JP6709528B2 - 魚の加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、いわゆる神経絞めをすることにより、魚の鮮度を維持する、具体的には、死後硬直の到来を遅らせるための加工方法に関する。なお、本明細書において、「神経絞め」とは、脊髄を破壊・除去することをいい、「血抜き」とは、魚の体内の血液を体外に放出させることをいう。
魚の身は、魚が死亡した後、大まかに4段階に亘り変化することが知られている。まず、死亡直後、魚の身は生きているときとほぼ同じ生身の状態である。その後、死後硬直が起こることにより、魚の身は固くなり、次いで、死後硬直が解けることにより、魚の身は緩む。そして、最終的に、魚の身は腐敗する。
魚の身が死後硬直を起こすのは、生命活動のエネルギー源であるアデノシン3リン酸(ATP)が体内の分解酵素等によってアミノ酸に分解されることによるものであり、魚の身が緩むのは、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)により、筋原繊維の構造が脆弱化するためと考えられている。これらの分解反応の到来は、魚の場合、牛、豚、鶏に比べて極めて早いことが分かっている。
魚の鮮度を維持するためには、ATPの分解反応の到来、すなわち、死後硬直の到来を遅らせ、魚の身を生化学的に活きている状態、すなわち、ATPが筋肉中に存在している状態を維持することが求められる。従来、魚の死後硬直の到来を遅らせるために、魚の脊椎の神経弓門内に通る脊髄を傷付け又は破壊・除去するという方法が採られてきた。この処理により脊椎神経の暴走(神経暴走)を抑制し、魚の死後に起こる神経暴走由来の筋肉痙攣による筋肉中のATPの消費を抑える事が死後硬直の到来を遅らせる基本原理である。このような技術を開示するものとして、例えば、特許文献1乃至5に示されているものがある。
特開平7−264968号公報 特開平11−318268号公報 特開平11−318324号公報 特開2009−261351号公報 特開2013−94165号公報
特許文献1には、魚の脳を刃物で突き刺して破壊し、鰓から包丁を挿入して、脊髄、大動脈、及び大静脈を切断し、尾鰭に近い部分の背骨を切断し、尾鰭側から神経弓門内に流体を噴射して、脊髄、延髄、及び脳等を除去する方法、或いは、尾鰭側の神経弓門から、脊髄、延髄、及び脳等を真空ポンプ等で吸引する方法が開示されている。
特許文献2には、鰓から刺突具を挿入し、脊髄を刺突して損傷させることにより、魚を死亡させずに、運動機能のみを喪失させる方法が開示されている。
特許文献3には、脊髄を切断することにより、魚の呼吸機能は正常なまま、運動機能のみを喪失させる方法が開示されている。
特許文献4には、神経弓門内に挿入し、脊髄を破壊・除去するための線形具が開示されている。また、魚の頭部側に1〜2cmの深さの線形の補助穴を設け、線形具を脊椎内に挿入して脊髄を破壊・除去し、次いで、鰓を切断して血抜きをするという方法も開示されている。
特許文献5には、曲がり部を設けた管を魚の眼窩から挿入して神経弓門へ到達させ、線形具の脊髄への挿入経路を確保するという方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、以下の問題がある。すなわち、尾鰭側から神経弓門内に流体を噴射した際、脳側に向かう神経弓門のいずれかで流体及び脊髄が詰まり、脊椎を膨張させ、最悪の場合、脊椎及び魚の身が破裂する可能性がある。また、神経弓門内に流体を噴射する場合も、脳や脊髄を神経弓門から吸引する場合も、そのための専用の装置を要し、多くの処理工程を要するので、手間が掛かるという問題がある。また、尾鰭に近い部分の背骨を切断することを要するため、その部分の強度が弱まる。よって、例えば、尾鰭を握って魚を3枚に下ろすとき等、魚を調理し難いという不都合を生じる。
特許文献2及び3に開示されている方法は、熟練した技術を要するため、その技術の習得が困難であり、仮に処理が成功したとしても、生存状態にある魚を水中に入れて運搬しなくてはならないため、輸送が困難であるという問題がある。また、処理に不備があり、魚が死亡した場合、脊髄神経の神経暴走は避けられず、鮮度が低下するという問題もある。また、特許文献3のように、魚を切断した場合、特に海外マーケットでは、切断面が傷と誤解される一方で、当該切断面より吸収された水分が原因で、切断面付近の肉質が低下し、刺身として使えない部位が多くなり歩留りが悪くなるなど、商品価値の低下を招く可能性がある。
一方、特許文献4は、線形具そのものに工夫がなされたものであり、当該文献に開示されている方法によれば、特許文献1乃至3に開示されている方法に比べ、魚の脊髄を容易に破壊・除去することができる。しかしながら、長期の鮮度維持の実現、肉質向上に必要な魚類生理学的観点からの抜本的な工程改善に至っておらず、いまだ改善の余地がある。また、魚の頭部側に補助穴を設けることが開示されているが、当該補助穴は、線形具を魚体内に挿入するための入口として機能するに過ぎないので、この補助穴を開けることによって魚が暴れ、ATPを消費してしまう可能性がある。
また、特許文献5の方法では、曲がり部を設けた管を魚の眼窩から挿入する際に魚が暴れ易く、ATPを消費し易いという問題があり、処理に失敗すると、眼球が飛び出てしまうので、商品価値の低下を招く可能性がある。
そこで、本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑み、線形具を使用した方法で、より簡便な、さらには、魚類生理学的観点に基づいた処理技術により長期の鮮度維持が可能な魚の加工方法を提供し、究極的には、海外・日本マーケットにおける鮮魚の価値を向上させることをその目的とする。
本発明は、魚の脳を破壊する即殺工程と、線形具を魚の神経弓門内に挿入して脊髄を破壊する神経絞め工程と、血抜きを行う血抜き工程を有する魚の加工方法において、
前記即殺工程が、前記魚の脳及び延髄を貫通し、第1腹椎の神経弓門に連通する穿孔を設けることにより行われ、
前記神経絞め工程が、前記線形具を前記穿孔から前記神経弓門内に挿入することにより行われ
前記血抜き工程の後、前記魚の死後硬直が開始するまでの間、該魚の体温を5℃以上且つ自然水温より低く維持する予冷工程を具え、
前記予冷工程の後、前記魚の死後硬直が到来したとき、該魚の体温を0℃以上5℃以下に維持する死後硬直後冷却工程を具えることを特徴とする魚の加工方法によって前記課題を解決した。
本発明によれば、穿孔が脳及び延髄を貫通するように設けられるため、その時点で魚の脳からの指令系統は破壊され、魚の動きが抑制される。さらに、穿孔は、第1腹椎の神経弓門に連通するように設けられるため、線形具を神経弓門内に容易に挿入することができる。よって、従来に比べ簡便な方法で、神経絞めされた魚を製造することができる。
また、血抜きを、魚の腹大動脈又は背大動脈を切断することにより行うのがよい。一般的な方法、すなわち、鰓と尾鰭に近い部分の背骨を切断して血抜きを行う場合、外見上は血が放出されているように見えるが、体内の血圧は急激に低下しており、毛細血管に血が残る。一方、穿孔を設けることにより魚が脳死状態にあっても、自律神経系の心臓は動いているため、腹大動脈又は背大動脈を切断することにより、心臓による血液の圧送で放血させることができる。これにより、従来に比べ短い時間で効率良く、毛細血管の血に至るまで血抜きを行うことができる。
本発明においても、血抜きは、通常、神経絞め工程の後に行うのがよい。しかし、魚によっては、血抜きを即殺工程の前に行うのが好適である。これにより、肉質の状態を良くすることができるからである。
また、血抜きを行った後、魚の死後硬直が開始するまでの間、その体温を5℃以上且つ自然水温より低い温度に維持する予冷工程を経るのがよい。この処理によって、筋細胞内の筋小胞体の膜構造の崩壊を遅らせ、死後硬直開始の要因となるカルシウムイオンの筋細胞内への遊離を遅らせることができる。これは畜肉でいうコールドショートニングと呼ばれる現象に似た、低温下におけるカルシウムイオン遊離の促進を防ぐことで、魚の死後硬直の到来を通常の神経絞め工程を経た魚よりも一層遅らせることができ、魚の鮮度を長期間維持することができる。発明者の知見では、死後硬直の到来が早いとされるサバなどの青魚で、約2〜5時間程度、死後硬直の到来を遅らせることができることが確認されている。
また、予冷工程の後、魚の死後硬直が到来したとき、魚の体温を0℃以上5℃以下に維持する死後硬直後冷却工程を経るのがよい。これにより、鮮度の指標であるK値の上昇を抑えることができ、魚の鮮度をより長期間維持することができる。
また、穿孔を設ける前に、魚を自然水温の水中に入れる活越し工程を経るのがよい。これにより、魚体内のATPの含量を回復させることができるので、神経絞め処理後の魚の死後硬直の到来を一層遅らせることができ、魚の鮮度をより長期間維持することができる。
本発明の第一加工方法のフローを表した図。 スズキ目に属する魚において、各器官の位置を示した一部透視図。 図2の魚10において、本発明の即殺工程を示した図。 図2の魚10の椎体の断面図。 図2の魚10において、本発明の神経絞め工程を示した図。 カレイ目に属する魚において、本発明の穿孔の位置の例を示す図。 図6の魚100において、本発明の神経絞め工程を示した図。 本発明の第二加工方法のフローを表した図。
本発明の実施例を図1〜8を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
本発明の加工方法の対象となる魚は、脊椎を有する殆どの魚であり、例えば、イワシ類、アジ類、サバ類、ブリ、カンパチ、ヒラマサ等の青魚、タイ類、ヒラメ・カレイ類、ハタ類、カサゴ類、カマスなどの白身魚、カツオ・マグロ類などの赤身魚が挙げられる。また、淡水魚にも本発明を適用することができる。
図1は、本発明の第一の魚の加工方法S10の全体的な流れを示す。加工方法S10では、活越し工程S1の後、即殺工程S2を経て、神経絞め工程S3に進み、血抜き工程S4を経て、予冷工程S5、死後硬直後冷却工程S6を経る。
以下に、加工方法S10の各工程について説明する。活越し工程S1は、処理対象の魚を生きた状態で自然水温の水中に数時間から一晩収容することにより行われる。ここで、「自然水温」とは、魚の生育環境である海や川等の水温又はこれより少し(〜2℃程度)低い水温のことをいう。なお、魚の状態を落ち着かせることが出来るのであれば、海等に設けた生簀に魚を入れてもよく、水槽に入れてもよい。
活越し工程S1を経ることにより、魚の状態を落ち着かせ、体内のATPの含量を回復させることができる。魚の体内のATPの含量を回復させることは、魚の鮮度維持を図るに当たって重要なことである。水揚げ直前に暴れた魚は、体内のATPを消耗しているため、仮に神経絞め処理を施したとしても、体内のATPの含量が少ないために、死後硬直の到来が早まるからである。すなわち、死後硬直の到来を遅れさせるために、体内中のATPの含量を回復させるのである。
活越し工程S1で魚を落ち着かせた後は、即殺工程S2に進む。ここで、まず、魚の神経系の各器官について説明する。図2に示す魚10はスズキ目に属する魚であり、他の魚も基本的には同様の構成である。図2,3,5においては、便宜上、肋骨32(図4参照)等の骨の図示は省略している。魚10の頭蓋骨(図示省略)内には脳22が収容され、推体24が複数個連なることにより構成される脊椎20を有する。推体24の内、脳22に最も近いものを「第1腹椎」(符号24a)という。脊椎20の神経弓門26(図4参照)内には脊髄27が通っており、脳22と脊髄27は繋がっている。なお、脳22と脊髄27の間には延髄22aがある。
即殺工程S2では、水中の魚を取り出した後すぐに、図3に示すように、刺突具50を用いて穿孔12を設ける。刺突具50は、アイスピックのような針状のものを使用するのがよい。穿孔12は、魚10の脳22及び延髄22aを貫通し、且つ、第1腹椎24aの神経弓門26(図4参照)に連通するように設けられる。穿孔12を魚に対しどのように設けるかは、魚によって異なるが、予め魚を解剖するなどして魚の脳、延髄、及び第1腹椎の神経弓門の位置を把握した上で設ければよい。
ここで、脳22及び延髄22aを貫通するように穿孔12が設けられるため、この時点で、魚10の脳22からの指令系統は破壊される。これにより、魚10の動きが瞬時に抑制されるので、魚体内のATPの消費を最小限にした状態で、後に説明する神経絞め工程S3の作業を容易に行うことができる。本発明では、魚10の外見上、小さな穿孔12しか残らないため、傷は殆ど目立たず、魚の商品価値の低下を防ぐことができる。また、尾鰭側又は頭部側の脊椎を切断することを要さないので、尾鰭部分の強度を保つこともでき、切断面より吸収された水分が原因で、切断面付近の肉質が低下するという事態も防止することができる。
魚10又はこれと同様の骨格を有する魚の場合、穿孔12は、その魚の両目の中央の位置から刺突具50を刺して設けてもよいが、いずれかの目に僅かに寄った位置から刺突具50を刺して設けるのがよい。魚10の両目の中央の位置は、固い頭骨があり刺突具50を刺し難い一方で、いずれかの目に僅かに寄った位置からは、刺突具50を比較的刺し易く、即殺工程S2を容易に行うことができるからである。また、魚10を姿造りに使用する場合に穿孔12が目立たないので、商品価値を向上させることもできる。
次に、神経絞め工程S3について説明する。図4に示すように、魚10の椎体24は、肋骨32を具え、さらに、脊髄27が通る神経弓門26、及び背動脈34が通る血動弓門36が形成されている。神経弓門26の上方には神経棘28がある。上記のとおり、魚10の脊椎20(図2参照)は、椎体24が複数個連なって構成されているので、神経弓門26と血動弓門36は、脊椎20全体に亘り形成される。
本発明では、即殺工程S2により、第1腹椎24aの神経弓門26に連通する穿孔12が魚10に既に設けられている。よって、図5に示すように、穿孔12に沿って線形具52を挿入すれば、線形具52を神経弓門26に容易に案内することができる。そして、線形具52を神経弓門26内に挿入し、脊椎20全体に亘って進退動させることにより、魚10の脊髄27を破壊・除去する。なお、線形具52は、弾性のある金属又は樹脂製のワイヤ状の器具であり、脊髄を確実に破壊・除去できるよう、魚種により様々な脊髄の太さに応じた直径のものを使用する。このように、本発明によれば、線形具52を神経弓門26内に挿入し易く、特殊工具を必要としないので、神経絞め工程S3を簡便に行うことができる。
ところで、魚の脊椎を構成する椎体は、通常、頭から尾に向かって小さくなっており、これに伴い、神経弓門も狭くなっていく。このため、尾鰭側の脊椎を切断して線形具を挿入しようとすると、細い線形具しか挿入できないので、頭側の脊椎の神経弓門内の脊髄が残り易い。これに対し、本発明のように、魚10の第1腹椎24aから線形具52を挿入するという構成によれば、太い線形具52を挿入することもできるため、脊髄27が神経弓門26内に残存することを防止することができる。
次に、本発明の血抜き工程S4について説明する。加工方法S10では、血抜き工程S4は、神経絞め工程S3の後であって、後述する予冷工程S5の前に行われる。ここで、魚10の血管系について説明する。図2に示すように、魚10は、心臓30を有する。心臓30から送られる血液は、詳細な図示は省略するが、腹大動脈31、背大動脈33、椎体24の血動弓門36内を通る背動脈34の順に通って、心臓30に戻る。
血抜きは、鰓蓋42から鰓44の間に刃物を挿入して、腹大動脈31若しくは背大動脈33又はその両方を切断することによって行うのがよい。即殺工程S2を経ることにより、魚10は脳死状態にあり、脳22からの指令系統は破壊されているが、自律神経系の心臓30は動いているため、腹大動脈31若しくは背大動脈33又はその両方を切断することにより、心臓30による血液の圧送で放血させることができるからである。これにより、従来に比べ短い時間で効率良く、毛細血管の血に至るまで血抜きを行うことができる。
上記のように、加工方法S10では、即殺工程S2、神経絞め工程S3、血抜き工程S4を経て、魚の生命維持機能を断つので、魚を水中に入れて輸送する必要がない。よって、魚を生かした状態で輸送する場合に比べ、輸送コストを低減することができる。
次に、予冷工程S5について説明する。予冷工程S5は、神経絞め工程S3と血抜き工程S4を経た魚の体温を5℃以上且つ自然水温より低い状態に下げ、死後硬直が始まるまで、その魚体温度を維持する工程である。具体的には、魚の種類及び大きさ、生息域、季節などによって異なるが、魚を5〜15℃の水中又は冷蔵室に一定時間入れるなどして、その体温を5℃以上且つ自然水温より低い温度に下げ、その状態を維持することによって行われる。例えば、魚体重1kg程度の魚に対しては15〜30分程度の予冷時間を設定する。なお、魚が海水魚の場合で水中に入れる場合は、氷と水を使用し、その水として海水を使用するのがよい。これにより、魚の体内との浸透圧差を少なくすることができ、魚体内への水分の吸収が抑えられるので、肉質を良い状態に維持することができる。なお、予冷工程S5は、魚を輸送している間に行うこともできる。
魚の死後硬直が始まる前において、その体温が5℃より低くなると、筋小胞体の膜構造が崩壊し、短時間でカルシウムイオンの遊離が生じ、死後硬直の到来が早まる、「コールドショートニング」といわれる現象が起きる。一方、魚の体温が概ね7℃より高いと、ATPの消化速度が速まって死後硬直到来が早くなることがあり、また、細菌の増殖速度も早まるので、鮮度管理上問題となる。また、魚を海水中に入れて冷却する際、その水温が10℃以上であると海水中の常在菌である腸炎ビブリオが増殖する原因ともなるので、予冷水温の設定には注意を要する。
予冷工程S5を経ても、魚の死後硬直の到来は避けることは、事実上、できない。しかし、魚体の状態に応じた適切な温度管理をすることによって、魚体内のATPの分解速度を抑制することができる。このための温度管理が死後硬直後冷却工程S6である。魚の鮮度は、一般的に、鮮度指標K値によって表され、K値が低いほど鮮度がよいとされている。魚は、死後、時間が経つにつれてK値が上昇するが、死後硬直の到来後、死後硬直後冷却工程S6で魚の体温を0℃以上5℃以下に維持するように冷却することによって、K値の上昇を抑えることができ、魚の鮮度をより長期間維持することができる。なお、死後硬直後冷却工程S6も、魚を輸送している間に行うこともできる。
また、本発明は、図6に示すような、カレイ目の魚にも適用することができる。基本的な手順は上記同様であるので、詳細な説明は省略するが、即殺工程では、図示しているように、アイスピックのような直線状の刺突具(図示省略)で、魚100の脳122及び延髄122aを貫通し、且つ、第1腹椎124aの神経弓門に連通するように穿孔112を設ければよい。そして、図7に示すように、穿孔112に沿って線形具52を挿入し、さらに、神経弓門(図示省略)内に挿入し、脊椎120全体に亘って進退動させることにより、魚100の脊髄127を破壊・除去する。従来、カレイ目の魚を神経絞めする場合、尾部又は頭部を切断して線形具を神経弓門内に挿入するのが一般的であった。しかし、本発明によれば、カレイ目の魚であっても、図6に示されるような穿孔112のみを設けるだけで簡便に線形具52を神経弓門内に挿入することができ、切り傷のない、見た目の美しい魚として加工することができる。
次に、図7を参照して、本発明の第2の加工方法S20について説明する。各工程の具体的内容は、加工方法S10と同様であるため、その説明は省略する。加工方法S20では、血抜き工程S4の順番が加工方法S10と異なり、血抜き工程S4は活越し工程S1の後、即殺工程S2の前に行われる。加工方法S20のように、血抜き工程S4を即殺工程S2の前に行うことにより、魚の種類によっては、肉質の状態を良くすることができる。例えば、加工方法S20における血抜き工程S4を行った養殖マダイは、即殺直後に身色が稍くすむ傾向が見られるが、死後硬直を経て身の熟成が進むと身色の透明度が上がり、血生臭さの少ない刺身として利用出来ることが発明者により見出されている。これは、加工方法S20における血抜き工程S4で魚体内の血液がほぼ完全に放出されるため、魚の死後、血液内の雑菌繁殖による身質低下や、魚の血液特有の生臭さが抑えられるからだと考えられる。上記の例の養殖マダイの場合、他の神経絞めを施した養殖マダイと比べ、刺身用途については、1日以上長く鮮度と食感を保持することができる。
以上に説明したとおり、本発明によれば、簡便な、さらには長期の鮮度維持も可能な魚の加工方法を提供することができる。
S10,S20 魚の加工方法
S1 活越し工程
S2 即殺工程
S3 神経絞め工程
S4 血抜き工程
S5 予冷工程
S6 死後硬直後冷却工程
10,100 魚
12,112 穿孔
22,122 脳
22a,122a 延髄
24a,124a 第1腹椎
26 神経弓門
27,127 脊髄
31 腹大動脈
33 背大動脈
52 線形具

Claims (5)

  1. 魚の脳を破壊する即殺工程と、線形具を魚の神経弓門内に挿入して脊髄を破壊する神経絞め工程と、血抜きを行う血抜き工程を有する魚の加工方法において、
    前記即殺工程が、前記魚の脳及び延髄を貫通し、第1腹椎の神経弓門に連通する穿孔を設けることにより行われ、
    前記神経絞め工程が、前記線形具を前記穿孔から前記神経弓門内に挿入することにより行われ
    前記血抜き工程の後、前記魚の死後硬直が開始するまでの間、該魚の体温を5℃以上且つ自然水温より低く維持する予冷工程を具え、
    前記予冷工程の後、前記魚の死後硬直が到来したとき、該魚の体温を0℃以上5℃以下に維持する死後硬直後冷却工程を具えることを特徴とする、
    魚の加工方法。
  2. 前記血抜き工程が前記魚の腹大動脈又は背大動脈を切断することにより行われる、請求項1の魚の加工方法。
  3. 前記血抜き工程が前記神経絞め工程の後に行われる、請求項1又は2の魚の加工方法。
  4. 前記血抜き工程が前記即殺工程の前に行われる、請求項1又は2の魚の加工方法。
  5. 前記即殺工程の前に、前記魚を自然水温の水中に入れる活越し工程を具える、請求項1から4のいずれかの魚の加工方法。
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