次に、本発明の一実施形態に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
図1に示すように、トラクタ1においては、機体フレーム2が長手方向を前後方向として配置され、その前部でフロントアクスルを介して左右一対の前輪3・3に支持されるとともに、その後部でリアアクスルを介して左右一対の後輪4・4に支持される。機体フレーム2の前部にはエンジン5が設けられ、ボンネット6によって覆われている。機体フレーム2の後部にはトラクタ1の動力伝達機構の一部を収納するミッションケース7が設けられている。
ボンネット6の後方にはキャビン8が配置され、キャビン8の内部には、作業者が搭乗してトラクタ1を操作するための運転操作部10が設けられる。運転操作部10においては、操向ハンドル11が前部に設けられ、操向ハンドル11の後方には座席12が配置される。また、座席12の側部には、変速比設定手段63、昇降位置設定手段72となるポジションレバー(またはポジションスイッチ)、耕深設定手段65等が配置され、操向ハンドル11のハンドルコラム側部にエンジン回転数設定手段70となるアクセルレバーや前後進切換レバー62が配置されている(図3参照)。そして、座席12前下方のステップ上にはアクセルペダル(エンジン回転数設定手段70)、ブレーキペダル、主クラッチペダル、デフロックペダル等が配設されている。
作業機連結装置20は、主としてトップリンク21、ロアリンク22・22、リフトロッド23・23を備える。トップリンク21は、ミッションケース7の後部に固設したトップリンクブラケットに回動自在に連結される。ロアリンク22・22は、ミッションケース7またはリヤアクスルハウジングの両側に回動自在に連結される。リフトロッド23・23は、一端がロアリンク22・22の前後中途部に回動自在に連結されて、他端が油圧ケースより後方に突出したリフトアーム24・24に回動自在に連結される。該リフトアーム24の回動基部には昇降位置検出手段73となるポジションセンサが配置されている。トップリンク21及びロアリンク22・22の後端には、作業機として本実施形態ではロータリ耕耘装置30が連結される。但し、作業機はロータリ耕耘装置30に限定されるものではなく、薬剤散布機やモアやレーキ等を装着することができる。
ロータリ耕耘装置30は、耕耘爪31、耕耘カバー32、リヤカバー33、チェーンケース34等を備える。耕耘爪31・31・・・は左右方向に回転自在に横架した爪軸35上に適宜間隔をあけて放射状に植設され、該耕耘爪31・31・・・の先端の回転軌跡36の上方及び側方を覆うように耕耘カバー32が配置されている。該耕耘カバー32の後端にはリヤカバー33の前端が回動自在に連結され、リヤカバー33の回動は耕深検知手段66となるカバー角センサにより検知される。前記爪軸35はチェーンケース34、ユニバーサルジョイント等を介して、前記ミッションケース7の後面より後方に突出したPTО軸49と連動連結される(図2参照)。
そして、図2に示すように、エンジン5の動力が、主変速機構41、前後進切換機構42、副変速機構43、後輪差動機構44等を順次介して、後輪4・4に伝達されるとともに、エンジン5の動力が、主変速機構41、前後進切換機構42、副変速機構43、前輪駆動切換機構45、前輪差動機構46等を順次介して、前輪3・3に伝達される。前記主変速機構41の無段変速装置41aは油圧式無段変速装置により構成されているが、限定するものではなく、ベルト式やトロイダル式のCVT等で構成することもがきる。これにより、前輪3・3や後輪4・4が回転駆動されて、トラクタ1の走行が行われる。また、エンジン5の動力が、PTOクラッチ機構47、PTO変速機構48、PTO軸49等を順次介して、ロータリ耕耘装置30の爪軸35に伝達される。これにより、爪軸35とともに耕耘爪31・31・・・が回転駆動されて、耕耘作業が行なわれる。
次に、トラクタ1の制御に関する構成を説明する。
制御装置100はトラクタ1の任意の位置に具備される。制御装置100は、中央処理装置、記憶装置等により構成される。制御装置100には、図3に示すように、車速検出手段61と、前後進切換レバー62と、変速比設定手段63と、変速比検出手段64と、耕深設定手段65と、耕深検出手段66と、PTOスイッチ67と、PTOレバー68と、PTO切換ダイヤル69と、エンジン回転数設定手段70と、エンジン回転数検出手段71と、昇降位置設定手段72と、昇降位置検出手段73と、出力検出手段74と、制御選択スイッチ80と、モード操作スイッチ81と、エンジン回転数変更量設定ダイヤル82と、車速変更量設定ダイヤル83と、閾値設定ダイヤル84と、表示部85とが接続される。また、制御装置100には、変速アクチュエータ91と、昇降アクチュエータ92が、接続される。
車速検出手段61は、トラクタ1の実際の走行速度(車速)を検出するものである。車速検出手段61は、本実施形態においては、後輪4における車軸の回転数を検出する構成とされる。車速検出手段61は、磁気ピックアップコイルやロータリエンコーダ等で構成され、車速検出手段61で検出された検出値は、車速Vとして、制御装置100に送信される。
前後進切換レバー62は、トラクタ1の進行方向を設定するものである。前後進切換レバー62は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサで検出された操作位置は、制御装置100に送信される。制御装置100は、操作位置に基づいて電磁弁に信号を送信して油圧アクチュエータを駆動させ、前記前後進切換機構42の前進クラッチ42a及び後進クラッチ42b(図2参照)を「入」または「切」に作動させる。詳細には、前後進切換レバー62を「前進」位置に操作した場合は、前後進切換機構42の前進クラッチ42aを「入」に作動させ、「後進」位置に操作した場合は、後進クラッチ42bを「入」に作動させ、「中立」位置に操作した場合は、前進クラッチ42a及び後進クラッチ42bを「切」に作動させる。
変速比設定手段63は、主変速機構41における無段変速装置41aの変速比を設定するものである。変速比設定手段63は、例えば、主変速レバーや速度調節ダイヤルで構成される。変速比設定手段63は、操作量を検出するセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、目標変速比として、制御装置100に送信され、制御装置100により、目標変速比に基づいて、目標車速Vsが決定される。
変速比検出手段64は、主変速機構41における無段変速装置41aの変速比を検出するものである。変速比検出手段64は、例えば、無段変速装置の油圧ポンプまたは油圧モータの斜板角度を検出するセンサとされ、このセンサで検出した信号は、実際の無段変速装置41aの変速比(実変速比)として、制御装置100に送信される。副変速位置検知手段88は、副変速レバーの変速位置を検知する。但し、副変速機構43のスライダの変速位置を検知してもよく限定するものではない。この検出信号は、制御装置100に送信される。本実施形態では、高位置と低位置を検出する。
耕深設定手段65は、ロータリ耕耘装置30における耕耘爪31の耕深深さを任意の耕深深さに設定するものである。耕深設定手段65は、例えば、回動操作が可能な耕深設定ダイヤルとされる。耕深設定手段65は、操作量を検出するセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、目標耕深深さとして、制御装置100に送信される。
耕深検出手段66は、ロータリ耕耘装置30の耕深深さを検出するものである。耕深検出手段66は、例えば、耕耘カバー32に対するリヤカバー33の回動角度(リヤカバー33の開度)を検出する不図示のカバー角センサとされ、このカバー角センサの検出値は、耕深深さとして、制御装置100に送信される。
PTOスイッチ67は、PTO軸49への動力の伝達及び遮断の設定を行うものである。PTOスイッチ67は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサで検出された操作位置は、制御装置100に送信される。制御装置100は、PTOスイッチ67及び後述するPTO切換ダイヤル69の操作位置に基づいて電磁弁に信号を送信して油圧アクチュエータを作動させ、PTOクラッチ機構47のPTOクラッチ47a及びこのPTOクラッチ47aと背反的に作動するPTOブレーキ47bを「入」または「切」に作動させる。
PTOレバー68は、PTO軸49の回転数や回転方向を変更するものである。PTOレバー68は、PTO変速機構48における変速ギヤの噛合を選択的に変更するシフタと連結される。本実施形態においては、PTOレバー68は、「正転」、「中立」、「逆転」位置に操作可能とされ、この操作に基づいてPTO変速機構48のシフタが摺動して、PTO軸49の回転数や回転方向が変更される。PTOレバー68は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサで検出された操作位置は、制御装置100に送信される。
PTO切換ダイヤル69は、PTOクラッチ機構47の作動モードを切り換えるものである。PTO切換ダイヤル69は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサが制御装置100と接続される。PTO切換ダイヤル69は、「連動」、「独立」、または「昇降連動」位置に切り換え操作可能とされる。
エンジン回転数設定手段70は、エンジン5の回転数を設定するものである。エンジン回転数設定手段70は、例えば、アクセルレバーやアクセルペダルで構成される。エンジン回転数設定手段70は、操作量を検出するポテンショメータ等のセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、目標エンジン回転数Nsとして、制御装置100に送信される。
エンジン回転数検出手段71は、エンジン5の回転数を検出するものである。エンジン回転数検出手段71は、例えば、エンジン5のフライホイールやクランク軸の回転数を検出する構成とされる。エンジン回転数検出手段71は、磁気ピックアップコイルやロータリエンコーダ等で構成され、エンジン回転数検出手段71で検出した信号は、エンジン回転数Nrとして、制御装置100に送信される。
昇降位置設定手段72は、トラクタ1の車両本体に対するロータリ耕耘装置30の高さを設定するものである。昇降位置設定手段72は、例えば、作業機を任意の高さに昇降させる作業機昇降レバーや、予め設定した所定の位置(上昇位置や下降位置)に昇降させる作業機上昇スイッチ及び作業機下降スイッチとされる。これら作業機昇降レバーや作業機上昇スイッチ及び作業機下降スイッチは、操作量を検出するセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、目標昇降位置(後述するリフトアーム24・24の目標回動角度αs)として、制御装置100に送信される。
昇降位置検出手段73は、トラクタ1の車両本体に対するロータリ耕耘装置30の高さを検出するものであり、リフトアーム24の基部に配置されている。
出力検出手段74は、エンジン5の出力を検出するものである。出力検出手段74は、例えば、前記燃料噴射装置の燃料噴射量から算出され、この燃料噴射装置の燃料噴射パターンに関する信号が、制御装置100に送信される。制御装置100は、当該信号に基づいて、エンジン5の出力を算出することが可能である。なお、出力検出手段74は当該燃料噴射装置に限るものではなく、エンジン5の出力を検出することができるものであればよい。
負荷検知手段は、本実施形態においては、制御装置100及びエンジン回転数検出手段71によって構成される。制御装置100は、エンジン回転数検出手段71により検出されるエンジン回転数Nrに基づいて、エンジン5の負荷率Lを算出する。負荷検知手段は、本実施形態においてはエンジン5の負荷率Lを算出することにより負荷を検知するが、これに限定されるものではなく、例えば、エンジンダウン量または牽引トルク等を算出することにより負荷を検知してもよい。
制御選択スイッチ80と、モード操作スイッチ81と、エンジン回転数変更量設定ダイヤル82と、車速変更量設定ダイヤル83とは、図4に示すように、操作パネル86に設けられている。操作パネル86は、操向ハンドル11のハンドルコラム側部に設けられている。また、閾値設定ダイヤル84は、運転操作部10内に設けられている。但し、操作パネル86に設けてもよい。
制御選択スイッチ80は、エンジン回転数制御及び車速制御の「入」または「切」の選択を行う選択手段を構成するものである。制御選択スイッチ80が押されるごとに、エンジン回転数制御及び車速制御の「入」または「切」が変更される。
モード操作スイッチ81は、重負荷モードと軽負荷モードとの入切設定を行う操作手段を構成するものである。モード操作スイッチ81が押されるごとに、重負荷モード「切」及び軽負荷モード「切」、重負荷モード「入」及び軽負荷モード「切」、重負荷モード「切」及び軽負荷モード「入」、並びに重負荷モード「入」及び軽負荷モード「入」、の四種類の状態のうちの一の状態に順番に変更される。重負荷モードと軽負荷モードとの入切はそれぞれ表示ランプ86b・86cにより表示される。
エンジン回転数変更量設定ダイヤル82及び車速変更量設定ダイヤル83は、重負荷モードと軽負荷モードにおける、前記エンジン回転数の変更量、及び、車速の変更量を任意に変更可能な変更手段を構成するものである。
エンジン回転数変更量設定ダイヤル82は、目標エンジン回転数Nsからのエンジン回転数の増加または減少の許容量を設定する手段である。許容量は、例えば、0rpmから500rpmまでの間で設定することができる。エンジン回転数変更量設定ダイヤル82を操作して許容量を0rpmに設定した場合には、制御選択スイッチ80による「入」または「切」の選択、及びモード操作スイッチ81によるモードの選択に関わらず、エンジン回転数制御を行わない。
車速変更量設定ダイヤル83は、車速の変更量(減速率)を設定する手段である。例えば、減速率は0%から50%までの間で設定することができる。車速変更量設定ダイヤル83を操作して減速率を0%に設定した場合には、制御選択スイッチ80による「入」または「切」の選択、及びモード操作スイッチ81によるモードの選択に関わらず、車速制御を行わない。
閾値設定ダイヤル84は、前記重負荷モードと軽負荷モードにおける、設定した第一重負荷値L1、第二重負荷値L2、第一軽負荷値L3及び第二軽負荷値L4を変更する閾値設定手段を構成するものである。ここで、第一重負荷値L1とは、重負荷モードにおいて、エンジン回転数を増加する下限の負荷値であり、第二重負荷値L2とは、車速を減少する下限の負荷値である。第一重負荷値L1と第二重負荷値L2とは等しい値であってもよい。また、第一軽負荷値L3とは、軽負荷モードにおいて、変更していた車速を元に戻す上限の負荷値であり、第二軽負荷値L4とは、軽負荷モードにおいて、エンジン回転数を減少する上限の負荷値である。第一軽負荷値L3と第二軽負荷値L4とは等しい値であってもよい。閾値設定ダイヤル84は、重負荷モードにおいて、エンジン回転数の増加及び車速の減少を開始する閾値、若しくは、軽負荷モードにおいて、エンジン回転数の減少及び車速の増加を開始する閾値を設定することができる。
表示部85は、運転操作部10に設けられている。表示部85は、図5に示すように、制御選択スイッチ80の操作によりエンジン回転数制御及び車速制御の「入」のとき表示ランプ85aを点灯し、「切」のとき消灯させる。また、制御選択スイッチ80の操作により、制御選択スイッチ80が「入」のとき表示ランプ86aを点灯し、「切」のとき消灯させる。また、制御選択スイッチ80が「入」のときは表示ランプ85aも同時に点灯させる。なお表示ランプ85aの位置は限定するものではない。また、モード操作スイッチ81の操作により、表示ランプ86b・86cを点灯または消灯させて重負荷モード若しくは軽負荷モードのいずれのモードであるかを表示する。
また、表示部85は、エンジン回転数が増加していることまたは減少していること、若しくは車速が減少していることを表示する。表示部85には、実際にエンジン回転数が一定数増加しているときまたは減少しているときに点灯するランプが設けられている。本実施形態においては、エンジン回転数が50rpm増加しているときまたは50rpm減少しているときに点灯するランプが設けられている。また、表示部85には、液晶部85bが設けられており、車速が一定速度減少しているときには、液晶部85bに車速が減少している旨が表示される。本実施形態においては、車速が5%以上減少しているときに、液晶部85bに下方矢印が表示される。
前記重負荷モードと軽負荷モードにおけるエンジン回転数変更速さは、副変速機構43の変速位置によって切り換えられる。副変速機構43の変速位置は、副変速位置検知手段88によって検出される。例えば、副変速機構43が低速状態である場合には、エンジン回転数を増加させる速さを速くする。また、副変速機構43が高速状態である場合には、エンジン回転数を増加させる速さを遅くする。更に、エンジン回転数が高い程変更量を大きくしている。具体的には、エンジン回転数変更アクチュエータ93の作動速度を所定量変更する。また、車速変更速さは車速増加モードで速くし、車速減少モードで遅くする。具体的には変速アクチュエータ91の作動速度を所定量変更する。
変速アクチュエータ91は、主変速機構41における無段変速装置41aの変速比、すなわち、斜板角度を変更するものである。変速アクチュエータ91は、電磁比例弁、シリンダ、モータ等で構成される。変速アクチュエータ91は、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動して、無段変速装置41aの斜板角度を変更して、主変速機構41の変速比を変更している。制御装置100は、変速比検出手段64で検出された実変速比が、変速比設定手段63で設定された目標変速比と一致するように、変速アクチュエータ91を駆動制御して、無段変速装置41aの変速比を変更している。
昇降アクチュエータ92は、車両本体に対してロータリ耕耘装置30を昇降させるものである。昇降アクチュエータ92は、前記リフトアーム24・24を回動させる油圧シリンダや、この油圧シリンダへの圧油の送油量や方向を切り換える電磁弁等で構成される。昇降アクチュエータ92は、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動して、ロータリ耕耘装置30の高さを変更している。
エンジン回転数変更アクチュエータ93は、エンジン回転数を変更するものである。エンジン回転数変更アクチュエータ93は、電子ガバナの場合ラックアクチュエータとし、コモンレール式の場合インジェクタで構成される。エンジン回転数変更アクチュエータ93は、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動して、燃料噴射量を変更して、エンジン回転数を変更している。制御装置100は、エンジン回転数Nrが、目標エンジン回転数Nsと一致するようにエンジン回転数変更アクチュエータ93を駆動制御する。
以下では、トラクタ1の制御態様について詳細に説明する。
制御装置100による、エンジン5の出力及び負荷率Lの算出について説明する。制御装置100は、エンジン5の出力(PS)を常時算出する。具体的には、制御装置100には、前記燃料噴射装置の燃料噴射パターン(例えば、燃料噴射量、燃料の噴射回数、燃料の噴射タイミング等)とエンジン5の出力との関係を示す図示せぬマップが予め記憶される。制御装置100は、前記燃料噴射装置の燃料噴射パターン、及び前記マップに基づいて、エンジン5の出力を算出する。
制御装置100は、エンジン5の負荷率Lを常時算出する。ここで、本実施形態に係る負荷率Lとは、エンジン5がある回転数で駆動した場合における、最大燃料噴射量に対する実噴射量の割合(%)をいう。具体的には、制御装置100には、エンジン回転数Nrごとに、出力と負荷率Lとの関係を示すマップが予め記憶される。制御装置100は、エンジン回転数検出手段71により検出されるエンジン回転数Nr、算出したエンジン5の出力、及び前記マップに基づいて、エンジン5の負荷率Lを算出する。
以下では、制御装置100によるエンジン回転数及び車速制御の態様について図6から図9を用いて説明する。
まず、図6において、制御選択スイッチ80が「入」になっているか否かを判断する(ステップS10)。制御選択スイッチ80が「切」になっている場合には、再びステップS10に戻る。制御選択スイッチ80が「入」になっている場合には、次に重負荷モードが選択されているか否かを判断する(ステップS20)。重負荷モードが選択されている場合には、軽負荷モードが選択されているか否かを更に判断する(ステップS30)。軽負荷モードが選択されている場合には、ステップS100に移行する。軽負荷モードが選択されていない場合には、ステップS200に移行する。ステップS20において重負荷モードが選択されていない場合には、軽負荷モードが選択されているか否かを更に判断する(ステップS40)。軽負荷モードが選択されている場合には、ステップS300に移行する。軽負荷モードが選択されていない場合には、ステップS400に移行する。
<重負荷モード・エンジン回転数増加ステップ>
図7に示すステップS100においては、算出した負荷率Lが設定した重負荷値L1よりも大きいか否かについて判断する。負荷率Lが重負荷値L1よりも大きい場合には、エンジン回転数Nrがエンジン回転数上限値Nmaxよりも小さいか否かについて判断し(ステップS105)、負荷率Lが重負荷値L1以下の場合には、ステップS120に移行する。ステップS105において、エンジン回転数Nrがエンジン回転数変更上限値Nmaxよりも小さい場合には、エンジン回転数変更アクチュエータ93を駆動して、エンジン回転数Nrを増加させる(ステップS110)。そして、ステップS100に戻る。ステップS105において、エンジン回転数Nrがエンジン回転数上限値Nmax以上の場合には、エンジン回転数上限値Nmaxに維持させてステップS120に移行する。
<重負荷モード・車速減少ステップ>
ステップS120においては、負荷率Lが重負荷値L2よりも大きいか否かについて判断する。負荷率Lが重負荷値L2よりも大きい場合には、目標車速Vsが車速下限値Vminよりも速いか否かについて判断する(ステップS125)。負荷率Lが重負荷値L2以下の場合には、ステップS140に移行する。ステップS125において、車速Vが車速下限値Vminよりも速い場合には、変速アクチュエータ91を駆動することにより、車速Vを減少させる(ステップS130)。そして、ステップS120に戻る。ステップS125において、目標車速Vsが車速下限値Vmin以下である場合には、目標車速Vsを車速下限値Vminに維持させてステップS140に移行する。
<軽負荷モード・車速戻しステップ>
図7に示すステップS140においては、負荷率Lが軽負荷値L3よりも小さいか否かについて判断する。負荷率Lが軽負荷値L3よりも小さい場合には、車速Vと目標車速Vsとが同じであるか否かについて判断し(ステップS145)、負荷率Lが軽負荷値L3以上の場合には、適正負荷範囲にあるので、エンジン回転数及び車速を維持する。ステップS145において、車速Vが目標車速Vsでないときには、変速アクチュエータ91を駆動することにより、車速Vを目標車速Vsにする(ステップS150)。そして、ステップS140に移行する。ステップS145において、車速Vが目標車速Vsであるときには、ステップS160に移行する。
<軽負荷モード・エンジン回転数減少ステップ>
ステップS160においては、負荷率Lが軽負荷値L4よりも小さいか否かについて判断する。負荷率Lが軽負荷値L4よりも小さい場合には、エンジン回転数Nrがエンジン回転数下限値Nminよりも大きいか否かについて判断する(ステップS165)。負荷率Lが軽負荷値L4以上の場合には、エンジン回転数及び車速を維持し、最初に戻る。ステップS165において、エンジン回転数Nrがエンジン回転数下限値Nminよりも大きい場合には、エンジン回転数変更アクチュエータ93を駆動することにより、エンジン回転数Nrをエンジン回転数変更量設定ダイヤル82で設定した変更量だけ減少させる(ステップS170)。そして、S160に戻る。ステップS165において、エンジン回転数Nrがエンジン回転数下限値Nmin以下である場合には、エンジン回転数下限値Nminに維持し、最初に戻る。
<重負荷モード・エンジン回転数増加ステップ>
図8に示すステップS200においては、負荷率Lが重負荷値L1よりも大きいか否かについて判断する。負荷率Lが重負荷値L1よりも大きい場合には、エンジン回転数Nrがエンジン回転数上限値Nmaxよりも小さいか否かについて判断する(ステップS205)。負荷率Lが重負荷値L1以下の場合には、ステップS220に移行する。ステップS205において、エンジン回転数Nrがエンジン回転数上限値Nmaxよりも小さい場合には、エンジン回転数変更アクチュエータ93を駆動することにより、エンジン回転数Nrを増加させる(ステップS210)。そして、ステップS200に戻る。ステップS205において、エンジン回転数Nrがエンジン回転数上限値Nmax以上の場合には、ステップS220に移行する。
<重負荷モード・車速減少ステップ>
ステップS220においては、負荷率Lが重負荷値L2よりも大きいか否かについて判断する。負荷率Lが重負荷値L2よりも大きい場合には、目標車速Vsが車速下限値Vminよりも速いか否かについて判断する(ステップS225)。負荷率Lが重負荷値L2以下の場合には、最初に戻る。ステップS225において、目標車速Vsが車速下限値Vminよりも大きい場合には、変速アクチュエータ91を駆動することにより、車速Vを減少させる(ステップS230)。そして、ステップS220に戻る。ステップS225において、目標車速Vsが車速下限値Vmin以下である場合には、最初に戻る。
<軽負荷モード・エンジン回転数減少ステップ>
図9に示すステップS300においては、負荷率Lが軽負荷値L4よりも小さいか否かについて判断する。負荷率Lが軽負荷値L4よりも小さい場合には、エンジン回転数Nrがエンジン回転数下限値Nminよりも大きいか否かについて判断する(ステップS305)。負荷率Lが重負荷値L4以上の場合には、最初に戻る。ステップS305において、エンジン回転数Nrがエンジン回転数下限値Nminよりも大きい場合には、エンジン回転数変更アクチュエータ93を駆動することにより、エンジン回転数Nrをエンジン回転数変更量設定ダイヤル82で設定した変更量だけ減少させ、(ステップS310)、ステップS300に戻る。ステップS305において、エンジン回転数Nrがエンジン回転数下限値Nmin以下である場合には、最初に戻る。
<モード選択無し・車速減少ステップ>
図10に示すステップS400においては、負荷率Lが重負荷値L2よりも大きいか否かについて判断する。負荷率Lが重負荷値L2よりも大きい場合には、目標車速Vsが車速下限値Vminよりも速いか否かについて判断する(ステップS405)。負荷率Lが重負荷値L2以下の場合には、最初に戻る。ステップS405において、目標車速Vsが車速下限値Vminよりも大きい場合には、変速アクチュエータ91を駆動することにより、車速Vを減少させる(ステップS410)。そして、ステップS400に戻る。ステップS405において、目標車速Vsが車速下限値Vmin以下である場合には、最初に戻る。
以下では、図11を用いて、エンジン回転数及び車速制御を行った場合における負荷率L、エンジン回転数Nr、及び車速Vの時間変化の一例について説明する。この例では、制御選択スイッチ80は「入」状態であり、重負荷モード及び軽負荷モードが選択されている。以下では、重負荷値L1と重負荷値L2が等しく、軽負荷値L3と軽負荷値L4とが等しい場合について説明する。
負荷率Lが大きくなり、重負荷値L1よりも大きくなった時点(T1)から、微小時間d1の間、重負荷値L1よりも大きい状態が持続した場合には、エンジン回転数変更アクチュエータ93を駆動することにより、エンジン回転数Nrを増加させる。なお、微小時間d1の長さは変更することができ、0に設定することも可能である。エンジン回転数Nrを増加させる速さは、副変速機構43の状態に基づいて決定される。次に、エンジン回転数Nrがエンジン回転数上限値Nmax以上になった時点(T2)から、微小時間d2の間エンジン回転数Nrがエンジン回転数上限値Nmax以上の状態が持続した場合においても、負荷率Lが重負荷値L2(L1)よりも大きいので、車速Vを減少させる。
なお、微小時間d2の長さは変更することができ、0に設定することも可能である。車速Vを減少させる速さは、副変速機構43の状態に基づいて決定される。車速Vの減少は、負荷率Lが重負荷値L2(L1)以下となる時点(T3)まで続き、T3以降はエンジン回転数Nrは変更上限値のまま及び車速VはT3時点での減少した速度のままで維持される。さらに、負荷率Lが軽負荷値L3よりも小さくなった時点(T4)から、微小時間d3の間負荷率Lが軽負荷値L3よりも小さくなった状態が持続した場合には、車速Vは目標車速Vsと異なっているので、車速Vを目標車速Vsに戻すために増加させる。なお、微小時間d3の長さは変更することができ、0に設定することも可能である。車速Vが目標車速Vsと等しくなった時点(T5)においても、負荷率Lが軽負荷値L4(L3)よりも小さい状態が微小時間d4の間持続している場合には、エンジン回転数変更アクチュエータ93を駆動することにより、エンジン回転数Nrを減少させる。なお、微小時間d4の長さは変更することができ、0に設定することも可能である。エンジン回転数Nrを増加させる速さは副変速機構43の状態に基づいて決定される。エンジン回転数Nrの減少は、負荷率Lが軽負荷値L4(L3)以上となる時点(T6)まで続き、T6以降はエンジン回転数NrはT6時点での減少したエンジン回転数のまま及び車速Vは目標車速Vsのままで維持される。
また、エンジン回転数及び車速制御中にエンジン回転数変更量設定ダイヤル82が操作され、エンジン回転数上限値Nmaxまたはエンジン回転数下限値Nminが変更された場合には、変更されたエンジン回転数上限値Nmax以下となるようにまたは変更されたエンジン回転数下限値Nmin以上となるようにエンジン回転数Nrを変更する。
例えば、図12に示すように、T7からエンジン回転数Nrを増加させ、エンジン回転数N1まで上昇させた時点(T8)からエンジン回転数をN1に維持している場合であって、T9においてエンジン回転数変更量設定ダイヤル82を操作することによりエンジン回転数上限値NmaxがNmax1からNmax2まで減少したときは、T9からエンジン回転数変更アクチュエータ93を駆動することにより、エンジン回転数NrをNmax2になるまで徐々に減少させる。そして、T10においてエンジン回転数NrがNmax2になると、再び、エンジン回転数及び車速制御を行う。
また、エンジン回転数及び車速制御中にエンジン回転数設定手段70が操作されて目標エンジン回転数Nsが変更された場合には、その時点でのエンジン回転数Nrに目標エンジン回転数Nsの増減分が増減される。例えば、図13に示すように、T11からエンジン回転数Nrを増加させ、エンジン回転数Nrを目標エンジン回転数Ns1からN2まで上昇させた時点(T12)からエンジン回転数NrをN2に維持している場合であって、T13においてエンジン回転数設定手段70を操作することにより目標エンジン回転数NsがNs1からNs2まで増加したときは、エンジン回転数変更アクチュエータ93を駆動することにより、T13からエンジン回転数NrをNs2とNs1との差分dだけ徐々に増加させる。そして、T14においてエンジン回転数NrがN2+dになると、エンジン回転数Nrはそのまま維持される。
また、エンジン回転数設定手段70が操作されているときは、エンジン回転数及び車速制御を一時中止する。すなわち、目標エンジン回転数Nsが変動する際には、負荷率Lが大きく変動するため、エンジン回転数及び車速制御を一時中断する。
また、エンジン回転数及び車速制御中に制御選択スイッチ80を操作することにより、制御選択スイッチが「入」から「切」に変更された場合には、エンジン回転数変更アクチュエータ93及び変速アクチュエータ91を駆動することにより、エンジン回転数Nr及び車速Vを目標エンジン回転数Ns及び目標車速Vsに徐々に戻す。
以上のように、トラクタ1は、エンジン回転数検出手段71と、エンジン回転数設定手段70と、エンジン回転数変更アクチュエータ93と、車速検出手段61と、無段変速装置41aと、無段変速装置41aを変速する変速アクチュエータ91と、負荷検知手段としての制御装置100、エンジン回転数検出手段71、及び出力検出手段74と、エンジン回転数及び車速を制御する制御装置100と、を備えるトラクタにおいて、エンジン負荷率Lが、設定した重負荷値L1よりも大きくなった場合、車速Vを一定に維持しながらエンジン回転数Nrを増加させ、エンジン回転数Nrがエンジン回転数上限値Nmaxまで増加しつつ、エンジン負荷率Lが、設定した重負荷値L2よりも大きくなった場合、車速Vを減少させるように、エンジン回転数変更アクチュエータ93と変速アクチュエータ91とを制御する重負荷モードと、エンジン負荷率Lが設定した軽負荷値L4よりも小さくなった場合、車速Vを一定に維持しながらエンジン回転数Nrを減少させるように、エンジン回転数変更アクチュエータ93と変速アクチュエータ91とを制御する軽負荷モードと、を備えるものである。このように構成することにより、重負荷時には、重負荷モードを選択した場合、エンジン回転数Nrを増加させ、車速Vを減少させ、エンストを防止することができ、作業能率を向上させることができる。また、軽負荷時には、軽負荷モードを選択した場合、エンジン回転数変更アクチュエータ93によりエンジン回転数Nrを減少させ、低燃費で走行することができる。
また、重負荷モードと軽負荷モードにおける、エンジン回転数Nrの変更量、及び、車速Vの変更量を任意に変更可能なエンジン回転数変更量設定ダイヤル82及び車速変更量設定ダイヤル83を備えるものである。このように構成することにより、ユーザの好みや作業形態や圃場の状態に応じて、各モードにおけるエンジン回転数Nrの変更量及び車速Vの変更量を、それぞれ変更することができ、作業効率を向上させることができる。
また、重負荷モードまたは軽負荷モードについて入切設定を行うことにより、エンジン回転数変更アクチュエータ93の制御の入切設定を行うモード操作スイッチ81を備える。このように構成することにより、ユーザの好みに応じて重負荷モード若しくは軽負荷モードをモード操作スイッチ81の入切により任意に選択することができる。
また、重負荷モードと軽負荷モードにおける、設定した重負荷値L1及び重負荷値L2と設定した軽負荷値L3及び軽負荷値L4は、閾値設定ダイヤル84により変更可能とされるものである。このように構成することにより、ユーザの好みや作業形態や圃場の状態に応じて、各モードにおける閾値を変更することができ、作業の仕上がりを向上させ、エンストを防止することができる。
また、重負荷モードと軽負荷モードにおけるエンジン回転数変更速さと、車速変更速さとを設定する設定手段としての副変速機構43を備えるものである。このように構成することにより、ユーザの好みや作業形態や圃場の状態に応じて、各モードにおける閾値を変更することができ、作業の仕上がりを向上させ、エンストを防止することができる。
また、重負荷モードと軽負荷モードとを表示する表示部85を備えるものである。このように構成することにより、作業車設定状態を容易に確認することができる。