JP6758860B2 - 有機顔料およびトナーの製造方法 - Google Patents

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本発明は、有機顔料および有機顔料を含むトナーの製造方法に関する。
有機顔料は、電子写真用トナーやインクジェットインクの着色剤等、様々な産業分野で利用されており、高性能化へ向けた表面改質法の開発が盛んに検討されている。表面改質されていない有機顔料の場合、自身の持つ官能基が形成する水素結合等の力によって、顔料同士で凝集しやすいものがある。このような顔料を溶媒中で分散させようと機械的応力で充分に分散しても、分散状態を維持することが困難である。また、ケミカルトナーの製法によっては、粒子作製中に顔料同士が凝集して偏り、最終物として得られたトナー着色力が不十分になってしまうこともある。そこで、有機顔料の表面改質を通じて、水や樹脂等の分散媒中に分散し難い有機顔料の分散性を向上させることにより、電子写真トナーの着色力の向上に伴う画像濃度向上などが検討されている。有機顔料の表面改質法としては、特許文献1および2に、有機顔料表面に共有結合を介して樹脂を結合させる手法が提案されている。
特許文献1には、有機顔料の表面に結合させたラジカル発生種の分解により発生するラジカルをラジカル重合性単量体と反応させることにより、表面改質有機顔料を製造する手法が記載されている。
また、特許文献2では、有機顔料の表面に結合させたリビングラジカル重合性基を起点として、触媒の存在下でラジカル重合性単量体と反応させることにより重合ポリマーを結合させた表面改質有機顔料を製造する手法が記載されている。
さらに、特許文献3では、懸濁重合によりポリマーを被覆して表面を改質させたカーボンブラックを製造する手法と、その改質顔料を含む樹脂粒子が記載されている。
特開平8−302227号公報 特表2008−531762号公報 特開2007−238415号公報
しかしながら、本発明者らの検討の結果、特許文献1に記載されたような製造方法では、表面にラジカル発生種を結合させる工程が必要であり、製造工程が煩雑になりやすい。また、特許文献2に記載の製造方法においても、表面にリビングラジカル重合性基を結合させる工程が必要であり、製造工程が多段階にわたり煩雑さを伴う。したがって、有機顔料の表面をポリマー樹脂で表面改質する方法について、より簡便にする改良の余地があることがわかった。さらに、特許文献3に記載の製造方法においても、黒色以外の他色展開が必要であり、トナー作製中に顔料表面の改質工程を含むような、簡便なトナー製造方法に改良する余地があることがわかった。
本発明の課題は、従来技術より簡便な手法に基づいた、表面改質させた有機顔料を提供することにある。さらには、有機顔料を含有するトナー粒子を有するトナーの製造方法を提供することにある。
前記の目的は以下の本発明によって達成される。
発明は、窒素原子を有する有機顔料であって、
前記有機顔料の表面に、ラジカル重合性単量体の重合体が結合している部位を有し、
前記有機顔料(a)と、前記ラジカル重合性単量体の重合体(b)の質量比率(b/a)が、0.05以上0.50以下であり、
前記ラジカル重合性単量体の重合体の数平均分子量が、5000以下であり、
前記ラジカル重合性単量体の重合体の多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.5以上である
ことを特徴とする有機顔料に関する
また、本発明は、有機顔料を含有するトナー粒子を有するトナーを製造するトナーの製造方法であって、
前記有機顔料がキナクリドン顔料を有し、
前記製造方法が、
前記キナクリドン顔料、およびラジカル重合性単量体を含む重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒する工程、ならびに、
下記式(1)で示される構造を有するパーオキシジカーボネート系化合物
Figure 0006758860

(式(1)中、R は、水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐または環状の置換若しくは無置換のアルキル基を示す。前記置換のアルキル基の置換基は、−OX 、−COX 、−CO−OX 、−O−CO−X 、−NX 、−NX −CO−X 、−CO−NX 、−SO 、または、−PO である。X 、X は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基を示す。)
を含む過酸化物を添加して、前記キナクリドン顔料に前記ラジカル重合性単量体の重合体を結合して表面改質し、さらに前記重合性単量体を重合することによってトナー粒子を得る工程、
を有する
ことを特徴とするトナーの製造方法に関する。
本発明によれば、従来技術より簡便な手法に基づいた、表面改質させた有機顔料、及びその有機顔料の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記有機顔料を含有するトナー粒子を有するトナーの製造方法を提供することができる。
本発明の有機顔料の製造方法の一実施形態を示す反応スキームである。
以下、本発明の表面改質させた有機顔料の製造方法の一実施形態について、図1の反応スキームを用いて説明する。
(混合液体調製工程)
図1のスキームAにおいて、窒素原子(具体的にはアミノ基中の窒素原子)を有する有機顔料10、ラジカル重合性単量体11、過酸化物12を含有する混合液体を調製する。
過酸化物は、下記式(1)で示される構造を有する化合物、及び下記式(2)で示される構造を化合物の少なくとも一方であることを特徴とする。
Figure 0006758860
(式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐または環状の置換若しくは無置換のアルキル基を示す。前記置換のアルキル基の置換基は、−OX、−COX、−CO−OX、−O−CO−X、−NX、−NX−CO−X、−CO−NX、−SO 、または、−PO である。
、Xは、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基を示す。)
Figure 0006758860
(式(2)中、Rは、水素原子、−SO 、または炭素数1〜18の直鎖、分岐または環状の置換若しくは無置換のアルキル基を示す。Rが炭化水素である場合にはC=Oに結合した炭素原子が、四級炭素以外である。前記置換のアルキル基の置換基は、−OX、−COX、−CO−OX、−O−CO−X、−NX、−NX−CO−X、−CO−NX、−SO 、または、PO である。
、Xは、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基を示す。)
この混合液体を得るために、従来公知の攪拌・せん断装置を用いることができる。例えば、ペイントシェーカ−や高せん断型ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、薄膜旋回型高速ミキサー等、機械的エネルギー付与に基づいて混合液体を得ることができる。これらの方法は、単独で用いることも、或は複数を組み合わせて用いることもできる。攪拌操作によっては系内の温度が上昇し、反応が暴走する可能性があるので、氷浴等冷却しながら調製する。本発明の混合液体中には、過酸化物以外に、従来公知のラジカル重合開始剤を含有させても良い。従来公知のラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物やアルキルパーオキサイド化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、等が挙げられるがこれらに限定されない。
また、本発明の混合液体中には、従来公知の連鎖移動剤を含有させても良い。従来公知の連鎖移動剤としては、チオール化合物やα−メチルスチレンダイマー、等が挙げられるがこれらに限定されない。
(有機顔料表面改質工程)
次いで、スキームBにおいて、調製した混合液体中の過酸化物12を分解してラジカル13を発生させる。本発明に用いる過酸化物を分解する方法としては、加熱処理や還元剤添加、等の従来公知の方法を用いることができ、本発明を達成可能な範囲においてこれらに限定されない。また、これらの方法を併用しても良い。
過酸化物を分解する方法として加熱処理を用いる場合、過酸化物の10時間半減温度以上の温度で加熱することが好ましい。10時間半減温度以上で加熱処理を行えば、過酸化物の分解速度が十分となり、過酸化物の分解に要する時間を短くすることができる。
また、過酸化物を分解する方法として加熱処理を用いる場合、過酸化物の10時間半減温度は、100℃以下であることが好ましい。過酸化物の10時間半減温度が100℃以下であると、熱によってラジカル重合性単量体が重合する影響が少なく、有機顔料の表面改質が十分に進行するため好ましい。
スキームCにおいては、スキームBで発生したラジカル13の一部が、有機顔料10表面のアミノ基から水素を引き抜き、ラジカル13の水素付加体14、および、窒素ラジカル(N・)を表面に有する有機顔料15を形成する。同時に、スキームCでは、スキームBで発生したラジカル13の一部が、ラジカル重合性単量体11に付加してラジカル重合が進行することにより、ラジカル重合性単量体の重合体16を形成する。次いで、スキームDにおいて、窒素ラジカルを有する有機顔料15とラジカル重合性単量体の重合体16とがラジカル再結合によって両者間に共有結合が形成される。これにより、ラジカル重合性単量体の重合体16が有機顔料の表面に結合した、表面改質した有機顔料17が形成される。
なお、スキームCにおいて、ラジカル13が、窒素原子を有する有機顔料10の表面のアミノ基から水素を引き抜く反応は、ラジカル重合性単量体11に付加する反応よりも速やかに起こる傾向がある。したがって、ラジカル13による有機顔料10の表面から水素を引き抜く反応は、ラジカル13の発生直後に優先的に起こるため、重合開始初期に形成されるラジカル重合性単量体の重合体16がスキームDのようなメカニズムに基づいて結合される。すなわち、ラジカル13の発生直後に高効率で有機顔料の表面からの水素を引き抜く反応が起こり、重合体の結合化率を高めることができるという利点を有する。さらに、ラジカル重合性単量体の重合体が低分子量であると、後続の重合体の結合に対する立体障害の影響が軽微となり、より重合体の結合化率を高めることができる。
さらに、本発明においては、有機顔料10の表面にラジカル重合性単量体の重合体16が結合されるのに伴って、有機顔料の分散粒径が小粒径化される傾向がある。ここで小粒径化され、新たに露出した有機顔料表面に対してラジカル13が作用し、更なる表面改質が進行するため、小粒径の有機顔料であっても、有機顔料の表面全体の改質化密度を高めることが可能である。したがって、高い分散安定性を示すことが可能な表面改質した有機顔料を得ることが可能である。
本発明の表面改質した有機顔料の製造方法においては、有機顔料の表面にラジカル重合性単量体の重合体を結合させた後には、有機顔料を構成する有機顔料単量体にラジカル重合性単量体の重合体が結合した様な副反応物が生成する場合がある。その場合には、副反応物を除去するための濾過、遠心分離等の精製工程を行ってもよい。
前記のような製造方法によって得られた有機顔料は、以下のような特徴を有する。窒素原子を有する有機顔料であり、有機顔料の表面にラジカル重合性単量体の重合体が結合している部位を有する。そして、有機顔料(a)と、ラジカル重合性単量体の重合体(b)の質量比率(b/a)が、0.05以上0.50以下であり、ラジカル重合性単量体の重合体の数平均分子量が、5000以下である。そして、ラジカル重合性単量体の重合体の多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.5以上であることを特徴とする。
有機顔料表面への重合体の結合化率、すなわち、有機顔料(a)と、ラジカル重合性単量体の重合体(b)の質量比率(b/a)は、0.05以上0.50以下である。結合化率が0.50より大きい場合、表面改質した有機顔料中の有機顔料の成分比率が小さくなる。これにより、同等量の有機顔料を含有する分散液を調製する際に、分散媒に対して多量の表面改質した有機顔料を添加する必要があるため、分散液の粘度増大を引き起しやすい。よって、重合トナーにおいては造粒性の低下を引き起こしやすく、インクジェットインクにおいては吐出性の低下を引き起こしやすいため好ましくない。一方、結合化率が0.05未満の場合、分散媒中での十分な分散安定性を担保できないため好ましくない。結合化率が0.05以上0.50以下の場合、分散媒中において有機顔料を均一に分散させ、その状態を安定にすることができる。
有機顔料の結合化率は、従来公知の方法により定量することができ、その方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。1つは、一定量の表面改質した有機顔料、および有機顔料を分散、または溶解させ、紫外可視分分光光度計を用いて両者の吸光度比に基づいて定量する方法である。もう1つは、一定量の表面改質した有機顔料を、赤外分光光度計を用いて、有機顔料由来ピークとラジカル重合性単量体の重合体由来ピークの透過率比を検量線法に基づいて定量する方法である。
本発明の表面改質した有機顔料において、ラジカル重合性単量体の重合体の数平均分子量は5000以下である。5000より大きい場合、表面改質した有機顔料の分散液中において表面改質した有機顔料間のラジカル重合性単量体の重合体同士の絡み合いの影響が大きくなり、分散体の粘度増大を引き起こすため好ましくない。5000以下の場合、他材料間に入り込みやすいため、分散媒中における改質した有機顔料の存在状態が均一となり好ましい。
本発明のラジカル重合性単量体の重合体は、有機顔料の窒素原子に結合していることが好ましい。有機顔料の表面の窒素原子とラジカル重合性単量体の重合体との結合は、従来公知の方法によって定性的、定量的に分析することができる。例えば、赤外分光光度計を用い、有機顔料単体の場合と比べた、表面改質した有機顔料のN−H結合由来ピークの透過率増大、および、N−C結合由来ピークの透過率減少、等を指標として分析することができる。
本発明の表面改質した有機顔料は、有機顔料の分散媒中でのキュムラント解析による粒径分布の平均粒径が、20nm以上500nm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、50nm以上200nm以下である。この平均粒径範囲である場合、例えば、電子写真用トナーやインクジェットインクの着色度向上、あるいはインクジェットインクの吐出性改善、等を期待できるため好ましい。
本発明のトナーは、上記方法で製造された表面改質した有機顔料を含有している。本発明の表面改質した有機顔料は表面のアミノ基部位が疎水化されたことにより顔料同士の凝集が抑制され高い分散安定性を示す。それは、トナー中においても同様に高い分散状態を維持することが可能と考えられる。したがって、本発明のトナーは、表面改質した有機顔料を用いていることにより、着色力が良化する。
さらに、本発明の表面改質した有機顔料を含有するトナーは、水系媒体中で製造されている場合、トナー粒子の粒度分布がシャープになる。これは、トナー粒子を造粒する際に、表面改質された有機顔料は水との界面よりもトナー内部の方に存在しやすくなる。その結果、トナー粒子表面への有機顔料の露出が減り、粒子形成に用いる無機分散剤が均一に粒子表面を覆うことができるためと考えられる。その結果、トナー粒子の粒度分布がシャープになることで、帯電分布が均一になり現像時の転写性が良化する。
また、トナー粒子表面への有機顔料の露出が減ることは、長時間使用時の帯電量低下を抑制する。これは、長時間使用による外添剤の埋め込みが生じ、トナー表面が露出する状態にあっても、帯電量のリークを促す可能性のある顔料が表面に存在しにくいためと考えられる。結果、長時間使用後の現像時においても、帯電量低下が抑制されることで、現像時のかぶり性が良いまま維持することが可能となる。
本発明で用いることができるトナーの製造方法について以下に述べる。本発明のトナーを作製する手段としては公知の方法を用いることが可能である。具体的には、水系媒体中で造粒を行う懸濁重合法、溶解懸濁法を挙げることができる。
特に、着色力良化のために懸濁重合法でトナーを製造することが好ましい。これは、顔料分散時において、溶解懸濁法の結着樹脂溶解液に比べて懸濁重合法のラジカル重合性単量体の方が、分子サイズが小さく、表面改質した有機顔料間に入り込みやすく分散を促す。よって、表面改質した有機顔料を用い、懸濁重合法でトナーを製造することで、より着色力が良化する。懸濁重合で製造する例を以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
懸濁重合法によるトナーの製造方法は、下記(i)〜(iii)の工程;
(i)上記有機顔料の製造方法で表面改質した有機顔料を得る工程、
(ii)表面改質した有機顔料、およびラジカル重合性単量体を含有する重合性単量体組成物を水系媒体で造粒する造粒工程、
(iii)造粒された粒子中に含有される前記ラジカル重合性単量体を重合することによってトナー粒子を得る重合工程、
をこの順に有する。
(混合液体調製工程)
まず、有機顔料、ラジカル性重合単量体、および過酸化物を少なくとも含む混合液体を調製する。
(顔料表面改質工程)
次に、得られた混合液体を攪拌しながら、加熱処理を施し、有機顔料表面を改質させる。加熱処理後、混合液体中にアセトン、テトラヒドロフラン、トルエンなどの有機溶剤を加え遠心分離にかけ、不溶成分を取り除き、乾燥させることで、本発明における表面改質した有機顔料が得られる。あるいは、加熱処理後の表面改質した有機顔料を含む分散液の状態で次の工程に使用してもよい。
(重合性単量体組成物調製工程)
トナー粒子の構成成分となるラジカル重合性単量体に、表面改質された有機顔料を加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機を用いてこれらを均一に溶解あるいは分散させた重合性単量体組成物を調製する。このとき、重合性単量体組成物中には、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また荷電制御剤や可塑剤、さらに他の添加剤(例えば、顔料分散剤や離型剤分散剤)を適宜加えることが出来る。
(造粒工程)
次いで、前記重合性単量体組成物を、予め用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に投入し、高速攪拌機もしくは超音波分散機などの高速分散機を用いて懸濁させ、造粒を行う。重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じてラジカル重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることも出来る。
(重合工程)
造粒後の懸濁液を加熱し、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、且つ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら行う。重合反応が進行し、表面改質した有機顔料を含むトナー粒子分散液が得られる。重合反応の後半あるいは重合反応終了後に、減圧や昇温の如き公知の方法を用いて蒸留を行ってもよい。蒸留工程を行うことで、残存する未反応のラジカル重合性単量体を除去することが出来る。
前記の通り、トナー粒子を作製する前に、有機顔料の表面を改質する工程を経ておくことで、結合化率を調製しやすく目的に見合った着色力を有するトナーを製造しやすい。表面改質化した有機顔料自身の分散安定性の良いものほどトナーの着色力が良化する。
本発明のトナー粒子を製造する際、有機顔料表面の改質とトナー粒子の重合反応を同じ工程で行っても良い。顔料改質処理とトナー重合を同工程で進めることによって、より簡便に表面を改質させた有機顔料を含有するトナー粒子を得ることが可能となる。具体的には、次のような工程を有する。
有機顔料を含有するトナー粒子を有するトナーを製造するトナーの製造方法が、前記有機顔料がキナクリドン顔料を有し、前記キナクリドン顔料、およびラジカル重合性単量体を含む重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒する工程、を有する。
記式(1)で示される構造を有するパーオキシジカーボネート系化合物を含む過酸化物を添加して、前記キナクリドン顔料に前記ラジカル重合性単量体の重合体を結合して表面改質し、さらに前記ラジカル重合性単量体を重合することによってトナー粒子を得る工程、を有する。
(重合性単量体組成物調製工程)
有機顔料(キナクリドン顔料)、ラジカル重合性単量体を含み、均一に溶解あるいは分散させた重合性単量体組成物を調製する。必要に応じて、多官能性単量体や連鎖移動剤、また荷電制御剤や可塑剤、さらに他の添加剤(例えば、顔料分散剤や離型剤分散剤)を適宜加えることが出来る。有機顔料の表面に結合させるラジカル性重合単量体は、トナー粒子の結着樹脂を形成し得るラジカル重合性単量体と同じである。さらに過酸化物および重合開始剤(過酸化物の1種である)については、混合液調製工程で加えても良いし、後に記載する造粒工程で加えても良い。適当な過酸化物と溶解温度を選択すれば、重合性単量体組成物調製工程中に有機顔料表面の改質が可能となる。なお、過酸化物には、式(1)で示される構造を有するパーオキシジカーボネート系化合物を含む過酸化物を用いる。上記式(1)で示される構造を有するパーオキシジカーボネート系化合物を含む二種以上の過酸化物を用いることが、より好ましい。これにより、粒度分布がよりシャープになり、転写効率やカブリ抑制の効果がより優れる。
(造粒工程)
重合性単量体組成物は、分散安定剤を含有する水系媒体中に投入し、高速攪拌機もしくは超音波分散機などの高速分散機を用いて懸濁させ、造粒を行う。造粒中に過酸化物、および重合開始剤を加える場合、これらを同時に添加しても良い。あるいは、過酸化物のみを添加した後、任意の時間経過後に重合開始剤を添加しても良い。適当な過酸化物と造粒温度を選択すれば、造粒工程中に有機顔料表面の改質が可能となる。
(重合工程)
造粒後の懸濁液を加熱し、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、且つ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら反応させトナー粒子の結着樹脂を重合させる。このとき、適当な過酸化物および重合開始剤を選択し、段階的に加熱するなど条件を選ぶことで、有機顔料の表面の改質とトナー粒子の結着樹脂の重合を進めることもできる。重合反応の後半あるいは重合反応終了後に、減圧や昇温の如き公知の方法を用いて蒸留を行ってもよい。蒸留工程を行うことで、残存する未反応のラジカル重合性単量体を除去することが出来る。最終的に、表面改質された有機顔料を含むトナー粒子を得ることができる。
本発明に用いる原材料について以下に説明する。
有機顔料の表面の改質においては、過酸化物の分解により発生するラジカルが、有機顔料中のアミノ基から水素を引き抜くのに十分な活性を有する必要がある。この十分な活性を有するラジカルの構造が、カーボネートラジカル、または、アシルラジカルであることを見出した。すなわち、過酸化物が、前記式(1)で示される構造を有する化合物、及び、前記式(2)で示される構造を有する化合物の少なくとも一方であることを特徴とする。
式(1)で示される構造を有する過酸化物の例として、パーオキシモノカーボネート系化合物やパーオキシジカーボネート系化合物が挙げられる。また、式(2)で示される構造を有する過酸化物の例としては、パーオキシエステル系化合物やジアシルパーオキサイド系化合物が挙げられる。但し、パーオキシエステル系化合物とジアシルパーオキサイド系化合物は、前記式(2)中のRがアルキル基である場合に、C=Oに結合する炭素原子が四級炭素以外であることが必須である。すなわち、Rが前記アルキル基である場合、C=Oに結合する炭素原子が、四級炭素である場合を除く。C=Oに結合した炭素原子が四級炭素である場合、分解直後に生成するアシルラジカルが二酸化炭素の脱離(脱炭酸)を経て水素を引き抜くのに十分な活性を有さない炭素ラジカルに変化するため、有機顔料の表面改質を十分に進めることができない。
本発明の過酸化物は、油溶性であることが好ましい。本発明の過酸化物は、水と実質的に混和せず、水と混合した際に界面を形成する過酸化物であることが好ましい。油溶性であるとは、過酸化物の水に対する溶解度が、常温(20℃)において3質量%(水100gに対して過酸化物3g)以下であることを意味する。本発明の過酸化物が油溶性であることによって、過酸化物の分解により発生するラジカルが疎水性の高い有機顔料の表面に接近し易くなり、水素を引き抜く反応が効率的に進行するため好ましい。
前記式(1)で示される構造を有する過酸化物のうち、10時間半減温度が90℃以下であり、油溶性である過酸化物としては、以下の化合物が挙げられる。例えば、ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(n−プロピル)パーオキシジカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、等のパーオキシジカーボネート化合物が挙げられる。
また、前記式(2)で示される構造を有する過酸化物のうち、10時間半減温度が90℃以下であり、油溶性である過酸化物としては、以下の化合物が挙げられる。例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等のパーオキシエステル化合物や、ジイソノナノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物が挙げられる。
本発明の有機顔料表面改質におけるラジカル重合性単量体は、ラジカル重合開始剤の開裂によって重合可能なラジカル重合性の単量体である。具体的には、スチレン誘導体、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、アクリルニトリル誘導体、メタクリルニトリル誘導体、メタクリルニトリル誘導体、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体などが挙げられる。スチレン誘導体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレンなどが挙げられる。また、アクリル酸誘導体としては、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−クロルエチルアクリレート、フェニルアクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸誘導体としては、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−クロルエチルメタクリレート、フェニルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類が挙げられる。本発明において、複数のラジカル重合性単量体を混合して用いても良い。
本発明のラジカル重合性単量体は、スチレン誘導体、あるいは、アクリル酸誘導体、アクリレート誘導体、アクリロニトリル誘導体であることが好ましい。これらのラジカル重合単量体のラジカル重合停止反応は、高い確率でラジカル再結合に基づくため、本発明のラジカル再結合を介した表面改質が効率的に進行しやすい。
また、本発明のラジカル重合性単量体は、油溶性であることが好ましい。本発明のラジカル重合性単量体は、水と実質的に混和せず、水と混合した際に界面を形成するモノマーであることが好ましい。油溶性であるとは、ラジカル重合性単量体の水に対する溶解度が、常温(20℃)において3質量%(水100gに対してラジカル重合性単量体3g)以下であることを意味する。本発明のラジカル重合性単量体が油溶性であることによって、ラジカル重合性単量体の重合体の成長ラジカルが疎水性の高い有機顔料表面に接近し易くなり、表面改質が効率的に進行するため好ましい。
有機顔料に結合されたラジカル重合性単量体の重合体の分子量は、例えば、過酸化物の含有量を変化させることにより制御することが可能である。すなわち、混合液体中において、過酸化物の含有量を相対的に多くすることによって、ラジカル重合性単量体の重合体の数平均分子量を小さくすることができる。ラジカル重合性単量体の重合体の数平均分子量としては、5000以下である。
また、有機顔料に結合されたラジカル重合性単量体の重合体の多分散度(重量平均分子量/数平均分子量、M/M)は、1.5以上の値となる。
本発明のトナーの結着樹脂を作製するラジカル重合性単量体についても、前記ラジカル重合性単量体と同様、ラジカル重合開始剤の開裂によって重合可能なラジカル重合性の単量体である。具体的には次に例示される通りである。スチレン;スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン,p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン;アクリル酸誘導体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート;メタクリル酸誘導体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレート。これらのラジカル重合性単量体の中でも、スチレン系単量体(スチレンまたはスチレン誘導体)とスチレン系単量体以外の重合性単量体とを混合して使用することが、トナーの現像特性および耐久性の点から好ましい。そして、これらラジカル重合性単量体の混合比率は、所望する結着樹脂およびトナー粒子のガラス転移温度を考慮して、適宜選択すればよい。
前記に記載した重合性単量体組成物を共重合し結着樹脂を形成させる際に用いることのできるラジカル重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤など様々なものが使用できる。使用できる過酸化物系重合開始剤としては、有機系としては、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドが挙げられる。無機系としては、過硫酸塩、過酸化水素などが挙げられる。例えば、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシジエチルアセテート等のパーオキシエステル化合物、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート化合物、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール化合物、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド化合物、その他としてt−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート等が挙げられる。また、使用できるアゾ系重合開始剤としては、以下の化合物が挙げられる。例えば、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
窒素原子を含有する有機顔料は、ラジカル重合性単量体の重合体が結合するため、アミノ基を有する有機顔料を用いられる。具体的な有機顔料としては、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ピロロピロール顔料であることが好ましい。これらの有機顔料は、有機顔料の分子構造中のアミノ基とカルボニル基との分子間水素結合を駆動力として集積化した構造を有する。これらの有機顔料を用いた場合、本発明の過酸化物が分解して発生するラジカルによりアミノ基の水素が引き抜かれ、ラジカル重合性単量体の重合体が結合される過程で、顕著な小粒径化が引き起こされるため好ましい。すなわち、これらの有機顔料を用いた場合、小粒径で分散安定性の高い表面改質した有機顔料が得られるため好ましい。窒素原子を有する有機顔料として、具体的には、以下の顔料が挙げられる。
キナクリドン顔料としては、C.I.Pigment Violet19、C.I.Pigment Red122、202、209、C.I.Pigment Orange48、49が挙げられる。インジゴ顔料としては、C.I.Vat Blue1、66が挙げられる。ピロロピロール顔料としては、C.I.Pigment Red254、255、264、C.I.Pigment Orange71、73が挙げられる。
トナーに使用可能な顔料としては、表面改質された有機顔料はいずれも使用できる。
さらに、従来から知られている種々の染料や顔料など、前記以外のアミノ基部位を持たない有機顔料であれば併用しても構わない。併用してよい顔料として、具体的には以下の顔料が挙げられる。イエロー用着色顔料としては、C.I.Pigment Yellow1、3、12、13、14、17、55、83、93、94、95、97、98、154、166が挙げられる。
マゼンタ用着色顔料としては、C.I.Pigment Red3、5、17、22、23、38、41、112、123、146、149、178、179、190、C.I.Pigment Violet23が挙げられる。かかる顔料を単独で使用しても、染料と顔料を併用してもよい。
シアン用着色顔料としては、C.I.Pigment Blue15、15:1、15:3またはフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1以上5個以下置換した銅フタロシアニン顔料が挙げられる。
本発明のトナー粒子は前記重合性単量体組成物中に樹脂を添加してもよい。本発明に用いることができる樹脂としては公知のものが使用可能であり、スチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、あるいはそれらを結合させたハイブリッド樹脂が使用可能である。例えば以下のようなものを例示することができる。スチレン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、また、それらの樹脂を任意に結合させたハイブリッド樹脂。中でもスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル樹脂とポリエステル樹脂を結合させたハイブリッド樹脂がトナー特性上望ましく用いられる。
前記ポリエステル樹脂としては、多価アルコールとカルボン酸、若しくはカルボン酸無水物、カルボン酸エステルを原料モノマーとして通常製造されるポリエステル樹脂を使用することができる。具体的には、前述したポリエステル樹脂と同様の多価アルコール成分、多価カルボン酸成分が利用可能である。それらの中でも、特に、以下に挙げる成分を縮重合したポリエステル樹脂が好ましい。ジオール成分としてはビスフェノール誘導体。酸成分としては、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物;フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分。
一方、ハイブリッド樹脂としては、具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルなどのカルボン酸エステル基を有する単量体を重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって結合し形成されるものである。好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)が挙げられる。前記ビニル系(共)重合体やビニル系(共)重合体ユニットを生成するためのビニル系単量体としては、前述のビニル系単量体として例示したものと同様のものが利用可能である。
また、本発明のトナーは離型剤を含有してもよい。離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系ワックスのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス;および脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したもの、ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。カルナバワックスは、カルナウバワックスとも呼ばれる。
離型剤の分子量分布としては、メインピークが分子量400以上2400以下の領域にあることが好ましく、430以上2000以下の領域にあることがより好ましい。離型剤の添加量は、結着樹脂100.0質量部に対して総量で2.5質量部以上40.0質量部以下であることが好ましい。
また、本発明のトナーは、荷電特性の安定化を目的として、必要に応じて荷電制御剤を含有させることができる。含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と外添する方法がある。荷電制御剤としては公知のものを利用することができるが、内部に添加する場合には重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物を実質的に含まない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤として、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。また、ポジ系荷電制御剤として、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではない。内部添加する場合は、好ましくは重合性単量体100.0質量部に対して0.1乃至10.0質量部、より好ましくは0.1乃至5.0部の範囲で用いられる。また、外部添加する場合は、好ましくはトナー100.0質量部に対して0.005乃至1.0質量部、より好ましくは0.01乃至0.3質量である。
本発明のトナーには、流動性向上剤が外部添加されていることが画質向上のために好ましい。流動性向上剤としては、ケイ酸微粉体、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好適に用いられる。これら無機微粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイルまたはそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。前記の如き外添剤は、トナー粒子100.0部に対して0.1以上5.0部以下(好ましくは0.1以上3.0質量部以下)使用するのが良い。
以下、本発明に係る各種物性の測定方法について説明する。
(結合されたラジカル重合性単量体の重合体の分子量および多分散度)
表面改質した有機顔料を添加したジオキサンと水酸化カリウム水溶液の混合液体(質量比:5:1)で70℃に加熱した後、遠心分離(12000rpm;30分間)して固形分を回収する。メタノールで3回洗浄した後、アセトンを加えて遠心分離(12000rpm;30分間)し、上澄みを回収して乾燥させることによって、ラジカル重合性単量体の重合体を得る。このようにして得られたラジカル重合性単量体の重合体をクロロホルムに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(装置:東ソー株式会社製 HLC−8120GPC、展開溶媒:クロロホルム、カラム:同社製 TSKgel G2000HXL/G3000HXL/G4000HXL)を用いて、UV検出器の検出波長を400nmに設定した際に得られるクロマトグラムに基づいて数平均分子量(M)を測定する。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、数平均分子量と同様にして測定した重量平均分子量(M)を用いて算出する。
(表面改質した有機顔料の結合化率評価)
表面改質した有機顔料の赤外吸収スペクトル測定(装置:パーキンエルマー(株)製 Spectrum One)によって、ベースライン補正後の有機顔料由来ピークの透過率(TPig)、ラジカル重合性単量体の重合体由来ピークの透過率(TPoly)、を測定する。有機顔料とラジカル重合性単量体の重合体を各種比率で混合した試料を用いて作成した検量線(横軸:混合比、縦軸:Tpoly/TPig)に基づいて、結合化率(Tpoly/TPigx100[%])を算出する。
(表面改質した有機顔料の粒径評価)
微量のグラフト化した有機顔料をトルエン中に分散させ、動的光散乱法(DLS,ゼータサイザーナノ、マルバーン社製)を用いてキュムラント解析による粒径分布の平均粒径を測定する。
(トナーの粒度分布)
本発明におけるトナーの粒度分布は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下までに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、体積基準メジアン径(Dv50)、個数基準メジアン径(Dn50)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径であり、「中位径」が体積基準メジアン径(Dv50)である。また、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径であり、「中位径」が個数基準メジアン径(Dn50)である。本件におけるトナーの粒度分布はDv50/Dn50で算出される数値とする。
(表面改質した有機顔料の分散安定性評価)
本発明においては、以下の方法により表面改質した有機顔料の分散安定性を評価した。
トルエン100質量部に対して、表面改質した有機顔料1.0質量部を混合し、10分間の超音波照射により分散させた分散液を調製した。調製した分散液を2日間静置した後、上澄み液を採取した。紫外可視分光光度計(装置:パーキンエルマー株式会社製 Lamda900)を用い、調製直後の分散液(A)、および、2日間静置後の上澄み液(B)の顔料由来吸収波長における吸光度を測定し、両者の比率(B/A)を求めた。本発明においては、この比率が、0.7以上の場合に分散安定性は良好と判断する。特に、0.9以上1.0以下の場合を分散安定性Aランク、0.7以上0.9未満の場合を分散安定性Bランクとした。また、この比率が0.2以下の場合、あるいはトルエンに対して表面改質した有機顔料が分散しない場合には分散安定性Cランクとした。
(実施例1)
スチレン39.2質量部、トルエン19.6質量部、C.I.Pigment Red122を1.0質量部、ジーターシャリーブチルサリチル酸のアルミニウム化合物を0.2質量部、ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネート(10時間半減期温度:51℃)2.0質量部して混合した。これを超音波分散機UH−300((株)エスエムテー製)を用いて、氷浴中で15分間撹拌して混合液体を調製した(顔料の平均粒径:794nm)。
次に、混合液体に対して氷浴中で15分間窒素バブリングを行った後、攪拌(200rpm)しながら重合温度63℃で6時間保持することにより加熱処理を施した。この加熱処理により、ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネートが分解し、ラジカルが発生する。加熱処理後の混合液体中に、アセトンを加えて遠心分離(12000rpm;30分間)して不溶成分を回収する操作を三回繰り返し、乾燥することにより、表面改質した有機顔料1を得た。表1に、表面改質した有機顔料1の物性および分散安定性評価について示す。なお、表面改質した有機顔料1の結合化率評価においては、TPigとして710cm−1、Tpolyとして695cm−1の透過率を採用した。ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネートは、式(1)で示される構造を有する化合物である。ラジカル重合性単量体であるスチレンは、水に対する溶解度が3質量%以下であるから、ラジカル重合性単量体の重合体であるポリスチレンは、油溶性を示す。
(実施例2)
実施例1における、ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネート2.0質量部をジラウロイルパーオキサイド(10時間半減期温度:61℃)3.3質量部に変更し、重合温度を73℃に変更した以外は同様にして表面改質した有機顔料2を得た。表1に、表面改質した有機顔料2の物性および分散安定性評価について示す。なお、表面改質した有機顔料2の結合化率評価においては、TPigとして710cm−1、Tpolyとして695cm−1の透過率を採用した。ジラウロイルパーオキサイドは、式(2)で示される構造を有する化合物である。
(実施例3)
実施例1における、ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネートの添加量を2.0質量部から4.0質量部へ変更した以外は同様にして表面改質した有機顔料3を得た。表1に、表面改質した有機顔料の物性および分散安定性評価について示す。なお、表面改質有機顔料3の結合化率評価においては、TPigとして710cm−1、Tpolyとして695cm−1の透過率を採用した。
(比較例1)
実施例1における、ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネート2.0質量部をt−ブチルパーオキシピバレート(10時間半減期温度:58℃)1.5質量部に変更し、重合温度を70℃に変更した以外は同様にして表面改質した有機顔料4を得た。なお、表面改質した有機顔料4の結合化率評価においては、TPigとして710cm−1、Tpolyとして695cm−1の透過率を採用した。なお、t−ブチルパーオキシピバレートは、式(1)で示される構造を有する化合物、及び式(2)で示される構造を有する化合物に該当しない。
(比較例2)
実施例1における、C.I.Pigment Red122をC.I.Pigment Red150に変更した以外は同様にして表面改質した有機顔料5を得た。なお、表面改質有機顔料5の結合化率評価においては、TPigとして738cm−1、Tpolyとして695cm−1の透過率を採用した。なお、C.I.Pigment Red150は、窒素原子を有さない有機顔料である。
Figure 0006758860
次に、本発明におけるトナー実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例中で使用する部数は質量部を示す。
(トナーAの製造例)
(表面改質有機顔料の作製)
実施例1の製造例と同様にして、表面改質した有機顔料1を調製した。
(トナー粒子の作製)
イオン交換水1000.0部に、リン酸ナトリウム15.3部、及び、10%塩酸4.9部投入し、N2パージしながら65℃で60分保温した。TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、12,000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に8.5部の塩化カルシウムを溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
次いで、アトライター分散機(三井三池化工機製)に、
スチレン 48.0部
表面改質有機顔料1 6.8部
を投入し、直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて220rpmで5時間分散させて、マスターバッチ分散液を得た。
前記マスターバッチ分散液に、
スチレン 31.0部
n−ブチルアクリレート 20.0部
パラフィンワックス(融点:78℃) 9.0部
を加えた。これを60℃に保温し、TK式ホモミキサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物と調製した。
前記水系媒体中に前記重合性単量体組成物を投入し、65℃、N2パージ下で、TK式ホモミキサーにて10,000rpmで攪拌し、pH5.5で造粒した。これに、造粒開始後に重合開始剤t−ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加し、10分間攪拌を続けた。その後、パドル攪拌翼で攪拌しつつ70℃で7時間反応させ、90℃に昇温してさらに6時間反応させた。重合反応終了後、反応容器を冷却した。その後、イオン交換水で洗浄し、乾燥及び風力分級して得られたものをトナー粒子Aとした。
得られたトナー粒子A100.0部に、疎水性酸化チタンを0.3部加え、ヘンシェルミキサ(三井三池社製)で混合し、次に疎水性シリカを1.5部加え、ヘンシェルミキサで混合し、外添剤を有するトナーAを得た。得られたトナーAの粒度分布を表3に示す。
(トナーB〜C及びO、Pの製造例)
表2に記載される通りに各原料の種類及び含有量を変更させた以外はトナーAの製造例と同様にして、トナーB〜C及びO、Pを製造した。得られたトナーB〜C及びO、Pの粒度分布を表3に示す。
(トナーD)
イオン交換水1000.0部に、リン酸ナトリウム15.3部、及び、10%塩酸4.9部投入し、N2パージしながら65℃で60分保温した。TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に8.5部の塩化カルシウムを溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
次いで、アトライター分散機に、
スチレン 48.0部
C.I.Pigment Red122 6.8部
を投入し、直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて220rpmで5時間分散させて、マスターバッチ分散液を得た。
前記マスターバッチ分散液に、
スチレン 31.0部
n−ブチルアクリレート 20.0部
パラフィンワックス(融点:78℃) 9.0部
ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネート 0.8部
t−ブチルパーオキシピバレート 9.0部
を加えた。これを60℃に保温し、TK式ホモミキサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
前記水系媒体中に前記重合性単量体組成物を投入し、65℃、N2パージ下で、TK式ホモミキサーにて10,000rpmで5分間攪拌し、pH5.5で造粒した。その後、パドル攪拌翼で攪拌しつつ70℃で7時間反応させ、90℃に昇温してさらに6時間反応させた。重合反応終了後、反応容器を冷却した。その後、イオン交換水で洗浄し、乾燥及び風力分級して得られたものをトナー粒子Dとした。
得られたトナー粒子D100.0部に、疎水性酸化チタンを0.3部加え、ヘンシェルミキサで混合し、次に疎水性シリカを1.5部加え、ヘンシェルミキサで混合し、外添剤を有するトナーDを得た。得られたトナーDの粒度分布を表3に示す。
(トナーE〜J)
表2に記載される通りに原料の種類及び含有量を変更させた以外はトナーDの製造例と同様にして、トナーE〜Jを製造した。得られたトナーE〜Jの粒度分布を表3に示す。
(トナーK)
イオン交換水1000.0部に、リン酸ナトリウム15.3部、及び、10%塩酸4.9部投入し、N2パージしながら65℃で60分保温した。TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に8.5部の塩化カルシウムを溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
次いで、アトライター分散機に、
スチレン 48.0部
C.I.Pigment Red122 6.8部
を投入し、直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて220rpmで5時間分散させて、マスターバッチ分散液を得た。
前記マスターバッチ分散液に、
スチレン 31.0部
n−ブチルアクリレート 20.0部
パラフィンワックス(融点:78℃) 9.0部
を加えた。これを60℃に保温し、TK式ホモミキサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
前記水系媒体中に60℃、N2パージ下で、TK式ホモミキサーにて10,000rpm、pH5.5で攪拌しているところへ前記重合性単量体組成物を投入した。その直後にジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネート0.8部を添加した。さらに3分後に重合開始剤t−ブチルパーオキシピバレート9.0部添加し、造粒した。その後、パドル攪拌翼で攪拌しつつ70℃で6時間反応させ、90℃に昇温してさらに6時間反応させた。重合反応終了後、反応容器を冷却した。その後、イオン交換水で洗浄し、乾燥及び風力分級して得られたものをトナー粒子Kとした。
得られたトナー粒子K100.0部に、疎水性酸化チタンを0.3部加え、ヘンシェルミキサで混合し、次に疎水性シリカを1.5部加え、ヘンシェルミキサで混合し、トナーKを得た。得られたトナーKの粒度分布を表3に示す。
(トナーL)
表2に記載される通りに原料の種類及び含有量を変更させた以外はトナーKの製造例と同様にして、外添剤を有するトナーLを製造した。得られたトナーLの粒度分布を表3に示す。
(トナーM)
イオン交換水1000.0部に、リン酸ナトリウム15.3部、及び、10%塩酸4.9部投入し、N2パージしながら65℃で60分保温した。TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に8.5部の塩化カルシウムを溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
次いで、アトライター分散機に、
スチレン 48.0部
C.I.Pigment Red122 6.8部
を投入し、直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて220rpmで5時間分散させて、マスターバッチ分散液を得た。
前記マスターバッチ分散液に、
スチレン 31.0部
n−ブチルアクリレート 20.0部
パラフィンワックス(融点:78℃) 9.0部
ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネート 10.0部
を加えた。これを60℃に保温し、TK式ホモミキサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
前記水系媒体中に前記重合性単量体組成物を投入し、65℃、N2パージ下で、TK式ホモミキサーにて10,000rpmで10分間攪拌し、pH5.5で造粒した。その後、パドル攪拌翼で攪拌しつつ70℃で6時間反応させ、90℃に昇温してさらに6時間反応させた。重合反応終了後、反応容器を冷却した。その後、イオン交換水で洗浄し、乾燥及び風力分級して得られたものをトナー粒子Mとした。
得られたトナー粒子M100.0部に、疎水性酸化チタンを0.3部加え、ヘンシェルミキサで混合し、次に疎水性シリカを1.5部加え、ヘンシェルミキサで混合し、トナーMを得た。得られたトナーMの粒度分布を表3に示す。
(トナーN)
(スチレンアクリル樹脂の作製)
還流冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を入れ
た。
スチレン 78.0部
トルエン 100部
n−ブチルアクリレート 22.0部
アクリル酸 2.0部
メチルメタクリレート 2.4部
メタクリル酸 1.7部
ジ(t−ブチル)パーオキサイド 7.2部
前記容器内を毎分200回転で撹拌し、110℃に加熱して10時間撹拌した。さらに、140℃に加熱して6時間重合した。溶媒を留去させてスチレンアクリル樹脂を得た。
(トナー組成物混合液の作製)
スチレンアクリル樹脂 100.0部
表面改質有機顔料1 5.0部
パラフィンワックス(融点:78℃) 8.0部
酢酸エチル 100.0部
前記材料を容器中で予備混合した後に、それを20℃以下に保ったまま、ビーズミルで4時間分散処理し、トナー組成物混合液を作製した。
(トナー粒子の作製)
イオン交換水240.0部に0.1mol/LのNaPO水溶液78部を加え、60℃に加温し、のクレアミックス(エム・テクニック(株)製)を用いて回転数14000rpmの条件で撹拌した。これに1.0mol/L−CaCl水溶液12.0部を添加し、Ca(POを含む分散媒体(水系媒体)を得た。さらに、カルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲンBS−H、第一工業製薬(株)製)1.0部を添加し、10分間撹拌した。
前記精密分散・乳化機の容器中で調製した前記分散媒体の温度を30℃に調整し、撹拌している中に、温度を30℃に調整した前記トナー組成物混合液180部を加え、1分間撹拌した後、停止して、トナー組成物分散懸濁液を得た。得られたトナー組成物分散懸濁液を撹拌しながら、温度を40℃で一定に保ち、排気装置により懸濁液面上の気相を強制更新して、17時間そのままに保ち、溶媒を除去した。室温まで冷却させた後、塩酸を加えてCa(POを溶解させ、濾過、洗浄および乾燥を行ってトナー粒子を得た。後はトナーAの製造例と同様にして、外添剤を有するトナーNを得た。得られたトナーNの粒度分布を表3に示す。
Figure 0006758860
<画出し評価>
<着色力>
カラーレーザープリンタSatera LBP7700C(キヤノン(株)製)用のカートリッジから中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、試験トナー(150g)を充填した。
また、カラーレーザープリンタ LBP7700Cを一部改造した。すなわち、定着機を外して未定着画像を出力できるように変更し、コントローラーにより画像濃度を調節可能にした。さらに、一色のカートリッジだけの装着でも作動するよう改造した。外した定着機は、定着機単体でも動作できるように改良し、さらにプロセススピードと温度を制御できるように外部定着機として改造した。前記カートリッジをプリンタに装着し、転写材の上部に30mmの空白の後、横150mm×縦30mmの帯画像を作成した。さらに帯画像のトナー載り量が0.35mg/cmとなるようにコントローラーを設定した。転写材は、A4サイズのGF−C081(キヤノン社製、81.4g/m)を用いた。
この帯画像を10枚出力し、カラーレーザープリンタLBP7700Cの外部定着機を用いて、プロセススピード230mm/sec、150℃で定着した。得られた定着画像の画像濃度を測定して着色力を評価した。尚、画像濃度の測定には「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて測定した。原稿濃度が0.00の白下地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、定着画像1枚に付き左部、中央部及び右部の3点ずつ測定し、定着画像10枚の算術平均値で評価した。評価基準は以下の通りである。本発明において、C以上が本発明の効果が得られているレベルとした。評価結果を表3に示す。
A:画像濃度が1.40以上
B:画像濃度が1.35以上1.40未満
C:画像濃度が1.30以上1.35未満
D:画像濃度が1.30未満。
<転写性>
転写性は、常温低湿環境下(25℃,15%)での画像形成試験5000枚時点に、トナー載り量0.65mg/cmのベタ画像を感光体ドラム上に現像させた後、75g/mのA4普通紙に転写させ未定着画像を得た。この時の感光体ドラム上のトナー量と転写紙上のトナー量の重量変化から転写効率を求めた(ドラム上のトナーが全量転写紙上に転写された場合を転写効率100%とする。)評価基準は次の通りである。
(評価基準)
A:転写効率が96%以上
B:転写効率が92%以上96%未満
C:転写効率が89%以上92%未満
D:転写効率が89%未満
<カブリ>
単色ベタ画像部の反射濃度が、1.4であり、白地部電位が現像バイアスから、画像部に対して反対方向に150Vとなるように、感光体上の電位を調整した。高温高湿(32.5℃、85%RH)下で、印字率が30%の画像チャートを用いて1万枚の画像出力後、ベタ白画像形成中に感光体を止め、転写工程前の感光体上のトナーを、マイラーテープを用いて剥ぎ取り、紙上に貼り付けた。また、マイラーテープをそのまま紙上に、貼り付けリファレンスとした。
測定に関しては、東京電色技術センター製DENSITOMETER TC−6DSを用い、反射率(%)を測定し、レファレンスとの差分をカブリの値とした。
<評価基準>
A:反射率の差が1.5%未満
B:反射率の差が1.5%以上2.5%未満
C:反射率の差が2.5%以上4.0%未満
D:反射率の差が4.0%以上
以上の評価結果を表3に示す。
その結果、実施例4〜17においては、表面改質した有機顔料を用いることで着色力が良化した。さらに適正な有機顔料と過酸化物および重合開始剤を選択することで転写性および画像形成後カブリにおいてもともに良好な結果であることが示された。
Figure 0006758860

Claims (8)

  1. 窒素原子を有する有機顔料であって、
    前記有機顔料の表面に、ラジカル重合性単量体の重合体が結合している部位を有し、
    前記有機顔料(a)と、前記ラジカル重合性単量体の重合体(b)の質量比率(b/a)が、0.05以上0.50以下であり、
    前記ラジカル重合性単量体の重合体の数平均分子量が、5000以下であり、
    前記ラジカル重合性単量体の重合体の多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.5以上である
    ことを特徴とする有機顔料。
  2. 前記ラジカル重合性単量体の重合体が、前記有機顔料の窒素原子に結合している請求項に記載の有機顔料。
  3. 前記有機顔料のキュムラント解析による粒径分布の平均粒径が、50nm以上200nm以下である請求項またはに記載の有機顔料。
  4. 前記ラジカル重合性単量体の重合体が、油溶性である請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機顔料。
  5. 前記有機顔料が、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、およびピロロピロール顔料のいずれかである請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機顔料。
  6. 前記ラジカル重合性単量体が、スチレン誘導体、アクリル酸誘導体、アクリレート誘導体、およびアクリロニトリル誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機顔料。
  7. 有機顔料を含有するトナー粒子を有するトナーを製造するトナーの製造方法であって、
    前記有機顔料がキナクリドン顔料を有し、
    前記製造方法が、
    前記キナクリドン顔料、およびラジカル重合性単量体を含む重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒する工程、ならびに、
    下記式(1)で示される構造を有するパーオキシジカーボネート系化合物
    Figure 0006758860

    (式(1)中、R は、水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐または環状の置換若しくは無置換のアルキル基を示す。前記置換のアルキル基の置換基は、−OX 、−COX 、−CO−OX 、−O−CO−X 、−NX 、−NX −CO−X 、−CO−NX 、−SO 、または、−PO である。X 、X は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基を示す。)
    を含む過酸化物を添加して、前記キナクリドン顔料に前記ラジカル重合性単量体の重合体を結合して表面改質し、さらに前記ラジカル重合性単量体を重合することによってトナー粒子を得る工程、
    を有する
    ことを特徴とするトナーの製造方法。
  8. 前記過酸化物が、記式(1)で示される構造を有するパーオキシジカーボネート系化合物を含む二種以上の過酸化物である請求項に記載のトナーの製造方法。
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