JP3911208B2 - 車両用スカート体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両などの車両に備えられる車両用スカート体に関する。
【0002】
【従来の技術】
図12は、従来のスカート体1を示す断面図である。図13は、図12のセクションXIIIを拡大して示す断面図である。スカート体1は、台車(図示せず)に車体82を乗載して構成される鉄道車両に備えられる。スカート体1は、鉄道車両の外方および下方に臨み、鉄道車両の車両軸線方向(図面に垂直な方向)に延びる外板材2と、台車および車体の床の下方に設置される床下機器(図示せず)に臨み、車両軸線方向に延びる内板材3とが、下方に臨む下壁部4において連結されて構成される。このようにスカート体1は、鉄道車両の両側部から下方に突出し、台車および床下機器を側方から覆うようにして、鉄道車両に備えられる。このようなスカート体1によって、走行時に発生する気流が台車および床下機器によって乱されることを防ぎ、鉄道車両まわりの気流を平滑化することで鉄道車両に作用する空気抵抗を低減する。
【0003】
近年、走行中の鉄道車両から発生する騒音が問題になっており、このような騒音、特に、台車および床下機器からの騒音の低減が要求されている。たとえば特開2001−26267号公報には、車体の床の下方に吸音材を設けるとともに、線路の路盤上に防音壁を設けることによって、台車からの転動騒音を、吸音材と防音壁とに繰り返して反射および吸収させて、転動騒音を減衰させる技術が開示されている。
【0004】
また特許3233328号には、トラックなどの自動車のエンジンで発生する騒音が、エンジンルームの外部に漏洩することを防止する遮音カバーが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述の特開2001−26267号公報に開示される従来の技術では、線路の路盤上に防音壁を設けたり、路盤面と吸音材との間隔を小さくして、台車および床下機器からの騒音を外部に出さないようにするために、線路の路盤上に盛上げ部材を設ける必要があり、鉄道車両自体で騒音を吸音することができない。
【0006】
また図12および図13に示すスカート体1では、内板材3に臨む台車および床下機器から発生する騒音のうち、内板材3に直接入射する成分は、前記内板材3によって遮蔽されるものの、下壁部4を回りこんで伝播する回折成分については、鉄道車両の外部に伝播してしまう。
【0007】
また特許3233328号に開示される遮音カバーは、開放端部にポリウレタンなどの吸音材を設けて、開放端部から外部へ伝播する騒音を吸音材で吸音して、エンジンの騒音を低減している。
【0008】
たとえば図12に示すスカート体1の下壁部4の表面にポリウレタンなどの吸音材を貼り付けたとすると、下壁部4で回折する音波を、このような吸音材によって吸音することができる。しかし鉄道車両は自動車に比べて、走行に伴う振動が大きいだけでなく、連続走行時間が非常に長いので、スカート体1の下壁部4に貼り付けた吸音材が、走行中に脱落する可能性がある。またポリウレタンなどの合成樹脂は、耐久性に問題があり、振動、風雨、温度差および直射日光などによって劣化して、所望の吸音効果が得られなくなる。
【0009】
また特許3233328号に開示される遮音カバーは、エンジンを覆うのに必要な大きさ、長手方向の寸法が1メートル程度であればよい。したがって、このような遮音カバーを自動車に備える場合は、遮音カバーの交換が比較的容易であるので、耐久性が悪くても、劣化する毎に交換すればよい。しかし鉄道車両は、車体長の寸法が15〜25メートルであり、このような寸法のスカート体1を、吸音材が劣化する毎に交換することは、非常に困難である。また自動車の耐久性は10年程度しか要求されないが、鉄道車両の耐久性は少なくとも30年は要求されており、スカート体1の耐久性も同様に要求される。したがって、鉄道車両において、スカート体1に貼り付けた吸音材が劣化および脱落する毎に、スカート体1を交換することは、極めてメンテナンス性が悪い。
【0010】
したがって本発明の目的は、合成樹脂等の吸音材を用いることなく、スカート体の下方を伝播する騒音を吸音して、車両外部へ伝搬する騒音を低減できる車両用スカート体を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、台車に車体を乗載して構成される鉄道車両の、前記車両の両側部から下方に突出し、台車を側方から覆う車両用スカート体であって、
下端部には、開口によって下方に開放する共鳴空間を有し、下方を伝播する音波を前記開口から前記共鳴空間に導いて、共鳴現象によって音響エネルギを熱エネルギに変換して吸音する共鳴吸音手段が設けられ、
前記共鳴吸音手段は、車両軸線方向に垂直な断面形状が筒体であって、
前記共鳴吸音手段の下部に配置される下壁部には、車両軸線方向に延びて下方に開口する長孔が形成され、前記長孔に臨む下壁部の両端部は、車両軸線方向に延びて上方に突出する突条を有し、
長孔および突条は、車両軸線方向に延びて、車両の側構の長手方向寸法とほぼ同一寸法に形成されることを特徴とする車両用スカート体である。
【0012】
本発明に従えば、主電動機および制御器などによって発生した音波は、車両用スカート体に向かって伝播する。車両用スカート体に向かって伝播する音波のうちの一部は、車両用スカート体の下方を伝播する。車両用スカート体の下方を伝播する音波は、開口によって下方に開放する共鳴空間に導かれて、前記共鳴空間において共鳴して、開口近傍の空気が激しく振動する。このような共鳴現象に伴う開口近傍の空気の振動が、開口における粘性損失によって、空気の振動エネルギ、すなわち音響エネルギから熱エネルギに変換されて消散し、車両用スカート体の下方を伝播する騒音が吸音される。
これによってスカート体の下端部で回折する音波を低減することによりスカート体の外側上方に伝播しようとすることを抑制することができる。このように音波のスカート体の下端部での回折を防ぐことで、スカート体の内側で発生した音波が、スカート体から外側上方に洩れることを防ぐことができ、騒音を効果的に低減することができる。
したがって車両用スカート体の下方を伝播する騒音を吸音することによって、車両の原動機および主電動機などの動力源の運動、台車の車輪および車軸の回転、ならびに車輪とレールとの接触などに起因する騒音が、車両の両側部よりも外方に伝播することを防止して、騒音を低減することができる。このように共鳴空間によって、合成樹脂等の吸音材を用いることなく、車両外部へ伝播する騒音を低減することができる。
本発明では、鉄道車両の側構の長手方向寸法と同一寸法にスカート体が形成されるので、側構の長手方向全域に関して、スカート体下端部で吸音効果を得ることができ、スカート体下端部の近傍を通過する騒音が低減される。これによって回折音が小さくなり、側構の長手方向全域に臨む空間に伝播する騒音を低減することができ、側構の長手方向任意位置を伝播して客室に入ってくる騒音を小さくすることができる。また騒音源から車両軸線方向に離れたスカート体の下方を伝播する騒音についても、低減することができる。
【0014】
また共鳴吸音手段は、車両軸線方向に垂直な断面形状が筒体であり、前記共鳴吸音手段の下部に配置される下壁部には、車両軸線方向に延びて下方に開口する長孔が形成されるので、前記筒体の内空間は、前記長孔の開口によって下方に開放する共鳴空間を実現することができる。これによって、開口によって下方に開放する共鳴空間を用いるヘルムホルツ共鳴器型吸音構造を実現することができる。また前記長孔に臨む下壁部の両端部は、車両軸線方向に延びて上方に突出する突条を有するので、この突条によってヘルムホルツ共鳴器型吸音構造における頸部を構成することができる。
請求項2記載の本発明は、スカート体は、台車および床下機器を側方から覆うとともに、下端部が車輪の回転軸線の近傍の上下位置に位置し、
共鳴吸音手段が、動力源の運動、台車の車輪および車軸の回転ならびに車輪とレールとの接触のいずれかに起因する騒音を吸音する孔形状に形成されることを特徴とする。
本発明に従えば、共鳴吸音手段がヘルムホルツ共鳴器型吸音構造に従うので、長孔の幅と、突条の高さとを設定することで、共鳴周波数を吸音させたい音の周波数に容易に合わせることができる。本発明では、吸音させたい音を、動力源の運動、台車の車輪および車軸の回転ならびに車輪とレールとの接触のいずれかに起因する騒音とする。これらの騒音は、スカート体の内側で発生する騒音である。このような騒音を共鳴吸音手段が吸音することで、スカート体の内側で発生した騒音がスカート下端部を通過することを低減することができ、スカート体の下端部で回折する回折音を小さくすることができる。
【0017】
請求項3記載の本発明は、前記共鳴吸音手段は、車両軸線方向に垂直な断面形状が筒体であって、
少なくとも前記共鳴吸音手段の下部に配置される下壁部が、複数の繊維状の金属が相互に係合して板状に構成される金属繊維部材であることを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、前記筒体の内空間は、相互に係合している金属繊維によって下方に開放する共鳴空間を実現することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施形態の車両用スカート体10の下端部11を示す断面図である。図2は、車両用スカート体10を示す断面図である。図3は、車両用スカート体10を備える鉄道車両80を示す側面図である。図1は、図2のセクションIを拡大して示している。また図2は、図3の切断面線S2−S2から見た断面図である。図2は、理解を容易にするために、部分的に厚みを省略している。車両用スカート体(以後、単に「スカート」と略して表記することがある)10は、車輪81を有する台車に車体82を乗載して構成される鉄道車両(以後、単に「車両」と略して表記することがある)80の、前記車両80の両側部から下方に突出して、台車ならびに車体の床板86の下方に設置される主電動機および制御器などの床下機器を側方から覆う。
【0020】
スカート10は、外側部材12および内側部材13を含んで構成される。外側部材12は、アルミニウム製であり、押出し加工によって形成される。スカート10は、図2に示すように、スカート10の長手方向が車両80の長手方向に延びる車両軸線L80方向(図面に垂直な方向)に平行に延び、車両80における側梁83よりも下方であって、車輪81に臨む第1位置P1に配置されて、下方に突出して、前記側梁83に係止されて備えられる。スカート10の長手方向の寸法は、車両80の側構84の長手方向の寸法と、ほぼ同一である。
【0021】
外側部材12は、スカート10が第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延びる板状であって、下方に向かうにつれて車輪81側に傾斜して配置される主板部14を有する。
【0022】
スカート10には、第1リブ60が設けられる。第1リブ60は、スカート10が第1位置P1に配置される状態において、主板部14の上下方向中央部から車輪81側に突出して設けられる。第1リブ60は、スカート10が第1位置P1に配置される状態において、車輪81側の遊端部が下方に突出しており、その遊端部は、内側部材13の上下方向中央部に、たとえばリベットまたは溶接によって接合される。
【0023】
またスカート10には、上側部61が設けられる。上側部61は、スカート10が第1位置P1に配置される状態において、主板部14の上端部から車輪81側に突出して設けられる。上側部61は、スカート10が第1位置P1に配置される状態において、車輪81側の遊端部が下方に突出しており、その遊端部は、内側部材13の上端部に、たとえばリベットまたは溶接によって接合される。またスカート10には、係止部62が設けられる。係止部62は、車両軸線L80方向に延び、主板部14の上端部から上方に向かって突出し、先端部が上方に凸となるようにして湾曲するように形成される。
【0024】
側梁83に設けられる係止部材63は、車両軸線L80方向に延び、側梁83から車両80の外方に向かって突出し、先端部63aが上方に向かって突出するように形成される。スカート10を側梁83に係止するとき、スカート10の係止部62が係止部材63に係止される。これによって、スカート10は、角変位軸線L63まわりに角変位可能にして、側梁83に係止される。側梁83に、係止片64が設けられる。係止片64は、車両軸線L80方向に延び、係止部材63の下方から、下方に突出する。スカート10の上側部61には、車両軸線L80方向に延び、上方に突出する係止材65が設けられる。スカート10が、下方に突出するような第1位置P1に配置されるとき、側梁83の係止片64は、スカート10の係止材65に係止される。
【0025】
またスカート10には、第2リブ66が設けられる。第2リブ66は、車両軸線L80方向に延び、上側部15の係止材65が設けられる部分と、主板部14,25の上側部15よりも下方かつ第1リブ60よりも上方の部分とを接続する。車両80には、側構84に連なり、下方に突出する板状の部材である、ふさぎ板85が設けられる。ふさぎ板85と軌道中心軸線C1との間隔L7は、たとえば1550ミリメートルであってもよい。ふさぎ板85の上下方向の寸法L5は、たとえば237ミリメートルであってもよい。
【0026】
スカート10の下端部11には、上底部15、内側部16、外側下壁部17および内側下壁部18が設けられる。上底部15は、スカート10が第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延びる板状であって、主板部14の下端よりも上方の位置から車輪81側に突出して設けられる。内側部16は、スカート10が第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延びる板状であって、前記上底部15の車輪81側の端部から下方に突出して設けられる。
【0027】
外側下壁部17は、スカート10が第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延びる板状であって、主板部14の下端部から車輪81側に突出して設けられる。外側下壁部17は、車両軸線L80方向に延び、外側下壁部17の車輪81側の遊端部から上方に突出する第1突条17aを有する。内側下壁部18は、スカート10が第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延びる板状であって、内側部16の下端部から前記外側下壁部17側に突出して設けられる。内側下壁部18は、車両軸線L80方向に延び、内側下壁部18の外側下壁部17に臨む遊端部から上方に突出する第2突条18aを有する。
【0028】
第1突条17aと第2突条18aとは、互いに平行にして、上方、すなわち上底部15に向かって突出する。外側下壁部17の第1突条17aと内側下壁部18の第2突条18aとは、所定の間隔Dをあけて配置され、これによって車両軸線80方向に延びて下方に開口する長孔19が形成される。
【0029】
内側部材13は、スカート10が第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延びるアルミニウム製の板材であって、外側部材14に対向して配置される。内側部材13の下端部は、外側部材12の内側部16に、たとえばリベットまたは溶接によって接合される。
【0030】
このようにスカート10の下端部11は、図1に示すように、外側部材12の主板部14、上底部15、内側部16、外側下壁部17および内側下壁部18によって、車両軸線L80方向に垂直な断面形状が筒体となるように形成される。外側部材12の主板部14、上底部15、内側部16、外側下壁部17および内側下壁部18によって囲まれて、長孔19によって下方に開放する共鳴空間20が形成される。スカート10の下端部11には、このような共鳴空間20を有して、下方を伝播する騒音を吸音する共鳴吸音手段が設けられる。
【0031】
本実施の形態において、スカート10の上下方向の寸法L1は、505ミリメートルである。スカート10の外側下壁部17および内側下壁部18とレール90の上端面であるレール面90aとの間隔L2は、300ミリメートルである。またスカート10の外側下壁部17および内側下壁部18の上下方向の位置は、車輪81の回転軸線である輪軸線L81の近傍である。軌間は、1435ミリメートルであり、その半分の寸法であるL3は、717.5ミリメートルである。車輪81の車輪径L4は、880ミリメートルである。これらの寸法は、一例であって、軌間に基づく車両限界の範囲内で任意に変更することができる。
【0032】
図4は、共鳴空間20を模式的に示す断面図である。共鳴空間20は、ヘルムホルツ共鳴器を構成し、このようなヘルムホルツ共鳴器型吸音構造の共鳴周波数f0は、次式(1)で示される。
【0033】
【数1】
【0034】
前式(1)において、cは空気中の音速であり、βは開口率である。Hは共鳴空間20の外側下壁部17および内側下壁部18の厚み方向の寸法、すなわち外側下壁部17および内側下壁部18と上底部15との間隔Hである。tは外側下壁部17および内側下壁部18の厚みである。φは本実施の形態においては、長孔19の幅Dである。
【0035】
前式(1)から、たとえば、より低い周波数の音を吸音したい場合には、外側下壁部17および内側下壁部18の厚みtを大きくしたり、長孔19の幅Dを大きくしたり、外側下壁部17および内側下壁部18と上底部15との間隔Hを大きくしたり、開口率βを小さくすればよい。また、たとえば、より高い周波数の音を吸音したい場合には、外側下壁部17および内側下壁部18の厚みtを小さくしたり、長孔19の幅Dを小さくしたり、外側下壁部17および内側下壁部18と上底部15との間隔Hを小さくしたり、開口率βを大きくすればよい。このように、外側下壁部17および内側下壁部18の厚みt、長孔19の幅D、共鳴空間20の外側下壁部17および内側下壁部18の厚み方向の寸法H、ならびに開口率βを調整することによって、共鳴周波数f0を、吸音させたい音の周波数に容易に合わせることができる。本実施の形態のスカート10において、開口率βは、長孔19の幅Dをスカート10の下端部11の下方に臨む先端部の幅Wで除した値、すなわちβ=D/Wであるので、開口率βは、長孔19の幅Dおよびスカート10の下端部11の下方に臨む先端部の幅Wを調整することによって、調整できる。
【0036】
共鳴周波数f0と同じ周波数でスカート10の下方を伝播する音波が、長孔19の開口によって共鳴空間20に導かれると、前記開口近傍の空気は激しく振動し、粘性損失によって音響エネルギの一部が熱エネルギに変換されて消散し、スカート10の下方を伝播する騒音を吸音することができる。
【0037】
本実施の形態において、外側下壁部17の第1突条17aと内側下壁部18の第2突条18aとの間隔D、換言すれば長孔19の幅Dは、24ミリメートルである。また第1突条17aおよび第2突条18aの上下方向の寸法Bは、10ミリメートルである。外側下壁部17および内側下壁部18と上底部15との間隔Hは、86ミリメートルである。スカート10の下端部11の下方に臨む先端部の幅Wは、100ミリメートルである。内側部材13の厚みは、3ミリメートルである。これらの寸法は一例であって、吸音させたい音の周波数にあわせて変更することができる。
【0038】
前述のように長孔19に臨む外側下壁部17および内側下壁部18は各遊端部に、車両軸線L80方向に延びて上方に突出する突条17a,18aを有するので、この突条17a,18aによってヘルムホルツ共鳴器型吸音構造における頸部を構成することができる。
【0039】
さらに好ましくは、共鳴吸音手段の、鉄道車両80の走行に伴う振動の変形に対する強度は、前記共鳴吸音手段の変形量を共鳴現象の維持できる範囲に抑制できる強度である。これによって共鳴吸音手段の少なくとも外側下壁部17および内側下壁部18は各遊端部は、突条17a,18aによって、共鳴現象の維持できる範囲に変形量が抑制できる強度を確保することができる。さらに長孔19に臨む外側下壁部17および内側下壁部18は各遊端部のうち、車両80の走行に伴う振動の変形によって、いずれか一方の遊端部が、他方の遊端部に対して相対的に上方および下方のいずれに変位しても、突条17a,18aは車両軸線L80方向に延びて上方に突出するので、外側下壁部17および内側下壁部18の一方の遊端部と他方の遊端部との間隔Dが、ほぼ一定に保たれて、長孔19の開口状態を維持することができる。このように共鳴吸音手段は、共鳴現象の維持できる範囲に変形量が抑制できる強度を確保されているので、共鳴吸音手段は、劣化し難いだけでなく、車両80の走行に伴う振動による吸音性能の低下がほとんどない。
【0040】
以上のように本実施の形態の車両用スカート体10は、スカート10の下端部11に設けられる共鳴吸音手段が、スカート10の少なくとも外側部材12に一体にして設けられるので、スカート体にポリウレタンなどの吸音材を貼り付けた構成となっている従来技術に比べて、共鳴吸音手段が脱落する可能性がほとんどないだけでなく、極めて劣化し難い。
【0041】
図5は、共鳴吸音手段が設けられた車両用スカート体10を備える車両80の側構84に臨む空間における音圧レベルの分布を示す図である。図6は、共鳴吸音手段が設けられていない従来技術のスカート体1を備える車両8の側構9に臨む空間における音圧レベルの分布を示す図である。図5および図6に示す音圧レベルの分布は、車両80,8の主電動機87によって発生する騒音が、車両80,8の側構84,9に臨む空間に伝播したときのシミュレーション結果である。このとき主電動機87は630Hzの音を発生しているとした。
【0042】
図5および図6において、横軸は軌道中心線C1からの水平方向の距離を示し、縦軸はレール面90aからの鉛直方向の高さを示し、単位はともにメートルである。図5および図6において、第1領域A1の音圧レベルは約80デシベル(以後、「デシベル」を[dB]と表記する。)であり、第2領域A2の音圧レベルは約76[dB]であり、第3領域A3の音圧レベルは約73[dB]であり、第4領域A4の音圧レベルは約65[dB]であり、第5領域A5の音圧レベルは約58[dB]であり、第6領域の音圧レベルは約54[dB]であり、第7領域の音圧レベルは約50[dB]である。
【0043】
図5および図6を比較すると、図5に示す本実施の形態のスカート10を備える車両80の方が、従来のスカート体1を備える車両8よりも、側構84,9に臨む空間における第4領域A4の大きさが小さい。また、たとえば軌道中心線C1からの距離が2メートルの空間において、従来のスカート体1を備える車両8の場合は、音圧レベルが約65[dB]の第4領域A4が大半を占めているが、本実施の形態のスカート10を備える車両の場合は、レール面90aからの高さが高くなるにつれて、音圧レベルが小さくなっている。したがって本実施の形態のスカート10を備える車両80の方が、従来のスカート体1を備える車両8よりも、各側構84,9の近傍の空間における音圧レベルが小さい。
【0044】
表1は、図5および図6の観測点V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7,V8における音圧レベルを示す表である。表1に示すように、本実施の形態のスカート10を備える車両80の方が、従来のスカート体1を備える車両8よりも、各観測点V1〜V8において、音圧レベルが約2[dB]も低くなっている。
【0045】
【表1】
【0046】
以上のことから、本実施の形態のスカート10を備える車両80の方が、従来のスカート体1を備える車両8よりも、スカートによって覆われる主電動機等からの騒音を、側構84,9に臨む空間に伝播させにくくなっていることがわかる。さらに本実施の形態のスカート10を備える車両80の方が、従来のスカート体1を備える車両8よりも、各側構84,9の近傍の空間における音圧レベルが小さいので、本実施の形態のスカート10を備える車両80は、側構84から客室88に入ってくる騒音を小さくできる。これによって静かな客室88を提供することができる。
【0047】
本実施の形態のスカート10の共鳴空間20に、多孔質吸音材を収納してもよい。多孔質吸音材は、たとえばグラスウールまたはロックウールなどから成ってもよい。このような多孔質吸音材を、共鳴空間20内に収納することによって、騒音を吸音する周波数帯域を、広げることが可能になる。
【0048】
図7は、本発明の第1の比較例である実施形態の車両用スカート体10Aの下端部21を示す断面図である。スカート10Aは、外側部材22、内側部材23および有孔部材24を含んで構成される。外側部材22は、アルミニウム製であり、押出し加工によって形成される。スカート10Aは、前述の第1の実施形態のスカート10の下端部11を除く部分は同様であるので、同様の部分についての説明は省略して、主に下端部21について説明する。
【0049】
外側部材22は、アルミニウム製であり、押出し加工によって形成される。外側部材22は、スカート10Aが下方に突出する第1位置P1(図2参照)に配置される状態において、車両軸線L80方向に延びる板状であって、下方に向かうにつれて車輪81側に傾斜して配置される主板部25を有する。スカート10Aの下端部21には、上底部26および内側部27が設けられる。上底部26は、スカート10Aが第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延びる板状であって、主板部25の下端よりも上方の位置から車輪81側に突出して設けられる。内側部27は、スカート10Aが第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延びる板状であって、前記上底部26の車輪81側の端部から上方に突出して設けられる。
【0050】
内側部材23は、スカート10Aが第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延びるアルミニウム製の板材であって、外側部材22に対向して配置される。内側部材23の下端部は、外側部材22の内側部27に、たとえばリベットまたは溶接によって接合される。
【0051】
有孔部材24は、スカート10Aが第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延び、車両軸線L80方向に垂直な断面の形状が略J字状に屈曲する板状の部材である。有孔部材24において下方に臨む有孔下壁部28は、平板状に形成される。前記有孔下壁部28の車輪81側の端部から上方に突出する有孔内側部29は、その遊端部が外側部材22の内側部27に、たとえばリベットまたは溶接によって接合される。前記有孔下壁部28の車両80外方側の端部から上方に向かうにつれて車両80の外方に傾斜して突出する有孔外側部30は、その遊端部が外側部材22の上底部26の下方の外側部25に、たとえばリベットまたは溶接によって接合される。このようにスカート10Aの下端部21は、図7に示すように、外側部材22の主板部25および上底部26、ならびに有孔部材24によって、車両軸線L80方向に垂直な断面の形状が筒体となるように形成される。
【0052】
図8は、有孔部材24を示す平面図である。有孔部材24は、アルミニウム製の金属板に、千鳥状に形成される複数の独立した透孔31を形成したパンチングメタルである。外側部材22の主板部25および上底部26、ならびに有孔部材24によって囲まれて、透孔31によって下方に開放する共鳴空間20Aが形成される。スカート10Aの下端部21には、このような共鳴空間20Aを有する共鳴吸音手段が設けられる。有孔部材24の板厚tは、たとえば2ミリメートルであり、透孔31の直径φは、たとえば2ミリメートルであり、隣接する透孔31の中心間の間隔であるピッチQ1,Q2は、たとえば5ミリメートルである。これらの寸法は一例であって、吸音させたい音の周波数にあわせて変更することができる。
【0053】
図9(1)は、共鳴空間20Aを示す断面図であり、図9(2)は、共鳴空間20Aを模式的に示す断面図である。共鳴空間20Aが、図9(1)に示すように、仮想的な隔壁32で仕切ることによって、1つの透孔31によって開放する仮想共鳴空間33を想定すると、各仮想共鳴空間33は、図9(2)に示すように、ヘルムホルツ共鳴器を構成し、このようなヘルムホルツ共鳴器型吸音構造の共鳴周波数f0は、前述の式(1)で示される。
【0054】
前式(1)から、たとえば、より低い周波数の音を吸音したい場合には、有孔部材24の板厚tを大きくしたり、透孔31の直径φを大きくしたり、有孔部材24の有孔下壁部28と外側部材22の上底部26との間隔Hを大きくしたり、開口率βを小さくすればよい。また、たとえば、より高い周波数の音を吸音したい場合には、有孔部材24の板厚tを小さくしたり、透孔31の直径φを小さくしたり、有孔部材24の有孔下壁部28と外側部材22の上底部26との間隔Hを小さくしたり、開口率βを大きくすればよい。このように、有孔部材24の板厚t、透孔31の直径φ、共鳴空間20Aの有孔下壁部28の厚み方向の寸法H、および開口率βを調整することによって、共鳴周波数f0を、吸音させたい音の周波数に容易に合わせることができる。本実施の形態のスカート10Aにおいて、開口率βの調整は、有孔部材24の透孔31の数を変更することで調整することができる。
【0055】
スカート10Aの下方を伝播する共鳴周波数f0と同じ周波数の音波が、透孔31の開口によって共鳴空間20Aに導かれると、前記開口近傍の空気は激しく振動し、粘性損失によって音響エネルギの一部が熱エネルギに変換されて消散し、スカート10Aの下方を伝播する騒音を吸音することができる。
【0056】
本実施の形態において、有孔部材24の有孔下壁部28と外側部材22の上底部26との間隔Hは、たとえば86ミリメートルである。スカート10Aの下端部21の下方に臨む先端部の幅Wは、たとえば100ミリメートルである。内側部材23の厚みは、たとえば3ミリメートルである。これらの寸法は一例であって、吸音させたい音の周波数にあわせて変更することができる。
【0057】
有孔部材24は、スカート10Aが第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延び、車両軸線L80方向に垂直な断面の形状が略J字状に屈曲する板状の部材であるので、有孔部材24の複数の独立した透孔31の開口によって、スカート10Aの下端部21が臨む外空間にわたって、その外空間を伝播する騒音を吸音することができる。したがってスカート10Aの下端部21近傍において騒音が回折して伝播しようとすることを抑制して、特に回折することによって上方に伝播する騒音を低減することができる。
【0058】
有孔部材24は、外側部材22および内側部材23とは別体であるので、万一、有孔部材24が何らかの要因で破損して、吸音性能が低下しても、スカート10A全体を取り換えることなく、有孔部材24だけを取り換えることが可能である。また車両80が雨の中を走行しているときに、共鳴空間20Aに水が入っても、共鳴空間20Aは、少なくとも有孔下壁部28の透孔31によって下方に開口しているので、この開口から水が容易に外部に出ることができ、共鳴空間20Aに水が溜まって、所望の吸音性能が発揮できなくなることを防止することができる。
【0059】
共鳴空間20Aに、多孔質吸音材34を収納してもよい。多孔質吸音材34は、たとえばグラスウールまたはロックウールなどから成ってもよい。このような多孔質吸音材34を、有孔部材24のごく近傍で、共鳴空間20A内に収納することによって、騒音を吸収する周波数帯域を、広げることが可能になる。
【0060】
図10は、本発明の第2の比較例である実施形態の車両用スカート体10Bの下端部51を示す断面図である。スカート10Bは、外側部材22、内側部材23および金属繊維部材52を含んで構成される。スカート10Bは、前述の第2の実施形態のスカート10Aの有孔部材24を除く部分は同様であるので、同様の部分についての説明は省略して、主に金属繊維部材52について説明する。
【0061】
金属繊維部材52は、スカート10Bが第1位置P1(図2参照)に配置される状態において、車両軸線L80方向に延び、車両軸線L80方向に垂直な断面の形状が略J字状に屈曲する板状の部材である。金属繊維部材52において下方に臨む金属繊維下壁部53は、平板状に形成される。前記金属繊維下壁部53の車輪81側の端部から上方に突出する金属繊維内側部54は、その遊端部が外側部材22の内側部27に、たとえばリベットまたは溶接によって接合される。前記金属繊維下壁部53の車両80外方側の端部から上方に向かうにつれて車両80の外方に傾斜して突出する金属繊維外側部55は、その遊端部が外側部材22の上底部26の下方の外側部25に、たとえばリベットまたは溶接によって接合される。このようにスカート10Bの下端部51は、図10に示すように、外側部材22の主板部25および上底部26、ならびに金属繊維部材52によって、車両軸線L80方向に垂直な断面の形状が筒体となるように形成される。
【0062】
図11は、金属繊維部材52の一部を切り欠いて示す斜視図である。金属繊維部材52は、アルミ不織布56および一対の網状体57を含んで構成される多孔質部材である。アルミ不織布56は、複数の繊維状のアルミニウムが相互に係合して板状に構成される金属不織布であり、厚さ方向一方側の表面から他方側の表面に貫通する多数の孔が形成されている。アルミ不織布56は、この孔によって、少なくとも厚さ方向の通気性を有する。網状体57は、複数のアルミニウム製の針金を互いに平面的に交差させて網状に形成され、アルミ不織布56の厚み方向両面に圧着される。このように金属繊維部材52は、アルミ不織布56および一対の網状体57によるサンドイッチ構造となっている。
【0063】
外側部材22の主板部25および上底部26、ならびに金属繊維部材52によって囲まれて、アルミ不織布56に形成される孔によって下方に開放する共鳴空間20Bが形成される。スカート10Bの下端部51には、このような共鳴空間20Bを有する共鳴吸音手段が設けられる。金属繊維部材52の板厚tは、たとえば1.8ミリメートルである。この寸法は一例であって、吸音させたい音の周波数にあわせて変更することができる。本実施の形態の共鳴吸音手段における吸音のメカニズムは、前述の第2の実施形態のスカート10Aと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施の形態において、金属繊維部材52の金属繊維下壁部53と外側部材22の上底部26との間隔Hは、86ミリメートルである。スカート10Bの下端部51の下方に臨む先端部の幅Wは、100ミリメートルである。内側部材23の厚みは、3ミリメートルである。これらの寸法は一例であって、吸音させたい音の周波数にあわせて変更することができる。
【0065】
金属繊維部材52は、スカート10Bが第1位置P1に配置される状態において、車両軸線L80方向に延び、車両軸線L80方向に垂直な断面の形状が略J字状に屈曲する板状の部材であるので、金属繊維部材52の厚さ方向一方側の表面から他方側の表面に貫通する多数の孔の開口によって、スカート10Bの下端部51が臨む外空間にわたって、その外空間を伝播する騒音を吸音することができる。したがってスカート10Bの下端部51近傍において音波が回折して伝播しようとすることを抑制して、特に回折することによって上方に伝播する騒音を低減することができる。
【0066】
金属繊維部材52は、外側部材22および内側部材23とは別体であるので、万一、金属繊維部材52が何らかの要因で破損して、吸音性能が低下しても、スカート10B全体を取り換えることなく、金属繊維部材52だけを取り換えることが可能である。また車両80が雨の中を走行しているときに、共鳴空間20Bに水が入っても、共鳴空間20Bは、少なくとも金属繊維下壁部53の厚さ方向一方側の表面から他方側の表面に貫通する多数の孔によって下方に開口するので、この開口から水が容易に外部に出ることができ、共鳴空間20Bに水が溜まって、所望の吸音性能が発揮できなくなることを防止することができる。
【0067】
本実施の形態のスカート10Bの金属繊維部材52は、アルミ不織布56および一対の網状体57によるサンドイッチ構造としたが、これに限ることはない。金属繊維部材52は、たとえば、少なくとも厚み方向に通気性を有する発泡アルミであってもよい。
【0068】
各実施形態のスカート10,10A,10Bにおいて、内側部材13,23は、単なる板材としたが、これに限ることはない。内側部材13,23を、たとえば第2の実施形態のスカート10Aの有孔部材24のようなパンチングメタルでもよいし、第3の実施形態のスカート10Bの金属繊維部材52のようなアルミ不織布56および一対の網状体57によるサンドイッチ構造としたものでもよい。これによって、スカート10,10A,10Bの内空間を共鳴空間にすることができ、さらなる吸音効果を得ることができる。またこのときスカート10,10A,10Bの内空間に、グラスウールまたはロックウールなど多孔質吸音材を収納してもよい。これによって騒音を吸音する周波数帯域を広げることが可能になる。
【0069】
各実施形態のスカート10,10A,10Bの長手方向の寸法は、車両80の側構84の長手方向の寸法と、ほぼ同一であるとしたが、これに限ることはない。スカート10,10A,10Bを長手方向に、複数個に分割するようにしてもよい。
【0070】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、共鳴吸音手段によって、車両用スカート体の下方を伝播する騒音が吸音される。車両用スカート体の下方を伝播する騒音を吸音することによって、車両下方で発生する騒音がスカート体の内側から洩れる場合、特に、スカート体下端部の近傍を回折する音波が低減される。これによってスカート体の外側上方に伝播しようとすることを抑制することができ、車両下方で発生した騒音が、スカート体下端部から外側上方に伝播することを抑えることができ、騒音を効果的に低減することができる。
本発明では、鉄道車両の側構の長手方向寸法と同一寸法にスカート体が形成されるので、側構の長手方向全域に関して、スカート体の下端部で吸音効果を得ることができる。騒音源から車両軸線方向に進んで、騒音源から車両軸線方向に離れたスカート体の下方を伝播する騒音についても、吸音することができる。したがってスカート体の内側で発生した騒音の回折音を低減し、側構の長手方向全域に臨む空間に伝播する騒音を低減することができる。これによってスカート体の長手方向任意位置から回折して、側構の長手方向の任意位置を伝播して客室に入ってくる騒音を小さくすることができる。
【0071】
また共鳴吸音手段は、車両軸線方向に垂直な断面の形状が筒体であり、前記共鳴吸音手段の下部に配置される下壁部には、車両軸線方向に延びて下方に開口する長孔が形成されるので、前記筒体の内空間は、前記長孔の開口によって下方に開放する共鳴空間を実現することができる。これによって、開口によって下方に開放する共鳴空間を用いるヘルムホルツ共鳴器型吸音構造を実現することができる。また前記長孔に臨む下壁部の両端部は、車両軸線方向に延びて上方に突出する突条を有するので、この突条によってヘルムホルツ共鳴器型吸音構造における頸部を構成することができる。
請求項2記載の本発明によれば、スカート体によって、台車および床下機器を側方から覆い、下端部が車輪の近傍に配置される。共鳴吸音手段によってスカート体の内側で発生した騒音がスカート下端部を通過することを低減することができ、スカート体の下端部で回折する回折音を小さくすることができる。
【0073】
請求項3記載の本発明によれば、共鳴吸音手段は、車両軸線方向に垂直な断面の形状が筒体であり、前記共鳴吸音手段の下部に配置される下壁部は、複数の繊維状の金属が相互に係合して板状に構成される金属繊維部材であるので、前記筒体の内空間は、相互に係合している金属間の開口によって下方に開放する共鳴空間を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態の車両用スカート体10の下端部11を示す断面図である。
【図2】 車両用スカート体10を示す断面図である。
【図3】 車両用スカート体10を備える鉄道車両80を示す側面図である。
【図4】 共鳴空間20を模式的に示す断面図である。
【図5】 共鳴吸音手段が設けられた車両用スカート体10を備える車両80の側構84に臨む空間における音圧レベルの分布を示す図である。
【図6】 共鳴吸音手段が設けられていない従来技術のスカート体1を備える車両8の側構9に臨む空間における音圧レベルの分布を示す図である。
【図7】 本発明の第1の比較例である実施形態の車両用スカート体10Aの下端部21を示す断面図である。
【図8】 有孔部材24を示す平面図である。
【図9】 図9(1)は、共鳴空間20Aを示す断面図であり、図9(2)は、共鳴空間20Aを模式的に示す断面図である。
【図10】 本発明の第2の比較例である実施形態の車両用スカート体10Bの下端部51を示す断面図である。
【図11】 金属繊維部材52の一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図12】 従来のスカート体1を示す断面図である。
【図13】 図12のセクションXIIIを拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
10,10A,10B 車両用スカート体
17 外側下壁部
18 内側下壁部
17a,18a 突条
19 長孔
20,20A,20B 共鳴空間
24 有孔部材
28 有孔下壁部
31 透孔
52 金属繊維部材
53 金属繊維下壁部
Claims (3)
- 台車に車体を乗載して構成される鉄道車両の、前記車両の両側部から下方に突出し、台車を側方から覆う車両用スカート体であって、
下端部には、開口によって下方に開放する共鳴空間を有し、下方を伝播する音波を前記開口から前記共鳴空間に導いて、共鳴現象によって音響エネルギを熱エネルギに変換して吸音する共鳴吸音手段が設けられ、
前記共鳴吸音手段は、車両軸線方向に垂直な断面形状が筒体であって、
前記共鳴吸音手段の下部に配置される下壁部には、車両軸線方向に延びて下方に開口する長孔が形成され、前記長孔に臨む下壁部の両端部は、車両軸線方向に延びて上方に突出する突条を有し、
長孔および突条は、車両軸線方向に延びて、車両の側構の長手方向寸法とほぼ同一寸法に形成されることを特徴とする車両用スカート体。 - スカート体は、台車および床下機器を側方から覆うとともに下端部が車輪の回転軸線の近傍の上下位置に位置し、
共鳴吸音手段が、動力源の運動、台車の車輪および車軸の回転、ならびに車輪とレールとの接触のいずれかに起因する騒音を吸音する孔形状に形成されることを特徴とする請求項1記載の車両用スカート体。 - 前記共鳴吸音手段は、車両軸線方向に垂直な断面形状が筒体であって、
少なくとも前記共鳴吸音手段の下部に配置される下壁部が、複数の繊維状の金属が相互に係合して板状に構成される金属繊維部材であることを特徴とする請求項1記載の車両用スカート体。
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