以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<作業車両(苗移植機)1の全体構成>
図1および図2を参照して実施形態に係る作業車両(苗移植機)1の全体構成について説明する。図1は、作業車両(苗移植機)1の概略左側面図である。図2は、作業車両(苗移植機)1の概略平面図である。なお、図2においては、説明の便宜上、走行車体2の前側半部を示し、かつ、車輪(前輪3)などを省略している。以下、作業車両1として、圃場内を走行しながら、圃場に苗を植え付ける苗移植機を例に説明する。
また、以下の説明において、前後方向とは、作業車両(以下、「苗移植機」という)1の直進時における進行方向であり、進行方向前方側を「前」、後方側を「後」と規定している。なお、苗移植機1の進行方向とは、直進時において、操縦席10からステアリングハンドル12に向かう方向である(図1参照)。
また、左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定している。すなわち、作業者(「操縦者」ともいう)が操縦席10に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。また、上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交している。
なお、これらの方向は、説明をわかりやすくするために便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、苗移植機1を指して「機体」という場合がある。
図1に示すように、苗移植機1は、圃場を走行可能な走行車体2を備えている。走行車体2は、左右一対の前輪3と、左右一対の後輪4とを備えている。なお、走行車体2は、たとえば、前輪3および後輪4が駆動する四輪駆動となる。また、走行車体2の後部には、昇降機構(以下、「苗植付部昇降機構」という)20によって昇降可能な苗植付部30が設けられている。
走行車体2は、機体フレームとなるメインフレーム5と、メインフレーム5上に搭載されたエンジンと、エンジンで発生した動力を駆動輪(前輪3や後輪4)と苗植付部30とに伝達する動力伝達装置6とを備えている。すなわち、動力源であるエンジンで発生した動力は、走行車体2を前進または後進させるために使用されるだけでなく、苗植付部30を駆動するためにも使用される。
エンジンは、左右方向における走行車体2の略中央で、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ7よりも上方に突出した位置に配置されている。なお、エンジンとしては、たとえば、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関が用いられる。フロアステップ7は、前後方向において、走行車体2の前部に設けられている。フロアステップ7は、走行車体2の前端とエンジンの後部との間にわたって設けられている。
フロアステップ7は、メインフレーム5上に取り付けられている。フロアステップ7のうち、後述する操縦席10付近の少なくとも一部は、作業者の靴などに付着した泥などを圃場に落とせるように、上下方向視において格子状に形成されている。なお、フロアステップ7の後部には、後輪4のフェンダを兼ねるリヤステップが設けられていてもよい。
この場合、リヤステップは、左右方向において、エンジンを挟むように、エンジンの左右の両側方に配置される。また、エンジンは、エンジンカバー9によって覆われている。エンジンカバー9の上方には操縦席10が設けられている。
動力伝達装置6は、エンジンから動力が伝達されるベルト式動力伝達装置と、エンジンからベルト式動力伝達装置を介して伝達される動力を変速する変速装置である油圧式無段変速機と、ミッションケースとを備えている。
油圧式無段変速機は、HST(Hydro Static Transmission)といわれる静油圧式の無段変速装置として構成されている。油圧式無段変速機は、主変速レバーが操作されることで、出力(回転速度)および出力方向(回転方向)を変更可能である。すなわち、油圧式無段変速機は、回転速度や回転方向を変更することで、走行車体2の前後進や走行速度を変更可能である。
ミッションケースには、油圧式無段変速機によって変速されたエンジンからの動力を各部に伝達する伝動装置が設けられている。また、ミッションケースは、走行時や作業時における走行速度を切り替える副変速機構を備えており、副変速レバーが操作されると、走行車体2の走行速度を、たとえば、植付作業時の走行速度よりも高速な走行速度、植付作業時における苗植付速度などに切り替え可能である。
また、前輪3は、ステアリングハンドル12の操作に応じて操舵可能に前輪ファイナルケースに連結されている。また、後輪4は、後輪ギヤケースに連結されている。
苗植付部昇降機構20は、昇降リンク21を備えている。昇降リンク21は、走行車体2の後部と苗植付部30とを連結させる平行リンクを備えている。平行リンクは、リンクフレームと苗植付部30とのそれぞれに対して、上下方向に回動自在に連結されることで、走行車体2に対して苗植付部30を昇降可能としている。
また、苗植付部昇降機構20は、油圧式の昇降シリンダ22(図1参照)を備えている。昇降シリンダ22は、植付昇降レバー13が操作されて油圧バルブが切り替えられることで伸縮動作して昇降リンク21を駆動して、苗植付部30を昇降させる。
また、昇降シリンダ22は、後述する操縦部14の植付昇降レバー13が操作されることで、苗植付部30を上昇させた非作業位置、苗植付部30を下降させた対地作業位置(「植付位置」ともいう)に切り替える。なお、昇降シリンダ22を、圃場の状況に関する情報に基づいて苗植付部30を昇降させるように構成してもよい。
苗植付部30は、昇降リンク21を介して走行車体2の後部に取り付けられている。苗植付部30は、複数の区画あるいは複数の列(条)で苗を植え付けることが可能である。苗植付部30は、苗載置台31と、フロート32と、苗植付装置33とを備えている。
苗載置台31は、左右方向において、植付条数分の苗載せ面を有している。それぞれの苗載せ面は、上下方向に複数枚の土付きマット状苗を載置可能な後下がり傾斜面である。フロート32は、走行車体2の移動に伴って、圃場上を滑走して整地する。フロート32は、左右方向において、機体中央部に配置されるセンターフロートと、センターフロートを挟んで外側に配置されるサイドフロートとを備えている。
各フロートは、圃場の表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように、走行車体2に回動自在に取り付けられている。苗植付装置33は、センターフロートの上下動を迎角制御用の回動センサで検知する。苗植付部30では、植付作業時にはセンターフロートの前部の上下動が回動センサによって検知され、回動センサの検知結果に応じて制御部(「コントローラ」ともいう)によって昇降シリンダ22の伸縮動作を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部30を昇降させ、苗の植え付け深さを調節することができる。
苗植付装置33は、苗載置台31の植付支持フレームによって支持され、苗載置台31の下方に配置されている。苗植付装置33は、苗載置台31に載置された苗をとって圃場に植え付けるものである。苗植付装置33は、植込杆と、ロータリーケースと、植付伝動ケースとを備えている。
植込杆は、苗載置台31から苗をとって圃場に植え付ける。植込杆は、植付伝動ケースに対して回転可能に連結されている。ロータリーケースは、植込杆を回転可能に支持するとともに、植付伝動ケースに対して回転可能に連結されている。
ロータリーケースは、植込杆の回転速度を変化させながら、植込杆を回転させることが可能な不等速伝動機構を有している。ロータリーケースに対する植込杆の回転角度によって、植込杆の回転速度を変化させながら回転させる。植付伝動ケースは、エンジンから苗植付部30に伝達された動力を、植込杆に伝達する。
また、走行車体2の後部には、整地装置40が設けられている。整地装置(以下、「整地ロータ」という)40は、圃場を整地するものである。整地ロータ40は、苗植付装置33の下方に設けられている。整地ロータ40は、苗植付装置33の植付支持フレームなどに対して、電動モータなどによって昇降自在に支持されている。整地ロータ40は、センターロータと、サイドロータと、電動機構とを備えている。
センターロータは、左右方向において機体中央部に配置されている。サイドロータは、たとえば、センターロータよりも後方に配置されるとともに、左右方向においてセンターロータよりも機体の外側に配置されている。センターロータは、電動機構と後輪ギヤケースに連結された駆動軸46(図8参照)とを介してエンジンから伝達される動力によって回転駆動する。同様に、サイドロータは、駆動軸46を介してエンジンから伝達される動力によって回転駆動する。
また、走行車体2には、施肥装置41が設けられている。施肥装置41は、圃場に肥料を施すものである。施肥装置41は、たとえば、操縦席10の後方に設けられる。施肥装置41は、ホッパに貯留されている粒状の肥料を、植付作業中に設定量ずつ圃場に放出することができる。施肥装置41は、コントローラに接続される可変施肥機構を構成する施肥量調節モータなどを備え、肥料の散布量である施肥量を調節可能とする。
また、操縦席10の前方には操縦部14が設けられている。操縦部14には、上記したステアリングハンドル12、植付昇降レバー13、主変速レバーおよび副変速レバーの他、ボンネット15、フロントカバー15a、表示部などが設けられている。
ボンネット15は、操縦席10の前方においてフロアステップ7から上方へ突出して設けられている。ボンネット15は、たとえば、充放電可能なバッテリー、主変速レバーや植付昇降レバー13などの操作部材、走行車体2の旋回時に植付操作レバー13を「植付下げ」に切り替えるモータ、主変速レバーや植付操作レバー13などの操作部材の角度を検知するポテンショメータ、などの機器を有している。
表示部(以下、「メータパネル」という)は、ボンネット15の上部に設けられている。メータパネルは、操縦席10に着席した作業者と対面するように、後下がりに傾斜している。また、メータパネルは、たとえば、圃場に線を引くための左右のマーカ42が圃場面上に出ていることを検知するマーカセンサ、植付昇降レバー13が、たとえば「植える」の位置にあるなど、植付昇降レバー13の操作位置を検知する植付レバー位置センサ、施肥装置のホッパ内の肥料が所定量を下回ったことを検知する肥料切れセンサ、ホッパから圃場に肥料を導入する経路が詰まったことを検知する肥料詰まりセンサ、などの各種センサなどを有している。
また、上記したように、ステアリングハンドル12は、作業者に操作されることで、走行車体2を操舵するものである。ステアリングハンドル12は、ボンネット15の上方に設けられている。ステアリングハンドル12は、左右方向において、ボンネット15の中央部に配置されている。ステアリングハンドル12は、ボンネット15内に配置された操舵機構を介して前輪3を転舵させる。
主変速レバー(「HSTレバー」ともいう)は、走行車体2の前後進、および走行速度を変更するために操作するレバーである。主変速レバーは、たとえば、ボンネット15の上部に設けられている。
植付昇降レバー13は、クラッチレバーであり、苗植付部30を昇降させたり、苗植付部30による苗の植え付けを開始や停止させるために操作するレバーである。植付昇降レバー13は、たとえば、ボンネット15の上部に設けられている。
フロントカバー15aは、ボンネット15の前部に形成された空間を覆うカバー部材である。フロントカバー15aは、たとえば、機体の後部から前部に向かうにつれて、左右方向における幅、および上下方向における幅のそれぞれが狭くなるように形成されている。また、フロントカバー15aは、ボンネット15から前方に回動することで、開閉可能に設けられている。
また、図2に示すように、走行車体2の前端における左右方向の中央部には、ハンドル部16が設けられている。ハンドル部16は、たとえば、正面視でループ状のハンドルであり、たとえば、走行車体2の前方に立つ作業者がループ部分を手で把持して押さえ込むようにして、走行車体2の前上がりを阻止することができる。また、ハンドル部16は、機体側を支点として前方に傾倒可能に設けられている。苗移植機1では、ハンドル部16が押し下げられると、走行車体2が所定の速度で移動するように構成されている。
なお、ハンドル部16のたとえば左右いずれかの側方には、緊急停止スイッチが設けられている。緊急停止スイッチが操作されると、エンジンが停止する。このようなハンドル部16や緊急停止スイッチによって、畦越えや軽トラックなどの小型輸送車両に機体を積み降ろしする場合の移動操作などを安全に行うことができる。作業者は、たとえば、作業を行いにくい場所における機体操作の場合には、機体から降りてハンドル部16を用いた歩行操作に切り替える。これにより、安全性が向上する。
また、走行車体2には、畦越えや機体の積み降ろしを作業者がハンドル部16とあわせて使用するために、ハンドル部16付近に、機体を停止するブレーキ機構50やブレーキ機構50をロックするブレーキロック機構54を機体の外側から操作するための操作部材53やロック解除部材56が設けられている。
<操作部材53、ロック部材55およびロック解除部材56>
次に、図1〜図5を参照して操作部材53、ロック部材55およびロック解除部材56について説明する。図3は、操作部材53、ロック部材55およびロック解除部材56の説明図である。なお、図3には、各部材(操作部材53、ロック部材55、ロック解除部材56)の平面視を示している。
また、図4および図5は、操作部材53、ロック部材55およびロック解除部材56の動作説明図である。なお、図4には、ロック解除状態の各部材(操作部材53、ロック部材55、ロック解除部材56)の右側面視を示し、図5には、ロック状態の各部の右側面視を示している。
ここで、ブレーキ機構50について簡単に説明する。ブレーキ機構50は、ミッションケースに設けられた左右のクラッチブレーキ機構であり、エンジンからの駆動力を左右の後輪ギヤケースに伝達する左右のドライブシャフトに抵抗をかけて減速させるとともに、ドライブシャフトに駆動力が伝達されるのを遮断する。
左右のブレーキ機構50は、たとえば、分岐ギヤケースから伝達された駆動力によって回転する伝動回転軸の左右両側にステー(以下、「ブレーキステー」という)が固定され、クラッチ(以下、「サイドクラッチ」という)が左右方向に摺動可能に設けられ、ブレーキステーとサイドクラッチの間に、サイドクラッチを付勢するスプリングが設けられ、複数の板バネ状のブレーキ板が設けられることで構成されている。
左右のサイドクラッチの外側には、サイドクラッチを内側に摺動させてブレーキ板を構成する複数の板バネの間隔を縮めて左右のドライブシャフトの回転速度を減速させるとともに、サイドクラッチを切状態にして左右のドライブシャフトに駆動力が伝達されるのを遮断する減速停止カムが設けられている。
また、ブレーキ機構50には、フロアステップ7上に設けられたブレーキペダル51が連結されている。ブレーキペダル51は、図2に示すように、フロアステップ7上のたとえば前部左方に設けられ、作業者によってブレーキ機構50を作動させる場合に操作される。ブレーキ機構50では、ブレーキペダル51が踏み込み操作されると、減速停止カムを回動させる左右のシリンダモータのいずれか一方、あるいは両方が作動して減速停止カムが回動する。
ブレーキペダル51は、左右に分割され、両方に操作を検知するブレーキセンサが設けられるとともに、分割されたブレーキペダル51のいずれか一方の操作に他方を連動させるように分割されたブレーキペダル51を連結する連結部材が設けられるようにしてもよい。なお、ブレーキペダル51は、作業者が足で踏み込むタイプであるが、レバーなどを用いて作業者が手などで操作するタイプであってもよい。
図4および図5に示すように、ブレーキペダル51は、支持フレーム52の先端部に設けられている。支持フレーム52は、先端部にブレーキペダル51が設けられ、基端部がボンネット15側に取り付けられ、基端部を支点として揺動可能に設けられている。すなわち、支持フレーム52は、ブレーキペダル51を、フロアステップ7(図1および図2参照)上において作業者の踏み込み操作に応じて前後方向に沿って揺動可能に支持している。
ブレーキペダル51は、支持フレーム52を介して操作部材(以下、「操作レバー」という)53に連結されている。操作レバー53は、基端部がメインフレーム5に回動可能に連結されている。これにより、操作レバー53は、基端部を支点(回動支点53a)として前後方向に沿って揺動可能となる。また、操作レバー53は、上方に配置された先端部側が前方に傾倒した姿勢で機体前部に設けられている。
図1および図2に示すように、操作レバー53は、ハンドル部16よりも後方に設けられている。図4および図5に示すように、操作レバー53の先端部は、ハンドル部16から後方となる機体前部範囲A内に位置している。また、図2に示すように、操作レバー53は、ハンドル部16よりも機体の左右方向の外側(図中における右方)におけるハンドル部16付近に設けられている。操作レバー53を、前方に傾倒操作することで、ブレーキペダル51が前方に移動して、ブレーキペダル51が操作された状態となる。すなわち、作業者は、機体の外側から操作レバー53を操作することで、ブレーキペダル51を操作することができる。
このように、操作レバー53の先端部が機体の前方に突出しないことで、操作レバー53の破損などを抑えることができる。また、操作レバー53がハンドル部16よりも機体の左右方向の外側にあることで、作業者は、一方の手でハンドル部16を操作し、他方の手で操作レバー53を操作することができるうえ、ハンドル部16から手をスライドすることで操作レバー53に届かせることもできるので、操作性および安全性を向上させることができる。
また、図3に示すように、操作レバー53の先端部は、機体の内側(図中における左方)に向けて湾曲している。操作レバー53の先端部の具体的な形状は、操作レバー53の直線部から外側に向けて湾曲(第1湾曲)して内側に向けて湾曲(第2湾曲)している。なお、操作レバー53は、第1湾曲から第2湾曲を経て先端部まで円弧部を形成している。操作レバー53の先端部(具体的には、円弧部よりも先端側)には、把手部53bが設けられている。なお、把手部53bの先端面、すなわち、操作レバー53の先端面は機体の内側(左右方向における左方)に向けられている。
このように、操作レバー53の先端部が、直線部から円弧部を経由して把手部53bに至る形状(鉤形状、より具体的には、クエスチョンマーク(「?」)形状)であるため、省スペースとしながらも把手部53bの長さを長くとることができ、操作性を向上させることができる。また、把手部53bの先端面が機体の内側に向けられていることで、作業者は、ハンドル部16から手をスライドさせて把手部53bを握ることができ、操作性を向上させることができる。
また、図3に示すように、操作レバー53の把手部53bは、回動支点53aの軸線Lと平行に設けられている。これにより、操作レバー53の長さを長くとることができ、操作レバー53に加わる荷重を低減することができる。
上記したように、操作レバー53は、支持フレーム52に前方に傾斜して連結されるとともに、基端部を回動支点53aとして前後方向に揺動可能に設けられ、図4および図5に示すように、先端部の把手部53bを操作して揺動させた場合に先端部が機体前部範囲A内を移動する。
このように、操作レバー53を揺動させても先端部が機体前部範囲A内を移動して機体の前方に突出しないため、操作レバー53の長さを確保することで操作性を維持しつつ、機体の小型化を図ることができる。また、操作レバー53が機体の前方に突出しないため、狭いスペース(納屋、あるいは、軽トラックなどの小型輸送車両の荷台など)に機体を収納する場合に、操作レバー53(先端部)の突出による、狭いスペースで操作が行い難いといった操作性の低下や、操作レバー53の破損を抑制することができる。
ブレーキロック機構54は、ブレーキ機構50を作動させた状態でロックする。すなわち、ブレーキロック機構54は、ブレーキペダル51を、踏み込み操作された状態で機械的にロックする。ブレーキロック機構54は、ロック部材55と、ロック解除部材56と、ロックピン57とを備えている。
図4および図5に示すように、ロック部材(以下、「ロックペダル」という)55は、先端部がブレーキペダル51上に重なるように設けられている。また、ロックペダル55の他端部には、係合凹部55aが設けられている。図4に示すように、係合凹部55aは、ブレーキペダル51が踏み込み操作されていない状態では、機体側に設けられたロックピン57との係合が解除されている。図5に示すように、係合凹部55aは、ブレーキペダル51が踏み込み操作された状態では、ロックピン57と係合することで、ブレーキペダル51を踏み込み操作された位置に保持する。なお、作業者が操縦席10側からロックペダル55を操作する場合は、作業者がロックペダル55を再度踏み込むことで、ブレーキペダル51のロックが解除される。
図3、図4および図5に示すように、ロック解除部材(以下、「ロック解除レバー」という)56は、機体前部に延設され、機体の外側からロックペダル55によるブレーキペダル51の固定を解除する。ロック解除レバー56は、前後方向に揺動可能に設けられている。ロック解除レバー56は、連結リンク561を介してロックペダル55に連結されている。
図3に示すように、ロック解除レバー56の先端部は、機体の内側(図中における左方)に向けて湾曲している。ロック解除レバー56の先端部の具体的な形状は、ロック解除レバー56の直線部から外側に向けて湾曲(第1湾曲)して内側に向けて湾曲(第2湾曲)している。なお、ロック解除レバー56は、第1湾曲から第2湾曲を経て先端部まで円弧部を形成している。ロック解除レバー56の先端部(具体的には、円弧部よりも先端側)には、把手部56aが設けられている。なお、把手部56aの先端面、すなわち、ロック解除レバー56の先端面は機体の内側(左右方向における左方)に向けられている。
このように、ロック解除レバー56の先端部が、直線部から円弧部を経由して把手部56aに至る形状(鉤形状、より具体的には、クエスチョンマーク(「?」)形状)であるため、省スペースとしながらも把手部56aの長さを長くとることができ、操作性を向上させることができる。また、把手部56aの先端面が機体の内側に向けられているため、作業者は、ハンドル部16から手をスライドさせて把手部56aを握ることができ、操作性を向上させることができる。
また、図3に示すように、ロック解除レバー56は、平面視において操作レバー53の内側に設けられている。言い換えると、ロック解除レバー56は、平面視で操作レバー53から外側にはみ出ないように設けられている。このため、操作レバー51を操作する場合にロック解除レバー56に引っ掛かる部分がなくなり、安全性を向上させることができる。また、図3に示すように、操作レバー53およびロック解除レバー56では、鉤形状の開放部分が機体の左右方向の内側(図中における左方)に向けられている。これにより、各レバー51,56の長さを長くとることができるとともに、たとえば、作業者が機体の右側を通る場合において引っ掛かる部分がなくなり、安全性を向上させることができる。
上記したように、ロック解除レバー56は、ロックペダル55に連結されるとともに、前後方向に揺動可能に設けられている。また、ロック解除レバー56は、先端部に設けられた把手部56aを操作してロック解除レバー56を揺動させた場合に先端部が機体前部範囲A内を移動する。
このように、ロック解除レバー56が機体前部範囲A内を移動することで、機体の前方に突出しない。これにより、ロック解除レバー56の長さを確保することで操作性を維持しつつ、機体の小型化を図ることができる。また、ロック解除レバー56が機体の前方に突出しないため、狭いスペース(納屋、あるいは、軽トラックなどの小型輸送車両の荷台など)に機体を収納する場合に、ロック解除レバー56(先端部)の突出による、狭いスペースで操作が行い難いといった操作性の低下や、ロック解除レバー56の破損を抑制することができる。
また、苗移植機1では、畦越えなどの作業時には、段差があるため、作業者は機体から降りて機体の外側からブレーキ操作しつつ、低速で機体を前進させる。苗移植機1では、機体の後側に作業機(苗植付部30など)が装着され、さらに、機体の前部寄りに操縦席10が設けられている場合がある。畦越えなどの作業時には、作業者が機体から降りることから、機体の前側の重量が軽くなる。このため、上記したハンドル部16を下方に押さえ付けながら、機体の前端部を押さえ付けて走行させることで、機体を安定させる。この他、機体を軽トラックなどの小型輸送車両へ積み下ろす場合にも、同様にハンドル部16を押さえ付けながら機体を前後進させる。
上記したように、ハンドル部16は、機体前端中央部に設けられている。ハンドル部16は、機体側を支点として前方に傾倒する。このため、作業者がハンドル部16を押さえることで、たとえば、傾斜地などで機体が前上がりになることによる機体の横転などを抑えて安全性を向上させることができる。また、ハンドル部16によって機体の前上がりを押さえながら操作レバー53やロック解除レバー56によって機体の停止が可能なため、機体の横転などをさらに抑えて、より安全性を向上させることができる。また、ハンドル部16で機体の前上がりを押えながら軽トラックなどの小型輸送車両に機体を積み込むことができ、また、操作レバー53やロック解除レバー56が機体から前方に突出しないため、小型輸送車両に機体を容易に積み込むことができる。
<変形例(操作部材60)>
次に、図6および図7を参照して操作部材の変形例(操作部材60)について説明する。図6および図7は、操作部材(操作部材60)の変形例の説明図である。なお、図6には、操作部材60の平面視を示し、図7には、操作部材60の右側面視を示している。また、以下の変形例の説明において、上記した操作部材53の説明と同一または同等の箇所には同一の符号を付し、その説明は省略している。
図6および図7に示すように、変形例に係る操作部材(以下、「操作レバー」という)60は、基端部に回動支点60a、先端部側に把手部60bを備えている。なお、操作レバー60では、把手部60bは、操作レバー60から機体の内側(図6中における左方)に向けて屈曲している。操作レバー60には、把手部60bの上方に突出している握り部60cが設けられている。このように、操作レバー60に握り部60cが設けられていることで、操作レバー60に対して機体の前側からの前後方向の操作を容易に行うことができる。これにより、操作性を向上させることができる。
また、握り部60cは、略垂直となるように設けられることが好ましい。このように、把手部60bよりも握り部60cが上方にあることで、アーム比を大きくとることができる。これにより、操作レバー60に加わる荷重を低減することができる。また、この場合、ロック解除レバー61には、直線部から略直角に屈曲されて把手部61aが設けられている。ロック解除レバー61は、平面視において操作レバー60の内側に配置されている。
<整地装置40の駆動軸46>
次に、図8〜図11を参照して整地装置(整地ロータ)40について説明する。なお、以下では、整地装置(整地ロータ)40の駆動軸46を重点的に説明する。図8および図9は、整地装置(整地ロータ)40の説明図である。図10は、整地装置(整地ロータ)40の変形例の説明図である。なお、図8〜10は、整地装置(整地ロータ)40の左側面視を示している。図12は、駆動軸46の保護部材48の概略斜視図である。
図8に示すように、作業車両である苗移植機1は、苗植付部30と、整地ロータ40と、駆動軸(「伝動軸」ともいう)46とを機体後部に備えている。整地ロータ40は、上記したように、駆動軸46を介してエンジンから伝達される動力によって回転駆動する。また、図9に示しように、苗移植機1は、苗植付部昇降機構20と、昇降リンク21とを機体後部に備えている。また、図9に示すように、苗移植機1は、ロッド部材45と、角度変更機構47bと、吊下部材49とをさらに備えている。
ロッド部材45は、整地ロータ40を下方に押し下げる部材であり、図9に示すように、たとえば、整地ロータ40が1つで構成されるいわゆる1本ロータである場合に、駆動軸46の後方に連結された後側ケース(「駆動軸ケース」ともいう)40aを昇降リンク21と繋いでいる。この場合、ロッド部材45を昇降リンク21に繋ぐための孔21aを大径に形成することで、整地ロータ40がローリングによって左右方向に揺れても、揺れを吸収することができる。これにより、整地ロータ40がメカロックしない構成を安価に得ることができる。
駆動軸46は、上記したように、整地ロータ40にエンジンからの回転動力を伝達する。駆動軸46は、伸縮機構によって軸方向に伸縮可能に設けられている。駆動軸46の先端側は、ユニバーサルジョイント47aによってメインフレーム5側に角度変更可能に接続されている。また、駆動軸46の後端側は、角度変更機構(ユニバーサルジョイント)47bによって整地ロータ40に対して3次元的に角度変更可能に接続されている。このため、駆動軸46が整地ロータ40に対して自在に屈曲する。
このように、駆動軸46の後端側が、角度変更機構であるユニバーサルジョイント47bによって整地ロータ40に対して角度変更可能に接続されていることで、苗植付部昇降機構20や苗植付部30が、たとえば、左右にローリングした場合に、駆動軸46に加わる負荷を低減することができる。また、ユニバーサルジョイント47bがあることで、整地ロータ40のロッド部材45を固定式にすることができる。このため、ロッド部材45に可動部などを設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。これにより、安価な構成によって駆動軸46に加わる負荷を低減することができる。また、ロッド部材45が、昇降リンク21と駆動軸46とを連結することで、苗植付部30が上昇して、たとえば、駆動軸46の伸縮機構が規定以上に延びるのを規制して、駆動軸46が落下するのを防止することができる。なお、駆動軸46の落下を防止することで、伸縮機構であるスプラインなどの破損を防ぐことができる。
また、図9に示すように、ロッド部材45は、2つのロッド部材、すなわち、第1のロッド45aと、第2のロッド45bとを備えている。第1のロッド45aは、駆動軸46に連結され、駆動軸46の後端部が収納される駆動軸ケース40aと昇降リンク21との間を接続している。第1のロッド45aは、駆動軸46の回転を規制するとともに、長さ調節可能に設けられている。第2のロッド45bは、駆動軸46の前端部と昇降リンク21とを繋いでいる。第2のロッド45bは、第1のロッド45aと同様、長さ調節可能に設けられている。
このように、整地ロータ40の駆動軸ケース40aと昇降リンク21とを繋いで駆動軸ケース40aが回転して前下がりになるのを規制することで、駆動軸46の屈曲量を少なくすることができる。これにより、駆動軸46の破損や摩耗を抑えることができる。また、駆動軸46の前端部に第2のロッド45bが設けられ、かつ、第1のロッド45aおよび第2のロッド45bをそれぞれ長さ調節可能とすることで、駆動軸46の屈曲量を最小限に抑えることができるとともに、機体の個体差に応じて2つのロッド45a,45bの長さを調節することができる。また、駆動軸46の落下を防止することができる。
また、第1のロッド45aと第2のロッド45bとは、苗植付部30が最も上昇している場合と最も下降している場合とで、駆動軸46と整地ロータ40との接続部分となる、角度変更機構であるユニバーサルジョイント47bによる最大折れ角が等しくなるように長さが設定されている。これにより、ユニバーサルジョイント47bによる最大折れ角を小さくすることができる。
なお、ロッド部材45(第1のロッド45a、第2のロッド45b)にターンバックルを設けることで、ロッド部材45の長さの調節が容易となる。また、たとえば、生産のばらつきがあっても、長さの調節が可能なため、最大折れ角を小さくすることができる。この場合、たとえば、苗植付部30が、上方にある場合を35度、下方にある場合を25度とするよりも、上下を共に30度などとした方が最大折れ角が小さくなり、ロッド部材45の耐久性が高まる。
また、図10に示すように、整地ロータ40は、吊下部材49a,49bによって昇降リンク21に吊り下げられている。このうち、吊下部材49aは、ロッド状の部材である。このように、吊下部材49aをロッド状の部材としても、駆動軸46の前端部に配置された第2のロッド45bが角度変更機構であるユニバーサルジョイント47bの屈曲角度を規制するため、駆動軸49の伸縮機構であるスプラインの掛かり代を確保することができる。また、吊下部材49bは、たとえば、スプリングなどの付勢部材である。吊下部材49bは、複数で整地ロータ40を吊り下げ支持してもよい。なお、吊下部材49bを備えない構成、すなわち、吊下部材49aのみの構成としてもよい。
また、図10に示すように、駆動軸46には、駆動軸46を保護する保護部材48が設けられている。保護部材48は、図11に示すように、ジャバラ部48aと、筒状部48bとを備えている。保護部材48は、ジャバラ部48aと筒状部48bとが一体となって設けられている。これにより、コスト低減が可能となる。また、保護部材48は、駆動軸46に取り付けられている場合に、筒状部48bがジャバラ部48aの位置を保持するように機能するため、駆動軸46の伸縮によってジャバラ部48aの位置ずれを防止することができる。
<補助ステップ70>
次に、図12および図13を参照して補助ステップ70について説明する。図12は、補助ステップ70の概略平面図である。図13は、補助ステップ70の概略斜視図である。なお、図12および図13は共に、機体の右側部を示している。図12および図13に示すように、作業車両である苗移植機1は、機体(メインフレーム5)の左右方向の外側に、作業者が操縦部14(図1参照)に昇降するための補助ステップ70を備えている。
補助ステップ70は、所定の厚さを有し、平面視において、略矩形に形成されるとともに、格子状に形成されたステップ部材(以下、「ステップ板」という)71を備えている。このように、ステップ板71が格子状であるため、作業者の靴などに付着した泥などを機体の下方に落とすことができる。また、ステップ板71は、たとえば、前後方向の長さが100mm以上、左右方向の長さが30mm以上であることが好ましい。これにより、作業者は操縦部10に安全に乗り降りすることができる。
また、図12および図13に示すように、ステップ板71の上面には、複数の突起71aが設けられている。このように、ステップ板71は、上面に複数の突起71aがあるため、作業者がステップ板71に足をかけた場合にすべりにくいものとなる。
補助ステップ70は、補助フレーム72と、補助プレート73と、補助部材74とをさらに備えている。補助フレーム72は、U字状に屈曲形成されるとともに、メインフレーム5に溶接によって固定され、メインフレーム5の左右方向の外側において屈曲部分が斜め下方に向けて延びている。補助プレート73は、図12に示すように、L字状に形成されたプレートであり、平面視において補助フレーム72内に設けられている。補助プレート73は、溶接によって補助フレームに固定されている。また、補助プレート73の上面には、穴部73aが形成されている。
ステップ板71は、補助フレーム72および補助プレート73の上部に配置されるとともに、補助プレート73の穴部73aにボルトなどの固定部材75が取り付けられることで、固定部材75を介して補助プレート73の上面に固定される。補助部材74は、棒状に形成され、メインフレーム5の下方において左右方向にロッド状に延びて設けられている。補助部材74(以下、「補助ロッド」という)74は、左右の側端部が、補助プレート73に溶接によって固定されている。
上記したように、補助ステップ70が、ステップ板71、補助フレーム72、補助プレート73および補助ロッド74によって多重に構成されるため、補助ステップ70の強度を向上させることができる。また、補助フレーム72がU字状であり、かつ、補助フレーム72上に設けられるステップ板71が上面(平面)視で格子状であるため、上方から地面が見えるなど、視認性を向上させることができる。また、補助プレート73の穴部73aに取り付けられる固定部材75によって、ステップ板71は強固に固定される。また、左右方向に延びた補助ロッド74によって、ステップ板71に外方から力が加わってもずれが生じにくい。これにより、補助ステップ70の強度を向上させることができる。
また、補助フレーム72がステップ板71を囲むように設けられているため、作業者が前後方向に足を滑らせるのを防止することができる。また、補助プレート73の穴部73aは、たとえば、略六角形のザグリ空間である。穴部73aがザグリであるため、固定部材75がボルトの場合に、ボルト(固定部材)75を穴部73aに落とし込んで固定することができる。また、この場合、下方からナットを取り付けることで、ステップ板71を強固に固定することができるとともに、組み付けが容易となる。
なお、補助ステップ70は、機体の左右方向の両側部(外側)に設けられる構成としているが、左右のいずれか一方だけに設けられる構成としてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。