JP2006290054A - 高速鉄道車両の低騒音車体構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高速鉄道車両の高速走行による耐衝撃性に優れると共に、薄型・軽量で、騒音を良好に吸収することができ、特に、低音領域においても吸音特性の優れた高速鉄道車両の低騒音車体構造を提供する。
【解決手段】 高速鉄道車両1における車体2の下部に、側スカート部3、前後フサギ部4、及び底フサギ部5により、床下機器6を収容可能な床下空間7を形成すると共に、側スカート部3、前後フサギ部4、及び底フサギ部5の少なくとも一部を、強度剛性及び通気性を有した表面部材11と、吸音特性を有した吸音部材12と、音響を透過可能な背面部材13とを備えた騒音吸収パネル10により構成し、騒音吸収パネル10の背後空気層を床下空間7とした高速鉄道車両の低騒音車体構造。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高速鉄道車両の車体構造に関するもので、特に、高速鉄道車両の騒音を低減させることの可能な、高速鉄道車両の低騒音車体構造に関するものである。
従来より、新幹線等の高速鉄道車両では、種々の騒音対策を施すことにより、その騒音レベルが所定の騒音環境規制値を下回るようにしている。この鉄道車両100の走行に伴って発生する騒音は、図5(A)に示すように、車輪101とレール102との接触音や車輪101の駆動音など台車103や床下機器からの騒音、パンタグラフ104の風切り音やパンタグラフ104と架線105との接触音などパンタグラフ104周りからの騒音、車体106と空気との摩擦による空力音などの車体106周りからの騒音などが挙げられる。
車体106周りの騒音を低減させるものとして、図5(B)に示すような構造の吸音パネル107が知られている。この吸音パネル107は、車体106側に取り付けられるベース部材108と、断面コ字形状の支持部材109と、支持部材109によりベース部材108から所定距離離間した位置に配置され、発泡アルミなどの多孔質素材からなる吸音材110と、吸音材110の表側に配置され、吸音材110を支持部材109に固定する帯板111とで構成されている。
この吸音パネル107には、吸音材110の裏側に、ベース部材108と支持部材109とにより空洞部112が形成されており、この空洞部112により共振させることで騒音を低減させることができ、吸音材110と共に作用させることで騒音を吸収するようになっている。なお、この吸音パネル107の表側にさらにパンチングメタルと布を配置して、空力音をさらに低減させるものも提案されている(特許文献1)。
なお、従来では、台車103や床下機器からの騒音は、図5(A)に示すように、防音壁113等、車両側ではなく、軌道施設側において対応していた。
一方、建築物の内外装に用いられる吸音パネルとして、図6に示すような吸音パネル115が提案されている(特許文献2)。この吸音パネル115は、ハニカムコア116のセル内に吸音材117を充填し、ハニカムコア116の一方の面にガラス繊維からなる織布を樹脂で固めた表層材118を固定すると共に、ハニカムコア116の他方の面に遮音材119を固定した形態とされており、表層材118及び吸音材117により騒音を吸収することで、吸音率を高めると共に、薄型で軽量なものとなっている。
ところで、将来、高速鉄道車両のより高速化が予想され、例えば、現在、最高営業速度が275km/hから360km/hとなった場合、騒音は速度の二乗に略比例することから、その騒音は現行のおよそ70%以上増大する恐れがあるが、パンタグラフ104周りや、車体106周りの騒音については、現行の技術によりある程度対応することが可能であるのに対して、車体106表面下部の台車103周りや図示しない床下機器などから発生する騒音については、防音壁113だけでは不十分であり、鉄道車両100側でも騒音対策をする必要がある。
しかしながら、特許文献1の吸音パネル107では、その空洞部112の共振作用により吸音特性を得るようにしているため、空洞部112に所定量の厚さが必要であった(45mm以上)。そのため、車体下部の台車103や床下機器等の設置スペースが狭くなったり、吸音パネル107の重量が増加したりする問題があった。
また、特許文献2の吸音パネル115では、所望の吸音特性を有したものが薄型で軽量に実現することが可能である。しかしながら、この吸音パネル115では、その表面が、ガラス繊維からなる織布を樹脂で固めただけのものであるため、高速鉄道車両の高速走行に伴う衝撃(例えば、トンネル内への突入やすれ違い時に生じる圧力変動、異物の衝突、等による衝撃)に対しては強度的に弱く、破損する恐れがあり、衝撃により破損した場合、ハニカムコアが露出し内部の吸音材117が漏出する問題があった。
そこで、本願発明者等は、先の出願において、図7に示すような、吸音部材120の前面に、複数の貫通孔121を有した強度剛性の高いハニカムサンドイッチパネルからなる表面部材122を配置することで、パンチングメタル単体を配置したものと比較して、高速鉄道車両における高速走行時のトンネルの出入りやすれ違い等の際にかかる圧力変動、或いは、異物の衝突、等による衝撃から吸音部材120を保護すると共に、表面部材122の貫通孔121を介して、吸音部材120により騒音を良好に吸収させて、強度剛性及び吸音特性に優れた新規な騒音吸収パネル123を提案している(特許文献3)。なお、この騒音吸収パネル123は、裏側が閉鎖された枠状の保持部材124により高速鉄道車両に取付けられるようになっている。
特開2002−67941号 特開2004−116118号 特願2005−063283号
しかしながら、その後、本願発明者等が、参考品として、特許文献2の吸音パネル115の表層材118としてガラス繊維の代わりにアルミファイバーメッシュを用いたものを製作し、この参考品と、特許文献3のもの(以下、先願品と称す)とを、裏側が閉鎖された枠状の保持部材に夫々保持させた上で、それらの吸音特性を比較した結果、図4に示すように、500Hz以上の騒音では、先願品及び参考品ともに大きな差が認められないものの、500Hz以下では、先願品の方が吸音力が小さく、この500Hz以下の領域での差が、騒音全体に大きな影響を与える可能性のあることが判った。なお、先願品、参考品共に、その厚さを約34mmとしている。
なお、強度剛性については、有効範囲が500mm角の騒音吸収パネルに対して、7.5mの高さから、直径約8cm、重さ約2kgの鉄球を落下させる試験を行った結果、先願品のものは、ハニカムサンドイッチパネルの面板が破断したものの、鉄球が貫通することはなかった。それに対して、参考品のものは、鉄球が貫通した。このことから、先願品が充分な強度剛性を有していることが確認されている。
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、高速鉄道車両の高速走行による耐衝撃性に優れると共に、薄型・軽量で、騒音を良好に吸収することができ、特に、低音領域においても吸音特性の優れた高速鉄道車両の低騒音車体構造の提供を課題とするものである。
上記の課題を解決するために、本発明に係る高速鉄道車両の低騒音車体構造は、「高速鉄道車両における車体側面に略沿うように下方に延在する側スカート部と、該側スカート部の下端と略同じ高さの下端とされ、左右の該側スカート部同士を連結する前後フサギ部と、該前後フサギ部及び左右の前記スカート部により形成される下端開口を閉鎖する底フサギ部とで閉鎖された床下空間を形成すると共に、
前記側スカート部、前記前後フサギ部、及び前記底フサギ部の少なくとも一部を、
強度剛性及び通気性を有したサンドイッチパネルからなる表面部材と、該表面部材の背面に配置され吸音特性を有した吸音部材と、該吸音部材の背面に配置され音響を透過可能な背面部材とを備えた騒音吸収パネルにより構成し、
該騒音吸収パネルの背後空気層を前記床下空間とした」構成とするものである。
ここで、「高速鉄道車両」とは、最高速度が200km/h以上、望ましくは300km/h以上の鉄道車両であり、例えば、新幹線車両が挙げられる。また、「表面部材」としては、三層以上の積層構造となったサンドイッチパネルであれば良く、例えば、ハニカムコアを有した、ハニカムサンドイッチパネルを例示することができ、そのハニカムサンドイッチパネルの表裏の面板に貫通孔を形成することで通気性を有するようにしたものが望ましい。
また、「吸音部材」としては、通気抵抗を有したものであれば特に限定するものではないく、例えば、「連続気泡を有した発泡樹脂」、「グラスウール」、「アルミ等の金属繊維」、等が挙げられる。更に、「背面部材」としては、表面部材及び吸音部材を保持可能なものが望ましく、音響を透過可能とするために、「複数の貫通孔を有したもの」、「振動可能なほど板厚の薄い部分が形成されたもの」、「複数の貫通孔が可撓性のある膜により閉鎖されたもの」、等が挙げられる。
ところで、上述の先願品と参考品において、その吸音特性の違いは、夫々の騒音吸収パネルを略同じ厚さとした場合、参考品では、その厚さの略全体が吸音部材であるのに対し、先願品では、表面部材の厚さ分だけ吸音部材の厚さが薄くなり、この吸音部材の厚さの差が、吸音特性の差として現れているものと思われる。そして、図8に示すように、厚さの異なる吸音部材の吸音率を測定した結果、厚いほうがより高い吸音率を示しており、吸音部材の厚さが吸音特性に影響することが判り、吸音部材、つまり騒音吸収パネルを厚くすることで吸音率を高めることができる。
また、吸音部材とは別に、先願品の裏側に剛性を有した保持部材の裏板が配置されていることから、先願品の吸音特性は、貫通孔により通気抵抗を有した表面部材での、音波の粒子速度が大きいほど吸音率が増加する傾向があり、特に、音波の腹の位置が最も粒子速度が大きい、一方、裏板が剛性を有しているので、この部分では粒子速度が略0、つまり、音波の節の部分となる。そして、音波の節と節との間は低周波数ほど長くなるので、表面部材と裏板との距離が長いほどより低周波数の音波を吸収することができる。つまり、騒音吸収パネルの厚さを厚くするほど、より低周波数の騒音の吸音率を高めることができる。
しかしながら、騒音吸収パネルを厚くすると、その重量が増加すると共に、その裏側に配置された床下機器などと干渉してしまい、騒音吸収パネルをこれ以上厚くすることはできず、騒音吸収パネルを厚くすることで上記の課題を解決することは困難である。
そこで、本発明の高速鉄道車両の低騒音車体構造によると、側スカート部、前後フサギ部、底フサギ部と、客室床部とで閉鎖された床下空間を形成すると共に、側スカート部、前後フサギ部、及び底フサギ部の少なくとも一部を、強度剛性及び通気性を有した表面部材と、吸音特性を有した吸音部材と、音響を透過可能な背面部材とからなる騒音吸収パネルとし、床下空間を騒音吸収パネルの背後空気層としたものである。これにより、騒音吸収パネルの表側から入射した騒音が、表面部材を通って、吸音部材により減衰し、更に背面部材を通って床下空間へと送られ、この床下空間内において更に減衰し、騒音が所望のレベル以下となり、騒音吸収パネルを厚くすることなく、所望の吸音特性を得られるものとすることができる。
詳述すると、表面部材と吸音部材とを支持する支持部材における裏板を音響が透過可能な背面部材としたもので、これにより、この背面部材において入射した音波(騒音)の粒子速度が略0となるのを回避させることができる。これにより、より波長の長い(低周波数の)音波の腹の部分を、通気抵抗の有した表面部材や吸音部材の位置にすることができ、低周波数での吸音率を高めることができる。
図4は、本発明品と、先願品、及び参考品とを比較して示したグラフであり、図示するように、低周波数(500Hz以下)の領域においても、本発明品が優れていることが判る。これは、上述の理由によるものと思われる。
また、背面部材13には、音響を透過可能とするために、その板厚を部分的に薄くしたり、複数の貫通孔を備えたりしているので、その重量が軽減され、騒音吸収パネル全体の重量を軽減させることができ、本発明の低騒音車体構造を採用しても高速鉄道車両の重量増加を抑制することができる。
なお、従来技術では、背面部材に貫通孔等の孔がなく塞がっているので、床下機器で発生する騒音を背面部材によって囲まれた空間(本発明の床下空間に相当)内部では吸音することができなかった。しかしながら、本発明によると、背面部材を音響の透過可能なもの(例えば、孔の開いたもの)としているので、(床下機器との位置関係によっては背後空気層としての役割が期待できない部分もあるが)吸音部材による吸音効果が期待できる。なお、床下機器から発生する騒音は、走行中の台車等からの騒音と比較すると著しく小さいが、停車中に限ってはこの床下機器の騒音がメインとなるので、停車中における特に床から車内に伝わる騒音を小さくすることが可能となる。また、側スカート部、前後フサギ部、底フサギ部により構成される床下空間は、完全な気密構成とする必要がなく、例えば、その表面積の2%程度の開口が開いていても、本発明の効果をスポイルするものではない。
本発明に係る高速鉄道車両の低騒音車体構造は、上記の構成に加えて、「前記吸音部材は、発泡樹脂又はグラスウールからなる」構成とすることもできる。
本発明の高速鉄道車両の低騒音車体構造によると、吸音部材を発泡樹脂又はグラスウールとしたもので、これにより、所望の吸音特性を得ることができると共に、軽量で安価なものとすることができ、製造コストを抑制することができる。また、グラスウールを用いた場合、発泡樹脂よりもさらにコストを低減させることができるとともに、難燃又は不燃性能を容易に得ることができる。なお、吸音部材を所定の袋等の保形手段により、その外形形状が保持されるようにすることが望ましい。
本発明に係る高速鉄道車両の低騒音車体構造は、上記の構成に加えて、更に、「前記騒音吸収パネルは、難燃性又は不燃性とされている」構成とすることもできる。ここで、「難燃性又は不燃性」としては、「金属材料、ガラスやセラミック等の無機材料により形成する」、「耐熱温度の高い(例えば、100℃以上)樹脂などにより形成する」、「耐熱塗料やフェノール樹脂を塗布又は含浸させたものにより形成する」、等の方法がある。
本発明の高速鉄道車両の低騒音車体構造によると、騒音吸収パネルが、難燃性又は不燃性とされているので、非常時において高温の状態に晒されたり、床下機器などから熱を受けたり、何らかの火花等の火種が付着したりした場合でも、着火したり発火したりするのを抑制することができ、火災等が発生したり延焼したりするのを防止することができる。
上記のように、本発明によると、高速鉄道車両の高速走行による耐衝撃性に優れると共に、薄型・軽量で、騒音を良好に吸収することができ、特に、低音領域においても吸音特性の優れた高速鉄道車両の低騒音車体構造を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態である高速鉄道車両の低騒音車体構造について、図1乃至図3に基づき詳細に説明する。図1(A)は本発明の低騒音車体構造を適用した高速鉄道車両の外観斜視図であり、(B)は高速鉄道車両の側面図であり、(C)は本発明の高速鉄道車両の低騒音車体構造を適用した高速鉄道車両の車体下部の概略断面図である。図2は、本発明に係る騒音吸収パネルの拡大断面図である。また、図3は、図2における騒音吸収パネルの一部を切り欠いて示す斜視図である。
本実施形態の高速鉄道車両の低騒音車体構造を適用した高速鉄道車両1は、図1に示すように、車体2側面に略沿うように下方に延在する側スカート部3と、側スカート部3の下端と略同じ高さの下端とされ左右の側スカート部3同士を連結する前後フサギ部4と、前後フサギ部4及び左右のスカート部3により形成される下端開口を閉鎖する底フサギ部5とを備え、これら、側スカート部3、前後フサギ部4、底フサギ部5により床下機器6等を収容可能なで閉鎖された床下空間7を形成している。
図1(B)に示すように、側スカート部3は、図示しない台車の前後において切りかかれたような形態とされており、この台車の前後においても前後フサギ部4が備えられている。つまり、床下空間7は、台車により分割されたような形態とされている。なお、本例の高速鉄道車両1では、台車の側面を覆う台車カバー8が備えられている。
この、側スカート部3、前後フサギ部4、及び底フサギ部5の少なくとも一部が、騒音吸収パネル10により構成されており、この騒音吸収パネル10は、強度剛性及び通気性を有したサンドイッチパネルからなる表面部材11と、表面部材11の背面に配置され吸音特性を有した吸音部材12と、吸音部材12の背面に配置され音響を透過可能な背面部材13とを備え、床下空間7を騒音吸収パネル10の背後空気層とすることで、騒音を低減させることのできる低騒音車体構造となっている。
この騒音吸収パネル10は、表面部材11、吸音部材12、及び背面部材13の他に、図2及び図3に示すように、吸音部材12の外表面を覆い通気性を有した防水シート14と、表面部材11と防水シート14により覆われた吸音部材12との間に配置され、侵入した液体を下方に誘導する液体誘導手段15とを更に備えている。なお、本例では、吸音部材12と防水シート14との表面部材11側の間にも、液体誘導手段15が備えられている。また、本例の騒音吸収パネル10の厚さは、約34mmとされている。
表面部材11は、サンドイッチパネルとしてのハニカムサンドイッチパネルからなり、第一貫通孔16が複数形成された第一面板17と、第一貫通孔16よりも開口の大きい第二貫通孔18が複数形成された第二面板19と、第一面板17を一方の面に第二面板19を他方の面に夫々接着固定されるハニカムコア20とを有している。
この表面部材11は、その第一面板17、第二面板19、及び、ハニカムコア20が、アルミ合金とされており、本例では、2000系のアルミ合金(所謂、ジュラルミン)が用いられている。これにより、高速鉄道車両1の高速走行時の衝撃などに対して、充分な強度剛性を有すると共に、第一貫通孔16及び第二貫通孔18により通気性を有したものとなっている。なお、ハニカムコア20として、例えば、アラミド繊維(例えば、ノーメックス(登録商標)、ケブラー(登録商標))にフェノール樹脂を含浸させた非金属ハニカムコアとしても良い。
また、表面部材11は、その第一面板17における第一貫通孔16の直径が約1.5mm、第二面板19における第二貫通孔18の直径が約3mmとされており、第一面板17及び第二面板19の厚さは、約1mmとされていると共に、それら面板17,19における貫通孔16,18の開口率は、夫々約33%とされている。なお、本例では、表面部材11の厚さが約6mmとされている。また、表面部材11は、その表面に燐酸フッ素酸化皮膜処理(リン酸アノダイズ処理)を施した上で、接着前処理兼腐食防止用のエポキシプライマーを塗布しており、耐候性、及び塗装性に優れたものとなっている。
吸音部材12は、本例ではフェノール樹脂など不燃性樹脂を所定の倍率で発泡させた発泡樹脂であり、その内部は連続気泡、すなわち、気泡により形成された空間が独立することなく互いに連通した状態となっており、入射された騒音が散乱・乱反射して、そのエネルギーを減衰させることで、効率よく吸収することができるものとなっている。因みに、本例の吸音部材12は、その厚さが約20mmとされている。
この吸音部材12は、本例では、保形手段21によりその形状が保形されるようになっており、この保形手段21は、ハニカム状に形成された部材であり、吸音部材12内に埋設することで、吸音部材12の形状を保持すると共に、吸音部材12に剛性を付与している。なお、本例では、吸音部材12の両面から所定厚さの保形手段21を夫々埋設すると共に、埋設された保形手段21は、吸音部材12の内部で互いに当接しないような厚さとされており、保形手段21同士が当接することで、吸音部材18が保形手段21のハニカムコアにより分断されて、吸音部材12が保形されなくなるのを防止している。
背面部材13は、複数の貫通孔22を有した板状の部材とされており、この貫通孔22により音響が透過可能となっている。この背面部材13の外周には、枠状の保持部23が備えられており、この保持部23に形成された第一溝24及び第二溝25に表面部材11及び吸音部材12を嵌合させることで、表面部材11及び吸音部材12を保持することができ、背面部材13及び保持部23により、騒音吸収パネル10を高速鉄道車両1の車体2に保持するための保持手段26を構成しており、この保持手段26が適宜の方法により車体2の下部に取り付けられている。
防水シート14は、図示は省略するが、液体が透過することのない超微細孔を多数穿設した薄膜の樹脂シートと、その樹脂シートを保持する布等の保護部材とから構成され、樹脂シートが表面側となるように用いられている。なお、本例では、防水シート14として、商標名「ゴアテックス」を用いている。
液体誘導手段15は、図3に示すように、所定の大きさの桝目を有した網状の部材であって、本例では、厚さ約1mmのナイロンメッシュとされており、この液体誘導手段15は、図示は省略するが、その厚さは一定ではなく、所定の範囲内で波打つように変化しており、厚さの薄い部分において、所定の空間が形成されるようになっている。なお、本例では、表面部材11と防水シート14に覆われた吸音部材12との間の液体誘導手段15aは、その桝目の並ぶ方向が斜め方向となるように配置されており、浸入した液体が容易に下方へ誘導されるようになっている。また、本例では、防水シート14と吸音部材12との間の液体誘導手段15bを、その桝目が上下左右方向に並ぶように配置したものを示しているが、液体誘導手段15aと同様に、斜めに並ぶように配置しても良い。
次に、本実施形態の高速鉄道車両の低騒音車体構造の作用について説明する。図1に示すように、高速鉄道車両1における車体1の下部を、側スカート部3、前後フサギ部4、及び底フサギ部5により、床下機器6等を収容可能な閉鎖された床下空間7を形成する。この状態において、床下機器6の外形状に起因する乱流を小さくすることができ、高速走行時の空力音を減少させることができる。
そして、側スカート部3、前後フサギ部4、及び底フサギ部5の少なくとも一部(可能な限り広い範囲とすることが望ましい)を、騒音吸収パネル10により構成する。このように構成された高速鉄道車両1が高速走行をすることにより台車周り等で騒音が発生し、発生した騒音が、道床や軌道に沿って設けられた防音壁等により反射することで、騒音吸収パネル10に騒音が入射する。そして、騒音吸収パネル10に入射した騒音は、まず、表面部材11の第一貫通孔16及び第二貫通孔18を通過する。その際に、各貫通孔16,18では、通気抵抗を有しているので、表面部材11においても、騒音がある程度減衰する。
表面部材11を通過した騒音は、防水シート14に覆われた吸音部材12へと入り、その連続気泡により大きく減衰させられ、減衰しきれなかった騒音は、吸音部材12を通過し、背面部材13の貫通孔22を介して床下空間7へと侵入する。この床下空間7内には複数の床下機器6が複雑に配置されており、侵入した騒音が乱反射したり、床下空間7の持つ固有振動と共振することで、減衰して騒音が低下する。
一方、背面部材13には、複数の貫通孔22を有しているので、背面部材13の位置に騒音の音波の節が位置するのを回避することが可能となり、より波長の長い音波の腹の部分を、表面部材11や吸音部材12の位置とすることができ、波長の長い音波、つまり、低周波数の音波を効率よく吸収させることが可能となり、低周波数の騒音も効果的に吸音することができ、図4に示すように、参考品と比較しても、充分な吸音特性を得られることが判る。
このように、本実施形態の高速鉄道車両の低騒音車体構造によると、騒音吸収パネル10を厚くすることなく、所望の吸音特性、特に、500Hz以下の低周波数の領域においても、充分な吸音特性の得られるものとすることができる。また、吸音部材12を不燃性樹脂を発泡させたものとしているので、火災等の発生や延焼を防止することができる他、厚さの割には優れた吸音特性が得られると共に、騒音吸収パネル10を軽量なものとすることができ、高速鉄道車両1の重量増加を抑制することができる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
すなわち、本実施形態では、吸音部材12として、発泡樹脂を用いたものを示したが、これに限定するものではなく、吸音部材12として、グラスウールを用いることもでき、これにより、上記と同様の吸音特性を得られると共に、発泡樹脂と比較してよりコストを低減させることができる。
また、本実施形態では、表面部材11として、第一面板17の第一貫通孔16と、第二面板19の第二貫通孔18の夫々の直径が異なるものを示したが、これに限定するものではなく、第一貫通孔16及び第二貫通孔18の直径を夫々同じ大きさのものとしても良く、これによっても、上記と同様の作用効果を奏すると共に、第一面板17と第二面板19とを同じ部材とすることができるので、部品点数を削減することが可能となり、コストを低減させることができる。
更に、本実施形態では、背面部材13として、貫通孔22を有したものを示したが、これに限定するものではなく、音響が透過可能なものであれば良く、振動可能なほど板厚の薄い部分が形成されたものや、複数の貫通孔が可撓性のある膜により閉鎖されたもの等とすることもできる。また、貫通孔22としては、その大きさや数、及び形状についても、特に限定するものではなく、適宜のものとすることができる。
(A)は本発明の低騒音車体構造を適用した高速鉄道車両の外観斜視図であり、(B)は高速鉄道車両の側面図であり、(C)は本発明の高速鉄道車両の低騒音車体構造を適用した高速鉄道車両の車体下部の概略断面図である。 本発明に係る騒音吸収パネルの拡大断面図である。 図2における騒音吸収パネルの一部を切り欠いて示す斜視図である。 本発明品における騒音の各周波数における吸音力を先願品及び参考品と共に比較して示すグラフである。 (A)は従来の鉄道車両における騒音の問題点を示す説明図であり、(B)は従来の吸音パネルを示す断面図である。 図5とは異なる従来の吸音パネルを示す斜視図である。 図5とは更に異なる従来の騒音吸収パネルとしての先願品を示す断面図である。 吸音部材の厚さの違いによる各周波数における吸音率を比較して示すグラフである。
符号の説明
1 高速鉄道車両
2 車体
3 側スカート部
4 前後フサギ部
5 底フサギ部
6 床下機器
7 床下空間
10 騒音吸収パネル
11 表面部材
12 吸音部材
13 背面部材

Claims (3)

  1. 高速鉄道車両における車体側面に略沿うように下方に延在する側スカート部と、該側スカート部の下端と略同じ高さの下端とされ、左右の該側スカート部同士を連結する前後フサギ部と、該前後フサギ部及び左右の前記スカート部により形成される下端開口を閉鎖する底フサギ部とで閉鎖された床下空間を形成すると共に、
    前記側スカート部、前記前後フサギ部、及び前記底フサギ部の少なくとも一部を、
    強度剛性及び通気性を有したサンドイッチパネルからなる表面部材と、該表面部材の背面に配置され吸音特性を有した吸音部材と、該吸音部材の背面に配置され音響を透過可能な背面部材とを備えた騒音吸収パネルにより構成し、
    該騒音吸収パネルの背後空気層を前記床下空間としたことを特徴とする高速鉄道車両の低騒音車体構造。
  2. 前記吸音部材は、
    発泡樹脂又はグラスウールからなることを特徴とする請求項1に記載の高速鉄道車両の低騒音車体構造。
  3. 前記騒音吸収パネルは、
    難燃性又は不燃性とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高速鉄道車両の低騒音車体構造。
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