以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の建築部材は、例えば、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設などの建築物、客船、輸送船、連絡船などの船舶などの構造物の開口部に設置されるものである。建築部材としては、例えば、サッシや扉などを例示することができる。サッシは、構造物の開口部に固定される窓枠や扉枠などの開口枠体の他、窓や扉などの建具の外周縁部を補強する外周枠体も、サッシとして含まれる。なお、サッシが外周枠体の場合には、窓や扉などの建具自体が板材となり、防火サッシが開口枠体の場合には、窓や扉などの建具に外周枠体が固定されたもの(枠体も含めた建具)が板材となる。
図1は、本発明の一実施形態としての引き違い窓の正面図を示し、図2は図1のA−A線に沿う要部の断面図を示している。この例では、建築部材が防火サッシであり、防火サッシとして、建築物の矩形状の開口部に固定される開口枠体1に加え、窓や扉などの建具3の外周縁部を補強する外周枠体2が示されている。本実施形態では、2枚の建具3が、開口枠体1にスライド可能に取り付けられ、外周枠体2の中央側の縦框材22,21が前後に重なって召し合わせ部となっている。
開口枠体1は、平面視矩形状であり、左右の縦枠材10,11と、上下の横枠材12,13とにより構成され、各枠材10〜13に囲まれた内部が開口部となっている。左右の縦枠材10,11及び上下の横枠材12,13が、開口枠体1の4つの辺を形成している。開口枠体1の材質は、ポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂などの合成樹脂製の他、アルミニウム、ステンレス、鋼、合金などの金属製、アルミニウム及び合成樹脂の複合製などを挙げることができ、その材質は限定されるものではない。
開口枠体1を構成する各枠材10〜13は、建具3が突き当たる長尺の本体部15の両端から一対の側壁部16が突き出る断面視コ字形状であり、本体部15の幅は、2つの建具3を並列配置できる大きさに形成されている。本体部15内には、長手方向に延びる2つの中空部14Aが仕切られた状態で設けられている。また、側壁部16内にも、長手方向に延びる中空部14Bが設けられている。なお、横枠材12,13の図示を省略しているが、縦枠材10,11と同様の形状である。また、開口枠体1の構成は、特に限定されるものではなく、開口枠体1を構成する上下左右の各枠材10〜13が、長手方向に沿って延びる中空部であって、長手方向と直交する横断面において1つ又は複数の中空部を有するものであれば、周知のいずれの形態であってもよい。
外周枠体2は、平面視矩形状であり、左右の縦框材20,21と、上下の横框材22,23とにより構成されている。左右の縦框材20,21及び上下の横框材22,23が、外周枠体2の4つの辺を形成している。外周枠体2の材質は、ポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂などの合成樹脂製の他、アルミニウム、ステンレス、鋼、合金などの金属製、アルミニウム及び合成樹脂の複合製などを挙げることができ、その材質が限定されるものではない。
外周枠体2を構成する各框材20〜23も長尺であり、長手方向に延びる中空部14Cを有している。なお、中空部14Cは、複数の中空部に区分けされていてもよい。建具3は、各框材20〜23の段差部に位置しており、ゴムシール材やシーリング材24で固定されている。なお、横框材22,23の図示を省略しているが、縦框材20,21と同様の形状である。また、外周枠体2の構成は、特に限定されるものではなく、外周枠体2を構成する上下左右の各框材20〜23が、長手方向に沿って延びる中空部であって、長手方向と直交する横断面において1つ又は複数の中空部を有するものであれば、周知のいずれの形態であってもよい。
上述した開口枠体1の各枠材10〜13及び外周枠体2の各框材20〜23は、例えば押出成形や射出成形などによって成形することができる。
建具3は、開口枠体1の開口部を閉塞するものであり、外周縁部に外周枠体2が固定されている。建具3は、窓や扉などを例示することができるが、ガラス、石膏、セラミック、セメント、ケイ酸カルシウム、パーライト、アルミニウム、ステンレス、鋼、合金、合成樹脂など、任意の材料から形成されていてよい。
開口枠体1を構成する各枠材10〜13の中空部14A,14B及び/又は外周枠体2を構成する各框材20〜23の中空部14Cには、長手方向に沿って、金属製の補強材4が挿入されている。補強材4は、中空部14A,14B,14Cに大きな空間を有した状態で挿入される。
補強材4は、中空部14A,14B,14Cの一部又は全部に挿入される。補強材4は、中空部14,14B,14Cの形状及び寸法に合ったものをそのまま中空部14,14B,14Cに挿入するだけでもよいし、粘着テープなどを用いて中空部14,14B,14Cの内面(中空部14A,14B,14Cを画定する各部材10〜13,20〜23の壁面)に貼り付けてもよい。補強材4の形状は、中空部14A,14B,14Cに挿入可能であれば特に限定されず、例えば平板型、2枚の平板を直角に連ねたL字型、3枚の平板を直角に連ねたコ字型、4枚の平板を筒状に連ねた角パイプ型の他、山型、T型など、種々の形状が挙げられる。また、補強材4の材質としては、特に限定されず、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金などが挙げられる。
補強材4の表面には、直に熱膨張性樹脂組成物層5が形成されている。なお、「直に」とは、補強材4の表面に、粘着テープや粘着剤、接着剤などが用いられることなく、熱膨張性樹脂組成物層5が積層されていることを指す。
熱膨張性組成物層5の寸法、すなわち長さ、幅、厚みは、特に限定されず、補強材4の寸法に応じて適宜設定される。熱膨張性樹脂組成物層5は、補強材4の表面において、その全部に形成されている必要はなく、一部にだけ形成されていてもよい。つまり、例えば図2に示すように、補強材4がコ字型の場合には、3枚の平板のうち、1枚、2枚又は全ての平板の表面に形成されていてもよい。また、例えば、図3に示すように、補強材4が角パイプ字型の場合には、4枚の平板のうち、1枚、複数枚又は全ての平板の表面に形成されていてもよい。なお、熱膨張性樹脂組成物層5は、補強材4の室内又は室外に向く面(建具3と平行な面)に形成されることが好ましい。また、熱膨張性樹脂組成物層5は、補強材4を構成する各平板において、平板の表面の全部に形成されている必要はなく、平板の表面の一部(一箇所及び複数箇所を含む)にだけ形成されていてもよい。また、熱膨張性樹脂組成物層5は、補強材4の中空部14A,14B,14Cの内面(中空部14A,14B,14Cを画定する各部材10〜13,20〜23の壁面)と対向する側の面に形成されることが好ましい。
上述した熱膨張性樹脂組成物層5が積層された補強材4が、開口枠体1を構成する各枠材10〜13の中空部14A,14B及び/又は外周枠体2を構成する各框材20〜23の中空部14Cに挿入されていると、火災などにより防火サッシが加熱され、その一部が焼失しても、熱膨張性樹脂組成物層5が熱膨張し、防火サッシが燃焼して焼失した部分を埋めるので、火炎が侵入するのを防止することができる。また、補強材4によっても、火炎の侵入を防止することができるので、良好な防火性能を発揮できる。加えて、熱膨張性樹脂組成物層5の厚さを減少させても、防火性能を確保できるので、コストダウンを達成することができるうえ、軽量化を図ることができる。
次に、上記した熱膨張性樹脂組成物層5を形成する熱膨張性樹脂組成物について説明する。熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分に、熱膨張性層状無機物と無機充填剤とを含有させたものである。
樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレンなどの合成樹脂類が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミドなどが挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどのゴム物質などが挙げられる。
これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質の中でも、柔軟でゴム的性質を持っているものが好ましい。このような性質を持つものは無機充填剤を高充填することが可能であり、得られる熱膨張性樹脂組成物が柔軟で扱い易いものとなる。より柔軟で扱い易い熱膨張性樹脂組成物を得るためには、ブチルなどの非加硫ゴムやポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。さらに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
次に、熱膨張性層状無機物は、加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張性層状無機物は特に限定されるものではなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛などを挙げることができる。熱膨張性黒鉛は、従来から公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイトなどの粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸などの無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素などの強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、さらにアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などで中和したものを使用するのが好ましい。
熱膨張性黒鉛の粒度は、20メッシュ〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、十分な膨張断熱層が得られず、また粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、樹脂に配合する際に分散性が悪くなり、物性が低下する。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」などが挙げられる。
次に、無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させるものである。かかる無機充填剤としては特に限定されるものではなく、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類などの金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイトなどの含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの金属炭酸塩などが挙げられる。
また、無機充填剤としては、上記した他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウムなどのカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥などが挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
無機充填剤の粒径としては、0.5μm〜100μmが好ましく、より好ましくは1μm〜50μmであるが、特に限定されるものではない。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm未満になると二次凝集が起こり、分散性が悪くなる。粒径が100μmを超えると、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下する。
なお、無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)などが挙げられる。
さらに、熱膨張性樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させて防火性能を向上させるために、上述した各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどの各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウムなどのリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記化学式(1)で表される化合物などが挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コストなどの点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
化学式(1)中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しないなどの安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたものなどが好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられるが、取り扱い性などの点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」などが挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸などが挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、さらにフェノール系、アミン系、イオウ系などの酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料などが添加されてもよい。また、一般的な難燃剤を添加してもよく、難燃剤による燃焼抑制効果により防火性能を向上させることができる。
熱膨張樹脂組成物は、熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂などの樹脂成分100重量部に対し、熱膨張性層状無機物を10〜350重量部及び無機充填材を5〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、熱膨張性層状無機物及び無機充填剤の合計は、樹脂成分100重量部に対し、25重量部〜600重量部の範囲が好ましい。
かかる熱膨張性樹脂組成物は、加熱によって膨張して耐火性の膨張断熱層を形成する。この配合によれば、熱膨張性樹脂組成物層は火災などの加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有するとともに所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性層状無機物及び無機充填材の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
さらに、熱膨張性樹脂組成物は、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系などの酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材などの添加剤、ポリブテン、石油樹脂などの粘着付与剤を含むことができる。
上記した熱膨張性樹脂組成物の各成分を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機、ディスパーなど公知の装置を用いて混練することにより、熱膨張性樹脂組成物を得ることができる。
熱膨張性樹脂組成物は、火災時などの高温にさらされた際に、その膨張断熱層により断熱し、かつその膨張断熱層の強度があるものであれば特に限定されないが、好ましくは、50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3倍〜50倍の範囲であり、より好ましくは、体積膨張率が5倍〜40倍の範囲であり、さらに好ましくは8倍〜35倍の範囲である。
熱膨張性樹脂組成物層5は、例えば、パテ状の2液熱硬化性樹脂組成物(パテ材)を用い、このパテ材を補強材4の所望の表面に塗布し、硬化させて補強材4と一体化することで、補強材4の表面に直に形成することができる。
パテ材は、熱硬化性樹脂に膨張性黒鉛及び無機充填剤を少なくとも配合してなる樹脂組成物を用いることができ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂を好適に用いることができる。
エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ基を持つモノマーと硬化剤とを反応させて得られる樹脂を挙げることができる。エポキシ基を持つモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型として、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型などのモノマーが挙げられる。
また、グリシジルエステル型として、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型などのモノマーが挙げられる。
さらに多官能のグリシジルエーテル型として、フェノールノボラック型、オルトクレゾール型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン、フェノール型などのモノマーが挙げられる。
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
また、硬化剤としては、例えば、重付加型硬化剤、触媒型硬化剤などを挙げることができる。重付加型硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタンなどを挙げることができる。触媒型硬化剤としては、例えば、三級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸錯体などを挙げることができる。これらエポキシ樹脂の硬化方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
また、熱膨張性樹脂組成物層5は、例えば、熱可塑性樹脂をバインダーとして熱膨張性黒鉛及び無機充填剤を少なくとも配合してなる樹脂組成物を、溶融して液状とした後、所定の金型を用いた射出成形により補強材4の所望の表面に供給し、これを固化して補強材4と一体化することで、補強材4の所望の表面に直に形成することができる。
上述した防火サッシ(開口枠体1や外周枠体2)では、防火サッシを構成する部材の中空部14A〜14Cに熱膨張性樹脂組成物層5を有する補強材4が挿入されていることにより、防火仕様でない一般の防火サッシに簡便に防火性能を付与することができる。よって、防火地域などで使用することができる。また、防火サッシを構成する部材の中空部内に熱膨張性耐火材のみを挿入する場合と比べて、防火サッシの軽量化及び低コスト化を図ることができる。また、補強材5に熱膨張性樹脂組成物層5を、パテ状の2液熱硬化性樹脂組成物を塗布したり、熱可塑性樹脂組成物を射出成形により供給したりすることで、直に形成しているので、シート状の熱膨張性耐火材を粘着テープなどを用いて補強材5に貼り付ける場合と比べて、正確に熱膨張性樹脂組成物層5を補強材4に形成することができるので、防火サッシに確実な防火性能を具備させることができるうえ、低コスト化を図ることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、防火サッシの例として、引き違い窓の例を示したが、これに限られるものでなく、上下移動式のガラス戸、はめ殺しのガラス戸や金属製の扉、回転式の開閉戸とはめ殺し戸、スライド式扉など、適宜のものに適用することができる。
また、防火サッシを構成する部材には、補強材4だけ挿入されている中空部が存在していてもよいし、熱膨張性耐火材だけが挿入されている中空部が存在してもよいし、何も挿入されていない中空部が存在していてもよい。
また、上記実施形態では、建築部材として防火サッシを例に挙げて説明したが、建築部材の他の例として例えば防火扉を挙げることができる。図4は、本発明の他の実施形態としての防火扉の正面図を示し、図5は図4のB−B線に沿う断面図を示している。また、図6は表面材の正面図を、図7は補強材の正面図を、図8は防火扉6の要部の分解図を、それぞれ示している。
防火扉6は、住宅などの構造物の出入口に形成された開口部にヒンジなどにより開閉可能に固定されるものであって、例えば、矩形状の鋼製又はアルミニウム製の枠材(上下の端面材(図示せず)及び左右の側面材60,61)の表裏面に一対の鋼製又はアルミニウム製の化粧材(表面材62及び背面材63)が貼り合わされている。そして、一対の表面材62及び背面材63の間に形成される中空部65に、長手方向に沿って金属製の補強材4が挿入されている。また、一対の表面材62及び背面材63の間には断熱材64が設けられている。なお、防火扉6の構造は、内部に中空部を有していれば特に限定されるものではない。
表面材62及び背面材63には、鍵シリンダー7及び取っ手8を取り付けるための取付孔65,66がそれぞれ形成されている。図示例では、鍵シリンダー7用の取付孔65及び取っ手8用の取付孔66がそれぞれ2つずつ形成されている。なお、貫通孔65,66の数は、鍵シリンダー7の数及び取っ手8の形状により適宜変更できる。鍵シリンダー7は、取付孔65を通って防火扉6の外側に露出している。また、取っ手8は、連結部80が取付孔66を通って防火扉6の外側に露出しており、防火扉6の外側で持ち手部81が各連結部80に連結されている。なお、鍵シリンダー7の本体(図示せず)及び取っ手8の本体(図示せず)は、表面材62及び背面材63の間の中空部に内蔵される。
補強材4は、粘着テープや接着剤などを用いて中空部65の内面(中空部65を画定する表面材62及び背面材63の内側面)に貼り付けられる。補強材4の形状は、中空部65に挿入可能であり、かつ、表面材62に対向配置される第1平板部42及び背面材63に対向配置される第2平板部43を有していれば、特に限定されず、3枚の平板を直角に連ねたコ字型、4枚の平板を筒状に連ねた角パイプ型などとすることができる。また、補強材4の材質としては、特に限定されず、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金などが挙げられる。なお、補強材4は、表面材62及び背面材63に接している必要はなく、間に断熱材などを挟んでいてもよい。
補強材4の第1平板部42及び第2平板部43には、幅方向の中央に、各取付孔65,66に対向するようにして、貫通孔40,41が形成されている。貫通孔40は鍵シリンダー7を、貫通孔41は取っ手8の連結部80を、それぞれ挿通可能な大きさに形成されており、補強材4の第1平板部42及び第2平板部43の間に鍵シリンダー7の本体(図示せず)及び取っ手8の本体(図示せず)が内蔵されている。
補強材4の第1平板部42及び第2平板部43の外側面及び内側面には、直に熱膨張性樹脂組成物層5が形成されている。なお、「直に」とは、補強材4の表面に、粘着テープや粘着剤、接着剤などが用いられることなく、熱膨張性樹脂組成物層5が積層されていることを指す。
熱膨張性樹脂組成物層5は、例えば図5及び図8に示すように、第1平板部42及び第2平板部43の幅方向の左右の側縁に長手方向に沿って延びるようにして設けることができる。この場合、各貫通孔40,41は、一対の熱膨張性樹脂組成物層5で挟まれる。熱膨張性樹脂組成物層5の幅方向の長さ(横幅)としては、特に限定されるものではない。
なお、各貫通孔40,41の左右に設けられる熱膨張性樹脂組成物層5は、第1平板部42及び第2平板部43を長手方向に連続的に延びていてもよいし、断続的に延びる、すなわち、第1平板部42及び第2平板部43の長手方向に沿って間隔をあけて複数設けられていてもよい。なお、この場合、各貫通孔40,41の近傍、すなわち、各貫通孔40,41の長手方向の長さ(縦幅)を十分にカバーできる程度にだけ熱膨張性樹脂組成物層5が設けられていてもよい。
また、熱膨張性樹脂組成物層5を、第1平板部42及び第2平板部43の長手方向においても、各貫通孔40,41を挟むようにして設けてもよい。つまり、各貫通孔40,41を囲むようにして熱膨張性樹脂組成物層5を設けることができる。
なお、図示例では、熱膨張性樹脂組成物層5が第1平板部42及び第2平板部43の内側面及び外側面に設けられているが、第1平板部42及び第2平板部43の内側面及び外側面の少なくとも一方だけに設けられていてもよい。
熱膨張性樹脂組成物層5は、上記実施形態と同様に、パテ状の2液熱硬化性樹脂組成物(パテ材)を用い、このパテ材を補強材4の所望の表面に塗布し、硬化させて補強材4と一体化することで、補強材4の表面に直に形成することができる。
また、熱膨張性樹脂組成物層5は、熱可塑性樹脂をバインダーとして熱膨張性黒鉛及び無機充填剤を少なくとも配合してなる樹脂組成物を、溶融して液状とした後、所定の金型を用いた射出成形により補強材4の所望の表面に供給し、これを固化して補強材4と一体化することで、補強材4の所望の表面に直に形成することができる。
上述した防火扉6では、中空部65に熱膨張性樹脂組成物層5を有する補強材4が挿入されていることにより、防火仕様でない一般の防火扉に簡便に防火性能を付与することができる。つまりは、火災などにより防火扉6が加熱されると、熱膨張性樹脂組成物層5が熱膨張して、各貫通孔40,41や各取付孔65,66を埋めるので、中空部65に火炎が侵入するのを防止することができる。また、中空部65も熱膨張した熱膨張性樹脂組成物層5により埋められるので、火炎の延焼を防止することができるので、良好な防火性能を発揮できる。加えて、上記実施形態と同様に、防火扉6のコストダウンを達成することができるうえ、軽量化を図ることができる。