JP5122313B2 - 作業車輌 - Google Patents

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Description

本発明は、ロータリ等の作業機を昇降自在に支持するトラクタ等の作業車輌に係り、詳しくは走行機体の走行に係わる駆動制御及び作業機の昇降に係わる昇降制御に関する。
近時、トラクタにあっては、作業機の耕深、作業機の左右傾斜姿勢、これらの感度、走行機体の旋回時に作業機を自動的に上昇する旋回アップ制御、走行機体後進時に作業機を上昇するバックアップ制御等の作業機の各種昇降制御、旋回時に前輪を後輪に対して自動的に増速する前輪増速制御、旋回時に旋回内側となる後輪を制動するオートブレーキ制御等の各種駆動制御を、一括操作でオン状態あるいはオフ状態に切換える一括スイッチを備えることが案出されている(特許文献1参照)。
これにより、操作に慣れていないオペレータや高齢者のオペレータでも、一括スイッチをオンするだけで、予め設定した制御が作動状態となって適正な作業を行うことができ、また一括スイッチをオフすることにより、圃場作業用の制御が防止されて、路上走行に適した状態に切換えられる。
特開2004−159620号公報
上記一括スイッチをオン操作した後に、一括オンされた制御要素のうちいずれかを個別操作具としての選択スイッチや切換えスイッチで選択変更したりオフ操作することは可能であるが、一括スイッチをオフ操作すると、ポジション制御のみが可能となり、かつ走行系の制御機能は、二輪駆動に特定された状態となる。
従って、一括スイッチのオフ状態で、走行に係る駆動制御を特定された制御と異なる状態に切換えるためには、一括スイッチによるモード(おまかせモード)自体を非作動とする状態に戻した後に、上記異なる状態となるように変更する必要があり、操作が面倒であった。
具体的には、一括スイッチをオフすると、二輪駆動に特定されるが、例えば圃場作業が終了して畦越えして路上に出る場合、二輪駆動のままではうまく畦越えすることができない虞がある。
本発明は、各種昇降制御及び駆動制御を作動する作業モードと上記制御を停止する走行モードとを一括して切換える一括選択手段を有するものにおいて、上記走行モードにあって前記駆動制御の一部を変更し得る変更手段を備え、もって上述した課題を解決した作業車輌を提供することを目的とするものである。
本発明は、エンジン(6)からの動力を前輪(2)及び後輪(3)に伝達すると共に、走行機体(5)に作業機(10)を昇降自在に支持し、前記走行機体(5)の走行に係わる駆動制御及び前記作業機(10)の昇降に係わる昇降制御をコントローラ(100)により行なう作業車輌(1)において、
前記作業機(10)の各種昇降制御(131,132,133,134,135,136)及び前記走行機体(5)の各種駆動制御(例えば137,138,139)をそれぞれ各別に変更設定する設定手段(17a,17b,17c,18c,18e,18g)と、
前記各種昇降制御及び前記各種駆動制御を前記設定手段(17a,17b,18c,18e,18g)により設定された状態で一括作動する作業モード(122)と、前記各種昇降制御及び各種駆動制御を停止する走行モード(121)と、に切換える一括選択手段(17g)と、
前記走行モード(121)にあっても、前記駆動制御の一部(例えば139)の作動状態を変更設定する前記設定手段により変更し得る変更手段(17c)と、
を備えることを特徴とする作業車輌(1)にある。
なお、作業モード(122)にあっては、四輪駆動に設定されることが標準であり、従って駆動制御の停止とは、四輪駆動を停止して二輪駆動とすることを含むものである。
具体的には、前記各種駆動制御は、前記走行機体(5)の旋回時に前輪(2)を後輪(3)に対して自動的に増速駆動する前輪増速制御(137)と、前記走行機体(5)の旋回時に旋回内側となる後輪を制動するオートブレーキ制御(138)と、後輪(3)及び前輪(2)を常時駆動状態とする四輪駆動と後輪(3)のみ駆動する二輪駆動とを切換える二・四駆切換え制御(139)と、を有し、
前記設定手段(18c,18g,18e,17a,17b)は、前記四輪駆動と二輪駆動の切換え、前記四輪駆動状態における前記前輪増速制御(137)のオン・オフ、該前輪増速制御のオンにおける前記オートブレーキ制御(138)のオン・オフの設定であり、
前記走行モード(121)にあっては、前記二・四駆切換え制御(139)が二輪駆動になると共に、前記前輪増速制御(137)及び前記オートブレーキ制御(138)がオフとなり、
前記走行モード(121)にあっても、前記変更手段(17c)により前記二・四駆切換え制御(139)を四輪駆動に切換え可能とする。
また、前記各種駆動制御(137,138,139)は、前記二・四駆切換え制御(139)を二輪駆動とした状態で、制動が作動する場合、自動的に四輪駆動に切換える制動時制御を有する。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
請求項1に係る本発明によると、一括選択手段を、設定手段により設定された各種昇降制御及び各種駆動制御を一括作動する作業モードを選択することにより、慣れないオペレータでも適正な制御にてアシストされて、適正で効率的な作業を行うことができ、かつ上記一括選択手段を走行モードとすることにより、各種制御を停止して、安全に路上等の走行をすることができるものでありながら、走行モードにあっても、一部の駆動制御は、変更手段により変更することができ、一括選択手段の作動状態を保持した状態で、走行状況に応じた適正な制御に変更して効率よく作業車輌を運転することができる。
請求項2に係る本発明によると、一括選択手段の走行モードの選択にあっては、前輪増速制御及びオートブレーキ制御がオフされることに加えて二輪駆動状態となるので、路上走行において無意識に四輪駆動状態となって、燃費を大幅に低下したり、タイヤを早期に摩耗することを防止することができ、かつ該走行モードにあっても、変更手段により二・四駆を切換えることができ、例えば圃場作業が終了して畦越えして路上に出る場合、変更手段により一旦四輪駆動に切換え、路上に出た後に更に二輪駆動に切換えることにより、容易に畦等を乗り越えることができると共に、オペレータは四輪駆動に切換えたことを意識するので、路上走行において二輪駆動に確実に戻して、燃費の向上等を図ることができる。
請求項3に係る本発明によると、二輪駆動とした状態でも、制動が作動すると、四輪駆動に切換えるので、前輪をも制動力として有効に作用して、路上走行において、制動性能を向上することができる。
以下、本発明に係る実施の形態を図1ないし図10に沿って説明する。
図1に示すように、作業車輌としてのトラクタ1は左右に配置された一対の前輪2,2と後輪3,3とにより支持された走行機体5を有している。該走行機体5の前方部分には、内部にエンジン6を収納したボンネット7が配置されており、該ボンネット7の後方部分には、運転席部8等を有している。また、走行機体5の後方には作業機10を取付け可能なリンク機構80が備えられている。更に、走行機体5の下部には、該走行機体5に一体に固定されたミッションケース4が配置されている。上記エンジン6の出力は、該ミッションケース4内に配置された、詳しくは後述する変速機構A(図4参照)を介して上記前輪2,2及び後輪3,3に伝達され、トラクタ1を前後方向に所要の速度で走行させるように構成されている。
また、上記運転席部8には、図2及び図3に示すように、操作部12とその後方に運転席13とが備えられている。該操作部12は、ステアリングハンドル14と該ステアリングハンドル14の前方に設けられた表示パネル15を有しており、該表示パネル15の下方部分には、図3(a)に示すように、左フロントスイッチパネル17A及び右フロントスイッチパネル17Bからなるフロントスイッチパネル17が備えられている。さらに、運転席部8には、図2に示すように、運転席13の機体進行方向左方側に、副変速レバー16が備えられており、また該運転席13の機体進行方向右方側に、サイドスイッチパネル18が備えられている。
次に、トラクタ1の変速制御について図4及び図5に沿って説明する。
変速機構Aは、主変速装置20と、メインクラッチ30と、前後進切換装置40と、副変速装置50とを有して構成されており、これらを介してエンジン6からの動力が、後輪駆動軸58へ動力伝達される。一方、前輪には、ミッションケース4の底部に開口した開口部を閉塞するケーシングの設けられた前輪駆動力取出し装置70を介して動力伝達される。
主変速装置20は、エンジン6からの出力軸21に設けられた出力ギヤ21aと噛合する伝達ギヤ22aを前端(図中左方側端部)に設けた主軸22と、図中下方側において該主軸22と軸方向平行に設けられた伝達軸23と、を有している。
主軸22には、4つの伝動比の異なる主変速駆動側のギヤ22b,22c,22d,22eを備えており、伝達軸23に設けられた伝動比の異なる4つの主変速従動側のギヤ23a,23b,23c,23dと噛合する。該従動側のギヤの間(ギヤ23aとギヤ23bとの間、ギヤ23cとギヤ23dとの間)には、常時噛合い式(シンクロメッシュ方式)のシフト部材24,25が介装されており、該シフト部材24,25によって、上記4つの従動側ギヤ23a,23b,23c,23dは、選択的に1つのギヤが連動状態とされる。
メインクラッチ30は、主変速装置20と前後進切換装置40との間に設けられており、上記伝達軸23後端(図中右方側端部)のクラッチハブと、後述する前後進切換装置40の連動軸41前端のクラッチドラムと、に設けられた摩擦部材をピストンにより係合することによって、エンジンからの動力を断接する。
前後進切換装置40は、上記メインクラッチ30に隣接して配置されており、伝動軸23と同軸上に設けられた連動軸41と、図中下方側において連動軸41と軸方向平行に設けられた後進用アイドル軸42と、連動軸41よりも図中上方側において該連動軸41と軸方向平行に設けられた前後進軸43とを有している。
連動軸41には、ギヤ41a、41bが設けられており、ギヤ41aは、後進用アイドル軸42に嵌挿された後進用伝達ギヤ42aと噛合し、該後進用伝達ギヤ42aは、前後進軸43に嵌挿された後進用ギヤ43aと噛合する。また、連動軸41のギヤ41bは、前後進軸43に嵌挿された前進用ギヤ43bと噛合する。
前進用ギヤ43bと後進用ギヤ43aとの間には、シフト部材44が介装されており、前進用ギヤ43bと後進用ギヤ43aとのどちらか一方のみが選択的に連動状態とされる。
副変速装置50は、前後進切換装置40の後方(図中右方)に設けられており、前後進軸43と同軸上かつ後方に配設される副変速軸51と、図中下方側において副変速軸51と軸方向平行に設けられている伝動軸52と、伝動軸52の後端と連結している連動軸53とを有している。
副変速軸51には、副変速ギヤ51a、51bが設けられており、副変速ギヤ51a,51b間にはシフト部材56が介装されている。副変速ギヤ51a、51bは、伝動軸52に嵌挿されているギヤ52a,52bと噛合し、シフト部材56によってどちらか一方の副変速ギヤ51a,51bが、ギヤ52a,52bと選択的に係合される。
また、連動軸53に設けられたギヤ53a,53bは、図中上方側において連動軸53と軸方向平行に配設された切換え軸54に回転自在に嵌挿された超低速用ギヤスリーブ61aと、ベアリングを介して切換え軸54に回転自在に設けられたギヤ54cとにそれぞれ噛合するように設けられている。
切換え軸54には、超低速用ギヤユニット60の超低速用ギヤスリーブ61a、ギヤ54cの他に、切換え軸54に固定された前輪駆動用ギヤ54b,クイックターン用ギヤスリーブ54a及びクイックターン用ギヤスリーブ54aと一体に設けられた小径の切換え軸駆動用ギヤ54dが設けられている。
切換え軸54の図中上方側において該切換え軸54と軸方向平行に設けられたファイナル軸55には、超低速用ギヤ61b、後輪駆動用ギヤ55a及び伝動ギヤ55bが備わっている。超低速用ギヤ61bと、後輪駆動用ギヤ55aとの間には、シフト部材57が介装されており、後輪駆動用ギヤ55aもしくは、超低速用ギヤ61bを選択的に連動状態にし、ベベルギヤ56を介して後輪駆動軸58に動力伝達している。また、シフト部材57が中立位置にある場合、各ギヤ55a,61bは、ファイナル軸55に対して空転している。伝動ギヤ55bは、切換え軸54の切換え軸駆動用ギヤ54dと噛合しており、切換え軸54をファイナル軸55と連動して回転させる。
以上説明した変速機構Aは、変速機構用の油圧制御装置(図示せず)によって制御されており、該変速機構用の油圧制御装置は、上記副変速レバー16及び該副変速レバー16に備えられた主変速操作スイッチ等による操作に基づいて動作される。これにより、変速機構Aは、変速比の異なる16段の変速段を設定することができるように構成されている。
一方、前輪動力取出し装置70は、図中下方側において切換え軸54と平行に前方へと延設された前輪駆動軸71を有している。該前輪駆動軸71には、前輪動力取出し用のギヤ54aと噛合するクイックターン用ギヤ71cが、クイックターン用クラッチC2を介して設けられている。また、該前輪駆動軸71には、前輪駆動用ギヤ54bと噛合し、通常、連動状態にある標準用ギヤ71dが、標準用クラッチC1を介して設けられている。
また、前輪動力取出し装置70は、図5に示すように、油圧制御装置75を備えており、オイルポンプPからの油圧を異なる2つの油路を介して二・四駆切換え装置として働く標準用クラッチC1及びクイックターン装置として働くクイックターン用クラッチC2にフィルターFを介して供給する。この異なる2つ油路には、電磁切換え弁72a,72bが設けられており、上記の標準用クラッチC1及びクイックターン用クラッチC2への圧油の給排を制御している。
標準用クラッチC1は、電磁切換え弁72aによって圧油が供給されると、切断されるように構成され、クイックターン用クラッチC2は、電磁切換え弁72bによって圧油が供給されると、係合するように構成されている。この標準用クラッチC1及びクイックターン用クラッチC2の断接により作業車輌は、前輪の周速と後輪の周速が略々等しくなる四輪駆動状態、小回り旋回が可能なクイックターン状態、二輪駆動状態の3つの走行状態を適宜に選択可能に構成されている。
以上のように構成された前輪動力取出し装置70は、通常の四輪駆動状態で駆動する場合、両電磁切換え弁72a,72bを切断し、標準用クラッチC1及びクイックターン用クラッチC2の油圧室の油圧を排出することで標準用クラッチC1のみを係合させる。
標準用クラッチC1が、スプリング(図示せず)の付勢力によって係合すると、前輪駆動用ギヤ54bと噛合する標準用ギヤ71dによって、エンジンからの動力が前輪駆動軸71に伝動され、前輪と後輪を略々同じ周速で駆動させる。
トラクタ1が、四輪駆動状態で走行中に小回り旋回をしようとすると、前輪の操向操作を検知して、両電磁切換え弁72a,72bによってオイルポンプPからの油圧が標準用クラッチC1及びクイックターン用クラッチC2の油圧室に供給され、標準用クラッチC1は切断され、クイックターン用クラッチC2は係合される。
クイックターン用クラッチC2が係合すると、クイックターン用ギヤスリーブ54aと噛合するクイックターン用ギヤ71cによって、エンジンからの動力が前輪駆動軸71に伝動され、前輪を後輪の周速より高速に駆動させることによって小回り旋回する。
また、電磁切換え弁72aによりオイルポンプPからの油圧が標準用クラッチC1の油圧室のみに供給されると、標準用クラッチC1及びクイックターン用クラッチC2は共に切断され、前輪へエンジンからの動力が伝達されず二輪駆動状態となる。
次に、トラクタ1の作業機の昇降制御について図1、図2、及び図3に沿って説明する。
トラクタ1は、図1に示すように、走行機体5の後端に、回転刃91及びリヤカバー92を有する作業機10がリンク機構80を介して連結されている。該リンク機構80は、1個のアッパリンク81と左右一対のロアリンク82とを有する三点式のもので、作業機10以外にも種々の作業機を選択して装着可能である。
また、トラクタ1に作業機10を装着した場合には、リンク機構80のロアリンク82は、リフトロッド84を介してリフトアーム83に吊り下げ支持され、該リフトアーム83はその根元側に配置されたリフトシリンダ87の伸長・収縮動作によって上下に回動される。したがって、該リフトシリンダ87を油圧駆動して作業機10を上昇・下降動作させたり、任意の耕耘深さを設定したりすることが可能である。
さらに、リフトロッド84は、リフトロッドシリンダ85を介してリフトアーム83に吊り下げ支持されており、リフトロッドシリンダ85を油圧駆動して左右のリフトロッド84の長さを異ならせることによって、作業機10の左右傾き角度を任意に設定することが可能である。
図2に示すように、運転席部8の運転席13の機体進行方向右方側には、上述したサイドスイッチパネル18が備えられている。該サイドスイッチパネル18は、図3(b)に示すように、作業機の高さ(ポジション)を調節するポジションコントロールレバー18a、作業機の耕耘深さを調節する深さ設定ダイヤル18b、及び該深さ設定ダイヤル18bにより設定された耕耘深さによって行う耕深自動制御を入切切換えする深さ自動スイッチ(設定手段)18cを有している。また、サイドスイッチパネル18は、傾き設定スイッチ18dにより設定した作業機の傾きによって行う傾斜自動制御を入切切換えする傾き自動スイッチ(設定手段)18e、自動制御等により作業機が上昇する際の高さを設定する上げ高さボリューム18f、耕深自動制御中に作業機による作業内容を切換える作業切換スイッチ(設定手段)18g、及び任意に設定した各種駆動制御を含む各種自動制御機能を入切切換えするお好みスイッチ18hを有している。なお、各種自動制御機能の説明については後述する。
以上説明したように、トラクタ1は、サイドスイッチパネル18に配置された各種スイッチやボリューム等の操作に基づいて、リフトシリンダ87に圧油が供給・排出されることで作業機を上昇・下降動作させることができ、また、リフトロッドシリンダ85に圧油が供給・排出されることでリフトロッド84の長さを伸長・短縮させ、作業機10の左右傾き角度が設定される。
次に、トラクタ1の操作手段について図2及び図3に沿って説明する。
本実施の形態に係るトラクタ1の運転席部8には、上記サイドスイッチパネル18の他にも各種自動制御の設定等を行うための操作手段が備えられている。図2に示すように、ステアリングハンドル14の前方には、液晶パネル15aを有する表示パネル15が備えられており、該表示パネル15の下方部分には、図3(a)に示すように、左フロントスイッチパネル17A及び右フロントスイッチパネル17Bからなるフロントスイッチパネル17が備えられている。
左フロントスイッチパネル17Aは、前輪倍速制御とオートブレーキ制御との切換えをする倍速旋回・オートブレーキ旋回切換えスイッチ(設定手段)17a、バックアップ制御を入切切換えするバックアップスイッチ(設定手段)17b、四輪駆動状態と二輪駆動状態とを切換える四駆切換えスイッチ(変更手段)17c、旋回アップ制御を入切切換えする旋回アップスイッチ(設定手段)17d、及びコーナーライトスイッチ17eを有している。
右フロントスイッチパネル17Bは、上記液晶パネル15aの表示切換えを行うスイッチ17fを備えている。また、該右フロントスイッチパネル17Bは、前輪倍速制御、傾斜自動制御、耕深自動制御等の作業状態において作業機10もしくは走行機体5に必要な各種自動制御を一括して作動状態とする作業モード122(図10参照)と、一括して無効状態とする走行モード121(図10参照)とに切換える、おまかせスイッチ(一括選択手段)17gを備えている。
また、フロントスイッチパネル17の各スイッチの側方には選択状態や入切設定状態を点灯によって示すLEDからなる表示ランプが配設されている。さらに、上記おまかせスイッチ17gには走行モード121が選択されているときに点灯する表示ランプL1、作業モード122が選択されているときに点灯する表示ランプL2がそれぞれ備えられている。
次に、トラクタ1の制御手段について図6に沿って説明する。
図6に示すように、マイコンユニット(コントローラ)100は、CPU110、RAM108、フラッシュメモリ109を有するマイクロコンピュータ104、電源101、デジタル入力回路102、アナログ入力回路103、不揮発性メモリであるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)105、通信回路106、ドライバ(駆動回路)107などを用いて構成される電子回路である。該マイコンユニット100の入力側には、電源101のほか、上記倍速旋回・オートブレーキ旋回切換スイッチ17a、バックアップスイッチ17b、四駆切換えスイッチ17c、旋回アップスイッチ17d、おまかせスイッチ17g等がデジタル入力回路102を介して、またリフトアーム角センサ97(図1参照)、傾斜センサ95(図1参照)、耕深センサ96(図1参照)等の各種センサがアナログ入力回路103を介して接続されている。なお、これらデジタル入力回路102又はアナログ入力回路103には、深さ自動スイッチ18c、深さ設定ダイヤル18b、傾き自動スイッチ18e、及び傾き設定スイッチ18d等も接続されている。
また、該マイコンユニット100の出力側には、液晶パネル15aのほか、ランプ(LEDを含む)111、ブザー112、ソレノイド(例えばリフトアーム上昇用ソレノイド)113等がドライバ107を介して接続されている。これにより、マイコンユニット100は、走行機体5の走行に係わる駆動制御及び作業機10の昇降に係わる昇降制御を行うように構成されている。
なお、マイコンユニット100は概念的に示したものであり、それぞれの制御ごとに配置された操作手段や作動手段の近傍にマイコンユニットを複数設け、通信回線によって接続されるように構成してもよい。
ここで、各種の自動制御機能の概略を説明する。
〔耕深自動制御〕(131)(図10参照)
深さ設定ダイヤル18bの設定耕深の入力信号と、耕深センサ96によりリヤカバー92の回転角を検出することで得られた検出信号はマイコンユニット100に送られ、該マイコンユニット100からの制御指令に基づき、リフトシリンダ87を油圧駆動して作業機10を上昇・下降動作させる。これにより適正な作業耕深に耕深制御することが可能となる。
〔Sモード〕(132)
耕深自動制御の実行中に、マイコンユニット100では、耕耘負荷変動に伴うエンジン回転数変化量を演算したり、予め検出した基準データと比較するなどして制御指令を決定する。この制御指令に基づき、リフトシリンダ87を油圧駆動して作業機10の耕深の深さを制御させる。つまり、耕耘負荷の増大に伴うエンジン回転の低下にあわせて作業機10の深さが自動的に浅くされることになる。これにより、耕耘負荷の増大に伴うエンスト等の不都合を回避できる。
〔傾斜自動制御〕(133)
傾き設定スイッチ18dの設定傾斜角度の入力信号と、傾斜センサ95及び角速度センサ(図示せず)により走行機体5のローリング角度から得られた検出信号はマイコンユニット100に送られ、該マイコンユニット100からの制御指令に基づき、リフトロッドシリンダ85を油圧駆動で伸長・短縮して左右のリフトロッド84の長さを異ならせる。これにより作業機10の左右傾き角度が適正に傾斜制御することが可能となる。
〔クイックアップ制御〕(134)
クイックアップレバー19が操作され、その入力信号を受けたマイコンユニット100からの制御指令に基づき、作業機10を上げ高さボリューム18fにより設定された上限位置まで自動的に上昇させる。これにより簡単な操作で作業機10を設定上限位置まで上昇させることが可能となる。
〔バックアップ制御〕(135)
例えば、前後進切換操作レバー(図示せず)の後進位置への操作が検出されると、マイコンユニット100からの制御指令に基づき、作業機10を上げ高さボリューム18fにより設定された上限位置まで自動的に上昇させる。このバックアップ制御を行えば、例えば操作者が作業機10を上昇操作し忘れたまま後進させてしまうということがなくなり安全性を向上させることが可能となる。
〔旋回アップ制御〕(136)
ステアリングホイール14により一定角以上の操舵角を与えられたことが検出されると、マイコンユニット100からの制御指令に基づき、作業機10を設定された上限位置まで自動的に上昇させる。これにより例えばUターンする場合などでも、ステアリングホイール14の操作だけで作業機10を設定上限位置まで上昇させることができ、操作の容易化が可能となる。
〔前輪増速制御〕(137)
ステアリングホイール14により一定角以上の操舵角を与えられたことが検出されると、マイコンユニット100からの制御指令に基づき、前輪2が後輪3よりも高速で駆動される。これにより小回り旋回が可能となっている。なお、本実施例では略々2倍に増速されるので、例えばフロントスイッチパネル17には「倍速」と表記されているが、増速の程度を限定するものではない。
〔オートブレーキ制御〕(138)
ステアリングホイール14により一定角以上の操舵角を与えられると、その操舵量に基づき機械的な連繋機構(図示せず)を介して旋回内側の後輪3のブレーキ装置(図示せず)が制動作動される。すなわち、ステアリングホイール14を操作することにより、旋回内側の後輪3に軽くブレーキが作用する。これにより小回り旋回が可能となっている。
〔二・四駆切換え制御〕(139)
四駆切換えスイッチ17c及びおまかせスイッチ17gの入力信号を受けたマイコンユニット100からの制御指令に基づき、上記標準用クラッチC1及びクイックターン用クラッチC2を制御することで四輪駆動状態と二輪駆動状態とに切換える。また、例えば走行モード121中に二輪駆動状態とされた際であっても、ブレーキによる制動が作動した場合には、自動的に四輪駆動状態に切換わり、前輪も制動力として作用する。
次に、トラクタ1の制御について図7ないし図10に沿って説明する。
本実施の形態に係るトラクタ1は、図10に示すように、各種自動制御機能の設定を自由に入切切換えすることが可能な作業モード122と、該各種自動制御機能を略々全てにわたって切設定とする走行モード121とを備えており、上記フロントスイッチパネル17に備えられたおまかせスイッチ17g(図3(a)参照)への操作入力に基づいて、モード切換制御が行われる。なお、図10において、「○」は設定可能、「×」は動作しないことを示している。
例えば操作者が運転席部8にあり、電源操作手段であるイグニッションをオンするなどして電源101を投入すると、初期設定制御が行われ、CPU110がイグニッションのオフ時におけるモードと当該モードにおける各種自動制御の入切設定とを復帰し、前回電源を切った時の制御モードが再現される。なお、この入切設定状態に応じて表示パネル15等の各表示ランプが点灯し、再現された制御モードや入切設定状態が操作者等に報知される。
このように初期設定制御が終了すると、以降は、例えば操作者によりおまかせスイッチ17gに入力があった際に制御モードを切換えるモード切換制御(S1)が行われる。
ついで、モード切換制御(S1)について説明する。図7に示すように、モード切換制御が開始され(S1−1)、おまかせスイッチ17gに操作入力が検出されない場合は(S1−2の無)、そのまま復帰(リターン)し、つまり制御モードの切換えは行われない。ここで、例えばおまかせスイッチ17gに操作入力があり、該おまかせスイッチ17gにより操作入力が検出されると(S1−2の有)、まず、マイコン104は、現在の制御モードが走行モード121であるか否かを判定する(S1−3)。ここで、走行モード121である場合は、(S1−3のYes)、作業モード122に切換え(S1−4)を行って復帰し、走行モード121でない場合は(S1−3のNo)、作業モード122であるので走行モード121に切換え(S1−5)を行って復帰する。
ついで、二・四駆切換え制御139における、二輪駆動状態の際の制動制御(S2)について説明する。図8に示すように、制動制御が開始され(S2−1)、例えばブレーキが操作されるなどの制動操作が検出されない場合は(S2−2のNo)、そのまま二輪駆動の状態を維持(S2−3)し、つまり制動制御は行われずに復帰する。ここで、例えばブレーキが操作されるなどして制動操作が検出されると(S2−2のYes)、前輪動力取出し装置70の油圧制御装置75によって四輪駆動状態に切換え(S2−3)を行って復帰する。
ついで、走行駆動制御(S3)について説明する。図9に示すように、走行駆動制御が開始され(S3−1)、四駆切換えスイッチ17cに操作入力が検出されると(S3−2の有)、マイコン104は、トラクタの駆動状態が二輪駆動であるか否かを判定する(S3−3)。ここで、二輪駆動である場合は(S3−3のYes)、二輪駆動であることを判定し(S3−4)復帰する。更にここで、二輪駆動でない場合は(S3−3のNo)、後述するステップS3−8に進む。
上記ステップS3−2において、四駆切換えスイッチ17cに操作入力が検出されない(S3−2の無)場合は、まず、制御モードの変更があるか否かを判定する(S3−5)。ここで、制御モードの変更がない場合(S3−5の無)は、そのまま復帰する。ここで、例えばおまかせスイッチ17gに操作入力があり、制御モードに変更がある(S3−5の有)と、作業モード122であるか否かを判定する(S3−6)。ここで、作業モード122でない場合(S3−6のNo)は、走行モード121であるので、二輪駆動であることを判定し(S3−4)復帰する。更にここで、作業モード122である(S3−6のYes)と、トラクタの駆動状態が二輪駆動であるか否かを判定する(S3−7)。ここで、二輪駆動である場合は(S3−7のYes)、二輪駆動であることを判定し(S3−4)復帰する。更にここで、二輪駆動でない場合(S3−7のNo)は、ステップS3−8に進む。
続いて、ステップS3−8では、制御モードが作業モード122かつ前輪増速制御137が設定されているか否かを判定する(S3−8)。ここで、前輪増速制御137が設定されていない場合(S3−8のNo)は、上記ステップS3−6において制御モードが作業モード122であることをすでに判定しているので、トラクタの駆動状態が四輪駆動であることを判定して(S3−9)復帰する。更にここで、前輪増速制御137が設定されている場合(S3−8のYes)は、オートブレーキ制御138が設定されているか否かを判定する(S3−10)。ここで、オートブレーキ制御138が設定されていない場合(S3−10のNo)は、すでに判定されている前輪増速制御137が設定されていることを判定して(S3−11)復帰する。更にここで、オートブレーキ制御138が設定されている場合(S3−8のYes)は、(前輪増速制御137と共に)オートブレーキ制御138が設定されていることを判定して(S3−12)復帰する。
以上のように、本実施の形態に係るトラクタ1によると、おまかせスイッチ17gにより、作業モード122を選択することにより、慣れないオペレータでも適正な制御にてアシストされて、適正で効率的な作業を行うことができ、かつ上記おまかせスイッチ17gにより、走行モード121を選択することにより、各種制御を停止して、安全に路上等の走行をすることができるものでありながら、走行モード121にあっても、一部の駆動制御は、変更手段により変更することができ、おまかせスイッチ17gにより選択された作動状態を保持した状態で、走行状況に応じた適正な制御に変更して効率よくトラクタ1を運転することができる。
具体的には、おまかせスイッチ17gによる走行モード121の選択にあっては、前輪増速制御137及びオートブレーキ制御138がオフされることに加えて二輪駆動状態となるので、路上走行において無意識に四輪駆動状態となって、燃費を大幅に低下したり、タイヤを早期に摩耗することを防止することができ、かつ該走行モード121にあっても、四駆切換えスイッチ17cにより二・四駆を切換えることができ、例えば圃場作業が終了して畦越えして路上に出る場合、四駆切換えスイッチ17cにより一旦四輪駆動に切換え、路上に出た後に更に二輪駆動に切換えることにより、容易に畦等を乗り越えることができると共に、オペレータは四輪駆動に切換えたことを意識するので、路上走行において二輪駆動に確実に戻して、燃費の向上等を図ることができる。
また、二輪駆動とした状態でも、制動が作動すると、四輪駆動に切換えるので、前輪をも制動力として有効に作用して、路上走行において、制動性能を向上することができる。
なお、本実施の形態においては、自動制御機能のうち昇降制御として、耕深自動制御、Sモード、傾斜自動制御、クイックアップ制御、バックアップ制御、旋回アップ制御等を例に説明したが、これらに限らず、どのような昇降制御であっても本発明を適用することが可能である。
本実施の形態に係るトラクタの側面図。 トラクタの運転席部を示す上面図。 表示パネル及び操作パネルを示す図で、(a)は運転席に位置する表示パネル及び操作パネルの正面図、(b)は運転席右方側に位置する操作パネルの上面図。 トラクタの変速機構を示す展開図。 トラクタの前輪動力取出し装置の油圧制御装置を示す回路図。 トラクタの制御装置を示すブロック図。 制御モードのモード切換制御を示すフローチャート。 制動制御を示すフローチャート。 走行駆動制御を示すフローチャート。 トラクタの各制御モードにおける各種自動制御機能の設定状態を示す表。
符号の説明
1 作業車輌(トラクタ)
2 前輪
3 後輪
5 走行機体
6 エンジン
10 作業機
17a 設定手段(倍速旋回・オートブレーキ旋回切換えスイッチ)
17b 設定手段(バックアップスイッチ)
18c 設定手段(深さ自動スイッチ)
18e 設定手段(傾き自動スイッチ)
18g 設定手段(作業切換スイッチ)
17c 変更手段(四駆切換えスイッチ)
17g 一括選択手段(おまかせスイッチ)
100 コントローラ(マイコンユニット)
121 走行モード
122 作業モード
137 駆動制御、前輪増速制御
138 駆動制御、オートブレーキ制御
139 駆動制御、二・四駆切換え制御

Claims (3)

  1. エンジンからの動力を前輪及び後輪に伝達すると共に、走行機体に作業機を昇降自在に支持し、前記走行機体の走行に係わる駆動制御及び前記作業機の昇降に係わる昇降制御をコントローラにより行なう作業車輌において、
    前記作業機の各種昇降制御及び前記走行機体の各種駆動制御をそれぞれ各別に変更設定する設定手段と、
    前記各種昇降制御及び前記各種駆動制御を前記設定手段により設定された状態で一括作動する作業モードと、前記各種昇降制御及び各種駆動制御を停止する走行モードと、に切換える一括選択手段と、
    前記走行モードにあっても、前記駆動制御の一部の作動状態を変更設定する前記設定手段により変更し得る変更手段と、
    を備えることを特徴とする作業車輌。
  2. 前記各種駆動制御は、前記走行機体の旋回時に前輪を後輪に対して自動的に増速駆動する前輪増速制御と、前記走行機体の旋回時に旋回内側となる後輪を制動するオートブレーキ制御と、後輪及び前輪を常時駆動状態とする四輪駆動と後輪のみ駆動する二輪駆動とを切換える二・四駆切換え制御と、を有し、
    前記設定手段は、前記四輪駆動と二輪駆動の切換え、前記四輪駆動状態における前記前輪増速制御のオン・オフ、該前輪増速制御のオンにおける前記オートブレーキ制御のオン・オフの設定であり、
    前記走行モードにあっては、前記二・四駆切換え制御が二輪駆動になると共に、前記前輪増速制御及び前記オートブレーキ制御がオフとなり、
    前記走行モードにあっても、前記変更手段により前記二・四駆切換え制御を四輪駆動に切換え可能とした、
    請求項1記載の作業車輌。
  3. 前記各種駆動制御は、前記二・四駆切換え制御を二輪駆動とした状態で、制動が作動する場合、自動的に四輪駆動に切換える制動時制御を有する、
    請求項2記載の作業車輌。
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