次に、本発明の一実施形態に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
図1に示すように、トラクタ1においては、機体フレーム2が長手方向を前後方向として配置され、その前部でフロントアクスルを介して左右一対の前輪3・3に支持されるとともに、その後部でリアアクスルを介して左右一対の後輪4・4に支持される。機体フレーム2の前部にはエンジン5が設けられ、ボンネット6によって覆われている。機体フレーム2の後部にはトラクタ1の動力伝達機構の一部を収納するミッションケース7が設けられている。
ボンネット6の後方にはキャビン8が配置され、キャビン8の内部には、作業者が搭乗してトラクタ1を操作するための運転操作部10が設けられる。運転操作部10においては、操向ハンドル11が前部に設けられ、操向ハンドル11の後方には座席12が配置される。また、座席12の側部には、変速比設定手段63、昇降位置設定手段72、耕深設定手段65等が配置され、操向ハンドル11のハンドルコラム側部にエンジン回転数設定手段70や前後進切換レバー62が配置されている(図3参照)。そして、座席12前下方のステップ上にはアクセルペダル、ブレーキペダル、主クラッチペダル、デフロックペダル等が配設されている。
作業機連結装置20は、主としてトップリンク21、ロアリンク22・22、リフトロッド23・23を備える。トップリンク21は、ミッションケース7の後部に固設したトップリンクブラケットに回動自在に連結される。ロアリンク22・22は、ミッションケース7またはリヤアクスルハウジングの両側に回動自在に連結される。リフトロッド23・23は、一端がロアリンク22・22の前後中途部に回動自在に連結されて、他端が油圧ケースより後方に突出したリフトアーム24・24に回動自在に連結される。トップリンク21およびロアリンク22・22の後端には、ロータリ耕耘装置30が連結される。
ロータリ耕耘装置30は、耕耘爪31、耕耘カバー32、リヤカバー33、チェーンケース34等を備える。耕耘爪31・31・・・は左右方向に回転自在に横架した爪軸35上に適宜間隔をあけて放射状に植設され、該耕耘爪31・31・・・の先端の回転軌跡36の上方及び側方を覆うように耕耘カバー32が配置され、該耕耘カバー32の後端にはリヤカバー33の前端が回動自在に連結され、リヤカバー33の回動基部にカバー角センサ(不図示)が設けられる。前記爪軸35はチェーンケース34、ユニバーサルジョイント等を介して、前記ミッションケース7の後面より後方に突出したPTО軸49と連動連結される(図2参照)。
そして、図2に示すように、エンジン5の動力が、主変速機構41、前後進切換機構42、副変速機構43、後輪差動機構44等を順次介して、後輪4・4に伝達されるとともに、エンジン5の動力が、主変速機構41、前後進切換機構42、副変速機構43、前輪駆動切換機構45、前輪差動機構46等を順次介して、前輪3・3に伝達される。これにより、前輪3・3や後輪4・4が回転駆動されて、トラクタ1の走行が行われる。また、エンジン5の動力が、PTOクラッチ機構47、PTO変速機構48、PTO軸49等を順次介して、ロータリ耕耘装置30の爪軸35に伝達される。これにより、爪軸35とともに耕耘爪31・31・・・が回転駆動されて、耕耘作業が行なわれる。
次に、トラクタ1の制御に関する構成を説明する。
制御装置100はトラクタ1の任意の位置に具備される。制御装置100は、中央処理装置、記憶装置等により構成される。制御装置100には、図3に示すように、車速検出手段61と、前後進切換レバー62と、変速比設定手段63と、変速比検出手段64と、耕深設定手段65と、耕深検出手段66と、PTOスイッチ67と、PTOレバー68と、PTO切換ダイヤル69と、エンジン回転数設定手段70と、エンジン回転数検出手段71と、昇降位置設定手段72と、昇降位置検出手段73と、出力検出手段74が、接続される。また、制御装置100には、変速アクチュエータ81と、昇降アクチュエータ82が、接続される。
車速検出手段61は、トラクタ1の実際の走行速度(車速)を検出するものである。車速検出手段61は、本実施形態においては、後輪4における車軸の回転数を検出する構成とされる。車速検出手段61は、磁気ピックアップコイルやロータリエンコーダ等で構成され、車速検出手段61で検出された検出値は、走行速度として、制御装置100に送信される。
前後進切換レバー62は、トラクタ1の進行方向を設定するものである。前後進切換レバー62は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサで検出された操作位置は、制御装置100に送信される。制御装置100は、操作位置に基づいて電磁弁に信号を送信して油圧アクチュエータを駆動させ、前記前後進切換機構42の前進クラッチ42a及び後進クラッチ42b(図2参照)を「入」又は「切」に作動させる。詳細には、前後進切換レバー62を「前進」位置に操作した場合は前後進切換機構42の前進クラッチ42aを「入」に作動させ、「後進」位置に操作した場合は後進クラッチ42bを「入」に作動させ、「中立」位置に操作した場合は前進クラッチ42a及び後進クラッチ42bを「切」に作動させる。
変速比設定手段63は、主変速機構41における無段変速機41aの変速比を設定するものである。変速比設定手段63は、例えば、主変速レバーや速度調節ダイヤルで構成される。変速比設定手段63は、操作量を検出するセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、目標変速比として、制御装置100に送信される。
変速比検出手段64は、主変速機構41における無段変速機41aの変速比を検出するものである。変速比検出手段64は、例えば、無段変速機の油圧ポンプ又は油圧モータの斜板角度を検出するセンサとされ、このセンサで検出した信号は、実際の無段変速機41aの変速比(実変速比)として、制御装置100に送信される。
耕深設定手段65は、ロータリ耕耘装置30における耕耘爪31の耕深深さを任意の耕深深さに設定するものである。耕深設定手段65は、例えば、回動操作が可能な耕深設定ダイヤルとされる。耕深設定手段65は、操作量を検出するセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、目標耕深深さとして、制御装置100に送信される。
耕深検出手段66は、ロータリ耕耘装置30の耕深深さを検出するものである。耕深検出手段66は、例えば、耕耘カバー32に対するリヤカバー33の回動角度(リヤカバー33の開度)を検出する不図示のカバー角センサとされ、このカバー角センサの検出値は、耕深深さとして、制御装置100に送信される。
PTOスイッチ67は、PTO軸49への動力の伝達及び遮断の設定を行うものである。PTOスイッチ67は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサで検出された操作位置は、制御装置100に送信される。制御装置100は、PTOスイッチ67及び後述するPTO切換ダイヤル69の操作位置に基づいて電磁弁に信号を送信して油圧アクチュエータを作動させ、PTOクラッチ機構47のPTOクラッチ47a及びこのPTOクラッチ47aと背反的に作動するPTOブレーキ47bを「入」又は「切」に作動させる。
PTOレバー68は、PTO軸49の回転数や回転方向を変更するものである。PTOレバー68は、PTO変速機構48における変速ギヤの噛合を選択的に変更するシフタと連結される。本実施形態においては、PTOレバー68は、「正転」、「中立」、「逆転」位置に操作可能とされ、この操作に基づいてPTO変速機構48のシフタが摺動して、PTO軸49の回転数や回転方向が変更される。PTOレバー68は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサで検出された操作位置は、制御装置100に送信される。
PTO切換ダイヤル69は、PTOクラッチ機構47の作動モードを切り換えるものである。PTO切換ダイヤル69は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサが制御装置100と接続される。PTO切換ダイヤル69は、「連動」、「独立」、又は「昇降連動」位置に切り換え操作可能とされる。「連動」位置に操作されると、エンジン5から後輪4までの走行系伝動経路の動力が遮断されたときは、制御装置100は、前記PTOスイッチ67の操作にかかわらずPTOクラッチ機構47が動力を遮断するように作動する。「独立」位置に操作されると、制御装置100は、前記走行系動力伝達経路の動力伝達状態にかかわらず、PTOスイッチ67の操作によってPTOクラッチ機構47の動力伝達状態が切り換わる。「昇降連動」位置に操作されると、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30が非作業位置等の所定の上昇位置とされる場合に、前記PTOスイッチ67の操作にかかわらずPTOクラッチ機構47が動力を遮断するように作動する。
エンジン回転数設定手段70は、エンジン5の回転数を設定するものである。エンジン回転数設定手段70は、例えば、アクセルレバーで構成される。エンジン回転数設定手段70は、操作量を検出するポテンショメータ等のセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、目標エンジン回転数Nsとして、制御装置100に送信される。
エンジン回転数検出手段71は、エンジン5の回転数を検出するものである。エンジン回転数検出手段71は、例えば、エンジン5のフライホイールやクランク軸の回転数を検出する構成とされる。エンジン回転数検出手段71は、磁気ピックアップコイルやロータリエンコーダ等で構成され、エンジン回転数検出手段71で検出した信号は、エンジン回転数Nrとして、制御装置100に送信される。制御装置100は、エンジン回転数Nrが、目標エンジン回転数Nsと一致するように不図示の燃料噴射装置を駆動制御する。なお、本実施形態において、当該燃料噴射装置は、エンジン5の出力を検出するための出力検出手段74を兼ねている。
昇降位置設定手段72は、トラクタ1の車両本体に対するロータリ耕耘装置30の高さを設定するものである。昇降位置設定手段72は、例えば、作業機を任意の高さに昇降させる作業機昇降レバーや、予め設定した所定の位置(上昇位置や下降位置)に昇降させる作業機上昇スイッチ及び作業機下降スイッチとされる。これら作業機昇降レバーや作業機上昇スイッチ及び作業機下降スイッチは、操作量を検出するセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、目標昇降位置(後述するリフトアーム24・24の目標回動角度αs)として、制御装置100に送信される。
昇降位置検出手段73は、トラクタ1の車両本体に対するロータリ耕耘装置30の高さを検出するものである。昇降位置検出手段73は、例えば、リフトアーム24・24の回動基部に設置され、当該リフトアーム24・24の回動角度αrを検出するリフト角センサとされ、このリフト角センサで検出した検出値(回動角度αr)は、制御装置100に送信される。なお、本実施形態においては、回動角度αrが大きくなるほど、ロータリ耕耘装置30の高さが高くなるものとする。
出力検出手段74は、エンジン5の出力を検出するものである。出力検出手段74は、例えば、前記燃料噴射装置とされ、この燃料噴射装置の燃料噴射パターンに関する信号が、制御装置100に送信される。制御装置100は、当該信号に基づいて、エンジン5の出力を算出することが可能である。なお、出力検出手段74は当該燃料噴射装置に限るものではなく、エンジン5の出力を検出することができるものであればよい。
変速アクチュエータ81は、主変速機構41における無段変速機41aの変速比、すなわち、斜板角度を変更するものである。変速アクチュエータ81は、電磁比例弁、シリンダ、モータ等で構成される。変速アクチュエータ81は、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動して、無段変速機41aの斜板角度を変更して、主変速機構41の変速比を変更している。制御装置100は、変速比検出手段64で検出された実変速比が、変速比設定手段63で設定された目標変速比と一致するように、変速アクチュエータ81を駆動制御して、無段変速機41aの変速比を変更している。
昇降アクチュエータ82は、車両本体に対してロータリ耕耘装置30を昇降させるものである。昇降アクチュエータ82は、前記リフトアーム24・24を回動させる油圧シリンダや、この油圧シリンダへの圧油の送油量や方向を切り換える電磁弁等で構成される。昇降アクチュエータ82は、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動して、ロータリ耕耘装置30の高さを変更している。詳細には、制御装置100は、昇降位置検出手段73で検出されたリフトアーム24・24の回動角度αrが、昇降位置設定手段72で設定された設定値(目標回動角度αs)と一致するように昇降アクチュエータ82を駆動制御して、ロータリ耕耘装置30を昇降させる。または、制御装置100は、耕深検出手段66で検出された検出値(耕深深さ)が、耕深設定手段65で設定された設定値(目標耕深深さ)と一致するように昇降アクチュエータ82を駆動制御して、ロータリ耕耘装置30を昇降させる(耕深制御)。
以下では、図4から図6までを用いて、本発明の第一実施形態に係るトラクタ1の制御態様について詳細に説明する。
まず、制御装置100による、エンジン5の出力、負荷率L、及び正味平均有効圧力Pmの算出について説明する。
制御装置100は、エンジン5の出力(PS)を常時算出する。具体的には、制御装置100には、前記燃料噴射装置の燃料噴射パターン(例えば、燃料噴射量、燃料の噴射回数、燃料の噴射タイミング等)とエンジン5の出力との関係を示すマップが予め記憶される。制御装置100は、前記燃料噴射装置の燃料噴射パターン、及び前記マップに基づいて、エンジン5の出力を算出する。
制御装置100は、エンジン5の負荷率Lを常時算出する。ここで、本実施形態に係る負荷率Lとは、エンジン5がある回転数で駆動した場合における、最大出力に対する実際の出力の割合(%)をいう。具体的には、制御装置100には、エンジン回転数Nrごとに、出力と負荷率Lとの関係を示すマップが予め記憶される。制御装置100は、エンジン回転数検出手段71により検出されるエンジン回転数Nr、算出したエンジン5の出力、及び前記マップに基づいて、エンジン5の負荷率Lを算出する。
制御装置100は、エンジン5の正味平均有効圧力Pmを常時算出する。ここで、正味平均有効圧力Pmとは、エンジン5の1サイクル中におけるシリンダ内の圧力の平均値(MPa)を言う。具体的には、制御装置100には、出力と正味平均有効圧力Pmとの関係を示すマップが予め記憶される。制御装置100は、算出したエンジン5の出力、及び前記マップに基づいて、エンジン5の正味平均有効圧力Pmを算出する。
次に、図4を用いて、エンジン5の特性について説明する。
図4は、エンジン5のエンジン回転数Nrと正味平均有効圧力Pmとの関係を示したものである。なお、図4に示す数値は例示であり、本発明に係るエンジンの特性はこれに限るものではない。
図4中の太い実線Xは、エンジン5の標準出力曲線を示している。標準出力曲線Xとは、エンジン回転数Nrごとの、エンジン5の出力が最大となる場合の正味平均有効圧力Pmを結んだものである。
図4中の細い実線Yは、エンジン5の等燃費曲線を示している。等燃費曲線Yとは、エンジン5の出力あたりの燃料消費量(以下、単に「燃料消費量」と記す)(g/kWh)を各エンジン回転数Nr、及び各正味平均有効圧力Pmごとに計測し、同じ燃料消費量の点を結んだものである。図4中の等燃費曲線Yのうち、一番内側に位置する等燃費曲線Y1内の領域が最も燃料消費量が小さく(燃費が良く)、外側の等燃費曲線Yに向かって燃料消費量が大きく(燃費が悪く)なる。
図4中の太い破線Zは、低燃費領域を示している。低燃費領域Zとは、予め任意に設定される領域であり、エンジン5の燃料消費量が比較的小さい(燃費が良い)領域に設定される。図4において、標準出力曲線X上においてエンジン回転数Nrが2100(rpm)である点をP1、エンジン回転数Nrが2100(rpm)であって負荷率Lが45%である点をP2、標準出力曲線X上においてエンジン回転数Nrが1500(rpm)である点をP3、エンジン回転数Nrが1500(rpm)であって負荷率Lが45%である点をP4とする。本実施形態においては、直線P1−P2、直線P2−P4、直線P4−P3、及び標準出力曲線X上のP3からP1まで、により囲まれる領域が低燃費領域Zに設定される。なお、本発明に係る低燃費領域は、本実施形態に係る低燃費領域Zに限るものではなく、任意に設定することができる。
以下では、図4から図6までを用いて、第一実施形態に係るロータリ耕耘装置30の昇降制御の態様について説明する。
図5のステップS101において、制御装置100は、エンジン5の状態(具体的には、エンジン回転数Nr及び正味平均有効圧力Pm)が低燃費領域Z内にあるか否かを判定する。制御装置100は、エンジン5の状態が低燃費領域Z内にあると判定した場合、ステップS102に移行する。制御装置100は、エンジン5の状態が低燃費領域Z内にないと判定した場合、後述する経過時間tjをリセットして元に戻る。
ステップS102において、制御装置100は、負荷率Lが上昇用設定負荷率Du以上であるか否かを判定する。ここで、本実施形態に係る上昇用設定負荷率Duは、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。上昇用設定負荷率Duは、例えば100(%)等の、エンジン5に比較的大きい負荷が加わっていると判断できる値に設定される。なお、上昇用設定負荷率Duは、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。制御装置100は、負荷率Lが上昇用設定負荷率Du以上であると判定した場合、ステップS103に移行する。制御装置100は、負荷率Lが上昇用設定負荷率Du以上でない、すなわち上昇用設定負荷率Du未満であると判定した場合、ステップS106に移行する。
ステップS103において、制御装置100は、経過時間tj(秒)をカウントする。制御装置100は、上記処理を行った後、ステップS104に移行する。
ステップS104において、制御装置100は、経過時間tjが上昇用設定時間tu以上であるか否かを判定する。ここで、本実施形態に係る上昇用設定時間tuは、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。上昇用設定時間tuは、例えば5(秒)等の、エンジン5に比較的大きい負荷が加わり続けていると判断できる値に設定される。なお、上昇用設定時間tuは、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。制御装置100は、経過時間tjが上昇用設定時間tu以上であると判定した場合、ステップS105に移行する。制御装置100は、経過時間tjが上昇用設定時間tu以上でない、すなわち上昇用設定時間tu未満であると判定した場合、ステップS101に移行する。
ステップS105において、制御装置100は、昇降アクチュエータ82を駆動することにより、ロータリ耕耘装置30が上昇する方向(回動角度αrが増加する方向)にリフトアーム24・24を設定角度αc(度)だけ回動させる。ここで、本実施形態に係る設定角度αcは、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。設定角度αcは、例えば5(度)等の、エンジン5に加わる負荷を低減できる程度の値に設定される。なお、設定角度αcは、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。
図6のステップS106において、制御装置100は、負荷率Lが下降用設定負荷率Dd未満であるか否かを判定する。ここで、本実施形態に係る下降用設定負荷率Ddは、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。下降用設定負荷率Ddは、例えば50(%)等の、エンジン5に加わる負荷が比較的小さいと判断できる値に設定される。なお、下降用設定負荷率Ddは、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。制御装置100は、負荷率Lが下降用設定負荷率Dd未満であると判定した場合、ステップS107に移行する。制御装置100は、負荷率Lが下降用設定負荷率Dd未満でない、すなわち下降用設定負荷率Dd以上であると判定した場合、経過時間tj及び後述する経過時間tkをリセットして元に戻る。
ステップS107において、制御装置100は、リフトアーム24・24の回動角度αrが目標回動角度αsよりも大きいか否かを判定する。制御装置100は、回動角度αrが目標回動角度αsよりも大きいと判定した場合、ステップS108に移行する。制御装置100は、回動角度αrが目標回動角度αsよりも大きくない、すなわち目標回動角度αs以下であると判定した場合、経過時間tj及び後述する経過時間tkをリセットして元に戻る。
ステップS108において、制御装置100は、経過時間tk(秒)をカウントする。制御装置100は、上記処理を行った後、ステップS109に移行する。
ステップS109において、制御装置100は、経過時間tkが下降用設定時間td以上であるか否かを判定する。ここで、本実施形態に係る下降用設定時間tdは、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。下降用設定時間tdは、例えば5(秒)等の、エンジン5に大きな負荷が加わっていない状態が継続していると判断できる値に設定される。なお、下降用設定時間tdは、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。制御装置100は、経過時間tkが下降用設定時間td以上であると判定した場合、ステップS110に移行する。制御装置100は、経過時間tkが下降用設定時間td以上でない、すなわち下降用設定時間td未満であると判定した場合、ステップS106に移行する。
ステップS110において、制御装置100は、昇降アクチュエータ82を駆動することにより、ロータリ耕耘装置30が下降する方向(回動角度αrが減少する方向)にリフトアーム24・24を設定角度αcだけ回動させる。
以下では、第一実施形態に係るロータリ耕耘装置30の昇降制御について具体的に説明する。
例えば、トラクタ1が図4中の点P5の状態で耕耘作業を行っているものとする。当該耕耘作業中にエンジン5に加わる負荷が増加した場合、当該エンジン5の状態は、点P5から矢印M1及び矢印M2(標準出力曲線X)に沿って遷移し、エンジン回転数Nrが減少する。
エンジン5の状態が低燃費領域Z内に遷移し(ステップS101)、負荷率Lが上昇用設定負荷率Du以上である状態が上昇用設定時間tu以上続いた場合(ステップS101からステップS104まで)、制御装置100は、エンジン回転数Nrが減少してエンジン5がストールするのを防止するために、ロータリ耕耘装置30を上昇させる(ステップS105)。
ロータリ耕耘装置30を上昇させると、耕耘爪31の耕深深さを浅くして、エンジン5に加わる負荷を低減させることができる。これによって、エンジン5のエンジン回転数Nrの減少を抑制し、エンジン5の状態を低燃費領域Zの近辺に維持することができる。このようにして、エンジン5のストールを防止するとともに、エンジン5の状態を低燃費領域Zの近辺に維持した状態で、すなわち燃費の良い状態で作業を継続して行うことができる。
また、負荷率Lが下降用設定負荷率Dd未満である状態が下降用設定時間td以上続いた場合(ステップS106からステップS109まで)、すなわち、エンジン5に加わる負荷が減少した場合、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30を下降させる(ステップS110)。
このようにロータリ耕耘装置30を下降させることで、負荷率Lが小さい場合(エンジン5に加わる負荷が減少した場合)はリフトアーム24・24の回動角度αrを可能な限り目標回動角度αsに近い値に制御することができる。また、回動角度αrが目標回動角度αsよりも大きい場合(ステップS107)にのみロータリ耕耘装置30を下降させることで、回動角度αrが目標回動角度αsよりも小さくなること、すなわちロータリ耕耘装置30が目標昇降位置よりも低い位置まで下降することを防止している。
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1は、エンジン5と、ロータリ耕耘装置30と、ロータリ耕耘装置30を昇降する昇降アクチュエータ82と、昇降アクチュエータ82を駆動制御する制御装置100と、を備えるトラクタ1であって、エンジン5の出力を検出するための出力検出手段74(燃料噴射装置)を備え、制御装置100は、エンジン5のエンジン回転数Nrとエンジン5の正味平均有効圧力Pmとの関係を示すマップにおいて予め設定される低燃費領域Zを記憶し、前記出力検出手段により検出されるエンジン5の出力に基づいてエンジン5の負荷率Lを算出し、エンジン回転数Nr及び正味平均有効圧力Pmが低燃費領域Zに含まれ、かつ負荷率Lが上昇用設定負荷率Du(設定負荷率)以上である状態が上昇用設定時間tu(設定時間)以上継続した場合、ロータリ耕耘装置30を設定角度αc(設定上昇量)だけ上昇させるものである。このように構成することにより、エンジン5に負荷が加わった場合、エンジン回転数Nrが低燃費領域Zに達した状態で当該エンジン回転数Nrを維持するため、エンジン5のストールを防止するとともに、燃費の良い状態で作業を継続して行うことができる。
なお、本実施形態において、制御装置100がロータリ耕耘装置30の上昇制御を行っている場合(図5のステップS107から図6のステップS111まで)には、運転操作部10に配置されるメータパネルのランプ等に、その旨(ロータリ耕耘装置30の上昇制御を行い、低燃費領域Zで作業を行っている旨)を表示する構成とすることも可能である。
以下では、図7から図11までを用いて、本発明の第二実施形態について説明する。
図7に示す第二実施形態に係るエンジン5の特性が第一実施形態に係るエンジン5の特性(図4参照)と異なる点は、低燃費領域Zが、さらに第一低燃費領域Z1と第二低燃費領域Z2に分けられる点である。
第一低燃費領域Z1は、低燃費領域Zのうち、エンジン回転数Nrが、標準出力曲線Xが最大となるときの境界エンジン回転数Nb(本実施形態においては、約2000(rpm))よりも大きい領域である。
第二低燃費領域Z2は、低燃費領域Zのうち、エンジン回転数Nrが、境界エンジン回転数Nbよりも小さい領域である。
以下では、第二実施形態に係るロータリ耕耘装置30の昇降制御について具体的に説明する。なお、第二実施形態に係る昇降制御の各ステップにおける処理は、第一実施形態に係る昇降制御の各ステップにおける処理と類似するものがあるため、各ステップの詳細な説明は省略し、説明が必要な事項についてのみ詳細に説明する。
例えば、トラクタ1が図7中の点P5の状態で耕耘作業を行っているものとする。当該耕耘作業中にエンジン5に加わる負荷が増加した場合、当該エンジン5の状態は、点P5から矢印M1及び矢印M2(標準出力曲線X)に沿って遷移し、エンジン回転数Nrが減少する。
エンジン5の状態が第一低燃費領域Z1内に遷移し(図8のステップS201)、負荷率Lが第一上昇用設定負荷率Du1以上である状態が第一上昇用設定時間tu1以上続いた場合(ステップS201からステップS204まで)、制御装置100は、エンジン回転数Nrが減少してエンジン5がストールするのを防止するために、ロータリ耕耘装置30が上昇する方向にリフトアーム24・24を第一設定角度α1だけ回動させる。これによって、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30を上昇させる(ステップS205)。
ここで、本実施形態に係る第一上昇用設定負荷率Du1は、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。第一上昇用設定負荷率Du1は、例えば100(%)等の、エンジン5に比較的大きい負荷が加わっていると判断できる値に設定される。なお、第一上昇用設定負荷率Du1は、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。
また、本実施形態に係る第一上昇用設定時間tu1は、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。第一上昇用設定時間tu1は、例えば5(秒)等の、エンジン5に比較的大きい負荷が加わり続けていると判断できる値に設定される。なお、第一上昇用設定時間tu1は、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。
また、本実施形態に係る第一設定角度α1は、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。第一設定角度α1は、例えば5(度)等の、エンジン5に加わる負荷を低減できる程度の値に設定される。なお、第一設定角度α1は、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。
ステップS205においてロータリ耕耘装置30を上昇させると、耕耘爪31の耕深深さを浅くして、エンジン5に加わる負荷を低減させることができる。これによって、エンジン5のエンジン回転数Nrの減少を抑制し、エンジン5の状態を第一低燃費領域Z1の近辺に維持することができる。このようにして、エンジン5のストールを防止するとともに、エンジン5の状態を第一低燃費領域Z1の近辺に維持した状態で、すなわち燃費の良い状態で作業を継続して行うことができる。
また、負荷率Lが第一下降用設定負荷率Dd1未満である状態が第一下降用設定時間td1以上続いた場合(図9のステップS206からステップS209まで)、すなわち、エンジン5に加わる負荷が減少した場合、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30が下降する方向にリフトアーム24・24を第一設定角度α1だけ回動させる。これによって、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30を下降させる(ステップS210)。
ここで、本実施形態に係る第一下降用設定負荷率Dd1は、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。第一下降用設定負荷率Dd1は、例えば50(%)等の、エンジン5に加わる負荷が比較的小さいと判断できる値に設定される。なお、第一下降用設定負荷率Dd1は、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。
また、本実施形態に係る第一下降用設定時間td1は、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。第一下降用設定時間td1は、例えば5(秒)等の、エンジン5に大きな負荷が加わっていない状態が継続していると判断できる値に設定される。なお、第一下降用設定時間td1は、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。
ステップS210においてロータリ耕耘装置30を下降させることで、負荷率Lが小さい場合(エンジン5に加わる負荷が減少した場合)はリフトアーム24・24の回動角度αrを可能な限り目標回動角度αsに近い値に制御することができる。また、回動角度αrが目標回動角度αsよりも大きい場合(ステップS207)にのみロータリ耕耘装置30を下降させることで、回動角度αrが目標回動角度αsよりも小さくなること、すなわちロータリ耕耘装置30が目標昇降位置よりも低い位置まで下降することを防止している。
一方、エンジン5に加わる負荷がさらに増加して当該エンジン5の状態が第一低燃費領域Z1を通過して第二低燃費領域Z2内に遷移し(図10のステップS221)、負荷率Lが第二上昇用設定負荷率Du2以上である状態が第二上昇用設定時間tu2以上続いた場合(ステップS221からステップS224まで)、制御装置100は、エンジン回転数Nrが減少してエンジン5がストールするのを防止するために、ロータリ耕耘装置30が上昇する方向にリフトアーム24・24を第二設定角度α2だけ回動させる。これによって、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30を上昇させる(ステップS225)。
ここで、本実施形態に係る第二上昇用設定負荷率Du2は、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。第二上昇用設定負荷率Du2は、第一上昇用設定負荷率Du1より小さい値に設定される。第二上昇用設定負荷率Du2は、例えば70(%)等の、エンジン5に比較的大きい負荷が加わっていると判断できる値に設定される。なお、第二上昇用設定負荷率Du2は、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。
また、本実施形態に係る第二上昇用設定時間tu2は、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。第二上昇用設定時間tu2は、第一上昇用設定時間tu1より小さい値に設定される。第二上昇用設定時間tu2は、例えば2.5(秒)等の、エンジン5に比較的大きい負荷が加わり続けていると判断できる値に設定される。なお、第二上昇用設定時間tu2は、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。
また、本実施形態に係る第二設定角度α2は、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。第二設定角度α2は、第一設定角度α1より大きい値に設定される。第二設定角度α2は、例えば10(度)等の、エンジン5に加わる負荷を低減できる程度の値に設定される。なお、第二設定角度α2は、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。
ステップS225においてロータリ耕耘装置30を上昇させると、耕耘爪31の耕深深さを浅くして、エンジン5に加わる負荷を低減させることができる。これによって、エンジン5のエンジン回転数Nrの減少を抑制し、エンジン5の状態を第二低燃費領域Z2の近辺に維持することができる。このようにして、エンジン5のストールを防止するとともに、エンジン5の状態を第二低燃費領域Z2の近辺に維持した状態で、すなわち燃費の良い状態で作業を継続して行うことができる。
また、負荷率Lが第二下降用設定負荷率Dd2未満である状態が第二下降用設定時間td2以上続いた場合(図11のステップS226からステップS229まで)、すなわち、エンジン5に加わる負荷が減少した場合、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30が下降する方向にリフトアーム24・24を第二設定角度α2だけ回動させる。これによって、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30を下降させる(ステップS230)。
ここで、本実施形態に係る第二下降用設定負荷率Dd2は、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。第二下降用設定負荷率Dd2は、第一下降用設定負荷率Dd1より小さい値に設定される。第二下降用設定負荷率Dd2は、例えば40(%)等の、エンジン5に加わる負荷が比較的小さいと判断できる値に設定される。なお、第二下降用設定負荷率Dd2は、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。
また、本実施形態に係る第二下降用設定時間td2は、予め設定され、制御装置100に記憶される値である。第二下降用設定時間td2は、第一下降用設定時間td1より大きい値に設定される。第二下降用設定時間td2は、例えば10(秒)等の、エンジン5に大きな負荷が加わっていない状態が継続していると判断できる値に設定される。なお、第二下降用設定時間td2は、不図示の操作手段により変更可能な構成とすることも可能である。
ステップS230においてロータリ耕耘装置30を下降させることで、負荷率Lが小さい場合(エンジン5に加わる負荷が減少した場合)はリフトアーム24・24の回動角度αrを可能な限り目標回動角度αsに近い値に制御することができる。また、回動角度αrが目標回動角度αsよりも大きい場合(ステップS227)にのみロータリ耕耘装置30を下降させることで、回動角度αrが目標回動角度αsよりも小さくなること、すなわちロータリ耕耘装置30が目標昇降位置よりも低い位置まで下降することを防止している。
以下では、上述の如く、第一低燃費領域Z1における第一上昇用設定負荷率Du1、第一上昇用設定時間tu1、第一設定角度α1、第一下降用設定負荷率Dd1、及び第一下降用設定時間td1と、第二低燃費領域Z2における第二上昇用設定負荷率Du2、第二上昇用設定時間tu2、第二設定角度α2、第二下降用設定負荷率Dd2、及び第二下降用設定時間td2と、の値に差異(大小)を設けた理由について説明する。
図7に示すように、本実施形態において説明した第二低燃費領域Z2は、第一低燃費領域Z1よりもエンジン5のストールが発生し易い領域である。詳細には、エンジン5の状態が第一低燃費領域Z1内にあるときに、エンジン5に加わる負荷が増加し、エンジン回転数Nrが減少した場合、正味平均有効圧力Pmは標準出力曲線Xに沿って増加する。エンジン5のトルクは正味平均有効圧力Pmと比例関係にあるため、エンジン回転数Nrが減少すると当該エンジン5のトルクは増加する。したがって、第一低燃費領域Z1ではエンジン5に加わる負荷が増加してもトルクが増加するため、エンジン5はストールを発生し難い。これに対し、エンジン5の状態が第二低燃費領域Z2内にあるときに、エンジン5に加わる負荷が増加し、エンジン回転数Nrが減少した場合、正味平均有効圧力Pmは標準出力曲線Xに沿って減少し、これに伴ってエンジン5のトルクも減少する。したがって、第二低燃費領域Z2ではエンジン5に加わる負荷が増加するとトルクが減少するため、エンジン5はストールを発生し易い。
上記の如く、エンジン5の状態が第二低燃費領域Z2内にあるときは、第一低燃費領域Z1内にあるときよりもエンジン5のストールが発生し易いことに鑑みて、本実施形態においては、第一上昇用設定負荷率Du1と第二上昇用設定負荷率Du2等の値に差異(大小)を設けている。
すなわち、第二上昇用設定負荷率Du2の値を第一上昇用設定負荷率Du1の値よりも小さい値に設定することにより、第二低燃費領域Z2においてロータリ耕耘装置30を上昇させる際の負荷率Lを、第一低燃費領域Z1においてロータリ耕耘装置30を上昇させる際の負荷率Lよりも小さい値にすることができる。これによって、第二低燃費領域Z2ではエンジン5に大きな負荷が加わる前にロータリ耕耘装置30を上昇させることができ、エンジン5のストールの発生を効果的に抑制することができる。
また、第二上昇用設定時間tu2の値を第一上昇用設定時間tu1の値よりも小さい値に設定することにより、第二低燃費領域Z2では第一低燃費領域Z1よりも比較的早い段階でロータリ耕耘装置30を上昇させることができ、エンジン5のストールの発生を効果的に抑制することができる。
また、第二設定角度α2の値を第一設定角度α1の値よりも大きい値に設定することにより、第二低燃費領域Z2では第一低燃費領域Z1よりも大きくロータリ耕耘装置30を上昇させることができる。これによって、第二低燃費領域Z2では第一低燃費領域Z1よりも大幅にエンジン5に加わる負荷を低減させることができ、エンジン5のストールの発生を効果的に抑制することができる。
また、第二下降用設定負荷率Dd2の値を第一下降用設定負荷率Dd1の値よりも小さい値に設定することにより、第二低燃費領域Z2においてロータリ耕耘装置30を下降させる際の負荷率Lを、第一低燃費領域Z1においてロータリ耕耘装置30を下降させる際の負荷率Lよりも小さい値にすることができる。これによって、第二低燃費領域Z2では、ロータリ耕耘装置30を下降させた際にエンジン5に加わる負荷を、第一低燃費領域Z1に比べて小さく抑えることができ、エンジン5のストールの発生を効果的に抑制することができる。
また、第二下降用設定時間td2の値を第一下降用設定時間td1の値よりも大きい値に設定することにより、第二低燃費領域Z2では、エンジン5に加わる負荷が減少したか否かの判断を、第一低燃費領域Z1よりも長い時間をかけて行うことになる。これによって、第二低燃費領域Z2では、第一低燃費領域Z1よりも確実にエンジン5に加わる負荷が減少したか否かを判断することができ、エンジン5のストールの発生を効果的に抑制することができる。
以上の如く、本実施形態の低燃費領域Zは、各エンジン回転数Nrにおける最大出力時の正味平均有効圧力Pmを結んだ標準出力曲線Xが最大となるときの境界エンジン回転数Nbを境に、当該境界エンジン回転数Nbよりもエンジン回転数Nrが大きい第一低燃費領域Z1と、当該境界エンジン回転数Nbよりもエンジン回転数Nrが小さい第二低燃費領域Z2と、に分けられ、制御装置100は、第二低燃費領域Z2における第二上昇用設定負荷率Du2(設定負荷率)を、第一低燃費領域Z1における第一上昇用設定負荷率Du1(設定負荷率)よりも小さい値に設定するものである。このように構成することにより、第二低燃費領域Z2におけるロータリ耕耘装置30の上昇制御を、第一低燃費領域Z1に比べて低い負荷率Lで行うことができる。これによって、第一低燃費領域Z1に比べてエンジン5のストールが発生し易い第二低燃費領域Z2におけるエンジン5のストールの発生を抑制することができる。
また、本実施形態の制御装置100は、第二低燃費領域Z2における第二設定角度α2(設定上昇量)を、第一低燃費領域Z1における第一設定角度α1(設定上昇量)よりも大きい値に設定するものである。このように構成することにより、第二低燃費領域Z2におけるロータリ耕耘装置30の上昇量を、第一低燃費領域Z1に比べて大きくすることができる。これによって、第一低燃費領域Z1に比べてエンジン5のストールが発生し易い第二低燃費領域Z2におけるエンジン5のストールの発生を抑制することができる。
また、本実施形態の制御装置100は、第二低燃費領域Z2における第二上昇用設定負荷率Du2(設定負荷率)を、第一低燃費領域Z1における第一上昇用設定負荷率Du1(設定負荷率)よりも小さい値に設定し、第二低燃費領域Z2における第二設定角度α2(設定上昇量)を、第一低燃費領域Z1における第一設定角度α1(設定上昇量)よりも大きい値に設定するものである。このように構成することにより、第二低燃費領域Z2におけるロータリ耕耘装置30の上昇制御を、第一低燃費領域Z1に比べて低い負荷率Lで行うことができる。また、第二低燃費領域Z2におけるロータリ耕耘装置30の上昇量を、第一低燃費領域Z1に比べて大きくすることができる。これによって、第一低燃費領域Z1に比べてエンジン5のストールが発生し易い第二低燃費領域Z2におけるエンジン5のストールの発生を抑制することができる。
また、本実施形態の制御装置100は、第二低燃費領域Z2における第二上昇用設定時間tu2(設定時間)を、第一低燃費領域Z1における第一上昇用設定時間tu1(設定時間)よりも小さい値に設定するものである。このように構成することにより、第二低燃費領域Z2におけるロータリ耕耘装置30の上昇制御を、第一低燃費領域Z1に比べて早い時点で行うことができる。これによって、第一低燃費領域Z1に比べてエンジン5のストールが発生し易い第二低燃費領域Z2におけるエンジン5のストールの発生を抑制することができる。
なお、本実施形態において、制御装置100がロータリ耕耘装置30の上昇制御を行っている場合(図8のステップS205から図9のステップS209まで、及び図10のステップS225から図11のステップS229まで)には、運転操作部10に配置されるメータパネルのランプ等に、その旨(ロータリ耕耘装置30の上昇制御を行い、低燃費領域Zで作業を行っている旨)を表示する構成とすることも可能である。
以下では、図12から図16までを用いて、トラクタ1の他の制御態様について説明する。本制御態様においては、目標エンジン回転数Nsが境界エンジン回転数Nb(図12参照)以上である場合と未満である場合に分けて、ロータリ耕耘装置30の昇降制御を行う。
目標エンジン回転数Nsが境界エンジン回転数Nb以上である場合において、負荷率Lが第一上昇用設定負荷率Du1以上である状態が第一上昇用設定時間tu1以上続いた場合(図13のステップS301からステップS304まで)、制御装置100は、エンジン回転数Nrが減少してエンジン5がストールするのを防止するために、ロータリ耕耘装置30が上昇する方向にリフトアーム24・24を第一設定角度α1だけ回動させる。これによって、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30を上昇させる(ステップS305)。
ここで、第一上昇用設定負荷率Du1は、例えば100(%)等の、エンジン5に比較的大きい負荷が加わっていると判断できる値に設定される。また、第一上昇用設定時間tu1は、例えば5(秒)等の、エンジン5に比較的大きい負荷が加わり続けていると判断できる値に設定される。また、第一設定角度α1は、例えば5(度)等の、エンジン5に加わる負荷を低減できる程度の値に設定される。
ステップS305においてロータリ耕耘装置30を上昇させると、耕耘爪31の耕深深さを浅くして、エンジン5に加わる負荷を低減させることができる。これによって、エンジン5のエンジン回転数Nrの減少を抑制し、当該エンジン回転数Nrを目標エンジン回転数Nsの近辺に維持することができる。このようにして、エンジン5のストールを防止することができる。
また、負荷率Lが第一下降用設定負荷率Dd1未満である状態が第一下降用設定時間td1以上続いた場合(図14のステップS306からステップS310まで)、すなわち、エンジン5に加わる負荷が減少した場合、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30が下降する方向にリフトアーム24・24を第一設定角度α1だけ回動させる。これによって、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30を下降させる(ステップS311)。
ここで、第一下降用設定負荷率Dd1は、例えば50(%)等の、エンジン5に加わる負荷が比較的小さいと判断できる値に設定される。また、第一下降用設定時間td1は、例えば5(秒)等の、エンジン5に大きな負荷が加わっていない状態が継続していると判断できる値に設定される。
ステップS310においてロータリ耕耘装置30を下降させることで、負荷率Lが小さい場合(エンジン5に加わる負荷が減少した場合)はリフトアーム24・24の回動角度αrを可能な限り目標回動角度αsに近い値に制御することができる。また、回動角度αrが目標回動角度αsよりも大きい場合(ステップS307)にのみロータリ耕耘装置30を下降させることで、回動角度αrが目標回動角度αsよりも小さくなること、すなわちロータリ耕耘装置30が目標昇降位置よりも低い位置まで下降することを防止している。
一方、目標エンジン回転数Nsが境界エンジン回転数Nb未満である場合において、負荷率Lが第二上昇用設定負荷率Du2以上である状態が第二上昇用設定時間tu2以上続いた場合(図15のステップS321からステップS324まで)、制御装置100は、エンジン回転数Nrが減少してエンジン5がストールするのを防止するために、ロータリ耕耘装置30が上昇する方向にリフトアーム24・24を第二設定角度α2だけ回動させる。これによって、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30を上昇させる(ステップS325)。
ここで、第二上昇用設定負荷率Du2は、第一上昇用設定負荷率Du1より小さい値に設定される。第二上昇用設定負荷率Du2は、例えば70(%)等の、エンジン5に比較的大きい負荷が加わっていると判断できる値に設定される。また、第二上昇用設定時間tu2は、第一上昇用設定時間tu1より小さい値に設定される。第二上昇用設定時間tu2は、例えば2.5(秒)等の、エンジン5に比較的大きい負荷が加わり続けていると判断できる値に設定される。また、第二設定角度α2は、第一設定角度α1より大きい値に設定される。第二設定角度α2は、例えば10(度)等の、エンジン5に加わる負荷を低減できる程度の値に設定される。
ステップS325においてロータリ耕耘装置30を上昇させると、耕耘爪31の耕深深さを浅くして、エンジン5に加わる負荷を低減させることができる。これによって、エンジン5のエンジン回転数Nrの減少を抑制し、当該エンジン回転数Nrを目標エンジン回転数Nsの近辺に維持することができる。このようにして、エンジン5のストールを防止することができる。
また、負荷率Lが第二下降用設定負荷率Dd2未満である状態が第二下降用設定時間td2以上続いた場合(図16のステップS326からステップS329まで)、すなわち、エンジン5に加わる負荷が減少した場合、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30が下降する方向にリフトアーム24・24を第二設定角度α2だけ回動させる。これによって、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30を下降させる(ステップS330)。
ここで、第二下降用設定負荷率Dd2は、第一下降用設定負荷率Dd1より小さい値に設定される。第二下降用設定負荷率Dd2は、例えば40(%)等の、エンジン5に加わる負荷が比較的小さいと判断できる値に設定される。また、第二下降用設定時間td2は、第一下降用設定時間td1より大きい値に設定される。第二下降用設定時間td2は、例えば10(秒)等の、エンジン5に大きな負荷が加わっていない状態が継続していると判断できる値に設定される。
ステップS330においてロータリ耕耘装置30を下降させることで、負荷率Lが小さい場合(エンジン5に加わる負荷が減少した場合)はリフトアーム24・24の回動角度αrを可能な限り目標回動角度αsに近い値に制御することができる。また、回動角度αrが目標回動角度αsよりも大きい場合(ステップS327)にのみロータリ耕耘装置30を下降させることで、回動角度αrが目標回動角度αsよりも小さくなること、すなわちロータリ耕耘装置30が目標昇降位置よりも低い位置まで下降することを防止している。
以下では、上述の如く、目標エンジン回転数Nsが境界エンジン回転数Nb以上である場合における第一上昇用設定負荷率Du1、第一上昇用設定時間tu1、第一設定角度α1、第一下降用設定負荷率Dd1、及び第一下降用設定時間td1と、目標エンジン回転数Nsが境界エンジン回転数Nb未満である場合における第二上昇用設定負荷率Du2、第二上昇用設定時間tu2、第二設定角度α2、第二下降用設定負荷率Dd2、及び第二下降用設定時間td2と、の値に差異(大小)を設けた理由について説明する。
図12に示すように、エンジン回転数Nrが境界エンジン回転数Nb未満である場は、エンジン回転数Nrが境界エンジン回転数Nb以上である場合よりもエンジン5のストールが発生し易い領域である。詳細には、エンジン回転数Nrが境界エンジン回転数Nb以上であるときに、エンジン5に加わる負荷が増加し、エンジン回転数Nrが減少した場合、正味平均有効圧力Pmは標準出力曲線Xに沿って増加する。エンジン5のトルクは正味平均有効圧力Pmと比例関係にあるため、エンジン回転数Nrが減少すると当該エンジン5のトルクは増加する。したがって、エンジン回転数Nrが境界エンジン回転数Nb以上である場合においてはエンジン5に加わる負荷が増加してもトルクが増加するため、エンジン5はストールを発生し難い。これに対し、エンジン回転数Nrが境界エンジン回転数Nb未満であるときに、エンジン5に加わる負荷が増加し、エンジン回転数Nrが減少した場合、正味平均有効圧力Pmは標準出力曲線Xに沿って減少し、これに伴ってエンジン5のトルクも減少する。したがって、エンジン回転数Nrが境界エンジン回転数Nb未満である場合においてはエンジン5に加わる負荷が増加するとトルクが減少するため、エンジン5はストールを発生し易い。
上記の如く、エンジン回転数Nrが境界エンジン回転数Nb未満であるときは、エンジン回転数Nrが境界エンジン回転数Nb以上であるときよりもエンジン5のストールが発生し易いことに鑑みて、本実施形態においては、第一上昇用設定負荷率Du1と第二上昇用設定負荷率Du2等の値に差異(大小)を設けている。これによって、目標エンジン回転数Nsが、エンジン5のストールが発生し易い境界エンジン回転数Nb未満である場合においても、エンジン5のストールの発生を効果的に抑制することができる。