JP6715679B2 - 紡績糸および布帛および繊維製品 - Google Patents

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本発明は、嵩高性・軽量性・通気性などの物性安定性に優れた紡績糸および布帛および繊維製品に関する。
従来、種々の紡績糸が提案されている。例えば特許文献1では、芯成分が弾性繊維もしくは弾性繊維を含むフィラメント糸であり、鞘成分が短繊維を含む芯鞘構造複合紡績糸が提案されている。また、特許文献2では、芯成分は溶解性繊維と収縮性繊維を含む混紡繊維であり、前記鞘成分は溶解性繊維と非溶解性繊維を含む混紡繊維であることを特徴とする芯鞘構造紡績糸が提案されている。
しかしながら、嵩高性・軽量性・通気性などの物性安定性の点でまだ満足とはいえなかった。
特開2015−34354号公報 特開2015−166498号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、嵩高性・軽量性・通気性などの物性安定性に優れた紡績糸および布帛および繊維製品に関する。
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、特殊な断面形状を有する合成繊維を用いることにより、嵩高性・軽量性・通気性などの物性安定性に優れた紡績糸が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「下記要件を満足する合成繊維を含むことを特徴とする紡績糸であり、紡績糸が芯鞘構造を有し、かつ前記合成繊維が芯部に配されてなる紡績糸。」が提供される。
(1)繊維軸に直交する断面形状が四角中空コアー部を有する。
(2)前記コアー部外表面からコアー部中心点に対して放射状に突出しかつ該コアー部の長さ方向に沿って延在する8枚以上のフィン部を有する。
の際、前記合成繊維がポリエステルフィラメント糸であることが好ましい。また、鞘部に、綿繊維またはレーヨン繊維が配されていることが好ましい。
本発明によれば、前記の紡績糸を用いてなる布帛が提供される。また、本発明によれば、前記の布帛を用いてなる、下着、スポーツウエア、アウトドアウエア、裏地、紳士衣服、婦人衣服の群より選ばれるいずれかの繊維製品が提供される。
本発明によれば、嵩高性・軽量性などの物性安定性に優れた紡績糸および布帛および繊維製品が得られる。
本発明で用いることのできる合成繊維の繊維軸に直交する断面の模式図である。 実施例1、比較例1で用いた編組織図である。 実施例2、比較例2で用いた編組織図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の紡績糸に含まれる合成繊維について説明する。
まず、前記合成繊維を形成するポリマーとしては特に限定されず、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどが例示されるが、なかでもポリエステルが好ましい。
ポリエステルは、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのアルキレングリコールを主たるジオール成分とするポリエステルを80重量%以上、好ましくは90重量%以上含有するポリエステルであり、該ポリエステルには、本発明の目的を損なわない範囲内で、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸成分や上記とは異なる他のグリコール成分を共重合していてもよい。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、バイオマスすなわち生物由来の物質を原材料として得られたモノマー成分を使用してなるポリエチレンテレフタレートであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。
かかるポリエステルの固有粘度(オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定)は、通常衣料用布帛素材として使用されるポリエステルと同じ範疇の0.55〜0.80の範囲のものが好ましい。また、必要に応じて適宜艶消し剤、制電剤、安定剤などの添加剤またはアルカリ減量により繊維表面に微細孔やフィブリルを形成させることのできる添加剤などを含んでもよい。
合成繊維の単繊維断面形状として図1に示されているように、繊維軸に対して直交する断面が四角中空であるコアー部と、該コアー部外表面からコアー部中心点に対して放射状に突出し且つ該コアー部の長さ方向に沿って延在する8枚以上(好ましくは8〜12枚)のフィン部とからなる形状が必要である。まず、コアー部の中空部分の形状は特開2010−275668号の図3に示されているような紡糸口金各吐出スリットを用いることにより、四角中空とすることおよび吐出ポリマー同士の高い貼り合せ性を得ることでき、安定して目的の単糸断面形状をえることができる。なお、図1はフィン部の枚数が8枚のものを例示しているが、本発明において8枚には限定されない。
コアー部中空部分の形状が丸形中空の場合、紡糸時での貼り合せ不良(貼り合わせ部を多くする必要があるため)による単糸断面変形が多発し断糸による工程通過性が著しく低下する。
フィン部については、該コアー部外表面からコアー部中心点に対して放射状に突出し且つ該コアー部の長さ方向に沿って延在する8枚以上のフィン部とからなる形状にすることでマルチフィラメント状態での単糸間の干渉による高い体積排除効果をえることができ目的の空隙形成率をえることができる。
またフィンの個数を8枚以上とすることにより繊維間摩擦係数が低下するので延伸時の毛羽や断糸の発生が少ないという効果がある。
また、合成繊維の総繊度としては20〜400dtexであることが好ましい。20dtex未満であれば嵩高性が不足し、400dtexを超える場合は風合いが硬くなり好ましくない。好ましくは20〜200dtexである。
また、合成繊維は短繊維の集合体でもよいが、フィラメント糸(長繊維)であることが好ましい、特にポリエステルフィラメント糸が好ましい。
その際、単糸数は50本以下であることが好ましい。単糸数が50本より大であればフィンを取り付けた事による体積排除効果が十分でなく、目的とする嵩高さ、軽量感を得ることが出来ない。また単糸数が10本より小となると(マルチフィラメントとしての繊度が小さくなると)繊維の曲げ剛性が高くなり布帛におけるソフト感が低下し好ましくない。好ましくは10〜50本である。
前記合成繊維の製造方法としては、特開2010−275668号の図3に模式的に示す吐出形状を有する口金を用いて公知の溶融紡糸、延伸法により行なうことができる。
本発明の紡績糸は前記のポリエステル繊維を含むものである。かかる紡績糸は前記のポリエステル繊維からなる短繊維を用いて常法により得られた紡績糸でもよいが、芯鞘構造を有し、かつ前記合成繊維が芯部に配されてなる紡績糸が好ましい。
ここで、鞘成分の短繊維は、は綿繊維(コットン)、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン、キュプラ、アセテートなどの化学繊維、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル系等の合成繊維のいずれかまたはこれらの組み合わせであってもよい。このうち好ましいのは綿繊維もしくは綿繊維と合成繊維の混紡である。綿繊維は吸水性、吸湿性も高く、肌にも良いからである。
前記のような芯鞘構造を有する紡績糸はコアスパン糸とも称され、例えば、特開2015−34354号公報の実施例1に記載の方法により製造することができる。
本発明の紡績糸は前記の構成を有するので、嵩高性や物性安定性に優れる。
次に、本発明の布帛は前記の紡績糸を含む布帛である。布帛の組織は特に限定されないが、通常の織機または編機により製編織された織物または編物であることが好ましい。もちろん、不織布や、マトリックス繊維と熱接着性繊維とからなる繊維構造体でもよい。例えば、織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。編物の種類は、丸編物(よこ編物)であってもよいしたて編物であってもよい。丸編物(よこ編物)の組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示され、たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。さらには、カットパイルおよび/またはループパイルからなる立毛部と地組織部とで構成される立毛布帛であってもよい。
かかる布帛において、前記の布帛に吸水加工を施していると、吸水性が向上し好ましい。その際、吸水加工の条件としては、PEGジアクリレートおよびその誘導体やポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体などの親水化剤を、パデング法または染色との同浴で織編物に付与した後、温度60〜150℃、時間0.2〜5分で乾燥するとよい。その際、親水化剤の付着量としては、吸水加工前の織編物重量に対して0.1〜10重量%であることが好ましい。
また、吸水加工の前および/または後の工程において、常法染色加工、アルカリ減量加工、撥水加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
かかる布帛は前記の紡績糸を用いているので、嵩高性・軽量性・通気性などの物性安定性に優れる。
次に、本発明の繊維製品は、前記の布帛を用いてなる、下着、スポーツウエア、アウトドアウエア、裏地、紳士衣服、婦人衣服の群より選ばれるいずれかの繊維製品である。
かかる繊維製品は前記の紡績糸を用いているので、嵩高性・軽量性・通気性などの物性安定性に優れる。
本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(1)目付け、厚さ、嵩高性
JIS L1018−1990により目付け(g/m)、厚さ(mm)、嵩高性(cm/g)を測定した。
(2)通気性
JIS L1096 6.27.1 A法(フラジール法)により通気性(cc/cm
・sec)を測定した。
[実施例1]
丸編28Gシングル機を使用して、糸種1として、芯鞘構造を有し、図1に示すような、繊維軸に直交する断面形状が四角中空コアー部を有し、コアー部外表面からコアー部中心点に対して放射状に突出しかつ該コアー部の長さ方向に沿って延在する8枚以上のフィン部を有するポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(長繊維)44dtex/12filを芯部に配し、鞘部は綿繊維を配してなる紡績糸(綿30番)を用いて、天竺組織にて編地を得た。次いで、綿漂白処理を行い、該編地を染色工程で親水化剤(ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体)と同浴処理を行うことにより、該編地に吸水性を付与した。評価結果を表1に示す。
得られた編地において、嵩高軽量性、通気性、吸水拡散性に優れた布帛であった。
[実施例2]
丸編28Gダブル機を使用して、糸種1として実施例1と同じ紡績糸を用いて、スムース組織にて編地を得た。次いで、綿漂白処理を行い、該編地を染色工程で親水化剤(ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体)と同浴処理を行うことにより、該編地に吸水性を付与した。
得られた編地において、嵩高軽量性、通気性、吸水拡散性に優れた布帛であった。
[比較例1]
丸編28Gシングル機を使用して、糸種1として紡績糸(綿30番)を用いて、天竺組織にて編地を得た。次いで、綿漂白処理を行い、吸水性を付与した。
得られた編地は、実施例1と比較して嵩高性・軽量性、通気性に劣るものであった。
[比較例2]
丸編28Gダブル機を使用して、糸種1として紡績糸が芯鞘構造を有し、芯部に繊維軸に直交する断面形状が通常の丸断面であるポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(長繊維)84dtex/36filに配し、鞘部に綿繊維を配してなる紡績糸(綿24番)を用いて、スムース組織にて編地を得た。次いで、綿漂白処理を行い、該編地を染色工程で親水化剤(ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体)と同浴処理を行うことにより、該編地に吸水性を付与した。
得られた編地において、風合いは硬く、嵩高性、軽量性、通気性に劣る布帛であった。
Figure 0006715679
本発明によれば、嵩高性・軽量性・通気性などの物性安定性に優れた紡績糸および布帛および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。

Claims (5)

  1. 下記要件を満足する合成繊維を含むことを特徴とする紡績糸であり、紡績糸が芯鞘構造を有し、かつ前記合成繊維が芯部に配されてなる紡績糸
    (1)繊維軸に直交する断面形状が四角中空コアー部を有する。
    (2)前記コアー部外表面からコアー部中心点に対して放射状に突出しかつ該コアー部の長さ方向に沿って延在する8枚以上のフィン部を有する。
  2. 前記合成繊維がポリエステルフィラメント糸である、請求項に記載の紡績糸。
  3. 鞘部に、ポリエステル繊維、アクリレート系繊維、綿繊維、ウール繊維またはレーヨン繊維、が配されてなる、請求項または請求項に記載の紡績糸。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の紡績糸を用いてなる布帛。
  5. 請求項に記載の布帛を用いてなる、下着、スポーツウエア、アウトドアウエア、裏地、紳士衣服、婦人衣服の群より選ばれるいずれかの繊維製品。
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