本発明の実施の形態について以下図面と共に説明する。なお、本明細書では車両の前進方向に向かって左右をそれぞれ左、右といい、前後をそれぞれ前、後ということにする。ここで、本明細書において左右の走行車軸とは、作業車両の進行方向を向いて左右方向の走行車軸をいう。そして、本発明の実施の形態によれば、作業車両の一例であるトラクタに作業機の一例としてロータリ耕耘装置を連結した場合を例として以下に説明する。
図1(a)には本発明の実施形態のトラクタの左側面図を示し、図1(b)には、ミッションケースと前輪、後輪の関係を示した簡略平面図を示す。図2(a)には、図1のトラクタのステアリングハンドル右側付近の要部斜視図を示し、図2(b)には、ロータリ耕耘装置の昇降用レバーの操作状態とロータリ耕耘装置の作動を説明するための制御ブロック図を示す。更に、図3(a)には、昇降用レバーではなく昇降用スイッチとした場合の操縦席の右側のアームレスト付近の要部斜視図を示し、図3(b)には、ロータリ耕耘装置の昇降用スイッチの操作状態とロータリ耕耘装置の作動を説明するための制御ブロック図を示す。
乗用四輪駆動の走行形態を有するトラクタ車体Tは、ステアリングハンドル73で前輪61を操向しながら走行運転する。車体Tの後部にはロータリ耕耘装置84等の作業機を3点リンク機構により昇降可能に装着して対地作業を行うことができる。この車体Tは、前端部にフロントアクスルハウジング72に支架させるエンジンブラケットを介してエンジン62を搭載し、このエンジン62の後側にクラッチハウジングや、ミッションケース65等を一体的に連結し、このミッションケース65の最後部にリヤアクスルハウジング75を設けて、左右両側部に後輪63を軸装する。
エンジン62からの動力はミッションケース65内の変速装置により変速して前輪61及び後輪63に伝達されて走行する。なお、エンジン62からの動力伝達機構については後で詳しく説明する。また、トラクタ車体Tの後方にはステアリングハンドル73周辺にロータリ耕耘装置84の昇降用レバー130やアクセルレバー116、レバー118(ウインカーとライト用のレバー)などの各種レバーや駐車ブレーキ警告灯123、自動変速表示灯124やトラクタのエンジン回転計125などの計器類等が設けられている。
そして、本実施形態のトラクタの昇降用レバー130は、当該昇降用レバー130一本で、すなわちワンタッチで昇降操作側、下降操作側ともに2段階(2クリック感がある)に操作可能であり、第1段階目の操作ではロータリ耕耘装置84の動力の入り又は切りができる構成であることを特徴としている。そして、図2に示す例では、昇降用レバー130の上昇操作側の第1段階目の操作ではロータリ耕耘装置84の動力の切りができ、下降操作側の第1段階目の操作ではロータリ耕耘装置84の動力の入りができる構成である。
本構成を採用することにより、一本の昇降用レバー130を操作することで、すなわちワンタッチで昇降のみならずロータリ耕耘装置84などの作業機の動力の操作ができ、操作スペースを増やすことがない。したがって、煩雑な操作がなくなり、作業機の操作性が良好になり、作業効率が上がる。そして、昇降用レバー130がステアリングハンドル73の近傍にあると、右手(もしくは左手)でステアリングハンドル73を操作しながら昇降用レバー130の操作が可能であり操作性に優れる。
また、図2(b)に示すように、昇降用レバー130を中立位置から第1段階目に上げると、当該電気信号がコントローラ100に送信されて、コントローラ100はPTOカウンタ軸9(図4)上のPTOクラッチパック66を切りにしてPTO軸14の回転は停止する。したがって、ロータリ耕耘装置84の動力が切り状態となり、ロータリ耕耘装置84は停止状態となる。なお、昇降用レバー130が中立位置にある状態ではロータリ耕耘装置84は停止しており、昇降用レバー130を中立位置から第1段階目に上げた場合も、そのまま停止状態を保つことになる。
そして、更に昇降用レバー130を第2段階目に上げると、コントローラ100に当該電気信号が送信されて、コントローラ100は上昇ソレノイド136を作動させてロータリ耕耘装置84は上昇する。更に、昇降用レバー130を中立位置に戻した後に第1段階目に下げると、コントローラ100はPTOクラッチパック66を入りにしてPTO軸14を回転駆動する。したがって、ロータリ耕耘装置84の動力が入り状態となり、ロータリ耕耘装置84は作動する。更に昇降用レバー130を第2段階目に下げると、同様にコントローラ100により下降ソレノイド137が作動してロータリ耕耘装置84が下降する。
更に、図1のトラクタには、ロータリ耕耘装置84の昇降位置をコントロールするためのポジションコントロールレバー190とロータリ耕耘装置84の昇降位置を感知するリフトアームセンサ134を設けている。リフトアームセンサ134からは、センサー信号が常時ロータリ耕耘装置84のコントローラ100に送信されており、ロータリ耕耘装置84の位置を把握することができる。そして、ポジションコントロールレバー190を操作すると、当該電気信号がコントローラ100に送信されて、コントローラ100はリフトアームセンサ134からのセンサー信号に基づいてロータリ耕耘装置84の位置がポジションコントロールレバー190の操作通りになるように、上昇ソレノイド136や下降ソレノイド137を作動させてロータリ耕耘装置84の位置がコントロールできる。
このように、昇降用レバー130を上昇操作側の第1段階目まで操作するとロータリ耕耘装置84の動力が切れ、下降操作側の第1段階目まで操作するとロータリ耕耘装置84の動力が入りになるようにすれば、昇降用レバー130を上昇操作側の第2段階目まで操作してロータリ耕耘装置84を上昇させた後、昇降用レバー130を下降操作すれば該下降操作に連動してロータリ耕耘装置84の動力を入りにすることができ、昇降用レバー130で昇降操作と動力の入り切りの種々の使い方が可能になる。
そして、ロータリ耕耘装置84を上昇させる前にPTOカウンタ軸9の回転を停止できるため、ロータリ耕耘装置84が土中にもぐったままの停止操作が可能となり、ロータリ耕耘後の穴を塞ぐ操作(穴は自然に塞がれる)もできる。なお、PTOカウンタ軸9の回転を停止せずにロータリ耕耘装置84を上昇させた場合はロータリ耕耘後の穴(凹部)が生じてしまうが、本構成により、このような不都合を防止できる。また、緊急で停止したい場合の操作が、昇降用レバー130を上昇操作側の第1段階目まで操作するだけで簡単にできる。
更に、PTOカウンタ軸9の回転を停止させてロータリ耕耘装置84の動力を切る操作(上昇操作側の第1段階目への操作)が、ロータリ耕耘装置84の上昇操作位置(上昇操作側の第2段階目への操作)よりも早いタイミングでできるので、操作性に優れる。例えば、ロータリ耕耘装置84を下げた状態でPTOカウンタ軸9の回転を停止させるためには、ステアリングハンドル73から手を離してPTO入り切りスイッチ187(図3)を操作しなければならないが、その手間を省くことができる。
また、昇降用レバー130を第1段階目に下げるとロータリ耕耘装置84の動力が入り、更に昇降用レバー130を第2段階目に下げるとロータリ耕耘装置84が下降する構成とする。このようにPTOカウンタ軸9を回転させてロータリ耕耘装置84の動力を入りにする操作を下降操作側の第1段階目に配置し、ロータリ耕耘装置84が下降する操作を下降操作側の第2段階目に配置すると、ロータリ耕耘装置84が下降したときにはすでにロータリ耕耘装置84は作動していることになる。したがって、ロータリ耕耘装置84が土中に入る前にロータリ耕耘装置84を回転させる事ができるため、一旦下降させてから作動させる場合に比べてすぐに耕耘作業が行えるので、操作性が良く、作業性に優れる。
また、図3には、昇降用レバー130ではなく、昇降用スイッチ191とした場合の例を示している。昇降用スイッチ191は操縦席16の右側のアームレスト30に設けると、右手をアームレスト30に置いている場合にスイッチ操作が可能となり、操作性に優れる。図3に示すように、昇降用スイッチ191はシーソー式の2段階スイッチであり、中立位置から後側(上昇操作側)を第1段階目まで押すと、図2の場合と同様にコントローラ100はPTOカウンタ軸9(図4)上のPTOクラッチパック66を切りにしてPTO軸14の回転は停止する。
したがって、ロータリ耕耘装置84の動力が切り状態となり、ロータリ耕耘装置84は停止状態となる。更に昇降用スイッチ191を第2段階目まで押すと、上述のようにコントローラ100により上昇ソレノイド136が作動してロータリ耕耘装置84は上昇する。
そして、昇降用スイッチ191を中立位置に戻して前側(下降操作側)を第1段階目まで押すと、コントローラ100はPTOクラッチパック66を入りにしてPTO軸14を回転駆動する。
したがって、ロータリ耕耘装置84の動力が入り状態となり、ロータリ耕耘装置84は作動する。更に昇降用スイッチ191を第2段階目まで押すと、上述のようにコントローラ100により下降ソレノイド137が作動してロータリ耕耘装置84が下降する。
こうして、昇降用レバー130の場合と同様の効果を奏することができる。また、昇降用スイッチ191が操縦席16の近傍にあるため、操縦席16で作業車両の操縦をしながら昇降用スイッチ191の操作もでき、操作性に優れる。
図4には本実施形態の昇降用レバー130又は昇降用スイッチ191を設けたトラクタの動力伝動系統図を示す。
エンジン62は後側に突出のエンジン軸1を有し、このエンジン軸1をクラッチハウジング部の入力軸2に連結する。ミッションケース65内の伝動機構を介して後端部の出力軸3及びPTO軸14を連動すると共に、ミッションケース65の下部に設けた前輪出力軸5を連動する構成としている。この出力軸3はミッションケース65内の後部の略中央部において前後方向に沿うように軸受されて後端にドライブピニオンギヤ53を有し、リヤデフ45のデフリングギヤ46に噛合し、リヤアクスルハウジング75(図1(b))に沿って軸装されたリヤデフ軸10と後輪軸11を遊星減速機構を介して連動する。また、前輪出力軸5はミッションケース65の下部からエンジン62の下部を経て、フロントアクスルハウジング72(図1(b))の中央部に設けられるフロントデフ47の入力軸26に連結され、このフロントアクスルハウジング72に沿って軸装されるフロントデフ軸12及び遊星減速機構等を介して前輪軸13へ連動する構成としている。なお、入力軸2から油圧ポンプ80(図5)への動力取り出し用のギヤ駆動軸15,17が入力軸2に並列配置されている。
図4に示すトランスミッションの噛合式変速装置は、エンジン軸1によって駆動される入力軸2から入力ギヤ31に連動されるPTO変速カウンタギヤ44を有するPTOカウンタ軸9上にPTOクラッチパック66を設けている。PTOクラッチパック66や入力ギヤ31などからなるPTOの動力伝達部の構成をPTOクラッチEということにする。
また入力軸2には前後進切替用の前後進切替ギア42、42が遊転状態に設けられ、一方の後進側の前後進切替ギア42には入力軸2と並列配置されたバックカウンタ軸8に設けられたバックカウンタギア43が噛合し、他方の前進側の前後進切替ギア42には主変速軸19上に固定した入力ギヤ48と該主変速軸19上に遊転自在に設けた有効径の異なる4つの主変速ギヤ33を設ける。これら4つの主変速ギヤ33は、四段変速に構成され、クラッチパック76によって切替シフトされ、4つの主変速ギヤ33から構成される変速装置を主変速油圧クラッチAということにする。
前記主変速軸19上には、前記主変速油圧クラッチAの4つの主変速ギヤ33のうち、最も有効径の小さい主変速ギヤ33(第1速用)と3番目に有効径の小さい主変速ギヤ33(第3速用)との間にクラッチパック76を固定して設け、2番目に有効径の小さい主変速ギヤ33(第2速用)と最も有効径の大きい主変速ギヤ33(第4速用)との間にクラッチパック76を固定して設ける。前記2つのクラッチパック76には、各主変速ギヤ33を主変速軸19と一体回転するように連結する摩擦クラッチが各々設けられている。
また、前後進切替ギヤ42の前進側のギヤと噛合可能な入力ギヤ48は、前後進切替ギヤ42の後進側のギヤともバックカウンタ軸8上のバックカウンタギヤ43と噛合っており、該前後進切替ギヤ42のうちの前進側のギヤ42と後進側のギヤ42とを、前後独立した摩擦クラッチから成る2つの前後進切替クラッチパック60の切替によって択一的に入力軸2と一体化して、前進走行と後進走行とに切替えられる構成である。後述する油圧シリンダ85(図5)を含めこれらギヤ42とクラッチパック60などからなる構成を前後進油圧クラッチDということにする。
また、前後進油圧クラッチDの切替を手動で行う前後進切替レバー115(図1)をステアリングハンドル73のポスト部分に設け、クラッチぺダル119(図1)はハンドルポストの足下に設けている。
主変速軸19と同軸芯位置に設けられた副変速軸20にはクラッチパック76によって切替シフトされる有効径の異なる2つの高低速切替ギヤ34が設けられており、主変速後の駆動力を更に減速して高速と低速とに切り替えることができる。この高速と低速とに切り替え可能なギア構成をハイ・ロー変速クラッチBということにする。
さらに副変速軸20と同軸上には有効径の異なる3つの副変速ギヤ35を有する出力軸3が配置されている。出力軸3は副変速ギヤ35により三段変速する構成としている。この三段変速可能なギヤ35の構成を副変速ギア伝動機構Cということにする。
また、副変速ギヤ35に噛合するクリープカウンタギヤ49を備えたクリープカウンタ軸21が出力軸3に並列位置に設けられている。また主変速ギヤ33や高低速切替ギヤ34等と噛合する主変速カウンタギヤ39と高低速切替ギヤ40を有する走行カウンタ軸6が主変速軸19や副変速軸20と並列位置に配置されており、主変速軸19から伝動される回転が主変速ギヤ33で変速されて、その回転が主変速カウンタギヤ39と高低速切替ギア40を順次経由して副変速軸20に設けられた高低速切替ギヤ34に伝達される。高低速切替ギヤ34に伝達された動力はクラッチパック76を介して副変速軸20上に設けた副変速ギヤ35による変速機構を介して出力軸3に伝達される。
この走行動力伝達系では、PTO正逆切替ギヤ37機構を備えたPTO連動軸4を回転する伝動形態である正逆転PTOを設けている。
また、前記副変速ギヤ35と噛み合う副変速カウンタギヤ38の副変速カウンタ軸27を回転自在に支持すると共に、出力軸3から前輪取出ギヤ36を介して連動される前輪連動ギヤ51を有する前輪連動軸28を設け、この前輪連動軸28の前方延長軸芯上にはPTO減速ギヤ50を有するPTO減速軸23を設けている。さらに、前輪連動軸28の並行位置にPTO連動軸4を設け、該PTO連動軸4と同軸芯上前端部にPTO連動軸4を正転と逆転に切替えるPTO正逆切替ギヤ37のPTO正逆切替軸22と、PTO変速ギヤ32のPTO変速軸18を配置している。
また、PTO正逆切替ギヤ37と噛合するPTO逆回転カウンタギヤ52を有するPTO逆回転カウンタ軸24が前記PTO正逆切替軸22の側部に設けられ、PTOクラッチパック66の入りによって、入力軸2からPTO変速ギヤ32、PTO変速カウンタギヤ44及びPTO正逆切替ギヤ37等を介してPTO正逆切替軸22へ動力が伝動するように構成している。前記正逆切替ギヤ37は前記PTO変速ギヤ32と同形態のクラッチリングを用いる形態としている。このPTO正逆切替軸22の側方にはPTO逆回転カウンタギヤ52を有する逆回転カウンタ軸24を設け、PTO逆回転カウンタギヤ52は、PTO減速ギヤ50からの連動を受けてPTO正逆切替ギヤ37を逆回転することができる。なお、前記PTOカウンタ軸9の後方に減速軸23が配置される。
更に、ミッションケース65内の下段部に配置された前輪出力軸5は、ミッションケース65の後部底部に軸装されて、前輪連動軸25やカップリング等を介して前記フロントデフ47の入力軸26へ連結する。この前輪出力軸5の横側には前輪駆動軸7が配置されている。前輪駆動軸7の後端には前輪ギヤ55が設けられている。また、前記出力軸3の後端部の前輪取出ギヤ36に前輪連動軸28上の第1の前輪連動ギヤ51が噛合し、該第1の前輪連動ギヤ51を介して前輪連動軸28に伝達される出力軸3の駆動力は、前輪連動軸28と一体回転する第2の前輪連動ギア54に伝達されて、該前輪連動ギア54から前輪駆動軸7に伝達される。
また前輪駆動クラッチパック67を前輪駆動軸7上に設け、この駆動軸7の前端部から前輪出力軸5へギヤ連動する。また、有効径の異なる2つの前輪駆動切替ギヤ41が前輪駆動クラッチパック67の左右に配置されており、該2つの前輪駆動切替ギヤ41は、カウンタ軸59に設けた有効径の異なる2つの切替駆動カウンタギヤ56に各々噛み合わされ、前輪駆動クラッチパック67を択一的に接続することにより、2つの減速比のうちのいずれか一方の減速比で前輪駆動軸7を駆動することができる。
前輪駆動クラッチパック67を中立位置にシフトするときは前輪61を駆動させない後輪駆動の二駆形態とし、この前輪駆動クラッチパック67を油圧操作によって切り換えて低速位置にシフトするときは前輪61を後輪63に対して約1倍の等速駆動させる四駆形態とし、また、この前輪駆動クラッチパック67を油圧操作によって切り換えて高速位置にシフトするときは前輪61を後輪63に対して約2倍に増速駆動させる四駆形態とすることによって走行することができる。
上記構成からなる噛合式変速装置により、エンジン62の回転動力は主クラッチを構成する前後進油圧クラッチDを経由して4段の変速段からなる主変速油圧クラッチAと2段の変速段からなるハイ・ロー変速クラッチB及び3段の変速段からなる副変速ギア伝動機構Cで合計24段のうちのいずれかの変速段に変速され、得られた回転動力はリヤデフ45を経て後輪63が駆動される。また、前記副変速ギア伝動機構Cで変速された回転動力は前輪駆動クラッチパック(二駆四駆切替クラッチ)67にも伝達され、該クラッチパック67により前輪61が「等速」もしくは「増速」に切り換えられた後、フロントデフ47を経て前輪61が駆動される。
また、PTO変速ギヤ32、走行系の主変速ギヤ33、高低速切替ギヤ34及び副変速ギヤ35等を、ドライブピニオンギヤ53を有する出力軸3の軸芯上に沿って配置する構成とする。走行系の伝動は、入力軸2から出力軸3の軸芯上に配置される主変速ギヤ33、高低速切替ギヤ34及び複変速ギヤ35等を介してドライブピニオンギヤ53へ多段変速連動される。また、PTO系の変速は、この出力軸3の軸芯上の前端部に設けられるPTO変速ギヤ32を介して連動される。
次に図5には本実施形態の昇降用レバー130又は昇降用スイッチ191を設けたトラクタの油圧回路図を示す。
図5の油圧回路図では左右の後輪63を独立して制動する左右のブレーキシリンダ83、前輪61へ伝達する動力を「等速」もしくは「増速」に切り換える四駆切換クラッチシリンダ99、ステアリングハンドル73の回転操作により作動するパワーステアリング装置103、PTOクラッチシリンダ104、PTOクラッチ切替換弁150、PTOクラッチ比例圧力制御弁106などが設けられている。なお、一点鎖線部分の回路101はメイン油圧回路(作業機昇降・作業機水平や外部油圧取出しなど)となり、サブ回路(走行・ブレーキ・デフロック・PTO側回路)とあまり関係がないため、回路図の図示を省略している。
油圧ポンプ80から吐出した作動油は、減圧弁81aを介して主変速油圧クラッチAの第4速用と第2速用の各ギア33をクラッチパック76を介してそれぞれ作動させる油圧クラッチシリンダ87と油圧クラッチシリンダ88を切り替える主変速(2−4)クラッチ比例圧力制御弁89に供給され、さらに主変速油圧クラッチAの第1速用と第3速用の各ギア33をそれぞれ作動させる油圧クラッチシリンダ91と油圧クラッチシリンダ92を切り替える主変速(1−3)クラッチ比例圧力制御弁93に供給される。
減圧弁81aを経由する作動油は、前後進クラッチシリンダ85のオン・オフ制御弁129を介して前後進クラッチシリンダ85の前進側と後進側の油圧クラッチDを切り替える切替弁86に供給される。該前後進クラッチシリンダ85の前進側と後進側の油圧クラッチDのいずれに作動油が供給されているかは前進側クラッチ圧力センサ110(図7)と後進側クラッチ圧力センサ111(図7)で検出できる。
同様に、上記及び下記油圧クラッチシリンダに供給される作動油はそれぞれの油圧クラッチシリンダへの入口側の油路に設けた圧力センサ(例えば油圧クラッチAの第1速用から第4速用までの圧力センサ145a〜145dやPTOクラッチEの圧力センサ146など(図7))で検知できる構成になっている。
また、油圧ポンプ80から吐出した作動油は、減圧弁81bを介してブレーキバルブ82aを経由して左右のブレーキシリンダ83に分岐供給される。前記ブレーキバルブ82aは後輪63を選択する切替制御弁であり、該ブレーキバルブ82aはブレーキ力を調整する圧力制御弁82bと一体構成となっている。
さらに、減圧弁81bを経由する作動油は、前記第1速〜第4速用の各ギア33で変速された速度を「高速」と「低速」の二つのギヤ40のいずれかにクラッチパック76を介して作動させるハイ・ロー油圧クラッチシリンダ95を切り替えるための制御弁96a,96bに供給される。
また、減圧弁81bを経由する作動油は、デフロック制御弁97を経てフロントデフ47用の前輪デフロックシリンダ98a及びリアデフ45用の後輪デフロックシリンダ98bに分岐される。
さらに、前輪駆動クラッチパック67のギア41の切替用の油圧シリンダ99には切替制御弁94を経て前記減圧弁81bを経由する作動油が供給される。
同様に、減圧弁81bを経由する作動油は、PTO用バルブ105,106を介してPTOクラッチシリンダ104に供給され、PTOクラッチEの圧力を調整する。
また図5に示す油圧ポンプ80からの油圧は、パワステアリングハンドル73の操作で作動されるオービットロール107に作動油を供給する構成である。
図6には、前後進ギア42,42の切替を行う前後進クラッチシリンダ85の断面構成図を示す。
シリンダ85の前後一対のシリンダ85F、85R内には流入する作動油(オイル)によりそれぞれ作動するピストン78F、78Rと該ピストン78F、78Rの作動で互いに接触する複数組の摩擦板からなる前後進切替クラッチパック60、60がそれぞれ設けられている。
クラッチペダル119の非操作時(足踏み式ペダル119の踏み込み操作をしていない時)には前進と後進用のいずれかのシリンダ85F、85R内にオイルが流入してピストン78F又は78Rが作動状態であり、前後進切替クラッチパック60、60が接続状態となり、エンジン動力が変速装置24内の前進側の駆動機構又は後進側の駆動機構に伝達される。また各シリンダ85F、85R内にはリターンスプリング(圧縮スプリング)77F、77Rが設けられており、該リターンスプリング77F、77Rはそれぞれ前進、後進クラッチパック60、60の接続状態を解除する側に付勢される。したがってクラッチペダル119を操作すると(足踏み式ペダル119の踏み込み操作をすると)とシリンダ85F又は85R内のオイルが流出して、リターンスプリング77F又は77Rの付勢力でピストン78F又は78Rが戻し方向に移動し、該前進又は後進用のクラッチパック60の接続状態が解除される。
上記構成の前後進切替クラッチパック60では、クラッチ入力軸である入力軸2の回転より発生する遠心力によりピストン78F又は78R内のオイルがピストン78F又は78Rに推力を与える。これにより油圧押し付け圧力で発生する入力軸2のトルクに遠心力による推力が加算された力で動力伝達トルクが発生する。
前記遠心力は次の式で求めることができる。
まず、クラッチシリンダ85F又は85R内のオイルが、前進側クラッチパック60又は後進側クラッチパック60と完全に一体となって回転している場合の入力軸2の径方向の圧力Pは、下記の式で表される(強制渦の式)。そして圧力Pの入力軸2の径方向の分布は図6に示す通りであり、半径方向外側ほど圧力Pの値が大きくなっている。
P=P0+1/2ρr2ω2 (1)
ここで、P0:軸心圧力(Pa)、ρ:密度(kg/m3 )、r:軸心からの距離(m)、ω:クラッチ角速度(rad/s)である。
従って、ピストン78F又は78Rの推力は(1)式を半径方向に面積分することで次式(2)、(3)得られる。
ここで、F:ピストン推力(N)、A:ピストン面積(m2 )、φ1:ピストン内径(m)、
φ2:ピストン外径(m)である。
式(3)の第1項はソレノイド86F(前進用)又は86R(後進用)で作動する油圧バルブ86の制御圧によるピストン78F又は78Rの推力、第2項はシリンダ85F又は85R内のオイルの遠心力による推力を表す。
式(3)より、前記油圧バルブ86による圧力がゼロであっても、前進側クラッチパック60又は後進側のクラッチパック60が回転していれば、推力は発生しているため、リターンスプリング77F又は77Rのセット荷重は遠心力による推力より大きくなくてはならない。また、この推力は圧力センサでは測定できないが、入力軸2の回転数により決まるため、エンジン回転数(図7に示すエンジン回転数センサ112で検出する)より推測して、それに応じた制御を行うことが可能となる。
なお上記式(1)〜(3)は前後進クラッチDに限らず、他の油圧クラッチA、B、Eにも適用できる。
そして、図4に示すように、PTOカウンタ軸9からPTO軸14までの間のエンジン62からの動力伝達軸にトルクセンサ142を設け、PTOクラッチEの接続制御時に発生する軸トルクを確認しながらPTOクラッチEの接続圧力をコントロールする構成としても良い。PTOクラッチEの接続圧力は、圧力センサ146(図7)から検知できる。なお、トルクセンサ142を設ける位置は、PTOクラッチパック66の下手側の軸とPTO軸14との間の動力伝達軸であればどこでも良く、すなわち動力がPTOクラッチパック66の通過後の軸であるPTOクラッチ出力軸(例えばPTO正逆切替軸22など)にPTOクラッチ出力軸トルクセンサ142を設けても良い。また、図4に示すように、主変速軸19に出力軸トルクセンサ151を設けても良い。
PTOクラッチ出力軸にPTOクラッチ出力軸トルクセンサ142を設けた場合は、PTOクラッチ出力軸が回転することにより発生する軸トルクは、動力が伝達されるPTO軸14に角加速度を与えており、この軸トルクの大きさにより角加速度が異なってくる。すなわち軸トルクが一気に大きくなると、PTO軸14には急な角速度が与えられてロータリ耕耘装置84などの作業機の回転数が急激に変化する。したがって、作業機が徐々に回転せず、作業機側に急激な負荷を与え好ましくない。
エンジン回転数が決まるとミッション65内の減速比からPTO軸14の回転数と伝達トルクが決まる。しかし、前記式のように遠心力の関係で伝達トルクが加算されるため、実際のミッション65の減速比から得られるトルク(設計値で固定)となるように、PTOクラッチパック66の圧力補正(圧力制御)を行う。
このように本構成を採用することにより、エンジン62からの動力伝達軸の軸トルクを検出してPTOクラッチパック66の圧力を制御することでロータリ耕耘装置84などの作業機にスムーズに回転力を与え、エンジン62からロータリ耕耘装置84などの作業機への動力の接続をスムーズにすることができる。
図7には図1に示すトラクタの動力伝達軸にトルクセンサ142を設けた場合のトルク制御ブロック図を示し、図8にはPTOクラッチパック66の下手側の軸とPTO軸14との間にPTOクラッチ出力軸トルクセンサ142を設けた場合のコントローラ100によるトルク制御のフローを示す。
エンジン62が回転している待機状態時にクラッチトルク制御がスタートすると、コントローラ100は図7に示すセンサやスイッチ類の読み込みを行う。そして、ステップAにおいて、PTOクラッチEが全圧接続状態になると、圧力センサ146からのセンサ値による当該PTOクラッチEの接続圧力とPTOクラッチ出力軸トルクセンサ142の出力軸トルクセンサ値を比較して発生圧力と発生トルクに応じてPTOクラッチ比例圧力制御弁106を作動させるための制御弁駆動電流値をメモリ102に記憶させる。
そして、ステップBにおいてPTOクラッチEが昇圧している場合はステップCに進み、PTOクラッチEの昇圧に伴うPTO軸回転センサ165によるセンサ値の検出の有無を確認する。
ステップCにおいて、動力伝達軸にトルクセンサ142による検出がある場合は、発生した軸トルクが規定トルク以下になるようにPTOクラッチ比例圧力制御弁106を作動させるための電流を急減少させて(PTOクラッチEの接続圧力がゼロ相当又は切替弁105をオフにする)、ステップIにおいて規定時間(数秒程度)が経過したら発生トルクが規定ラインに合うようにPTOクラッチ比例圧力制御弁106を作動させるための電流を制御する。
そして、ステップHにおいて、発生トルクが規定ラインに合ってPTO軸14の回転数が規定トルクラインに対応する減速比(PTOクラッチの軸回転数/エンジン62の回転数)から演算される回転数とほぼ一致したら、PTOクラッチEの昇圧を完了して全圧接続出力を実施(制御された電流値を継続して出力)して、フローをリターンする。なお、エンジン62の回転数は、エンジン回転数センサ112で検出する。
また、ステップCにおいて、PTOクラッチ出力軸トルクセンサ142による検出がない場合は、ステップDに進み、PTOクラッチ出力軸(PTO正逆切替軸22又はPTO軸14など、PTOクラッチパック66の下手側の回転軸であればどこの回転数(トルク)変化を感知しても良い)のトルクの発生がある場合は、先のステップCにおいて出力軸トルクセンサ142による検出がある場合と同様なフローになる。
一方、ステップDにおいて、PTOクラッチ出力軸(PTO正逆切替軸22又はPTO軸14など)の軸トルクの発生がない場合はPTOクラッチシリンダ104(図5)の初期ピストン移動出力を、規定ストローク分実施して、PTOクラッチEを作動させる。
そして、ステップEにおいて、規定初期出力が終了しない場合は、ステップCに戻り、終了した場合はステップFに進む。ステップFにおいて、PTO軸回転センサ165による検出がない場合は、ステップGに進み、PTOクラッチ出力軸(例えばPTO正逆切替軸22やPTO軸14などPTOクラッチパック66の下手側の軸)のトルクの発生の有無を確認する。トルクの発生がない場合はやや高めの圧力相当電流を流しPTOクラッチ比例圧力制御弁106を作動させてステップFに戻る。
また、ステップFやステップGにおいて、それぞれPTO軸回転センサ165による検出がある場合やPTOクラッチ出力軸の軸トルクの発生がある場合は、発生トルクが規定ラインに合うようにPTOクラッチ比例圧力制御弁106を作動させるための電流を制御して、ステップHに進む。
更に、ステップAにおいてPTOクラッチEが全圧接続状態でない場合はステップBに進み、ステップBにおいてPTOクラッチEの昇圧がない場合は他のクラッチの制御(前後進油圧クラッチD(前進油圧クラッチ、後進油圧クラッチ)、主変速油圧クラッチA、ハイ・ロー変速クラッチB等の図11に示すフローを行った後、図8のフローをリターンする。
図7に示すように、PTOクラッチEは、PTOクラッチ比例圧力制御弁106により接続圧力をコントロールする構成である。そして、図8のステップBに示すPTOクラッチEの昇圧中において所定の軸トルク変化ラインを設けて、その軸トルク変化ラインと一致するようにPTOクラッチEの接続圧力をコントロールする。本構成を採用することにより、PTOクラッチ出力軸(PTO正逆切替軸22やPTO軸14など)に過度なトルクを急激に与えることはない。
図9には、図7及び図8におけるトルク制御の各々(複数ある多板クラッチA、B、D、Eについて同様な制御を行うが、ここではクラッチEに付いて説明する。)の設定ラインのトルクを超えないようにクラッチ圧力を調整し接続した例を示す。
図9において、横軸は時間を縦軸はPTO軸トルクを示している。また、図9中の「a」は初期圧(クラッチの容量により異なる)であり、「b」は計算後の規定トルクである。この「b」はクラッチの遠心力の影響を差し引いた後の値であり、PTOクラッチEの上手側の軸の回転数により変化する。そして、「tx」はPTOクラッチ比例圧力制御弁106のソレノイドに電流を流し始めてから油圧が定圧状態になるまでの時間(クラッチにより異なる)である。図9は、規定トルク値bにするために1.5秒かけてトルクを立ち上げることを示している。
PTOクラッチEの上手側の回転が分かっている場合には前記クラッチEの遠心力の影響は予測できるので、この予測により最初からPTOクラッチEを立ち上げる例を示している。
そして、PTOクラッチ出力軸(PTO正逆切替軸22又はPTO軸14など)に発生するトルクが、PTOクラッチEの昇圧中の所定の軸のトルク変化ライン(図9)を超える場合は、コントローラ100によりPTOクラッチEの接続圧力を一旦大きく低下させた後、徐々に圧力を上昇させる制御を行うと良い。
例えば、図8のステップCにおいて、PTOクラッチ出力軸トルクセンサ142によるセンサ値の検出がある場合は、発生したトルクが規定トルク(所定の軸トルク変化ライン)以下になるようにPTOクラッチ比例圧力制御弁106を作動させるための電流を急減少させてから、徐々に発生トルクが規定ラインに合うように電流を増加させて、PTOクラッチEの接続圧力を制御する。
そして、PTOクラッチ昇圧中のPTOクラッチ出力軸(PTO正逆切替軸22又はPTO軸14など)に発生する軸トルクの変化が急激に大きくなる場合においても、コントローラ100によりPTOクラッチ比例圧力制御弁106を制御して、駆動電流を一旦急激に減少させた後、上昇させると良い。
PTOクラッチ比例圧力制御弁106による接続圧力のコントロールができていない場合(PTOクラッチシリンダ104のピストンが移動中など)からPTOクラッチEのクラッチミートに至る過程で、ミート(接続)のタイミングを誤るとPTOクラッチEのミートポイントでPTOクラッチ出力軸(PTO正逆切替軸22又はPTO軸14など)に発生する軸トルクが急激に変化する場合がある。
しかし、このようにPTOクラッチ出力軸(PTO正逆切替軸22又はPTO軸14など)に発生する軸トルクの変化に合わせて、コントローラ100によりPTOクラッチ比例圧力制御弁106を作動するための電流を一旦急激に減少させるため、ロータリ耕耘装置84に与える負荷を少なくできる。
また、PTOクラッチ比例圧力制御弁106を作動してPTOクラッチEの昇圧開始後、PTOクラッチ出力軸(PTO正逆切替軸22又はPTO軸14など)に発生する軸トルクが規定トルクである場合に、一旦PTOクラッチEの油圧バルブであるPTOクラッチ比例圧力制御弁106(図5)を操作してPTOクラッチEの接続圧力を0付近に制御するか、又はPTOクラッチ比例圧力制御弁(切替弁)105をオフとし、その後PTOクラッチEの接続圧力を昇圧しても良い。
PTOクラッチEの接続圧力の変化点をPTOクラッチのミートポイントと捉え、PTOクラッチEの接続圧力の昇圧を開始するようにすれば、スムーズなPTO接続を行うことができる。
そして、PTOクラッチ出力軸トルクセンサ142をPTOクラッチ出力軸(PTO正逆切替軸22、PTO連動軸4、又はPTO軸14など要するにPTOクラッチの下手側ならどこでもよい)に設け、図8のステップHに示すように、PTOクラッチ出力軸の回転数が規定トルクラインに対応する減速比(PTOクラッチ軸回転数/エンジン回転数)から演算される回転数に近づいた場合、PTOクラッチ出力軸に発生する軸トルクに応じたPTOクラッチEの接続圧力のコントロールを停止し、コントローラ100によりPTOクラッチ比例圧力制御弁106を作動させるための電流を最大圧力に相当する電流値として制御すると良い。すなわち、PTOクラッチEの接続圧力を昇圧している途中でも、昇圧をやめて制御された電流値を継続する構成である。図10に、本構成の説明図を示す。
目標トルク(破線)をエンジン回転数と減速比から求めて、PTOクラッチ出力軸に発生する軸トルクTが目標トルクToになるように、PTOクラッチ比例圧力制御弁106を作動させるための電流Iを最大圧力に相当する目標電流値Ioとし、軸トルクTの出力が目標トルクToよりも5%程度少なくなるように軸トルクを制御する。
PTOクラッチ出力軸(PTO正逆切替軸22、PTO連動軸4、又はPTO軸14など)の回転が始まり、ロータリ耕耘装置84による慣性力がPTOクラッチ出力軸に付与されてくる場合には、PTOクラッチ出力軸に発生する軸トルクTが低下する場合がある。そして、PTOクラッチ出力軸の回転数が設定回転数に到達しているにもかかわらず、コントローラ100による制御を続けるとPTOクラッチEの接続圧力の低下が起こる場合がある。
このような場合は、PTOクラッチEの滑りにつながり、ロータリ耕耘装置84が正規に回転せずに耕耘できなくなるなど不具合が発生する。したがって、PTOクラッチ出力軸の回転が設定回転数に到達しているということは、PTOクラッチEの接続圧力の昇圧によりコントロールすべき時期は終了しているということを意味しており、そのまま設定圧力(図10の電流値Ioの圧力を設定圧力として制御する)でPTOクラッチEを接続するだけで良い。
図11には、前後進切替クラッチパック60、60の出力側である主変速軸19に出力軸トルクセンサ151を設けた場合のコントローラ100によるトルク制御のフローを示す。なお、他のクラッチ(油圧クラッチA、B)に出力軸トルクセンサを設ける場合はトルクセンサ153(図4)など、クラッチパック76の通過後の軸ならばどこでも良い。また、後進クラッチ出力軸トルクセンサ152をバックカウンタ軸8に設けても良い。
エンジン62が回転している待機状態時にトルクセンサ151のセンサ信号をコントローラ100が受信するとクラッチトルク制御がスタートする。コントローラ100は図7に示すセンサやスイッチ類の読み込みを行い、ステップJにおいて前進クラッチパック60が全圧接続状態になると、圧力センサ110からのセンサ値による当該前進クラッチパック60の接続圧力と出力軸トルクセンサ151の出力軸トルクセンサ値を比較して発生圧力と発生トルクに応じて前後進クラッチ比例圧力制御弁(切替弁)86のソレノイド86F、86Rを作動させるための制御弁駆動電流値をメモリ102に記憶させる。なお、ソレノイド86F、86Rは、前後進切替レバー115の操作位置を検出する前後進切替レバー位置センサ167(図7)のセンサ値によって作動する。
そして、ステップKにおいて前後進切替レバー115を操作して、前進側に前後進クラッチパック60、60が昇圧するとステップLに進み、車速センサ170(図7)によるセンサ値の検出の有無を確認する。
ステップLにおいて、車速センサ170によるセンサ値の検出がある場合は主変速軸19に発生した軸トルクが規定トルク以下になるように前後進クラッチ切換ソレノイド86F、86Rを作動させるための電流を急減少(前後進クラッチDの接続圧力がゼロ相当又は前後進クラッチ比例圧力制御弁(切替弁)86をオフにする)させて、ステップRに進み規定時間(例えば1.0秒以下)が経過したら発生トルクが規定ラインに合うように前後進クラッチ切換ソレノイド86F、86Rを作動させるための電流を制御する。
そして、ステップQにおいて、発生トルクが規定ラインに合って前輪軸や後輪軸の回転数が規定トルクラインに対応する減速比(主変速軸19の回転数/エンジン62の回転数)から演算される回転数とほぼ一致したら、前後進クラッチパック60、60の昇圧を完了して全圧接続出力を実施して(回転数がほぼ一致した時点の全圧の電流値を保持して全圧接続をすること)、フローをリターンする。
また、ステップLにおいて、車速センサ170によるセンサ値の検出がない場合は、ステップMに進み、主変速軸19のトルクの発生がある場合は、先のステップLにおいて車速センサ170によるセンサ値の検出がある場合と同様なフローになる。
一方、ステップMにおいて、主変速軸19の軸トルクの発生がない場合は前進クラッチシリンダ85Fのピストン78Fの初期ピストン移動出力(初期圧)を、規定ストローク分実施する。これは油圧多板クラッチを作動させるときはクラッチの油量安定化のため一旦、初期圧(全圧)まで立ち上げる必要があるためである。
そして、ステップNにおいて、規定初期出力が終了しない場合は、ステップLに戻り、終了した場合はステップOに進む。ステップOにおいて、車速センサ170によるセンサ値の検出がない場合は、ステップPに進み、主変速軸19のトルクの発生の有無を確認する。トルクの発生がない場合はやや高めの圧力相当電流を流し、前後進クラッチ比例圧力制御弁86のソレノイド86F、86Rを作動させてステップOに戻る。
また、ステップOやステップPにおいて、それぞれ車速センサ170によるセンサ値の検出がある場合や主変速軸19の軸トルクの発生がある場合は、発生トルクが規定ラインに合うように前後進クラッチ比例圧力制御弁(切替弁)86のソレノイド86F、86Rを作動する電流を制御して、ステップQに進む。
更に、ステップJにおいて、前進クラッチパック60が全圧接続状態でない場合はステップKに進み、ステップKにおいて前進クラッチパック60の昇圧がない場合は他のクラッチの制御(後進クラッチパック60、主変速油圧クラッチA、ハイ・ロー変速クラッチB等の図11に示すフロー)を行いフローをリターンする。
次に、クラッチパック76を通過後の出力軸3に出力軸トルクセンサ153(図4)を設けた例を示す。
走行系の動力伝達部の油圧クラッチA、B、Dのクラッチ出力軸からホイル(前輪61、後輪63)までの間の動力伝達軸に出力軸トルクセンサ153を設け、油圧クラッチの接続制御時に発生する軸トルクを確認しながら、油圧クラッチの接続圧力をコントロールする。油圧クラッチの接続圧力は、圧力センサ145a〜145dから検知できる。
従来は、油圧クラッチA、B、Dの各クラッチ出力軸の回転数を検出して各クラッチA、B、Dの接続圧力をコントロールしていた。
しかし、油圧クラッチA、B、Dの各クラッチ出力軸に発生する軸トルクは、当該出力軸に角加速度を与えており、この角加速度は軸トルクの大きさによりそれぞれ異なる。ここで、、軸トルクが一気に大きくなると、トラクタに急な加速度が与えられ、車速が急激に変化してトラクタが急発進することによる発進ショックや変速ショックなどが発生する。しかし、油圧クラッチA、B、Dの各クラッチ出力軸に発生する軸トルクを直接検出することにより、いわゆる軸トルクを直接検出して制御することで、応答性の良い制御が可能になる。
なお、主変速油圧クラッチAの制御では、主変速(1−3)クラッチ比例圧力制御弁93や主変速(2−4)クラッチ比例圧力制御弁89を作動する電流を制御して、ステップLにおいて電流を急減少させる際には、主変速(1−3)ソレノイドの切替弁168や主変速(2−4)ソレノイドの切替弁169をオフにすれば良い。
図7に示すように、油圧クラッチA、B、Dはそれぞれの比例圧力制御弁(主変速(2−4)クラッチ比例圧力制御弁89、主変速(1−3)クラッチ比例圧力制御弁93、制御弁96、圧力制御弁82b、前後進クラッチ比例圧力制御弁(切替弁)86、デフロック制御弁97など)により圧力をコントロールする構成にし、図11のステップKに示す油圧クラッチ昇圧中における所定の軸トルク変化ラインを設けて、その軸トルク変化ラインと一致するようにクラッチ油圧クラッチA、B、Dの接続圧力をコントロールする。本構成を採用することにより、油圧クラッチA、B、Dのクラッチ出力軸に過度なトルクを急激に与えることはない。
図12には、図7及び図11におけるトルク制御が1速から8速までの各々主変速油圧クラッチA、ハイ・ロー変速クラッチB、副変速ギア伝動機構Cの組み合わせでの減速比(トルク比)の走行軸設定ライントルクを超えないようにクラッチ圧力を調整し接続した例を示す。なお、図9(a)に示すPTO軸が走行軸に変わっただけで、基本的に図9(a)に示す制御例と同様の制御ラインである。
図12において、横軸は時間を縦軸は発生トルクを示している。また、図12中の走行軸トルクを4本記載しているのは変速装置の出力に応じて1速から8速までの変速位置に応じて各油圧クラッチA、B、Dの遠心力の影響を差し引いた後の規定トルクである。なお、図12は、規定トルク値にするために2.0秒かけてトルクを立ち上げることを示している。
各油圧クラッチA、B、Dの上手側の油圧クラッチの回転数が分かっている場合にクラッチトルクの遠心力の影響は予測できるので、この予測により最初から該当する油圧クラッチを立ち上げる例を示している。
なお、主変速油圧クラッチA、ハイ・ロー変速クラッチB、副変速ギア伝動機構Cなどの組み合わせでトルクの減速比が違うため、どの変速位置でも規定のライントルクになるように調整する。第1速、第2速などの変速位置に応じて設定されるトルクラインは異なり、減速比が大きい(走行速度が遅い)ほど低トルクラインにする。
また、油圧クラッチA、B、Dのクラッチ出力軸に発生するトルクが、各油圧クラッチA、B、Dの昇圧中の軸トルク変化ライン(図12)を超える場合は、コントローラ100により油圧クラッチA、B、Dの接続圧力を一旦大きく低下させた後、徐々に圧力を上昇させる制御を行うと良い。
例えば、図11のステップLにおいて、車速センサ170によるセンサ値の検出がある場合は、発生したトルクが規定トルク以下になるように油圧クラッチA、B、Dの比例圧力制御弁(主変速(2−4)クラッチ比例圧力制御弁89、主変速(1−3)クラッチ比例圧力制御弁93、制御弁96、圧力制御弁82b、デフロック制御弁97など)を作動させるための電流を急減少させてから、徐々に発生トルクが規定ラインに合うように電流を増加させて、接続圧力を制御する。
急激なトルク変化をトラクタに与えないように油圧クラッチA、B、Dの接続圧力をコントロールすることで、様々な条件下でのトラクタに与える加速度を急峻にすることなく適正な加速度を与えることができる。
そして、油圧クラッチA、B、Dの昇圧中のクラッチ出力軸に発生する軸トルクの変化が急激に大きくなる場合においても、コントローラ100により前後進クラッチ比例圧力制御弁86、主変速(1−3)クラッチ比例圧力制御弁93、主変速(2−4)クラッチ比例圧力制御弁89、又はハイ・ロークラッチ切替弁(制御弁96a、96b)を制御して、駆動電流を一旦急激に減少させた後、上昇させると良い。
クラッチ比例圧力制御弁(前後進クラッチ比例圧力制御弁86、主変速(1−3)クラッチ比例圧力制御弁93、主変速(2−4)クラッチ比例圧力制御弁89、制御弁96a、96b等)による接続圧力のコントロールができていない場合(例えば前後進クラッチシリンダ85のクラッチピストン78F、78R等が移動中など)から油圧クラッチA、B、Dのクラッチミートに至る過程で、ミート(接続)のタイミングを誤ると油圧クラッチA、B、Dのミートポイントで主変速軸19や副変速軸20などの走行軸に発生する軸トルクが急激に変化する場合がある。しかし、このように主変速軸19や副変速軸20などの走行軸に発生する軸トルクの変化に合わせて、コントローラ100によりクラッチ比例圧力制御弁86,93,89,96a,96b等を作動するための電流を一旦急激に減少させるため、ロータリ耕耘装置84に与える負荷を少なくできる。
また、クラッチ比例圧力制御弁86,93,89,96a,96b等を作動後(油圧クラッチA、B、Dの昇圧開始後)、主変速軸19や副変速軸20などの走行軸に発生する軸トルクが規定トルクである場合に、一旦油圧クラッチA、B、Dの前記比例圧力制御弁86,93,89,96a,96b等を操作して油圧クラッチA、B、Dの接続圧力を0付近に制御するか、又は前記クラッチ比例圧力制御弁86,93,89,96a,96b等をオフとして、その後油圧クラッチA、B、Dの接続圧力を昇圧しても良い。
油圧クラッチA、B、Dの接続圧力の変化点を油圧クラッチA、B、Dのミートポイントと捉え、油圧クラッチA、B、Dの接続圧力の昇圧を開始するようにすれば、スムーズな走行変速を行うことができる。
そして、車速センサ170を設け、前輪軸13や後輪軸11の回転数が規定トルクラインに対応する減速比(車軸回転数/エンジン回転数)から演算される回転数に近づいた場合、主変速軸19や副変速軸20などの走行軸に発生する軸トルクに応じた油圧クラッチA、B、Dの接続圧力のコントロールを停止し、コントローラ100により前記クラッチ比例圧力制御弁86,93,89,96a,96bを作動させるための電流を最大圧力に相当する電流に制御すると良い。すなわち、油圧クラッチA、B、Dの接続圧力を昇圧している途中でも、昇圧をやめる構成である。なお、本構成は図10のPTOクラッチEが走行系のクラッチである油圧クラッチA、B、Dに変わっただけの違いであり、基本的に図10に示す制御例と同じである。
トラクタが動き始めるとトラクタに慣性力が与えられ、主変速軸19や副変速軸20などの走行軸の軸トルクが低下する場合がある。またロータリ耕耘装置84による作業などではロータリ耕耘装置84が土の中を回転することで推力が発生してダッシング現象(硬い畑を耕そうとすると機械が急に発進すること)が発生することがある。このような場合に、エンジン62のトルクをそのまま主変速軸19や副変速軸20などの走行軸に与えるようにすることで、急発進を防いでダッシングを無くすことができる。
図13には、図1のトラクタの操縦席付近の上面図を示し、図14には同じく斜視図を示し、図15(a)には図13及び図14に示したスイッチボックス180の平面図を示し、図15(b)には図15(a)の側面図を示す。なお、図13〜図15では図2及び図3に示すステアリングハンドル73周辺の部材は省略している。
トラクタの操縦席16の左側には、トラクタの前進と後進の切り替えを行う前後進切替レバー115や駐車ブレーキ172、前方側のPTOチェンジレバー173a(2速−N(中立)−1速にチェンジ可能)、後方側のPTOチェンジレバー173b等を配置している。後方側のPTOチェンジレバー173bは、型式によって3種類ある(機能が異なるだけで図は同じである)。
Z型は正逆切換レバー(前側が正転、後側が逆転)であり、WX型はエコノミーPTO切換レバー(前側が切−後側が入)であり、入りにすると、PTO軸が所定回転ダウンする。また、GWD型はグランドPTO切換レバー(前側が切−後側が入)であり、入りにするとPTO軸の回転が車速に同期(シンクロ)する。
一方、トラクタの操縦席16の右側には、アクセルペダル175やスロットルレバー176(前に倒すとエンジン回転数増大、一番手前にするとアイドリングになる)、エンジン回転数記憶スイッチ177aなどがある。エンジン回転数記憶スイッチ177aは、いわゆるシーソースイッチであり、指を離すと中立に自動で戻る構成である。また、コントローラ100には2通りのエンジン回転数を記憶できるので、その切換スイッチである。例えば、エンジン回転数記憶スイッチ177aの上側を押すとエンジン回転数がA回転数になり、下側を押すとB回転数となる。
また、エンジン回転数記憶スイッチ177a後方のエンジン回転数記憶スイッチ177bもシーソースイッチであり、指で離すと自動で中立に戻る。そして、エンジン回転数記憶スイッチ177aの上側を押すとエンジン回転数が上昇して、下側を押すとエンジン回転数が下降する。エンジン回転数記憶スイッチ177aでA回転数又はB回転数(A、Bは任意の回転数である)を選んだ後、エンジン回転数記憶スイッチ177bにより上側(+側)を押すと回転数が上昇し、下側(−側)を押すを回転数が下降する。そして、エンジン回転数記憶スイッチ177bを離したところの回転数がメモリ102に記憶される。
更に、スロットルレバー176の後方には副変速レバー179(低速、中速、高速、路上走行速)を設けており、低速8段、中速8段、高速8段、路上走行速4段(高速8段の上側4段)などの変速が可能である。また、サブコントロールレバー1連目178aは外部油圧取り出しレバーのことであり、トラクタのロータリ耕耘装置84を外して別の作業機を駆動するときなどに高圧のオイルを供給するためのものである。サブコントロールレバー1連目178aの後方にはサブコントロールレバー2連目178bを配置しており、3連目(図示せず)や4連目(図示せず)を設けても良い。
そして、ドラフト比調整ダイヤル182は、ドラフトコントロールの感度を調整するダイヤルであり、左側に回すとポジション側、右側に回すとドラフト側となり、ポジション側(左側)にするほど負荷にかかわらず、設定している耕耘深さを維持する制御となる。また、ドラフト比調整ダイヤル182を右側に回すと負荷優先となる。すなわち、所定以上の負荷が作業機に作用すると、耕深よりも負荷を軽くするために作業機(ロータリ耕耘装置84など)を少し上げるように制御する。
したがって、圃場の状態やオペレータの好みでドラフト比を調整できる。表1には、ドラフト比の調整と圃場の状態との関係を示す。
(表1)
ドラフト比 1 5
調整ダイヤル (左回し) (右回し)
耕深 浅くする ←→ 深くする
土質 軽い ←→ 重い
すなわちポジション側(左)に回すほど、負荷に対するロータリ耕耘装置84の昇降変化量が少なくなり、耕す深さを優先する。ドラフト側(右)に回すほど負荷に対するロータリ耕耘装置84の昇降変化量が大きくなり、負荷の軽減を図るようにする。
そして、ロータリ耕耘装置84の上げ調整ダイヤル183は、ロータリ耕耘装置84の高さを調整するためのものであって、左側に回すとロータリ耕耘装置84の高さが低くなり、右側に回すと高くなる。上げ調整ダイヤル183により、ロータリ耕耘装置84の3点リンク機構の高さを調整できる。作業機84によっては最も高く上げるとトラクタ本体に当たる場合もあるが、作業機84の高さを調整することで、このような不具合を防止できる。また、それほど上げる必要のない作業機84は、この上げ調整ダイヤル183で調整して、効率的な作業を行うことができる。
そして、傾き調整ダイヤル184は、ロータリ耕耘装置84の傾きを調整するもので、左側に回すと右上がりとなり、右側に回すと右下がりとなる。更に4WD切替スイッチ185は走行ローダと2WDと4WDとフルターンと2WDターンに切換ができる。
走行ローダは、路上走行やローダ作業時に使用し、通常は2輪駆動である。しかし、トラクタがぬかるみに入ったり、急な坂道、凹凸道になった場合は、自動的に4輪駆動になる。そして、ブレーキをかけると自動的に4輪駆動になったり、運転中に停止すると4輪駆動になる。すなわち、4輪駆動になることで2輪駆動の場合と比べて走行ブレーキ機能がより発揮され、安定して走行停止ができるようになる。
2WD(2輪駆動)の場合は後輪63、63が駆動し、4WD(4輪駆動)の場合は4輪(前輪61、61、後輪63、63)が駆動する。また、フルターンは4WDにおいて旋回時に前輪61、61の速度が増速され、素早い旋回となる。更に2WDターンは固い圃場などでは、旋回時のみ前輪61、61の駆動となり、旋回が素早くスムーズに行える。
更に、水平シリンダ70(図1)の手動上げ下げスイッチ186を手動で操作することにより、ロータリ耕耘装置84の3点リンク機構の水平シリンダ70を動かすことができる。そして、圃場の状態により、ロータリ耕耘装置84の左右傾斜を調整する。また、手動上げ下げスイッチ186は、ロータリ耕耘装置84などの作業機の脱着等に使用する。
また、PTO入り切りスイッチ187を押しながら右側に回すとPTOが入りになってロータリ耕耘装置84が作動し、PTOが入り状態の時に押すと自動でPTOが切りに戻るとロータリ耕耘装置84が停止する。更に、PTO手動自動スイッチ188を左側に回すと手動になり、ロータリ耕耘装置84の作動を手動で設定して操作する。この場合は、PTO入り切りスイッチ187によりロータリ耕耘装置84が作動する。また、PTO手動自動スイッチ188を右側に回すと自動になり、ロータリ耕耘装置84の作動が自動で行われる。この場合、ロータリ耕耘装置84を上昇させると自動でロータリ耕耘装置84の回転が止まり、ロータリ耕耘装置84を下降させると自動でロータリ耕耘装置84の回転が再開する。
そして、PTO手動自動スイッチ188が手動時に設定されている場合は、PTO入り切りスイッチ187が入りの状態で、チェンジが入っていると(PTOチェンジレバー173が中立以外の時の状態をいう)常時PTO軸14が回転する。PTO手動自動スイッチ188が自動時に設定されている場合は、PTOクラッチペダル119を踏んだり、ロータリ耕耘装置84を上昇させることにより回転が止まる。この機能は、主に水田作業で利用する。
そして、デフロックスイッチ189は、シーソースイッチであり、操縦席16とは反対側を押すとデフロックとなり、もう一度押すとデフロックは解除される。なお、作業者の腕などが不用意に当たることによる誤操作を防止するため、座席16側は押せない構成である。
そして、ポジションコントロールレバー190を後側に倒すとロータリ耕耘装置84は上昇し、前側に倒すとロータリ耕耘装置84は下降する。また、作業機昇降スイッチ191はシーソースイッチであり、後側をワンプッシュするとロータリ耕耘装置84は最大位置まで上昇し、前側をワンプッシュするとポジションコントロールレバー190の設定位置まで下降する。最大位置とは、上げ調整ダイヤル183で調整した位置のことである。
更に、走行変速スイッチ192aは、変速段のシフトアップ用のスイッチであり、一回押すごとに変速段がシフトアップし、低速8段、中速8段、高速8段、路上走行速4段に変速可能である。一方、走行変速スイッチ192bは、変速段のシフトダウン用のスイッチであり、一回押すごとに変速段がシフトダウンし、低速8段、中速8段、高速8段、路上走行速4段に変速可能である。また、これらスイッチの後方にはシガーライター194がある。
そして、スイッチボックス180にある作業機上昇・下降モニターランプ195はロータリ耕耘装置84などの作業機が上昇又は下降する際に点灯する。また、ATシフト作業感度ダイヤル196は、後述するATシフト作業スイッチ200が入りのときに作用するもので、ATシフト作業スイッチ200を入りにすると、自動変速(オートドライブ)が作用する。そして、ATシフト作業感度ダイヤル196は、この自動的に車速を増減速する自動変速の感度を変更するダイヤルであり、右側に回すと感度がアップし、左側に回すと感度がダウンする。なお、スイッチボックス180内のスイッチを操作しない場合は蓋211を閉じてスイッチボックス180内に埃などが入ることを防いでいる。
下げ速度ダイヤル197は、作業機下降速度を調整するダイヤルであって、右側に回すと速度が大きくなって作業機は速く降りる。したがって、重量が軽い作業機(例えば水田の代掻機など)などに好適である。一方、左側に回すと速度が小さくなって作業機は遅く降りる。この場合は重量が重い作業機(例えばスキ作業機)などに好適である。
そして、ブレーキ調整ダイヤル198を左側に回すとブレーキが弱くなり、右側に回すとブレーキが強くかかる。ブレーキ調整ダイヤル198は、後述するオートブレーキ入切スイッチ206が入りのときに作用する。また、ATシフト路上スイッチ199を入りにすると、路上走行のときに自動変速(オートドライブ)になり、ATシフト作業スイッチ200を入りにすると、作業走行のときに自動変速(オートドライブ)になる。
そして、接続感度変速スイッチ201を押すと入り、更に押すと切りになり、接続感度変速スイッチ201を入り切りすることで、主変速油圧クラッチAにより主変速を変速したときの接続フィーリングを変更できる。例えば、接続感度変速スイッチ201を入りにするとランプ201aが点灯して緩やかな変速をし、切りにするとランプ201aが消灯して急接続(クラッチの早めの接続)をする。プラウなどを後部に装着する牽引系の作業で接続感度変速スイッチ201を使用して切りにすると、主変速油圧クラッチAによる主変速の変速操作時に主変速油圧クラッチAの接続時間が短くなる。
更に、接続感度PTOスイッチ202はPTOクラッチEのつながり方の変更ができる接続感度PTOスイッチ202を押すたびに、ロータリ、牧草1、牧草2の順で点灯する。接続感度PTOスイッチ202をロータリにすると、PTOクラッチEのつながり方が速くなる。主にロータリ耕耘装置84などの作業機で使用する。PTO軸14が回転し始めると、すぐに圃場の土の抵抗に負けない回転力で回る。
また、接続感度PTOスイッチ202を牧草1あるいは牧草2にすると、PTOクラッチEのつながりが緩やかになる。牧草1と牧草2で2種類の変速が可能である。主に牧草作業機やスノーブロワーなどPTOクラッチEの接続をゆっくり行う作業機で使用する。接続感度PTOスイッチ202をロータリにした場合と同様にPTO軸14で使用する。
水平感度スイッチ203は、作業機の自動水平制御装置の動作感度を切り換えるためのスイッチであり、水平感度スイッチ203を押すと、動作感度が鈍くなって自動水平制御の動きが遅くなる。そして、再び水平感度スイッチ203を押すと動作感度が元に戻る。そして、バックアップ入切スイッチ204を入りにすると、トラクタの後進時にロータリ耕耘装置84が自動で上昇する。
また、オートリフト入切スイッチ205を入りにしてステアリングハンドル73を回すと、自動でロータリ耕耘装置84が上昇する。更にオートブレーキ入切スイッチ206を入りにしてステアリングハンドル73を回すと、自動で旋回内側の後輪63のみにブレーキがかかる。そして、水平切換スイッチ207により、ロータリ耕耘装置84などの作業機の水平制御を行うことができる。水平切換スイッチ207を押すと、自動水平、手動、平行、傾斜の順にランプが点灯する。自動水平では、水平センサ(図示せず)により、自動的に水平を保持する。手動の場合は、傾き調整ダイヤル184で手動調整する。平行では、トラクタ車体Tに対して、ロータリ耕耘装置84を常に平行に保つ。そして、傾斜では、地面に対してロータリ耕耘装置84をある一定の角度をもたせるように制御する。
3点切換スイッチ208は、リフトシリンダ210(図1)の取り付け穴の選択によって、スイッチボックス180の3点切換スイッチ208の選択を行う。カテゴリ1の作業機(ロワーリンクの前穴に付けるとき)は1を選択し、カテゴリ2の作業機(ロワーリンクの後穴に付けるとき)は2を選択する。そして、オートアクセルスイッチ209は、入りにした状態でロータリ耕耘装置84を上昇すると、エンジン回転数が1700rpm程度まで低下する。