JP4567500B2 - 吸水により立体的に構造変化する布帛および繊維製品 - Google Patents

吸水により立体的に構造変化する布帛および繊維製品 Download PDF

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本発明は、吸水により布帛表面に凹凸が発現したり、厚みが増加したり、あるいは通気性が向上することにより、ベトツキ感、ムレ感、冷え感を低減することが可能な、吸水により立体的に構造変化する布帛および繊維製品に関するものである。
従来、合成繊維や天然繊維などからなる織編物を、スポーツウエアーやインナーウエアーなどの衣服として用いると、肌からの発汗によりムレやベトツキが発生するという問題があった。
このような発汗によって生じるムレやベトツキを解消する方法として、発汗時に織編物の通気性が向上することにより衣服内に滞留する水分を効果的に放出させ、一方、発汗が停止すると、織編物の通気性が低下することにより水分の過剰な放散による寒気を抑制し、常に着心地を快適に保つことができる通気性自己調節織編物が提案されている。例えば、ポリエステルとポリアミドの異質ポリマーを貼り合せたサイドバイサイド型複合繊維を用いたもの(例えば、特許文献1参照)、吸湿性ポリマーからなり加撚された合成繊維マルチフィラメント糸条を用いたもの(例えば、特許文献2参照)、アセテート繊維を用いたもの(例えば、特許文献3参照)などが知られている。また、本発明者らは、先に特願2004−003986号において、吸水自己伸張糸を用いた通気性自己調節織編物を提案した。
しかしながら、これらの通気性自己調節織編物は、吸水により通気性が向上するものの、寸法変化も起こるため、かかる織編物からなる繊維製品を着用すると、乾燥時と吸水時とでサイズが変わるという問題があった。
なお、本発明者らは、特願2005−047553号において、吸水により立体的に構造変化する多層構造体および繊維製品を提案している。
特開2003−41462号公報 特開平10−77544号公報 特開2002−180323号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、吸水により布帛表面に凹凸が発現したり、厚みが増加したり、あるいは通気性が向上することにより、ベトツキ感、ムレ感、冷え感を低減することが可能な、吸水により立体的に構造変化する布帛および繊維製品を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、吸水時に面積および/または厚みが大きくなる布帛の表面に、樹脂を部分的に付着させることにより、吸水により立体的に構造変化する所望の布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「吸水時に乾燥時よりも面積が10%以上大きくなるか、および/または厚みが20%以上大きくなる布帛aの少なくとも一面に、樹脂が、塗布部と非塗布部を有しながら付着してなることを特徴とする吸水により立体的に構造変化する布帛。」が提供される。
ただし、乾燥時とは、温度20℃、湿度65%RHの環境下に試料を24時間放置した直後の状態であり、一方吸水時とは、乾燥後の試料表面に霧吹きにより水を噴霧し、乾燥時の試料重量に対して含水率70重量%となるまで水を付与した直後の状態である。
その際、樹脂が、非塗布部が島状に散在するパターンで布帛の表面に付着していることが好ましい。また、前記の樹脂が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、およびナイロン系樹脂からなる群より選択されるいずれかの樹脂であることが好ましい。
本発明の布帛において、布帛aが、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とからなる織編物であって、乾燥時における該織編物中の吸水自己伸張糸の糸長を(A)、他方、非自己伸張糸の糸長を(B)とするとき、A/Bが0.9以下であることが好ましい。
その際、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とからなる織編物において、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、丸編組織の複合ループを形成していることが好ましい。また、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、引き揃えられて織組織の経糸および/または緯糸を構成していることが好ましい。また、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、各々織編物の構成糸条として、1本交互にまたは複数本交互に配列していることが好ましい。さらに、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、複合糸として織編物中に含まれることが好ましい。なお、吸水自己伸張糸としては、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなるポリエーテルエステル繊維であることが好ましい。一方、非自己伸張糸としては、ポリエステル繊維であることが好ましい。
本発明の布帛において、布帛aが、ポリエステル成分とポリアミド成分とがサイドバイサイド型に接合され、かつ潜在捲縮性能が発現してなる捲縮を有する複合繊維を含む織編物であってもよい。
本発明の布帛において、吸水時の通気性が乾燥時よりも10%以上大きくなることが好ましい。また、吸水時の厚みが乾燥時よりも10%以上大きくなることが好ましい。さらに、非接着部が文字または幾何学模様となっており、吸水時に文字または幾何学模様が立体的に浮かび上がることが好ましい。
また、本発明によれば、前記の布帛を用いてなる、アウター用衣料、スポーツ用衣料、インナー用衣料、靴材、おしめや介護用シーツ等の医療・衛生用品、寝装寝具、椅子やソファー等の表皮材、カーペット、カーシート地、インテリア用品からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。
本発明によれば、吸水により布帛表面に凹凸が発現したり、厚みが増加したり、あるいは通気性が向上することにより、ベトツキ感、ムレ感、冷え感を低減することが可能な、吸水により立体的に構造変化する布帛および繊維製品が得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の布帛は、吸水時に乾燥時よりも面積が10%以上大きくなるか、および/または厚みが20%以上大きくなる布帛aの少なくとも一面に、樹脂が、塗布部と非塗布部を有しながら付着してなる布帛である。
ただし、乾燥時とは、温度20℃、湿度65%RHの環境下に試料を24時間放置した直後の状態であり、一方吸水時とは、乾燥後の試料表面に霧吹きにより水を噴霧し、乾燥時の試料重量に対して含水率70重量%となるまで水を付与した直後の状態である。
前記の布帛aとしては、吸水時に乾燥時よりも面積が10%以上(好ましくは20〜40%)大きくなるか、および/または厚みが20%以上(好ましくは30〜200%)大きくなるシート状物であれば、特に限定されない。すなわち、吸水時に乾燥時よりも面積が10%以上大きくなるか、厚みが20%以上大きくなるか、少なくともどちらかの要件を満足する必要がある。特に、吸水時に乾燥時よりも面積が10%以上大きくなることが好ましい。かかる布帛aとしては、下記の吸水変化シート状物1または吸水変化シート状物2が好適である。
すなわち、吸水変化シート状物1は、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とからなる織編物であって、乾燥時における該織編物中の吸水自己伸張糸の糸長を(A)、他方、非自己伸張糸の糸長を(B)とするとき、A/Bが0.9以下(好ましくは0.9〜0.2、特に好ましくは0.8〜0.3)である織編物である。
ここで、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸は以下に定義する糸である。すなわち、枠周:1.125mの巻き返し枠を用いて荷重:0.88mN/dtex(0.1g/de)をかけて一定の速度で巻き返し、巻き数:10回のかせを作り、かせ取りした糸を温度20℃、湿度65RH%の環境下に24時間放置し、これに非弾性糸の場合は1.76mN/dtex(200mg/de)、弾性糸の場合は0.0088mN/dtex(1mg/de)の荷重をかけて測定した糸長(mm)を乾燥時の糸長とする。該糸を水温20℃の水中に5分間浸漬した後に水中より引き上げ、該糸に乾燥時と同様に非弾性糸の場合は1.76mN/dtex(200mg/de)、弾性糸の場合は0.0088mN/dtex(1mg/de)の荷重をかけて測定した糸長(mm)を湿潤時の糸長とする。なお、前記非弾性糸とは破断伸度が200%以下の糸であり、前記弾性糸とは破断伸度が200%より高い糸である。そして、下記式で求められる繊維軸方向の膨潤率が5%以上のものを吸水自己伸張糸と定義する。他方、該膨潤率が5%未満のものを非自己伸張糸と定義する。
膨潤率(%)=((湿潤時の糸長)−(乾燥時の糸長))/(乾燥時の糸長)×100
ここで、吸水自己伸張糸としては、前記の膨潤率を有するものであれば特に限定されないが、6%以上(より好ましくは8〜30%)の膨潤率を有するものであることが好ましい。
かかる吸水自己伸張糸としては、例えば、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなるポリエーテルエステル繊維や、ポリアクリル酸金属塩、ポリアクリル酸およびその共重合体、ポリメタアクリル酸およびその共重合体、ポリビニルアルコールおよびその共重合体、ポリアクリルアミドおよびその共重合体、ポリオキシエチレン系ポリマーなどを配合したポリエステル繊維、5−スルホイソフタル酸成分を共重合したポリエステル繊維などが例示される。なかでも、かかる吸水自己伸張弾性繊維として、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなるポリエーテルエステル繊維が好適に例示される。
上記ポリブチレンテレフタレートは、ブチレンテレフタレート単位を少なくとも70モル%以上含有することが好ましい。ブチレンテレフタレートの含有率は、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。酸成分は、テレフタル酸が主成分であるが、少量の他のジカルボン酸成分を共重合してもよく、またグリコール成分は、テトラメチレングリコールを主成分とするが、他のグリコール成分を共重合成分として加えてもよい。
テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、例えばナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸のような芳香族、脂肪族のジカルボン酸成分を挙げることができる。さらに、本発明の目的の達成が実質的に損なわれない範囲内で、トリメリット酸、ピロメリット酸のような三官能性以上のポリカルボン酸を共重合成分として用いても良い。
また、テトラメチレングリコール以外のジオール成分としては、例えばトリメチレングリコール、エチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコールのような脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物を挙げることができる。更に、本発明の目的の達成が実質的に損なわれない範囲内で、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような三官能性以上のポリオールを共重合成分として用いてもよい。
一方、ポリオキシエチレングリコールは、オキシエチレングリコール単位を少なくとも70モル%以上含有することが好ましい。オキシエチレングリコールの含有量は、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。本発明の目的の達成が実質的に損なわれない範囲内で、オキシエチレングリコール以外にプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリンなどを共重合させても良い。
かかるポリオキシエチレングリコールの数平均分子量としては、400〜8000が好ましく、なかでも1000〜6000が特に好ましい。
前記のポリエーテルエステルエラストマーは、たとえば、テレフタル酸ジメチル、テトラメチレングリコールおよびポリオキシエチレングリコールとを含む原料を、エステル交換触媒の存在下でエステル交換反応させ、ビス(ω−ヒドロキシブチル)テレフタレート及び/又はオリゴマーを形成させ、その後、重縮合触媒及び安定剤の存在下で高温減圧下にて溶融重縮合を行うことにより得ることができる。
ハードセグメント/ソフトセグメントの比率は、重量を基準として30/70〜70/30であることが好ましい。
かかるポリエーテルエステル中には、公知の有機スルホン酸金属塩が含まれていると、さらに優れた吸水自己伸張性能が得られ好ましい。
ポリエーテルエステル繊維は、前記ポリエーテルエステルを、通常の溶融紡糸口金から溶融して押し出し、引取速度300〜1200m/分(好ましくは400〜980m/分)で引取り、巻取ドラフト率をさらに該引取速度の1.0〜1.2(好ましくは1.0〜1.1)で巻取ることにより製造することができる。
他方、非自己伸張糸としては、木綿、麻などの天然繊維やレーヨン、アセテートなどのセルロース系化学繊維、さらにはポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートに代表されるポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレンなどの合成繊維が例示される。なかでも、通常のポリエステル繊維が好ましく例示される。
前記吸水自己伸張糸及び非自己伸張糸の繊維形態は特に限定されず、短繊維でもよいし長繊維でもよい。繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状が採用できる。吸水自己伸張糸及び非自己伸張糸の総繊度、単糸繊度、フィラメント数も特に限定されないが、風合いや生産性の点で総繊度30〜300dtex、単糸繊度0.6〜10dtex、フィラメント数1〜300本の範囲が好ましい。
吸水変化シート状物1は、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とからなる。その際、両者の重量比として、前者:後者で10:90〜60:40(より好ましくは20:80〜50:50)の範囲であることが好ましい。
織編物の構造としては、その織編組織、層数は特に限定されるものではない。例えば、平織、綾織、サテンなどの織組織や、天竺、スムース、フライス、鹿の子、デンビー、トリコットなどの編組織が好適に例示されるが、これらに限定されるものではない。層数も単層でもよいし、2層以上の多層であってもよい。
吸水自己伸張糸と非自己伸張糸との糸配列としては、以下の糸配列が好適に例示される。
まず、その1として、吸湿自己伸張糸と非自己伸張糸とが引き揃えられて、編物のニードルループや、織物の経糸および/または緯糸を構成する糸配列があげられる。例えば、図2に示すように、吸湿自己伸張糸と非自己伸張糸とが丸編組織の複合ループ(2本の糸条で、同時にニードルループを形成する。添え糸編みとも言われる。)を形成してなる糸配列や、図3に示すように、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、引き揃えられて織組織の経糸および/または緯糸に配された糸配列が例示される。
その2として、吸湿自己伸張糸と非自己伸張糸とが、織編物の経糸および/または緯糸において1本交互(1:1)や複数本交互(2:2、3:3など)に配された糸配列があげられる。例えば、図4に示すように、丸編物中に吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが1:1に配された糸配列、図5に示すように、織物中に吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが1:1に経糸および緯糸に配された糸配列などが例示される。
その3として、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、混繊糸、複合仮撚捲縮加工糸、合撚糸、カバリング糸などの複合糸として織編物を構成する態様があげられる。
ここで、糸長の測定は以下の方法で行うものとする。まず、織編物を温度20℃、湿度65%RHの雰囲気中に24時間放置した後、該織編物から、30cm×30cmの小片を裁断する(n数=5)。続いて、各小片から、吸水自己伸張糸及び非自己伸張糸を1本ずつ取り出し、吸水自己伸張糸の糸長A(mm)、非自己伸張糸の糸長B(mm)を測定する。その際、非弾性糸の場合は1.76mN/dtex(200mg/de)、弾性糸の場合は0.0088mN/dtex(1mg/de)の荷重をかけて測定する。そして、(糸長Aの平均値)/(糸長Bの平均値)をA/Bとする。ここで、小片から取り出す吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とは織編物中において同一方向のものである必要がある。例えば、吸水自己伸張糸を織物の経糸(緯糸)から取り出す場合、他方の非自己伸張糸も経糸(緯糸)から取り出す必要がある。また、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、複合糸として織編物を構成する場合には、裁断された小片(30cm×30cm)から複合糸を取り出し(n数=5)、さらに複合糸から吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とを取り出して前記と同様にして測定するものとする。
前記のように、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸との糸長差をもうける方法としては、以下の方法が例示される。
例えば、その1として、前記の織編物を製編織する際、吸水自己伸張糸として、前記の弾性を有するポリエーテルエステル繊維を使用し、該ポリエーテルエステル繊維をドラフト(延伸)しながら非自己伸張糸と引き揃え、同一の給糸口に給糸して製編織する方法があげられる。その際、ポリエーテルエステル繊維のドラフト率としては、10%以上(好ましくは20%以上300%以下)が好ましい。なお、該ドラフト率(%)は、下記式で求められる。
ドラフト率(%)=((引き取り速度)−(供給速度))/(供給速度)×100
ポリエーテルエステル繊維は、通常弾性性能を有しているため、織編物中において、ポリエーテルエステル繊維は、弾性回復してその糸長が短くなり、他方の非自己伸張糸との糸長差をもうけることができる。
その2として、前記の織編物を製編織する際、吸水自己伸張糸の沸水収縮率を非自己伸張糸の沸水収縮率よりも大きくする方法があげられる。かかる織編物を通常の染色加工工程に供することにより、吸水自己伸張糸の糸長が短くなり、他方の非自己伸張糸との糸長差をもうけることができる。
その3として、非自己伸張糸をオーバーフィード(過供給)させながら吸水自己伸張糸と引き揃えて、通常の空気混繊加工、撚糸、カバリング加工なより複合糸を得て、該複合糸を用いて織編物を製編織する方法があげられる。
次に、吸水変化シート状物2は、ポリエステル成分とポリアミド成分とがサイドバイサイド型に接合され、かつ潜在捲縮性能が発現してなる捲縮を有する複合繊維を含む織編物である。
ここで、ポリエステル成分としては、他方のポリアミド成分との接着性の点で、スルホン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属、ホスホニウム塩を有し、かつエステル形成能を有する官能基を1個以上もつ化合物が共重合された、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンタレフタレート等の変性ポリエステルが好ましく例示される。なかでも、汎用性およびポリマーコストの点で、前記化合物が共重合された、変性ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。その際、共重合成分としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸およびそのエステル誘導体、5−ホスホニウムイソフタル酸およびそのエステル誘導体、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウムなどがあげられる。なかでも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が好ましい。共重合量としては、2.0〜4.5モル%の範囲が好ましい。該共重合量が2.0モル%よりも小さいと、優れた捲縮性能が得られるものの、ポリアミド成分とポリエステル成分との接合界面にて剥離が生じるおそれがある。逆に、該共重合量が4.5モル%よりも大きいと、延伸熱処理の際、ポリエステル成分の結晶化が進みにくくなるため、延伸熱処理温度を上げる必要があり、その結果、糸切れが多発するおそれがある。
一方のポリアミド成分としては、主鎖中にアミド結合を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ナイロン−4、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−46、ナイロン−12などがあげられる。なかでも、汎用性、ポリマーコスト、製糸安定性の点で、ナイロン−6およびナイロン−66が好適である。
なお、前記ポリエステル成分およびポリアミド成分には、公知の添加剤、例えば、顔料、顔料、艶消し剤、防汚剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤等が含まれていてもよい。
前記のサイドバイサイド型に接合された複合繊維は、任意の断面形状および複合形態をとることができ、サイドバイサイド型や偏心芯鞘型であってもよい。さらには、三角形や四角形、その断面内に中空部を有するものであってもよい。なかでも、サイドバイサイド型が好ましい。両成分の複合比は任意に選定することができるが、通常、ポリエステル成分とポリアミド成分の重量比で30:70〜70:30(より好ましくは40:60〜60:40)の範囲内であることが好ましい。
前記複合繊維の単糸繊度、単糸数(フィラメント数)としては特に限定されないが、単糸繊度1〜10dtex(より好ましくは2〜5dtex)、単糸数10〜200本(より好ましくは20〜100本)の範囲内であることが好ましい。
また、前記複合繊維は、潜在捲縮性能が発現してなる捲縮構造を有している必要がある。異種ポリマーがサイドバイサイド型に接合された複合繊維は、通常、潜在捲縮性能を有しており、後記のように、染色加工等で熱処理を受けると潜在捲縮性能が発現する。捲縮構造としては、ポリアミド成分が捲縮の内側に位置し、ポリエステル成分が捲縮の外側に位置していることが好ましい。かかる捲縮構造を有する複合繊維は、後記の製造方法により容易に得ることができる。複合繊維がこのような捲縮構造を有していると、湿潤時に、内側のポリアミド成分が膨潤、伸張し、外側のポリエステル成分はほとんど長さ変化を起こさないため、捲縮率が低下する(複合繊維の見かけの長さが長くなる。)。一方、乾燥時には、内側のポリアミド成分が収縮し、外側のポリエステル成分はほとんど長さ変化を起こさないため、捲縮率が増大する(複合繊維の見かけの長さが短くなる。)。このように、湿潤時に、複合繊維の捲縮率が可逆的に低下し見かけの糸長が増大するため、織編物の寸法が大きくなる。
前記の複合繊維は、湿潤時に、容易に捲縮が低下しみかけの糸長が増大する上で、無撚糸、または300T/m以下の撚りが施された甘撚り糸であることが好ましい。特に、無撚糸であることが好ましい。強撚糸のように、強い撚りが付与されていると、湿潤時に捲縮が低下しにくく好ましくない。なお、交絡数が20〜60ケ/m程度となるようにインターレース空気加工および/または通常の仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。
織編物構造としては、その織編組織、層数は特に限定されるものではない。例えば、平織、綾織、サテンなどの織組織や、天竺、スムース、フライス、鹿の子、そえ糸編、デンビー、ハーフなどの編組織が好適に例示される。特に丸編物またはメッシュ状の織編物が好ましい。
かかる織編物は、例えば下記の製造方法によって容易に得ることができる。
まず、固有粘度が0.30〜0.43(オルソクロロフェノールを溶媒として35℃で測定)の、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が2.0〜4.5モル%共重合された変性ポリエステルと、固有粘度が1.0〜1.4(m−クレゾールを溶媒として30℃で測定)のポリアミドとを用いてサイドバイサイド型に溶融複合紡糸する。その際、ポリエステル成分の固有粘度が0.43以下であることが特に重要である。ポリエステル成分の固有粘度が0.43よりも大きいと、ポリエステル成分の粘度が増大するため、複合繊維の物性がポリエステル単独糸に近くなり好ましくない。逆に、ポリエステル成分の固有粘度が0.30よりも小さいと、溶融粘度が小さくなりすぎて製糸性が低下するとともに毛羽発生が多くなり、品質および生産性が低下するおそれがある。
溶融紡糸の際に用いる紡糸口金としては、特開2000−144518号公報の図1のような、高粘度側と低粘度側の吐出孔を分離し、かつ高粘度側吐出線速度を小さくした(吐出断面積を大きくした)紡糸口金が好適である。そして、高粘度側吐出孔に溶融ポリエステルを通過させ、低粘度側吐出孔に溶融ポリアミドを通過させ冷却固化させることが好ましい。その際、ポリエステル成分とポリアミド成分との重量比は、前述のとおり、30:70〜70:30(より好ましくは40:60〜60:40)の範囲内であることが好ましい。
また、溶融複合紡糸した後、一旦巻き取った後に延伸する別延方式を採用してもよいし、一旦巻き取らずに延伸熱処理を行う直延方式を採用してもよい。その際、紡糸・延伸条件としては、通常の条件でよい。例えば、直延方式の場合、1000〜3500m/分程度で紡糸した後、連続して100〜150℃の温度で延伸し巻き取る。延伸倍率は最終時に得られる複合繊維の切断伸度が10〜60%(好ましくは20〜45%)、切断強度が3.0〜4.7cN/dtex程度となるよう、適宜選定すればよい。
ここで、前記の複合繊維が、下記の要件(1)および(2)を同時に満足することが好ましい。
(1)乾燥時における複合繊維の捲縮率DCが1.5〜13%(好ましくは2〜6%)の範囲内である。
(2)捲縮率DCと、乾燥時における複合繊維の捲縮率HCとの差(DC−HC)が0.5%以上(好ましくは1〜5%)である。
ただし、乾燥時とは、試料を温度20℃、湿度65%RH環境下に24時間放置した後の状態であり、一方、湿潤時とは、試料を温度20℃の水中に2時間浸漬した直後の状態であり、乾燥時における捲縮率DCおよび湿潤時における捲縮率HCは、下記の方法で測定した値を用いることとする。
まず、枠周:1.125mの巻き返し枠を用いて、荷重:49/50mN×9×トータルテックス(0.1gf×トータルデニール)をかけて一定の速度で巻き返し、巻き数:10回の小綛をつくり、該小綛をねじり2重の輪状にしたものに49/2500mN×20×9×トータルテックス(2mg×20×トータルデニール)の初荷重をかけたまま沸水中に入れて30分間処理し、該沸水処理の後100℃の乾燥機にて30分間乾燥し、その後さらに初荷重をかけたまま160℃の乾熱中に入れ5分間処理する。該乾熱処理の後に初荷重を除き、温度20℃、湿度65%RH環境下に24時間以上放置した後、前記の初荷重および98/50mN×20×9×トータルテックス(0.2gf×20×トータルデニール)の重荷重を負荷し、綛長:L0を測定し、直ちに重荷重のみを取り除き、除重1分後の綛長:L1を測定する。さらにこの綛を初荷重をかけたまま温度20℃の水中に2時間浸漬した後取り出し、ろ紙にて0.69mN/cm(70mgf/cm)の圧力で軽く水を拭き取った後、初荷重および重荷重を負荷し綛長:L0’を測定し、直ちに重荷重のみを取り除き、除重1分後の綛長:L1’を測定する。以上の測定数値から下記の計算式にて、乾燥時の捲縮率(DC)、湿潤時の捲縮率(HC)、乾燥時と湿潤時の捲縮率差(DC−HC)を算出する。
乾燥時の捲縮率DC(%)=((L0−L1)/L0)×100
湿潤時の捲縮率HC(%)=(L0’−L1’)/L0’)×100
前記の湿潤時における複合繊維の捲縮率HCとしては、0.5〜10.0%(好ましくは1〜3%)の範囲内であることが好ましい。
ここで、乾燥時における複合繊維の捲縮率DCが1.5%よりも小さいと、湿潤時の捲縮変化量が小さくなるおそれがある。逆に、乾燥時における複合繊維の捲縮率DCが13%よりも大きい場合は、捲縮が強すぎて湿潤時に捲縮が変化しにくくなるおそれがある。
次いで、前記複合繊維を単独で用いるか、他の繊維も同時に用いて織編物を織編成した後、染色加工などの熱処理により前記複合繊維の捲縮を発現させる。
ここで、織編物を織編成する際、前述のように、重量基準で織編物全重量に対して、10重量%以上(好ましくは40重量%以上)であることが肝要である。また、織編組織は特に限定されず、前述のものを適宜選定することができる。
前記染色加工の温度としては100〜140℃(より好ましくは110〜135℃)、時間としてはトップ温度のキープ時間が5〜40分の範囲内であることが好ましい。かかる条件で、織編物に染色加工を施すことにより、前記複合繊維は、ポリエステル成分とポリアミド成分との熱収縮差により捲縮を発現する。その際、ポリエステル成分とポリアミド成分として、前述のポリマーを選定することにより、ポリアミド成分が捲縮の内側に位置する捲縮構造となる。
染色加工が施された織編物には、通常、乾熱ファイナルセットが施される。その際、乾熱ファイナルセットの温度としては120〜200℃(より好ましくは140〜180℃)、時間としては1〜3分の範囲内であることが好ましい。かかる、乾熱ファイナルセットの温度が120℃よりも低いと、染色加工時に発生したシワが残り易く、また、仕上がり製品の寸法安定性が悪くなるおそれがある。逆に、該乾熱ファイナルセットの温度が200℃よりも高いと、染色加工の際に発現した複合繊維の捲縮が低下したり、繊維が硬化し生地の風合いが硬くなるおそれがある。
また、かかる織編物に吸水加工を施すことが好ましい。織編物に吸水加工を施すことにより、少量の汗でも通気性が向上しやすくなる。かかる吸水加工としては特に限定されず、ポリエチレングリコールジアクリレートやその誘導体、または、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体などの吸水加工剤を織編物に、織編物の重量に対して0.25〜0.50重量%付着させることが好ましく例示される。吸水加工の方法としては、例えば染色加工時に染液に吸水加工剤を混合する浴中加工法や、乾熱ファイナルセット前に、織編物を吸水加工液中にデイッピングしマングルで絞る方法、グラビヤコーテング法、スクリーンプリント法といった塗布による加工方法等が例示される。
本発明の布帛は、前記の布帛aの少なくとも一面に、樹脂が、塗布部と非塗布部を有しながら付着してなる布帛である。塗布部だけ、すなわち全面的に樹脂が付着していると、布帛aが完全固定され吸水時に立体構造が変化せず好ましくない。
ここで、樹脂の付着パターンとしては、図1に模式的に示すように非塗布部が島状に散在するパターンが特に好ましい。また、塗布部が縞のように一方向にのみ連続的につがっているものや、塗布部が縦横または斜線格子状につながっているものでもよい。
また、前記の樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ナイロン系樹脂などが例示される。
前記樹脂の付着量としては、樹脂固形分基準で、布帛に対して0.01〜40g/m(より好ましくは5〜30g/m)の範囲内であることが好ましい。
また、パターン内における塗布部面積比率が10〜90%(より好ましくは25〜70%)であることが好ましい。なお、塗布部面積比率は下記式で示されるものである。
塗布部面積比率=(塗布部面積)/(塗布部面積+非塗布部面積)×100(%)
前記の樹脂を布帛aに付着させる方法としては、樹脂の水分散体を、グラビアコーテイング法やスクリーンプリント法などで付与した後に乾燥させる通常の方法でよい。
なお、樹脂の付与前および/または後に、染色加工、吸水加工、さらには、常法の起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤、撥水剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
本発明の布帛において、樹脂の非塗布部が吸水により凸状に変化し、厚みが増加したり、あるいは通気性が向上する。かかる厚みとしては、吸水時に乾燥時よりも10%以上(好ましくは20〜200%)大きくなることが好ましい。また、通気性としては、吸水時に乾燥時よりも10%以上(好ましくは20〜200%)大きくなることが好ましい。
かかる布帛を、アウター用衣料、スポーツ用衣料、インナー用衣料、靴材、おしめや介護用シーツ等の医療・衛生用品、寝装寝具、椅子やソファー等の表皮材、カーペット、カーシート地、インテリア用品などの繊維製品として使用すると、ベトツキ感、ムレ感、冷え感を低減することが可能となる。
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
<通気性変化率>JIS L 1096−1998、6.27.1、A(フラジール型通気性試験機法)により乾燥時の通気性(cc/cm/s)と吸水時の通気性(cc/cm/s)を測定した。ただし、乾燥時とは、試料を温度20℃、湿度65%RH環境下に24時間放置した後の状態であり、一方、吸水時とは、試料に含水率が70%になるよう霧吹きにて水を付与した状態であり、それぞれ通気性(n数=5)を測定し、その平均を求めた。そして、通気性の変化率を下記式により算出した。
通気性の変化率(%)=((吸水時の通気性)−(乾燥時の通気性))/(乾燥時の通気性)×100
<面積変化率>試料を温度20℃、湿度65RH%の環境下に24時間放置した後に小片(経20cm×緯20cmの正方形)を試料と同じ方向に裁断し、乾燥時の面積(cm)とする。一方、該小片に含水率が70%になるよう霧吹きにて水を付与した後、該小片の面積を測定し、吸水時の面積(cm)とする。そして、下記式で定義する面積変化率により面積変化率(%)を算出した。
面積変化率(%)=((吸水時の面積)−(乾燥時の面積))/(乾燥時の面積)×100
<厚み変化率>
試料を温度20℃、湿度65%RHの雰囲気中に24時間放置した後、該試料から、10cm×10cmの小片を裁断する(n数=5)。続いて、上記試料を平らな板の上に置き、圧力0.13cN/cm(0.13g/cm)の荷重をかけ、ミツトヨ社製デジマチックハイトゲージ(HDS−HC)を用いて、試料の厚みTDを計測する。
更に、この小片に含水率が70%になるよう霧吹きにて水を付与し、1分経過後に当該滴下部に前記と同様に圧力0.13cN/cm(0.13g/cm)の荷重下にて厚みTWを計測する。
以上の測定数値から下記の計算式にて、厚み変化率を算出する。
厚み変化率(%)=(TW−TD)/TD×100
<沸水収縮率>JIS L 1013−1998、7.15で規定される方法により、沸水収縮率(熱水収縮率)(%)をn数3で測定した。
<糸長の測定>織編物を温度20℃、湿度65%RHの雰囲気中に24時間放置した後、該織編物から、経緯の方向が織編物と同じになるよう30cm×30cmの小片を裁断する(n数=5)。続いて、各々の小片から、吸水自己伸張糸及び非自己伸張糸を1本ずつ取り出し、弾性糸である吸水自己伸張糸には0.0088mN/dtex(1mg/de)の荷重をかけ、非弾性糸である非自己伸張糸には1.76mN/dtex(200mg/de)の荷重をかけて吸水自己伸張糸の糸長A(mm)、非自己伸張糸の糸長B(mm)を測定する。そして、(糸長Aの平均値)/(糸長Bの平均値)をA/Bとする。
[実施例1]
ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレートを49.8重量部、ソフトセグメントとして数平均分子量4000のポリオキシエチレングリコール50.2重量部からなるポリエーテルエステルを、230℃で溶融し、所定の紡糸口金より吐出量3.05g/分で押出した。このポリマーを2個のゴデットロールを介して705m/分で引取り、さらに750m/分(巻取りドラフト1.06)で巻取り、44デシテックス/1フィラメントの弾性を有する吸水自己伸張糸を得た。この吸水自己伸張糸の吸水時の繊維軸方向への膨潤率は10%であり、沸水収縮率は8%であった。
また、非自己伸張糸として沸水収縮率が10%であり、吸水時の膨張率が1%以下である、通常のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸(84デシテックス/24フィラメント)を用意した。
次いで、28ゲージのシングル丸編機を用いて、上記吸水自己伸張糸を延伸倍率2.7倍で引張りながら上記非自己伸張糸と同時に該編機に給糸することにより、81コース/2.54cm、37ウェール/2.54cmの編密度にて天竺組織の丸編地を編成した。ついで、この丸編地を常法の染色仕上げ方法にて加工を行うことにより、吸水時に通気性が向上する編地を得た。得られた編地は、乾燥時では、通気性52cc/cm/sであり、吸水時には、通気性109cc/cm/s(通気性変化率110%)と、吸水により通気性が大きく向上するものであった。
また、上記編地の乾燥時と吸水時の寸法変化率は22%(タテ11%、ヨコ10%)であり、この編地を布帛aとして用いることにした。
次いで、上記の布帛aの表面に対してグラビアロール法により、アクリル系樹脂を20g/mの付着量および図1のパターン(塗布部面積比率64%)で付与した。
得られた布帛の評価結果は表1に示す通りで、吸水により非塗布部部分(領域SN)が立体的に浮き上がり(領域SNが円形のため半球状に浮き上がる)、結果として厚みは365%変化し、通気性も54%向上し、本発明の目的である吸水により立体的に構造変化する多層構造体として満足なものであった。
[比較例1]
布帛aとして実施例1で用いた丸編地を使用し、実施例1と同じ樹脂を用いて、40g/mの付着量で前記吸水変化層の表面が完全に被覆されるように塗布した。
得られたコーティング布帛の評価結果は表1に示す通りで、吸水により厚みが4%しか向上せず、通気性は11%低下し満足ゆくものではなかった。
Figure 0004567500
本発明によれば、吸水により構造体表面に凹凸が発現したり、厚みが増加したり、あるいは通気性が向上することにより、ベトツキ感、ムレ感、冷え感を低減することが可能な、吸水により立体的に構造変化する布帛および繊維製品が、その工業的価値は極めて大である。
本発明の布帛において採用することのできる、樹脂の付着パターンを模式的に示すものであり、(1)表面、(2)断面を示す。なお、円形部が非接着部である。 本発明の布帛を構成する布帛aとして採用することができる丸編物において、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが丸編組織の複合ループを形成する糸配列を模式的に示すものであり、(1)乾燥時、(2)吸水時である。 本発明の布帛を構成する布帛aとして採用することができる織物において、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、引き揃えられて織組織の経糸および緯糸を構成する糸配列を模式的に示すものであり、(1)乾燥時、(2)吸水時である。 本発明の布帛を構成する布帛aとして採用することができる丸編物において、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが1:1に配列されて丸編物を構成する糸配列を模式的に示すものであり、(1)乾燥時、(2)吸水時である。 本発明の布帛を構成する布帛aとして採用することができる織物において、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが織物の経糸と緯糸に1:1に配列されて織物を構成する糸配列を模式的に示すものであり、(1)乾燥時、(2)吸水時である。
符号の説明
1 布帛a
2 樹脂付着部
A−1,A−2,A−3,A−4,A−5,A−6,A−7,A−8 吸水自己伸張糸
B−1,B−2,B−3,B−4,B−5,B−6,B−7,B−8 非自己伸張糸

Claims (15)

  1. 吸水時に乾燥時よりも面積が10%以上大きくなるか、および/または厚みが20%以上大きくなる布帛aの少なくとも一面に、樹脂が、塗布部と非塗布部を有しながら付着してなることを特徴とする吸水により立体的に構造変化する布帛。
    ただし、乾燥時とは、温度20℃、湿度65%RHの環境下に試料を24時間放置した直後の状態であり、一方吸水時とは、乾燥後の試料表面に霧吹きにより水を噴霧し、乾燥時の試料重量に対して含水率70重量%となるまで水を付与した直後の状態である。
  2. 樹脂が、非塗布部が島状に散在するパターンで布帛の表面に付着している、請求項1に記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  3. 前記の樹脂が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、およびナイロン系樹脂からなる群より選択されるいずれかの樹脂である、請求項1または請求項2に記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  4. 前記の布帛aが、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とからなる織編物であって、乾燥時における該織編物中の吸水自己伸張糸の糸長を(A)、他方、非自己伸張糸の糸長を(B)とするとき、A/Bが0.9以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  5. 前記の吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とからなる織編物において、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、丸編組織の複合ループを形成してなる、請求項4に記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  6. 前記の吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とからなる織編物において、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、引き揃えられて織組織の経糸および/または緯糸を構成してなる、請求項4に記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  7. 前記の吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とからなる織編物において、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、各々織編物の構成糸条として、1本交互にまたは複数本交互に配列してなる、請求項4に記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  8. 前記の吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とからなる織編物において、吸水自己伸張糸と非自己伸張糸とが、複合糸として織編物中に含まれる、請求項4に記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  9. 吸水自己伸張糸が、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなるポリエーテルエステル繊維である、請求項4〜8のいずれかに記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  10. 非自己伸張糸がポリエステル繊維である、請求項4〜9のいずれかに記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  11. 前記の布帛aが、ポリエステル成分とポリアミド成分とがサイドバイサイド型に接合され、かつ潜在捲縮性能が発現してなる捲縮を有する複合繊維を含む織編物である、請求項1〜3のいずれかに記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  12. 吸水時の通気性が乾燥時よりも10%以上大きくなる、請求項1〜11に記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  13. 吸水時の厚みが乾燥時よりも10%以上大きくなる、請求項1〜12に記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  14. 非接着部が文字または幾何学模様となっており、吸水時に文字または幾何学模様が立体的に浮かび上がる、請求項1〜13に記載の吸水により立体的に構造変化する布帛。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載の布帛を用いてなる、アウター用衣料、スポーツ用衣料、インナー用衣料、靴材、おしめや介護用シーツ等の医療・衛生用品、寝装寝具、椅子やソファー等の表皮材、カーペット、カーシート地、インテリア用品からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
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