図1には、ロータリ耕耘仕様に構成したトラクタ(作業車及び走行車体の一例)1の全体側面が示されている。このトラクタ1は、その後部に、リンク機構2を介して、ロータリ耕耘装置(作業装置の一例)3を昇降可能かつローリング可能に連結することで、ロータリ耕耘仕様に構成されている。
トラクタ1の前部には、水冷式のエンジン4やラジエータ5などが搭載されるとともに左右一対の前輪6が配備されている。トラクタ1の後部には、左右一対の後輪7や後部フレームに兼用されたミッションケース8などが配備されるとともに搭乗運転部9が形成されている。
図1及び図2に示すように、搭乗運転部9の前部には、車速などの情報を表示する表示パネル10や、左右の前輪6に連係されたステアリングホイール11などが配備されている。搭乗運転部9の後部には運転座席12などが配備されている。
図1及び図3に示すように、エンジン4からの動力は、主クラッチ13などを介して主変速装置14に伝達されている。そして、主変速装置14による変速後の動力が、前後進切換装置15、副変速装置16、及び、前輪伝動切換装置17と前輪用差動装置18、又は、後輪用作動装置19などを介して、左右の前輪6及び左右の後輪7に走行用の動力として伝達されている。一方、主変速装置14からの非変速動力が、作業クラッチ20及び作業用変速装置21などを介して、ミッションケース8の後端部から後方に向けて延出する動力取出軸22に作業用の動力として伝達されている。そして、その作業用の動力が、動力取出軸22から軸伝動式の伝動機構23を介してロータリ耕耘装置3に伝達されている。
図1〜3に示すように、主クラッチ13は、搭乗運転部9の左足元部に配備した主クラッチペダル24の踏み込み操作で、エンジン4から主変速装置14に伝動する入り状態から、その伝動を遮断する切り状態に切り換わる。
主変速装置14は、運転座席12の左側方に配備した主変速レバー25の揺動操作によって、主変速レバー25の操作位置に応じた変速状態に切り換わる。
前後進切換装置15は、ステアリングホイール11の左下方に配備した前後進切換レバー26の揺動操作によって、前後進切換レバー26の操作位置に応じた前後進いずれかの伝動状態に切り換わる。
副変速装置16は、主変速レバー25の近傍に配備した副変速レバー27の揺動操作によって、副変速レバー27の操作位置に応じた変速状態に切り換わる。
図3及び図4に示すように、前輪伝動切換装置17は、副変速装置16から左右の前輪6への伝動を断続する標準クラッチ28と増速クラッチ29、標準クラッチ28から左右の前輪6に伝動するギヤ式の標準伝動機構30、及び、増速クラッチ29から左右の前輪6に伝動するギヤ式の増速伝動機構31、などを備えて構成されている。
標準クラッチ28及び増速クラッチ29には多板型の油圧クラッチが採用されている。そして、標準クラッチ28及び増速クラッチ29は、それらに対する作動油の流動を切り換える電磁制御弁からなる前輪伝動制御弁32の作動によって、副変速装置16から左右の前輪6への伝動を遮断する非伝動状態、その伝動を標準クラッチ28及び標準伝動機構30を介して行う標準伝動状態、及び、その伝動を増速クラッチ29及び増速伝動機構31を介して行う増速伝動状態、のうちのいずれかの状態に切り換わる。
標準伝動機構30は、標準クラッチ28を介して伝達される走行用の動力で、左右の前輪6を、左右の後輪7と同調する速度で駆動させるように構成されている。増速伝動機構31は、増速クラッチ29を介して伝達される走行用の動力で、左右の前輪6を、左右の後輪7の約2倍の速度で駆動させるように構成されている。
つまり、前輪伝動切換装置17は、前輪伝動制御弁32の作動で標準クラッチ28及び増速クラッチ29が非伝動状態に切り換えられることで、左右の前輪6を従動させる前輪従動状態に切り換わる。前輪伝動制御弁32の作動で標準クラッチ28及び増速クラッチ29が標準伝動状態に切り換えられることで、左右の前輪6を左右の後輪7と同調する速度で駆動させる前輪駆動状態に切り換わる。前輪伝動制御弁32の作動で標準クラッチ28及び増速クラッチ29が増速伝動状態に切り換えられることで、左右の前輪6を左右の後輪7の約2倍の速度で駆動させる前輪増速状態に切り換わる。
図3及び図5に示すように、作業クラッチ20には多板型の油圧クラッチが採用されている。そして、作業クラッチ20は、それに対する作動油の流動を切り換える電磁制御弁からなる作業クラッチ制御弁33の作動で、主変速装置14から作業用変速装置21に伝動する入り状態と、その伝動を遮断する切り状態とに切り換わる。
図2及び図3に示すように、作業用変速装置21は、主変速レバー25の近傍に配備した作業用変速レバー34の揺動操作によって、作業用変速レバー34の操作位置に応じた変速状態に切り換わる。
図2〜5に示すように、ミッションケース4の左右には多板型のサイドブレーキ35が装備されている。左右のサイドブレーキ35は、搭乗運転部9の右足元部に配備した左右一対のブレーキペダル36のうちの対応するものに、ブレーキシリンダ37や連係ロッド38などを介して連係されている。そして、対応するブレーキペダル36の踏み込み操作が行われた場合には、そのブレーキペダル36の踏み込み操作量に応じた制動力で対応する後輪7を制動するように構成されている。
左右の各ブレーキシリンダ37には単動型の油圧シリンダが採用されている。左右のブレーキシリンダ37は、それらに対する作動油の流動を切り換える電磁制御弁からなる制動制御弁39の作動で伸縮駆動されることで、対応するサイドブレーキ35を非制動状態と制動状態とに切り換える。
つまり、左右のサイドブレーキ35は、対応するブレーキペダル36の踏み込み操作が行われていない場合であっても、制動制御弁39の作動で対応するブレーキシリンダ37が短縮駆動されることで、対応する後輪7を制動するように構成されている。
図1、図2、図5及び図6に示すように、ミッションケース8の後端上部には、左右一対のリフトアーム40が上下揺動可能に装備されている。ミッションケース8の後方には、対応するリフトアーム40を上下方向に揺動駆動する左右一対の昇降シリンダ41が配備されている。左右の昇降シリンダ41には単動型の油圧シリンダが採用されている。
図5に示すように、左右の昇降シリンダ41は、それらに対する作動油の流動を切り換える電磁制御弁からなる昇降制御弁42の作動で伸縮駆動されることで、左右のリフトアーム40を上下方向に揺動駆動する。
図1、図5及び図6に示すように、リンク機構2は、ミッションケース8の後端上部に上下揺動可能に連結された上部リンク43と、ミッションケース8の後端下部に上下揺動可能に連結された左右一対の下部リンク44とを備える3点リンク式に構成されている。左側の下部リンク44は、左側のリフトアーム40と連動するように、その前後中間部が連係ロッド45を介して左側のリフトアーム40に連結されている。右側の下部リンク44は、右側のリフトアーム40と連動するように、その前後中間部がローリングシリンダ46を介して右側のリフトアーム40に連結されている。ローリングシリンダ46には、復動型の油圧シリンダが採用されている。
図5に示すように、ローリングシリンダ46は、それに対する作動油の流動を切り換える電磁制御弁からなるローリング制御弁47の作動で伸縮駆動されることで、右側の下部リンク44を上下方向に揺動駆動する。
つまり、昇降制御弁42の作動で左右の昇降シリンダ41を伸縮駆動させることで、ロータリ耕耘装置3を昇降させることができ、ローリング制御弁47の作動でローリングシリンダ46を伸縮駆動させることで、ロータリ耕耘装置3をローリングさせることができる。
図5に示すように、このトラクタ1にはマイクロコンピュータからなる制御装置48が装備されている。制御装置48には、左右の前輪6に対する伝動などを制御して走行状態を切り換える走行制御手段48a、ロータリ耕耘装置3の昇降を制御する昇降制御手段48b、ロータリ耕耘装置3のローリングを制御するローリング制御手段48c、及び、動力取出軸22に対する伝動を制御する作業伝動制御手段48d、などが制御プログラムとして備えられている。
走行制御手段48aには、左右の前輪6への伝動を遮断して左右の後輪7のみを駆動させる2輪駆動モード、左右の前輪6に伝動して左右の前輪6及び後輪7を駆動させる4輪駆動モード、左右の前輪6及び後輪7を駆動させ、かつ、設定角度以上のステアリング操作に連動して左右の前輪6を増速させる小旋回モード、及び、左右の前輪6及び後輪7を駆動させ、かつ、設定角度以上のステアリング操作に連動して左右の前輪6を増速させるとともに旋回内側の後輪7を制動させる急旋回モード、が走行用の制御モードとして備えられている。
図2、図5、図7及び図8に示すように、走行制御手段48aは、表示パネル10の左下方に配備したワンタッチ操作式の走行モード選択用の選択スイッチ(選択操作具の一例)49が押圧操作されるごとに、使用する走行用の制御モードを順次切り換えるとともに、表示パネル10の左端部に上下に並べて配備した4つの表示灯50〜53のうち、使用が選択された走行用の制御モードに対応するものを点灯させる。
そして、走行モード選択用の選択スイッチ49の押圧操作によって2輪駆動モードの使用が選択された場合には、その選択に伴って、前輪伝動切換装置17が前述した前輪従動状態に切り換わるように前輪伝動制御弁32の作動を制御する。これによって、左右の後輪7のみを駆動させる2輪駆動状態が現出される。
4輪駆動モードの使用が選択された場合には、その選択に伴って、前輪伝動切換装置17が前述した前輪駆動状態に切り換わるように前輪伝動制御弁32の作動を制御する。これによって、左右の前輪6を左右の後輪7と同調する速度で駆動させる4輪駆動状態が現出される。
小旋回モードの使用が選択された場合には、ピットマンアーム(図示せず)の左右方向への揺動操作角度を前輪6の操向角度として検出する操向センサ54からの検出値に基づいて、直進状態から設定角度以上のステアリング操作(例えば前輪6の操向角度が30度以上となるステアリング操作)が行われたか否かを判別する。ステアリング操作が設定角度未満である場合には、前述した4輪駆動状態が現出されるように前輪伝動制御弁32の作動を制御する。ステアリング操作が設定角度以上である場合には、副変速装置の出力回転数を車速として検出する車速センサ55からの検出値に基づいて、車速が予め設定した作業速度範囲内(例えば0.2〜5.0km/hの間)であるか否かを判別する。車速が予め設定した作業速度範囲外である場合には、前述した4輪駆動状態が現出されるように前輪伝動制御弁32の作動を制御する。車速が予め設定した作業速度範囲内である場合には、前輪伝動切換装置17が前述した前輪増速状態に切り換わるように前輪伝動制御弁32の作動を制御して、左右の前輪6を左右の後輪7の約2倍の速度で駆動させる。これによって、車体を4輪駆動状態よりも小さい旋回半径で旋回させる小旋回状態が現出される。
つまり、小旋回モードでは、車速を予め設定した作業速度範囲内とした状態で、直進状態から設定角度以上のステアリング操作を行うことで、車体を4輪駆動状態よりも小さい旋回半径で旋回させることができる。
急旋回モードの使用が選択された場合には、操向センサ54からの検出値に基づいて、直進状態から設定角度以上のステアリング操作が行われたか否かを判別する。ステアリング操作が設定角度未満である場合には、前述した4輪駆動状態が現出されるように前輪伝動制御弁32の作動を制御する。ステアリング操作が設定角度以上である場合には、車速センサ55からの検出値に基づいて、車速が予め設定した作業速度範囲内であるか否かを判別する。車速が予め設定した作業速度範囲外である場合には、前述した4輪駆動状態が現出されるように前輪伝動制御弁32の作動を制御する。車速が予め設定した作業速度範囲内である場合には、その車速が作業速度範囲内の低速領域内(例えば0.2〜3.5km/hの間)であるか高速領域内(例えば3.6〜5.0km/hの間)であるかを判別する。車速が高速領域内である場合には、前述した小旋回状態が現出されるように前輪伝動制御弁32の作動を制御する。車速が低速領域内である場合には、前輪伝動切換装置17が前述した前輪増速状態に切り換わるように前輪伝動制御弁32の作動を制御するとともに、操向センサ54からの検出値に基づいて、旋回内側のサイドブレーキ35が制動状態に切り換わるように制動制御弁39の作動を制御する。これによって、車体を小旋回状態よりも小さい旋回半径で旋回させる急旋回状態が現出される。
つまり、急旋回モードでは、車速を予め設定した作業速度範囲内の高速領域内とした状態で、直進状態から設定角度以上のステアリング操作を行うことで、車体を4輪駆動状態よりも小さい旋回半径で旋回させることができ、又、車速を予め設定した作業速度範囲内の低速領域内とした状態で、直進状態から設定角度以上のステアリング操作を行うことで、車体を小旋回状態よりも更に小さい旋回半径で旋回させることができる。
ちなみに、操向センサ54には回転式のポテンショメータが採用され、車速センサ55には電磁ピックアップ式の回転センサが採用されている。
昇降制御手段48bには、ロータリ耕耘装置3を任意の高さ位置まで昇降させる任意昇降モード、ロータリ耕耘装置3の実耕深に基づいてロータリ耕耘装置3を標準の制御感度で設定耕深に維持する標準定深モード(自動定深モードの一例)、ロータリ耕耘装置3の実耕深に基づいてロータリ耕耘装置3を敏感な制御感度で設定耕深に維持する敏感定深モード(自動定深モードの一例)、及び、エンジン負荷に基づいてロータリ耕耘装置3を設定耕深に維持する負荷定深モード(自動定深モードの一例)、これらの制御モードに優先してロータリ耕耘装置3を予め設定した上限位置又は下限位置まで昇降させる優先昇降モード、設定角度以上のステアリング操作に連動してロータリ耕耘装置3を予め設定した上限位置まで上昇させる旋回上昇モード、及び、後進状態への切り換えに連動してロータリ耕耘装置3を予め設定した上限位置まで上昇させる後進上昇モード、が昇降用の制御モードとして備えられている。
図1、図2、図5及び図6に示すように、昇降制御手段48bは、運転座席12の右側方に配備した昇降レバー56の揺動操作に基づいて任意昇降モードを実行する。そして、この任意昇降モードでは、昇降レバー56の操作位置を検出するレバーセンサ57からの検出値と、リフトアーム40の上下揺動角度を検出するリフトアームセンサ58からの検出値と、それらの検出値を、レバーセンサ57からの検出値をロータリ耕耘装置3の目標高さ位置とし、リフトアームセンサ58からの検出値をロータリ耕耘装置3の実高さ位置として対応させた相関関係データとに基づいて、リフトアームセンサ58からの検出値がレバーセンサ57からの検出値と対応する(レバーセンサ57からの検出値の不感帯幅内に収まる)ように昇降制御弁42の作動を制御する。
つまり、任意昇降モードでは、昇降レバー56の揺動操作によって、昇降レバー56の操作位置に対応する任意の高さ位置までロータリ耕耘装置3を昇降させることができる。
ちなみに、レバーセンサ57及びリフトアームセンサ58には回転式のポテンショメータが採用されている。又、上記の相関関係データにはマップデータや相関関係式などを採用することができる。
図1、図2及び図5〜8に示すように、昇降レバー56の後方には操作パネル59が配備されており、昇降制御手段48bは、その操作パネル59に備えたワンタッチ操作式の自動定深モード選択用の選択スイッチ(選択操作具の一例)60が押圧操作されるごとに、使用する自動定深モードを、標準定深モードと敏感定深モードと負荷定深モードとに順次切り換えるとともに、表示パネル10に備えた2つの表示灯61,62と、操作パネル59に備えた3つの表示灯63〜65のうち、使用が選択された自動定深モードに対応するものを点灯させる。そして、レバーセンサ57からの検出値に基づいて、昇降レバー56が、その揺動操作領域の最下降位置側に設けたフローティング領域に揺動操作されたことを検知した場合に、任意昇降モードに優先して予め選択された自動定深モードを実行する。
そして、定深モード選択用の選択スイッチ60の押圧操作によって標準定深モードの使用が選択された場合には、操作パネル59に備えた耕深設定器66からの出力値と、ロータリ耕耘装置3における耕深の変動に伴って上下揺動する後部カバー67の上下揺動角度を検出するカバーセンサ68からの検出値と、その出力値及び検出値を、耕深設定器66からの出力値をロータリ耕耘装置3の設定耕深とし、カバーセンサ68からの検出値をロータリ耕耘装置3の実耕深として対応させた相関関係データとに基づいて、カバーセンサ68からの検出値が、標準の制御感度で耕深設定器66からの出力値と対応する(耕深設定器66からの出力値の不感帯幅内に収まる)ように、昇降制御弁42の作動を制御する。
つまり、標準定深モードでは、カバーセンサ68で検出されるロータリ耕耘装置3の実耕深に基づいて、ロータリ耕耘装置3を耕深設定器66で設定した設定耕深に標準の制御感度で維持することができる。
敏感定深モードの使用が選択された場合には、耕深設定器66からの出力値と、カバーセンサ68からの検出値と、その出力値及び検出値を、耕深設定器66からの出力値をロータリ耕耘装置3の設定耕深とし、カバーセンサ68からの検出値をロータリ耕耘装置3の実耕深として対応させた相関関係データとに基づいて、カバーセンサ68からの検出値が、標準の制御感度よりも高い制御感度で耕深設定器66からの出力値と対応する(耕深設定器66からの出力値の不感帯幅内に収まる)ように、昇降制御弁42の作動を制御する。
つまり、敏感定深モードでは、ロータリ耕耘装置3を耕深設定器66で設定した設定耕深に標準の制御感度よりも高い制御感度でより精度良く維持することができる。
ちなみに、耕深設定器66及びカバーセンサ68には回転式のポテンショメータが採用されている。又、上記の相関関係データにはマップデータや相関関係式などを採用することができる。制御感度の変更は、耕深設定器66からの出力値の不感帯幅や制御応答速度などを変更することで行える。
負荷定深モードの使用が選択された場合には、基本的に、操作パネル59に備えた耕深設定器66からの出力値と、リフトアームセンサ58からの検出値と、その出力値及び検出値を、耕深設定器66からの出力値をロータリ耕耘装置3の設定耕深とし、リフトアームセンサ58からの検出値をロータリ耕耘装置3の実高さ位置として対応させた相関関係データとに基づいて、リフトアームセンサ58からの検出値が耕深設定器66からの出力値と対応する(耕深設定器66からの出力値の不感帯幅内に収まる)ように、昇降制御弁42の作動を制御する。そして、エンジン回転数を検出する回転センサ69からの検出値を監視し、エンジン回転数が低下すると、ロータリ耕耘装置3の実耕深が深くなってエンジン負荷が増大したと判断し、その判断に基づいて、ロータリ耕耘装置3の実高さ位置が高くなるように昇降制御弁42の作動を制御してエンジン負荷を低下させる。この上昇制御によってエンジン回転数が回復すると、リフトアームセンサ58からの検出値が耕深設定器66からの出力値と対応する(ロータリ耕耘装置3の実高さ位置が設定耕深に復帰する)ように、昇降制御弁42の作動を制御する。
つまり、負荷定深モードでは、回転センサ69からの検出値に基づいて、実耕深の変動に伴って変化するエンジン負荷を考慮したロータリ耕耘装置3の昇降制御を行うことで、カバーセンサ68からの検出値に関係なく、ロータリ耕耘装置3を設定耕深に維持することができる。
これによって、カバーセンサ68を大きく持ち上げた状態で行う水田荒起こし作業や内盛り耕耘作業あるいは畝立て作業などのロータリ耕耘作業においては、負荷定深モードの使用を選択しておくことで、ロータリ耕耘装置3の実耕深を設定耕深に維持した適切なロータリ耕耘作業を行うことができる。
ちなみに、回転センサ69には、エンジン4の出力回転数を検出する電磁ピックアップ式のものが採用されている。又、上記の相関関係データにはマップデータや相関関係式などを採用することができる。
昇降制御手段48bは、ステアリングホイール11の右下方に配備した中立復帰型の優先レバー70の揺動操作に基づいて優先昇降モードを実行する。そして、この優先昇降モードでは、優先レバー70の揺動操作を検出する優先センサ71からの出力に基づいて、優先レバー70の上方への揺動操作を検知した場合に、表示パネル10に備えた優先昇降モードに対応する表示灯72を点灯させるとともに、操作パネル59に備えた上限設定器73からの出力値と、リフトアームセンサ58からの検出値と、その出力値及び検出値を、上限設定器73からの出力値をロータリ耕耘装置3の設定上限位置とし、リフトアームセンサ58からの検出値をロータリ耕耘装置3の実高さ位置として対応させた相関関係データとに基づいて、リフトアームセンサ58からの検出値が上限設定器73からの出力値と対応する(上限設定器73からの出力値の不感帯幅内に収まる)ように、昇降制御弁42の作動を制御する。
逆に、優先レバー70の下方への揺動操作を検知した場合には、表示灯72を消灯させるとともに、レバーセンサ57からの検出値に基づいて昇降レバー56の操作位置を判別する。昇降レバー56が前述したフローティング領域外である場合には、レバーセンサ57からの検出値と、リフトアームセンサ58からの検出値と、それらの検出値を対応させた相関関係データとに基づいて、リフトアームセンサ58からの検出値が、レバーセンサ57からの出力値と対応する(レバーセンサ57からの検出値の不感帯幅内に収まる)ように、昇降制御弁42の作動を制御する。昇降レバー56が前述したフローティング領域内である場合には、使用が選択されている自動定深モードを判別し、使用が選択されている自動定深モードが標準定深モード又は敏感定深モードである場合には、耕深設定器66からの出力値と、カバーセンサ68からの検出値と、その出力値と検出値とを対応させた相関関係データとに基づいて、カバーセンサ68からの検出値が耕深設定器66からの出力値と対応する(耕深設定器66からの出力値の不感帯幅内に収まる)ように、昇降制御弁42の作動を制御する。使用が選択されている自動定深モードが負荷定深モードである場合には、耕深設定器66からの出力値と、リフトアームセンサ58からの検出値と、その出力値と検出値とを対応させた相関関係データとに基づいて、リフトアームセンサ58からの検出値が耕深設定器66からの出力値と対応する(耕深設定器66からの出力値の不感帯幅内に収まる)ように、昇降制御弁42の作動を制御する。
つまり、優先レバー70を上方に向けて揺動操作することで、ロータリ耕耘装置3を上限設定器73で予め設定した上限位置まで自動上昇させることができる。逆に、優先レバー70を下方に向けて揺動操作することで、ロータリ耕耘装置3を、昇降レバー56で予め設定した任意の高さ位置(下限位置の一例)、又は、耕深設定器66で設定した設定耕深(下限位置の一例)まで自動下降させることができる。
ちなみに、優先センサ71には、優先レバー70の上方への揺動操作に連動して閉操作される第1接点と、優先レバー70の下方への揺動操作に連動して閉操作される第2接点とを備えたスイッチが採用されている。上限設定器73には回転式のポテンショメータが採用されている。又、上記の相関関係データにはマップデータや相関関係式などを採用することができる。
昇降制御手段48bは、操作パネル59に備えたワンタッチ操作式の旋回上昇モード選択用の選択スイッチ(選択操作具の一例)74が押圧操作されるごとに、旋回上昇モードの使用を選択した選択状態と、その選択を解除した選択解除状態とに切り換わるとともに、使用の選択に伴って、表示パネル10に備えた旋回上昇モードに対応する表示灯75と、操作パネル59に備えた旋回上昇モードに対応する表示灯76とを点灯させ、使用の選択解除に伴ってそれらの表示灯75,76を消灯させる。
そして、旋回上昇モードの使用が選択された場合には、車速センサ55からの検出に基づいて走行を検知し、レバーセンサ57からの検出値に基づいてロータリ耕耘装置3の接地(昇降レバー56のフローティング領域への操作)を検知した作業走行状態において、操向センサ54からの検出値に基づいて、直進状態から設定角度以上のステアリング操作(例えば前輪6の操向角度が30度以上となるステアリング操作)が行われたことを検知すると、上限設定器73からの出力値と、リフトアームセンサ58からの検出値と、その出力値と検出値とを対応させた相関関係データとに基づいて、リフトアームセンサ58からの検出値が上限設定器73からの出力値と対応する(上限設定器73からの出力値の不感帯幅内に収まる)ように、昇降制御弁42の作動を制御する。
つまり、旋回上昇モードの使用を選択することで、作業走行状態において直進状態から設定角度以上のステアリング操作を行う畦際旋回時には、そのときのステアリング操作に連動してロータリ耕耘装置3を上限設定器73で設定した上限位置まで自動上昇させることができる。
昇降制御手段48bは、操作パネル59に備えたワンタッチ操作式の後進上昇モード選択用の選択スイッチ(選択操作具の一例)77が押圧操作されるごとに、後進上昇モードの使用を選択した選択状態と、その選択を解除した選択解除状態とに切り換わるとともに、使用の選択に伴って、表示パネル10に備えた後進上昇モードに対応する表示灯78と、操作パネル59に備えた後進上昇モードに対応する表示灯79とを点灯させ、使用の選択解除に伴ってそれらの表示灯78,79を消灯させる。
そして、後進上昇モードの使用が選択された場合には、車速センサ55からの検出に基づいて走行を検知し、レバーセンサ57からの検出値に基づいてロータリ耕耘装置3の接地を検知した作業走行状態において、前後進切換レバー26の操作位置から前後進切換装置15の伝動状態を検出する前後進センサ80からの検出値に基づいて、前進状態から後進状態への切り換えを検知すると、上限設定器73からの出力値と、リフトアームセンサ58からの検出値と、その出力値と検出値とを対応させた相関関係データとに基づいて、リフトアームセンサ58からの検出値が上限設定器73からの出力値と対応する(上限設定器73からの出力値の不感帯幅内に収まる)ように、昇降制御弁42の作動を制御する。
つまり、後進上昇モードの使用を選択することで、作業走行状態において前進状態から後進状態に切り換えると、その切り換え操作に連動してロータリ耕耘装置3を上限設定器73で設定した上限位置まで自動上昇させることができる。
ちなみに、前後進センサ80には、前後進切換レバー26の前進位置への揺動操作に伴って開操作され、前後進切換レバー26の後進位置への揺動操作に伴って閉操作されるスイッチが採用されている。
昇降制御手段48bには、使用するリンク機構2によって変化する各相関関係データにおける各数値の対応関係を、標準仕様のリンク機構2を使用した場合に適正となるように補正する第1補正モードと、特別仕様のリンク機構2を使用した場合に適正となるように補正する第2補正モードとが、補正用の制御モードとして備えられている。
そして、昇降制御手段48bは、操作パネル59に備えたワンタッチ操作式の昇降補正モード選択用の選択スイッチ(選択操作具の一例)81が押圧操作されるごとに、使用する補正モードを順次切り換えるとともに、操作パネル59に備えた2つの表示灯82,83のうち、使用が選択された補正モードに対応するものを点灯させる。
つまり、使用するリンク機構2の仕様に対応する補正モードを選択することで、リンク機構2の仕様に適した良好な昇降制御を行わせることができる。
ローリング制御手段48cには、水平圃場においてロータリ耕耘装置3のローリング角度を予め設定した設定角度に維持する水平モード、傾斜圃場での等高線に沿った作業走行時においてロータリ耕耘装置3のローリング角度を予め設定した設定角度に維持する傾斜モード、及び、これらの制御モードに優先してロータリ耕耘装置3をローリングさせる優先モード、がローリング用の制御モードとして備えられている。
ローリング制御手段48cは、操作パネル59に備えたワンタッチ操作式のローリングモード選択用の選択スイッチ(選択操作具の一例)84が押圧操作されるごとに、使用するローリング用の制御モードを水平モードと傾斜モードとに順次切り換えるとともに、表示パネル10に備えた表示灯85を点灯させ、かつ、操作パネル59に備えた2つの表示灯86,87のうち、使用が選択された制御モードに対応するものを点灯させる。
そして、作業地選択スイッチ84の押圧操作によって水平モードの使用が選択された場合には、トラクタ1のローリング角度を検出する傾斜センサ88からの検出値と、トラクタ1のローリング角速度を検出する角速度センサ89からの検出値とに基づいて、トラクタ1の実ローリング角度を算出し、その算出値と、操作パネル59に備えたローリング角度設定器90からの出力値と、トラクタ1に対するロータリ耕耘装置3のローリング角度とローリングシリンダ46の長さとを対応させた相関関係データとに基づいて、ローリングシリンダ46の目標長さを設定し、その設定値と、ローリングシリンダ46の長さを検出するストロークセンサ91からの検出値とに基づいて、ストロークセンサ91からの検出値が設定値と一致する(設定値の不感帯幅内に収まる)ように、ローリング制御弁47の作動を制御することで、ロータリ耕耘装置3をローリング角度設定器90で設定した目標ローリング角度に維持する。
ちなみに、傾斜センサ88には重錘式のものが採用され、角速度センサ89には振動ジャイロ式のものが採用され、ローリング角度設定器90には回転式のポテンショメータが採用され、ストロークセンサ91には摺動式のポテンショメータが採用されている。又、上記の相関関係データにはマップデータや相関関係式などを採用することができる。
傾斜モードの使用が選択された場合には、基本的に、水平モードの使用が選択された場合と同様の制御作動を行うが、谷側車輪の沈下を考慮して、ローリング角度設定器90からの出力値(ロータリ耕耘装置3の目標ローリング角度)を自動的に補正する。これによって、傾斜圃場での谷側車輪の沈下にかかわらず、ロータリ耕耘装置3をローリング角度設定器90で設定した目標ローリング角度に精度良く維持することができる。
ローリング制御手段48cは、操作パネル59に備えた中立復帰型の優先スイッチ92の揺動操作に基づいて優先モードを実行する。そして、この優先モードでは、優先スイッチ92が右方向に揺動操作された場合には、水平モードや傾斜モードに優先して、優先スイッチ92が右方向に揺動操作されている間、ローリングシリンダ46が伸長駆動されるようにローリング制御弁47の作動を制御する。これによって、ロータリ耕耘装置3を左上がり方向に任意にローリングさせることができる。逆に、優先スイッチ92が左方向に揺動操作された場合には、水平モードや傾斜モードに優先して、優先スイッチ92が左方向に揺動操作されている間、ローリングシリンダ46が短縮駆動されるようにローリング制御弁47の作動を制御する。これによって、ロータリ耕耘装置3を左下がり方向に任意にローリングさせることができる。そして、優先スイッチ92の揺動操作が解除されて優先スイッチ92が中立位置に復帰した場合には、ロータリ耕耘装置3がローリング角度設定器90で設定した設定角度に復帰するようにローリング制御弁47の作動を制御する。
ローリング制御手段48cには、使用するロータリ耕耘装置3によって変化する相関関係データにおけるトラクタ1に対するロータリ耕耘装置3のローリング角度とローリングシリンダ46の長さとの対応関係を、第1仕様のロータリ耕耘装置3を使用した場合に適正となるように補正する第1補正モードと、第2仕様のロータリ耕耘装置3を使用した場合に適正となるように補正する第2補正モードと、第3仕様のロータリ耕耘装置3を使用した場合に適正となるように補正する第3補正モードとが、補正用の制御モードとして備えられている。
そして、ローリング制御手段48cは、操作パネル59に備えたワンタッチ操作式のローリング補正モード選択用の選択スイッチ(選択操作具の一例)93が押圧操作されるごとに、使用する補正モードを順次切り換えるとともに、操作パネル59に備えた3つの表示灯94〜96のうち、使用が選択された補正モードに対応するものを点灯させる。
つまり、使用するロータリ耕耘装置3の仕様に対応する補正モードを選択することで、ロータリ耕耘装置3の仕様に応じた適正なローリング制御を行わせることができる。
作業伝動制御手段48dには、動力取出軸22に伝動する出力モード、動力取出軸22への伝動を遮断する出力停止モード、及び、ロータリ耕耘装置3の昇降に連動して動力取出軸22に対する伝動を断続する出力断続モード、が動力取り出し用の制御モードとして備えられている。
作業伝動制御手段48dは、それらの動力取り出し用の制御モードに対応して操作パネル59に備えたワンタッチ操作式の3つの選択スイッチ(選択操作具の一例)97〜99のいずれかが押圧操作されることで、使用する動力取り出し用の制御モードを、その押圧操作された選択スイッチ97〜99に対応するものに切り換えるとともに、操作パネル59に備えた3つの表示灯100〜102のうち、使用が選択された制御モードに対応するものを点灯させる。
そして、3つの選択スイッチ97〜99のうちの出力モード選択用の選択スイッチ97の押圧操作によって出力モードの使用が選択された場合には、作業クラッチ20が入り状態に切り換わるように作業クラッチ制御弁33の作動を制御する。
出力停止モード選択用の選択スイッチ98の押圧操作によって出力停止モードの使用が選択された場合には、作業クラッチ20が切り状態に切り換わるように作業クラッチ制御弁33の作動を制御する。
出力断続モード選択スイッチ99の押圧操作によって出力断続モードの使用が選択された場合には、リフトアームセンサ58からの検出値に基づいて、ロータリ耕耘装置3が下降操作によって予め設定した設定高さ以下に下降したことを検知するのに伴って、作業クラッチ20が入り状態に切り換わるように作業クラッチ制御弁33の作動を制御する。逆に、ロータリ耕耘装置3が上昇操作によって予め設定した設定高さ以上に上昇したことを検知するのに伴って、作業クラッチ20が入り状態に切り換わるように作業クラッチ制御弁33の作動を制御する。
ちなみに、動力取出軸22に対する伝動を断続する際の判断基準となるロータリ耕耘装置3の設定高さとしては、例えば、ロータリ耕耘装置3が接地状態と浮上状態とに切り換わる高さ位置などに設定することが考えられる。
つまり、例えば肥料散布装置のように浮上状態で駆動させる必要のある作業装置を連結装備した場合には、出力モードの使用を選択することで、作業装置の昇降に関係なく、動力取出軸22から作業動力を取り出して作業装置を駆動させることができる。又、例えばプラウのようにトラクタ1からの動力を必要としない作業装置を連結装備した場合には、出力停止モードの使用を選択することで、作業装置の昇降に関係なく、動力取出軸22からの作業動力の取り出しを停止させることができる。そして、例えばロータリ耕耘装置3のようにその昇降に応じて駆動状態と停止状態とに切り換えることが望ましい作業装置を連結装備した場合には、出力断続モードの使用を選択することで、作業装置の昇降に応じて自動的に作業装置を駆動状態と停止状態とに切り換えることができる。又、作業装置を緊急停止させる必要が生じた場合には、出力停止モード選択用の選択スイッチ98を押圧操作することで、作業装置を迅速に停止させることができる。
図2、図5、図7及び図9に示すように、制御装置48には、一般的な作業地の状態や作業形態などを考慮して予め選定された制御モードの選択内容(制御モードの組み合わせ内容)を記憶した第1記憶手段48eが備えられている。第1記憶手段48eには、EEPROMやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリが採用されている。
ここでは、使用の選択が可能に構成された制御モードである2輪駆動モード、4輪駆動モード、小旋回モード、急旋回モード、標準定深モード、敏感定深モード、負荷定深モード、旋回上昇モード、後進上昇モード、昇降用の第1補正モード、昇降用の第2補正モード、水平モード、傾斜モード、ローリング用の第1補正モード、ローリング用の第2補正モード、ローリング用の第3補正モード、出力モード、出力停止モード、及び出力断続モードのうち、急旋回モード、標準定深モード、旋回上昇モード、後進上昇モード、昇降用の第1補正モード、水平モード、ローリング用の第1補正モード、及び出力断続モードを、予め選定された作業走行用の制御モードとする選択内容が第1記憶手段48eに記憶されている〔図9の(イ)参照〕。
各制御手段48a〜48dは、表示パネル10の右下方に配備したワンタッチ操作式の一括スイッチ(一括操作具の一例)103の押圧操作〔一括スイッチの押圧操作時間が予め設定した第1設定時間(例えば5秒)に達しない短い押圧操作〕が行われるごとに、第1記憶手段48eの記憶内容に基づいて、作業走行用として予め選定された全ての制御モードを、それらの使用を選択した選択状態(標準選択状態)と、その選択を解除した選択解除状態とに一括して切り換えるとともに、標準選択状態への切り換えに伴って、作業走行用として予め選定された全ての制御モードに対応する表示灯53,61,63,75,76,78,79,82,85,86,94,102、及び、一括スイッチ103に対応する表示灯104を点灯させ、選択解除状態への切り換えに伴って、それらの表示灯53,61,63,75,76,78,79,82,85,86,94,102,104を消灯させる。
つまり、一般的な作業地や作業形態で作業を行う場合には、作業走行を開始する際に一括スイッチ103を押圧操作するだけで、作業走行用として予め選定された全ての制御モードの使用を選択した標準選択状態を、簡単かつ確実に切り換え現出することができる。又、作業走行時には、それらの制御モードが適宜実行されることから、一般的な作業地の状態などが考慮された精度の高い作業を容易に行えるとともに、作業状況に対応する適切な作業走行状態を少ない操作で簡便に現出することができる。
又、移動走行を行う場合には、移動走行を開始する際に再び一括スイッチ103を押圧操作するだけで、作業走行用として予め選定された全ての制御モードの使用の選択を解除した選択解除状態に簡単かつ確実に切り換えることができ、それらの制御モードの選択解除を個々に行う場合に招く虞のある、選択の解除をし忘れた制御モードが移動走行時に不測に実行される不都合を未然に回避することができる。
尚、各制御手段48a〜48dは、一括スイッチ103の押圧操作に基づいて、作業走行用として予め選定された全ての制御モードの使用の選択を解除した場合には、使用の選択が可能に構成された制御モードのうちの2輪駆動モード及び出力停止モードの使用を選択した状態を、移動走行用の選択状態として現出するとともに〔図9の(ロ)参照〕、それらの制御モードに対応する表示灯50,101を点灯させるようになっている。そして、その移動走行用の制御モードの選択内容も第1記憶手段48eに記憶されている。
制御装置48には、一括スイッチ103の第1長押し操作〔一括スイッチの押圧操作時間が予め設定した第1設定時間以上で第2設定時間(例えば10秒)に達しない比較的長い押圧操作〕が行われた場合に、その第1長押し操作が行われた段階での制御モードの選択内容を記憶する第2記憶手段48fが備えられている。第2記憶手段48fには、EEPROMやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリが採用されている。
各制御手段48a〜48dは、一括スイッチ103の第1長押し操作が行われた場合には、一括スイッチ103の押圧操作によって現出される作業走行用の制御モードの選択状態を、そのときの一括スイッチ103の第1長押し操作によって第2記憶手段48fに記憶される選択内容に基づくものに設定変更するように構成されている。
この構成から、予め選定された制御モードが作業地の状況や作業形態などに対応していない場合には、適当な選択スイッチ49,60,74,77,81,84,93,97〜99を操作して、作業地の状況や作業形態などに対応する制御モードを任意に選択した後に、一括スイッチ103の第1長押し操作を行うようにすれば、その任意の選択内容を作業走行用の選択内容として第2記憶手段48fに記憶させることができるとともに、一括スイッチ103の押圧操作によって現出される作業走行用の制御モードの選択状態を、予め選定された制御モードの使用を選択する標準選択状態から、任意に選定した制御モードの使用を選択する任意選択状態、すなわち、それぞれ異なる作業地の状況や作業形態などに対応させた適切な選択状態に設定変更することができる。
又、その設定変更後に任意選択状態での制御モードの選択内容を変更する場合には、適当な選択スイッチ49,60,74,77,81,84,93,97〜99を操作して任意の制御モードを選択した後に、一括スイッチ103の第1長押し操作を行うようにすれば、第2記憶手段48fの記憶内容を変更後の選択内容に更新することができるとともに、一括スイッチ103の押圧操作によって現出される作業走行用の制御モードの選択状態を、変更前の任意選択状態から変更後の任意選択状態に設定変更することができる。
つまり、一括スイッチ103の第1長押し操作が、一括スイッチ103の押圧操作に基づいて現出される作業走行用の制御モードの選択状態を、標準選択状態から任意選択状態、あるいは、変更前の任意選択状態から変更後の任意選択状態に設定変更する所定の更新操作となる。
その結果、一般的ではない特異な作業地や作業形態で作業を行う場合であっても、作業走行を開始する際に一括スイッチ103を押圧操作するだけで、特異な作業地や作業形態などに対応させて任意に選定した全ての制御モードの使用を選択した任意選択状態を、簡単かつ確実に切り換え現出することができる。又、作業走行時には、それらの制御モードが適宜実行されることから、それぞれ異なる作業地の状態などが考慮された精度の高い作業を容易に行えるとともに、作業状況に対応する独自の適切な作業走行状態を少ない操作で簡便に現出することができる。
又、任意に選択した作業走行用の制御モードの選択内容を、不揮発性メモリからなる第2記憶手段48fに記憶させることで、その選択内容を、電源を落とした後も記憶保持することができ、電源を再投入した作業走行の際においても、一括スイッチ103の押圧操作によって、その選択内容に基づく任意選択状態を簡単かつ確実に切り換え現出することができる。
ちなみに、ここでは、使用の選択が可能に構成された制御モードである2輪駆動モード、4輪駆動モード、小旋回モード、急旋回モード、標準定深モード、敏感定深モード、負荷定深モード、旋回上昇モード、後進上昇モード、昇降用の第1補正モード、昇降用の第2補正モード、水平モード、傾斜モード、ローリング用の第1補正モード、ローリング用の第2補正モード、ローリング用の第3補正モード、出力モード、出力停止モード、及び出力断続モードのうち、小旋回モード、敏感定深モード、旋回上昇モード、後進上昇モード、昇降用の第1補正モード、傾斜モード、ローリング用の第1補正モード、及び出力断続モードを、任意に選定した作業走行用の制御モードとする選択内容が第2記憶手段48fに記憶されている〔図9の(ハ)参照〕。
そして、各制御手段48a〜48dは、一括スイッチ103の押圧操作に基づいて任意に選定した全ての制御モードの使用を選択した任意選択状態では、その使用が選択された制御モードに対応する表示灯52,61,64,75,76,78,79,82,85,87,94,102、及び、一括スイッチ103に対応する表示灯104を点灯させ、その選択を解除した選択解除状態では、それらの表示灯52,61,64,75,76,78,79,82,85,87,94,102,104を消灯させる。
各制御手段48a〜48dは、一括スイッチ103の第2長押し操作〔一括スイッチの押圧操作時間が予め設定した第2設定時間以上となる長い押圧操作〕が行われた場合には、一括スイッチ103の押圧操作によって現出される作業走行用の制御モードの選択状態を、任意選択状態から標準選択状態に設定変更するように構成されている。
つまり、一括スイッチ103の第2長押し操作が、一括スイッチ103の操作に基づいて現出される複数の制御モードの選択状態を、任意選択状態から標準選択状態に設定変更する所定の復元操作となる。
この構成から、一括スイッチ103の操作に基づいて現出される作業走行用の制御モードの選択状態を、標準選択状態を再現するための適当な選択スイッチ49,60,74,77,81,84,93,97〜99の操作を要することなく、任意選択状態から標準選択状態に簡単かつ確実に設定変更することができる。
又、一括スイッチ103の操作に基づいて現出される作業走行用の制御モードの選択状態を設定変更する上において、専用の操作具を設ける必要がないことから、部品点数の削減による構成の簡素化やコストの削減を図ることができ、更に、制御モードの一括選択操作と関係のない他の操作具を利用する場合に比較して操作の混乱を招き難くすることができる。
しかも、一括スイッチ103の操作に基づいて現出される作業走行用の制御モードの選択状態を設定変更する際の操作を、通常は行わない一括スイッチ103の長押し操作としたことで、一括スイッチ103の誤操作による選択状態の設定変更を効果的に防止することができる。
〔別実施形態〕
〔1〕作業車としては、走行車体に作業装置3の一例である苗植付装置を、昇降可能に又は昇降可能かつローリング可能に連結した乗用型田植機、作業に応じた作業装置3の付け換え(例えば苗植付装置と直播装置あるいは薬剤散布装置などの付け換え)が可能に構成された多目的水田作業車、走行車体に作業装置3の一例である刈取搬送装置などの収穫装置が昇降可能に連結されたコンバインなどの収穫作業車、あるいは、走行車体に作業装置3の一例である収穫装置が昇降可能に連結されるとともに走行車体の対地姿勢の変更が可能に構成された収穫作業車、などであってもよい。
〔2〕選択して使用される複数の制御モードとして、上記の実施形態で例示した複数の制御モードのうちのいくつかを備えるようにしてもよく、又、上記の実施形態で例示した複数の制御モード以外の他の制御モードを備えるようにしてもよい。ちなみに、他の制御モードとしては、トラクタ1にプラウなどの牽引型の作業装置3を昇降可能に連結した作業走行時に、そのときの牽引負荷が予め設定した設定値に維持されるように作業装置3を昇降させる牽引作業用のドラフト制御や、エンジン負荷に応じて走行速度を変速する自動変速制御、などがある。
〔3〕標準選択状態での制御モードの選択内容としては、作業車の種類などに応じて種々の変更が可能である。又、標準選択状態での制御モードの選択内容として、選択内容の異なるものを複数備えるとともに、それらの選択を可能にする操作具を設けるようにしてもよい。
〔4〕一括スイッチ103の操作に基づいて現出される作業走行用の制御モードの選択状態を、標準選択状態と任意選択状態とに切り換える専用の操作具を備えるようにしてもよい。この場合には、一括スイッチ103の操作に基づいて現出される作業走行用の制御モードの選択状態を任意選択状態から標準選択状態に復元した後も、その専用の操作具の操作によって、選択状態を標準選択状態から任意選択状態に簡単かつ確実に設定変更することができる。
〔5〕任意選択状態での制御モードの選択内容として、選択内容の異なる複数のものを記憶させることが可能になるように構成するとともに、それらの選択を可能にする操作具を設けるようにしてもよい。又、この場合には、作業者にとって判別し易い名称の設定が可能となるように構成してもよい。
〔6〕移動走行用として予め選定された制御モードを、任意に選択した制御モードに変更することが可能となるように構成してもよい。
〔7〕選択操作具49,60,74,77,81,84,93,97〜99として、レバー操作式やダイヤル操作式のものなどを採用するようにしてもよい。
〔8〕一括操作具103として、レバー操作式やダイヤル操作式のものなどを採用するようにしてもよい。
〔9〕所定の更新操作及び所定の復元操作としては、新たに設けた更新又は復元専用の操作具の操作によるものであってもよく、一括操作具103以外の既存の操作具の操作によるものであってもよく、一括操作具103を含む既存の操作具の複合操作(例えば、キースイッチと一括操作具103の複合操作)によるものであってもよい。
〔10〕図10に示すように、制御装置48として、走行制御手段48aと昇降制御手段48bと作業伝動制御手段48dとを備える第1制御装置48A、及び、ローリング制御手段48cを備える第2制御装置48Bを設け、第1制御装置48Aに、第1記憶手段48e及び第2記憶手段48fを備えるようにしてもよい。又、図示は省略するが、第2制御装置48Bに、第1記憶手段48e及び第2記憶手段48fを備えるようにしてもよく、第1制御装置48Aと第2制御装置48Bの双方に、第1記憶手段48e及び第2記憶手段48fを備えるようにしてもよい。
〔11〕図11に示すように、制御装置48として、走行制御手段48aと作業伝動制御手段48dとを備える第1制御装置48A、昇降制御手段48bを備える第2制御装置48B、及び、ローリング制御手段48cを備える第3制御装置48Cを設け、各制御装置48A,48B,48Cに、第1記憶手段48e及び第2記憶手段48fを備えるようにしてもよい。又、図示は省略するが、それらの制御装置48A,48B,48Cのうちのいずれかに、第1記憶手段48e及び第2記憶手段48fを備えるようにしてもよい。