JP4380568B2 - 鉄道車両及び吸音材の製造方法 - Google Patents
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Description
鉄道車両が走行するときに発生する騒音は主として、
(1)集電装置が移動することによって起こる風切り音、
(2)台車部において車輪とレールの摩擦・振動によって発生する転動音、
(3)床下の電装機器がそれ単体で発生させている機器音、
などがあり、このうち、(1)の集電装置からの風切り音は、車両人編成あたりの集電装置の個数が少ないことと、碍子カバーや低騒音船体などの開発など集電装置周りの各種低騒音化施策の検討により、将来的には解決できると考えられる。また、床下機器音は基本的には走行速度に依存しないと考えられるため、高速化によって急激に深刻化することはない。ところが台車部からの転動音は、
(1)騒音発生個所が車両一編成分に及ぶことと、
(2)発生周波数が100〜500Hz程度で比較的低周波であること、
などから、車両側での積極的な低騒音化は非常に難しい。地上設備側では防音壁などを施工するなどして対策が成されているが、走行区間の全区間に渡り実施することは施工コストが膨大となり現実的ではない。
これによると代表的な吸音方法は適用周波数別に
(1)低周波数用のレゾネーター、
(2)中〜高周波数用の背後空気層付き多孔質材料、
(3)膜振動型吸音材、
などがあげられる。主として床下で発生する騒音は100〜400Hzの比較的低い周波数であることから、(1)のレゾネーターや(2)の背後空気層付きの多孔質材料が有効である。
図1において、一般的な鉄道車両の構体10の断面は基本的に、屋根構体11、側構体12、床構体13からなっており、屋根構体11、側構体12には中空押し出し型材と呼ばれるアルミ製の材料が用いられている。床構体13は床下電装機器14(ただし図1では床板で隠れている)を吊るすための横梁、牽引装置からの動力を伝達する枕梁、車両長手方向の圧縮荷重に耐えるための中梁16などからなっている。側構体12下部には車両の曲げ剛性を確保するための側梁17が設けられているのが一般的である。
図2において、側梁17もまた図で示すように中空押し出し型材が使用されているのが一般的である。
図3において、側梁17の中空押し出し型材の断面形状を変形させ、この側梁17の一部を吸音構造における背後空気層22が反射板24とリブ21とで形成され、該リブ21に水分透過性のない、且つ薄い膜状あるいは板状の吸音性を有する表面材30を貼り付ける。従ってリブ21は構体と一体形成される。これにより、スペースを取ることなく、また、施工コスト・車両重量を上げることなく、鉄道車両が走行するときに床下で発生する転動音・機器音などの騒音を効果的に吸音することができる。しかも、浸水しないため背後空気層22に雨水や洗浄液が入り込むことがないので、構体10や表面材30が腐食することなく、保守性に優れて高速走行時にも信頼性が確保された構造を提供することができる。
図4において、鉄道車両の側梁部はレールに敷かれたバラストと呼ばれる石が跳ねて当たることもあるため、表面材30は内部の音響エネルギー減衰構造31をパンチングメタルなどの表面保護材32で覆われた構成とする必要がある。そして、この表面保護材32に該音響エネルギー減衰構造31を取り付ける。このとき適当な取り付け具33などを用いてもよい。
図5において、音響エネルギー減衰構造31は表面保護材32および取り付け具33に防振ゴム34などを介して挟み込むようにして取り付けてあってもよい。また、表面保護材32と取り付け具33の接触部も防振ゴムを介して取り付けてあればそれぞれの部材が干渉することでカタカタと音を発生することを防ぐことができる。
以下構体10の構成に関する実施例を説明する。
図9において、吸音構造の外側から到来した音波はその一部が表面材で反射され、残りは音響エネルギー減衰構造31を透過する。透過した音波は背後空気層22を通った後、該背後空気層22裏面の反射板24で反射され、再び表面材に到達する。このようにして背後空気層22内部では反射板に入射する音波と反射板で反射された音波が干渉して、音圧および気体粒子速度の大きい個所と小さな個所が、縞状に発生する。
図10において、ある周波数において気体粒子速度の大きな個所に、多孔質材料なので構成される音響エネルギー減衰構造31が存在すると、気体粒子の運動が妨げられて、そこでエネルギーが減衰する。気体粒子速度の大きい個所の発生位置は低い周波数ほど反射板24から遠くなるため、一般に低い周波数では背後空気層22を大きくとらなければならない。しかしながら、たとえばこの背後空気層の内部を伝播する音波の音速が遅ければ、その分だけ気体粒子速度の大きい個所が形成する縞の間隔を狭めることができ、結果として薄い背後空気層22でも低い周波数から十分な吸音性能を得ることができる。そこで、この背後空気層内の音速を低下させるために、該背後空気層22には図11のように吸音材31bを挿入してもよい。
尚、図14は図13の断面を示したものである。
ここまでは構体10の構成に関する実施例を説明したが、実施例10からは表面材30の構体10への取り付け方法について説明する。
図15においては、図11〜図14に示した表面材に取り付け具33を取り付け、この取り付け具33に車両構体10に設けられたリブ21部を固定したものである。
ここまでは側構体に取り付ける場合について説明してきたが、床下部においても同様に取り付けることができる。
図17において、スカート部18は床下電装機器14(ただし図17では床板で隠れている)を保護することを目的として取り付けられているものであり、主として豪雪地帯を走行する車両などによく取り付けられている。また、このようにスカート部18を設けることにより、車両台車部の気流を平滑化して空気抵抗を少なくし、走行時の消費エネルギーを下げられることから、高速鉄道などにも適用されている。
一般にスカート部18は車両構体10ほどの強度は必要とされないので、中空押し出し型材のような剛性を出すために二重の面を持ったものではなく、リブつきの単板が用いられていることが多い。
尚、取り付け具33を用いない場合は、図19に示すように、実施例11同様、表面材30を単板18bに直接取り付けてもよい。
Claims (4)
- 屋根構体と側構体と前記側構体の下部に備えられた側梁と床構体とからなる車両構体を備え、前記床構体に床下電装機器が取り付けられるとともに、前記床下電装機器を保護するために前記側梁にスカートが備えられた鉄道車両において、
前記スカートは単板の両側に表面材を取り付けるためのリブを備えるとともに、前記リブに取り付けられた前記表面材と前記単板との間に形成された空気層に吸音材が備えられており、
前記表面材は表面保護材と前記表面保護材に備えられた音響エネルギー減衰構造からなり、
前記吸音材は空気より音速の遅い媒質とともに袋に封入されていること、
を特徴とする鉄道車両。 - 請求項1に記載された鉄道車両において、
前記音響エネルギー減衰構造は、音響エネルギー減衰材表面シートで包まれた吸音材からなること、
を特徴とする鉄道車両。 - 請求項1に記載された鉄道車両において、
前記音響エネルギー減衰構造は、音響エネルギー減衰材表面シートによる密閉空間内に吸音材とともに空気と異なる媒質が封入されたこと、
を特徴とする鉄道車両。 - 請求項3に記載された鉄道車両において、
前記音響エネルギー減衰構造は前記密閉空間の複層構造であり、
隣接する前記密閉空間には異なる種類の気体が封入されたこと、
を特徴とする鉄道車両。
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