<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6によって説明する。本実施形態では、運転席の側方に配されたドアトリム(車両用ドアトリム)20について例示する。以下の説明では、図1のX軸方向を車両前後方向、Y軸方向を車幅方向(車室内外方向)、Z軸方向を上下方向として説明する。
ドアトリム20は、図1に示すように、車両用ドア10を構成するドアインナパネル(車体パネルの一例)11の車室内側に取り付けられ、車両用ドア10の車室内面10Aを構成するものである。ドアトリム20は、ドアインナパネル11を車室内側から覆うトリム本体部21を主体に構成されている。トリム本体部21は、トリムボード23と、後述する各種機能部品をトリムボード23に対して取り付けるための取付部材26とから少なくとも構成されている。なお、ドアトリム20は、取付部材26によって取り付けられる機能部品以外にも、ドアポケット16やスピーカグリル(不図示)といった機能部品を更に備えている。
また、ドアトリム20は、図1に示すように、ドアグリップ50、スイッチベース60、プルハンドル70、インサイドハンドル装置80といった各種機能部品を備えている。これらの機能部品は、その機能を発揮する上で、いずれも乗員が手を掛けたり、手で操作したりする部品であり、その使用性を向上するうえで、乗員の手の届き易い位置に配することが好ましい部品であると言える。以下、トリムボード23、取付部材26、各種機能部品について順次に説明する。
トリムボード23は、図2に示すように、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂材料によって構成された板状の部材とされる。なお、トリムボード23の材質は、合成樹脂材料に限定されず、例えば、木質系材料(例えば、ケナフ、ヘンプ、フラックス、サイザルなど)と合成樹脂を混合したものなどを用いてもよい。また、トリムボード23は、メインボードとオーナメント等の複数のボード部材を互いに組み付ける形で構成されていてもよい。トリムボード23には、その中央部、つまり運転席に着座した乗員の前腕部付近に位置して、平面視逆三角形状の開口部24が形成されている。この開口部24には、取付部材26が配設されている。
取付部材26は、図3に示すように、第1部材30と、第1部材30の車室外側に配される第2部材40とで構成されている。本実施形態では、第1部材30が、平面視V字状の板状部材とされるとともに、第2部材40が、平面視逆三角形状の板状部材とされるものを例示する。第1部材30と第2部材40とは、第2部材40の下部に、車室内側から第1部材30が重なる形で、互いに組み付けられている。なお、第1部材30は、これと同様の外形をなす加飾パネル28によって更に車室内側から覆われている。この取付部材26は、開口部24を閉塞する形でトリムボード23に取り付けられる。
第1部材30は、図3に示すように、ドアグリップ50の相対的に車室内側に位置する部分を構成する第1ドアグリップ用挿入壁部31と、プルハンドル70の相対的に車室内側に位置する部分を構成する第1プルハンドル用挿入壁部32と、を備えている。第1ドアグリップ用挿入壁部31は、V字状をなす第1部材30の車両前方に向かうにつれて上昇する部分に設けられている。また、第1プルハンドル用挿入壁部32は、V字状をなす第1部材30の車両後方に向かうにつれて緩やかに上昇する部分に設けられている。そして、第1部材30には、第1ドアグリップ用挿入壁部31と第1プルハンドル用挿入壁部32の間に位置する角部33に、インサイドハンドル装置80の回動軸81が突設されている(図5参照)。
第2部材40は、図3に示すように、ドアグリップ50の相対的に車室外側に位置する部分を構成する第2ドアグリップ用挿入壁部41と、プルハンドル70の相対的に車室外側に位置する部分を構成する第2プルハンドル用挿入壁部42と、を備えている。第2ドアグリップ用挿入壁部41は、逆三角形状をなす第2部材40の車両前側辺部に設けられている。また、第2プルハンドル用挿入壁部42は、逆三角形状をなす第2部材40の車両後側辺部に設けられている。第2部材40には、車両上側辺部において、スイッチベース60が取り付けられるスイッチベース取付部43が設けられている。スイッチベース取付部43は、車室内側に張り出す形で構成されている。また、第2部材40は、その中央部が車両前後方向かつ車両上下方向に沿って延在するとともに、トリムボード23の開口部24から車室内に露出して、車室内面10Aを構成する取付部材側意匠面44とされている。
ドアグリップ50は、図4に示すように、ドアグリップ用挿入壁部51と、ドアグリップ用挿入壁部51の車室内側において、把持可能に設けられたドアグリップ用把持部(把持部の一例)55と、を備えて構成されている。ドアグリップ50は、例えば、乗員が姿勢を保持する際等に把持可能な構成とされる。また、本実施形態では、ドアグリップ用把持部55に隣接してインサイドハンドル装置80のハンドル部83が設けられており、ドアグリップ50は、インサイドハンドル装置80のハンドル部83に手を掛けた状態で把持可能とされている。つまり、ドアグリップ50は、車両用ドア10を開ける際に、好適にこれを把持して車両用ドア10を操作可能な構成とされており、車両用ドア10を操作するための第1の操作部とも言える。
ドアグリップ用挿入壁部51は、図4に示すように、車両上方かつ車両後方に向けて開口するとともに、内部に手指を挿入可能なドアグリップ用挿入空間53を有する。ドアグリップ用挿入壁部51は、第1部材30の第1ドアグリップ用挿入壁部31と、第2部材40の第2ドアグリップ用挿入壁部41とを組み付けてなり、両壁部31,41の間にドアグリップ用挿入空間53が画成される。なお、図3においては図示を省略するが、ドアグリップ用挿入空間53は、底面がドアグリップ用挿入壁部51とは別の部材(不図示)で閉塞されることで有底凹状に構成されている。
ドアグリップ用把持部55は、図4に示すように、ドアグリップ用挿入空間53に手指を挿入する形で把持可能な構成とされる。ドアグリップ用把持部55は、第1ドアグリップ用挿入壁部31の上端部51Aに形成されている。上端部51Aは、その他の部分より板厚が大きく設定され、ハンドル部83と隣接する部分においては、一部車室外側に張り出して、ハンドル部83の上方に重なる形とされている。
スイッチベース60は、図3及び図5に示すように、車両前後方向かつ車室内外方向に沿って延在する板状部材とされ、板面に開口する形でスイッチ操作部61A(図2参照)が配されるスイッチ用開口61を有している。詳細には、スイッチベース60は、第2部材40の車両上側辺部の車両前端部から車両後端部にまで延設され、取付部材26の上端部を覆う加飾パネルのような役目を果たしている。スイッチベース60は、スイッチベース取付部43に対して、例えば、爪嵌合等の取付手段により取り付けられている。スイッチ操作部61Aは、例えば、車両用ドア10に装備された電装部品を駆動するためのものとされ、ウインドウレギュレータの駆動スイッチ等である。
プルハンドル70は、図5に示すように、プルハンドル用挿入壁部71と、プルハンドル用挿入壁部71の車室内側において、把持可能に設けられたプルハンドル用把持部75と、を備えて構成されている。プルハンドル70は、例えば、後述するプルハンドル用挿入空間73に手指を挿入して、車両用ドア10を開閉操作可能な構成とされている。つまり、プルハンドル70は、車両用ドア10を操作するための第2の操作部とも言える。本実施形態では、プルハンドル70は、ドアグリップ50より車両後方、つまり、一般的なヒンジ式の車両用ドア10において、第1の操作部であるドアグリップ50より開閉時の回動軸より遠い位置に配されているから、低い荷重でもって車両用ドア10を操作可能とされる。
プルハンドル用挿入壁部71は、図5に示すように、車両上方に向けて開口するとともに、内部に手指を挿入可能なプルハンドル用挿入空間(挿入空間の一例)73を有する。プルハンドル用挿入壁部71は、第1部材30の第1プルハンドル用挿入壁部32と、第2部材40の第2プルハンドル用挿入壁部42とを組み付けてなり、両壁部32,42の間に有底凹状のプルハンドル用挿入空間73が画成される。
プルハンドル用把持部75は、図5に示すように、プルハンドル用挿入空間73に手指を挿入する形で把持可能な構成とされる。プルハンドル用把持部75は、第1プルハンドル用挿入壁部32が、プルハンドル用挿入空間73の開口縁において、車室内側に屈曲する形で構成されている。プルハンドル用把持部75の上面75Aは、水平方向に対して緩やかに傾斜する形で延在し、アームレスト17としての役目を果たす。
ところで、車両用ドア10には、図1に示すように、ドアインナパネル11とドアアウタパネル(不図示)との間に、当該車両用ドア10を閉じた状態でロックするロック装置13が設けられている。ロック装置13には、ケーブル14の一端部14Aが接続されている。ケーブル14は、ドアインナパネル11を貫通して、ドアインナパネル11の車室内側かつドアトリム20の車室外側に導出され、その他端部14Bがインサイドハンドル装置80に接続される。このような構成により、ロック装置13は、車室内からインサイドハンドル装置80を操作して、ロック状態を解除可能とされている。
インサイドハンドル装置80は、図5及び図6に示すように、車室内外方向に沿って延びる形で取付部材26に設けられた回動軸81と、回動軸81から車両前方に向けて延出した長尺レバー状のハンドル部83と、回動軸81から車両後方に向けて延出して、ケーブル14の他端部14Bが係止される係止部85と、を備えている。インサイドハンドル装置80は、ハンドル部83、回動軸81、及び係止部85がそれぞれ力点、支点、及び作用点とされる第1種てこのような態様となっている。
回動軸81は、図5に示すように、第1部材30の車室外側面に突設されている。また、回動軸81は、その車室外側の端部を支持する支持部材82によって、第1部材30に対して移動不能に固定されている。回動軸81は、ドアグリップ用挿入壁部51とプルハンドル用挿入壁部71の間において、トリム本体部21の車室外側に配されている。
ハンドル部83は、図4及び図6に示すように、待機位置P1と、待機位置P1から回動軸81を中心として車両上方に向けて回動することで、ロック装置13による車両用ドア10のロック状態を解除可能な解除位置P2と、の間で回動可能な構成とされている。なお、ハンドル部83は、解除位置P2から待機位置P1に復帰可能なように、トーションバネ等の弾性部材によって車両下方に付勢されている。
続いて、ドアグリップ50、スイッチベース60、プルハンドル70、及びインサイドハンドル装置80の配置構成について説明する。
スイッチベース60とインサイドハンドル装置80とプルハンドル70は、図2に示すように、インサイドハンドル装置80及びプルハンドル70の車両上方にスイッチベース60が位置するようにして、取付部材26の周縁部26Aにそれぞれ配されている。つまり、スイッチベース60とインサイドハンドル装置80とプルハンドル70は、ドアトリム20の開口部24を囲むようにして配されている。また、ドアグリップ50とプルハンドル70とは、ドアグリップ50の車両後方にプルハンドル70が位置するとともに、そのドアグリップ用把持部55とプルハンドル用把持部75とがV字状に交差するようにしてそれぞれ延設されている。ドアトリム20は、図5に示すように、車両上下方向については、スイッチベース60が車室内側に向けて膨出するとともに、その車両下方において、プルハンドル70が車室内側に向けて膨出する、2つの膨出形状を有している。このような構成により、ドアトリム20は、例えば、プルハンドルの車両前方にスイッチベースが配された1つの膨出形状を有する一般的なドアトリムの意匠と相違した、斬新な意匠を呈する。
インサイドハンドル装置80は、図2及び図6に示すように、トリム本体部21の中央部において、取付部材26(第1部材30)の角部33付近に配されている。そして、インサイドハンドル装置80は、ハンドル部83がドアグリップ用挿入空間53内に位置するとともに、係止部85がドアグリップ用挿入壁部51における車室外側に位置する奥壁51Bに沿ってトリム本体部21の車室外側に延出する形で配されている。ハンドル部83は、ドアグリップ用把持部55の車室外側に配されている。言い換えれば、ハンドル部83は、ドアグリップ用把持部55によって車室内側から覆われている。また、係止部85は、ドアグリップ用挿入壁部51とプルハンドル用挿入壁部71との間において、トリム本体部21とドアインナパネル11との間に配されている。
続いて、ドアグリップ50、スイッチベース60、プルハンドル70、及びインサイドハンドル装置80の取り付け構成について説明する。
上述したように、ドアグリップ50とスイッチベース60とプルハンドル70とインサイドハンドル装置80は、一の取付部材26に対してそれぞれ設けられることで一体的に構成されている。つまり、取付部材26のトリムボード23への組み付けに先立って、ドアグリップ50、スイッチベース60、プルハンドル70、及びインサイドハンドル装置80が、取付部材26に対して予め組み付けられて、サブアッセンブリー化されている。なお、スイッチベース60については、その構成上、取付部材26をトリムボード23に対して取り付けた後に、取付部材26に対して取り付けることも可能である。
そして、一体的に構成されたドアグリップ50、スイッチベース60、プルハンドル70、及びインサイドハンドル装置80は、図5に示すように、取付部材26を介してトリムボード23に取り付けられている。詳細には、取付部材26は、車室外側の面に複数の取付ボス26Bが立設されており、取付ボス26Bがトリムボード23の開口部24の孔縁に設けられた取付孔24Aに対して熱カシメされることで、トリムボード23に取り付けられている。すると、自ずと、ドアグリップ50、スイッチベース60、プルハンドル70、及びインサイドハンドル装置80がトリムボード23に取り付けられた状態となる。このような態様により、各種機能部品を備えたドアトリム20が構成される。
その後、ドアトリム20は、ドアインナパネル11に対して締結部材19やクリップ(不図示)等の締結部材を介して取り付けられる。ドアトリム20のうち、取付部材26は次のような態様でドアインナパネル11に対して取り付けられる。
取付部材26は、図6に示すように、ドアインナパネル11に対して締結される締結部35、前上締結部36、及び後上締結部37と、車室外側に向けて突出する突出部38を有している。各締結部35,36,37は、締結部材19を挿通可能な孔部とされ、締結部材19を介してドアインナパネル11に締結されている(図7及び図9参照)。締結部材19は、ネジ式クリップ19Aと、ネジ式クリップ19Aに螺合して、これを拡径変形させるネジ19Bと、で構成されている。ドアインナパネル11には各締結部35,36,37と連通する位置に締結部材用貫通孔11Aが形成されている。そして、締結部材用貫通孔11Aに、ネジ式クリップ19Aを挿通し、各締結部35,36,37を介して車室内側からネジ式クリップ19Aにネジ19Bを螺合することで、各締結部35,36,37をドアインナパネル11に対して締結可能となっている。なお、本実施形態では、取付部材26のうち第1部材30に締結部35、前上締結部36、及び後上締結部37が形成され、これらと連通する形で第2部材40にそれぞれ締結部45,46,47が形成されており、第1部材30と第2部材40とが、ドアインナパネル11に対して共締めされている。また、後上締結部37においては、取付部材26とトリムボード23とが、ドアインナパネル11に対して共締めされている(図9参照)。一方、突出部38は、第1部材30において、第2部材40と重ならない位置に設けられている(図8参照)。
締結部35は、図6に示すように、インサイドハンドル装置80の回動軸81に対して、解除位置P2に至るハンドル部83の回動方向(図6の矢印の方向)とは反対側に位置する。言い換えれば、締結部35は、回動軸81に対して解除位置P2におけるハンドル部83の長手方向と交差する方向かつ車両下方に位置する。具体的には、解除位置P2におけるハンドル部83の長手方向は、車両前後方向に対して40°〜70°程度傾斜しており、締結部35は、これと略直交する方向かつ車両下方、つまり、回動軸81に対して車両前方かつ下方に、回動軸81と近接して配されている。
突出部38は、図6に示すように、回動軸81に対して締結部35の反対側に位置する。言い換えれば、突出部38は、回動軸81に対して解除位置P2におけるハンドル部83の長手方向と交差する方向(略直交する方向)かつ車両上方、つまり、車両後方かつ上方に位置する。さらに言い換えれば、突出部38は、締結部35との間に回動軸81が介在するような位置に、回動軸81と近接して配されている。
突出部38は、図8に示すように、ドアインナパネル11に貫通形成された突出部用貫通孔(貫通孔の一例)11Bに挿通されることで、取付部材26(その第1部材30)がドアインナパネル11のパネル面方向(XZ方向)に変位することを規制可能な構成とされる。具体的には、突出部38は、その側方に車室外側に向かうにつれて先細る側方リブ38Aを有しており、側方リブ38Aが突出部用貫通孔11Bの内周面に当接する態様で突出部用貫通孔11Bに挿通されている。このような態様により、突出部38は突出部用貫通孔11Bに対して径方向にガタつくことが抑制されている。
前上締結部36は、図6に示すように、締結部35の車両前方かつ上方に位置する。また、後上締結部37は、締結部35の車両後方かつ上方に位置する。そして、取付部材26は、締結部35と前上締結部36との間にドアグリップ用把持部55を有するとともに、締結部35と後上締結部37との間にプルハンドル用把持部75を有している。本実施形態では、V字状をなす第1部材30の角部33に回動軸81と締結部35が配されるとともに、両端部に前上締結部36と後上締結部37が配されている。また、本実施形態では、全体として略三角形状をなす取付部材26の各頂点に、締結部35、前上締結部36、後上締結部37が配されている。
続いて、本実施形態の作用・効果について説明する。
本実施形態では、取付部材26の締結部35がドアインナパネル11に対して締結されるから、インサイドハンドル装置80の操作に伴って、取付部材26に作用する力をドアインナパネル11で受けることができる。このため、例えば、取付部材26がドアインナパネル11に対して締結されず、トリムボード23を介してドアインナパネル11に対して締結される構成に比べて、インサイドハンドル装置80の操作に伴って、取付部材26とトリムボード23との間でガタつきが生じたり、取付部材26とトリムボード23との組み付け状態が損なわれたりする事態の発生を抑制することができる。ところで、ハンドル部83の解除位置P2では、取付部材26における回動軸81が設けられた部位に、ハンドル部83の回動方向(図6の矢印の方向)に向かうような荷重が作用することが懸念される。本実施形態では、取付部材26において、ドアインナパネル11との締結部35を、回動軸81に対して、解除位置P2に至るハンドル部83の回動方向とは反対側に配することで、回動軸81が設けられた部位に上述のような力が作用したとしても、締結部35を中心とした回転モーメントが発生し難く、取付部材26に作用する荷重を締結部35で好適に受けることができる。このため、取付部材26の回動軸81が設けられた部位にハンドル部83の回動方向に向かうような荷重が作用したとしても、取付部材26とトリムボード23との間でガタつきが生じたり、取付部材26とトリムボード23の組み付け状態が損なわれたりする事態の発生を抑制することができる。
ところで、ドアインナパネル11のようなパネル状の部材に対して取付部材26を締結する構成においては、一般的に、取付部材26は、ドアインナパネル11への締結方向(パネル面と直交する方向、Y軸方向)についてはガタつき難いが、ドアインナパネル11のパネル面の面方向(XZ方向)については、締結部材19を締結するために要するクリアランスの分だけガタつきが生じうる。このため、ハンドル部83が車両上方(図6の矢印の方向)、つまり、ドアインナパネル11のパネル面に沿って回動するような構成においては、取付部材26をドアインナパネル11に対して締結したとしても、取付部材26がドアインナパネル11のパネル面に沿ってガタつくことが懸念される。一方、本実施形態によれば、取付部材26において、回動軸81に対して締結部35の反対側の位置において突出部38が設けられているから、ハンドル部83からの力が作用する回動軸81が設けられた部位の両側において、取付部材26とドアインナパネル11をパネル面と直交する方向と、パネル面に沿った方向とで位置合わせすることができる。この結果、より一層好適に、取付部材26とトリムボード23との間でガタつきが生じる事態の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、取付部材26は、締結部35の車両前方かつ上方に位置して、ドアインナパネル11に対して締結される前上締結部36と、締結部35の車両後方かつ上方に位置して、ドアインナパネル11に対して締結される後上締結部37と、を有している。このため、取付部材26を互いに同一直線上に位置しない3点でドアインナパネル11に対して取り付けることができ、取付部材26をドアインナパネル11に対して安定的に取り付けることができる。
また、本実施形態では、取付部材26は、締結部35と前上締結部36との間に、把持可能なドアグリップ用把持部55を有し、ハンドル部83は、ドアグリップ用把持部55の車室外側に配されている。このため、ドアグリップ用把持部55を把持する際に取付部材26に係る荷重についても、締結部35と前上締結部36とで受けることができ、好ましい。また、ハンドル部83とドアグリップ用把持部55に、同時に手を掛けて車両用ドア10を開ける操作を行うことができ、例えば、ハンドル部とドアグリップ用把持部が離れた位置に配されることで、ハンドル部を引く操作と、車両用ドアを車室外に押す動作とを、両手で行うドアトリムに比べて、車両用ドア10を開ける際の操作性がよい。さらに、ハンドル部83を車室内から視認され難い位置に設けることができ、インサイドハンドル装置80を設けることに起因して、ドアトリム20の意匠性が損なわれる事態を抑制することができる。また、ハンドル部83が車室内側に向けて回動可能な態様とされる場合のように、車室内にその回動を許容するための空間を設ける必要がなく、ドアグリップ用把持部55の車室外側において、好適にハンドル部83を配置することができる。さらに、ハンドル部83が配されるドアグリップ用挿入空間53は、車両上方かつ車両後方に向けて開口しているから、車両上方に向けて開口することで、小物入れとしての利用し易いプルハンドル用挿入空間73に比べて、そのような用途で利用されることが少なく、常時にハンドル部83にアクセスし易い構成を実現することができる。
また、本実施形態では、スイッチベース60とインサイドハンドル装置80とプルハンドル70が一の取付部材26に対して設けられているから、これらを一括して取り扱うことができ、例えば、各部をそれぞれトリムボード23に対して設ける場合に比べて、ドアトリム20の組み付け作業性に優れる。具体的には、ドアトリム20は、各種の機能部品を備える一方、それ自体が車両用ドア10の一部を構成する部品であり、車両用ドア10を製造する過程において、機能部品をドアトリム20に対していつ取り付けるかということが問題となる。例えば、インサイドハンドル装置80、プルハンドル70、ドアグリップ50といった、比較的大きな荷重を受けることが想定される機能部品については、ドアインナパネル11に対して締結されることが好ましく、従来、そのような機能部品は、ドアトリム20をドアインナパネル11に対して取り付ける際に、トリムボード23に対してそれぞれ組み付けられることが一般的であった。一方、本実施形態では、ドアトリム20をドアインナパネル11に対して取り付けるより前の段階、例えば、ドアトリム20を出荷する前の段階で、スイッチベース60、インサイドハンドル装置80、プルハンドル70、及びドアグリップ50をトリムボード23に対して取り付けた状態とすることができ、ドアトリム20をドアインナパネル11に対して取り付ける段階での各機能部品の取り付け作業を低減することができる。
さらに、本実施形態では、スイッチベース60とインサイドハンドル装置80とプルハンドル70を一の取付部材26に対して設けることで、一体的な意匠を呈するものとすることができ、ドアトリム20の意匠性を向上することができる。また、取付部材26に設けられた各種機能部品がトリムボード23の開口部24内に集約されることにより、各部が散漫な印象を与え難くなっている。さらに、各種機能部品が集約されることにより、トリムボード23の上部(例えば、一般的にインサイドハンドル装置が配される前上部等)を、従来より車室外側に後退する形で薄型化することができ、すっきりとした意匠を実現可能となっている。
さらに、ドアトリム20において乗員の手が届き易い領域に、スイッチベース60のスイッチ操作部61Aと、インサイドハンドル装置80のハンドル部83と、プルハンドル70のプルハンドル用挿入空間73を位置させることができ、使用性に優れたドアトリム20を提供することができる。さらに、本実施形態では、ドアトリム20において乗員の手が届き易い領域(開口部24内)に、スイッチベース60のスイッチ操作部61Aと、インサイドハンドル装置80と、プルハンドル用挿入空間73を位置させることができ、使用性に優れたドアトリム20を提供することができる。具体的には、ドアトリム20において、乗員の姿勢を大きく変更することなく、手が届く領域は限られているが、取付部材26に設けられた各種機能部品が集約されることにより、機能部品の各々に手が届き易く、また、機能部品間で手を移動してこれらを操作することが容易である。
また、本実施形態では、ドアグリップ50とスイッチベース60とプルハンドル70は、ドアグリップ50の車両後方にプルハンドル70が位置するとともにドアグリップ50及びプルハンドル70の車両上方にスイッチベース60が位置するようにして、取付部材26の周縁部26Aにそれぞれ配されている。このため、一の取付部材26に対して各部をそれぞれ干渉することなく取り付けることができ好適である。また、ドアグリップ50及びプルハンドル70の車両上方にスイッチベース60が位置するから、一般的に車室内に膨出する形をなすドアグリップ50やプルハンドル70によってスイッチ操作部61Aが隠される事態の発生を抑制することができる。これらの結果、使用性に優れたドアトリム20を提供することができる。
また、本実施形態では、スイッチベース60とインサイドハンドル装置80とプルハンドル70は、インサイドハンドル装置80及びプルハンドル70の車両上方にスイッチベース60が位置するようにして、取付部材26の周縁部26Aにそれぞれ配されている。このため、一の取付部材26に対して各部をそれぞれ干渉することなく取り付けることができ好適である。また、プルハンドル70の車両上方にスイッチベース60が位置するから、一般的に車室内に膨出する形をなすプルハンドル70によってスイッチ操作部61Aが隠される事態の発生を抑制することができる。これらの結果、使用性に優れたドアトリム20を提供することができる。
<実施形態2>
次いで、本発明の実施形態2を、図10を参照しつつ説明する。本実施形態では、インサイドハンドル装置180の位置が相違するドアトリム20について例示する。なお、上記した実施形態と同様の構造、作用及び効果については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
インサイドハンドル装置180は、トリム本体部21の中央部において、取付部材26(第1部材30)の車両後側の部分に配されている。そして、インサイドハンドル装置180は、ハンドル部83がプルハンドル用挿入空間73内に位置するとともに、係止部85がプルハンドル用挿入壁部71における車室外側に位置する奥壁51Bに沿ってトリム本体部21の車室外側に延出する形で配されている。ハンドル部83は、プルハンドル用把持部75(把持部の一例)の車室外側に配されている。言い換えれば、ハンドル部83は、プルハンドル用把持部75によって車室内側から覆われている。さらに言い換えれば、ハンドル部83は、例えば、プルハンドル用把持部75に親指を掛けた状態で、他の指をプルハンドル用挿入空間73に挿入して握ることが可能な位置に配されている。また、係止部85は、プルハンドル用挿入壁部71の車両後方において、トリム本体部21とドアインナパネル11との間に配されている。
取付部材26は、ドアインナパネル11に対して締結される締結部135、前上締結部136、及び後上締結部137と、車室外側に向けて突出する突出部138を有している。締結部135は、インサイドハンドル装置180の回動軸81に対して、解除位置P2に至るハンドル部83の回動方向(図10の矢印の方向)とは反対側に位置する。突出部138は、回動軸81に対して締結部135の反対側の位置に設けられている。また、取付部材26は、締結部135の車両前方かつ上方に位置して、ドアインナパネル11に対して締結される前上締結部136と、締結部135の車両後方かつ上方に位置して、ドアインナパネル11に対して締結される後上締結部137と、を有している。なお、本実施形態では、取付部材26は、角部33付近に、ドアインナパネル11に対して締結される角部側締結部139を更に有している。なお、締結部135,136,137及び突出部138は、その配置構成を除いては、実施形態1の締結部35,36,37及び突出部38はと同様の構成とされており、その説明を省略する。
本実施形態では、取付部材26は、締結部135と後上締結部137との間に、把持可能なプルハンドル用把持部175を有し、ハンドル部83は、プルハンドル用把持部75の車室外側に配されている。このため、プルハンドル用把持部75を把持する際に取付部材26に係る荷重についても、締結部135と後上締結部137で受けることができ、好ましい。また、ハンドル部83とプルハンドル用把持部75に、同時に手を掛けて車両用ドア10を開ける操作を行うことができ、例えば、ハンドル部とプルハンドル用把持部が離れた位置に配されることで、ハンドル部を引く操作と、車両用ドアを車室外に押す動作とを、両手で行うドアトリムに比べて、車両用ドア10を開ける際の操作性がよい。さらに、ハンドル部83を車室内から視認され難い位置に設けることができ、インサイドハンドル装置80を設けることに起因して、ドアトリム20の意匠性が損なわれる事態を抑制することができる。また、ハンドル部83が車室内側に向けて回動可能な態様とされる場合のように、車室内にその回動を許容するための空間を設ける必要がなく、プルハンドル用挿入空間73内において、好適にハンドル部83を配置することができる。さらに、ハンドル部83が配されるプルハンドル用挿入空間73は、ドアグリップ用挿入空間53に比べて車両用ドア10を操作する際の荷重が低減されているから、車両用ドア10を開け易い構成を実現することができる。
<実施形態3>
次いで、本発明の実施形態3を、図11ないし図17を参照しつつ説明する。本実施形態では、取付部材の構成が相違するドアトリム220について例示する。なお、上記した実施形態と同様の構造、作用及び効果については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。また、図13及び図14においては、矢印FR及びRRの方向をそれぞれ車両前方(及び後方とし、矢印IN及びOUTの方向をそれぞれ車室内側及び外側とし、矢印UP及びDWの方向をそれぞれ車両上方及び下方として説明する。
取付部材226は、図11及び図12に示すように、第1部材230と、第1部材230の車室外側に配される第2部材240とで構成されている。本実施形態では、第1部材230が、平面視逆三角形状の枠状部材とされるとともに、第2部材240が、第1部材230の枠内から車両前方までの範囲を覆うようにして設けられた板状部材とされるものを例示する。第1部材230と第2部材240とは、第2部材240の車室内側に第1部材230が重なる形で、互いに組み付けられている。なお、第1部材230は、V字状をなす前側枠部と後側枠部とが実施形態1の第1部材30に相当する構成とされており、前側枠部及び後側枠部が加飾パネル28によって更に車室内側から覆われている。この取付部材226は、開口部24を閉塞する形でトリムボード23に取り付けられる。なお、第1部材230と第2部材240とは、その形状を除いては、実施形態1の第1部材30と第2部材40と同様の構成とされており、その説明を省略する。
トリム本体部21には、図12に示すように、その中央部にインサイドハンドル装置80が配されている。このインサイドハンドル装置80は、その係止部85がロック装置13の車両前方かつ下方に位置している(図1参照)。なお、図1においては、ケーブル14を被覆する被覆部材15を省略して示している。また、インサイドハンドル装置80は、ケーブル14の他端部14Bを係止部85まで案内するガイド部88を更に備えている。そして、トリム本体部21には、係止部85より車両上方に位置して、ケーブル14の中間部14Cが車両上方へ変位することを規制可能な規制部90が設けられている。以下、係止部85、ガイド部88、規制部90の構成について順次に説明する。
係止部85は、図13に示すように、車室外側に向けて開口する有底凹状をなし、ケーブル14の他端部14Bが嵌合可能な構成とされている。ケーブル14は、他端部14Bがケーブル14の径より大径な球状とされるとともに、ケーブル14の両端部14A,14B付近を除く大部分が被覆部材15で覆われている。また、被覆部材15は、内部にケーブル14を挿通可能な筒状をなし、取付部材226に設けられた被覆部材固定部39に対して固定されている。そして、ケーブル14は、インサイドハンドル装置80を操作することで、被覆部材15に対してその筒軸方向に移動可能とされている。係止部85には、ケーブル14が挿通可能とされるとともに他端部14Bが挿通不能に形成された切れ込み状の係止部側スリット部86が形成されている。
係止部側スリット部86は、図13に示すように、係止部85における車両下側の位置において、車室内外方向に沿って延びる導入部86Aと、導入部86Aの終端から周方向に沿って反時計回りに車両後方まで延びる回動許容部86Bと、を有している。このような構成により、係止部85は、ケーブル14を係止部側スリット部86における導入部86Aから回動許容部86Bに沿って移動しつつ、内部に他端部14Bを嵌合可能な構成とされている。
ガイド部88は、図13に示すように、係止部85から車室外側に向かって延びる形で、インサイドハンドル装置80と一体的に設けられている。具体的には、ガイド部88は、車室外側に向けて延びる筒状をなし、他端部14Bが内周面88Aに摺接する態様で、他端部14Bを係止部85に向けて案内する構成とされている。このガイド部88には、その車両下側の位置において、他端部14Bを案内する際にケーブル14が挿通される切れ込み状のガイド部側スリット部89が形成されている。
ガイド部側スリット部89は、図13に示すように、係止部側スリット部86の導入部86Aと連通するとともに、車室外側に向かうにつれて拡径するようにして形成されている。このような構成により、ガイド部側スリット部89は、ケーブル14を係止部側スリット部86の導入部86Aに向けて誘い込むことが可能となっている。
ガイド部88は、図14に示すように、車室外側に向かって、少なくともトリム本体部21における係止部85の直上に位置する部位の車室外側の面51B1の位置まで延びる形をなす。本実施形態では、トリム本体部21における係止部85の直上に位置する部位として、内部にハンドル部83が配されたドアグリップ用挿入壁部51の奥壁51Bを例示する。つまり、ガイド部88は、奥壁51Bの車室外側の面51B1の位置まで延びる形をなす。なお、本実施形態では、ドアグリップ用挿入壁部51の奥壁51Bは、プルハンドル用挿入壁部71の奥壁も構成しており、ガイド部88はプルハンドル用挿入壁部71の車両下方に位置している。
規制部90は、図16に示すように、トリム本体部21(その取付部材26)の一部として、樹脂成形によって形成されている。規制部90は、車両前後方向に沿って延びるリブ状をなす横リブ部91と、横リブ部91の車両前端部から車両下方に向かって延びるリブ状をなす縦リブ部92と、で構成されている。言い換えれば、規制部90は、平面視L字状に延設されたリブ91,92とされ、両リブ91,92が車両下方かつ車両後方に向けて開いた姿勢で配されている。
規制部90は、図16及び図17に示すように、ケーブル14と係合する係合面94を有している。本実施形態では、係合面94は、横リブ部91の車両後方に位置する後端面91Aと、縦リブ部92の車両下方に位置する下端面92Aで構成されている。係合面94は、車室外側に向かうにつれてケーブル14から離れる方向に後退する形とされている。具体的には、後端面91Aが、車室外側に向かうにつれて車両前方に後退する形とされるとともに、下端面92Aが車室外側に向かうにつれて車両上方に後退する形とされている。係合面94は、車室外側の端部が丸角状に形成されており、車室外側の端部がケーブル14と干渉したり、ケーブル14の被覆部材15にダメージを与えたりする事態が抑制されている。
規制部90は、図12に示すように、係止部85とロック装置13との間において、係止部85よりロック装置13に近い位置に配されている。詳細には、規制部90は、トリム本体部21における、取付部材226の車両後方かつ上方の角部付近に設けられている。
続いて、ケーブル14をインサイドハンドル装置80に接続するとともに、ドアトリム220をドアインナパネル11に対して取り付ける態様について説明する。
ケーブル14は、インサイドハンドル装置80に接続される前の状態において、ドアインナパネル11の車両後方かつ車両上側の位置から、車室内側かつ車両前方に向けて導出されている(図1参照)。ドアインナパネル11に対するドアトリム220の取り付け作業は、図15に示すように、作業者がドアトリム220を抱えるようにして行われる。作業者は、この姿勢で、ドアトリム220をドアインナパネル11に対向する位置に保持して、ドアトリム220の上方から一方の腕をドアトリム220とドアインナパネル11の間に挿入して、ケーブル14をインサイドハンドル装置80に接続する。
まず、作業者は、図15に示すように、ケーブル14の他端部14B付近を手に持ち、ケーブル14の中間部14Cを規制部90の係合面94に係合させる。なお、図15においては、接続される前のケーブル14の外形を二点鎖線で示し、接続された状態のケーブル14(その被覆部材15)を実線で示す。すると、ケーブル14は、中間部14Cの配索経路が規制部90の係合面94によって2点の位置で規定されることで、その保形性により、他端部14Bが係止部85に向かうような形で成り行きに湾曲した状態となる(図14参照)。言い換えれば、ケーブル14は、規制部90により車両上方への変位が規制され、所定の位置に配された状態となる。つまり、規制部90は、ケーブル14を配索する過程で、これをドアトリム220に対して仮固定する役目を果たす。
次に、作業者は、ドアトリム220の上方から覗き込むようにしてケーブル14を係止部85に係止する。この際、作業者からは、ガイド部88が奥壁51Bの奥方(車両下方)において、図14のように視認され得る。作業者は、ケーブル14を把持して、他端部14Bから下方にケーブル14が延びるような姿勢とし、他端部14Bをガイド部88内に挿入するとともに、ケーブル14をガイド部側スリット部89に挿通する。そして、他端部14Bをガイド部88に沿って摺動させ、係止部85内に嵌合するとともに、ケーブル14を係止部側スリット部86の導入部86Aに挿通する。さらに、他端部14Bが係止部85に嵌合した状態で、これを反時計回りに回動し、ケーブル14を係止部側スリット部86の回動許容部86Bに挿通する。この状態では、他端部14Bが係止部85に対して、車両前後方向かつ上下方向に位置決めされるとともに、車室外側に抜け止めされた状態となっている(図13参照)。そして、被覆部材15を取付部材226の被覆部材固定部39に対して固定する。以上により、ケーブル14のドアトリム220に対する本固定が完了する。なお、図15に示すように、ケーブル14の本固定が完了した後には、ケーブル14と規制部90とは当接しない状態となる。(図15において、二点破線で本固定後の被覆部材15の外形を示す)。
その後、作業者は、ドアトリム220をドアインナパネル11対して押し当てるようにして、クリップ座23Aに係止されたクリップ(不図示)を介してドアトリム220をドアインナパネル11に対して取り付ける。以上により、ドアトリム220のドアインナパネル11への取り付けが完了する。
続いて、本実施形態の作用・効果について説明する。
本実施形態によれば、トリム本体部21にはケーブル14の中間部14Cが車両上方へ変位することを規制可能な規制部90が設けられているから、ケーブル14を他端部14Bが係止部85に向かうように湾曲した姿勢で保持することができ、係止部85がトリム本体部21の上部に配されない場合であっても、ケーブル14と係止部85の位置を整合させ易い。この結果、ドアトリム220をドアインナパネル11に取り付ける際に、作業者がドアトリム220とドアインナパネル11の間において、上方から手を伸ばしてケーブル14を係止部85に係止する場合であっても、例えば、インサイドハンドル装置がトリム本体部の上部に配される場合に比べて作業者の手が届きにくい位置で、ケーブル14を係止する作業の作業性を向上することができる。
また、本実施形態では、規制部90が横リブ部91と縦リブ部92とで構成されるから、横リブ部91の後端面91Aと、縦リブ部92の下端面92Aの2点でケーブル14の姿勢を規定することができ、ケーブル14の姿勢をより一層好適に保持することができる。
また、本実施形態では、係合面94が、車室外側に向かうにつれてケーブル14から離れる方向に後退する形であるから、規制部90とケーブル14との係合が解除され易く、規制部90からケーブル14に不測にテンションが掛かる事態を抑制することができる。
また、本実施形態では、規制部90は、係止部85とロック装置13との間において、係止部85よりロック装置13に近い位置に配されている。このため、ケーブル14における規制部90に係合する部位から他端部14Bまでのケーブル長を十分に確保することができ、これを取り回してとケーブル14を係止部85に係止する作業を行い易い。
また、本実施形態では、インサイドハンドル装置80が係止部85から車室外側に向かって延びる形のガイド部88を備えるから、係止部85がトリム本体部21の上部に配されない場合であっても、ケーブル14の他端部14Bを係止部85に対して車室外側から係止し易い。この結果、ドアトリム220をドアインナパネル11に取り付ける際に、作業者がドアトリム220とドアインナパネル11の間において、上方から手を伸ばしてケーブル14を係止部85に係止する場合であっても、例えば、インサイドハンドル装置がトリム本体部の上部に配される場合に比べて、作業者の手が届きにくい位置でケーブル14を係止する作業の作業性を向上することができる。
また、本実施形態では、ガイド部88は、少なくともトリム本体部21における係止部85の直上に位置する部位、つまり、ドアグリップ用挿入壁部51の奥壁51Bの車室外側の面51B1の位置まで延びる形をなす。このため、ガイド部88が奥壁51Bに隠れる事態の発生を抑制することができ(図14参照)、ドアトリム220の上方から覗き込むようにしてケーブル14を係止部85に係止する作業者がガイド部88を視認し易く、より一層、ケーブル14を係止する作業の作業性を向上することができる。
また、本実施形態では、ガイド部88には、その車両下側の位置にガイド部側スリット部89が形成されている。このため、ケーブル14を他端部14Bから下方に延びる姿勢としてガイド部側スリット部89に挿通することで、トリム本体部21における係止部85の直上の部位とケーブル14との干渉を回避し易く、ケーブル14を係止する作業の作業性を向上することができる。
また、本実施形態において、インサイドハンドル装置80は、ハンドル部83が車両上方に向けて回動することでロック装置13による車両用ドア10のロック状態を解除可能な構成とされている。このような構成では、例えば、車室内側に向けて回動するハンドル部を有するインサイドハンドル装置に比べて、その操作性を考慮して、インサイドハンドル装置80の位置がトリム本体部21の車両下方に位置することが想定される。本実施形態では、このような構成であっても、規制部90でケーブル14の位置を規制することで、ケーブル14を係止する作業の作業性を向上することができる。また、本実施形態では、このような構成であっても、ガイド部88を備えることで、ケーブル14を係止する作業の作業性を向上することができる。
<実施形態4>
次いで、本発明の実施形態4を、図18から図20を参照しつつ説明する。本実施形態では、インサイドハンドル装置の構成が相違するドアトリムについて例示する。なお、上記した実施形態と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
ドアトリム320は、図18に示すように、実施形態1のドアグリップ50に替えて、トリムボード23の車室内側の面から膨出した形をなす膨出部357を備えている。膨出部357は、取付部材26で構成されており、実施形態1のドアグリップ50のドアグリップ用挿入空間53の開口が閉塞された形をなしている。膨出部357の上面357Aは、全体的には車両前方に向かうにつれて車両上方に傾斜する、フラット状の傾斜面とされている。そして、膨出部357の上面357Aには、インサイドハンドル装置380が配設される凹部357Bが設けられている(図19参照)。
インサイドハンドル装置380は、図19に示すように、車室内外方向に沿って延びる形で取付部材26に設けられた回動軸81と、回動軸81から車両前方に向けて延出した方形平板状のハンドル部383と、回動軸81から車両後方に向けて延出して、ケーブル14の他端部14Bが係止される係止部(不図示)と、を備えている。インサイドハンドル装置380は、ハンドル部383、回動軸81、及び係止部がそれぞれ力点、支点、及び作用点とされる第1種てこのような態様となっている。
回動軸81は、凹部257B内に設けられ、取付部材26に対して移動不能に固定されている。そして、回動軸81は、ハンドル部383に対して一体的に設けられたブロック状の回動軸挿通部81A内に挿通されている。
ハンドル部383は、待機位置P1と、待機位置P1から回動軸81を中心として車両上方に向けて回動することで、ロック装置13による車両用ドア10のロック状態を解除可能な解除位置P2と、の間で回動可能な構成とされている。なお、ハンドル部383は、解除位置P2から待機位置P1に復帰可能なように、トーションバネ等の弾性部材によって車両下方に付勢されている。
インサイドハンドル装置380は、図18に示すように、トリム本体部21の中央部において、取付部材26における膨出部357の上面357Aにハンドル部383と回動軸挿通部81Aが露出する形で配されている。インサイドハンドル装置380は、その待機位置P1において、ハンドル部383及び回動軸挿通部81Aの上面が、膨出部357の上面357Aと面一状をなしている。また、インサイドハンドル装置380は、凹部257B内において、ハンドル部383の車両前方に手指を挿入可能な空間を有する形で配されている。そして、インサイドハンドル装置380は、膨出部357の車室内側の面に親指を掛けた状態で、他の指をハンドル部383に掛けて車両上方に引き起こすことが可能な位置に配されている。つまり、ドアトリム320は、膨出部357の車室内側の面と凹部357Bとの間を把持するような形で、当該部分を把持部としてドアグリップ或いはプルハンドルのように機能させることができるとも言える。このような構成により、本実施形態では、ハンドル部383と膨出部357に、同時に手を掛けて車両用ドア10を開ける操作を行うことができ、ハンドル部を引く操作と、車両用ドアを車室外に押す動作とを、両手で行うドアトリムに比べて、車両用ドア10を開ける際の操作性がよい。
〔実施形態4の変形例1〕
実施形態4の変形例1について図20を用いて説明する。ここでは、ハンドル部の形状を変更したものを例示する。
ハンドル部383−1は、実施形態4の方形平板状のハンドル部383において、その車両前端部を車室外側に向かうにつれて車両後方に後退する形に切り欠いたようになっている。このような構成により、ハンドル部383−1は、その車両前端部が、親指を膨出部357の車室内側の面にかけた状態における4指の並び形状に倣った形とされ、ハンドル部383−1を4指のうち複数の指でもって操作し易くなっている。ハンドル部383−1におけるその他の構成は、実施形態4のハンドル部383と同様とされており、詳細な説明を省略する。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、第1部材と第2部材を組み付けることで、取付部材を構成するものを例示したが、取付部材の態様はこれに限られない。例えば、取付部材は、一体的に形成された一部材からなっていてもよい。また、第1部材と第2部材の構成も、本発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
(2)上記実施形態以外にも、取付部材に対してドアグリップ、スイッチベース、プルハンドル、インサイドハンドル装置を設ける態様は適宜変更可能である。例えば、ドアグリップやプルハンドルは、取付部材に対して別体的に設けられたものを取付部材に対して取り付けるようにして設けてもよい。
(3)上記実施形態では、取付部材がトリムボードに対して熱カシメによって取り付けられる構成を例示したが、取付部材をトリムボードに対して締結する手段はこれに限られない。そのような締結する手段として、取付部材に形成された取付ボスにネジ止めする手段等を採用してもよい。
(4)上記実施形態以外にも、取付部材、ドアグリップ、スイッチベース、プルハンドル、インサイドハンドル装置の構成、配置は適宜変更可能である。例えば、ドアグリップは、外周を取り囲む形で把持可能なように柱状に構成されていてもよい。また、スイッチベースは、さらに、サイドミラーを操作するためのスイッチ操作部等を備えていてもよく、また、取付部材(第2部材)の上端部全域ではなく、上端部の一部を覆う形で設けられていてもよい。また、インサイドハンドル装置は、ハンドル部の回動方向を、車両上方以外にも適宜設定可能であり、また、回動軸を車室内外方向に対してやや傾斜して延びる形としてもよい。
(5)上記実施形態では、運転席の側方に設けられたドアトリムについて例示したが、後部座席の側方に設けられたドアトリム等にも、本発明を適用可能である。
(6)上記実施形態以外にも、締結部、前上締結部、後上締結部がドアインナパネルに対して締結される締結手段は適宜設定可能である。例えば、締結手段は、ネジをドアインナパネルに設けられたナットに螺合する手段等であってもよい。
(7)上記実施形態1及び実施形態2では、取付部材が突出部を有する構成を例示したが、取付部材は突出部を有しない構成であってもよい。
(8)上記実施形態以外にも、規制部の構成、配置は適宜変更可能である。例えば、規制部は、ボス状をなしていてもよく、また、2本以上のリブを適宜配設した構成であってもよい。また、規制部は、トリム本体部のうち、トリムボードの一部として成形されていてもよい。
(9)上記実施形態では、規制部は、ケーブルの本固定が完了した後に、ケーブルとの係合が解除されるものを例示したが、これに限られない。例えば、規制部は、本固定後においてもケーブルと係合するものであってもよく、また、側突時等において外力が作用した場合にのみ係合が解除されるものであってもよい。
(10)上記実施形態以外にも、ガイド部の構成は適宜変更可能である。例えば、ガイド部がトリム本体部における係止部の直上に位置する部位から十分に離間して配されている場合には、ガイド部は当該部位の車室外側の面の位置まで延びていなくてもよい。また、トリム本体部における係止部の直上に位置する部位は、ドアグリップ用挿入壁部の奥壁に限られない。
(11)上記実施形態3以外にも、ガイド部及び係止部の構成は適宜変更可能である。例えば、ガイド部は、片状をなすものであってもよい。また、ガイド部側スリット部及び係止部側スリット部が形成される位置も適宜設定可能である。
(12)上記実施形態以外にも、実施形態1又は実施形態2の構成と実施形態3の構成とを適宜組み合わせた構成であってもよい。