しかしながら、上記特許文献1に開示された先行技術による場合、以下に説明する課題がある。すなわち、収納状態にあるカーテンエアバッグが展開する際、ピラーガーニッシュの長手方向に見て、ピラーガーニッシュを回転移動させようとするモーメントが生じる。これに対して、テザー部は、軸直交断面の長手方向がピラーガーニッシュの長手方向と直交しかつ座部と平行となる方向に設定されているので、前記モーメントに対して変形しにくい。また、テザー部が前記モーメントに対して変形しにくいと、テザー部がテザー部挿通孔の縁部でこじられてしまう。
本発明は、上記事実を考慮して、カーテンエアバッグが展開する際にテザー部がピラーガーニッシュの挿通孔の縁部でこじられるのを防止又は抑制することができるピラーガーニッシュ取付構造及びテザークリップを得ることが目的である。
請求項1に記載する本発明のピラーガーニッシュ取付構造は、ピラーガーニッシュが車両のピラーにテザークリップを用いて取り付けられたピラーガーニッシュ取付構造において、前記ピラーガーニッシュは、前記ピラーとの間に折り畳まれた状態のカーテンエアバッグが収納されるピラーガーニッシュ本体と、前記ピラーガーニッシュ本体の裏面側に設けられたテザー収納部と、を備え、前記テザー収納部は、前記ピラーガーニッシュ本体の裏面から前記ピラー側へ離間した位置に配置された底壁と、前記底壁と前記ピラーガーニッシュ本体とを繋ぐと共にピラーガーニッシュ長手方向に直交する方向に互いに対向する一対の側壁と、を有し、前記底壁には、長手方向及び前記長手方向と直交する短手方向を有してピラーガーニッシュ長手方向に長い挿通孔が貫通形成され、前記テザークリップは、互いに対向配置される前記ピラーガーニッシュ及び前記ピラーに取り付けられると共に、前記底壁に対して前記テザー収納部の外側から接触する座部と、前記座部の一面から延出されて前記挿通孔を通って前記テザー収納部内に配置された可撓性を有する帯状のテザー部と、前記テザー部の先端に接続されて組付後の状態では前記挿通孔を挿通不能に配置されたアンカー部と、前記座部の他面に接続されて前記ピラーに留め付けられる留付部と、を有し、前記テザー部は、その軸方向と直交する軸直交断面の形状が長手方向及び前記長手方向と直交する短手方向を有する形状とされると共に、前記座部に接続された立上部と、前記アンカー部に接続された先端部と、前記立上部と前記先端部とを繋ぐ中間部と、を備え、前記テザー部の前記中間部において前記立上部との繋ぎ部分を除いた部分は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向が前記挿通孔の短手方向と平行に設定されると共に、前記先端部の側がピラーガーニッシュ長手方向に沿うように延び、更に前記挿通孔の短手方向に見て前記繋ぎ部分に隣接する部分が湾曲しており、前記テザー部の前記立上部は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向が前記挿通孔の貫通方向に見て前記挿通孔の短手方向に対して傾けられ又は前記挿通孔の長手方向と平行に設定されており、さらに、前記テザー部の前記立上部は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向が前記挿通孔の長手方向に沿う方向に設定されると共に、前記ピラーガーニッシュの長手方向視で前記挿通孔の短手方向と平行な方向の一方側又は他方側へ凸状に湾曲している湾曲部を備える。
なお、請求項1に記載の「挿通孔の長手方向に沿う方向」とは、挿通孔の長手方向と平行な方向が含まれる他、挿通孔の長手方向と平行な方向に対して僅かに傾斜していて厳密に言えば挿通孔の長手方向と平行な方向とは言えないものの実質的に挿通孔の長手方向に沿う方向として把握されるような方向も含まれる。
上記構成によれば、テザー部の中間部は、先端部の側がピラーガーニッシュ長手方向に沿うように延びている。このため、限られた収納スペースの中でテザー部の長さを確保することができる。一方、カーテンエアバッグが展開してピラーガーニッシュがピラーから離反する方向に移動した場合には、ピラーガーニッシュの挿通孔をテザー部が通過し、最終的にはピラーガーニッシュの挿通孔の周囲部にテザークリップのアンカー部が係止される。
ここで、テザークリップのテザー部の中間部において立上部との繋ぎ部分を除いた部分は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向がテザー収納部の挿通孔の短手方向と平行に設定されると共に、テザー収納部の挿通孔の短手方向に見て繋ぎ部分に隣接する部分が湾曲している。このため、カーテンエアバッグの展開時にピラーガーニッシュがピラーから離反する方向に移動した場合、テザー部の中間部の湾曲部分(繋ぎ部分に隣接する部分)が容易に弾性変形する。このように、テザー部の中間部の湾曲部分が容易に弾性変形すると、テザー部はピラーガーニッシュの挿通孔の縁部からの荷重を受け流し易くなる。
また、テザークリップのテザー部の立上部は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向が挿通孔の貫通方向に見て挿通孔の短手方向に対して傾けられ又は挿通孔の長手方向と平行に設定されている。このため、カーテンエアバッグの展開時にピラーガーニッシュの長手方向に見て、ピラーガーニッシュを回転移動させようとするモーメントが生じた場合、テザー部の立上部は容易に弾性変形する。このように立上部が容易に弾性変形すると、テザー部はピラーガーニッシュの挿通孔の縁部からの荷重を受け流し易くなる。
また、このピラーガーニッシュ取付構造によれば、カーテンエアバッグの展開時にピラーガーニッシュの長手方向に見て、ピラーガーニッシュを回転移動させようとするモーメントが生じた場合、湾曲部がフレキシブルに弾性変形することでテザー部の立上部は一層容易に弾性変形する。そして、テザー部は、立上部が一層容易に弾性変形することで、ピラーガーニッシュの挿通孔の縁部からの荷重を一層容易に受け流すことができる。
請求項2に記載する本発明のピラーガーニッシュ取付構造は、請求項1記載の構成において、前記テザー部の前記立上部は、前記ピラーガーニッシュの長手方向視で波状に湾曲して複数の前記湾曲部を備える。
上記構成によれば、テザー部の立上部は、ピラーガーニッシュの長手方向に見て一層フレキシブルに弾性変形可能となると共にピラーガーニッシュの長手方向に直交する方向でかつ座部の側方側から見てフレキシブルに弾性変形可能となる。したがって、カーテンエアバッグの展開時には、テザー部の立上部がより一層フレキシブルに弾性変形するので、テザー部は、ピラーガーニッシュの挿通孔の縁部からの荷重をより一層容易に受け流すことができる。
請求項3に記載する本発明のテザークリップは、ピラーガーニッシュを車両のピラーに取り付けるためのテザークリップであって、座部と、前記座部の一面に接続され、互いに対向配置されると共に前記ピラーガーニッシュに係合される一対の係合保持部と、前記座部の前記一面において前記一対の係合保持部間に立上部が接続された可撓性を有するテザー部と、前記テザー部の先端に接続されたアンカー部と、前記座部の他面に接続され、前記ピラーに留め付けられる留付部と、を有し、前記テザー部は、その軸方向と直交する軸直交断面の形状が長手方向及び前記長手方向と直交する短手方向を有する形状とされると共に、前記立上部と、前記アンカー部に接続された先端部と、前記立上部と前記先端部とを繋ぐ中間部と、を備え、前記テザー部の前記中間部において前記立上部との繋ぎ部分を除いた部分は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向が前記座部の前記一面に対向する方向から見て前記一対の係合保持部を結ぶ中心線に対して直交する方向に設定され、前記先端部の側が前記一対の係合保持部の対向方向と平行な方向に沿うように延び、更に前記一対の係合保持部の対向方向と直交する方向でかつ前記座部の側方側から見て前記繋ぎ部分に隣接する部分が湾曲しており、前記テザー部の前記立上部は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向が前記座部の前記一面に対向する方向から見て前記一対の係合保持部を結ぶ中心線に対して傾けられ又は平行に設定されており、さらに、前記テザー部の前記立上部は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向が前記一対の係合保持部を結ぶ中心線に沿う方向に設定されると共に、前記一対の係合保持部の対向方向に見て、前記座部と前記中間部とを繋ぐ方向と直交する方向の一方側又は他方側へ凸状に湾曲している湾曲部を備える。
なお、請求項3に記載の「一対の係合保持部を結ぶ中心線」とは、座部の前記一面に対向する方向から見て、一対の係合保持部において互いに対向する方向とは直交する方向の中央部同士を結ぶ中心線をいう。
また、請求項3に記載の「一対の係合保持部を結ぶ中心線に沿う方向」とは、一対の係合保持部を結ぶ中心線と平行な方向が含まれる他、一対の係合保持部を結ぶ中心線と平行な方向に対して僅かに傾斜していて厳密に言えば一対の係合保持部を結ぶ中心線と平行な方向とは言えないものの実質的に一対の係合保持部を結ぶ中心線に沿う方向として把握されるような方向も含まれる。
上記構成によれば、テザークリップの一対の係合保持部がピラーガーニッシュの長手方向に並ぶように配置されかつ当該一対の係合保持部がピラーガーニッシュの挿通孔の周囲部と係合されると共に、テザークリップの留付部がピラーに留め付けられれば、以下に説明する作用及び効果が得られる。
まず、テザー部の中間部は、先端部の側が一対の係合保持部の対向方向と平行な方向に沿うように延びているので、ピラーガーニッシュの内側の限られた収納スペースの中でテザー部の長さを確保することができる。また、ピラーガーニッシュの挿通孔の周囲部がテザークリップの係合保持部から離脱してピラーガーニッシュがピラーから離反する方向に移動した場合には、ピラーガーニッシュの挿通孔をテザー部が通過し、ピラーガーニッシュの挿通孔の周囲部にアンカー部が至る。
ここで、テザー部の中間部において立上部との繋ぎ部分を除いた部分は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向が座部の一面に対向する方向から見て一対の係合保持部を結ぶ中心線に対して直交する方向に設定されると共に、一対の係合保持部の対向方向と直交する方向でかつ座部の側方側から見て繋ぎ部分に隣接する部分が湾曲している。このため、ピラーとピラーガーニッシュとの間に折り畳まれた状態のカーテンエアバッグが収納されている場合であってそのカーテンエアバッグが展開してピラーガーニッシュがピラーから離反する方向に移動した場合には、テザー部の中間部の湾曲部分(繋ぎ部分に隣接する部分)が容易に弾性変形する。このように、テザー部の中間部の湾曲部分が容易に弾性変形すると、テザー部はピラーガーニッシュの挿通孔の縁部からの荷重を受け流し易くなる。
また、テザー部の立上部は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向が座部の一面に対向する方向から見て一対の係合保持部を結ぶ中心線に対して傾けられ又は平行に設定されると共に、テザークリップの座部の一面に接続されている。このため、ピラーとピラーガーニッシュとの間に折り畳まれた状態のカーテンエアバッグが収納されている場合であって、そのカーテンエアバッグが展開して、ピラーガーニッシュの長手方向に見て、ピラーガーニッシュを回転移動させようとするモーメントが生じた場合には、テザー部の立上部は容易に弾性変形する。このように立上部が容易に弾性変形すると、テザー部はピラーガーニッシュの挿通孔の縁部からの荷重を受け流し易くなる。
また、このテザークリップによれば、一対の係合保持部がピラーガーニッシュの長手方向に並ぶように配置されかつ当該一対の係合保持部がピラーガーニッシュの挿通孔の周囲部と係合されると共に留付部がピラーに留め付けられ、更にピラーとピラーガーニッシュとの間に折り畳まれた状態のカーテンエアバッグが収納されている場合、以下に説明する作用及び効果が得られる。すなわち、カーテンエアバッグが展開して、ピラーガーニッシュの長手方向に見て、ピラーガーニッシュを回転移動させようとするモーメントが生じた場合には、湾曲部がフレキシブルに弾性変形することでテザー部の立上部は一層容易に弾性変形する。したがって、テザー部は、立上部が一層容易に弾性変形することで、ピラーガーニッシュの挿通孔の縁部からの荷重を一層容易に受け流すことができる。
請求項4に記載する本発明のテザークリップは、請求項3記載の構成において、前記テザー部の前記立上部は、前記一対の係合保持部の対向方向に見て波状に湾曲して複数の前記湾曲部を備える。
上記構成によれば、テザー部の立上部は、一対の係合保持部の対向方向に見て一層フレキシブルに弾性変形可能となると共に、一対の係合保持部の対向方向に直交する方向でかつ座部の側方側から見てフレキシブルに弾性変形可能となる。そして、一対の係合保持部がピラーガーニッシュの長手方向に並ぶように配置されかつ当該一対の係合保持部がピラーガーニッシュの挿通孔の周囲部と係合されると共に留付部がピラーに留め付けられ、更にピラーとピラーガーニッシュとの間に折り畳まれた状態のカーテンエアバッグが収納されている場合、以下に説明する作用及び効果が得られる。すなわち、カーテンエアバッグの展開時にテザー部がピラーガーニッシュの挿通孔を通過する場合、テザー部の立上部がより一層フレキシブルに弾性変形するので、テザー部は、ピラーガーニッシュの挿通孔の縁部からの荷重をより一層容易に受け流すことができる。
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のピラーガーニッシュ取付構造によれば、カーテンエアバッグが展開する際にテザー部がピラーガーニッシュにおけるテザー収納部の挿通孔の縁部でこじられるのを防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
また、請求項1に記載のピラーガーニッシュ取付構造によれば、カーテンエアバッグが展開する際にピラーガーニッシュを回転移動させようとするモーメントに対して、テザー収納部の挿通孔の長手方向視でテザー部の立上部の湾曲部がフレキシブルに弾性変形することで、テザー部のこじれを一層効果的に防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
請求項2に記載のピラーガーニッシュ取付構造によれば、カーテンエアバッグが展開する際にテザー収納部の挿通孔の長手方向視及び短手方向視でテザー部の立上部が複数の湾曲部によってフレキシブルに弾性変形することで、テザー部のこじれをより一層効果的に防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
請求項3及び請求項4に記載のテザークリップによれば、一対の係合保持部がピラーガーニッシュの長手方向に並ぶように配置されかつ当該一対の係合保持部がピラーガーニッシュの挿通孔の周囲部と係合されると共に留付部がピラーに留め付けられ、更にピラーとピラーガーニッシュとの間に折り畳まれた状態のカーテンエアバッグが収納されている場合には、以下の効果を得ることができる。
すなわち、請求項3に記載のテザークリップによれば、カーテンエアバッグが展開する際にテザー部がピラーガーニッシュの挿通孔の縁部でこじられるのを防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
また、請求項3に記載のテザークリップによれば、カーテンエアバッグが展開する際にピラーガーニッシュを回転移動させようとするモーメントに対してピラーガーニッシュの長手方向視でテザー部の立上部の湾曲部がフレキシブルに弾性変形することで、テザー部のこじれを一層効果的に防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
請求項4に記載のテザークリップによれば、カーテンエアバッグが展開する際に、ピラーガーニッシュの長手方向視で、及びピラーガーニッシュの長手方向に直交する方向でかつ座部の側方側から見て、テザー部の立上部が複数の湾曲部によってフレキシブルに弾性変形することで、テザー部のこじれをより一層効果的に防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係るテザークリップ及びピラーガーニッシュ取付構造について図1〜図7を用いて説明する。なお、第1の実施形態は、本発明の実施形態ではなく参考例である。また、図1〜図7において適宜示される矢印Xは車両前下方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。また、図7において示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示している。
まず、テザークリップの構成について説明する。図3に示されるように、テザークリップ10は、一例としてフロントピラーガーニッシュ50(以下、単に「ピラーガーニッシュ50」という。)を車両のフロントピラー60(以下、単に「ピラー60」という。)のピラーインナパネル62に取り付けるための部材である。
図1に示されるように、テザークリップ10は、全体としては軸状の単一の樹脂部材として構成されている。テザークリップ10の軸方向の中間部には、略矩形平板状の座部12が形成されている。座部12の一面としての第一面12Aには、一対の係合保持部40及びテザー部20が接続され、座部12の他面としての第二面12Bには留付部14が接続されている。
留付部14は、ピラーインナパネル62(図3参照)に留め付けられる部位とされる。この留付部14は、座部12の第二面12Bの中心部から立設された脚14Aと、脚14Aに一体形成された一対の係止爪14Bと、座部12の第二面12Bの中心部から離れた部位から立設されたぐらつき抑制弾性片14Dと、を備えている。なお、図1では、図中手前側の係止爪14Bのみが図示されているが、図中奥側においても図中手前側の係止爪14Bの対向位置に同様の係止爪が形成されている。一対の係止爪14Bは、略U字状(図1のテザークリップ10の姿勢では略逆U字状)のスリットで脚14Aから切り離されて座部12から離れた側(図1では図中下側)が基部とされる。この一対の係止爪14Bは、互いに接近する方向及び離間する方向に弾性変形可能とされ、外面側の先端部寄りに凹部14X(図5参照)が形成されている。一対の係止爪14Bの先端部には、互いに離間する方向に延出された爪操作部14Cが設けられている。また、ぐらつき抑制弾性片14Dは、一対の係止爪14Bが互いに対向する方向に見て、係止爪14Bの左右両側に形成されている。
一方、図3に示されるように、一対の係合保持部40は、互いに対向配置され、座部12の第一面12Aに一体に形成されている。図1に示されるように、一対の係合保持部40は、座部12の第一面12Aから立ち上がって形成されており、立ち上り方向の中間部が膨出部44とされている。膨出部44は、一対の係合保持部40の対向方向と直交する方向でかつ座部12の第一面12Aに平行な方向にV字状に張り出す一対のV字状部44Aを備えている。一対の係合保持部40は、それぞれ一対のV字状部44Aが互いに接近する方向へ押圧されると、当該押圧方向へ圧縮されて弾性変形するようになっている。
図1及び図2に示されるように、座部12の第一面12Aにおいて一対の係合保持部40間には、テザー部20の立上部22が接続されている。テザー部20は、帯状とされて座部12の第一面12Aから延出されており、可撓性を有している。テザー部20は、全体として見ると略J字状に湾曲した形状とされ、全体として見た場合の長手方向L(以下、「テザー長手方向L」と略す。)がピラーガーニッシュ50(図7参照)の長手方向に沿うように配置される。このテザー部20の長さは、後述するカーテンエアバッグ70(図5参照)の展開時に図6に示されるピラーガーニッシュ50をピラーインナパネル62から離間させる距離に応じて設定されている。
図1及び図2に示されるように、テザー部20は、座部12の第一面12Aから立ち上がる立上部22と、アンカー部30に接続された先端部26と、立上部22と先端部26とを繋ぐ中間部24と、を備えている。図4には、図3の4−4線に沿って切断した状態の拡大断面図が示され、図5には、図3の5−5線に沿って切断した状態の断面図が示されている。図4及び図5に示されるように、テザー部20は、その軸方向と直交する軸直交断面の形状が長手方向及び前記長手方向と直交する短手方向を有する形状(本実施形態では長方形状(実質的に長方形として把握される形状))とされている。
図1に示されるテザー部20の中間部24において立上部22との繋ぎ部分24Aを除いた部分は、図5に示されるように、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向24Y(長辺24Lの延在方向)が座部12の第一面12Aに対向する方向から見て図1に示される一対の係合保持部40を結ぶ中心線CLに対して直交する方向に設定されている。なお、一対の係合保持部40を結ぶ中心線CLとは、座部12の第一面12Aに対向する方向から見て、一対の係合保持部40において互いに対向する方向とは直交する方向の中央部同士を結ぶ中心線を指している。テザー部20の中間部24は、先端部26の側が一対の係合保持部40の対向方向と平行な方向に沿うように延びている。さらに、テザー部20の中間部24において、繋ぎ部分24Aに隣接する部分は、一対の係合保持部40の対向方向と直交する方向でかつ座部12の側方側から見て湾曲した湾曲部分24Rとされている。また、図1及び図2に示されるように、テザー部20において、中間部24における先端部26の側には、一対の案内板28が張り出している。
図4に示されるように、テザー部20の立上部22は、テザー部20の根本部分を含む部位とされる。テザー部20の立上部22は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向22Y(長辺22Lの延在方向)は、座部12の第一面12Aに対向する方向から見て一対の係合保持部40を結ぶ中心線CLに対して傾けられている。そして、図1及び図2に示されるテザー部20の中間部24において、立上部22との繋ぎ部分24Aは捩じられている。また、一対の係合保持部40の対向方向に見て、図5に示されるように、テザー部20の立上部22は、若干湾曲している。
図1及び図2に示されるように、テザー部20の先端には、アンカー部30が一体に形成されて接続されている。アンカー部30は、テザー長手方向Lと直交しかつ座部12と平行な方向に延びるアンカー本体32と、アンカー本体32からテザー部20の先端部26の厚み方向の両側の空間に延びる一対のアンカー弾性片34と、を有する。アンカー弾性片34と案内板28とは、互いに離れて対向配置されている。
次に、図3に示されるテザークリップ10を用いてピラーガーニッシュ50が車両のピラー60に取り付けられたピラーガーニッシュ取付構造及びその周辺構造について説明する。
ピラー60は、車体側部に形成されたドア開口部の車両前後方向の前縁部において略車両上下方向に沿って立設された金属製の車体骨格部材である。ピラー60は、その内板を構成するピラーインナパネル62を備えると共に、外板を構成するピラーアウタパネル(図示省略)を含んで構成され、略車両上下方向に沿って延在する閉断面部(図示省略)を備えている。ピラーインナパネル62には、クリップ取付孔62Xが貫通形成されている。
ピラー60におけるピラーインナパネル62の車両幅方向内側には、樹脂製のピラーガーニッシュ50が内張りされている。図7に示されるピラーガーニッシュ50は、平断面形状が略C字状に形成されたピラーガーニッシュ本体52(以下、単に「ガーニッシュ本体52」と略す。)を備えている。ガーニッシュ本体52の下端部には、組付状態で車両下方側へ延出する差込み部58が一体に形成されている。この差込み部58は、インストルメントパネル(図示省略)の車両幅方向外側の端部に差し込まれるようになっている。また、ガーニッシュ本体52の長手方向の中間部の裏面には、座部56が一体に形成されており、この座部56は、クリップ72を介してピラーインナパネル62(図5参照)に留め付けられている。
さらに、ガーニッシュ本体52の上端部の裏面には、中空のテザー収納部54が一体に形成されている。図5に示されるように、テザー収納部54は、ガーニッシュ本体52の裏面からピラーインナパネル62側へ離間した位置に配置された底壁54Aと、底壁54Aとガーニッシュ本体52の裏面とを繋ぐ一対の側壁54B(図7参照)及び閉塞壁54C(図3参照)と、を備えている。底壁54Aは、ガーニッシュ本体52の裏面に対して略平行に配置されている。一対の側壁54Bは、ピラーガーニッシュ長手方向に直交する方向(図5では左右方向)に互いに対向すると共に底壁54Aによって車両幅方向外側の端部同士が繋がれている。また、図3に示される閉塞壁54Cは、一対の側壁54Bの車両前下方側(矢印X参照)の端部同士を繋いでいる。テザー収納部54の車両後上方側(図3では右側)は開口部54Dとされている。さらに、底壁54Aには、組付用の挿通孔54Xが貫通形成されている。挿通孔54Xは、長手方向及び前記長手方向と直交する短手方向を有してピラーガーニッシュ長手方向に長い形状(本実施形態では長方形状(実質的に長方形として把握される形状))に形成されている。
テザー収納部54の挿通孔54Xには、ピラーガーニッシュ50とピラー60のピラーインナパネル62とを連結するテザークリップ10が取り付けられている。図5に示されるように、テザークリップ10の留付部14は、ピラーインナパネル62のクリップ取付孔62Xに挿入されている。クリップ取付孔62Xは、脚14Aが挿通可能で一対の係止爪14Bが干渉する内径に設定されている。そして、留付部14をクリップ取付孔62Xに挿入すると、一対の係止爪14Bが互いに接近する方向へ弾性変形してクリップ取付孔62Xを通り抜け、弾性復帰した係止爪14Bの凹部14Xがクリップ取付孔62Xの縁部に係止されるようになっている。また、テザークリップ10のぐらつき抑制弾性片14Dは、折り曲げられるように弾性変形されて(図示省略)、ピラーインナパネル62の車室側の面に押し当てられる。
一方、テザークリップ10において、図1に示される一対の係合保持部40にそれぞれ設けられる一対のV字状部44Aの頂部間の距離は、ピラーガーニッシュ50(図5参照)の図4に示される挿通孔54Xの短手方向54Zの長さ(短辺54M)よりも長く設定されている。また、図1に示される各係合保持部40における一対のV字状部44Aが互いに接近する方向に弾性変形することにより、一対のV字状部44Aの頂部間の距離がピラーガーニッシュ50(図5参照)の図4に示される挿通孔54Xの短手方向54Zの長さ(短辺54M)以下になる。そして、図3に示されるテザークリップ10の一対の係合保持部40をピラーガーニッシュ50のテザー収納部54の挿通孔54Xに押し込んで挿通させると、挿通孔54Xの縁部に係合保持部40の根本部42が位置すると共に、係合保持部40がピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの周囲部に係合されるようになっている。
以上により、テザークリップ10は、互いに対向配置されるピラーガーニッシュ50及びピラーインナパネル62に取り付けられている。なお、テザークリップ10の一対の係合保持部40は、テザークリップ10がピラーガーニッシュ50に取り付けられた状態ではピラーガーニッシュ50の長手方向に並ぶように対向配置されている。ピラーガーニッシュ50の長手方向については図7の矢印50Lを参照されたい。
図3に示されるテザークリップ10の座部12は、テザー収納部54の底壁54Aに対してテザー収納部54の外側から接触している。また、テザークリップ10のテザー部20は、テザー収納部54の挿通孔54Xを通ってテザー収納部54内に配置されている。但し、本実施形態では、テザー部20の中間部24の先端側及び先端部26は、アンカー部30と共に開口部54Dからテザー収納部54の外側に出ている。
また、アンカー部30において、図1に示されるアンカー本体32の延在方向の長さは、ピラーガーニッシュ50(図5参照)の図4に示される挿通孔54Xの短手方向54Zの長さ(短辺54M)よりも長く設定されている。このため、図3に示されるテザークリップ10がピラーガーニッシュ50に取り付けられた状態からピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの周囲部がテザークリップ10の係合保持部40から離脱してピラーガーニッシュ50がピラーインナパネル62から離反する方向に移動した場合(図6参照)にアンカー部30はピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの周囲部に係止されるようになっている。すなわち、アンカー部30は、ピラーガーニッシュ50の外れ防止用とされ、組付後の状態ではテザー収納部54の挿通孔54Xを挿通不能に配置されている。
テザー部20の中間部24において立上部22との繋ぎ部分24Aを除いた部分は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向24Y(図5参照)が図4に示されるテザー収納部54の挿通孔54Xの短手方向54Z(短辺54Mの延在方向)と平行に設定されている。また、図3に示されるように、テザー部20の中間部24は、先端部26の側がピラーガーニッシュ長手方向に沿うように延びている。また、テザー部20の中間部24において繋ぎ部分24Aに隣接する部分は、テザー収納部54の挿通孔54Xの短手方向54Z(図4参照)に見て、湾曲した湾曲部分24Rとされている。
また、テザー部20の立上部22は、図4に示されるように、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向22Yが挿通孔54Xの貫通方向に見てテザー収納部54の挿通孔54Xの短手方向54Zに対して角度Aだけ傾けられている。角度Aは、45°<A<90°に設定されるのが望ましく、本実施形態ではそのように設定されている。
図7に示されるように、ガーニッシュ本体52は、その車両前後方向の前部52Aが車両前後方向の中間部52Bに対して車両幅方向外側へ向けて延出されている。図5に示されるガーニッシュ本体52の前部52Aとピラーインナパネル62との間に形成された前側スペースS1には、図示しないワイヤハーネス等の配策物が配策されている。また、ピラーガーニッシュ本体52は、その車両前後方向の後部52Cが車両前後方向の中間部52Bに対して車両幅方向外側へ延出されている。ガーニッシュ本体52の後部52Cとピラーインナパネル62との間に形成された後側スペースS2には、折り畳まれた状態のカーテンエアバッグ70が収納されている。カーテンエアバッグ70の展開方向は車両後下方側かつ車室内側へ向けた方向である。
次に、テザークリップ10を用いてピラーガーニッシュ50をピラー60に取り付ける手順について概説する。
まず、図6に示されるテザー収納部54の底壁54Aに形成された挿通孔54Xにテザークリップ10のアンカー部30が挿入され、そのアンカー部30を軸周りに90度回転させた後、テザー部20及び係合保持部40が挿通孔54Xに挿入される。そして、図3に示される係合保持部40が挿通孔54Xの周囲部に係合される。その後、テザークリップ10の留付部14がピラーインナパネル62のクリップ取付孔62Xに留め付けられることで、ピラーガーニッシュ50がピラー60に取り付けられる。
なお、図7に示されるガーニッシュ本体52の中間部は、別のクリップ72でピラーインナパネル62(図5参照)に留め付けられる。また、ガーニッシュ本体52の下端部は、差込み部58がインストルメントパネル(図示省略)の車両幅方向外側の端部に形成された差込み孔に差し込まれる。
(作用・効果)
次に、図3に示されるテザークリップ10を用いてピラーガーニッシュ50が車両のピラー60に取り付けられた場合の作用及び効果について説明する。
まず、テザー部20の中間部24は、先端部26の側がピラーガーニッシュ長手方向に沿うように延びている。このため、ピラーガーニッシュ50における限られた収納スペースの中で、テザー部20の長さを確保することができる。
一方、側面衝突時又はロールオーバー時に図5に示されるカーテンエアバッグ70が展開されると、カーテンエアバッグ70の展開圧によってピラーガーニッシュ50がピラー60から離反する方向に移動しようとする。そして、図6に示されるように、ピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの周囲部がテザークリップ10の係合保持部40から離脱してピラーガーニッシュ50がピラー60から離反する方向に移動すると、ピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xをテザー部20が通過し、最終的にはピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの周囲部にアンカー部30が係止される(図示省略)。
ここで、図1に示されるテザー部20の中間部24において立上部22との繋ぎ部分24Aを除いた部分は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向24Y(図5参照)が、図4に示されるテザー収納部54の挿通孔54Xの短手方向54Zと平行に設定されている。また、図3に示されるように、テザー部20の中間部24は、テザー収納部54の挿通孔54Xの短手方向54Z(図4参照)に見て繋ぎ部分24Aに隣接する部分が湾曲している。このため、側面衝突時又はロールオーバー時に図5に示されるカーテンエアバッグ70が展開されてカーテンエアバッグ70の展開圧によってピラーガーニッシュ50がピラー60から離反する方向に移動した場合、図3に示されるテザー部20の中間部24の湾曲部分24Rが容易に弾性変形する。このように、テザー部20の中間部24の湾曲部分24Rが容易に弾性変形すると、テザー部20はピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの縁部からの荷重を受け流し易くなる。
また、テザー部20の立上部22は、図4に示されるように、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向22Yが、テザー収納部54の挿通孔54Xの貫通方向に見て挿通孔54Xの短手方向54Zに対して傾けられている。このため、カーテンエアバッグ70(図5参照)の展開時に図5に示されるピラーガーニッシュ50の長手方向に見て、ピラーガーニッシュ50を回転移動させようとするモーメントMが生じた場合、テザー部20の立上部22は容易に弾性変形する。このように立上部22が容易に弾性変形すると、テザー部20はピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの縁部からの荷重を受け流し易くなる。
ここで、図14及び図15に示される対比構造と対比しながら補足説明する。
図14には、対比構造に係るテザークリップ100をピラーガーニッシュ50に組み付けた状態が、ピラーガーニッシュ50の長手方向に沿って切断した状態の断面図で示されている。図15(A)は図14の15A−15Aに沿って切断した状態を示す断面図であり、図15(B)はカーテンエアバッグの展開時にピラーガーニッシュ50を回転移動させようとするモーメントMが生じた状態を図15(A)と同じ切断面で示す断面図である。対比構造に係るテザークリップ100のテザー部102は、全長に亘って、その軸方向と直交する軸直交断面(図示省略)の長手方向がテザー収納部54の挿通孔54Xの短手方向(図15の左右方向)に設定されている。
このような対比構造に係るテザークリップ100を用いた構成では、図15(B)に示されるように、ピラーガーニッシュ50の長手方向に見て、ピラーガーニッシュ50を回転移動させようとするモーメントMが生じた場合、テザー部102の立上部104がモーメントMに対して変形しにくい。そして、テザー部102がモーメントMに対して変形しにくいと、テザー部102がピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの縁部でこじられてしまう。これに対して、本実施形態では、上記構成によって、図5に示されるように、ピラーガーニッシュ50の長手方向に見て、ピラーガーニッシュ50を回転移動させようとするモーメントMが生じた場合、テザー部20の立上部22が容易に弾性変形するので、ピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの縁部からの荷重を容易に受け流すことができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、カーテンエアバッグ70が展開する際にテザー部20がテザー収納部54の挿通孔54Xの縁部でこじられるのを防止又は抑制することができる。その結果、カーテンエアバッグ70が展開する際には、ピラーガーニッシュ50の展開抵抗を低減することができると共に、テザー部20の中間部24への負荷を低減することができる。また、本実施形態の構成では、テザー部20の中間部24への負荷を低減できるので、極低温状況下においてテザー部20の破断を防止するのに寄与することができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係るテザークリップ及びピラーガーニッシュ取付構造について、図8〜図12を用いて説明する。なお、第2の実施形態は本発明の実施形態である。図8〜図12に示されるように、本実施形態の構成は、図1〜図6に示されるテザー部20に代えて、図8〜図12に示されるテザー部82を備える点で、第1の実施形態の構成とは異なる。他の構成は、第1の実施形態と実質的に同様の構成となっている。また、図8及び図9(A)に示されるテザー部82においては、立上部84、及び立上部84と先端部26とを繋ぐ中間部86のうちの立上部84との繋ぎ部分86Aが、第1の実施形態の構成と異なるが、他の構成は第1の実施形態のテザー部20(図1等参照)と同様とされている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。なお、テザークリップ80の材質は一例として第1の実施形態におけるテザークリップ10(図1等参照)と同様とされる。
図8に示されるように、テザー部82の立上部84は、座部12の第一面12Aにおいて一対の係合保持部40間に接続され、テザー部82の根本部分を含む部位とされる。図10には、図8の10L−10L線に沿って切断した状態の拡大断面図が示されている。この図に示されるように、テザー部82の立上部84において、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向84Y(長辺84Lの延在方向)は、座部12の第一面12Aに対向する方向から見て一対の係合保持部40を結ぶ中心線CLに対して平行に設定されると共に、挿通孔54Xの貫通方向に見てテザー収納部54の挿通孔54Xの長手方向54Y(長辺54Lの延在方向)と平行に設定されている。すなわち、図10に示される立上部84の軸直交断面の長手方向84Yは、一対の係合保持部40を結ぶ中心線CLに沿う方向に設定されると共に、挿通孔54Xの長手方向54Yに沿う方向に設定されている。
また、図8に示されるテザー部82の立上部84は、一対の係合保持部40の対向方向に見て、言い換えれば、図9(A)に示されるピラーガーニッシュ50の長手方向視で、波状に湾曲しており、複数の湾曲部84Rを備えている。また、それぞれの湾曲部84Rは、一対の係合保持部40(図8参照)の対向方向に見て、座部12と中間部86とを繋ぐ方向と直交する方向の一方側又は他方側へ凸状に湾曲している。すなわち、それぞれの湾曲部84Rは、ピラーガーニッシュ50の長手方向視で、挿通孔54Xの短手方向54Z(図10参照)と平行な方向の一方側又は他方側へ凸状に湾曲している。
一方、図8に示されるテザー部82の中間部86において立上部84との繋ぎ部分86Aは、その軸方向と直交する軸直交断面のうち図8の9B−9B線に沿って切断した断面が図9(B)に示される断面形状とされている。なお、図9(B)において矢印9BYは、図8において9B−9B線(右肩上がりに傾斜する切断線)で示される方向に対応する方向を示す。図8等に示される繋ぎ部分86Aは、テザー部82の立上部84からほぼ同様の断面形状が捩じられるように設けられたものではなく、軸直交断面の形状そのものがテザー部82の立上部84の軸直交断面の形状と比べ、第1の実施形態の繋ぎ部分24A(図1参照)の構成よりも大きく変えられている。
(作用・効果)
次に、図8等に示されるテザークリップ80を用いてピラーガーニッシュ50が車両のピラー60に取り付けられた場合の作用及び効果について説明する。
本実施形態では、前述したように、テザー部82の立上部84においては、図10に示されるように、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向84Yは、テザー収納部54の挿通孔54Xの貫通方向に見て挿通孔54Xの長手方向54Yと平行に設定されている。このため、図9(A)に示されるカーテンエアバッグ70の展開時にピラーガーニッシュ50の長手方向に見て、ピラーガーニッシュ50を回転移動させようとするモーメントMが生じた場合、テザー部82の立上部84は、容易に弾性変形する。
また、本実施形態では、図9(A)等に示されるテザー部82の立上部84は、ピラーガーニッシュ50の長手方向視で、挿通孔54Xの短手方向54Z(図10参照)と平行な方向の一方側又は他方側へ凸状に湾曲している湾曲部84Rを備えている。したがって、カーテンエアバッグ70の展開時にピラーガーニッシュ50の長手方向に見て、ピラーガーニッシュ50を回転移動させようとするモーメントMが生じた場合、湾曲部84Rがフレキシブルに弾性変形することでテザー部82の立上部84は一層容易に弾性変形する。また、テザークリップ80の座部12とテザー部82の中間部86とを繋ぐ方向(図9(A)では図中上下方向)にテザー部82の立上部84の湾曲部84Rを伸ばすこともできる。
さらに、本実施形態では、テザー部82の立上部84は、ピラーガーニッシュ50の長手方向視で、波状に湾曲して湾曲部84Rが複数形成されている。このため、テザー部82の立上部84は、図9(A)に示される方向視であるピラーガーニッシュ50の長手方向に見て一層フレキシブルに弾性変形可能となると共に図8に示される方向視であるピラーガーニッシュ50の長手方向に直交する方向でかつ座部12の側方側から見てフレキシブルに弾性変形可能となる。
ここで、図11及び図12を参照しながら補足説明する。図11(A)は、テザークリップ80を図8と同じ方向から見て、かつ座部12よりも図8において上側の部分については外観視における外形線を図示し、図8において座部12及びそれよりも下側の部分については図8と同様の切断面(切断端面)を、ハッチングを省略して示す説明図である。また、図11(B)は図11(A)のテザー部82の立上部84及びその隣接部を図11(A)の一点鎖線X2に沿って切断した状態を図9(A)と同じ方向から見た状態でハッチングを省略して示す断面図である。さらに、図12は、カーテンエアバッグ70(図9(A)参照)の展開時に図11(A)のテザークリップ80のテザー部82が弾性変形した最終状態を縮小して示す説明図である。
また、図11において、一点鎖線X1は、ピラーインナパネル62(図9(A)参照)への取付中心を通る直線であり、一点鎖線X2は、座部12に垂直な直線であってテザー部82の立上部84のうち図11(A)の図中で座部12から直立した部分に対応する領域の中央を貫通する直線である。また、図11(B)に示される実線の直線A1〜A9は、図11(B)において立上部84の中心線X2を通ると共に立上部84の表面を通る接線を示している。また、図11(A)に示される実線の直線A1〜A9は、図11(B)に示される実線の直線A1〜A9に対応する直線であり、二点鎖線の直線A1〜A9は、カーテンエアバッグ70(図9参照)が展開してテザー部82が変位した途中の段階で実線の直線A1〜A9に対応する部位がそれぞれどのように変位したかを示している。さらに、図11(A)において二点鎖線で示されるテザークリップ80は、カーテンエアバッグ70(図9(A)参照)の展開時にテザークリップ80が弾性変形している途中の状態を示している。
図9(A)に示されるカーテンエアバッグ70が展開した場合、図11(A)に示されるように、立上部84は、図中右側の部位が図中上方側に延びるように変形すると共に図中左側の部位の上部(直線A1〜A3参照)が図中下方側に縮むように変形する。このため、中間部86の湾曲部分24Rでの応力集中が抑えられる。また、テザー部82の立上部84が波状に湾曲しているので、図12に示されるように、変形後のテザー部82の図中の上下方向の長さも確保し易い。
以上説明したように、第2の実施形態では、図9(A)に示されるカーテンエアバッグ70の展開時に、テザー部82の立上部84が一層容易に弾性変形することで、テザー部82は、ピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの縁部からの荷重をより一層容易に受け流すことができる。よって、カーテンエアバッグ70が展開する際にテザー部20がピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの縁部でこじられるのを防止又は抑制することができる。その結果、ピラーガーニッシュ50の展開抵抗を一層低減することができる。
[第2の実施形態の変形例]
次に、第2の実施形態の変形例について、図13を参照しながら、図8〜図10を援用して説明する。なお、第2の実施形態の変形例は本発明の実施形態である。図13は、第2の実施形態の変形例をピラーガーニッシュ長手方向から見た状態で示す断面図であり、テザークリップ90のテザー部92がピラーガーニッシュ50のテザー収納部54の挿通孔54Xを通過している状態を示す。この図に示されるように、第2の実施形態の変形例は、図9等に示されるテザー部82の立上部84に代えて、図13に示されるテザー部92の立上部94を備える点で、第2の実施形態の構成とは異なる。他の構成は、第2の実施形態と実質的に同様の構成となっている。よって、第2の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
図13に示されるように、第2の実施形態の変形例では、テザークリップ90のテザー部92の立上部94は、その軸方向と直交する軸直交断面の長手方向(図示省略)が、第2の実施形態の図10に示されるテザー部82の立上部84の軸方向と直交する軸直交断面の長手方向84Yと同じ方向に設定されている。図13に示されるテザー部92の立上部94は、一対の係合保持部40(図8参照)の対向方向に見て、言い換えれば、ピラーガーニッシュ50の長手方向視で、湾曲している湾曲部94Rを一つ備えている。湾曲部94Rは、一対の係合保持部40(図8参照)の対向方向に見て、座部12と中間部86とを繋ぐ方向と直交する方向の一方側(図中右側)へ凸状に湾曲している。すなわち、湾曲部94Rは、ピラーガーニッシュ50の長手方向視で、挿通孔54Xの短手方向54Z(図10参照)と平行な方向の一方側(図中右側)へ凸状に湾曲している。
このような変形例によっても、カーテンエアバッグ70(図9参照)の展開時に図13に示されるピラーガーニッシュ50を回転移動させようとするモーメントMが生じた場合、湾曲部94Rがフレキシブルに弾性変形することでテザー部92の立上部94は容易に弾性変形する。そして、テザー部92は、立上部94が容易に弾性変形することで、ピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの縁部からの荷重を一層容易に受け流すことができる。したがって、カーテンエアバッグ70(図9参照)が展開する際にテザー部92がピラーガーニッシュ50の挿通孔54Xの縁部でこじられるのを防止又は抑制することができる。
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、図3等に示されるピラー60がフロントピラーとされピラーガーニッシュ50がフロントピラーガーニッシュとされているが、本発明に適用されるピラーは例えばリアピラー(クォータピラー)等のようなフロントピラー以外のピラーとされてもよく、ピラーガーニッシュはフロントピラー以外のピラー用のガーニッシュとされてもよい。
また、上記実施形態では、テザー収納部54の底壁54Aに貫通形成された挿通孔54Xの形状は、図4等に示されるように、長方形状(実質的に長方形として把握される形状)とされているが、テザー収納部の底壁に貫通形成された挿通孔の形状は、例えば、長方形の短辺を半円状にしたもの等のように、長手方向及び前記長手方向と直交する短手方向を有する他の形状とされてもよい。
また、上記実施形態では、テザー部20、82、92(図1〜図6及び図8〜図13参照)の軸方向と直交する軸直交断面の形状が長方形状(実質的に長方形として把握される形状)とされているが、テザー部の軸方向と直交する軸直交断面の形状は、例えば、長方形の短辺を半円状にしたもの等のように、長手方向及び前記長手方向と直交する短手方向を有する他の形状とされてもよい。
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。