JP3807880B2 - 水田作業機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、操向操作型の左右の前車輪と非操向操作型の左右の後車輪とを備えた走行機体に対して昇降自在に対地作業装置を備え、又、この対地作業装置に対する動力の断続を行うクラッチを備えると共に、この対地作業装置に備えた接地フロートを所定の接地姿勢に維持するよう対地作業装置の昇降を行う自動昇降制御と、この自動昇降制御状態において前車輪の旋回方向への操作と連動して対地作業装置を上昇させ、かつ、前車輪の直進方向への戻し操作と連動して上昇状態の対地作業装置を下降させて自動昇降制御に復帰させる連動昇降制御とを行う制御装置を備えた水田作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のように構成された水田作業機として特開平11−196628号公報に示されるものが存在し、この従来例では前車輪が設定された角度まで操向操作されたことをセンサで検出すると、苗植付装置(対地作業装置)を上昇作動させ、この上昇の後に、前車輪を戻す方向への操向操作が開始されたことをセンサで検出すると、苗植付装置を下降作動させるよう制御形態が設定されている。農用のトラクタを例に挙げると、上昇開始と下降開始とを行うための前車輪の操向操作角度を等しく設定したものが多く提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ここで水田作業機での作業形態を考えるに、田植機や直播機では、圃場面に対して苗の移植や播種を行う際には走行機体を直進走行させると共に、走行機体が畦に接近すると、対地作業装置を上昇させる操作と略同時に前車輪を大きく操向操作して走行機体を反転させる作業形態を採るものとなっている。そこで、従来例のように操向操作と連動して対地作業装置を強制的に上昇させる連動昇降制御を行うよう構成したものでは、作業者が行うべき操作を低減して良好な形態での作業を可能にするものとなる。
【0004】
しかし、従来の技術のように前車輪の直進方向への戻し操作に連動して対地作業装置を下降させるものでは、例えば、1度の操向操作だけでは条合わせがうまくゆかずステアリングハンドルの戻し操作を行った後に、再度操向操作を必要とする場合でも、この戻し操作と連動して対地作業装置が下降してしまうため、条合わせを行い難い面があり、苗植付装置が下降した場合には、昇降レバー等の操作で苗植付装置を上昇させて上昇操作を行っているのが現状であり、手間の面で改善の余地があった。これと同様の理由から、機体の走行方向を修正する目的で枕地等でステアリングハンドルを左右に大きく切り返す操作を行った場合にも苗植付装置を昇降させることもあり改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、前車輪の操向操作と連動して対地作業装置を昇降作動させる良好な面を損なうことなく、対地作業装置を上昇させたまま走行機体の走行方向の修正を手間を掛けずに行い得る水田作業機を合理的に構成する点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の特徴(請求項1)は、操向操作型の左右の前車輪と非操向操作型の左右の後車輪とを備えた走行機体に対して昇降自在に対地作業装置を備え、この対地作業装置に対する動力の断続を行うクラッチを備えると共に、この対地作業装置に備えた接地フロートを所定の接地姿勢に維持するよう対地作業装置の昇降を行う自動昇降制御と、この自動昇降制御状態において前車輪の旋回方向への操作と連動して対地作業装置を上昇させ、かつ、前車輪の直進方向への戻し操作と連動して上昇状態の対地作業装置を下降させて自動昇降制御に復帰させる連動昇降制御とを行う制御装置を備えた水田作業機において、強制昇降操作具を備え、前記自動昇降制御状態において、この強制昇降操作具の操作に基づき対地作業装置を上昇させ、かつ、この強制昇降操作具の操作に基づき上昇状態の対地作業装置を下降させて自動昇降制御状態に復帰させる強制昇降制御を行うよう前記制御装置の制御形態が設定され、前記連動昇降制御により対地作業装置が上昇作動して上昇状態を維持している際に、前記強制昇降操作具を操作した際には、連動昇降制御による対地作業装置の下降を阻止する阻止手段を備えている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0007】
本発明の第2の特徴(請求項2)は請求項1において、前記阻止手段で連動昇降制御による対地作業装置の下降が阻止された状態で、前記強制昇降操作具によって対地作業装置の下降させ自動昇降制御への切換を許す制御切換手段を備えている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0008】
本発明の第3の特徴(請求項3)は請求項2において、前記対地作業装置が下降して自動昇降制御状態に復帰した後に前記強制昇降操作具の操作と連動してクラッチを入り操作する強制クラッチ入り手段を備えると共に、前記阻止手段で連動昇降制御による対地作業装置の下降が阻止された状態で、前記強制昇降操作具の操作に基づき前記制御切換手段により対地作業装置が下降し自動昇降制御に復帰した後には、前記強制クラッチ入り手段により前記クラッチを入り操作した後に、連動昇降制御による対地作業装置の上昇を許容する復帰手段を備えている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0009】
本発明の第4の特徴(請求項4)は請求項1〜3において、前記強制昇降操作具が、非操作時に中立姿勢を維持し、この中立姿勢から上方に操作することで対地作業装置を上昇させ、この中立姿勢から下方に操作することで対地作業装置を下降させ、この下降の後に下方に操作することで前記クラッチを入り操作するよう操作形態が設定されている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0010】
【0011】
本発明の第5の特徴(請求項5)は請求項1〜4において、前記クラッチが入り状態で前記対地作業装置が自動昇降制御状態にある場合に、前記前車輪を旋回方向へ操作した場合には、前車輪の操向角度が第1設定角度に達した際に前記クラッチを切り操作するクラッチ切り手段を備え、前車輪の操向角度が前記第1設定角度より大きい第2設定角度に達した際に前記連動昇降制御により対地作業装置を上昇させるよう前記制御装置の制御形態が設定されている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0012】
【0013】
[作用]
【0014】
上記第1の特徴によると、連動昇降制御によって前車輪の旋回方向への操作と連動して対地作業装置を上昇させ、前車輪の直進方向への操作と連動して対地作業装置を下降させる制御が行われると共に、この連動昇降制御によって対地作業装置を上昇させた状態で強制昇降操作具を操作した場合には、この後、前車輪を直進方向に操作しても阻止手段が対地作業装置の自動的な下降を阻止するものとなる。つまり、前車輪を左右に大きく操作して条合わせを行うような場合が生じても強制昇降操作具を操作するだけで対地作業装置を上昇状態に維持し得るものとなる。
【0015】
上記第2の特徴によると、上記第1の特徴のように連動昇降制御による対地作業装置の下降が阻止された状態で対地作業装置を下降させる場合には、強制昇降操作具を操作することで制御切換手段が対地作業装置を下降させ、自動昇降制御への切換えを許すものとなる。
【0016】
上記第3の特徴によると、上記第2の特徴のように強制昇降操作具の操作で対地作業装置を下降させ自動昇降制御に切換た後には、強制昇降操作具を操作することで強制クラッチ入り手段がクラッチを入り操作を行えるものとなり、この後、復帰手段が連動昇降制御による対地作業装置の昇降を許すものとなる。
【0017】
上記第4の特徴によると、強制昇降操作具の上方への操作で対地作業装置を上昇させ、強制昇降操作具の下方への操作で対地作業装置を下降させて自動昇降制御に移行させるので、対地作業装置の昇降と強制昇降操作具の操作方向とを一致させて誤操作を発生させ難くなり、又、クラッチを入り操作するする際の操作方向にも無理がない。
【0018】
【0019】
上記第5の特徴によると、連動昇降制御によって前車輪の旋回方向への操作と連動して対地作業装置を上昇させ、前車輪の直進方向への操作と連動して対地作業装置を下降させる制御が行われると共に、前車輪を旋回方向に操作した場合には、この操向角度が第1設定角度に達した際にクラッチを切り操作し、この第1設定角度より大きい第2設定角度に達した際に対地作業装置の上昇が行われるものとなる。
【0020】
【0021】
[発明の効果]
従って、前車輪の操向操作と連動して対地作業装置を昇降作動させる良好な面を損なうことなく、対地作業装置を上昇させたまま走行機体の走行方向の修正を手間を掛けずに行い得る水田作業機が合理的に構成されたのである(請求項1)。又、この上昇状態の対地作業装置を任意のタイミングで下降させ(請求項2)、この下降状態の後にクラッチを任意のタイミングで入り操作し(請求項3)、強制昇降操作具の操作に無理がない(請求項4)。又、前車輪の操向操作と連動して対地作業装置を昇降作動させる良好な面を損なうことなく、この上昇に先立ってクラッチを切り操作することで対地作業装置を無駄に作動させることがない(請求項5)。
【0022】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、操向操作される駆動型の前車輪1、及び、駆動型の後車輪2を備えた走行機体3の前部にエンジン4を搭載すると共に、この走行機体3の前部にエンジン4からの動力が伝えられる静油圧式の無段変速装置H、この無段変速装置Hからの動力が伝えられる前部位置のミッションケース5、及び、このミッションケース5からの動力が伝えられる後部位置の後車軸ケース6夫々を配置し、又、走行機体3の中央部にステアリングハンドル7と運転座席8とを配置し、走行機体3の後端部に対し油圧式のアクチュエータとしてのリフトシリンダ9で駆動昇降操作される平行4連型のリンク機構Lを介して対地作業装置としての6条植用の苗植付装置Aを連結し、又、走行機体3の後部に施肥装置Bを備えて水田作業機としての田植機を構成する。
【0023】
前記ミッションケース5には前記無段変速装置Hからの動力を断続する主クラッチMCと走行機体3の走行速度を作業走行速度と、これより高速の路上走行速度とに切換えるギヤ式の副変速装置SMと、左右の前車輪1,1に動力を伝える差動機構(図示せず)と、単位走行距離に対する苗植付装置Aの苗植付回数を設定する株間変速機構(図示せず)とを内蔵すると共に、このミッションケース5から苗植付装置Aに対する動力の伝動と遮断とを行う植付クラッチPCとを内蔵している。又、前記後車軸ケース6には左右の後車輪2,2に動力を伝える伝動系(図を参照)と、この伝動系からの左右の後車輪2,2夫々に伝えられる動力を切り操作する左右のサイドクラッチSC,SCと制動力を作用させる走行ブレーキRBとを内蔵(図8を参照)している。
【0024】
図2に示すように、運転座席8の前方のメータパネルMPの左側部には前記無段変速装置Hを変速操作する主変速レバー11を配置し、運転座席8の左側部には前記副変速装置SMを変速操作する副変速レバー12を配置し、運転座席8の右側部には苗植付装置Aの昇降制御を行う昇降レバー13を配置し、前記ステアリングハンドル7のポスト部の右側部には苗植付装置Aを強制的に昇降させる強制昇降レバー14(強制昇降操作具の一例)を配置し、ステップの左側には前記主クラッチMCを操作する主クラッチペダル15を配置し、ステップの右側にはブレーキペダル16を配置してある。
【0025】
図4に示すように、前記主変速レバー11は、中間の「停止」位置から前方の「前進」域で前方に操作することで機体を前進方向に増速させ、「停止」位置から後方の「後進」域で後方に操作することで機体を後進方向に増速させるよう無段変速装置Hと連係しており、基端部には操作位置を判別するポテンショメータ型の主変速レバーセンサ11Sを備えている。又、同図に示すように、前記強制昇降レバー14は非操作状態でバネ(図示せず)の付勢力で略水平姿勢の中立位置「N」を維持し、苗植付装置Aを強制上昇させる上げ位置「UP」と、苗植付装置Aを強制下降させる下げ位置「DW」とに操作自在に構成され、この強制昇降レバー14の操作位置を判別するよう基端部には複数のスイッチを組み合わせて成る強制昇降レバーセンサ14Sを備えている。図5に示すように、副変速レバー12は路上で高速で走行させる「高」(路上走行速度域の一例)位置と、作業時に比較的低速で走行させる「低」(作業走行域の一例)位置とに設定自在に構成され、レバーガイドには副変速レバー12を「低」位置に設定したことを判別するリミットスイッチ型の副変速レバーセンサ12Sを備えている。図3に示すように、昇降レバー13は苗植付装置Aの昇降を停止させる「中立」位置と、苗植付装置Aを上昇させる「上昇」位置と、苗植付装置Aを下降させる「下降」位置と、苗植付装置Aを下降させた状態で前記植付クラッチPCを入り操作する「入」位置と、前記強制昇降レバー14によって苗植付装置Aの強制昇降と、後述するように前車輪1の操向操作と連動して苗植付装置Aの昇降作動を行わせる「自動」位置とに設定自在に構成され(図中の「切」位置では植付クラッチPCは切り状態にあることを示している)、この昇降レバー13の操作位置を判別するポテンショメータ型の昇降レバーセンサ13Sを基端部に備えている。
【0026】
図1に示すように、前記リンク機構Lは左右一対のトップリンク17と左右一対のロアーリンク18と、後端の縦リンク19とで構成され、この縦リンク19の下端部に対して苗植付装置Aの伝動ケース20がローリング自在に連結されている。苗植付装置Aは、走行機体3から伝動軸21を介して伝動ケース20に動力が伝えられることで、苗載せ台22に載置したマット状苗Wの下端から植付機構23が1株ずつ苗を切り出して圃場面Sに移植すると共に、苗載せ台22を横方向に往復作動させることでマット状苗Wの下端の苗を横方向に連続的に切り出すものとなっている。又、この苗植付装置Aの下部には複数の接地フロート24を備えており、この接地フロート24のうち左右方向での中央のもの(以下、感知フロート24Sと称する)を図6に示す如く、横向き姿勢の軸芯Q周りで揺動自在に支持されると共に、この感知フロート24Sの前部を下方に向けて感知バネ25で付勢して感知荷重を設定し、この感知フロート24Sの前部の上下方向の変位量から感知フロート24Sの揺動姿勢を計測するようポテンショメータ型のフロートセンサFSを備えている。更に、感知フロート24Sが圃場面Sに接地した状態で、この感知フロート24Sの揺動姿勢を維持するよう苗植付装置Aの昇降を行う自動昇降制御を行い得るよう構成されている。又、前記施肥装置Bはホッパー26に貯留された粒状や粉状の肥料を走行速度と同期して繰り出し、ブロアー27からの空気によってホース28に送り、接地フロート24に備えた作溝器29から圃場面S下に供給するよう構成されている。
【0027】
この田植機では、図8に示すように操向制御系が構成されている。つまり、前記ステアリングハンドル7の操作力が伝えられるパワーステアリングユニット31のピットマンアーム32と左右の前車輪1,1のナックルアーム33,33とをドラッグリンク34,34を介して連係してあり、このピットマンアーム32にアーム35を固設し、このアーム35に形成した長孔35Aに一端がピン係合する中間ロッド36の他端を縦向き姿勢の揺動軸芯周りで揺動自在に支持された中継アーム37に連結し、更に、この中継アーム37と係脱自在な振り分けリンク38の両端部とがサイドクラッチSC、SCのアーム39,39とを操作ロッド40を介して連係してある。中継アーム37と振り分けアーム38は人為操作によって一体揺動する状態と、中継アーム37の揺動作動力が振り分けアーム38に伝えられない分離状態とに切換自在に構成され(切換操作系は図示せず)、中継アーム37と振り分けアーム38とを連係状態に設定した状態でステアリングハンドル7を操作した場合には、ピットマンアーム32の揺動と連係して左右の前車輪1,1が操向作動すると共に、前記長孔35Aの融通の範囲を越えてピットマンアーム32が揺動作動した場合には、この揺動作動力が中間ロッド36、中継アーム37、振り分けリンク38、操作ロッド40夫々を介して旋回内側のサイドクラッチSCのアーム39を操作して、そのサイドクラッチSCを切り操作するものとなっている。又、一方のナックルアーム33の軸芯周りでの揺動量を計測するポテンショメータ型のステアリングセンサSSを備えている。
【0028】
同図に示すように、前記主クラッチペダル15の踏み込み操作で前記主クラッチMCを切り操作するよう機械的に連係してあり、前記ブレーキペダル16と前記走行ブレーキRBのアーム41とを操作ロッド42を介して連係すると共に、このブレーキペダル16と前記主クラッチMCとを機械的に連係してあり、このブレーキペダル16を踏み込み操作した場合には踏み込み操作の中間域で主クラッチMCの切り操作し、更に踏み込み操作した場合に車輪の制動操作を行えるよう構成してある。尚、前記ミッションケース5から後車軸ケース6に対して中間軸43を介して走行駆動力を伝えるものとなっており、この駆動力は一対のベベルギヤ44,44を介して駆動軸45に伝えるものとなっており(差動装置は備えていない)、この駆動軸45に対して摩擦多板式のサイドクラッチSCと、摩擦多板式の走行ブレーキRBとが備えられている。
【0029】
この田植機では、図9に示すように、マイクロプロセッサを備えた制御装置47を備えており、この制御装置47は、前記自動昇降制御の他に、以下の制御を行うものとなっている。つまり、前記自動昇降制御が行われている状態において前記強制昇降レバー14を上げ位置「UP」に操作することで苗植付装置Aを上限まで上昇させ、この上昇状態において強制昇降レバー14を下げ位置「DW」に操作することで苗植付装置Aを接地状態まで下降させ、かつ、自動昇降制御に復帰させる強制昇降制御と、前記自動昇降制御が行われている状態において、主変速レバー11を後進域に操作した場合には苗植付装置Aを上限まで上昇させるバックアップ制御と、前記自動昇降制御が行われている状態において前車輪1の旋回方向への操作と連動して対地作業装置Aを上昇させ、かつ、前車輪1の直進方向への戻し操作と連動して上昇状態の対地作業装置Aを下降させて自動昇降制御に復帰させる連動昇降制御とを行うものとなっている。
【0030】
つまり、前記制御装置47に対して前記主変速レバーセンサ11S、前記副変速レバーセンサ12S、前記昇降レバーセンサ13S、前記強制昇降レバーセンサ14S、前記フロートセンサFS、自動昇降制御時の制御感度を設定するポテンショメータ型の感度設定器48、リンク機構Lの揺動姿勢から苗植付装置Aが上限に達したことを判別するリミットスイッチ型の上限センサ49、前車輪1の操向角度を計測する前記ステアリングセンサSS、前記主クラッチMCの状態を判別する主クラッチセンサ50、走行機体3を後進させる操作と連動して苗植付装置Aを上限まで上昇させる制御を行わせるためのバックアップスイッチ51、前車輪1の操向操作と連動して苗植付装置Aの昇降制御を行うためのオートアップスイッチ52夫々からの信号が入力すると共に、前記無段変速装置Hを変速操作する電動型の変速モータ53、前記リフトシリンダ9に対して作動油を給排する電磁バルブV、前記植付クラッチPCを入り切り操作する電動型の植付モータ54夫々に信号を出力する系が形成されている。
【0031】
そして、この制御装置47は以下の制御を行うものとなっている。
[自動昇降制御]
この制御は、前記昇降レバー13を「下降」位置、「植付」位置、若しくは「自動」位置に設定して苗植付装置Aを圃場面Sまで下降させた状態で機能するものであり、その制御形態は、感度設定器48からの信号値を制御目標に設定すると共に、前記フロートセンサFSで検出される信号値が制御目標値に向かうようリフトシリンダ9を駆動して苗植付装置Aの昇降を行い、制御目標を基準に設定された不感帯内にフロートセンサFSの検出値が達すると昇降制御を停止するよう設定されている。又、感度設定器48は制御感度を「鈍感」から「敏感」の領域で操作できるものとなっており、この制御時に、「鈍感」の側に設定した場合には感知フロート24Sが前下がり傾向となる姿勢を維持するよう昇降制御が行われる結果、感知フロート24Sに作用する感知バネ25の付勢が低下して圃場面Sの凹凸に敏感に追従した昇降制御が行われるものとなり、又、感度設定器48を「敏感」の側に設定した場合には感知フロート24Sが前上がり傾向となる姿勢に維持するよう昇降制御が行われる結果、感知フロート24Sに作用する感知バネ25の付勢が高まって圃場面Sの凹凸に対する追従性能が低下した昇降制御が行われるものとなっている。
【0032】
[強制昇降制御]
この制御は前記昇降レバー13を「自動」位置に設定した状態で機能するものであり、その制御形態は、苗植付装置Aが前記自動昇降制御で圃場面Sに追従して昇降する状態で強制昇降レバー14を上げ位置「UP」に操作した場合に、植付クラッチPCが入り状態にあれば、植付モータ54を駆動して切り操作すると共に、リフトシリンダ9を駆動して前記上限センサ49で苗植付装置Aが上限に達したことが検出されるまで苗植付装置Aの上昇を行い、この上昇状態で強制昇降レバー14を下げ位置「DW」に操作した場合にはリフトシリンダ9を駆動して苗植付装置Aの下降を開始し、自動昇降制御に復帰させるよう設定されている。更に、この下降によって自動昇降制御状態に達した後に強制昇降レバー14を再度下げ位置「DW」に操作した場合には植付モータ54を駆動して植付クラッチPCを入り操作する制御も行われる。
【0033】
[バックアップ制御]
この制御は、前記バックアップスイッチ51をON状態に設定した状態で、かつ、前記昇降レバー13を「自動」位置に設定した状態で機能するものであり、その制御形態は、苗植付装置Aが前記自動昇降制御で圃場面Sに追従して昇降する状態で、主変速レバー11を後進域に操作した場合に、植付クラッチPCが入り状態にある場合には,植付モータ54を駆動して切り操作すると共に、リフトシリンダ9を駆動して前記上限センサ49で苗植付装置Aが上限に達したことが検出されるまで苗植付装置Aの上昇を行うよう設定されている。そして、この上昇状態で強制昇降レバー14を下げ位置「DW」に設定することで強制昇降制御と同様にリフトシリンダ9を駆動して苗植付装置Aの下降を開始し、自動昇降制御に復帰させるよう設定されている。更に、この下降によって自動昇降制御状態に達した後に強制昇降レバー14を再度下げ位置「DW」に操作した場合には植付モータ54を駆動して植付クラッチPCを入り操作する制御も行われる。
【0034】
[連動昇降制御]
この連動昇降制御は、『連動上昇制御ルーチン』と『連動下降制御ルーチン』と『クラッチ制御ルーチン』とで構成され、これらの制御形態を以下に説明する。
『連動上昇制御ルーチン』
この制御は図10のフローチャートに示すように、フラグが「0」である場合にのみ前記オートアップスイッチ52をON状態に設定した状態で(条件1.)、主クラッチMCが入り状態にあり(条件2.)、副変速レバー12が「低」位置にあり(条件3.)、かつ、前記昇降レバー13が「自動」位置に設定された状態(条件4.)で機能するものであり、この条件が成立した場合には(#101〜#103ステップ)、ステアリング角センサSSからの信号を入力して前車輪1が操向操作され、その操向角度が図7に示す上昇開始角度(α)に達したことを判別した場合には、植付クラッチPCが入り状態にある場合にのみ植付モータ54を駆動して切り操作し、リフトシリンダ9を駆動して前記上限センサ49で苗植付装置Aが上限に達したことが検出されるまで苗植付装置Aの上昇を行うものとなっている(#104〜#109ステップ)。尚、この制御では上昇開始角度(α)より下降開始角度(β)を大きい角度に設定してあり、又、フラグが「1」である状況は後述するように強制昇降レバー14の操作で苗植付装置Aが下降して自動昇降制御に以降した後、植付クラッチPCが切り状態にある状況を示すものである。そして、このフラグは初期状態では「0」にセットされる。
【0035】
『連動下降制御ルーチン』
この制御は図11のフローチャートに示すように、苗植付装置Aが上昇状態で、フラグが「0」であった場合には、強制昇降レバー14が上げ位置「UP」、あるいは、下げ位置「DW」に操作されたかを判別し、操作されない場合にはステアリングセンサSSからの信号を入力して前車輪1が図7に示す角度(β)まで戻し操作されたかを判別し、戻し操作されたことを判別した場合にはリフトシリンダ9を駆動して苗植付装置Aの下降を開始し、感知フロート24Sからの信号によって接地したことを確認した後、自動昇降制御に移行する制御を行い(#201〜#207ステップ)、又、#203ステップで強制昇降レバー14が上げ位置「UP」、あるいは、下げ位置「DW」に操作されたことを判別した場合にはフラグを「1」にセットし(#208ステップ)、#201ステップでフラグが「1」であることを判別した場合には強制昇降レバー14が下げ位置「DW」に操作されるまで苗植付装置Aの下降を行わず、この強制昇降レバー14が下げ位置「DW」に操作されたことを判別した後には#205ステップからの制御に合流して前述と同様に自動昇降制御に移行するものとなっている(#209ステップ)。又、この制御のうち#202ステップで苗植付装置Aの下降を阻止する阻止手段Rが構成され、#209ステップで強制昇降レバー14の操作によって苗植付装置Aの下降を許す制御切換手段Tが構成されている。
【0036】
『クラッチ制御ルーチン』
この制御は図12のフローチャートに示すように、苗植付装置Aが自動昇降制御状態にある状態で、強制昇降レバー14が下げ位置「DW」に操作された場合に、植付クラッチPCが切り状態にある場合には植付モータ54を作動させて入り操作し、この入り操作時にフラグが「1」の状態にある場合には、フラグを「0」に戻す処理を行うものとなっている(#301〜#306ステップ)。又、この制御のうち#302〜#304ステップで、強制昇降レバー14の操作で苗植付装置Aの下降を許す強制クラッチ入り手段Uが構成され、#306ステップで連動上昇ルーチンによる苗植付装置Aの上昇制御を許す復帰手段Vが構成されている。
【0037】
図7に示すように前記上昇開始角度(α)、下降開始角度(β)の順序で角度が大きくなるよう相対的な角度が設定されており、この田植機では、操向角度が上昇開始角度(α)に達した際に旋回内側の後車輪2のサイドクラッチを切り操作するよう相対関係が設定されている。
【0038】
このように、本発明の第1の実施の形態では苗植付作業を行い、作業時に走行機体3が畦に接近して走行機体3を旋回させる場合には、前車輪1の操向角度が上昇開始角度(α)に達した時点で連動昇降制御によってステアリングハンドル7の操作と連動して苗植付装置Aを自動的に上昇させると共に、この上昇開始と同時に旋回内側のサイドクラッチSCを切り操作して小半径での旋回を可能にしており、この制御によって苗植付装置Aは上限まで上昇するものとなる。そして、このように苗植付装置Aが上昇状態にある際に強制昇降レバー14が操作されない場合には従来からのように前車輪1が下降開始角度(β)までの戻し操作と連動して苗植付装置Aの下降させて自動昇降制御に移行させるものとなっているが、苗植付装置Aが上昇状態にある際に強制昇降レバー14が操作されたた場合には、これ以降、前車輪1が下降開始角度(β)まで操向操作されても苗植付装置Aの下降は行わず、このように苗植付装置Aを上昇位置に維持したまま前車輪1を左右に操作して走行機体3の走行姿勢の設定や条合わせを容易に行わせるものにしている。この後、任意のタイミングで強制昇降レバー14を下げ位置「DW」に操作することで苗植付装置Aを下降させて自動昇降制御に移行させる制御を行い、しかも、このように自動昇降制御に移行した後にも、強制昇降レバー14を下げ位置「DW」に操作することで植付クラッチPCを入り操作した後にのみ、前車輪1の操向操作と連動した苗植付装置Aの上昇が許されるものとなっている。
【0039】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この第2の実施の形態では前記第1の実施の形態と同じ機能を有するものには第1の実施の形態と共通の番号、符号を付している。
【0040】
[連動昇降制御]
この第2の実施の形態の連動昇降制御は、『連動上昇制御ルーチン』と『連動下降制御ルーチン』とで構成され、これらの制御形態を以下に説明する。
『連動上昇制御ルーチン』
この制御は図14のフローチャートに示すように、オートアップスイッチ52をON状態に設定した状態で(条件1.)、主クラッチMCが入り状態にあり(条件2.)、副変速レバー12が「低」位置にあり(条件3.)、かつ、前記昇降レバー13が「自動」位置に設定された状態(条件4.)で機能するものであり、この条件が成立した場合には(#101、#102ステップ)、ステアリング角センサSSからの信号を入力して前車輪1が操向操作され、その操向角度が図13に示す第1設定角度(θ1)に達したことを判別した場合には、植付クラッチPCが入り状態にある場合にのみ植付モータ54を駆動して切り操作すると共に、この後、更に操向操作され、前車輪1の操向角度が図13に示す第2設定角度(θ2)に達すると、リフトシリンダ9を駆動して前記上限センサ49で苗植付装置Aが上限に達したことが検出されるまで苗植付装置Aの上昇を行うものとなっている(#103〜#108ステップ)。尚、この制御では図13に示す如く第1設定角度(θ1)より第2設定角度(θ2)を大きい角度に設定してある。又、この制御のうち、#103ステップ〜106ステップで苗植付装置Aの上昇と同時にクラッチを切り操作するクラッチ入り手段Wと、前車輪1の操向角度が第1設定角度(θ1)に達した際にクラッチを切り操作するクラッチ切り手段Xとが構成され、又、苗植付装置Aを上昇させる際にクラッチを切り操作し、苗植付装置Aの下降の後、前車輪1を直進方向に操作することでクラッチを入り操作するクラッチ制御手段Yの一部を構成している。
【0041】
『連動下降制御ルーチン』
この制御は、図15のフローチャートに示すように、苗植付装置Aが上昇状態にある場合には、ステアリングセンサSSからの信号を入力して前車輪1が第1設定角度(θ1)まで戻し操作されたかを判別し、戻し操作されたことを判別した場合にはリフトシリンダ9を駆動して苗植付装置Aの下降を開始し、感知フロート24Sからの信号によって接地したことを確認した後、自動昇降制御に移行する制御を行い(#201〜#205ステップ)、この後、ステアリングセンサSSからの信号を入力して前車輪1の操向角度が図13に示す第3設定角度(θ3)まで低下した際に植付モータ54を駆動して植付クラッチPCを入り操作するものとなっている(#201〜#208ステップ)。又、この制御のうち、#206〜#208ステップで苗植付装置Aを上昇させる際にクラッチを切り操作し、苗植付装置Aの下降の後、前車輪1を直進方向に操作することでクラッチを入り操作するクラッチ制御手段Yの一部を構成している。
【0042】
このように、本発明の第2の実施の形態では苗植付作業を行い、作業時に走行機体3が畦に接近して走行機体3を旋回させる場合には、前車輪1の操向角度が第1設定角度(θ1)に達した時点で連動昇降制御によってステアリングハンドル7の操作と連動して苗植付装置Aを自動的に上昇させると共に、この上昇開始と同時に旋回内側のサイドクラッチSCを切り操作して小半径での旋回を可能にしており、この制御によって苗植付装置Aは上限まで上昇するものとなる。そして、前車輪1が第2設定角度(θ2)までの戻し操作された場合には、連動して苗植付装置Aの下降させて自動昇降制御に移行させるものとなっており、更に、直進方向に前車輪1を戻し操作して第3設定角度(θ3)に達した場合には植付クラッチPCを自動的に入り操作するものとなり、作業者の操作の手間が掛からないものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 田植機の全体側面図
【図2】 田植機前部の平面図
【図3】 昇降レバーの操作経路を示す平面図
【図4】 主変速レバーと強制昇降レバーとの操作域を示す側面図
【図5】 副変速レバーの操作経路を示す平面図
【図6】 感知フロートとフロートセンサとの連係を示す側面図
【図7】 前車輪の操向角度を示す平面図
【図8】 前後車輪の操向操作系を示す平面図
【図9】 制御系のブロック回路図
【図10】 連動上昇ルーチンのフローチャート
【図11】 連動下降ルーチンのフローチャート
【図12】 クラッチ制御ルーチンのフローチャート
【図13】 第2の実施の形態の前車輪の操向角度を示す平面図
【図14】 連動上昇ルーチンのフローチャート
【図15】 連動下降ルーチンのフローチャート
【符号の説明】
1 前車輪
2 後車輪
3 走行機体
14 強制昇降操作具
24S 接地フロート
47 制御装置
A 対地作業総理
N 中立位置
R 阻止手段
T 制御切換手段
U クラッチ入り手段
V 復帰手段
W クラッチ切り手段
X クラッチ切り手段
Y クラッチ制御手段
PC クラッチ
θ1 第1設定角度
θ2 第2設定角度
Claims (5)
- 操向操作型の左右の前車輪と非操向操作型の左右の後車輪とを備えた走行機体に対して昇降自在に対地作業装置を備え、この対地作業装置に対する動力の断続を行うクラッチを備えると共に、この対地作業装置に備えた接地フロートを所定の接地姿勢に維持するよう対地作業装置の昇降を行う自動昇降制御と、この自動昇降制御状態において前車輪の旋回方向への操作と連動して対地作業装置を上昇させ、かつ、前車輪の直進方向への戻し操作と連動して上昇状態の対地作業装置を下降させて自動昇降制御に復帰させる連動昇降制御とを行う制御装置を備えた水田作業機であって、
強制昇降操作具を備え、前記自動昇降制御状態において、この強制昇降操作具の操作に基づき対地作業装置を上昇させ、かつ、この強制昇降操作具の操作に基づき上昇状態の対地作業装置を下降させて自動昇降制御状態に復帰させる強制昇降制御を行うよう前記制御装置の制御形態が設定され、前記連動昇降制御により対地作業装置が上昇作動して上昇状態を維持している際に、前記強制昇降操作具を操作した際には、連動昇降制御による対地作業装置の下降を阻止する阻止手段を備えている水田作業機。 - 前記阻止手段で連動昇降制御による対地作業装置の下降が阻止された状態で、前記強制昇降操作具によって対地作業装置を下降させ自動昇降制御への切換を許す制御切換手段を備えている請求項1記載の水田作業機。
- 前記対地作業装置が下降して自動昇降制御状態に復帰した後に前記強制昇降操作具の操作と連動してクラッチを入り操作する強制クラッチ入り手段を備えると共に、前記阻止手段で連動昇降制御による対地作業装置の下降が阻止された状態で、前記強制昇降操作具の操作に基づき前記制御切換手段により対地作業装置が下降し自動昇降制御に復帰した後には、前記強制クラッチ入り手段により前記クラッチを入り操作した後に、連動昇降制御による対地作業装置の上昇を許容する復帰手段を備えている請求項2記載の水田作業機。
- 前記強制昇降操作具が、非操作時に中立姿勢を維持し、この中立姿勢から上方に操作することで対地作業装置を上昇させ、この中立姿勢から下方に操作することで対地作業装置を下降させ、この下降の後に下方に操作することで前記クラッチを入り操作するよう操作形態が設定されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の水田作業機。
- 前記クラッチが入り状態で前記対地作業装置が自動昇降制御状態にある場合に、前記前車輪を旋回方向へ操作した場合には、前車輪の操向角度が第1設定角度に達した際に前記クラッチを切り操作するクラッチ切り手段を備え、前車輪の操向角度が前記第1設定角度より大きい第2設定角度に達した際に前記連動昇降制御により対地作業装置を上昇させるよう前記制御装置の制御形態が設定されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の水田作業機。
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