JP3563117B2 - 対地作業装置の対負荷制御構造 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、主として農業用トラクターや建設機械等の原動機付車輌に装着した、対地作業装置の牽引抵抗を一定に保持するための対負荷制御構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トラクター等の対地作業装置を牽引する原動機付車輌においては、該対地作業装置を「深耕」「浅耕」等のように設定して、一定の土壌内深さに保持するポジション自動制御機能(耕深制御)と、一定の牽引抵抗を保持する牽引抵抗自動保持機能(負荷制御)とを併せ持つものが公知となっている。
一般に、牽引抵抗の少ない対地作業装置や、平坦で柔らかい土壌でのプラウ耕等には、土壌の硬さに左右されずに対地作業装置を一定高さに保持するよう、耕深制御がなされ、牽引抵抗の大きい対地作業装置や、平坦でない同質の土壌でのロータリー耕等では、負荷制御がなされる。
【0003】
ここで、牽引抵抗自動保持機能(負荷制御)について説明する。
牽引駆動する対地作業装置が土壌深くで作業する状態であると、エンジン負荷が急激に重くなり、エンジン回転数の設定が少ない場合には、車輌におけるエンジン回転数復帰のための(電子)ガバナ制御も間に合わずにエンストしてしまう。
このような事態を避けるため、従来、トラクター等の対地作業装置を装着する原動機付車輌で、エンジン負荷の高い時に、時間のかかるガバナによるエンジン回転数復帰にさきがけて、対地作業装置を上昇させてエンジン負荷を低減するよう、エンジン負荷の検出に基づいて対地作業装置を昇降制御するものは公知となっている。
なお、エンジン負荷の検出は、従来、電子ガバナにおいて、アクセルの踏み操作に基づくエンジン回転数の設定値に対して実際のエンジン回転数が少ない場合に、その差異をエンジン負荷と見て検出している。
そして、このエンジン負荷を示す値であるエンジン負荷率RSFは、アクセルで設定し たエンジン回転数に対して、実際のエンジン回転数との数値の差のエンジン回転数を演算し、該差のエンジン回転数と設定エンジン回転数との比率として得た数値である。
即ち、エンジン負荷率RSF=(アクセル設定エンジン回転数−実際エンジン回転数)/アクセル設定エンジン回転数)〕と見て検出しており、対地作業装置の昇降制御においてもこれを利用していた。
【0004】
更に、従来の対地作業装置を牽引するトラクター等の農業用移動車輌においては、車輌が耕盤の傾斜によって左右傾斜しても、対地作業装置がそれに追従して左右傾斜しないように、左右水平状に保持する制御アクチュエーターが設けられた構造のものが公知となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
まず、前者のエンジン負荷検出に基づく対地作業装置の昇降制御構造において問題となるのは、昇降制御速度である。
従来のものは、標準的耕耘深さの時に適度に反応するように制御速度を設定しているが、この制御速度は、土壌内深さによって変動する。
まず、対地作業装置の高さを「深耕」に設定した場合、その位置を保持するだけで重負荷状態となっており、それ以上に負荷がかかった場合には、対地作業装置の昇降にかかる土壌よりの負荷が重いので、負荷軽減のための対地作業装置の上昇速度が遅くなり、ガバナによるエンジン回転数の復帰が間に合わず、エンストしてしまう。
逆に「浅耕」時には、土壌より受ける負荷が小さいので、エンジン負荷の減少に対して対地作業装置が急速に上昇して、いわゆる圃場表面にハンチング状態を生じ、後作業の播種作業では播種深さが一定でなくなるという弊害をもたらす。播種深さが一定でなければ、播種後の生育にもバラツキを生じ、その後の追肥や収穫においても問題を生じる。
また、ある一定の耕耘深さを設定した対地作業装置は、その耕耘深さを基準として上下するが、該耕耘深さよりも下降する際に、それが急激であれば、エンジン負荷率が一気に増大して、エンストの原因となるのである。
【0006】
また、このような負荷制御における対地作業装置の昇降制御において、一定の昇降用許容幅が設定されなければならない。許容幅は、広く取るほど敏感な昇降制御となるが、この許容幅において、負荷率の増大する方に敏感に対地作業装置が昇降反応できる状態であれば、急激な昇降による負荷増大によって、エンストの危険性がある。
【0007】
一方、従来の水平制御についても、反応速度の速すぎ、遅すぎによる問題がある。例えば、対地作業装置を、代掻き等、土壌すれすれに接地させた状態で作業をする時等には、水平制御速度があまりに速いとハンチングを生じるので、該速度を遅めに設定すると、今度は、深耕作業時に反応速度が遅く、即ち、左右水平制御が遅れるため、作業後の耕耘跡に左右傾斜が残るという事態をもたらす。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上のような課題を解決するため、次のような手段を用いるものである。
請求項1においては、エンジン負荷率の変化に対応して対地作業装置を昇降制御して、対地作業装置の牽引抵抗を一定に保持するよう構成した対地作業装置の対負荷制御構造において、牽引抵抗を重負荷に設定した時は、エンジン負荷率を演算する為の実際エンジン回転数の検出時間を短くし、軽負荷に設定した時は、該検出時間を長くした
ものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1記載の対地作業装置の対負荷制御構造において、作業状態の対地作業装置を土壌内に下降させ、エンジン負荷率における検出負荷率(F)が設定負荷率(FS)に一致した位置にてロータリーRを停止させ、このリフト角センサー検出 値(LS)を基準高さと設定し、該基準高さにおける対地作業装置の一定の昇降幅αを設定し、該昇降幅αを、エンジン負荷率の増大する側において狭く、或いは無くしたものである。
【0010】
請求項3においては、請求項1記載の対地作業装置の対負荷制御構造において、牽引する対地作業装置の左右傾斜を検出し、該対地作業装置を水平制御するよう構成し、前記エンジン負荷率が重負荷を示す時は、前記水平制御系の応答速度を上げ、軽負荷を示す時は該応答速度を下げたものである。
【0011】
【作用】
牽引抵抗が重負荷である場合には、対地作業装置上昇のためのエンジン回転数の検出時間を短くすることで、少しのエンジン回転数の低下にも即座に対地作業装置を上昇することができてエンストを防止することができる。
一方、軽負荷の場合には、該検出時間を長くすることで、対地作業装置の上昇反応を鈍くし、あまり対地作業装置が負荷制御によって敏感に上下に振れないようにして、圃場表面におけるハンチングを防ぐことができる。
【0012】
また、対地作業装置が目的負荷率となる高さを基準として昇降する如く構成した負荷制御において、昇降設定幅が、負荷率の増大する側において狭くなるようにしたので、対地作業装置が負荷率増大側に移動せず、急激なエンジン回転数低下を防止して、エンストを防止できる。
【0013】
更に、左右水平制御においては、深耕状態である重負荷時に水平制御系の応答速度を速めることで、左右水平制御の遅れを引き起こさずにすみ、一方、「代掻き」等の浅耕状態である軽負荷時においては、応答速度を遅くすることで、過剰に対地作業装置を左右水平制御してハンチングを生じさせるのを防ぐことができる。
【0014】
【実施例】
次に、添付の図面に示した実施例に基づいて、本発明の構成を説明する。
図1は、対地作業装置であるロータリーRを牽引するトラクターTRの制御装置の配置を示す側面図、図2は、対地制御装置の昇降制御及び水平制御機構のブロック図、図3は、トラクターTRにおける昇降駆動機構(3点リンク)の後方斜視図、図4は、昇降用電磁バルブの油圧配管図、図5は、水平制御用電磁バルブの油圧配管図、図6は、ガバナGの内部断面図、図7は、同じく側面図、図8乃至図12は、耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、図8は、負荷制御において、エンジン回転数検出時間を負荷率設定によって変更させる実施例を開示した図、図9は、負荷制御において、エンジン回転数検出時間をアクセル設定値によって変更させる実施例を開示した図、図10は、負荷制御において、エンジン回転数検出時間を負荷率検出によって変更させる実施例を示す図、図11は、負荷制御において、エンジン回転数検出時間をPTO変速段によって変更させる実施例を示す図、図12は、図10の実施例において、エンジンの設定回転数と最低許容回転数との差を負荷率検出値によって変更させる実施例を示す図、図13は、図8乃至図12のフローチャートに共通に続くフローチャートであって、耕深制御又は負荷制御における対地作業装置の昇降制御を示す図、図14は、負荷制御において、基準のリフト角を設定する過程を示すフローチャート、図15乃至図18は、図14に共通に続くフローチャートであって、図15は、基準リフト角前後にリフト昇降幅αを設けた場合の図、図16は、該リフト昇降幅αを感度調節ダイヤルにて調節可能とした場合の図、図17は、負荷率増大側のリフト昇降幅を縮小補正した場合の図、図18は、図17の実施例で、負荷率増大側のリフト昇降を不可能とするようにも設定可能とした場合の図、図19は、エンジン負荷率に対応して変更させる水平制御系の周波数応答速度を表示した図、図20は、エンジン負荷率に対応して変更させる水平制御系の不感帯幅を表示した図、図21は、エンジン負荷率に比例して水平制御系の応答速度を増大させる場合の相関グラフ、図22は、傾斜センサー入力用ローパスフィルターの配線図、図23は、水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数を変更する場合のフローチャート、図24は、水平制御において、エンジン負荷率に対応して不感帯幅を変更する場合のフローチャート、図25は、水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数を変更させるか、不感帯を変更させるかを選択可能とした場合のフローチャート、図26は、水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数及び不感帯の両方を変更する場合のフローチャートである。
【0015】
まず、対地作業装置を牽引する原動機付車輌として、農用トラクターについての全体構成を説明する。
トラクターTRは、後部の昇降駆動機構にてロータリーR等の対地作業装置を昇降可能に牽引するものである。
本実施例の昇降駆動機構は、図3の如く、トップリンク12及び左右ロアリンク13・13よりなる3点リンク機構であって、その中の左右ロアリンク13・13を、リフトアーム14・14及びリフティングロッド15・15にて吊持している。
該リフトアーム14・14は、図4の如く、トラクターTR内の昇降用電磁バルブV1(上昇(収縮)用電磁バルブV1U・下降(伸長)用電磁バルブV1D)の作動による油圧のリフトシリンダーLCの伸縮駆動にて上下回動駆動され、これにより3点リンク3Pが上下して、ロータリーRを昇降させる。
また、図3の如く、左右リフティングロッド15・15の片方(本実施例では右リフティングロッド15)に水平制御シリンダーSCが介設されていて、図5の如く、トラクターTR内の水平制御用電磁バルブV2(右上げ(収縮)用電磁バルブV2U・右下げ(伸長)用電磁バルブV2D)の作動による該水平制御シリンダーSCの伸縮駆動にて、該シリンダーSCを介設するリフティングロッド15の長さを変更し、これによって対地作業装置の左右傾斜を是正するのである。
【0016】
トラクターTR内の各種の操作器具や制御装置について説明する。
ボンネット内にディーゼルエンジンEが搭載されていて、トラクターTRの走行駆動、及びPTO軸を介して対地作業装置であるロータリーRの駆動に用いられる。該エンジンEの回転数を設定するアクセルレバー2がハンドル付近に突設されており、エンジンEの回転数をアクセルレバー2で設定した回転数にて一定に保持できるようにガバナ(電子ガバナ)1が配設されている。
ガバナ1の構造を簡単に図6及び図7より説明すると、エンジンEの回転数は、アクセルレバー2にて燃料噴射量が設定されることに基づく(設定値は、アクセルレバー2基端部のアクセルセンサー2a入力値(AS)である。)。一方、ガバナ1において、図7の如く、実際のエンジン回転数を検出する回転数センサー1aが設けられており、この差をエンジン負荷として読み取って、図6の如く、ラックアクチュエーター1bが摺動し、ラック位置センサー1cがラック位置を読み取って、これに基づき、燃料噴射量が、エンジン回転数の低下を補うべく増加される。ラックが基の位置に戻れば燃料噴射量は初期のアクセルにて設定した量に戻り、これを繰り返して、エンジン回転数を、アクセルにて設定した回転数に保持するのである。
【0017】
次に、前記の3点リンクの昇降駆動制御について、図1の各装置及びセンサー配置図、及び図2のブロック図より説明する。
3点リンク駆動用の昇降用電磁バルブV1の出力信号は、対地作業装置制御コントローラCより発せられるものである。該対地作業装置制御コントローラCの入力手段のうち、まず、ロータリーRを装着する3点リンクのリフト角度(高さ)を検出するリフト角センサー8があり、また、ロータリーRにおいては、該ロータリーRのリアカバーの前後回動角度を検出して、ロータリーRの実際の耕深を検出する耕深センサーと、左右の傾斜角度を検出する傾斜センサーを併せ持つリアカバーセンサー9がある。
【0018】
3点リンクの昇降制御として、まず、手動操作においては、ポジションレバー7がある。
このポジションレバー7は、ロータリーRの高さを設定するものであり、該ポジションレバー7の操作角度を入力するポジションセンサー7aの入力値を基にバルブ制御してリンク昇降を行い、リフト角センサー8の入力値と比較して、一致したら、目的のリフト高さになったとして、昇降用電磁バルブV1をOFFするのである。
更に、ワンタッチ昇降スイッチ3が設けてあり、このスイッチを上昇設定すると、上昇最大位置まで自動的に対地作業装置が一気に上昇し、下降設定すると、下降最大位置まで自動的に対地作業装置が一気に下降するのである。
【0019】
このような、昇降制御構造を持つトラクターTRにおいて、ロータリーRを土壌内にセットし、作業状態とした場合、このロータリーRを一定状態に保持する制御機構として、二つの制御機構がある。
即ち、対地作業装置の耕深を一定に保持する耕深制御機構と、対地作業装置の牽引抵抗を一定に保持する負荷制御機構である。様々な圃場条件や作業条件によって、どちらの制御機能を発揮させる方が有効かについて説明すると、例えば、水田の「荒起し」では、土壌深く耕耘し、耕深を一定にするよりはむしろ作業速度を要求されるので、耕深制御よりも負荷制御が有効である。
水田の「荒代」作りにおいては両制御を半々程度で発揮するとよい。そして、「代掻き」は、圃場表面を凹凸のない状態に保持する作業であり、負荷制御の要素は殆どなく、耕深制御のみか、一部耕深制御の要素を採り入れれば足りる。このように、各種の圃場条件及び作業条件に適合して有効な対地作業を施すには、耕深制御と負荷制御の混合制御で、両制御の出力比を自由に設定可能とすればよい。
【0020】
そこで、図1、図2、図8乃至図12の如く、負荷制御のみのP1・耕深制御のみのP2・負荷制御及び耕深制御の混合制御のP3の3段切換式の制御切換スイッチ5を設けている。
ここで、負荷制御用のリアカバーセンサー検出値(RCF)、及び耕深制御用のリアカバーセンサー検出値(RCR)について、P1設定時には前者検出値(RCF)のみを、P2設定時には後者検出値(RCR)のみを検出信号として入力するのである。
そして、P3設定時には、耕深制御用検出値(RCR)の全体混合検出値に対する比率をKK(RCR:RCF=KK:1−KK)とし、両検出値の混合検出信号(RCR×KK+RCF×(1−KK))を入力する(0<KK<1)。この混合比KKは変更可能としてもよい。
【0021】
このように耕深制御と負荷制御を切り換え、或いは混合制御できる状態において、図1、図2図示の負荷/耕深設定器4にて耕深、または負荷率を、例えば「浅耕」「中耕」「深耕」の3段階等に設定可能となっている。図13は、耕深・負荷両制御において、負荷/耕深設定器4の設定値Sとリアカバーセンサー9の検出値との比較における昇降駆動機構制御用の昇降用電磁バルブV1の駆動制御について開示している。
この設定値Sは、まず、前記制御切換スイッチ5にて、耕深制御(P2またはP3)に設定した場合には、ロータリーRのリアカバーの高さを示すものとなっており、この設定値Sとリアカバーセンサー9の検出信号RSRとの差異を基に、昇降用電磁バルブV1を制御して、昇降駆動機構(3点リンク)の昇降制御を行う。
一方、負荷制御(P1またはP3)に設定した場合においては、負荷/耕深設定器4における設定値Sは、エンジン負荷率RSFである。
該エンジン負荷率RSFは、エンジン負荷率RSF=(アクセル設定エンジン回転数−実際エンジン回転数)/アクセル設定エンジン回転数)で決定される。
この値を一定に保持すべく、負荷率が上昇した(エンジン回転数が下がった)ことを検出すれば、3点リンク3Pを上昇させ、エンジン負荷を下げてエンジン回転数を復帰させるのである。
【0022】
次に、負荷制御について説明する。
負荷率の検出は、前記ガバナ1におけるエンジン回転数検出センサー1aを用いる。
ここで、3点リンクの昇降作動は、図8のフローチャート中の制御切換スイッチ5をP1またはP3に設定した場合に示されるように、一定時間である検出時間Tの間、エンジン回転数の低下・増加が持続されていれば昇降起動するように制御されており、この検出時間Tは、設定負荷率Sが軽い(浅耕)ほど長く、重い(深耕)ほど短くなるように設定されている。
つまり、軽負荷の場合には、浅耕状態であるので、不必要に3点リンクが昇降することで却って圃場表面に凹凸がつき、また、少々の負荷率低下でもエンストの不安が軽いので、この場合には、検出時間Tを長く取ることで、ある程度長時間エンジン回転数の低下が続くほどの負荷増加でなければリフト上昇しないようにしている。
一方、重負荷の場合には、深耕状態で、そのままでもエンジン負荷が重い状態で、少しでも負荷が増加すれば、即座にリフト上昇するようにしなければ、エンジン負荷の低減が電子ガバナ制御では間に合わず、エンストしてしまうので、この場合には、検出時間Tを短くして、少しの時間でもエンジン回転数の低下が認められた時に、即座にリフト上昇させる。
このように、負荷率の設定値によって、エンジン回転数の検出時間を変更することにより、重負荷状態ではエンストが防止でき、軽負荷状態ではハンチングが防止できるのである。
【0023】
なお、このように負荷/耕深設定器4による負荷率設定を基に、エンジン回転数の検出時間を変更する以外に、負荷率とは関係なく、単にアクセルレバー2の操作によるエンジン回転数の設定値(アクセルセンサーの設定値AS)が高い場合に検出時間Tを長く(低い場合に短く)する方法(図9図示)、或いは、実際の負荷率検出値の検出(ガバナ1における負荷率検出値RCS)を基にする方法(図10図示)がある。
いずれにせよ、重負荷時にはエンジン回転数検出時間Tを短くし、リフト上昇を敏感にしてエンストを防止し、軽負荷時には該検出時間Tを長くし、リフト上昇を鈍感にしてハンチングを防止するものである。
【0024】
また、このエンジン回転数の検出時間TをPTO軸の回転数に対応させる実施例について、図11のフローチャートより説明する。
従来のPTO軸は比較的低速回転で、負荷制御も充分に対応可能で、安定した対地作業が得られた。しかし、最近では、対地作業装置に高速駆動力を求めるようになり、PTO軸も高速回転段が設定されて、この場合には、ちょっとした負荷変動にもエンジン回転数が敏感に変化し、対地作業装置の駆動力が変動するので、ハンチング状態となってしまう。
そこで、PTO軸回転(図2中に示す、PTO変速位置センサー10の検出値PSn )が高速段に設定されている場合には、前記のエンジン回転数の検出時間Tを長くして、リフト上昇が敏速に対応するようにし、不必要な負荷制御によりエンジン回転数に変動が起きないようにしている。
一方、PTO軸回転が低速段の場合には、できるだけ負荷制御を敏感にするように、該検出時間Tを短くする。こうしてPTO軸を高速回転時でも一定回転数に制御できるようにすることで、対地作業装置の高速駆動による安定作業ができるようになる。なお、対地作業には、PTO軸を使用しないこともある(プラウ耕等)が、この場合にはエンジン回転数の検出時間が不定となるので、PTO軸の中立時における一定のエンジン回転数検出時間も設定しておく。
【0025】
次に、負荷制御におけるアクセル操作に伴うエンスト防止構造について説明する。
従来、負荷/耕深設定器4によるエンジン負荷率の設定は、アクセルレバー2によるエンジン回転数設定とは無関係、即ち、どんなにアクセルレバー2で低速に設定していても、エンジン負荷率をそれに対応して軽くしたりするようにはできていないので、低速にするとエンストしてしまう虞が多々あった。
そこで、アクセルレバー2の回動量を入力するアクセルセンサー2aの設定値(AS)が高速回転を示している時は、当該設定値が低速回転を示している時よりも、許容最低エンジン回転数(負荷がかかった場合の最低回転数)(OAS)と該アクセル設定値(AS)の差(SR)が大きくなるべく、該許容最低エンジン回転数を設定する。
即ち、負荷率設定の最小値と最大値との間で、該許容最低エンジン回転数(OAS)が、アクセルセンサー設定値(AS)の一定割合(K)で設定されているが、この定数比(K)を、図12の如く、アクセルセンサー値(AS)によって補正、つまり、アクセルセンサー値(AS)が小さいほど最低許容回転数(OAS)との差(SR)を小さくして、エンジン回転数の低い場合に、最低許容回転数を相対的に高くしているので、エンストが防げるのである。
【0026】
以上のような負荷制御構造においての対地作業装置の昇降幅の設定について図14乃至図18より説明する。
対地作業装置は、負荷率の増加が認められた時に即座に一定量上昇させ、また、負荷率が低下した場合には、牽引抵抗が少なく、作業量が不足することが考えられる(例えば、粉砕する土塊が粗くなる等)から、即座に一定量下降して、負荷率を復帰させる。
ここで、この昇降幅については、前記の対地作業装置制御コントローラーCにおける、図1及び図2図示の感度調節ダイヤル6にて調節可能である。これは、目的の負荷率を得る対地作業装置(実施例ではロータリーR)の高さからの昇降幅を調節するものであって、大きく取れば、負荷制御のための対地作業装置は大きく上昇または下降し、小さく取れば、小幅で昇降する。この感度調節ダイヤル6で、例えば、小幅では負荷率(エンジン回転数)が復帰するに至らない場合には、少し昇降幅を増加させるという調節操作が可能である。
【0027】
目的のエンジン負荷率、即ち、目的の牽引抵抗を得る対地作業装置の高さ設定について、図14及び図15より説明する。
まず、制御切換スイッチ5にて負荷制御に設定した後、負荷/耕深設定器4にて目的の負荷率を設定する(「深耕」「中耕」「浅耕」)と、3点リンク3Pが下降して、作業状態、即ちPTO軸伝動したロータリーRを土壌内に挿入し、土壌作業によって得る負荷率(F)をガバナ1において検出し、設定負荷率(FS)と比較する。検出負荷率(F)が設定負荷率(FS)に満たない時、更にロータリーRを下降させて、検出負荷率(F)が設定負荷率(FS)に一致した時に、その位置にてロータリーRを停止させ、この時におけるリフト角センサー検出値(LS)を基準高さと設定して、一定の昇降幅αを設定する(最大上昇角LSU=LS−α・最大下降角LSD=LS+α)。
更には、図16の如く、この昇降幅αを、感度調節ダイヤル6にて調節設定する。
なお、目的負荷率を得る高さまでに対地作業装置を下降させる作業は、自動制御にて下降停止するようにしてもよく、また、作業者が、設定負荷率と検出負荷率の表示を見比べて対地作業装置を下降するという手動操作でもよい。この場合には、検出負荷率が設定負荷率に一致した時点でブザー等の警報が発令されるようにすれば一層よい。
【0028】
ところで、負荷制御における対地作業装置の昇降幅は、上昇方向には大きく取っても負荷率の低下する方向(エンジン回転数を復元させる方向)であるから問題はないが、下降方向は、負荷率増大側であるから、あまり大きく下降幅を取ると、負荷率の急激な増大により、エンストを起こす危険がある。
そこで、図17のように、負荷率の増大側(リフト下降側)には、対地作業装置の昇降幅αを縮小補正して、規制昇降幅KD(=α/k,kは2〜5程度)とするか、図18のように、全く取らない(KD=0)ようにし、負荷制御による対地作業装置の負荷率増大側に昇降(特に下降)しないようにする方法が考えられる。
また、負荷増大側に昇降幅KDを設けるか、或いは全く設けないかを、図18に示す如く、深耕許可スイッチ11によって選択可能としており、スイッチON時には、深耕側への昇降OKで、昇降幅KD内で昇降制御がなされ、スイッチOFF時には、深耕側への昇降は全く行われない。
【0029】
次に、負荷率設定に対応する左右水平制御構造について、図19乃至図26より説明する。従来、代掻き等でハンチングを起こさないように、左右水平制御系の反応速度、即ち、前記の水平制御シリンダーSCの反応速度は、一律に遅く設定していたが、これでは、重負荷の深耕状態では反応が遅れ、左右傾斜が是正されないので、負荷率の大きい深耕状態では反応を速く、負荷率の小さい深耕状態では遅くなるようにする。
即ち、図2に示す如く、ガバナ1における負荷率検出値を耕深・水平制御用コントローラーCに入力して、これに対応して水平制御シリンダーを伸縮駆動する電磁バルブ制御の反応速度を設定し、対地作業装置の水平制御を行うのである。
【0030】
この反応速度を増減する方法として、まず、図23の方法を説明する。
これは、ロータリーRの前記リアカバーセンサー9における左右傾斜角度を検出する傾斜センサーの入力値に対する反応周波数を増減する方法である。
即ち、図22の如く、深耕・水平制御用コントローラーにおいて、折点周波数が異なる、3個のローパスフィルター16L・16M・16Hが設けられていて、ガバナ1にて検出されるエンジン負荷率の検出値に対応して、一個のローパスフィルター16が選択される(図23)。
例えば、エンジン負荷率が30%以下と低い場合、即ち、浅耕状態の場合には、折点周波数0.5Hzのローパスフィルター16Lが、傾斜センサーの入力信号の入力用に用いられ、エンジン負荷率が70%より高い場合、即ち深耕状態では、折点周波数3.0Hzのローパスフィルター16Hが用いられる(具体的には、図22図示の、各ローパスフィルターを連結する入力端子A/D(1)・A/D(2)・A/D(3)の中から一つを選択する。)。
図19にて示すエンジン負荷率に対応する(周波数)応答速度とは、このように選択されるローパスフィルターの折点周波数を示す。折点周波数が高いほど、ローパスフィルターを通過できる入力信号は多くなるので、電磁バルブV2作動に必要な入力電量が早く得られ、従って、水平制御シリンダーSCの反応速度が速くなるのである。
【0031】
もう一つの方法は、図24図示の、不感帯幅を変更する方法である。
不感帯は、水平状態からある程度の小幅な左右傾斜は、水平制御によって却ってハンチング等の弊害があることから、この範囲にて対地作業装置が傾斜しても水平制御用の電磁バルブV2が作動しない範囲を設定したものであって、これを、ガバナ1における負荷率信号(F)に対応して、例えば図20、図24の如く3段階に変更する。即ち負荷率が30%以下の浅耕状態の時には、ハンチング防止により不感帯を±1.0°と大きく取り、この傾斜範囲では水平制御が行われないようにし、負荷率が70%よりも大きい深耕状態では、水平制御の反応を敏感にするために、不感帯を±0.4°と小さく取っているのである。
【0032】
以上の応答周波数の変更による方法、或いは不感帯の変更による方法は、図25のように、いずれかを選択可能としてもよい。
更には、図26に示すように、負荷率検出値に対応して、応答周波数と不感帯の両方を変更可能としてもよい。また、前記では、どちらの方法も3段階の応答速度としているが、この中で、応答周波数を変更する方法においては、折点周波数を一つのローパスフィルターにおいてフレキシブルに変更可能として、負荷率の検出値に基づいて比例的に折点周波数を変位させ、或いは不感帯の変更による方法においては、不感帯幅を負荷率検出値に基づいて比例的に変位可能にして、図21のグラフのように、負荷率の増大に比例して応答速度を増大させるように構成してもよい。
なお、ローパスフィルターの折点周波数を変更可能とした構成において、図2に図示する如く、負荷率の表示器17における表示を基に、折点周波数変更用の感度設定器18にて折点周波数を手動にて変更する方法もある。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、次のような効果を奏する。
請求項1の如く構成したので、牽引抵抗を一定に保持するための負荷制御構造において、牽引抵抗が重負荷の状態(深耕状態)においては、対地作業装置が敏感に反応して昇降制御されて、負荷率を速やかに復帰するので、エンストを起こす心配がない。
一方、牽引抵抗が軽負荷の状態(浅耕状態)においては、対地作業装置の昇降制御反応が鈍くなり、過度に昇降することにより生じるハンチング現象を解消する。このように、対地作業装置の牽引抵抗を一定に保持する負荷制御が良好に行われる車輌を構成することができる。
【0034】
また、同じく牽引抵抗を保持するための負荷制御機能付車輌において、請求項2の如く、負荷制御用の対地作業装置の昇降幅の許容幅を、負荷率の増大側は狭く、または無くしたので、負荷率増大側には対地作業装置が殆ど、或いは全く昇降せず、不意の負荷率増大によるエンストという事態を解消でき、安全な負荷制御機能付車輌を構成することができる。
【0035】
また、請求項3の如く、左右水平制御系の応答速度を、負荷率の高い場合には速くしたので、牽引抵抗の重負荷である深耕状態でも、水平制御が遅れることなく、速やかに反応し、左右傾斜を残すことなく対地作業を仕上げることができ、一方、牽引抵抗の軽負荷の浅耕状態では、水平制御の反応が鈍くなり、余分な制御による対地作業装置の振れがなくなって、ハンチングが生じなくなる。このように、牽引抵抗の設定の違いに対応して、良好に対地作業装置を水平制御できる車輌を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】対地作業装置であるロータリーRを牽引するトラクターTRの制御装置の配置を示す側面図である。
【図2】対地制御装置の昇降制御及び水平制御機構のブロック図である。
【図3】トラクターTRにおける昇降駆動機構(3点リンク)の後方斜視図である。
【図4】昇降用電磁バルブの油圧配管図である。
【図5】水平制御用電磁バルブの油圧配管図である。
【図6】ガバナ1の内部断面図である。
【図7】同じく側面図である。
【図8】耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、負荷制御において、エンジン回転数検出時間を負荷率設定によって変更させる実施例を開示した図である。
【図9】耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、負荷制御において、エンジン回転数検出時間をアクセル設定値によって変更させる実施例を開示した図である。
【図10】耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、負荷制御において、エンジン回転数検出時間を負荷率検出によって変更させる実施例を示す図である。
【図11】耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、負荷制御において、エンジン回転数検出時間をPTO変速段によって変更させる実施例を示す図である。
【図12】耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、図10の実施例において、エンジンの設定回転数と最低許容回転数との差を負荷率検出値によって変更させる実施例を示す図である。
【図13】図8乃至図12のフローチャートに共通に続くフローチャートであって、耕深制御又は負荷制御における対地作業装置の昇降制御を示す図である。
【図14】負荷制御において、基準のリフト角を設定する過程を示すフローチャート図である。
【図15】図14に続くフローチャートであって、基準リフト角前後にリフト昇降幅αを設けた場合の図である。
【図16】図14に続くフローチャートであって、該リフト昇降幅αを感度調節ダイヤルにて調節可能とした場合の図である。
【図17】図14に続くフローチャートであって、負荷率増大側のリフト昇降幅を縮小補正した場合の図である。
【図18】図14に続くフローチャートであって、図17の実施例で、負荷率増大側のリフト昇降を不可能とするようにも設定可能とした場合の図である。
【図19】エンジン負荷率に対応して変更させる水平制御系の周波数応答速度を表示した図である。
【図20】エンジン負荷率に対応して変更させる水平制御系の不感帯幅を表示した図である。
【図21】エンジン負荷率に比例して水平制御系の応答速度を増大させる場合の相関グラフ図である。
【図22】傾斜センサー入力用ローパスフィルターの配線図である。
【図23】水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数を変更する場合のフローチャート図である。
【図24】水平制御において、エンジン負荷率に対応して不感帯幅を変更する場合のフローチャート図である。
【図25】水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数を変更させるか、不感帯を変更させるかを選択可能とした場合のフローチャート図である。
【図26】水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数及び不感帯の両方を変更する場合のフローチャート図である。
【符号の説明】
TR トラクター
R ロータリー
C 対地作業装置制御用コントローラ
LC リフトシリンダー
SC 水平制御シリンダー
1 ガバナ
1a 回転数検出センサー
1b ラックアクチュエーター
1c ラック位置センサー
2 アクセルレバー
2a アクセルセンサー
3 ワンタッチ昇降スイッチ
4 負荷/耕深設定器
5 制御切換スイッチ
6 感度調節ダイヤル
7 ポジションレバー
7a ポジションセンサー
8 リフト角センサー
9 リアカバーセンサー
10 PTO変速位置センサー
11 深耕許可スイッチ
【産業上の利用分野】
本発明は、主として農業用トラクターや建設機械等の原動機付車輌に装着した、対地作業装置の牽引抵抗を一定に保持するための対負荷制御構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トラクター等の対地作業装置を牽引する原動機付車輌においては、該対地作業装置を「深耕」「浅耕」等のように設定して、一定の土壌内深さに保持するポジション自動制御機能(耕深制御)と、一定の牽引抵抗を保持する牽引抵抗自動保持機能(負荷制御)とを併せ持つものが公知となっている。
一般に、牽引抵抗の少ない対地作業装置や、平坦で柔らかい土壌でのプラウ耕等には、土壌の硬さに左右されずに対地作業装置を一定高さに保持するよう、耕深制御がなされ、牽引抵抗の大きい対地作業装置や、平坦でない同質の土壌でのロータリー耕等では、負荷制御がなされる。
【0003】
ここで、牽引抵抗自動保持機能(負荷制御)について説明する。
牽引駆動する対地作業装置が土壌深くで作業する状態であると、エンジン負荷が急激に重くなり、エンジン回転数の設定が少ない場合には、車輌におけるエンジン回転数復帰のための(電子)ガバナ制御も間に合わずにエンストしてしまう。
このような事態を避けるため、従来、トラクター等の対地作業装置を装着する原動機付車輌で、エンジン負荷の高い時に、時間のかかるガバナによるエンジン回転数復帰にさきがけて、対地作業装置を上昇させてエンジン負荷を低減するよう、エンジン負荷の検出に基づいて対地作業装置を昇降制御するものは公知となっている。
なお、エンジン負荷の検出は、従来、電子ガバナにおいて、アクセルの踏み操作に基づくエンジン回転数の設定値に対して実際のエンジン回転数が少ない場合に、その差異をエンジン負荷と見て検出している。
そして、このエンジン負荷を示す値であるエンジン負荷率RSFは、アクセルで設定し たエンジン回転数に対して、実際のエンジン回転数との数値の差のエンジン回転数を演算し、該差のエンジン回転数と設定エンジン回転数との比率として得た数値である。
即ち、エンジン負荷率RSF=(アクセル設定エンジン回転数−実際エンジン回転数)/アクセル設定エンジン回転数)〕と見て検出しており、対地作業装置の昇降制御においてもこれを利用していた。
【0004】
更に、従来の対地作業装置を牽引するトラクター等の農業用移動車輌においては、車輌が耕盤の傾斜によって左右傾斜しても、対地作業装置がそれに追従して左右傾斜しないように、左右水平状に保持する制御アクチュエーターが設けられた構造のものが公知となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
まず、前者のエンジン負荷検出に基づく対地作業装置の昇降制御構造において問題となるのは、昇降制御速度である。
従来のものは、標準的耕耘深さの時に適度に反応するように制御速度を設定しているが、この制御速度は、土壌内深さによって変動する。
まず、対地作業装置の高さを「深耕」に設定した場合、その位置を保持するだけで重負荷状態となっており、それ以上に負荷がかかった場合には、対地作業装置の昇降にかかる土壌よりの負荷が重いので、負荷軽減のための対地作業装置の上昇速度が遅くなり、ガバナによるエンジン回転数の復帰が間に合わず、エンストしてしまう。
逆に「浅耕」時には、土壌より受ける負荷が小さいので、エンジン負荷の減少に対して対地作業装置が急速に上昇して、いわゆる圃場表面にハンチング状態を生じ、後作業の播種作業では播種深さが一定でなくなるという弊害をもたらす。播種深さが一定でなければ、播種後の生育にもバラツキを生じ、その後の追肥や収穫においても問題を生じる。
また、ある一定の耕耘深さを設定した対地作業装置は、その耕耘深さを基準として上下するが、該耕耘深さよりも下降する際に、それが急激であれば、エンジン負荷率が一気に増大して、エンストの原因となるのである。
【0006】
また、このような負荷制御における対地作業装置の昇降制御において、一定の昇降用許容幅が設定されなければならない。許容幅は、広く取るほど敏感な昇降制御となるが、この許容幅において、負荷率の増大する方に敏感に対地作業装置が昇降反応できる状態であれば、急激な昇降による負荷増大によって、エンストの危険性がある。
【0007】
一方、従来の水平制御についても、反応速度の速すぎ、遅すぎによる問題がある。例えば、対地作業装置を、代掻き等、土壌すれすれに接地させた状態で作業をする時等には、水平制御速度があまりに速いとハンチングを生じるので、該速度を遅めに設定すると、今度は、深耕作業時に反応速度が遅く、即ち、左右水平制御が遅れるため、作業後の耕耘跡に左右傾斜が残るという事態をもたらす。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上のような課題を解決するため、次のような手段を用いるものである。
請求項1においては、エンジン負荷率の変化に対応して対地作業装置を昇降制御して、対地作業装置の牽引抵抗を一定に保持するよう構成した対地作業装置の対負荷制御構造において、牽引抵抗を重負荷に設定した時は、エンジン負荷率を演算する為の実際エンジン回転数の検出時間を短くし、軽負荷に設定した時は、該検出時間を長くした
ものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1記載の対地作業装置の対負荷制御構造において、作業状態の対地作業装置を土壌内に下降させ、エンジン負荷率における検出負荷率(F)が設定負荷率(FS)に一致した位置にてロータリーRを停止させ、このリフト角センサー検出 値(LS)を基準高さと設定し、該基準高さにおける対地作業装置の一定の昇降幅αを設定し、該昇降幅αを、エンジン負荷率の増大する側において狭く、或いは無くしたものである。
【0010】
請求項3においては、請求項1記載の対地作業装置の対負荷制御構造において、牽引する対地作業装置の左右傾斜を検出し、該対地作業装置を水平制御するよう構成し、前記エンジン負荷率が重負荷を示す時は、前記水平制御系の応答速度を上げ、軽負荷を示す時は該応答速度を下げたものである。
【0011】
【作用】
牽引抵抗が重負荷である場合には、対地作業装置上昇のためのエンジン回転数の検出時間を短くすることで、少しのエンジン回転数の低下にも即座に対地作業装置を上昇することができてエンストを防止することができる。
一方、軽負荷の場合には、該検出時間を長くすることで、対地作業装置の上昇反応を鈍くし、あまり対地作業装置が負荷制御によって敏感に上下に振れないようにして、圃場表面におけるハンチングを防ぐことができる。
【0012】
また、対地作業装置が目的負荷率となる高さを基準として昇降する如く構成した負荷制御において、昇降設定幅が、負荷率の増大する側において狭くなるようにしたので、対地作業装置が負荷率増大側に移動せず、急激なエンジン回転数低下を防止して、エンストを防止できる。
【0013】
更に、左右水平制御においては、深耕状態である重負荷時に水平制御系の応答速度を速めることで、左右水平制御の遅れを引き起こさずにすみ、一方、「代掻き」等の浅耕状態である軽負荷時においては、応答速度を遅くすることで、過剰に対地作業装置を左右水平制御してハンチングを生じさせるのを防ぐことができる。
【0014】
【実施例】
次に、添付の図面に示した実施例に基づいて、本発明の構成を説明する。
図1は、対地作業装置であるロータリーRを牽引するトラクターTRの制御装置の配置を示す側面図、図2は、対地制御装置の昇降制御及び水平制御機構のブロック図、図3は、トラクターTRにおける昇降駆動機構(3点リンク)の後方斜視図、図4は、昇降用電磁バルブの油圧配管図、図5は、水平制御用電磁バルブの油圧配管図、図6は、ガバナGの内部断面図、図7は、同じく側面図、図8乃至図12は、耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、図8は、負荷制御において、エンジン回転数検出時間を負荷率設定によって変更させる実施例を開示した図、図9は、負荷制御において、エンジン回転数検出時間をアクセル設定値によって変更させる実施例を開示した図、図10は、負荷制御において、エンジン回転数検出時間を負荷率検出によって変更させる実施例を示す図、図11は、負荷制御において、エンジン回転数検出時間をPTO変速段によって変更させる実施例を示す図、図12は、図10の実施例において、エンジンの設定回転数と最低許容回転数との差を負荷率検出値によって変更させる実施例を示す図、図13は、図8乃至図12のフローチャートに共通に続くフローチャートであって、耕深制御又は負荷制御における対地作業装置の昇降制御を示す図、図14は、負荷制御において、基準のリフト角を設定する過程を示すフローチャート、図15乃至図18は、図14に共通に続くフローチャートであって、図15は、基準リフト角前後にリフト昇降幅αを設けた場合の図、図16は、該リフト昇降幅αを感度調節ダイヤルにて調節可能とした場合の図、図17は、負荷率増大側のリフト昇降幅を縮小補正した場合の図、図18は、図17の実施例で、負荷率増大側のリフト昇降を不可能とするようにも設定可能とした場合の図、図19は、エンジン負荷率に対応して変更させる水平制御系の周波数応答速度を表示した図、図20は、エンジン負荷率に対応して変更させる水平制御系の不感帯幅を表示した図、図21は、エンジン負荷率に比例して水平制御系の応答速度を増大させる場合の相関グラフ、図22は、傾斜センサー入力用ローパスフィルターの配線図、図23は、水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数を変更する場合のフローチャート、図24は、水平制御において、エンジン負荷率に対応して不感帯幅を変更する場合のフローチャート、図25は、水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数を変更させるか、不感帯を変更させるかを選択可能とした場合のフローチャート、図26は、水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数及び不感帯の両方を変更する場合のフローチャートである。
【0015】
まず、対地作業装置を牽引する原動機付車輌として、農用トラクターについての全体構成を説明する。
トラクターTRは、後部の昇降駆動機構にてロータリーR等の対地作業装置を昇降可能に牽引するものである。
本実施例の昇降駆動機構は、図3の如く、トップリンク12及び左右ロアリンク13・13よりなる3点リンク機構であって、その中の左右ロアリンク13・13を、リフトアーム14・14及びリフティングロッド15・15にて吊持している。
該リフトアーム14・14は、図4の如く、トラクターTR内の昇降用電磁バルブV1(上昇(収縮)用電磁バルブV1U・下降(伸長)用電磁バルブV1D)の作動による油圧のリフトシリンダーLCの伸縮駆動にて上下回動駆動され、これにより3点リンク3Pが上下して、ロータリーRを昇降させる。
また、図3の如く、左右リフティングロッド15・15の片方(本実施例では右リフティングロッド15)に水平制御シリンダーSCが介設されていて、図5の如く、トラクターTR内の水平制御用電磁バルブV2(右上げ(収縮)用電磁バルブV2U・右下げ(伸長)用電磁バルブV2D)の作動による該水平制御シリンダーSCの伸縮駆動にて、該シリンダーSCを介設するリフティングロッド15の長さを変更し、これによって対地作業装置の左右傾斜を是正するのである。
【0016】
トラクターTR内の各種の操作器具や制御装置について説明する。
ボンネット内にディーゼルエンジンEが搭載されていて、トラクターTRの走行駆動、及びPTO軸を介して対地作業装置であるロータリーRの駆動に用いられる。該エンジンEの回転数を設定するアクセルレバー2がハンドル付近に突設されており、エンジンEの回転数をアクセルレバー2で設定した回転数にて一定に保持できるようにガバナ(電子ガバナ)1が配設されている。
ガバナ1の構造を簡単に図6及び図7より説明すると、エンジンEの回転数は、アクセルレバー2にて燃料噴射量が設定されることに基づく(設定値は、アクセルレバー2基端部のアクセルセンサー2a入力値(AS)である。)。一方、ガバナ1において、図7の如く、実際のエンジン回転数を検出する回転数センサー1aが設けられており、この差をエンジン負荷として読み取って、図6の如く、ラックアクチュエーター1bが摺動し、ラック位置センサー1cがラック位置を読み取って、これに基づき、燃料噴射量が、エンジン回転数の低下を補うべく増加される。ラックが基の位置に戻れば燃料噴射量は初期のアクセルにて設定した量に戻り、これを繰り返して、エンジン回転数を、アクセルにて設定した回転数に保持するのである。
【0017】
次に、前記の3点リンクの昇降駆動制御について、図1の各装置及びセンサー配置図、及び図2のブロック図より説明する。
3点リンク駆動用の昇降用電磁バルブV1の出力信号は、対地作業装置制御コントローラCより発せられるものである。該対地作業装置制御コントローラCの入力手段のうち、まず、ロータリーRを装着する3点リンクのリフト角度(高さ)を検出するリフト角センサー8があり、また、ロータリーRにおいては、該ロータリーRのリアカバーの前後回動角度を検出して、ロータリーRの実際の耕深を検出する耕深センサーと、左右の傾斜角度を検出する傾斜センサーを併せ持つリアカバーセンサー9がある。
【0018】
3点リンクの昇降制御として、まず、手動操作においては、ポジションレバー7がある。
このポジションレバー7は、ロータリーRの高さを設定するものであり、該ポジションレバー7の操作角度を入力するポジションセンサー7aの入力値を基にバルブ制御してリンク昇降を行い、リフト角センサー8の入力値と比較して、一致したら、目的のリフト高さになったとして、昇降用電磁バルブV1をOFFするのである。
更に、ワンタッチ昇降スイッチ3が設けてあり、このスイッチを上昇設定すると、上昇最大位置まで自動的に対地作業装置が一気に上昇し、下降設定すると、下降最大位置まで自動的に対地作業装置が一気に下降するのである。
【0019】
このような、昇降制御構造を持つトラクターTRにおいて、ロータリーRを土壌内にセットし、作業状態とした場合、このロータリーRを一定状態に保持する制御機構として、二つの制御機構がある。
即ち、対地作業装置の耕深を一定に保持する耕深制御機構と、対地作業装置の牽引抵抗を一定に保持する負荷制御機構である。様々な圃場条件や作業条件によって、どちらの制御機能を発揮させる方が有効かについて説明すると、例えば、水田の「荒起し」では、土壌深く耕耘し、耕深を一定にするよりはむしろ作業速度を要求されるので、耕深制御よりも負荷制御が有効である。
水田の「荒代」作りにおいては両制御を半々程度で発揮するとよい。そして、「代掻き」は、圃場表面を凹凸のない状態に保持する作業であり、負荷制御の要素は殆どなく、耕深制御のみか、一部耕深制御の要素を採り入れれば足りる。このように、各種の圃場条件及び作業条件に適合して有効な対地作業を施すには、耕深制御と負荷制御の混合制御で、両制御の出力比を自由に設定可能とすればよい。
【0020】
そこで、図1、図2、図8乃至図12の如く、負荷制御のみのP1・耕深制御のみのP2・負荷制御及び耕深制御の混合制御のP3の3段切換式の制御切換スイッチ5を設けている。
ここで、負荷制御用のリアカバーセンサー検出値(RCF)、及び耕深制御用のリアカバーセンサー検出値(RCR)について、P1設定時には前者検出値(RCF)のみを、P2設定時には後者検出値(RCR)のみを検出信号として入力するのである。
そして、P3設定時には、耕深制御用検出値(RCR)の全体混合検出値に対する比率をKK(RCR:RCF=KK:1−KK)とし、両検出値の混合検出信号(RCR×KK+RCF×(1−KK))を入力する(0<KK<1)。この混合比KKは変更可能としてもよい。
【0021】
このように耕深制御と負荷制御を切り換え、或いは混合制御できる状態において、図1、図2図示の負荷/耕深設定器4にて耕深、または負荷率を、例えば「浅耕」「中耕」「深耕」の3段階等に設定可能となっている。図13は、耕深・負荷両制御において、負荷/耕深設定器4の設定値Sとリアカバーセンサー9の検出値との比較における昇降駆動機構制御用の昇降用電磁バルブV1の駆動制御について開示している。
この設定値Sは、まず、前記制御切換スイッチ5にて、耕深制御(P2またはP3)に設定した場合には、ロータリーRのリアカバーの高さを示すものとなっており、この設定値Sとリアカバーセンサー9の検出信号RSRとの差異を基に、昇降用電磁バルブV1を制御して、昇降駆動機構(3点リンク)の昇降制御を行う。
一方、負荷制御(P1またはP3)に設定した場合においては、負荷/耕深設定器4における設定値Sは、エンジン負荷率RSFである。
該エンジン負荷率RSFは、エンジン負荷率RSF=(アクセル設定エンジン回転数−実際エンジン回転数)/アクセル設定エンジン回転数)で決定される。
この値を一定に保持すべく、負荷率が上昇した(エンジン回転数が下がった)ことを検出すれば、3点リンク3Pを上昇させ、エンジン負荷を下げてエンジン回転数を復帰させるのである。
【0022】
次に、負荷制御について説明する。
負荷率の検出は、前記ガバナ1におけるエンジン回転数検出センサー1aを用いる。
ここで、3点リンクの昇降作動は、図8のフローチャート中の制御切換スイッチ5をP1またはP3に設定した場合に示されるように、一定時間である検出時間Tの間、エンジン回転数の低下・増加が持続されていれば昇降起動するように制御されており、この検出時間Tは、設定負荷率Sが軽い(浅耕)ほど長く、重い(深耕)ほど短くなるように設定されている。
つまり、軽負荷の場合には、浅耕状態であるので、不必要に3点リンクが昇降することで却って圃場表面に凹凸がつき、また、少々の負荷率低下でもエンストの不安が軽いので、この場合には、検出時間Tを長く取ることで、ある程度長時間エンジン回転数の低下が続くほどの負荷増加でなければリフト上昇しないようにしている。
一方、重負荷の場合には、深耕状態で、そのままでもエンジン負荷が重い状態で、少しでも負荷が増加すれば、即座にリフト上昇するようにしなければ、エンジン負荷の低減が電子ガバナ制御では間に合わず、エンストしてしまうので、この場合には、検出時間Tを短くして、少しの時間でもエンジン回転数の低下が認められた時に、即座にリフト上昇させる。
このように、負荷率の設定値によって、エンジン回転数の検出時間を変更することにより、重負荷状態ではエンストが防止でき、軽負荷状態ではハンチングが防止できるのである。
【0023】
なお、このように負荷/耕深設定器4による負荷率設定を基に、エンジン回転数の検出時間を変更する以外に、負荷率とは関係なく、単にアクセルレバー2の操作によるエンジン回転数の設定値(アクセルセンサーの設定値AS)が高い場合に検出時間Tを長く(低い場合に短く)する方法(図9図示)、或いは、実際の負荷率検出値の検出(ガバナ1における負荷率検出値RCS)を基にする方法(図10図示)がある。
いずれにせよ、重負荷時にはエンジン回転数検出時間Tを短くし、リフト上昇を敏感にしてエンストを防止し、軽負荷時には該検出時間Tを長くし、リフト上昇を鈍感にしてハンチングを防止するものである。
【0024】
また、このエンジン回転数の検出時間TをPTO軸の回転数に対応させる実施例について、図11のフローチャートより説明する。
従来のPTO軸は比較的低速回転で、負荷制御も充分に対応可能で、安定した対地作業が得られた。しかし、最近では、対地作業装置に高速駆動力を求めるようになり、PTO軸も高速回転段が設定されて、この場合には、ちょっとした負荷変動にもエンジン回転数が敏感に変化し、対地作業装置の駆動力が変動するので、ハンチング状態となってしまう。
そこで、PTO軸回転(図2中に示す、PTO変速位置センサー10の検出値PSn )が高速段に設定されている場合には、前記のエンジン回転数の検出時間Tを長くして、リフト上昇が敏速に対応するようにし、不必要な負荷制御によりエンジン回転数に変動が起きないようにしている。
一方、PTO軸回転が低速段の場合には、できるだけ負荷制御を敏感にするように、該検出時間Tを短くする。こうしてPTO軸を高速回転時でも一定回転数に制御できるようにすることで、対地作業装置の高速駆動による安定作業ができるようになる。なお、対地作業には、PTO軸を使用しないこともある(プラウ耕等)が、この場合にはエンジン回転数の検出時間が不定となるので、PTO軸の中立時における一定のエンジン回転数検出時間も設定しておく。
【0025】
次に、負荷制御におけるアクセル操作に伴うエンスト防止構造について説明する。
従来、負荷/耕深設定器4によるエンジン負荷率の設定は、アクセルレバー2によるエンジン回転数設定とは無関係、即ち、どんなにアクセルレバー2で低速に設定していても、エンジン負荷率をそれに対応して軽くしたりするようにはできていないので、低速にするとエンストしてしまう虞が多々あった。
そこで、アクセルレバー2の回動量を入力するアクセルセンサー2aの設定値(AS)が高速回転を示している時は、当該設定値が低速回転を示している時よりも、許容最低エンジン回転数(負荷がかかった場合の最低回転数)(OAS)と該アクセル設定値(AS)の差(SR)が大きくなるべく、該許容最低エンジン回転数を設定する。
即ち、負荷率設定の最小値と最大値との間で、該許容最低エンジン回転数(OAS)が、アクセルセンサー設定値(AS)の一定割合(K)で設定されているが、この定数比(K)を、図12の如く、アクセルセンサー値(AS)によって補正、つまり、アクセルセンサー値(AS)が小さいほど最低許容回転数(OAS)との差(SR)を小さくして、エンジン回転数の低い場合に、最低許容回転数を相対的に高くしているので、エンストが防げるのである。
【0026】
以上のような負荷制御構造においての対地作業装置の昇降幅の設定について図14乃至図18より説明する。
対地作業装置は、負荷率の増加が認められた時に即座に一定量上昇させ、また、負荷率が低下した場合には、牽引抵抗が少なく、作業量が不足することが考えられる(例えば、粉砕する土塊が粗くなる等)から、即座に一定量下降して、負荷率を復帰させる。
ここで、この昇降幅については、前記の対地作業装置制御コントローラーCにおける、図1及び図2図示の感度調節ダイヤル6にて調節可能である。これは、目的の負荷率を得る対地作業装置(実施例ではロータリーR)の高さからの昇降幅を調節するものであって、大きく取れば、負荷制御のための対地作業装置は大きく上昇または下降し、小さく取れば、小幅で昇降する。この感度調節ダイヤル6で、例えば、小幅では負荷率(エンジン回転数)が復帰するに至らない場合には、少し昇降幅を増加させるという調節操作が可能である。
【0027】
目的のエンジン負荷率、即ち、目的の牽引抵抗を得る対地作業装置の高さ設定について、図14及び図15より説明する。
まず、制御切換スイッチ5にて負荷制御に設定した後、負荷/耕深設定器4にて目的の負荷率を設定する(「深耕」「中耕」「浅耕」)と、3点リンク3Pが下降して、作業状態、即ちPTO軸伝動したロータリーRを土壌内に挿入し、土壌作業によって得る負荷率(F)をガバナ1において検出し、設定負荷率(FS)と比較する。検出負荷率(F)が設定負荷率(FS)に満たない時、更にロータリーRを下降させて、検出負荷率(F)が設定負荷率(FS)に一致した時に、その位置にてロータリーRを停止させ、この時におけるリフト角センサー検出値(LS)を基準高さと設定して、一定の昇降幅αを設定する(最大上昇角LSU=LS−α・最大下降角LSD=LS+α)。
更には、図16の如く、この昇降幅αを、感度調節ダイヤル6にて調節設定する。
なお、目的負荷率を得る高さまでに対地作業装置を下降させる作業は、自動制御にて下降停止するようにしてもよく、また、作業者が、設定負荷率と検出負荷率の表示を見比べて対地作業装置を下降するという手動操作でもよい。この場合には、検出負荷率が設定負荷率に一致した時点でブザー等の警報が発令されるようにすれば一層よい。
【0028】
ところで、負荷制御における対地作業装置の昇降幅は、上昇方向には大きく取っても負荷率の低下する方向(エンジン回転数を復元させる方向)であるから問題はないが、下降方向は、負荷率増大側であるから、あまり大きく下降幅を取ると、負荷率の急激な増大により、エンストを起こす危険がある。
そこで、図17のように、負荷率の増大側(リフト下降側)には、対地作業装置の昇降幅αを縮小補正して、規制昇降幅KD(=α/k,kは2〜5程度)とするか、図18のように、全く取らない(KD=0)ようにし、負荷制御による対地作業装置の負荷率増大側に昇降(特に下降)しないようにする方法が考えられる。
また、負荷増大側に昇降幅KDを設けるか、或いは全く設けないかを、図18に示す如く、深耕許可スイッチ11によって選択可能としており、スイッチON時には、深耕側への昇降OKで、昇降幅KD内で昇降制御がなされ、スイッチOFF時には、深耕側への昇降は全く行われない。
【0029】
次に、負荷率設定に対応する左右水平制御構造について、図19乃至図26より説明する。従来、代掻き等でハンチングを起こさないように、左右水平制御系の反応速度、即ち、前記の水平制御シリンダーSCの反応速度は、一律に遅く設定していたが、これでは、重負荷の深耕状態では反応が遅れ、左右傾斜が是正されないので、負荷率の大きい深耕状態では反応を速く、負荷率の小さい深耕状態では遅くなるようにする。
即ち、図2に示す如く、ガバナ1における負荷率検出値を耕深・水平制御用コントローラーCに入力して、これに対応して水平制御シリンダーを伸縮駆動する電磁バルブ制御の反応速度を設定し、対地作業装置の水平制御を行うのである。
【0030】
この反応速度を増減する方法として、まず、図23の方法を説明する。
これは、ロータリーRの前記リアカバーセンサー9における左右傾斜角度を検出する傾斜センサーの入力値に対する反応周波数を増減する方法である。
即ち、図22の如く、深耕・水平制御用コントローラーにおいて、折点周波数が異なる、3個のローパスフィルター16L・16M・16Hが設けられていて、ガバナ1にて検出されるエンジン負荷率の検出値に対応して、一個のローパスフィルター16が選択される(図23)。
例えば、エンジン負荷率が30%以下と低い場合、即ち、浅耕状態の場合には、折点周波数0.5Hzのローパスフィルター16Lが、傾斜センサーの入力信号の入力用に用いられ、エンジン負荷率が70%より高い場合、即ち深耕状態では、折点周波数3.0Hzのローパスフィルター16Hが用いられる(具体的には、図22図示の、各ローパスフィルターを連結する入力端子A/D(1)・A/D(2)・A/D(3)の中から一つを選択する。)。
図19にて示すエンジン負荷率に対応する(周波数)応答速度とは、このように選択されるローパスフィルターの折点周波数を示す。折点周波数が高いほど、ローパスフィルターを通過できる入力信号は多くなるので、電磁バルブV2作動に必要な入力電量が早く得られ、従って、水平制御シリンダーSCの反応速度が速くなるのである。
【0031】
もう一つの方法は、図24図示の、不感帯幅を変更する方法である。
不感帯は、水平状態からある程度の小幅な左右傾斜は、水平制御によって却ってハンチング等の弊害があることから、この範囲にて対地作業装置が傾斜しても水平制御用の電磁バルブV2が作動しない範囲を設定したものであって、これを、ガバナ1における負荷率信号(F)に対応して、例えば図20、図24の如く3段階に変更する。即ち負荷率が30%以下の浅耕状態の時には、ハンチング防止により不感帯を±1.0°と大きく取り、この傾斜範囲では水平制御が行われないようにし、負荷率が70%よりも大きい深耕状態では、水平制御の反応を敏感にするために、不感帯を±0.4°と小さく取っているのである。
【0032】
以上の応答周波数の変更による方法、或いは不感帯の変更による方法は、図25のように、いずれかを選択可能としてもよい。
更には、図26に示すように、負荷率検出値に対応して、応答周波数と不感帯の両方を変更可能としてもよい。また、前記では、どちらの方法も3段階の応答速度としているが、この中で、応答周波数を変更する方法においては、折点周波数を一つのローパスフィルターにおいてフレキシブルに変更可能として、負荷率の検出値に基づいて比例的に折点周波数を変位させ、或いは不感帯の変更による方法においては、不感帯幅を負荷率検出値に基づいて比例的に変位可能にして、図21のグラフのように、負荷率の増大に比例して応答速度を増大させるように構成してもよい。
なお、ローパスフィルターの折点周波数を変更可能とした構成において、図2に図示する如く、負荷率の表示器17における表示を基に、折点周波数変更用の感度設定器18にて折点周波数を手動にて変更する方法もある。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、次のような効果を奏する。
請求項1の如く構成したので、牽引抵抗を一定に保持するための負荷制御構造において、牽引抵抗が重負荷の状態(深耕状態)においては、対地作業装置が敏感に反応して昇降制御されて、負荷率を速やかに復帰するので、エンストを起こす心配がない。
一方、牽引抵抗が軽負荷の状態(浅耕状態)においては、対地作業装置の昇降制御反応が鈍くなり、過度に昇降することにより生じるハンチング現象を解消する。このように、対地作業装置の牽引抵抗を一定に保持する負荷制御が良好に行われる車輌を構成することができる。
【0034】
また、同じく牽引抵抗を保持するための負荷制御機能付車輌において、請求項2の如く、負荷制御用の対地作業装置の昇降幅の許容幅を、負荷率の増大側は狭く、または無くしたので、負荷率増大側には対地作業装置が殆ど、或いは全く昇降せず、不意の負荷率増大によるエンストという事態を解消でき、安全な負荷制御機能付車輌を構成することができる。
【0035】
また、請求項3の如く、左右水平制御系の応答速度を、負荷率の高い場合には速くしたので、牽引抵抗の重負荷である深耕状態でも、水平制御が遅れることなく、速やかに反応し、左右傾斜を残すことなく対地作業を仕上げることができ、一方、牽引抵抗の軽負荷の浅耕状態では、水平制御の反応が鈍くなり、余分な制御による対地作業装置の振れがなくなって、ハンチングが生じなくなる。このように、牽引抵抗の設定の違いに対応して、良好に対地作業装置を水平制御できる車輌を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】対地作業装置であるロータリーRを牽引するトラクターTRの制御装置の配置を示す側面図である。
【図2】対地制御装置の昇降制御及び水平制御機構のブロック図である。
【図3】トラクターTRにおける昇降駆動機構(3点リンク)の後方斜視図である。
【図4】昇降用電磁バルブの油圧配管図である。
【図5】水平制御用電磁バルブの油圧配管図である。
【図6】ガバナ1の内部断面図である。
【図7】同じく側面図である。
【図8】耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、負荷制御において、エンジン回転数検出時間を負荷率設定によって変更させる実施例を開示した図である。
【図9】耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、負荷制御において、エンジン回転数検出時間をアクセル設定値によって変更させる実施例を開示した図である。
【図10】耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、負荷制御において、エンジン回転数検出時間を負荷率検出によって変更させる実施例を示す図である。
【図11】耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、負荷制御において、エンジン回転数検出時間をPTO変速段によって変更させる実施例を示す図である。
【図12】耕深制御、負荷制御、或いはその混合制御における入力信号の選択過程を示すフローチャートであって、図10の実施例において、エンジンの設定回転数と最低許容回転数との差を負荷率検出値によって変更させる実施例を示す図である。
【図13】図8乃至図12のフローチャートに共通に続くフローチャートであって、耕深制御又は負荷制御における対地作業装置の昇降制御を示す図である。
【図14】負荷制御において、基準のリフト角を設定する過程を示すフローチャート図である。
【図15】図14に続くフローチャートであって、基準リフト角前後にリフト昇降幅αを設けた場合の図である。
【図16】図14に続くフローチャートであって、該リフト昇降幅αを感度調節ダイヤルにて調節可能とした場合の図である。
【図17】図14に続くフローチャートであって、負荷率増大側のリフト昇降幅を縮小補正した場合の図である。
【図18】図14に続くフローチャートであって、図17の実施例で、負荷率増大側のリフト昇降を不可能とするようにも設定可能とした場合の図である。
【図19】エンジン負荷率に対応して変更させる水平制御系の周波数応答速度を表示した図である。
【図20】エンジン負荷率に対応して変更させる水平制御系の不感帯幅を表示した図である。
【図21】エンジン負荷率に比例して水平制御系の応答速度を増大させる場合の相関グラフ図である。
【図22】傾斜センサー入力用ローパスフィルターの配線図である。
【図23】水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数を変更する場合のフローチャート図である。
【図24】水平制御において、エンジン負荷率に対応して不感帯幅を変更する場合のフローチャート図である。
【図25】水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数を変更させるか、不感帯を変更させるかを選択可能とした場合のフローチャート図である。
【図26】水平制御において、エンジン負荷率に対応して応答周波数及び不感帯の両方を変更する場合のフローチャート図である。
【符号の説明】
TR トラクター
R ロータリー
C 対地作業装置制御用コントローラ
LC リフトシリンダー
SC 水平制御シリンダー
1 ガバナ
1a 回転数検出センサー
1b ラックアクチュエーター
1c ラック位置センサー
2 アクセルレバー
2a アクセルセンサー
3 ワンタッチ昇降スイッチ
4 負荷/耕深設定器
5 制御切換スイッチ
6 感度調節ダイヤル
7 ポジションレバー
7a ポジションセンサー
8 リフト角センサー
9 リアカバーセンサー
10 PTO変速位置センサー
11 深耕許可スイッチ
Claims (3)
- エンジン負荷率の変化に対応して対地作業装置を昇降制御して、対地作業装置の牽引抵抗を一定に保持するよう構成した対地作業装置の対負荷制御構造において、
牽引抵抗を重負荷に設定した時は、エンジン負荷率を演算する為の実際エンジン回転数の検出時間を短くし、
軽負荷に設定した時は、該検出時間を長くしたことを特徴とする対地作業装置の対負荷制御構造。 - 請求項1記載の対地作業装置の対負荷制御構造において、
作業状態の対地作業装置を土壌内に下降させ、エンジン負荷率における検出負荷率(F)が設定負荷率(FS)に一致した位置にてロータリーRを停止させ、このリフト角センサー検出値(LS)を基準高さと設定し、該基準高さにおける対地作業装置の一定の昇降幅αを設定し、
該昇降幅αを、エンジン負荷率の増大する側において狭く、或いは無くしたことを特徴とする対地作業装置の対負荷制御構造。 - 請求項1記載の対地作業装置の対負荷制御構造において、
牽引する対地作業装置の左右傾斜を検出し、該対地作業装置を水平制御するよう構成し、
前記エンジン負荷率が重負荷を示す時は、前記水平制御系の応答速度を上げ、軽負荷を示す時は該応答速度を下げたことを特徴とする対地作業装置の対負荷制御構造。
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