JP2017024984A - Iii族窒化物基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の種結晶基板を並べて形成した種結晶基板上に結晶成長を行うIII族窒化物基板の作製に関し、新規な技術を提供する。【解決手段】III族窒化物基板の製造方法は、側面同士を対向させて並べられるような形状に成形された複数の種結晶基板10を用意する工程と、隣り合う種結晶基板の前記側面同士が対向して並んだ配置となるように、複数の種結晶基板を、基材50上に接着剤60で接着する工程と、複数の種結晶基板の主面上方に、各々の主面上方に成長した結晶同士が結合して一体化するように、III族窒化物結晶70を成長させる工程と、を有し、基材の材料は、III族窒化物結晶の成長の後、基材に接着された種結晶基板が基材から分離する際に、基材の最表面層が犠牲層となるものである。【選択図】図2

Description

本発明は、III族窒化物基板の製造方法に関する。
III族窒化物半導体材料は、禁制帯幅が大きく、直接遷移型であるため、例えば、短波長の発光素子に適している。近年では、青紫色レーザダイオードや、緑色や青色や白色の発光ダイオード等に用いられている。
III族窒化物半導体のデバイスを作製する際、格子不整合の小さい好都合な基板材料が無く、従来からサファイア基板が用いられている。しかし、その小さくない格子不整合のために、サファイア基板上に作りこんだIII族窒化物半導体デバイスには、1cmあたり10個〜1010個程度の転位欠陥が導入されている。加えてサファイア基板は、電気伝導も熱伝導も非常に悪く、サファイア基板上のIII族窒化物デバイスのパフォーマンスは低い。
しかし近年では、転位密度が1cmあたり10個〜10個程度という高品質な単結晶窒化ガリウム基板が実現し、流通するようになった。電気伝導も熱伝導も良い当該基板にホモ成長をすることで、高いパフォーマンスを示すデバイスを簡単に得られるようになってきた。
現在流通している単結晶窒化ガリウム基板は、そのほとんどがハロゲン化気相エピタキシー(Halide Vapor Phase Epitaxy:HVPE)法によって、異種基板の上に成長し、何らかの方法によってそこから自立させて作製されている(例えば特許文献1)。
そのような製法上の事情から、単結晶窒化ガリウム基板は、製造中に割れやすかったり、大口径化が困難であったりした。製造中に割れてしまった場合、割れたパーツを主面とは反対の面をあらわにして並べ、III族窒化物多結晶の成長によって再びつなぎ合わせることで歩留りを向上させるという裏打ち技術が知られている(特許文献2)。
また、複数の種結晶を、主面をあらわにして並べて、その上に結晶成長を行うことで、隣り合うパーツを互いに結合させて大口径化させるという方法も知られている(特許文献3〜6)。
特許第4117156号公報 特開2012−56799号公報 特許第4915128号公報 特許第5332168号公報 特開2011−63504号公報 特開2012−31028号公報
しかしながら、本願発明者の検討によれば、特許文献3〜6に記載の方法では、以下のような困難が生じる。特許文献3〜5に記載の方法は、複数の種結晶片を単に並べるものであり、このために、複数の種結晶片がずれやすく、高品質な結晶の成長を行うことが難しい。特許文献6に記載の方法では、複数の種結晶片のずれを防止するために、酸化アルミニウム治具による固定を行っているが、このような固定方法を用いても、高品質な結晶の成長を行うことは難しい。
本発明の一目的は、複数の種結晶基板を並べて形成した種結晶基板上に結晶成長を行うIII族窒化物基板の作製に関し、新規な技術を提供することである。
本発明の一観点によれば、
側面同士を対向させて並べられるような形状に成形された複数の種結晶基板を用意する工程と、
前記側面同士を対向させて並んだ配置となるように、前記複数の種結晶基板を、基材上に接着剤で接着する工程と、
前記複数の種結晶基板の主面上方に、各々の主面上方に成長した結晶同士が結合して一体化するように、III族窒化物結晶を成長させる工程と、
前記III族窒化物結晶で形成されたIII族窒化物基板を得る工程と
を有するIII族窒化物基板の製造方法
が提供される。
基材上に接着剤で位置を固定して種結晶基板を並べ、結晶成長を行うことにより、高品質なIII族窒化物基板を得ることが容易になる。
図1(A)は、本発明の一実施形態による合体種結晶基板中の種結晶基板のレイアウトを示す組図であり、図1(B)〜図1(E)は、実施形態による材料基板および種結晶基板の材料取りパターンを示す概略平面図であり、図1(F)は、実施形態による種結晶基板の切り取り工程を示す概略断面図である。 図2(A)および図2(B)は、実施形態による合体基板の作製工程を示す概略断面図である。 図3(A)および図3(B)は、実施形態による合体基板の作製工程を示す概略断面図である。 図4(A)および図4(B)は、それぞれ、実施形態の第1の変形例および第2の変形例による合体基板の作製工程を示す概略断面図である。 図5(A)は、実施例による合体種結晶基板中の種結晶基板のレイアウトを示す組図であり、図5(B)〜図5(G)は、実施例による材料基板および種結晶基板の材料取りパターンを示す概略平面図である。
以下、本発明の一実施形態によるIII族窒化物基板の作製方法について説明する。III族窒化物としては、例えば、一般式AlInGa1−x−yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)で表されるものが挙げられる。
ここでは、一例として、直径75mmのIII族窒化物基板4枚から切り出した複数の種結晶基板を組み合わせて形成した種結晶基板上への結晶成長により、例えば直径100mmの大口径III族窒化物基板を作製する方法について説明する。大口径とは、基板の直径が、例えば、100mm以上、または、4インチ以上のことをいう。
以下、種結晶が切り出されるIII族窒化物基板を、材料基板と呼ぶこともある。複数の種結晶基板を組み合わせて(合体させて)形成された種結晶基板を、合体種結晶基板と呼ぶこともある。合体種結晶基板上への結晶成長により作製されたIII族窒化物基板を、合体基板と呼ぶこともある。
まず、材料基板となるIII族窒化物単結晶基板として、市販の直径75mmの(0001)基板もしくは(000−1)基板を4枚用意する。これらの材料基板から、組み合わせたら直径110mmの円板状となるような形状の種結晶基板を材料取りする。
図1(A)は、円板状に組み合わされた7枚の種結晶基板11〜17のレイアウト例を示す組図であり、種結晶基板11〜17により、合体種結晶基板20が形成される。図1(B)〜図1(E)は、4枚の材料基板31〜34のそれぞれを示す概略平面図であり、材料基板31〜34に、図1(A)の組図に対応するような、種結晶基板11〜17の材料取りパターン(後述のレーザースクライブにおける描画パターン)が示されている。なお、種結晶基板11〜17の各々を区別せずに種結晶基板10と呼ぶこともあり、材料基板31〜34の各々を区別せずに材料基板30と呼ぶこともある。
図1(A)は、合体種結晶基板20を主面側(表側)から見た図であり、図1(B)〜図1(E)は、材料基板31〜34を主面と反対側(裏側)から見た図である。したがって、図1(A)と図1(B)〜図1(E)とで、種結晶基板11〜17の各々の形状は反転して表示されている。
種結晶基板11〜17の各々は、合体種結晶基板20の外周を画定する円弧部以外は、すべて<10−10>方向に直交する辺で囲まれた形状とする。つまり、種結晶基板10の相互に対向させる側面は、すべて{10−10}面が露出した側面とする。
本例では、合体種結晶基板20の中央部に、<10−10>方向に直交する6つの辺で画定される六角形状の種結晶基板11を配置し、種結晶基板11の周りに、種結晶基板11の6つの辺それぞれで隣接する種結晶基板12〜17を配置したレイアウトとしている。このようなレイアウトに対応するように、材料基板31に、中央の種結晶基板11を画定している。また、種結晶基板11の相互に対向する1対の辺それぞれに隣接する種結晶基板を1組として、種結晶基板12,13の組を材料基板32に画定し、種結晶基板14,15の組を材料基板33に画定し、種結晶基板16,17の組を材料基板34に画定している。
図1(B)〜図1(E)に示された矢印は、それら各々の方向が、主面方位が傾いている方向を示し、それら各々の長さが、主面方位の傾きの度合いを示しており、いわゆるオフ角分布のイメージを与えるものである。
合体種結晶基板20において、各々の種結晶基板11〜17のオフ角の傾いている方向が一方向に揃うように、材料取りを行うことが好ましい。例えば、オフ角の傾いている方向同士のなす角が、合体種結晶基板20の面内中で、最大でも10°以下となるようにすることが好ましい。また、各々の種結晶基板11〜17の単体中におけるオフ角の最大値と最小値の差は、大きくとも0.5° 以下となるようにすることが好ましい。
例えばレーザースクライブ装置により、上述のような描画パターンに沿って、材料基板31〜34から種結晶基板11〜17を切り出す。この際、以下に説明するように、材料基板31〜34の裏面側(合体種結晶基板20の主面と反対側)からのレーザー照射(描画)を行い、劈開での分離を行うことが最も好ましい。
レーザースクライブの際のレーザー照射により形成された切断面は、一般に、主面に対して鉛直にならずテーパー形状になりやすい。具体的には、レーザー入射側の開口が広がりやすい。したがって、裏から描画することにより、主面側の開口を無駄に広げないという効果がある。
また、レーザー照射により形成された切断面には、一度融けて再結晶化したアモルファス状の加工変質層が存在する。したがって、円弧部以外の縁部の切断に関しては、一部の厚さ(例えば材料基板厚さの5%〜50%)を切り残してスクライブ溝を形成し、最終的に劈開で分離することが、自然な端面である劈開面(ここでは{10−10}面)を得るために最も好ましい。なお、円弧部以外の辺部も、レーザー照射で基板厚さ方向にフルカットするようにしてもよい。
図1(F)は、裏面側からのレーザー光40の照射と劈開により、材料基板30から種結晶基板10を切り取る工程を示す概略断面図である。形成される側面100において、主面側に劈開面({10−10}面)101が配置されて、種結晶基板10が切り取られる。
レーザースクライブを施すと、III族窒化物の切粉が大量に発生して、種結晶基板10に付着し、そのままでは後述の結晶成長に悪影響を及ぼす。そこで、当該切粉を除去する洗浄を行う。洗浄方法としては、例えば、塩酸と過酸化水素水を1対1で混合した薬液でのバブリング洗浄が好適である。
以上のようにして、側面同士を対向させて並べられるような形状に成形された種結晶基板11〜17が用意される。
次に、合体基板を作製する方法について説明する。図2(A)〜図3(B)は、本実施形態による合体基板の作製工程を示す概略断面図である。
図2(A)を参照する。基材50上に、図1(A)のレイアウトにしたがって、種結晶基板11〜17(複数の種結晶基板10)を並べる。つまり、{10−10}面101の露出した側面100同士が、なるべく隙間を空けないように近接して対向するように、種結晶基板10を並べる。この際、種結晶基板10の裏面に接着剤60を塗布して、基材50上における位置が固定されるように、種結晶基板10を並べる(側面100同士を対向させて並んだ配置となるように、複数の種結晶基板10を、基材50上に接着剤60で接着する)。このようにして、基材50上に、合体種結晶基板20が形成される。複数の種結晶基板10は、主面の面方位を揃えて配置する。つまり、合体種結晶基板20の主面は、全体として、(0001)面とするか、または、(000−1)面とする。
後述の結晶成長において、種結晶基板10の各々の主面上方に成長した結晶同士が、面内方向で結合して一体化するように、側面100同士を近接させて、種結晶基板10を並べることが好ましい。例えば、並べられた種結晶基板10の対向する辺間のギャップは、最も広い場所でも、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下とする。ギャップが広すぎると、後述の結晶成長において、結合不良や貫通孔が生じやすいためである。
基材50の材料としては、その線膨張係数が、種結晶基板10およびその主面上に成長される結晶を構成するIII族窒化物の線膨張係数と比べて同等か小さいものが好適である。基材50の線膨張係数をこのように選択することにより、後述の結晶成長における昇温に伴って種結晶基板10間のギャップが広がってしまうことを抑制できる。ここで、主面が(0001)面もしくは(000−1)面であるので、考慮すべき線膨張係数は、主面に平行な面内方向すなわち<11−20>方向(a軸方向)の線膨張係数である。
<11−20>方向の線膨張係数は、例えばGaNの場合、5.59×10−6/Kであり、また例えばAlNの場合、4.15×10−6/Kである。線膨張係数がこれらに比べて同等もしくは小さく、安価で入手が容易であり、ある程度の剛性を示す基材材料としては、例えば、等方性黒鉛、パイロリティックグラファイト、シリコン、石英等が挙げられる。
接着剤60としては、後述の結晶成長における成長温度、成長雰囲気に耐え、線膨張係数がIII族窒化物と近いものが好ましい。具体的には、ジルコニアやシリカなどを主成分とした接着剤が好適であり、例えば、市販のアロンセラミックC剤やE剤(東亜合成株式会社製)が挙げられる。
図2(B)を参照する。接着剤60が固化したら、合体種結晶基板20の形成された基材50を、結晶成長装置、具体的にはハイドライド気相成長(HVPE)装置に投入する。
種結晶基板10の分解を防ぐ目的でNHガスを供給しながら、950℃〜1100℃の範囲内の温度、より好ましくは1050℃〜1100℃の範囲内の温度となるように、基板温度を昇温する。基板温度が目標温度に達したら、III族原料ガスの供給を開始して、III族窒化物結晶を厚さ方向に例えば1mm成長する。すると、各々の種結晶基板10の主面から成長してきた結晶同士が、面内方向で完全に結合して、大口径なIII族窒化物単結晶層70が得られる。
図3(A)を参照する。次に、基材50から、III族窒化物結晶部80(種結晶基板10と成長した単結晶層70との積層部)を自立させる(分離させる)。例えば基材50としてパイロリティックグラファイトを用いた場合、当該基材の最表面層が犠牲層になって、基材50からの自立が容易に行われる。それ以外の材料の基材50を用いた場合は、適当なスライサーを用いてIII族窒化物結晶部80を基材50から自立させる。なお、自立した結晶部80の裏面に固着している接着剤60は、HF水溶液等での洗浄により除去する。
図3(B)を参照する。次に、自立したIII族窒化物結晶部80に、外径加工および表裏面の研磨加工を施す。特に種結晶部である種結晶基板10は完全に除去されることが好ましい。このようにして、直径100mmの大口径を有するIII族窒化物合体基板90が得られる。
上述の実施形態のIII族窒化物基板の作製方法により、例えば以下のような効果が得られる。
ここで、第1の比較形態として、基材上に接着剤を用いず種結晶基板を並べて載置しただけの合体種結晶基板上に、結晶成長を行う場合について考える。第1の比較形態では、細心の注意を払って基材上に種結晶基板を並べ合体種結晶基板を形成しても、合体種結晶基板を結晶成長装置に投入する際に生じる衝撃や、結晶成長装置において成長の均一性を上げるために合体種結晶基板を面内方向に回転させる際に生じる振動や、原料ガス等のガスの流れで生じる力等により、各々の種結晶基板が動いてしまい、種結晶基板同士が適切に近接対向した状態での結晶成長が極めて困難である。
その結果、各々の種結晶基板上に成長した結晶同士の結合が不充分となって、合体基板としての強度が不充分となったり、主面側から裏面側への貫通孔が形成されたり、そもそも結合が起こらなかったりする。また、対向する辺同士の平行度が悪くなった場合、合体結合領域に極めて高密度な欠陥が発生し、クラックや貫通孔の原因となるばかりか、それによって発生する応力を緩和するために、すべての種結晶基板の主面が同一平面上には存在しえなくなったりする。
すなわち、第1の比較形態では、各々の種結晶基板のずれによって、出来上がる結晶の特性や形が毎回異なりやすく、また、大口径基板が得られない場合もしばしばある。運よく大口径基板になったとしても、貢通孔や極めて高密度な欠陥集中領域が形成されたりする。研磨加工が困難であったり、研磨加工後のオフ角ばらつきが必ずしも小さくならなかったりするといった問題もある。
また、第2の比較形態として、基材上に接着剤を用いず種結晶基板を並べ、外周から治具で固定した合体種結晶基板上に、結晶成長を行う場合について考える。複数の種結晶基板を全くずれないよう固定させるには、少なくとも室温において、並べられた種結晶基板の配列方向に、全体的に圧力をかけることとなる。すると、結晶成長温度では、熱膨張の影響によりその圧力が増大し、種結晶基板の配列の崩れを引き起こしたり、主面が同一平面上に存在しえなくなったり、いくつかの種結晶基板にチッピングやクラックが発生したりし、さらに、その際に発生したパーティクルが主面上に乗ったりして、種結晶上への結合成長、並びに結果として得られる基板の品質に著しい悪影響を及ぼすという問題が生じる。
一方、実施形態では、基材上に接着剤で種結晶基板を貼り付けることにより、種結晶基板の位置を固定するようにして、合体種結晶基板を形成している。これにより、合体種結晶基板を成長装置内に導入する工程や、室温から成長温度まで昇温する工程や、合体種結晶基板を成長装置内で回転させる工程等を行っても、種結晶基板の配置がずれないようになり、また、種結晶基板間に過度の圧力がかかることも抑制されて、種結晶基板同士が適切に近接対向した状態での結晶成長が容易になる。その結果、主面からその反対面まで貫通するような孔が無く、主面全面に亘ってオフ角の最大値と最小値の差が0.5°以内であり、例えば直径100mm以上の大口径の、高品質なIII族窒化物基板を、歩留りよく作製することが容易になる。
第3の比較形態として、種結晶基板同士の対向する側面が、{10−10}面以外の面も含んで構成されている場合について考える。第3の比較形態では、種結晶基板の角部同士が近接する場所(実施形態について図1(A)に例示する位置21と同様な位置)で、種結晶基板上に成長した結晶同士の結合が不完全になりやすく、表裏に貫通する孔が残留しやすい。
一方、実施形態では、種結晶基板同士が{10−10}面の露出した側面のみで対向するように、種結晶基板形状が画定されている。これにより、種結晶基板の角部同士が近接する場所(図1(A)に例示する位置21)における貫通孔形成等の不具合を抑制することができる。
次に、上述の実施形態の第1の変形例によるIII族窒化物基板の作製方法について説明する。図4(A)は、本変形例による合体基板の作製工程を示す概略断面図である。以下、主として上述の実施形態との違いについて説明する。
図4(A)は、基材51上に複数の種結晶基板10を並べる工程を示し、上述の実施形態において図2(A)を参照して説明した工程に対応する。種結晶基板10を、裏面に接着剤60を塗布して並べる際に、接着剤60の量が多ければ、種結晶基板10同士の隙間から、余分な接着剤60が主面側にはみ出してくる可能性がある。
本変形例の基材51には、種結晶基板10同士が隣接する縁部に沿って、余分な接着剤60を流し込ませるための溝52が形成されている。本変形例では、このような溝52を有する基材51を用いることにより、隣接する種結晶基板10同士の間から接着材60がはみ出すことを抑制できる。なお、連続した溝形状でなくとも、少なくとも、隣接する種結晶基板10同士の間に、余分な接着剤60を流し込められるような凹部が形成されていれば、同様な効果を生じさせることができる。本変形例におけるその他の工程は、上述の実施形態と同様であり、本変形例においても、高品質な合体基板の形成が容易になるという効果は同様である。
次に、上述の実施形態の第2の変形例によるIII族窒化物基板の作製方法について説明する。図4(B)は、本変形例による合体基板の作製工程を示す概略断面図である。以下、主として上述の実施形態との違いについて説明する。
上述の実施形態では、成長させたIII族窒化物単結晶層70から1枚の合体基板90を得る例(図3(B)参照)について説明したが、図4(B)に示す本変形例のように、厚く(例えば10mm程度に)成長させたIII族窒化物単結晶層70を(厚さ方向と交差するように)スライスして、複数枚の合体基板901、902等を得るようにすることもできる。
さらに、以下のような他の実施形態を挙げることもできる。上述の実施形態では、角部の形状を、{10−10}面で囲まれた六角形の角部状とする種結晶基板形状の例について説明した。しかし、種結晶基板形状は、このようなものに限らず、角部の形状を、{10−10}面で囲まれた正三角形の角部状とするような形状でもよい。このような種結晶基板形状としても、種結晶基板の角部同士が近接する場所における貫通孔形成抑制等の効果を得ることができる。
また、上述の実施形態では、例えば直径100mm以上(あるいは直径4インチ以上)の大口径の合体基板を作製する場合について例示したが、これより小さい直径の合体基板を作製することも可能である。また、合体種結晶基板を形成する際の、種結晶基板の材料取りの仕方は、上述の実施形態で例示したレイアウトに限定されない。種結晶基板の各々を、例えば、直径2インチ以下の基板から作製するようにしてもよい。なお、必要に応じて、円板状以外の外形の合体基板を作製することも可能である。
[実施例]
材料基板として、市販の直径2インチ、厚さ400μmのGaN(0001)基板を8枚用意した。図5(A)は、直径110mmの円板状に組み合わされた12枚の種結晶基板111〜122のレイアウトを示す組図であり、図5(B)〜図5(G)は、8枚の材料基板131〜138に画定された種結晶基板111〜122の材料取りパターン(描画パターン)を示す概略平面図である。種結晶基板111〜122の各々は、円板状の合体種結晶基板125の外周を画定する円弧部以外は、すべて<10−10>方向に直交する辺で囲まれた形状とした。
なお、上述の実施形態での説明と同様に、合体種結晶基板125を示す図5(A)は主面側を示し、材料基板131〜138を示す図5(B)〜図5(G)は主面と反対側を示しており、図5(A)と、図5(B)〜図5(G)とで、種結晶基板111〜122の形状は反転している。また、図5(B)〜図5(G)における矢印は、図1(B)〜図1(E)について説明したのと同様に、オフ角分布のイメージを与えるものである。
材料基板131〜138に主面と反対側の面からレーザー照射(描画)を行うレーザースクライブにより、種結晶基板111〜122を得た。より具体的には、以下のような処理を行った。レーザー光として、波長532nm、出力5Wのものを用いた。2mm/sの送り速度で当該描画パターンを5回重ね書きしたところ、350μmの深さの溝が掘られた。このパターニングで形が定義された種結晶基板111〜122を劈開で切り出し、材料基板131〜138から独立させた。そして、切断に伴って発生した切粉などを除去する目的で、塩酸と過酸化水素水の1対1の混合液で洗浄し、水洗後にNブローで乾燥させた。
次に、種結晶基板111〜122を、(0001)面を上向きにして、直径110mmの円板状のパイロリティックグラファイトからなる基材上に、アロンセラミックC剤を用いてなるべく隙間が空かないように緊密に、図5(A)のようなレイアウトで貼り付けて、合体種結晶基板125を形成した。この時、オフ角の傾いている方向が一方向に揃うようにした。図5(B)〜図5(G)のようなパターンで切り出した種結晶基板111〜122を図5(A)のようなレイアウトで並べることにより、オフ方向を一様にすることができた。接着剤は、24時間の自然乾燥後、90℃で1時間乾燥させ、さらに150℃で1時間乾燥させて、固化させた。ここで、光学顕微鏡により、各パーツ間のギャップを観察したところ、最も広いところでも42μmであることを確認した。
その後、合体種結晶基板125の形成された基材を、HVPE装置に投入した。種結晶の分解を防ぐ目的でNHガスを供給しながら、1070℃に昇温した。その後、GaClガスの供給分圧を3.2kPa、NHガスの供給分圧を13kPaとして、H/N混合雰囲気で結晶成長を行った。この時、H組成は20%とした。5時間成長したところ、厚さ1.2mmのホモエピタキシャル層が形成され、さらに、隣り合う種結晶から成長してきたホモエピタキシャル層同士が完全に結合して、直径110mmのGaN結晶が得られた。
基材のパイロリティックグラファイトから、その最表面層が犠牲層になって、成長後の結晶の自立が容易に行われた。自立した結晶の裏面には、接着剤成分が固着していたが、HF20%の水溶液に2時間浸漬したところ、当該成分をすっかり除去することができた。
その後、自立した結晶の外径加工および表裏面の研磨加工を施した。以上のようにして、直径100mmの大口径III族窒化物基板が得られた。全面に貫通孔は無いことを、目視および光学顕微鏡で確認した。主面の面方位分布を<10−10>方向、及び<11−20>方向に5mmピッチでX線回折法により評価した。その結果、オフ角の最大値と最小値の差が0.2°であった。
[比較例1]
比較例1は、実施例と異なり、種結晶基板を、接着剤を用いずに基材上に配置し、外周からアルミナ製治具で固定した。そして、ホモエピタキシャル成長による合体成長を行った。その結果、各々の種結晶基板上に成長した結晶がモザイク状に合体し、同一平面では合体しなかった。また、結合が不十分な箇所が散見され、貫通孔が複数形成された。さらに、アルミナ製治具上に発生した多結晶GaNと、種結晶基板から成長開始した結晶GaNとの固着が生じ、外周部に高密度なクラックが発生した。このようにして得られた比較例1の結晶に対しては、その後の加工を施すことができなかった。
[比較例2]
比較例2は、実施例と異なり、種結晶基板を、接着剤を用いずに、結晶成長装置のサセプタ上に単純に並べて、ホモエピタキシャル成長による合体成長を行った。運よく結合した種もあったが、面内で回転して結合が不完全なもの(貫通孔も形成)、ギャップが広がり過ぎて結合のなされなかったものが大多数であった。したがって、円形の大口径結晶としては、取得できなかった。
以上、実施形態および実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
10〜17,111〜122 種結晶基板
20,125 合体種結晶基板
30〜34,131〜138 材料基板
40 レーザー光
50,51 基材
52 (基材上の)溝,凹部
60 接着剤
70 III族窒化物単結晶層
80 III族窒化物結晶部
90 III族窒化物合体基板
100 (種結晶基板の)側面
101 劈開面({10−10}面)

Claims (2)

  1. 側面同士を対向させて並べられるような形状に成形された複数の種結晶基板を用意する工程と、
    隣り合う前記種結晶基板の前記側面同士が対向して並んだ配置となるように、前記複数の種結晶基板を、基材上に接着剤で接着する工程と、
    前記複数の種結晶基板の主面上方に、各々の主面上方に成長した結晶同士が結合して一体化するように、III族窒化物結晶を成長させる工程と、
    を有し、
    前記基材の材料は、前記III族窒化物結晶の成長の後、前記基材に接着された前記種結晶基板が前記基材から分離する際に、前記基材の最表面層が犠牲層となるものであるIII族窒化物基板の製造方法。
  2. 前記基材の材料は、パイロリティックグラファイトである請求項1に記載のIII族窒化物基板の製造方法。
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