JP6780098B2 - 鉄道車両 - Google Patents

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Description

本発明は、吸音機能を有する内装材を備える鉄道車両に関する。
鉄道車両を構成する構体にあって、軽量で、車外騒音が車内へ透過しにくい遮音性の高い構体(側面をなす側構体や、屋根をなす屋根構体など)に関する技術は、数多く公開されている。特に、高速車両を構成する側構体および屋根構体(ダブルスキン構体)は、対向する2枚の面板をリブで接続するアルミニウム合金からなる押し出し形材で構成される。これらダブルスキン構体は、強度部材を内在するため、部品点数が少なく、軽量かつ剛性が高い点に特徴がある。
ダブルスキン構体(側構体、屋根構体および床面をなす台枠など)の車内側の面には、側パネル、天井パネルなどの内装パネルや上床が取り付けられる。側構体と側パネルとの間および屋根構体と天井パネルとの間、台枠と上床の間には、断熱と遮音を目的とした断熱吸音材が備えられる。
上述した構成は、外側のダブルスキン構体と内側の内装パネルからなる2枚の板から成る二重壁構造と捉えることができ、このような二重壁構造においては、中間の空気層や吸音層の厚さを大きくすることで、遮音性が向上することが一般に知られている。あるいは、ダブルスキン構体または内装パネルの面密度(単位面積あたりの重量)を大きくすることで、質量則の効果により遮音性が向上することが知られている(非特許文献1)。
しかしながら、中間空気層/吸音層の厚さを大きくすることは、客室スペースを狭くすることになるため、乗客の定員数を確保する観点からは、中間空気層/吸音層の厚さを大きくすることには限界がある。
一方、ダブルスキン構体や内装パネルの面密度を大きくすることは、車体の重量が増加するとともに、走行時のエネルギー消費量も増加させる傾向にあるため、構体や内装パネルの面密度を大きくすることにも限界がある。
このような課題に対し、例えば、特許第4339324号公報(特許文献1)には、車両構体を構成するダブルスキン構造の軽量合金構造体の片面に、真空断熱パネルを中央の部材とし、該パネルの両面を不織布または発泡体の弾力性のある吸音材で挟み込んだ断熱吸音層を形成して、その上を内装材で覆うように施工する技術が示されている。すなわち、ダブルスキン構体側から透過してくる騒音を、吸音材の弾性と真空断熱パネルの剛性の相互作用により、透過損失を向上させる構造が開示されている。
特許第4339324号公報
「建築・環境音響学」共立出版
車体の遮音特性は、透過損失という指標で測ることができ、一般に質量則の効果により、周波数の増加とともに透過損失が増加(すなわち、遮音性が向上)する。しかしながら、様々な理由により、実際の車体では、透過損失が周波数とともに一律に増加せず、特定の周波数で透過損失の落ち込みが見られる場合がある。
その要因としては、ダブルスキン構体の共振、コインシデンス効果または二重壁構造における両端の板と中間空気層の相互作用による共鳴/共振現象などが存在することが知られている(非特許文献1)。
この点について、鉄道車両の構造と照らし合わせて詳細に説明する。以下において図を用いるに際し、各方向を定義する。鉄道車両の長手方向(レール方向)をX方向、鉄道車両の幅方向(枕木方向)をY方向および鉄道車両の高さ方向(上下方向)をZ方向とする。以下では、単に、X方向、Y方向およびZ方向と記す場合がある。
図1は、鉄道車両の断面を表した模式図である。鉄道車両の構体は、対向する2枚の面板をリブで接続したアルミニウム合金製の中空押し出し形材で6面体が構成されたダブルスキン構体1である。ダブルスキン構体1は、X方向に沿って押し出し成型され、床面を成す台枠20(床構体)、台枠20のY方向の両端部に立設する側構体25、台枠20のX方向の両端部に立設する妻構体(図示なし)、および、側構体25および妻構体(図示なし)との上端部に載置する屋根構体30から構成される。
ダブルスキン構体1を構成する、台枠20の上面には床板2が、同様に、側構体25の車内側には側パネル3が、屋根構体30の車内側には天井パネル4が、それぞれ取り付けられる。側構体25と側パネル3との間、および、屋根構体30と天井パネル4との間には、断熱性および吸音性を有する吸音材5が備えられる。吸音材5の材料としては、メラミンフォームなどの発泡樹脂または炭素繊維などの繊維系材料が用いられる。また、床板2の上面には、座席6が固定される。
上述した構体構造を備える鉄道車両が走行した時に、車内で観察される車内騒音の周波数特性は、100Hz〜1kHzの間にピーク値を持つ場合が多い。これは、以下に示す理由によるものであると考えられる。
(a)側構体25および屋根構体30などの共振周波数(固有値)による振動放射音の増大
(b)対向する2枚の面板から成る側構体25および屋根構体30など、コインシデンス効果による透過損失の減少(特定周波数において、車外の音が車内へ透過しやすくなる)
(c)二重壁構造として構成される側構体25と側パネル3および屋根構体30と天井パネル4における両端の板と中間空気層との相互作用による共振/共鳴現象
また、上記の周波数帯域にピーク周波数を有する騒音源が多く存在することや、100Hz以下の低周波では、人間の聴覚特性を模擬したA特性フィルタによって騒音レベルは小さくなるとともに、1kHz以上の高周波では、車体の減衰効果により車内音は相対的に小さくなる。そのため、相対的に100Hz〜1kHzの車内騒音が大きくなるなどの要因が考えられる。
このように特定の周波数で透過損失の落ち込みが発生すると、上述した中間空気層/吸音層の厚さを大きくすること、また、ダブルスキン構体や内装パネルの面密度を大きくすること、などによる対策が考えられる。しかしこの場合、車両に対して多大な重量増加や客室スペースの縮小をもたらすこととなり、様々な車両制約条件との両立が難しくなる課題がある。
本発明の目的は、軽量で省スペースながら、車両構体を構成するダブルスキン構体の共振、コインシデンス効果または二重壁構造における両端の板と中間空気層の相互作用による共鳴/共振現象などに伴う車内騒音を低減できる鉄道車両を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明に係る鉄道車両は、6面体からなる構体を有し、この構体の車両内側の面に動吸振器を内蔵する吸音材を備え、吸音材は、車両内側に向かって第1の板状吸音材と第2の板状吸音材とを重ね合わせて構成され、動吸振器は、筒状体、当該筒状体を仕切ることで形成した複数の空間および当該空間毎に設けた孔により共鳴器として構成され、前記第1の板状吸音材と前記第2の板状吸音材との間に挟持されることを特徴とする。
本発明によれば、鉄道車両に対して、軽量で省スペースを維持しながら、車両構体を構成するダブルスキン構体の共振、コインシデンス効果または二重壁構造における両端の板と中間空気層の相互作用による共鳴/共振現象などに伴う車内騒音を低減させることができる。
図1は、鉄道車両の断面を表した模式図である。 図2は、実施例1に係る鉄道車両の長手方向に交差する部分断面図である。 図3は、孔開き管の長手方向に沿う断面図である。 図4は、孔開き管の長手方向に交差する断面図(図3に示すB−B断面図)である。 図5は、孔開き管を内部に保持する吸音材の構成を示す模式図である。 図6は、孔開き管を内蔵する吸音材を備える側構体の模式図である。 図7は、従来の内装材を備える側構体の透過損失と本発明に係る内装材を備える側構体の透過損失とを比較したグラフを示す図である。 図8は、実施例2に係る孔開き箱を内蔵する吸音材の構成を示す模式図である。 図9は、吸音材として孔開き箱を設ける際に供される多孔板の模式図である。 図10は、実施例2に係る鉄道車両の長手方向に交差する部分断面図である。 図11は、実施例3に係る鉄道車両の長手方向に交差する部分断面図である。
以下に、本発明に係る実施の形態として、実施例1〜3について、図を参照しながら説明する。
図2は、実施例1に係る鉄道車両の長手方向に交差する部分断面図である。実施例1に係る鉄道車両は、構体の透過損失の減少を補う内装構造を備えるものである。図3は、孔開き管の長手方向に沿う断面図であり、図4は、孔開き管の長手方向に交差する断面図である(図3に示すB−B断面図)。また、図5は、孔開き管を内部に保持する吸音材の構成を示す模式図である。
図2に示すように、ダブルスキン構体1を構成する側構体25(または屋根構体30)の車両内側の面には、複数の孔開き管10を有する動吸振器(ダイナミックダンパ)、この動吸振器(ダイナミックダンパ)を内蔵する吸音材105、および、この吸音材105を覆う態様の側パネル3(屋根構体30に対しては天井パネル4)が備えられる。
図3に示すように、動吸振器(ダイナミックダンパ)を成す孔開き管10は、矩形断面を有する筒状体(例えば、角パイプ)であり、そのX方向に沿って離散的に複数の仕切り板18をL寸法ピッチで備えたものである。管17は、仕切り板18で区画されるとともに容積Vを有する空間を成し、直径dの孔11を区画毎に1箇所だけ設け、ヘルムホルツ共鳴器を構成する。
孔11を備える空間の容積をV、孔開き管10の板厚をt、孔11の直径をdとすると、そのヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数fは、式(1)で表される。ただし、cは音速、sは孔11の断面積である。
Figure 0006780098
容積Vに音が入射すると、容積Vの空気がバネとして働き、容積Vと板厚tと孔の直径dから導かれる共振周波数において、孔11部分における空気の激しい振動から生じる摩擦損失によって大きな吸音作用が生じる。
例えば、容積Vを一辺がL=20mmの立方体、板厚tが1mm、孔11の直径dが2mmの場合、式(1)から計算すると、共鳴周波数fは約333Hzとなる。このように、孔開き管10の寸法、板厚および孔11の直径を適切に設計することで、孔開き管10の共鳴周波数fを任意に設定することができる。
孔開き管10は、押し出し成型されるアルミニウム合金製の断面形状が矩形の角パイプに対して、図4に示すように、そのZ方向の半分の深さのところに複数の切り込みを施工して、この切り込みに仕切り板18を挿入して製作してもよい。この時、仕切り板18のZ方向の下半分のY方向寸法は、W寸法から管17の厚さの2倍を減じたW1寸法とし、仕切り板18のZ方向の下半分のZ方向寸法は、H/2寸法から管17の厚さだけ減じたH1寸法とする。
その後、任意の容積Vを有する複数の空間を管17に設けるとともに、各空間に対応する孔11を施工することにより、複数のヘルムホルツ共鳴器を備える孔開き管10を準備できる(図3および図4、参照)。なお、以上では矩形断面を有する角パイプの例を示したが、角パイプに限定されず、円形の断面形状を有する円パイプから孔開き管10を製作してもよい。また、3Dプリンタで使われる熱硬化性樹脂などを用いて、孔開き管10を製作してもよい。
図5は、孔開き管10を内部に保持する吸音材105の構成を示す模式図である。吸音材105は、Y方向に分割できる2枚の軟質系の発泡樹脂製(例えば、メラミンフォームなど)の吸音材105aおよび105bから成る。発泡樹脂製の吸音材105aおよび105bの互いに対向する面には、矩形断面の複数の溝(凹部)12aおよび12bをX方向に沿って設ける。
孔開き管10を内蔵する吸音材105は、孔開き管10を吸音材105aおよび105bに設けられる溝12aおよび12bに備えた後、一対の吸音材105aおよび105b双方を閉じ、吸音材105aおよび105bの対向する面または吸音材105aおよび105bのZおよびX方向の端面を、接着剤やテープ等の接合材で固定することで製造される。
この時、図2に示すように、孔開き管10に備えられる孔11が側構体25(または屋根構体30)に向かい合う態様(すなわち、孔11を側構体25の車両内側の面の近くに配置する態様)で、孔開き管10は吸音材105aおよび105bに挟持される。これにより、ダブルスキン構体1を透過して車内に侵入する騒音が、孔開き管10の孔11からその内部への入り込みが容易となり、効率良く音のエネルギーを散逸(吸音)できる。
なお、接着材などを用いて、孔開き管10と溝12aおよび12bとを接着するか、吸音材105aおよび105b双方の突き合わせ面を接着してもよいところ、音波を吸音材105の内部で効率よく減衰させるためには、音波の導波経路に接着材などの障害物がない方が望ましい。
吸音材105は、柔らかいスポンジ状の材質であるため、好ましくは溝12aおよび12bの寸法を、孔開き管10の断面のW寸法およびH寸法(図4)よりも少しだけ小さくするとよい。そうすると、孔開き管10を溝12aおよび12bに押し込むことにより、孔開き管10と吸音材105aおよび105bを嵌合することができ、吸音材105の内部に孔開き管10を保持できる。
上述した構成は、ダブルスキン構体1と内装パネル3との間に孔開き管10を挿入したことだけではなく、吸音材105に孔開き管10を保持する機能を付与する点に特徴がある。この構成によって、孔開き管10をダブルスキン構体1に取り付ける部品が不要になるため部品点数を削減でき、製作工数を少なくして軽量化を促進することができる。併せて、ダブルスキン構体1の振動が孔開き管10に直接伝わらないため、孔開き管10からの振動放射音が車内騒音を大きくする影響を抑制することができる。
図6は、孔開き管10を内蔵する吸音材を備える側構体25の模式図である。側構体25は、窓14(開口部)を有し、窓14を中心にX方向に沿って直列に設けた複数の区画Mを有する。
孔開き管10を内蔵する吸音材105cは、窓14の上部の側構体25の車両内側に配置され、また、孔開き管10を内蔵する吸音材105dは、窓14の下部の側構体25の車両内側に配置される。さらに、隣り合う窓14との間の吹き寄せ部には、孔開き管10を内蔵する吸音材105eが配置される。さらに車両内側には、側パネル3が配置されることになる。
側構体25は、Z方向の中央部が車外側に膨らむ形態であるため(図1、参照)、この形態に吸音材105cおよび105dを容易に沿わせることができるように、孔開き管10を、側構体25の長手方向(X方向)に沿う態様で吸音材105cおよび105dに内蔵させる。ただし、吹き寄せ部は、X方向の寸法が小さいため、Z方向に沿う態様の孔開き管10を吸音材105eに内蔵させる。
吸音材105は、孔開き管10を内蔵しているので、孔開き管10に備えられる孔11が車両外側に向く姿勢になることに注意して、側構体25(または屋根構体30)の形態に合わせながら、それら構体の車両内側に吸音材105を備えることができる。
図7は、従来の内装材を備える側構体の透過損失と本発明に係る内装材を備える側構体の透過損失とを比較したグラフで、横軸を周波数(Hz)、縦軸を透過損失(dB)としている。点線で示す曲線(孔開き管10なし)は、従来の鉄道車両を構成するダブルスキン構体1とこのダブルスキン構体1の車両内側に備えられる孔開き管10を内蔵しない内装材とを組み合わせた場合の透過損失を示す。実線で示す曲線(孔開き管10あり)は、ダブルスキン構体1の車両内側に実施例1に係る孔開き管10を内蔵する内装材を備えた場合の透過損失を示す。
ダブルスキン構体1のコインシデンス効果による周波数fにおける透過損失の減少は、160Hz〜500Hzの間に存在する場合が多い。このため、ダブルスキン構体1の車両内側に、この160Hz〜500Hzの間に共鳴周波数を有する孔開き管10から成るヘルムホルツ共鳴器(動吸振器)を備えれば、コインシデンス効果によって構体1を透過してしまう160Hz〜500Hzの騒音を、孔開き管10により吸音させることができる。すなわち、ダブルスキン構体1に孔開き管10を内蔵する吸音材105を備える鉄道車両は、結果的に広い周波数帯域にわたって大きな透過損失を有することができる。
ただし、ダブルスキン構体1のコインシデンス効果による透過損失の減少は、対向する2枚の面板の板厚やこれら面板を接続するリブの板厚や配置等によって決まる。このため、ダブルスキン構体1のすべての部位において、コインシデンス効果による透過損失の減少が発生する訳ではないことに、留意が必要である。
これに対処するために、ダブルスキン構体1の透過損失が減少する部位に対応する車両内側にのみ、孔開き管10を内蔵する吸音材105を選択的に設け、コインシデンス効果による透過損失の減少が小さい部位には、従来の吸音材5(孔開き管10を内蔵しない)を設けるとよい。
さらに、透過損失の減少が発生する周波数は、側構体25が有する窓の下部または上部あるいは屋根構体30の天井など、部位によって異なる。そのため、それぞれの部位に観察されるコインシデンス効果による透過損失の減少する周波数に合わせて、孔開き管10の容積Vや孔11の直径dを適切に設計する。これにより、ダブルスキン構体1の全面において透過損失が減少する部位の存在しない鉄道車両を構成して、走行時の車内騒音をより低減することができる。このようにして、軽量かつ省スペースであって、特定の周波数において透過損失を改善できる鉄道車両を提供することができる。
以上では、実施例1として、側構体25の車両内側の面に、孔開き管10を内蔵する吸音材105を備える実施形態を示したが、屋根構体30、台枠(床構体)20および妻構体(図示なし)の車両内側の面に、実施例1に係る構成の吸音材105を備えてもよい。
特に、台車上の台枠(床構体)20については、台車からの固体伝播音の加振成分が特定の周波数でピークを持つ場合がある。これに対して、台枠(床構体)20の透過損失が低下する周波数だけでなく、このような加振力のピーク周波数に対応する共鳴周波数を有するヘルムホルツ共鳴器(孔開き管10、動吸振器)を設計することも、鉄道車両の車内騒音を低減することに有効である。
さらに、以上では、構体の構造としてダブルスキン構体1を用いて説明したが、実施例1は、構体の構造をダブルスキン構体に限定するものではなく、軽量なシングルスキン構体にも適用可能である。この場合には、シングルスキン構体の固有振動数に対応して、透過損失が減少する周波数を共鳴周波数にもつ孔開き管10を内蔵する吸音材105を、シングルスキン構体の車両内側に備えることにより、上述した効果を奏することができる。
図8は、実施例2に係る孔開き箱16を内蔵する吸音材105の構成を示す模式図である。実施例2は、吸音材105が、実施例1に係る管状の孔開き管10に替えて、箱状の孔開き箱16を内蔵するものである。すなわち、孔開き部材の形状は、必ずしも実施例1のように管形状である必要はなく、箱形状にする形態であってもよい。図8に示すように、複数の孔開き箱16を、吸音材105(105aおよび105b)に備えられる凹部(12aおよび12b)に埋め込む形態とする。
図9は、吸音材として孔開き箱を設ける際に供される多孔板19の模式図である。図10は、実施例2に係る鉄道車両の長手方向に交差する部分断面図である。多孔板19と吸音材105から構成される内装構造を用い、少ない工程で複数の孔開き箱16の機能を備える。
吸音材105は、形状を保持するために軟質系発砲樹脂(例えば、メラミンフォームなど)から構成され、比較的大きい厚みを有する吸音材105gを準備する。図10に示すように、吸音材105gの一方の面から所定の容積Vを確保するための角柱状の穴(凹部)19cを複数設ける。
次に、図10に示す吸音材105を形成する過程を簡潔に示す。先ず、穴19cを塞ぐ多孔板19を準備する。多孔板19は、図9に示すように、穴19c(2点鎖線で示す)を塞ぐ蓋部19a、複数の蓋部19aを一体に接続する接続部19bおよび蓋部19aに設ける孔11を有する。接続部19bは、隣接する蓋部19a同士を接続する態様で備えられるとともに、多孔板19は、接続部19bと接続部19bとの間には隙間19dを有する。
穴19cを備える吸音材105eに多孔板19を載置した後、多孔板19の上面に厚みの小さい板状の吸音材105fを重ねてこれらを一体に固定する。これによって、図8に示す複数の孔開き箱16(動吸振器)を備える吸音材105とほぼ同様の機能を備える吸音材を、少ない工数で準備することができる。また、吸音材105fおよび105g並びに多孔板19は、可撓性を有するので、側構体25(または屋根構体30)の車両内側の曲面に沿う形状で構成することができる。
さらに、多孔板19に隙間19dを設けることにより透過音の吸音を妨げないので、透過音は、吸音材105fから吸音材105gに進行する過程において、これら吸音材105fおよび105gによって吸音されることになる。
また、透過損失の減少が発生する周波数は、先のとおり、側構体25が有する窓の下部または窓の上部あるいは屋根構体30の天井など、部位によって異なる。そのため、それぞれの部位に観察されるコインシデンス効果による透過損失の減少する周波数に合わせて、孔開き箱16(穴19c)の容積Vや孔11の直径dを適切に設計する。これにより、ダブルスキン構体1の全面において透過損失が減少する部位の存在しない鉄道車両1を構成して、走行時の車内騒音を低減することができる。このようにして、軽量かつ省スペースであって、特定の周波数において透過損失を改善できる鉄道車両を提供することができる。
図11は、実施例3に係る鉄道車両の長手方向に交差する部分断面図である。実施例3に係る吸音材105は、実施例1に係る孔開き管10や実施例2に係る孔開き箱16に替えて、球体15を内蔵する。
ここで、吸音材105は、柔らかいスポンジ状の材質を採用するため、ある程度の弾性を有することから、吸音材105をバネ、球体15をマスとするバネ−マス系が構成される。そこで、吸音材105の弾性または球体15の重量を適切に調整して、このバネ−マス系の共振周波数を図7に示すf(透過損失が減少する周波数)に合わせると、バネ−マス系は一種の動吸振器(ダイナミックダンパ)として作用する。この結果、ダブルスキン構体1を透過する周波数fに対応する音のエネルギーは、吸音材105の内部において吸音材105と球体15とから構成されるバネ−マス系の共振エネルギーに変換された後、熱エネルギーとなって散逸する。
車外から車内へ伝搬する音波は、一旦ダブルスキン構体1を振動させた後、その振動がダブルスキン構体1の車両内側の面から車内に向けて再放射されることによって、音波が車内へと透過する。上記のように、バネ−マス系の共振点を設計することで、特定の周波数fにおいてダブルスキン構体1の振動エネルギーが散逸されるため、この周波数fにおいて車体の透過損失が向上し、実施例1および2と同様の効果が得られる。
なお、実施例3では、吸音材105の内部に埋め込む物体として球体15を示したが、球体に限定されるものではなく、棒状の物体を埋め込む構造でもよい。そして、埋め込む物体の重量と吸音材の弾性で決まるバネ−マス系の共振周波数が、図7に示す周波数fに一致するように、埋め込む物体の重量を選定すればよい。
以上のとおり、本発明では、吸音材105の内部に、比較的軽量な孔開き管10、孔開き箱16または球体15等を埋め込むだけで、ダブルスキン構体1を透過する特定の周波数fに対応する透過損失を向上できる。これにより、上述したように、少ない重量増加で大きな効果を奏することができる。
一方、ダブルスキン構体1もしくは内装する床板2やパネル3および4の重量を増加させて、透過損失の向上を図るようにした場合、特定の周波数fに対応する透過損失のみを大きくすることは難しいため、質量則に倣って大きい重量の制振材等を付加しないと、同程度の効果を得ることは困難である。したがって、本発明に係る構造は、従来の吸音材に比較して、遮音性の高い軽量の構造にすることが可能である。これにより、鉄道車両に対して、大きな重量の増加を伴うことや客室スペースの縮小をもたらすことなく、車内騒音を効果的に低減することができる。
なお、上述した各実施例は、本発明の好ましい実施形態を示したものであるが、吸音材105の材質、孔開き管10の寸法・板厚、吸音材105の配置および孔開き管10の配向などは、上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明の目的を損なわない範囲で適宜に設計することが可能である。
1:ダブルスキン構体 2:床板
3:側パネル 4:天井パネル
5:吸音材 6:座席
10:孔開き管 11:孔
12、12a、12b:溝 14:窓
15:球体 16:孔開き箱
17:管 18:仕切り板
19:多孔板 19a:蓋部
19b:接続部 19c:穴
19d:隙間 20:台枠(床構体)
25:側構体 30:屋根構体
105(105a〜105g):吸音材

Claims (7)

  1. 6面体から成る構体を有する鉄道車両であって、
    前記構体の車両内側の面に動吸振器を内蔵する吸音材を
    備え
    前記吸音材は、車両内側に向かって第1の板状吸音材と第2の板状吸音材とを重ね合わせて構成され、
    前記動吸振器は、筒状体、当該筒状体を仕切ることで形成した複数の空間および当該空間毎に設けた孔により共鳴器として構成され、前記第1の板状吸音材と前記第2の板状吸音材との間に挟持される
    ことを特徴とする鉄道車両。
  2. 6面体から成る構体を有する鉄道車両であって、
    前記構体の車両内側の面に動吸振器を内蔵する吸音材を
    備え、
    前記吸音材は、車両内側に向かって第1の板状吸音材と第2の板状吸音材とを重ね合わせて構成され、
    前記動吸振器は、複数の箱体、当該箱体毎に設けた孔により共鳴器として構成され、前記第1の板状吸音材と前記第2の板状吸音材との間に挟持される
    ことを特徴とする鉄道車両。
  3. 請求項1または請求項2に記載の鉄道車両であって、
    前記孔は、前記構体の車両内側の面に対向して配置される
    ことを特徴とする鉄道車両。
  4. 求項3に記載の鉄道車両であって、
    前記第1および前記第2の板状吸音材は、それぞれ対向する前記第2および前記第1の板状吸音材に向かい合う面に複数の凹部を有し、
    記動吸振器は、前記凹部に嵌合することで前記第1の板状吸音材と前記第2の板状吸音材との間に挟持される
    ことを特徴とする鉄道車両。
  5. 6面体から成る構体を有する鉄道車両であって、
    前記構体の車両内側の面に動吸振器を内蔵する吸音材を
    備え、
    前記吸音材は、車両内側に向かって第1の板状吸音材と第2の板状吸音材とを多孔板を介して重ね合わせて構成され、
    前記第2の板状吸音材は、前記第1の板状吸音材に向かい合う面に複数個の穴を備え、
    前記多孔板は、前記穴を塞ぐ蓋部、当該蓋部に設けた孔および当該蓋部同士を接続する接続部から構成され、
    前記動吸振器は、前記穴、前記蓋部および前記孔により共鳴器として構成される
    ことを特徴とする鉄道車両。
  6. 請求項に記載の鉄道車両であって、
    前記多孔板は、隣接する前記蓋部を接続する前記接続部によって囲まれる部分に隙間を有する
    ことを特徴とする鉄道車両。
  7. 6面体から成る構体を有する鉄道車両であって、
    前記構体の車両内側の面に動吸振器を内蔵する吸音材を
    備え、
    前記吸音材は、車両内側に向かって第1の板状吸音材と第2の板状吸音材とを重ね合わせて構成され、
    前記第1の板状吸音材および前記第2の板状吸音材は、弾性を有する材質から成り、
    前記動吸振器は、前記第1の板状吸音材と前記第2の板状吸音材との間に挟持される球状体から構成される
    ことを特徴とする鉄道車両。
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