保持部材50は、結晶片10が載置される載置面において波状の凹凸を有する。そして、この凹部に嵌まり込むように結晶片10が配置される。凹部の側面の角度、深さ等を適切に調整することで、複数の結晶片10を所定角度傾けて並べて配置することが可能となる。なお、図36では隣接する結晶片10が接していないが、隣接する結晶片10が接していてもよい。
形成工程S30では、複数の結晶片10の上に、結晶片10間の隙間に介在するようにバインダー20を形成する。形成工程S30の構成は、第1の実施形態と同様である。図36に示す状態の複数の結晶片10の上にバインダー20を形成すると、例えば、図37に示すような状態となる。
露出工程S40では、結晶片層の露出面側(バインダー20が形成された面と反対側の面)を研磨し、複数の結晶片10から所望の面を露出させる。所望の面は、III族窒化物半導体基板1の成長面とする面である。上述の通り、複数の結晶片10は横方向(図37中、左右方向、及び、紙面に対して垂直な方向)に並べて配置され、上記所望の面に応じて決定される所定の軸方向が、当該横方向(複数の結晶片10が延在する方向)に対して垂直になっている。このため、当該横方向に平行な研磨面で複数の結晶片10を研磨すると、所望の面が露出することとなる。
例えば、図37に示す状態が得られたのち、複数の結晶片10、及び、バインダー20を有する積層体を保持部材60から取り外す。そして、結晶片10が露出する面(図37の下側の露出面)側から、積層体の厚さ方向に垂直な研磨面で研磨(CMP等)していく。これにより、結晶片10が露出する面(図37の下側の露出面)側において、所望の面を露出させることができる。結果、図38に示すようなIII族窒化物半導体基板1が得られる。図36は、III族窒化物半導体基板1の断面模式図である。
なお、当該積層体の反対側の露出面(図37の上側の面)、及び、側面をさらに研磨してもよい。
以上説明した本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を実現できる。すなわち、第1の実施形態と異なる製造方法により、第1の実施形態と同様な作用効果を実現したIII族窒化物半導体基板1を実現することができる。結果、製造方法のバリエーションが増える。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 互いの間に隙間を挟んで配置された複数のIII族窒化物半導体の結晶片と、
前記隙間に介在し、複数の前記結晶片を保持するバインダーと、
を備える板状の第1の層を有し、
前記隙間は、前記第1の層の第1の主面から第2の主面に向けて幅が広がっているIII族窒化物半導体基板。
2. 1に記載のIII族窒化物半導体基板において、
隣接する前記結晶片は、前記第1の主面において互いに接し、前記第2の主面において互いに接しないIII族窒化物半導体基板。
3. 1に記載のIII族窒化物半導体基板において、
複数の前記結晶片は、他の前記結晶片と接しないIII族窒化物半導体基板。
4. 3に記載のIII族窒化物半導体基板において、
複数の前記結晶片は、前記第1の主面に平行な方向における方位精度が±0.5°以下であるIII族窒化物半導体基板。
5. 3又は4に記載のIII族窒化物半導体基板において、
前記第1の主面において、前記結晶片と前記バインダーとが露出し、前記結晶片が凸部に、前記バインダーが凹部になっているIII族窒化物半導体基板。
6. 5に記載のIII族窒化物半導体基板において、
隣接する前記結晶片と前記バインダーとの段差は、1μm以上(III族窒化物半導体基板の厚さ(μm)−100(μm))μm以下であるIII族窒化物半導体基板。
7. 1から6のいずれかに記載のIII族窒化物半導体基板において、
前記バインダーは、前記隙間から前記第2の主面に延在しているIII族窒化物半導体基板。
8. 1から7のいずれかに記載のIII族窒化物半導体基板において、
前記第1の主面が、III族窒化物半導体結晶を成長させる成長面となるIII族窒化物半導体基板。
9. 1から8のいずれかに記載のIII族窒化物半導体基板において、
前記バインダーは、多結晶のIII族窒化物半導体で構成されるIII族窒化物半導体基板。
10. III族窒化物半導体で構成された板状の結晶片であって、側面の少なくとも一部が、主面とのなす角が90°と異なっている複数の前記結晶片を準備する準備工程と、
載置台上に、複数の前記結晶片を、互いの間に隙間を挟んで配置する配置工程と、
前記隙間に介在し、複数の前記結晶片を保持するバインダーを形成する形成工程と、
を有し、
前記配置工程では、前記側面どうしを対向させ、前記載置台と接する接触側から露出側に向かって前記隙間の幅が広がるように前記結晶片を配置するIII族窒化物半導体基板の製造方法。