JP3783630B2 - 作業車両 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は、トラクタや田植機、コンバインといった農作業、芝刈機等の芝地管理作業、或いは運搬建築作業といった作業車両に関し、特に制御装置の設定器の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、農業用トラクタには、後進操作に連動して作業機を非作業位置へ上昇させる第一作業機上昇制御装置(バックアップ制御装置)と、旋回操作に連動して作業機を非作業位置へ上昇させる第二作業機上昇制御装置(オートリフト制御装置)と、前記バックアップ制御装置やオートリフト制御装置の作動に連動して同作業機(R)への伝達動力を、切若しくは減速させる作業機伝達動力変速制御装置(PTOアップストップ制御装置)を備えるものが有った。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、トラクタでは多種多様の作業に対応するべく、前記のような数多くの制御装置を搭載するものの、主に行なう作業は植付作物の種類や季節により凡そ決まっており、特別な作業を行なう度に、前記各制御装置の入切、即ち作動、不作動を設定する構成となっていたので、設定操作が煩わしかったり、不慣れなオペレータは入切設定を間違え、作業効率を損なうという課題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題に鑑みて、作業車両における制御装置の設定器を以下のように構成した。
即ち、請求項1の発明では、作業機(R)を昇降自在に設けた作業車両において、
前記車両には少なくとも、
後進操作に連動して作業機(R)を上昇させる第一作業機上昇制御装置と、
旋回操作に連動して作業機(R)を上昇させる第二作業機上昇制御装置と、
作業機(R)の上昇に連動して同作業機(R)への伝達動力を切操作若しくは伝達動力の回転速を減速させる作業機伝達動力変速制御装置とを備えると共に、
前記第一作業機上昇制御装置、第二作業機上昇制御装置、作業機伝達動力変速制御装置の作動を夫れ夫れ入切する各スイッチ(1,2,31)と、
前記各スイッチ(1,2,31)の入切状態を記憶する記憶手段(4)とを設け、
更に一側の設定ポジションに前記記憶された入切状態を再現する設定モード(M2)を配置し、且つ他側の設定ポジションに特定の作業を想定して予め設定された組み合わせで前記各制御装置を入とする設定モード(M3)を配置した単一のモード設定器(5)を備えたことを特徴とする作業車両とした。
【0005】
(作用)
以上のように構成した請求項1の作業車両では、まず作業機(R)に関する複数の制御装置の入切を個別に設定しておき、単一のモード設定器(5)を一側に操作することにより前記個別に設定した制御だけをまとめて入とする。
【0006】
また請求項2の発明では、作業機(R)を昇降自在に設けた作業車両において、
前記車両には少なくとも、
後進操作に連動して作業機(R)を上昇させる第一作業機上昇制御装置と、
旋回操作に連動して作業機(R)を上昇させる第二作業機上昇制御装置と、
作業機(R)の上昇に連動して同作業機(R)への伝達動力を切操作若しくは伝達動力の回転速を減速させる作業機伝達動力変速制御装置と、
旋回操作に連動して前輪(12F)の駆動速度を後輪(12R)の駆動速度を直進時と比して増速させる前輪増速制御装置とを備えると共に、
前記第一作業機上昇制御装置、第二作業機上昇制御装置、作業機伝達動力変速制御装置、前輪増速制御装置の作動を夫れ夫れ入切する各スイッチ(1,2,31,3)と、
前記各スイッチ(1,2,31,3)の入切状態を記憶する記憶手段(4)とを設け、
更に一側の設定ポジションに前記記憶された入切状態を再現する設定モード(M2)を配置し、且つ他側の設定ポジションに特定の作業を想定して予め設定された組み合わせで前記各制御装置を入とする設定モード(M3)を配置した単一のモード設定器(5)を備えたことを特徴とする作業車両とした。
【0007】
(作用)
以上のように構成した請求項2の作業車両では、まず作業機(R)及び走行装置に関する複数の制御装置の入切を個別に設定しておき、単一のモード設定器を一側に操作することにより前記個別に設定した制御だけをまとめて入とする。
【0008】
また請求項1と請求項2に記載の単一のモード設定器(5)は、一側の設定ポジションに前記記憶された入切状態を再現する設定モード(M2)を配置し、且つ他側の設定ポジションに特定の作業を想定して予め設定された組み合わせで前記各制御装置を入とする設定モード(M3)を配置する構成となっている。
【0009】
この為、特定の作業、例えばロータリ作業や代掻き作業を行うトラクタであれば、トラクタを、モード設定器(5)の一側に配置された当該作業の設定モード(M3)に設定し、他の作業であれば他側に配置されたオペレータが独自に設定した入切状態を再現する設定モード(M2)に設定する。
【0010】
【発明の効果】
これにより、請求項1の発明では、作業機(R)に関する様々な制御装置が入設定されていても、モード設定器(5)を一端に操作することで夫れ夫れ一度に入操作することができ制御の設定操作を簡略化することができ、作業終了後等の制御の切り忘れ、或いは作業開始時の入設定の忘れを極力防止することができる。
【0011】
また、請求項2の発明では、作業車両を四輪駆動車としたときに、前記作業機(R)に関する制御装置の設定と同時に、前輪増速制御装置の設定が簡略化され、作業終了後等の制御の切り忘れ、或いは作業開始時の入設定の忘れを極力防止することができる。
【0012】
また更に請求項1と請求項2に記載されたモード設定器(5)では、入切状態を再現する設定ポジションが一側に配置され、予め設定された作業を想定した設定ポジションは他側に配置されるので設定操作がわかり易い。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を作業車両である農業用トラクタTについて説明する。
最初にトラクタTの構成について説明する。
【0014】
トラクタTは、図2に示すように、ボンネット11内部にディーゼルエンジンEを備え、このエンジンE下方に左右前輪12F,12Fを支持するフロントアクスルケースを設けると共に、エンジンE後部に、後述する変速装置等を内装するミッションケース13を接続し、更にこのケース13後部左右に後輪12R,12Rを支持するリヤアクスルケース14を接続する構成となっている。
【0015】
また前記前輪12Fには、車両の旋回操作を検出する手段として前輪切角センサ15を設けている。
また前記ボンネット11後部でミッションケース13の上方には、キャビン16を構成し、操縦席17の周囲を覆う構成となっている。
【0016】
キャビン16内の構成について説明すると、前記操縦席17の前方には、ハンドルポスト18を立設し、同ポスト18の一側面に、前記エンジンEの出力回転数を設定保持するスロットルレバー19や、車両の前後進を切り替える前後進切替レバー20、更には前記ポスト内部の昇降スイッチ(上げスイッチ21u,下げスイッチ21d)をONすることで後述する作業機Rを上げ設定位置と作業位置との間を連続的に上昇若しくは下降させる作業機昇降用ワンタッチ式レバー22を設けている。
【0017】
また前記ハンドルポスト18の前方には、図3に示すように、各種制御装置の入切状態を表示するパイロットランプ1L,2L,3L…や液晶モニタ6、警報ブザー28等を有するメータパネル29を設けている。
また、前記操縦席15前方のフロア29には、アクセルペダル26、左右後輪2R,2Rを機械式連動機構を介して夫れ夫れ制動する左右ブレーキペダル31,31等を設けている。
【0018】
また前記操縦席17の側方には、図4に示すように、所謂h型のレバーガイドに沿って操作することで副変速装置の変速位置を切り替える変速レバー23を設け、同レバー23の回動基部に、副変速が「高速H」に操作されていることを検出するH速検出スイッチ24を設けると共に、同レバー23のグリップ部に主変速装置を1段ずつアップする変速アップスイッチ25uと1段ずつダウンさせる変速ダウンスイッチ25dとを設けている。
【0019】
また前記変速レバー23の内方には、作業機昇降用レバー27を突設し、同レバー27基部に操作角を検出するポテンショメータ27sを設けて、この検出角度に応じて作業機Rの高さを変更する構成となっている。
また、前記操縦席17の側方には、図1に示すように、この発明の各種制御をまとめて入切及び特定の作業モードを選択するモード設定器5、各制御については後述するが、前記モード設定器5の側方に、バックアップ制御装置(第一作業機上昇制御装置)の作動を入切するバックアップ入切スイッチ1、オートリフト制御装置(第二作業機上昇制御装置)の作動を入切するオートリフト入切スイッチ2、旋回時に旋回内側の後輪にブレーキをかけるオートブレーキ制御装置の作動を入切且つブレーキ圧を設定するオートブレーキ入切スイッチ30、旋回時に前輪12Fを後輪12Rよりも増速させる前輪増速制御装置の作動を入切する前輪増速入切スイッチ3、作業機を上昇するとPTO軸43の回転をストップ(若しくは減速)させるPTOアップストップ制御装置(作業機伝達動力変速制御装置)の作動を入切するPTOアップストップ入切スイッチ31を設け、前記各スイッチ1,2,31,…3全体をケース部材32により覆う構成となっている。
【0020】
尚、ここでは前記バックアップ入切スイッチ1、オートリフト入切スイッチ2、前輪増速入切スイッチ3、PTOアップストップ入切スイッチ31はタッチパネル式スイッチにて構成されている。
また更に前記操縦席17の側方には、トラクタTの駆動形態を2WDとするか4WDとするか、或いは2WDと4WDを自動で切り替える自動モードにするかを設定する駆動モード設定器33、前記バックアップ制御装置やオートリフ制御装置、ポジション制御での作業機Rの上げ高さを任意に設定(規制)する上げ位置設定ダイヤル34、後述する第一主変速装置47の変速位置を高/低2段に切り替える高低切り替えスイッチ35等を設けている。
【0021】
そして、上記センサ24,27s…や、設定器5,1…は、操縦席17下方の制御手段であるコントローラ10へ接続する構成となっている。
またトラクタTの車体後部について説明すると、前記ミッションケース13の後部には、作業機昇降用油圧シリンダを内装するシリンダケース40を備え、前記シリンダのピストン伸縮によりケース40左右に支持するリフトアーム41を上下回動する構成となっている。そして前記リフトアーム41の片側には、この回動基部にリフトアーム角センサ41sを設けている。
【0022】
これにより、後述するコントローラ10では、前記作業機の高さを変更するポジション制御、即ち、前記作業機昇降用ワンタッチ式レバー22による作業機の上げ操作若しくは下げ操作と、作業機昇降用レバー27の設定角により適宜変更できる昇降操作を行なう構成となっている。
【0023】
また、車体後部には、トップリンクと左右のロワーリンクからなる3点リンク機構42を設け、同リンク機構42に対地作業機等、各種作業機を連結する構成となっている。
尚、図2ではロータリ作業機Rを連結した構成となっており、このロータリ作業機Rは、前記PTO軸43の回転をユニバーサルジョイントを介して入力し、ロータリ爪44を回転駆動する構成となっている。
【0024】
次に、トラクタTの動力伝達構造について図5に基づき説明する。
前記エンジンEの回転動力は、クラッチハウジング内の主クラッチ46にて断続操作され、ミッションケース内の第一主変速装置47、前後進切替装置48、第二主変速装置49、副変速装置50と順に伝達する構成となっている。
【0025】
第一主変速装置47は、前記高/低の二つの湿式多板形態のクラッチ(高速クラッチ51a,低速クラッチ51b)を有する所謂パワーシフト式変速装置であり、同変速装置47で変速した回転動力を前後進切替装置48へ伝達する構成となっている。また前記第一主変速装置47は、油圧により通常低速クラッチ51bが圧着する構成となっており、前記高低切替スイッチ35を押し込み保持すると、切替制御弁のソレノイド52へ通電が為され、油圧により高速クラッチ51aが圧着する構成となっている。
【0026】
また前後進切替装置48は、同じく湿式多板形態の前進用クラッチ53aと後進用クラッチ53b、及びカウンターギヤ等から成る変速装置であり、前記前後進スイッチ20b,20bの検出状態により、前後進切替用の切替制御弁のソレノイド54a,54bへ通電を行なって、両クラッチ53a.53bのどちらか一方のディスクを圧着する構成となっている。また、前記両スイッチ20a,20bが共にOFFの時、即ちレバー20が中立(ニュートラル)位置に設定された場合は両クラッチの動力伝達は共に「切」となる構成となっている。
【0027】
また第二主変速装置49は、シンクロメッシュギヤ式変速装置であり、前記前後進切替装置48より出力された回転動力を、二つの油圧シリンダ55a,55bのピストン伸縮操作によって、4つのギヤ組(図中、動力上手側から4速ギヤ組、3速ギヤ組、2速ギヤ組、1速ギヤ組)の何れか1つを通じて副変速装置50へ伝達する構成となっている。
【0028】
また前記副変速装置50は、前記変速レバー23の前後回動操作により機械的連動部材を介して切替えるコンスタントメッシュギヤ式の変速装置となっており、H速、M速、L速の3段階に切り替える構成となっている。
これにより、前記第一第二主変速装置47,49と副変速装置50の組み合わせで全24段の変速位置を得る構成となっており、前記変速アップスイッチ25uと変速ダウンスイッチ25dの押し込み操作によって1段から8段、9段から16段、17段から24段の変速域内を1段ずつ切り替える構成となっている。
【0029】
また前記副変速装置50から出力した回転動力は、後輪デフ機構56を介して後輪12Rへ伝達すると共に、前輪駆動用動力分岐ギヤ57により動力を分岐して、前輪増速装置58、前輪デフ機構59を介して前輪12Fへも伝達する構成となっている。
【0030】
また、前記前輪増速装置58の前後には、回転センサ(前輪回転センサ67と後輪回転センサ68)を設け、前記装置58内のクラッチを切りにすることにより、後輪側の回転と、前輪側の回転を夫れ夫れ検出する構成となっている。
これにより前記駆動モード設定器33が「自動」の位置に設定されている場合、前記前後輪の回転差を周期的に検出し、この回転差、即ちスリップ率が大きいときには自動で四輪駆動で走行する駆動モード切替制御を行なう構成となっている。
【0031】
また、前記後輪デフ機構56の左右に突設する駆動軸には、ディスク式ブレーキ機構36を設け、同ディスクをブレーキ用油圧シリンダ60のピストン伸縮操作によって圧着する構成となっている。
また、前記主クラッチ46の動力上手側には、PTO動力分岐ギヤ64を設け、回転動力を、同ギヤ64を介してPTO入切クラッチ62へ伝達すると共に、更にこの動力をPTO変速装置65へ伝達する構成となっている。また前記PTO変速装置65には、同変速装置の設定変速位置が中立位置のときにONするPTO変速「N」位置センサ66を設けている。
【0032】
次に図6に基づきトラクタTの制御系について説明する。
前記トラクタTのコントローラ10には、各種センサや設定器の信号を処理するCPUと、これら信号情報を一時記憶するRAM、前記信号情報の内必要な情報や各種制御プログラムを書込んで、電源を切としても記憶保持可能なEEPROM4等の記憶手段を有する構成となっている。
【0033】
そして前記コントローラ10には、この入力部に、前記作業モード設定器5、バックアップ入切スイッチ1、オートリフト入切スイッチ2、オートブレーキ入切スイッチ30、前輪増速入切スイッチ3、アップストップ入切スイッチ31、駆動モード設定器33、H速検出スイッチ24、PTO変速「N」位置センサ66、前輪回転センサ67、後輪回転センサ68、前輪切角センサ15、作業機昇降用の上げスイッチ21u、下げスイッチ21d、作業機昇降レバー基部のポテンショメータ27s、リフトアーム角センサ41s、リフトアーム41の上げ位置設定ダイヤル34、更には変速アップスイッチ25u、変速ダウンスイッチ25d、高低切替スイッチ35、前後進スイッチ20a,20b等を接続して設けている。
【0034】
また出力部には、前記モード設定器5の設定状態等を表示する液晶モニタ6、及び各制御の入切状態を示すパイロットランプ1L,2L,3L…38,39、リフトアーム昇降用の比例流量制御弁のソレノイド45u,45d、前輪増速装置の各クラッチを圧着する切替制御弁のソレノイド52a,52b、PTO入切クラッチ圧着用の切替制御弁のソレノイド63、左右後輪12Rのブレーキ用油圧シリンダ60へ圧油を送る比例流量制御弁のソレノイド61a,61b、前後進切替装置48の前進クラッチ53a或いは後進クラッチ53bへ圧油を送る制御弁のソレノイド54a,54b等を接続して設けている。
【0035】
尚、前記図6中のパイロットランプの内、リフト昇降モニタ38とは前記リフトアームが予め設定された非作業位置に上昇されているときに点灯するモニタであり、4WDモニタ39とは、前記駆動モード設定器33が4WDに設定されているとき、或いは自動モードで4WDとなっているときに点灯するモニタである。
【0036】
以上のように構成したトラクタTでは、電源を投入しエンジンEを始動すると、コントローラ10は、図7乃至図14に示すフローチャートのように制御を実行する。
図7に示すフローチャートは、制御全体の流れを示すフローチャートであり、まずコントローラ10は、STEP1で前記各種センサの検出値やスイッチや設定器の設定状態を読み込む。そしてSTEP2で前記作業モード設定器5の設定ポジションを判定し、これが「切」位置である場合は、STEP3へ進み、前記隠しスイッチとなった全制御(バックアップ制御、オートリフト制御、オートブレーキ制御、前輪増速制御、PTOアップストップ制御)のフラグをOFF、即ち作動を切とする。また前記判定で設定ポジションが「オペレータモード」に設定されている場合は、STEP4へ進み、第一制御選択処理を行なう。
【0037】
ここで図8に基づき第一制御選択処理について説明する。
コントローラ10は、まず前記EEPROM4に記憶されている各制御の入切状態を読み出し、STEP2でこれが現在の状態と異なるかどうか、即ち制御の入/切に変更が有ったかどうかを判定する。そしてこれがYESの場合は、STEP3にて前記記憶値を現在の設定状態に置き替え、STEP4で入に設定されている制御のフラグをONとする。
【0038】
一方、前記STEP2での判定がNOの場合は、現設定状態、即ち選択した制御をそのままの記憶値として維持し前記STEP4へ進む。またSTEP5では、前記フラグがONにされた制御、即ち作動予定の制御に該当するパイロットランプを点灯する。
【0039】
図7に戻り説明を続けると、前記STEP2の判定で、前記モード設定器5が「作業モード(ロータリモード、代掻きモード)」に設定されていると、STEP5へ進み第二制御選択処理が行われる。
前記第二制御選択処理は、図9に示すように、まずSTEP1で作業モードが「ロータリモード」であるか「代掻きモード」であるかを判定し、これが「ロータリモード」である場合は、STEP2へ進み、各作業に適している想定される制御、ここでは前記隠しスイッチとなっている全制御、即ちオートリフト制御、オートブレーキ制御、前輪増速制御、バックアップ制御、PTOアップストップ制御のフラグをONとし、各パイロットランプ1L,2L…を点灯する。
【0040】
一方、前記作業モードが「代掻きモード」である場合は、STEP3に進み、バックアップ制御と前記前輪増速制御のフラグだけをONとする。またこれらフラグがONとなった制御は、前述同様、パイロットランプ1L,3Lを点灯する。
【0041】
尚、この作業に適した制御を入にする設定は、トラクタTの生産時や販売時に設定され、通常オペレータが任意に変更できない構成となっている。
再度図7に戻り説明を続けると、前記STEP4とSTEP5の処理が終了すると、STEP6へ進み副変速が「H速」であるか、STEP7で前記PTOの変速位置が「中立」であるか、更にSTEP8で前記車速が所定値以下であるかを判定し、これらの判定が内一つでもYESであれば、前記バックアップ、オートリフト、オートブレーキ、前輪増速、PTOアップストップ制御は牽制される。これにより、トラクタTの状態が作業であるか非作業であるかを検出し、前記制御が非作業時に不意に作動して安全性を損なうことを防止することができる。またその後STEP14へ進み、前記ポジション制御や変速制御が行われ、また他の制御を行なってリターンとなる。
【0042】
また前記STEP6からSTEP8までの判定がすべてNOであれば、トラクタTは作業状態であると想定し、STEP9へ進み、バックアップ制御以下を実行する。
前記バックアップ制御は、図10に示すように、まずSTEP1で最初にフラグがONであるかどうかを判定し、続けてSTEP2で前記後進スイッチ20bの検出により後進操作があるかどうかを判定し、更にSTEP3で作業機Rが作業位置であるかを判定し、これらが全てYESの場合は、前記作業機Rを前記上げ設定位置まで上昇させる。その後、図7中のSTEP10のオートリフト制御を実行する。
【0043】
前記オートリフト制御は、図11に示すように、まずSTEP1で最初にフラグがONであるかどうかを判定し、続けてSTEP2で前記旋回操作が有るかどうか、即ち前記前輪切角センサ15の検出値により機体が所定角以上操舵されているかどうか判定し、更にSTEP3で作業機Rは作業位置であるかを判定して、前記判定は全てYESの場合は、バックアップ制御同様、前記作業機Rを前記上げ設定位置まで上昇させる。その後図7のSTEP11のオートブレーキ制御を実行する。
【0044】
前記前輪増速制御は、図12に示すように、まずSTEP1でフラグがONであるかどうかを判定し、続けてSTEP2で前記旋回操作が有るかどうか、即ち前記前輪切角センサ15の検出値により機体が所定角以上操舵されているかどうか判定し、これらが共にYESである場合は、STEP3にて前記制御弁のソレノイド52aへ通電を行い前輪を増速駆動する。その後図7のSTEP12のオートブレーキ制御を実行する。
【0045】
オートブレーキ制御は、図12に示すように、まずSTEP1でフラグがONであるかどうかを判定し、続けてSTEP2で前記旋回操作が有るかどうか、即ち前記前輪切角センサ15の検出値により機体が所定角以上操舵されているかどうか判定し、これらが共にYESである場合は、旋回内側の後輪ブレーキを作動する。ここではSTEP3で駆動モード設定器33の設定モードに応じて、これが4WDロックモードに設定されている場合は前記オートブレーキ入切スイッチ30の設定圧にて後輪12Rが制動され、2WDに設定されている場合は、前輪12Fの切角が大きくなるほどブレーキを増加して出力する構成となっている。そして前記ブレーキ出力後、次に図7のSTEP13のPTOアップストップ制御を実行する。
【0046】
PTOアップストップ制御は、図14に示すように、まずSTEP1でフラグがONであるかどうかを判定し、これがNOである場合はSTEP2へ進み、前記PTO入切スイッチ37の入切に応じてPTO入切クラッチ62を圧着する処理を行なう。また前記STEP1判定がYESの場合は、STEP3へ進み、前記作業機Rが非作業位置であるかどうかを判定し、これがYESの場合は前記制御弁のソレノイド63への通電を停止してPTO入切クラッチ62を切とする。またNOの場合は、前記制御弁のソレノイド63へ通電を開始してPTO入切クラッチ62を入とする。尚、前記作業機側への伝達動力、ここではロータリ爪44の回転を減速させる場合は、前記PTO変速装置65の変速位置をアクチュエータにより低速側に切り替える。
【0047】
そして前記STEP13の処理を終えた後は、前記ポジション制御や変速制御、前後輪の駆動モード切替制御等を実行してリターンとなる。
これにより、トラクタTに複数の制御装置を搭載する構成としても、作業を終了し、移動する場合、モード設定器5だけを操作することで、作業用の各種制御を切とすることができるので、切り忘れによる走行中のトラブルを防止することができる。また反対に、作業を開始する場合にも、モード設定器5を操作することで、作業に必要な各種制御を入とすることができるので、入り忘れによる走行中のトラブルを防止することができる。
【0048】
またここでは、前記各制御スイッチ1,2,30…の配置を、「切」ポジションを境に一側をオペレータの設定を再現するポジション、他側を特定の作業に適した制御を自動的に入とするポジションとしたので、前記の設定器の設定操作がわかり易い。
【0049】
尚、この発明の応用形態としては、前記モード設定器5が切位置に設定されているときに、他の制御を反対に入とする構成、例えば、トラクタTでは主に一般道などを移動する場合が主である為、前記変速レバー23のスイッチ25u,25dの信号を無効とし、図15に示すように、アクセルペダル26側方のハンドルポスト18に前記変速段に対応する変速スイッチ25a,25b…を設け、同スイッチ信号に応じて、同ペダル26が深く踏み込まれるに従い変速位置をアップさせる構成としても良い。
【0050】
またこの発明の別形態としては、前記各スイッチや設定器を他の操作形態、例えばツマミ式やパイロットランプ一体型のスイッチ、或いはダイヤル式としても良いし、車両の形態としては走行装置としてクローラやセミクローラを用いてこの回転速を変速したり、或いは走行系動力伝達経路にクラッチを設けて同クラッチにより動力伝達状態を入切して回転速を変えても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種設定器の平面図。
【図2】トラクタの全体側面図。
【図3】メータパネルの平面図。
【図4】操縦席側方の斜視図。
【図5】トラクタの伝動機構を示す図。
【図6】コントローラの接続状態を示す図。
【図7】制御全体の概要を示すフローチャート。
【図8】第一制御選択処理の概要を示すフローチャート。
【図9】第二制御選択処理の概要を示すフローチャート。
【図10】バックアップ制御の概要を示すフローチャート。
【図11】オートリフト制御の概要を示すフローチャート。
【図12】前輪増速制御の概要を示すフローチャート。
【図13】オートブレーキ制御の概要を示すフローチャート。
【図14】PTOアップストップ制御の概要を示すフローチャート。
【図15】(A)アクセルペダルの正面図。
(B)アクセルペダルの側面図。
【符号の説明】
1 バックアップ入切スイッチ
2 オートリフト入切スイッチ
3 前輪増速入切スイッチ
4 EEPROM
5 モード設定器
6 液晶モニタ
10 コントローラ
12F 前輪
12R 後輪
43 PTO軸
T トラクタ
R ロータリ作業機
Claims (2)
- 作業機(R)を昇降自在に設けた作業車両において、
前記車両には少なくとも、
後進操作に連動して作業機(R)を上昇させる第一作業機上昇制御装置と、
旋回操作に連動して作業機(R)を上昇させる第二作業機上昇制御装置と、
作業機(R)の上昇に連動して同作業機(R)への伝達動力を切操作若しくは伝達動力の回転速を減速させる作業機伝達動力変速制御装置とを備えると共に、
前記第一作業機上昇制御装置、第二作業機上昇制御装置、作業機伝達動力変速制御装置の作動を夫れ夫れ入切する各スイッチ(1,2,31)と、
前記各スイッチ(1,2,31)の入切状態を記憶する記憶手段(4)とを設け、
更に一側の設定ポジションに前記記憶された入切状態を再現する設定モード(M2)を配置し、且つ他側の設定ポジションに特定の作業を想定して予め設定された組み合わせで前記各制御装置を入とする設定モード(M3)を配置した単一のモード設定器(5)を備えたことを特徴とする作業車両。 - 作業機(R)を昇降自在に設けた作業車両において、
前記車両には少なくとも、
後進操作に連動して作業機(R)を上昇させる第一作業機上昇制御装置と、
旋回操作に連動して作業機(R)を上昇させる第二作業機上昇制御装置と、
作業機(R)の上昇に連動して同作業機(R)への伝達動力を切操作若しくは伝達動力の回転速を減速させる作業機伝達動力変速制御装置と、
旋回操作に連動して前輪(12F)の駆動速度を後輪(12R)の駆動速度を直進時と比して増速させる前輪増速制御装置とを備えると共に、
前記第一作業機上昇制御装置、第二作業機上昇制御装置、作業機伝達動力変速制御装置、前輪増速制御装置の作動を夫れ夫れ入切する各スイッチ(1,2,31,3)と、
前記各スイッチ(1,2,31,3)の入切状態を記憶する記憶手段(4)とを設け、
更に一側の設定ポジションに前記記憶された入切状態を再現する設定モード(M2)を配置し、且つ他側の設定ポジションに特定の作業を想定して予め設定された組み合わせで前記各制御装置を入とする設定モード(M3)を配置した単一のモード設定器(5)を備えたことを特徴とする作業車両。
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