図1は、引戸式開口部装置1の全体構成について示す図である。引戸式開口部装置1は、開口部枠10と、引戸本体20を有している。開口部枠10は、建物開口部に設置されるものであり、上枠(開口部上枠)11と、下枠(開口部下枠)12と、縦枠(戸先側開口部縦枠)13,縦枠14とから矩形状に組んで構成される。
開口部枠10内には、引戸本体20と袖面材30が納められている。引戸本体20を袖面材30に重ねるようにスライド移動させることで、人の出入を可能とする開口が形成される。
引戸本体20の戸先側には、ハンドル90(引手)が配置される。引戸本体20の戸尻側は、引戸本体20が閉じられた状態で、方立(戸先側開口部縦枠)40と合わさる状態となる(召し合せられる)。
引戸本体20の上部は上枠11内に配置される吊車によって吊設されている。引戸本体20の下部は下枠12に設けたガイド部によってガイドされる。なお、本実施例では吊車により引戸本体が吊り下げられる吊タイプの引戸式開口部装置とするが、この実施例に限定されるものではなく、本発明は、戸車により引戸本体の荷重を支える構成とする引戸式開口部装置にも適用することができる。
図2は、図1のA−A線における引戸式開口部装置1の縦断面図である。図2において、引戸本体20の左側の空間を室外側Mとし、右側の空間を室内側Nとし、引戸本体20を閉じることによって室内外の二つの空間に区画される。なお、本明細書中における室外側、室内側の用語は位置関係の説明の便宜のために用いるものであり、実際の実施形態における室内側、室外側の配置を限定するものではない。また、各種枠材の素材については、特に明記されるもの以外については、アルミ押出材やステンレス鋼材などの金属部材にて構成することができる。
図2に示すごとく、引戸本体20の上框21と下框22の間は断熱面材27で構成されており、断熱仕様の引戸として構成されている。
引戸式開口部装置1の上枠11には、無目カバー11aが開閉可能に設けられており、無目カバー11aで閉じられる空間内には、断面視略L字状の上レール15が付設されている。上レール15には、引戸本体20の吊車25が回転可能に配設される。
吊車25は、引戸本体20の上框21に対し連結部材25aにて連結されており、吊車25を介して引戸本体20が上レール15に吊設されている。
引戸本体20の下枠(下辺部)22には、下側が開口される略コ字状の被ガイド部22aが形成されており、この被ガイド部22aが引戸式開口部装置1の下枠12に設けた突条形状のガイド部12aによってガイドされるようになっている。
引戸式開口部装置1の上枠11の下部には、第二上枠11b(アタッチメント枠)が付設されており、第二上枠11bの下部には、鴨居の部位を形成することになる天面カバー11cが付設されている。
天面カバー11cの上下位置は、無目カバー11aの下端部位置と略同一であり、天面カバー11cと無目カバー11aの間の隙間に引戸本体20の上框21(上辺部)が入り込む位置関係となっている。
また、引戸式開口部装置1には、火災時において、引戸本体20にて分離された一方の空間から他方の空間への煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防ぐための防火構造が設けられている。
詳しくは後述するように、引戸本体20の上框21と、引戸式開口部装置1の上枠11との間の部位には上部防火構造51が設けられている。引戸本体20の下框22と、引戸式開口部装置1の下枠12との間の部位には下部防火構造52が設けられている。
図3は、図1のB−B線における引戸式開口部装置1の水平断面図である。図3において、引戸本体20の下側の空間を室外側Mとし、上側の空間を室内側Nとし、この二つの空間が引戸本体20を閉じることによって分離される。引戸本体20の戸先框23と戸尻框24の間は断熱面材27で構成されており、断熱仕様の引戸として構成されている。また、戸先框23は、引戸本体20の戸先部を構成し、戸尻框24は、引戸本体20の戸尻部を構成している。
引戸本体20の戸先側の戸先框23の端面部材23xは、開口部枠の縦枠(戸先側開口部縦枠)13の見込面部(縦面)13bに当接される。引戸本体20が閉じられた状態では、端面部材23xの一部は、縦枠13に飲み込まれるようにして納められる。また、引戸本体20の戸先框23の室内側面、室外側面には、ハンドル90がそれぞれ配置される。
引戸本体20が閉じられた状態において、引戸本体20の戸尻側の戸尻框24は、方立(戸尻側開口部縦枠)40と召し合せられる。戸尻框24(召し合せ枠28)と方立40には、それぞれ煙返し部28k,40kが設けられ、召し合せ部での気密性が確保される。
また、引戸式開口部装置1には、火災時において、引戸本体20にて分離された一方の空間から他方の空間への煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防ぐための防火構造が設けられている。
詳しくは後述するように、引戸本体20の戸先側の縦枠13と、引戸式開口部装置1の縦枠13との間の部位には戸先側防火構造53が設けられている。引戸本体20の戸尻框24と、方立40との間の部位には戸尻側防火構造54が設けられている。
次に、図4に示すごとく、引戸本体20の戸先側の戸先框23の部位について説明する。
戸先框23は、受け部23a,23b、接続部23c,23dを有する断面視矩形状の長尺部材にて構成されており、本実施例では、中空部23mを有するアルミ押出形材(ホロー形材)にて構成されている。
戸先框23の受け部23a,23bには、引戸本体20の面材(面材シート20m)が貼設されるとともに、その面材の外側から受け部23a,23bに対してハンドル90の基端部が付設される。戸先框23の接続部23cには、戸先框23の長手方向と同一方向に長い端面部材23xが付設されており、端面部材23xの一部の部位が引戸式開口部装置1の縦枠13に形設された縦溝部13xに飲み込まれる。縦溝部13xには、端面部材23xと接触し得る樹脂製のパッキン材13v,13wが設けられている。
引戸式開口部装置1の縦枠13において、端面部材23xと対向する見込面部13cには、耐火部材53aが設けられる。この耐火部材53aは、市販品を用いることができ特に限定されるものではないが、例えば、積水化学工業株式会社製の商品名「フィブロック」(登録商標)といった、有機系耐火材を使用することができる。このような耐火材は、通称、「加熱発泡材」として知られるものであり、通常の状態では柔軟な薄いシート状で、200℃以上に加熱されると発泡して厚さ方向に5〜40倍に膨張し、断熱層を形成するため、本発明の実施に好適である。また、火災時の焼失や、有害ガス発生もないといった利点もある。また、貼着で設置することやリベット留めが可能なため、特に、長尺部材に対する施工においては、施工性にも優れたものとなる。
以上のようにして、引戸本体20の戸先側の戸先框23と、引戸式開口部装置1の縦枠13との間に耐火部材53aが配設される。これにより、火災時に引戸本体20の戸先框23や、引戸式開口部装置1の縦枠13が熱による伸びなどで変形しても、戸先框23と縦枠13の間の隙間を耐火部材53aによって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、図4に示すごとく、引戸本体20の戸先框23の接続部23dと対向する位置に、断面略コ字状の縦枠材32が一体的に設けられる。縦枠材32は、互いに対向する受け部32a,32bと、接続部32cとを有して構成され、接続部32cが接続部23dと対向して配置されている。
そして、縦枠材32の受け部32a,32bの外側面にも耐火部材53d,53dが設けられ、火災時には、耐火部材53dによって縦枠材32と戸先框23の間の隙間を埋めることができる。
このように、戸先框23に縦枠材32が付設される際において、当該縦枠材32についても耐火部材53dを設けることで、戸先框23の周辺における隙間の発生を効果的に防止でき、防火性能を高めることができる。
また、図4乃至図6に示すごとく、引戸本体20の戸先側の戸先框23において、内部の中空部23mには、戸先框23の内部に耐火部材53b,53cを配設するための不燃材26が配置される。不燃材26は、その見込面部26dを戸先框23の接続部23dにビス留めなどにより固定することができる。
本実施例の不燃材26は、断面視略コ字状の長尺の枠材にて構成され、特に強度を確保することを目的とするものでなく、スチール製の薄板を板金加工したもので構成されている。後述する欠損部26kは、板金加工(折り曲げ加工)の前に、プレス打ち抜きなどにより形成することができる。なお、内装部材26を補強目的も含めて設置する場合には、より肉厚の構造部材を用いることとしてもよい。
また、図5及び図6に示すごとく、不燃材26が挿入される引戸本体20の戸先框23には、欠損部23kが複数箇所に形成されている。この欠損部23kは、ハンドル90や箱錠92,92などの各種機能部材を取付ける部位に形成されるものであり、プレス打ち抜きなどにより形成することができる。
図5の例では、ハンドル90については、戸先框23の受け部23a,23bを両側から挟みこむように設置され、欠損部23kを通じて互いに連結される。箱錠92については、戸先框23の接続部23c(図6参照)に形設された欠損部23kから挿入され、戸先框23の受け部23aの欠損部23k内に鍵穴が現れるように配置される。なお、戸先框23の接続部23c(図6参照)に形設された欠損部23kは、例えば、デッドボルトやラッチボルトを挿通させる貫通穴としても機能するものである。
そして、不燃材26の対向部26a,26bには、戸先框23に設けた欠損部23kに対応する位置に、欠損部26kが形成されている。このように、戸先框23の欠損部23kに加え、不燃材26にも欠損部26kが形成されることで、ハンドル90や箱錠92などの各種部材を設置する際に必要な開口部分を確保できる。
なお、戸先框23における、欠損部23kの配置や形状については、対向し合う受け部23a,23bにおいて同一であってもよく、異なるものであってもよい。同様に、不燃材26における、欠損部26kの配置や形状については、対向し合う対向部26a,26bにおいて同一であってもよく、異なるものであってもよい。
また、不燃材26は、断面視略コ字状に構成されており、戸先框23の一方の接続部23c側が開放されるように配置される。これにより、戸先框23の接続部23cに形成された欠損部23kを通じて戸先框23(不燃材26)の内部へと各種部材(例えば箱錠92)を挿入することができる。
そして、不燃材26の対向部26a,26bの外側面(戸先框23の内面に対向する側の面)において、欠損部26kの周囲には、それぞれ、耐火部材53bが配設される。
これにより、火災時においては、戸先框23の受け部23a,23bに形成された欠損部23kと、不燃材26の対向部26a,26bに形成された欠損部26kとの間の隙間を耐火部材53bによって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
なお、耐火部材53bは、図6に示すように、不燃材26の対向部26a,26bにおいて、欠損部26kの全周を取り囲むように配置されることとするほか、欠損部26kの周囲の一部に配置されることとしてもよい。
さらに、不燃材26の対向部26a,26b,見込面部26dの各部位の内側面には、それぞれ耐火部材53cが配設されている。これにより、火災時には、不燃材26の内側の空間、即ち、戸先框23の中空部23mの内部を耐火部材53cで隙間無く埋めることが可能となり、中空部23mを通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
なお、本実施例では、断面視略コ字状の不燃材26が用いられており、戸先框23の接続部23cに形成される欠損部23kの領域には耐火部材を配置することができない構成となっており、この欠損部23kを通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することを目的として、不燃材26の内側の空間に耐火部材53cを配置することが好適な実施形態となる。
また、図7(A)(B)に示すように、複数の不燃材26A,26Bを連続させて戸先框23内に配設することとしてもよい。また、戸先框23に形成される欠損部23kの各形状と、当該欠損部23kに対応する位置に配置されることになる不燃材26A,26Bの欠損部26kの各形状は、同一であってもよく、また、別形状であってもよい。
例えば、戸先框23の欠損部23kaの位置に対応する不燃材26Bの欠損部26ka,26kaについては、戸先框23の欠損部23ka内に二つの欠損部26ka,26kaが配置されることともに、戸先框23の欠損部23ka内に対向部26kb(板面部)が配置されることとして、当該対向部26kbを例えばハンドル90(図5参照)の位置決め用の当て板(下地板)などとして機能させることとしてもよい。
また、不燃材26A,26Bの奥行き寸法D1(図6参照)や、厚みなどについては、同一、或いは、相違するものであってもよく、さらには、別形状であってもよい。例えば、ハンドル90(図5)の納まりに合わせて不燃材26Bの奥行き寸法D1を設定することなど、不燃材の仕様は適宜設定することができる。また、図7に示すように、複数の不燃材26A,26Bを利用することによれば、不燃材についての設計の自由度を確保できる。
次に、図8及び図9を用い、開口部枠の上枠の部位の構成について説明する。
図8は上部防火構造51の箇所における拡大断面図であり、図9(A)は図8の矢印C方向から見た耐火部材の配置図であり、図9(B)は図9(A)の矢印E方向から見た耐火部材の配置図である。上レール15には、吊車25が回転可能に載置されており、連結部材25aを介して引戸本体20の上框21が上レール15に吊設される構成としている。
図8及び図9(A)に示すごとく、上枠11の下面部11sには、第二上枠11b(アタッチメント枠)が付設されており、これら上枠11と第二上枠11bを有する開口部上枠が構成されている。
上枠11の見付面部11mには、上レール15の縦面部15aが付設されている。上レール15は、縦面部15aの下端から室外側Mに略水平方向に突設する横面部15bを有しており、横面部15bの先端部には吊車25を載せてガイドするためのガイド部15cが形成されている。
また、図8に示すごとく、第二上枠11bは、下側の開放が天面カバー11cで閉じられる略コ字断面を有する長尺の部材で構成されており、上枠11の見付面部11mの下方に位置にする見付面部11eを有している。
また、図8に示すごとく、第二上枠11bの見付面部11eは、無目カバー11aの裏面側と対向して配置されており、第二上枠11bの見付面部11eと無目カバー11aの間の隙間に引戸本体20の上框21の上部が挿入される位置関係としている。
第二上枠11bに固定される天面カバー11cの端部には、引戸本体20の上框21の部位において室内側面に当接するパッキン材13xが配設されている。
また、図8乃至図10(A)に示すごとく、上レール15の横面部15bの下面には、上レール15の長手方向(引戸本体20のスライド方向)に沿うように耐火部材51aが付設されている。耐火部材51aは帯状に構成されており、上レール15の横面部15bの下面に対しスライドして差込み、横面部15bの一部をカシメることにより固定することができる。
また、上レール15は、図10(A)に示すように、引戸式開口部装置1の略全幅に渡って設置されるものであり、このうち、方立40の領域を含んで袖面材30と反対側の領域R1について耐火部材51aが設けられることとしている。つまり、引戸本体20が閉じられた状態で引戸本体20が存在する領域(開閉領域K1)に耐火部材51aが配置され、袖面材30が配置される領域L1については耐火部材51aが設けられない構成としている。
これにより、火災時に引戸本体20の上框21や、引戸式開口部装置1の上枠11、さらには、上レール15が熱による伸びなどで変形しても、引戸本体20の上框21と上レール15の間の隙間を耐火部材51aによって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
さらに、本実施例においては、図10(A)に示すごとく、開閉領域K1において、上レール15が存在しない箇所に、延長部材16が配置され、延長部材16に耐火部材51bを設けることにより、上レール15に付設された耐火部材51aと合わせて、開閉領域K1の全域にわたり耐火部材が配置される構成としている。なお、開閉領域K1は、引戸式開口部装置1の幅方向(引戸本体20のスライド方向)において方立40と縦枠13の間にある領域のことをいうものである。
本実施例の延長部材16は、図10(B)に示すごとく、上枠11の見付面部11mに付設されるものであり、見付面部11mに当接される縦面部16aと、縦面部16aの下端から室外側Mに略水平方向に突設する横面部16bを有しており、横面部16bの下面に帯状の耐火部材51bが配設されることとしている。帯状の耐火部材51bの横幅Wb(図10(B)参照)は、例えば、上レール15に付設される耐火部材51aと同一の横幅Wa(図9(A)参照)に設定することができる。
以上の構成により、上レール15が存在しない箇所において、延長部材16に耐火部材51bが配設されるため、火災時には開閉領域K1の全領域に渡り、引戸本体20の上方の隙間を耐火部材51a,51bで埋めることが可能となり、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、図8及び図9(A)(B)に示すごとく、引戸式開口部装置1の上枠11の下面部11sにおいて、方立40の上端部の室外側Mとなる位置には、耐火部材51cが配設されている。
本実施例では、図9(A)(B)に示すごとく、第二上枠11bの端部に樹脂キャップ11dが取付けられており、この樹脂キャップ11dと、方立40に形成される煙返し片部42cによって形成される略L字状のコーナー部11kに耐火部材51cが配置される。
以上の構成により、火災時に方立40や、引戸式開口部装置1の上枠11,第二上枠11bが熱による伸びなどで変形して、上枠11と第二上枠11bの間、方立40の上端部と上枠11の下面部11sの間、或いは、方立40の上端部と第二上枠11bの間に隙間が形成される(或いは隙間が拡大する)ような場合であっても、当該隙間を耐火部材51cによって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、図9(B)に示すごとく、方立40の室外側Mの部位に現れる第二上枠11bの端部の樹脂キャップ11dが焼失した場合であっても、焼失部位を耐火部材51cによって埋めることができ、焼失部位を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、本実施例の構成では、方立40の上端部が上枠11の下面部11sに突き合せられ、第二上枠11bの左端部(樹脂キャップ11d)が方立40に突き合せられる構成としており、このように部材同士が突き合せられる箇所においては、熱による部材の変形に伴う隙間が発生し易いことになる。この観点から、部材同士が突き合せられる箇所(小口箇所)の近傍に耐火部材51cを配置することは特に好ましい。
また、耐火部材51cは室内外方向Yにおいて十分な幅(本実施例では方立40と耐火部材51aの間の領域をカバーする幅)を有しているため、火災時において引戸本体20が見込方向Yに大きくずれるような場合であっても、耐火部材51cによって隙間を確実に埋める、或いは、狭めることができる。
また、図8乃至図10(A)(B)に示すごとく、第二上枠11bの見付面部11eには、第二上枠11bの長手方向(引戸本体20のスライド方向)に沿って耐火部材51dが付設されている。耐火部材51dは帯状に構成されており、第二上枠11bの見付面部11eに例えばリベット留めにて取付られる。なお、本実施例では、見付面部11eに、耐火部材51dを納めるための溝部11j(図10(B)参照)が形成されている。
また、図8に示すごとく、耐火部材51dは、見付面部11eにおいて、引戸本体20の上框21の上端部に対向する位置に配設される。また、図10(A)に示すごとく、この耐火部材51dは、開閉領域K1の全域にわたり配設されている。
以上の構成により、火災時に引戸本体20の上框21や、引戸式開口部装置1の第二上枠11bが熱による伸びなどで変形しても、引戸本体20の上框21(上辺部)と第二上枠11bの間の隙間を耐火部材51dによって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、火災時にパッキン材13x(図8)が焼失しても、このパッキン材13xが存在していた箇所を耐火部材51dによって埋める、或いは、狭めることができ、パッキン材13xによって形成されていた隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することが可能なものとなる。
次に、図11を用い方立40の下部付近の構成について説明する。
図11(A)は図2の矢印Dの方向から見た耐火部材52aの配置図である。この図11(A)に示すごとく、引戸式開口部装置1の下枠12の上面部12uにおいて、方立40の下端部の室外側Mとなる位置には、耐火部材52aが配設されている。
下枠12の上面部12uには、引戸本体20の下部をガイドするための突条形状をなすガイド部12aが配設されている。また、方立40の下端部の室外側Mには、ガイドローラー12bとストッパーピン12cが配置されている。引戸本体20の下框22(図2)は、ガイド部12a及びガイドローラー12bにガイドされるようになっており、下框22がストッパーピン12cに当接するまで引戸本体20が開かれるようになっている。
また、下枠12の上面部12uにおいて、ガイドローラー12bとストッパーピン12cが配置される位置には、平面視略L字状の板状のカバー材12dが設けられている。このカバー材12dの室内側NのL字の輪郭部12eは、他の部位よりも高い面を形成しており、引戸本体20の下框22(図2)と開口部枠の下枠12の間の隙間(チリ)が狭められるようになっている。
そして、カバー材12dは方立40の下端部の室外側Mとなる位置に配置され、カバー材12dと方立40の間の部位であって、下枠12の上面部12uに耐火部材52aが配設される。耐火部材52aは、方立40の室外側Mにおいて、方立40の横幅寸法に対応する範囲に配置される角部52bと、角部52bからガイド部12aの方向に向けて伸びる直線部52cとを有して構成している。
耐火部材52aの一部(室外側Mの輪郭部)には、カバー材12dの輪郭部12eが覆いかぶさるように配置されており、これにより、耐火部材52aが剥がれてしまうことを防止できる。
また、図11(B)に示すごとく、引戸本体20が閉じられた状態において、引戸本体20の戸尻側の角部(本実施例では下框22と戸尻框24の接続部(戸尻部29))と開口部枠の下枠12の間となる位置に、耐火部材52aが配置される。
以上の構成において、火災時に方立40や、引戸式開口部装置1の下枠12,さらには、引戸本体20の下框22や戸尻框24が熱による伸びなどで変形して、方立40の下端部と下枠12の間、方立40の下端部と引戸本体20の間、或いは、下枠12と引戸本体20の間に隙間が形成される(或いは隙間が拡大する)ような場合であっても、当該隙間を耐火部材52aによって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、耐火部材52aの角部52bは室内外方向Yにおいて十分な幅(本実施例では方立40とカバー材12dの間の領域をカバーする幅)を有しているため、火災時において引戸本体20が見込方向Yに大きくずれるような場合であっても、耐火部材52aによって隙間を確実に埋める、或いは、狭めることができる。
同様に、耐火部材52aの直線部52cが見付方向Xにおいて十分に広い幅(本実施例ではカバー材12dよりも突き出る幅)を有する構成としているため、火災時において引戸本体20が見付方向Xに大きく変形するような場合であっても、耐火部材52aによって隙間を確実に埋める、或いは、狭めることができる。
また、本実施例の構成では、方立40の下端部が下枠12の上面部12uに突き合せられる構成としており、このように部材同士が突き合せられる箇所においては、熱による部材の変形に伴う隙間が発生し易いことになる。この観点から、部材同士が突き合せられる箇所(小口箇所)の近傍に耐火部材52aを配置することは特に好ましい。
次に、図12を引戸本体20と方立40の召し合せ部付近の構成について説明する。
図12は、引戸本体20の戸尻側と方立40の召し合せ部に形成される戸尻側防火構造54について示す図である。
図3に示すごとく、引戸本体20の戸尻側の戸尻框24には、上下方向に長い長尺の召し合せ枠28が付設されており、この召し合せ枠28が戸尻框24と方立40の間に配置される。
図12に示すごとく、召し合せ枠28には、室内側見付面部28aと、室内側見付面部28aの一側端部から室内側N方向に突設する見込面部28bと、見込面部28bの突端部から突設され室内側見付面部28aと対向する煙返し片部28cと、が形成されている。
そして、召し合せ枠28において、室内側見付面部28aと見込面部28bと煙返し片部28cにて略コ字状の縦溝部28dが形成され、縦溝部28dに方立40に形成される煙返し片部42cが挿入される。煙返し片部42cは、方立40の内側見込面部42bの室外側Mの端部から突設され、煙返し片部28cに対向するように配置される。
煙返し片部28cにはパッキン材13yが設けられ、パッキン材13yによって方立40の煙返し片部42cと、召し合せ枠28の室内側見付面部28aの間の気密性が保たれるようになっている。
また、本実施例では、召し合せ枠28において、室内側見付面部28aと、見込面部28bに、それぞれ耐火部材54a,54bが付設される。また、方立40の見込面部40dには、耐火部材54cが付設される。
以上の構成により、火災時には、室内側見付面部28aと煙返し片部42cの間の隙間S1、見込面部28bと煙返し片部42cの間の隙間S2、煙返し片部28cと煙返し片部42cの間の隙間S3、煙返し片部28cと内側見込面部42bの間の隙間S4を、耐火部材54a〜54cによって埋める、或いは、狭めることができ、これらの隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
さらに、煙返し片部42cに設けられる耐火部材54aは見付方向Xにおいて十分に広い幅(本実施例では室内側見付面部28aの略全面)を有する構成としているため、火災時において引戸本体20が見付方向Xに大きく変形するような場合であっても、隙間S1を確実に塞ぐことができる。
また、同様に、耐火部材54b,54cは見込方向Y(室内外方向)において十分に広い幅(本実施例では見込面部28b,内側見込面部42bの内側面の略全面)を有する構成としているため、火災時において引戸本体20が見込方向Yに大きくずれるような場合であっても、隙間S2,S3を確実に塞ぐことができる。
次に、図13乃至図15を用い、開口部枠の枠材の接続部の構成について説明する。
図13及び図14は引戸式開口部装置1の下枠12と縦枠13の接続部位について説明する図であり、図15は接続部材17の詳細構造について示す図である。
これらの図13乃至図15に示すごとく、縦枠13には、室外側Mにおいて縦枠13の見付面を形成する見付片部13aと、見付片部13aの見付方向の中途部から室内側Nに向けて伸びる見込面を形成する見込面部13bと、見込面部13bの室内側の端部から見付片部13aと対向するように形設される縦面部13cと、縦面部13cの突端部から室内側Nに向けて伸びる室内側見込面部13dと、が形成されている。
見付片部13a、見込面部13b、及び、縦面部13cの壁面により、平面視において略コ字状の縦溝部が形成され、この縦溝部が引戸本体20(図14各図参照)の戸先を飲み込む縦溝状の飲み込み部18として構成される。この飲み込み部18は、室外側Mに構成される見付片部13aの裏側に構成されており、縦枠13の見込方向の略中央位置に配置される縦面部13cを基準として室外側Mに飲み込み部18が構成され、縦面部13cを基準として室内側Nに飲み込み部18と比較して下枠12の方向に突出する室内側見込面部13dが構成されている。
縦枠13と下枠12は、縦枠13の下端部に取付けられる接続部材17を介して連結される。本実施例の接続部材17は、室内外方向に伸びるようにして配置される棒状の樹脂製部材にて構成されており、室内側部位17aと室外側部位17bを有して構成される。
接続部材17の室内側部位17aは、縦枠13の室内側見込面部13dの下方に形成された収容部13eに納められる。この収容部13eは、図13(B)に示すごとく、縦枠13の下端部から接続部材17の高さ幅H3だけ高い位置に室内側見込面部13dを形成しないことによって構成される。
また、接続部材17の室外側部位17bは、縦枠13の飲み込み部18の下端部の下方に納められる。図14(B)においては、飲み込み部18の部位に室外側部位17bが現れている。
また、本接続部材17の室内側部位17aは、縦枠13の収容部13e(図13(B))の壁面13fに付合わせつつ納められ、室外側部位17bは見込面部13bに付合わせられる。
室外側部位17bには貫通孔17mが設けられており、貫通孔17mにネジ17nを挿通しつつ見込面部13bに螺挿することで、接続部材17が縦枠13に対して留め付けられる。
室内側部位17a、及び、室外側部位17bには、それぞれ貫通孔17xが設けられており、下枠12の端部縦面12nの貫通孔17uに差し込んだネジ17yを、貫通孔17xを通じて見込面部13bに螺挿することで、下枠12が接続部材17とともに縦枠13に対して留め付けられる。
図15に示すごとく、室外側部位17bの高さ幅H2は、室内側部位17aの高さ幅H1よりも小さく構成されており、室外側部位17bの上下面に低床部17g,17hが形成されている。低床部17g,17hには、それぞれ帯状の耐火部材55a,55aが付設される。
そして、耐火部材55a,55aの表面を覆うように、第二耐火部材56が取付けられる。第二耐火部材56は、例えば、ステンレスなどの不燃性の金属部材で構成することができ、これによれば、耐火部材55aをカバーして内側に隠すことができ、耐火部材55aを保護することができる。なお、第二耐火部材56は、耐火部材55aと同様に加熱発泡材にて構成してもよい。
第二耐火部材56は、上面56a、縦面56b、下面56cを有して略コ字の断面を有する構成としており、上面56aと下面56cがそれぞれ耐火部材55a,55aに覆い被せられる。縦面56bには、室外側部位17bの貫通孔17m,17xに対応する位置に貫通孔56m,56xが形成されている。
耐火部材55aと第二耐火部材56を取付けた状態では、室外側部位17bの高さ幅は室内側部位17aの高さ幅と略同一となるように構成される。
以上の構成において、図14(C)に示すごとく、下枠12と縦枠13を接続した状態において、縦枠13の飲み込み部18には、第二耐火部材56が配置されるとともに、この飲み込み部18が第二耐火部材56によって塞がれた状態となる。また、この第二耐火部材56の内側には、耐火部材55aが収容された状態とされている。
そして、以上の構成では、火災時において樹脂製の室外側部位17bが焼失したとしても、縦枠13の縦溝状の飲み込み部18の下端部において、不燃性の第二耐火部材56を存在させ続けることができるため、当該箇所での気密性を保つことができ、飲み込み部18の下端部を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防ぐことができる。
図14(C)に示す例においては、飲み込み部18において室外側部位17bで塞がれている部位を通じる経路18aの気密性を保つことができ、この経路18aを通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼をふせ具ことが可能となる。
また、第二耐火部材56を加熱発泡材で構成した場合には、縦枠13の下端部の隙間を発泡により埋めることができる。
さらに、第二耐火部材56の内側には耐火部材55aが存在するため、この耐火部材55aによって隙間を埋めることによって、効果的に気密性を確保することができ、より確実に煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
なお、以上の説明では、接続部材17を用いた下枠12と縦枠13の二部材の接続の例を用いて説明したが、例えば、上枠と縦枠の接続や、方立と上枠、或いは、下枠との接続など、二部材が接続される他の部位においても本発明を適用することができる。
次に、図16及び図17を用い方立40の構造について説明する。
図16及び図17は、方立40の構造について説明する図である。方立40は、主に室外空間に面する室外側枠材41と、主に室内空間に面する室内側枠材42と、室外側枠材41と室内側枠材42の間に設置される樹脂製のブリッジ材43と、を有して構成される。なお、ブリッジ材43の素材については、特に樹脂製に限定されず、熱伝導率が低く断熱効果を発揮できるものであればよい。
室外側枠材41には、室内側固定片部41aと、室内側固定片部41aの見付方向Xの一側端部から室外側に伸びる見込面部41bと、見込面部41bの室外側の端部から室内側固定片部41aと反対方向に伸びる室外側見付面部41cと、が形成される。
室内側枠材42には、室内側に配置される固定片部42aと、固定片部42aの見付方向Xの一側端部から室内外方向に伸びる内側見込面部42bと、内側見込面部42bの室外側の端部から固定片部42aと同一方向に伸びる煙返し片部42cと、が形成される。
さらに、図17に示すごとく、室内側枠材42には、固定片部42aと対向する縦面部42fと、内側見込面部42bと対向する外側見込面部42dが形成されており、これらの各部位によって囲まれるようにして中空部42eが形成されている。
図17に示すごとく、ブリッジ材43は、4つの縦面部43a〜43dとから断面形状において略矩形の輪郭を有する長尺部材で構成されており、二つの中空部43e,43fを有する中空部材として構成されている。中空部43e,43fが形成されることにより、空気層が確保され、断熱性が高められるようになっている。
図16に示すごとく、室外側枠材41の室外側見付面部41cには貫通孔41sが形成されており、ブリッジ材43の縦面部43dにはネジ孔43sが形成されている。そして、ネジ44aを貫通孔41kを通じてネジ孔43sに螺挿することで、室外側枠材41とブリッジ材43が結合される。この結合は、方立40の長手方向において複数箇所で行われる。
同様に、室内側枠材42の固定片部42aには貫通孔42tが形成されており、ブリッジ材43の縦面部43cにはネジ孔43tが形成されている。そして、ネジ44bを貫通孔42tを通じてネジ孔43tに螺挿することで、室内側枠材42とブリッジ材43が結合される。この結合は、方立40の長手方向において複数箇所で行われる。
以上の構成では、室外側枠材41と室内側枠材42の間には、熱伝導率の低い樹脂製のブリッジ材43が介設され、室外側枠材41と室内側枠材42が直接的に接触せずに両者間での熱伝達が妨げられ、断熱性を備えた方立40が構成される。
また、室内側枠材42の中空部42eには、室内側枠材42の長手方向と同一方向に長い補強材45が挿入される。本実施例の補強材45は、室内側枠材42の外側見込面部42dの内側面に当接する板面部45aと、縦面部42fの内側面に当接する突片部45bとを有しており、断面が略L字状の長尺部材として構成される。
ここで、補強材45の断面を略L字状とすることで、中空部42eに補強材45を挿入した後、縦面部42fと突片部45bを中空部42eの内側面に当接させることで、補強材45の位置決めを行うことができる。
また、補強材45の板面部45aには、被固定部45pが形設されている。室内側枠材42の外側見込面部42dには、被固定部45pと対応する位置に貫通孔42pが形設されている。また、ブリッジ材43の縦面部43a,43bには、貫通孔42pと対応する位置に、縦面部43a,43bを貫く貫通孔43pが形成されている。また、室外側枠材41の見込面部41bには、貫通孔43pと対応する位置に貫通孔41pが形設されている。
以上の構成において、方立40を組み立てた状態において、貫通孔41p,42p,43p、及び、被固定部45pが同一位置に配置される。そして、貫通孔41p,42p,43pには、筒部材48が挿入されるとともに、筒部材48に固定具49を挿通し、固定具49を被固定部45pに留め付ける。なお、この留め付けは、方立40の長手方向において複数箇所で行われる。
固定具49と被固定部45pは、例えば、ステンレスなどの金属製ネジとネジ孔の組合せにより構成することができ、筒部材48はステンレスなどの金属製の部材で構成することができ、耐火性を備えることが好ましい。
以上のようにして、室外側枠材41が固定具49を介して補強材45に固定されるとともに、室外側枠材41と補強材45の間に室内側枠材42の外側見込面部42dと、ブリッジ材43が挟まれるようにして、室外側枠材41と室内側枠材42が結合される。
そして、室外側枠材41とブリッジ材43が結合され、室内側枠材42とブリッジ材43が結合されつつ、室外側枠材41と室内側枠材42が直接的に結合される構成が実現される。換言すれば、室外側枠材41と室内側枠材42とブリッジ材43の3部材が固定具49によって共締めされる構造としている。
以上の構成とすることで、火災時に樹脂製のブリッジ材43が焼失してしまった場合であっても、室外側枠材41と室内側枠材42が直接的に結合されるため、互いに分離してしまうことが無く、方立40全体としての変形がし難くなり、変形に伴う隙間拡大に起因した煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防ぐことが可能となる。
また、補強材45をステンレス鋼材などで構成することにより、室内側枠材42の強度を補強する補強芯材として機能させることができ、より変形し難い方立40を実現することができる。
また、本実施例では、固定具49が室外側枠材41の見込面部41bから挿入され、その先端部が中空部42e内に納められることから、固定具49が室内側枠材42の内側見込面部42bに現れることがなく(内観に現れない)、固定具49の先端部によって意匠が損なわれることがない。
なお、本実施例では、室内側枠材42に補強材45が内装される構成としたが、室外側枠材41側に補強材45が内装される構成としてもよく、また、室外側枠材41と室内側枠材42の両方に補強材45が設けられる構成も考えられる。また、補強材45は内装される構成とするほか、室外側枠材41、或いは、室内側枠材42の表面に設置する(外観に現れるように配置する)ことも考えられる。
さらに、補強材45を用いずに、例えば、室内側枠材42の外側見込面部42d、或いは、内側見込面部42bに固定具49を直接的に留め付けることとして、室外側枠材41と室内側枠材42を直接的に連結する構成としてもよい。
また、以上の実施例では、樹脂製のブリッジ材43と室外側枠材41と室内側枠材42を共締めして一体化させる方立40の例を持って説明したが、このような構成は方立40に適用されるほか、開口部装置の上枠、下枠、縦枠の各種枠体の断熱仕様の構造として、或いは、引戸本体などの各種障子(窓、戸)の框(枠材)の断熱仕様の構造として、幅広く適用することができる。
なお、断熱材として用いるブリッジ材43の素材については、樹脂製とするほか、室外側枠材41や室内側枠材42と比較して断熱性が高い(熱伝導率が低い)ものであればよく、特に限定されるものではない。
以上のようにして本発明を実施することができる。
即ち、図4乃至図6に示されるように、建物開口部に沿って縦枠と横枠とが設けられ、枠内にスライド可能な引戸本体20を設けた開口部装置であって、引戸本体20の戸先側には、機能部品を取付けられる戸先框23が設けられ、戸先框23の内部には不燃材26が配置され、不燃材26の少なくとも一部には、火災時に膨張する耐火部材53b,53cが配置される開口部装置とする。
これにより、戸先框23の内部に、耐火部材53b,53cを配設することができ、戸先框23の内部を通じた煙や火炎の噴出や、隙間を通じた延焼を防止できる。
また、図6に示すごとく、不燃材26は、互いに対向する対向部26a,26bと、対向部26a,26bを渡すように設けられる接続部26dと、からなる断面コ字状の部材で構成され、対向部26a,26bと接続部26dで囲まれる領域に耐火部材53cが配置される。
これにより、耐火部材53cを設置するための広い面積を確保することができ、高い防火性能を確保できる。また、開放側から箱錠等の各種の付属部品を挿入して配設することができ、組立容易性を確保できる。
また、図4に示すごとく、戸先框23は、引戸本体20の面材(面材シート20m)を受ける一対の受け部23a,23bと、一対の受け部32a,32bを接続する接続部部23c,23dと、を備え、不燃材26は、戸先框23の接続部部23dに固定される。
これにより、不燃材26を戸先框23に対して容易に固定することができる。
また、図7に示すごとく、戸先框23及び不燃材26の対向面には、長手方向と直交する方向に欠損部23k,26kがそれぞれ形成され、不燃材26の対向部26aの少なくとも一部(対向部26kb)が、戸先框23の欠損部23kの内側に配置される。
これにより、対向部26kbを、例えばハンドルの位置決め用の当て板(下地板)などとして機能させることができる。
また、図4に示すごとく、建物開口部に沿って縦枠と横枠とが設けられ、枠内にスライド可能な引戸本体20を設けた開口部装置であって、引戸本体20の戸尻框24と縦枠(方立40)との間には、火災時に膨張する耐火部材54a,54b,54cが配設される、開口部装置とする。
これにより、引戸本体20の戸尻部の部位において、火災時に引戸本体20の戸尻框24などが熱による伸びなどで変形しても、引戸本体20と開口部枠(方立40)の間の隙間を耐火部材によって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、開口部装置の横枠は、引戸本体20の上框21と対向する開口部上枠(上枠11と第二上枠11b)を有し、開口部上枠には、火災時に膨張する耐火部材51a,51dが配設される。
これにより、引戸本体20の上框21の部位において、火災時に引戸本体20の上框21などが熱による伸びなどで変形しても、引戸本体20と開口部枠の間の隙間を耐火部材によって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、図8に示すごとく、開口部上枠には、引戸本体20の上框21に対向する横面部15bと、引戸本体20の上框21に対向する見付面部11eと、を有しており、横面部15bと見付面部11eに、火災時に膨張する耐火部材51a,51dが配設される。
これにより、引戸本体20の上框21の部位において、開口部上枠の横面部15bと見付面11eの二つの面に耐火部材51a,51dが配設されるため、より確実に、引戸本体20と開口部枠の間の隙間を耐火部材によって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、図10に示すごとく、開口部上枠と、縦枠13の間には、引戸本体20の上框21に対向する延長部材16が設けられ、記延長部材16の上框21に対向する部位に耐火部材51bが配設される。
これにより、開口部上枠と縦枠13の間にも耐火部材51bを配置することができ、引戸本体20の戸先の上方における隙間を耐火部材によって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、図8及び図9に示すごとく、開口部上枠は、上枠11と第二上枠11bから構成されており、上枠11と第二上枠11bとが近接する位置に、耐火部材51cが配設される。
これにより、上枠11と第二上枠11bの間に隙間が形成される(或いは隙間が拡大する)ような場合であっても、当該隙間を耐火部材51cによって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、図11に示すごとく、横枠は、引戸本体20の下框22と対向する開口部下枠12を有し、開口部下枠12と引戸本体20の戸尻側の間には、火災時に膨張する耐火部材52aが配設される。
これにより、引戸本体20の下框22の部位において、火災時に引戸本体20の枠などが熱による伸びなどで変形しても、引戸本体20と開口部枠の間の隙間を耐火部材によって埋める、或いは、狭めることができ、当該隙間を通じた煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防止することができる。
また、図16及び図17に示すごとく、建物開口部に沿って縦枠と横枠とが設けられ、枠内にスライド可能な戸体を設けた開口部装置であって、縦枠を構成する方立40は、第一の枠材である室外側枠材41と、第二の枠材である室内側枠材42を、断面矩形に設けられたブリッジ材43を介して連結して設けられ、室外側枠材41と室内側枠材42が固定具49で連結される、開口部装置とする。
これにより、火災時にブリッジ材43が焼失してしまった場合であっても、二つの枠材同士が直接的に結合されるため、枠材同士が互いに分離し難くなるとともに、枠材全体としての変形がし難くなり、変形に伴う隙間拡大に起因した煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防ぐことが可能となる。また、ブリッジ材43が断面矩形であり、内部に空気層が設けられる構成となるため、断熱性が向上された構成が実現される。
また、図17に示すごとく、固定具49は、ブリッジ材43を貫通して室外側枠材41と室内側枠材42を連結させる。
これにより、ブリッジ材43に貫通部を設けるなどの簡易な構造により、固定具49にて二つの枠材を連結させることができ、製作コストを抑えることができる。
また、図16及び図17に示すごとく、室外側枠材41と室内側枠材42の少なくともいずれか一方には、補強材45が設けられ、補強材45には固定具49が留めつけられる。
これによれば、補強材45を利用して固定具49を留め付けつつ、枠材全体としての補強を図ることができる。
また、図13乃至図15に示すごとく、建物開口部に沿って縦枠と横枠とが設けられる開口部装置であって、縦枠13と横枠(下枠12)を接合する接続部材17を備え、接続部材17は、不燃材としての第二耐火部材56を含む、開口部装置とする。
これにより、火災時による接続部材17の焼失部位が発生しても、不燃材としての第二耐火部材56により当該箇所での気密性を保つことができ、煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防ぐことができる。
図14乃至図16に示すごとく、接続部材17において、縦枠13と横枠(下枠12)との間で外部に露出する部位に不燃材としての第二耐火部材56が配置される。
これにより、接続部材17において外部に露出している部位をカバーすることができ、接続部材17の露出部位が焼失しても、当該箇所において気密性を確保することができる。
また、図15に示すごとく、不燃材としての第二耐火部材56と、接続部材17の間には、火災時に膨張する耐火部材55aが配置される。
これにより、火災時においては耐火部材56aによって縦枠と横枠(下枠12)の接続箇所に発生する隙間の発生が防がれ、当該箇所での気密性を保つことができ、煙や火炎の噴出、及び、それに伴う延焼を防ぐことができる。