JP6645141B2 - 導電性高分子水溶液、及び導電性高分子膜並びに該被覆物品 - Google Patents

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Description

本発明は、高分子基材への塗布性と導電性の付与を改善するためになされたものであり、高い導電性を有する特定の自己ドープ型導電性高分子と特定の界面活性剤等を含む新規な導電性組成物の水溶液、及びそれらを乾燥させて得られる導電性高分子膜、並びにその被覆物品に関するものである。
ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等に代表されるπ共役系高分子に、電子受容性化合物をドーパントとしてドープした導電性高分子材料が開発され、例えば、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、電磁波シールド、エレクトロクロミック素子、電極材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサ、アクチュエータ等への応用が検討されている。これらの中でも、化学的安定性の面からポリチオフェン系導電性高分子材料が実用上有用である。
ポリチオフェン系導電性高分子材料としては、ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)の水溶液中で、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を重合させることで得られるPEDOT/PSS水分散体溶液や、水溶性の付与とドーピング作用を兼ね備えた置換基(スルホ基、スルホネート基等)を直接又はスペーサを介してポリマー主鎖中に有する、いわゆる自己ドープ型導電性高分子があり、例えば、スルホン化ポリアニリン、PEDOT−S等が知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。
導電性高分子の用途としては、特に帯電防止剤や固体電解コンデンサの固体電解質への利用が多く検討されている。例えば、帯電防止剤は非導電性基材を導電性高分子で被覆して導電性を付与するのに使用される。一般に表面保護用の粘着フィルムやキャリヤテープ等にはポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂が基材として広く用いられているが、これら高分子基材は絶縁性のため、成形、加工、使用の際に静電気によるフィルムへの塵や埃の付着やフィルム同士の密着、フィルムカット時やロール状フィルムの巻出し時の帯電により、電子回路や半導体部品等の電子機器を静電破壊する問題がある。これを回避するための方策の一つとして、導電性高分子が帯電防止層に使用されている。導電性高分子系の帯電防止剤は電子伝導性の導電機構のため、界面活性剤型の帯電防止剤のように使用環境の湿度による機能低下が無い利点がある。このような用途に自己ドープ型導電性高分子の利用が注目されている。自己ドープ型導電性高分子はドーパントの追加が不要であり、外部ドープ型導電性高分子と比較して、優れた水溶性と耐熱性を有しているため、成形加工性、膜の均質性、環境変化の影響が小さい利点がある。しかしながら、水系導電性高分子全般に言えるが、自己ドープ型導電性高分子単独の水溶液を高分子基材にスピンコート等で成膜することは濡れ性が悪く困難であった。
これに対して自己ドープ型導電性高分子のポリ[3−スルホプロピル−2,5−チエニレン]の水溶液に、水溶性樹脂、界面活性剤等を配合した導電性組成物を使用することで高分子基材への成膜性が改善されることが開示されている(特許文献1)。しかしながら、ポリ[3−スルホプロピル−2,5−チエニレン]の導電率は0.1〜1S/cmと低いため、成膜性を良くする為に水溶性樹脂、界面活性剤等の配合量を増やすと導電性が犠牲となり、得られる帯電防止組成物の性能が必ずしも十分とは言えない。また、帯電防止能を確保するために配合量にも制約があるため、基材によっては必ずしも成膜性が十分ではなく、依然として改善要求がある。
本出願人はこれまでに高い導電性と優れた水溶性を兼ね備えた自己ドープ型導電性高分子を報告しているが(例えば、特許文献2参照)、高分子基材への塗布性は必ずしも十分ではなかった。
この高分子基材への塗布性が改善すれば、上記自己ドープ型導電性高分子水溶液を例えば、熱可塑性樹脂、不織布、紙、レジスト膜付基板等の高分子基材に塗布し乾燥して高い導電性を有する導電性高分子膜で被覆することが可能となり、この導電性高分子膜の被覆物品を例えば、帯電防止機能を有するフィルムや固体電解コンデンサの固体電解質、及び巻回型固体電解コンデンサ用のセパレータとしての使用が可能となる。
また、用途に応じては(特に半導体用途では)、使用する導電性高分子溶液中の埃や塵等のゴミや、凝集物などが塗膜表面の荒れの原因となるため、使用前にろ過操作が必要となる。しかしながら、例えば特許文献3に記載の導電性組成物ではろ過性が悪く、頻繁にフィルターのつまりが発生するため、その都度フィルターを交換しなければならない等の課題があった。
また、光学フィルム用の帯電防止剤として使用する際には、それらを塗布して得られる導電性塗膜には良好な透明性と耐久性(耐熱性や耐湿性)が求められていた。
特開平6−145386号公報 国際公開第2014/007299号 特開2002−226721号公報
Journal of American Chemical Society,112,2801−2803(1990) Advanced Materials,Vol.23(38)4403−4408(2011)
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、
(1)高分子基材への塗布性を改善する新規な導電性高分子水溶液を提供すること、及び(2)高い導電性を有する導電性高分子膜並びにその被覆物品を提供すること、である。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明の導電性高分子水溶液が、従来のポリチオフェンのみの水溶液では達成困難であった高分子基材への塗布性と高い導電性を兼ね備えた導電性高分子膜並びにその被覆物品の作製が可能であることを見出した。
すなわち、本発明は以下に示すとおりの導電性高分子水溶液の組成物、及び導電性高分子膜並びにその被覆物品に関するものである。
不織布や紙等に導電性高分子膜を被覆した物品は例えば、帯電防止機能を有するフィルムや固体電解コンデンサのセパレータとしての使用が可能となる。
[1]
下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01〜10重量%、並びに非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の界面活性剤(B)を0.001〜10重量%含み、pHが1.5〜5.0の範囲であることを特徴とする、導電性高分子水溶液。
[上記式(1)及び式(2)中、Lは下記一般式(3)又は式(4)を表し、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。]
[上記式(3)中、lは6〜12の整数を表す。]
[上記式(4)中、mは1〜6の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。]
[2]
アミン化合物の共役酸が、イミダゾール化合物の共役酸又は[NH(Rを表し、Rは各々独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表す上記[1]に記載の導電性高分子水溶液。
[3]
アミン化合物の共役酸が[NH(Rを表し、Rは各々独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルキル基、アミノ基、若しくはヒドロキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表す上記[1]に記載の導電性高分子水溶液。
[4]
第4級アンモニウムカチオンが、テトラメチルアンモニウムカチオン、又はテトラエチルアンモニウムカチオンであることを特徴とする[1]に記載の導電性高分子水溶液。
[5]
界面活性剤(B)が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンの共重合体、ポリエチレングリコール型界面活性剤、アセチレングリコール型界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤、及びベタイン型両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
[6]
界面活性剤(B)が、ポリエチレングリコール型界面活性剤、アセチレングリコール型界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
[7]界面活性剤(B)が、水への溶解度が0.01重量%以上であり、且つグリフィン法HLB(親水親油バランス)が7〜20の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
[8]
さらに、アルコール及び水溶性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の水溶性化合物(C)を含むことを特徴とする上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
[9]
水溶性化合物(C)を、0.001〜10重量%含むことを特徴とする上記[8]に記載の導電性高分子水溶液。
[10]
アルコールが、エタノール、2価のアルコール、3価のアルコール、及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコールであることを特徴とする上記[8]又は上記[9]に記載の導電性高分子水溶液。
[11]
水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリエステル、及び水溶性ポリウレタンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[8]乃至[10]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
[12]
さらに、アミン化合物(D)を含むことを特徴とする上記[1]乃至[11]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
[13]
上記[1]乃至[12]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液を塗布し乾燥させることを特徴とする導電性高分子膜の製造方法。
本発明によれば、高分子基材にハジキや斑無くコーティング可能な新規な導電性高分子水溶液を提供できる。さらに本水溶液から形成される導電性高分子膜並びに被覆物品は、高い導電性を有しているため、帯電防止フィルム、及び固体電解コンデンサの固体電解質、及び巻回型アルミ固体電解コンデンサ用のセパレータとしての使用が期待できる。
また、本発明によれば、導電性ポリマーに添加する中和アミンの使用量を低減できるため、本発明の導電性高分子水溶液使用環境のアミンエミッション汚染を顕著に低減することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性高分子水溶液は、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01〜10重量%、並びに非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の界面活性剤(B)を0.001〜10重量%含み、pHが1.5〜5.0の範囲である、ことをその特徴とする。
[上記式(1)及び式(2)中、Lは下記一般式(3)又は式(4)を表し、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、又はアミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。]
[上記式(3)中、lは6〜12の整数を表す。]
[上記式(4)中、mは1〜6の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。]
上記式(1)又は(2)中、Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。
前記のアルカリ金属イオンとしては、例えば、Liイオン、Naイオン、Kイオンが好ましい。
前記のアミン化合物の共役酸としては、アミン化合物にヒドロン(H)が付加してカチオン種になったものを示す。
前記の第4級アンモニウムカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラノルマルプロピルアンモニウムカチオン、テトラノルマルブチルアンモニウムカチオン、テトラノルマルヘキシルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。入手の観点から好ましくは、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオンである。
上記式(3)中、lは6〜12の整数を表し、好ましくは6〜8の整数である。
上記式(4)中、Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。
炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
式(4)のRについては、成膜性の点で、水素原子、メチル基、エチル基、又はフッ素原子であることが好ましい。
上記式(4)中、mは1〜6の整数を表し、好ましくは、mは1〜4の整数であり、より好ましくは2である。
上記式(2)で表される構造単位は、上記式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表す。
ドーピングにより絶縁体−金属転移を引き起こすドーパントは、アクセプタとドナーに分けられる。前者は、ドーピングにより導電性ポリマーの高分子鎖の近くに入り主鎖の共役系からπ電子を奪う。結果として、主鎖上に正電荷(正孔、ホール)が注入されるため、p型ドーパントとも呼ばれる。また、後者は、逆に主鎖の共役系に電子を与えることになり、この電子が主鎖の共役系を動くことになるため、n型ドーパントとも呼ばれる。
本発明におけるドーパントは、ポリマー分子内に共有結合で結びついたスルホ基又はスルホナート基であり、p型ドーパントである。このように外部からドーパントを添加することなく導電性を発現するポリマーは自己ドープ型高分子と呼ばれている。
本発明のポリチオフェン(A)は、下記式(5)で表されるチオフェンモノマーを、水又はアルコール溶媒中、酸化剤の存在下に重合させることで製造することができる。
[上記式(5)中、Lは上記と同じ定義である。Mは、金属イオンを表わす。]
一般式(5)におけるMで表される金属イオンとしては、特に限定するものではないが、Liイオン、Naイオン、及びKイオン等が挙げられる。
重合後のポリマーは金属塩であるため、必要に応じて、得られたポリマーを酸処理することでMを水素イオンへ変換可能であり、さらにこれをアミン化合物と反応させることで、Mをアミン化合物の共役酸へ変換可能である
上記式(1)又は式(2)において、Lが上記式(3)で表される、本発明のポリチオフェンを得るためのチオフェンモノマーとしては、具体的には、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸ナトリウム、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸リチウム、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸カリウム、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸ナトリウム、及び8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸カリウム等が例示される。
上記式(1)又は式(2)において、Lが上記式(4)で表される、本発明のポリチオフェンを得るためのチオフェンモノマーとしては、具体的には、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−エチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロピル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ペンチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ヘキシル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソプロピル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソブチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソペンチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸アンモニウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブタンスルホン酸カリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−ブタンスルホン酸カリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、及び4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−ブタンスルホン酸カリウム等が例示される。
本発明のアミン化合物の共役酸としては、スルホン酸基と反応して共役酸を形成するアミン化合物であればよく、sp3混成軌道を有するN(Rで表されるアミン化合物[共役酸としては[NH(Rで表される。]、又はsp2混成軌道を有するピリジン類化合物、イミダゾール類化合物等である。
置換基Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表す。
炭素数1〜6のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アミノ基、又はヒドロキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的には、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基等が例示される。
これらのうち、置換基Rとしては、独立して、水素原子、メチル基、エチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
アミン化合物の共役酸を形成するN(Rで表されるアミン化合物としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ノルマル−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、ターシャリーブチルアミン、ヘキシルアミン、エタノールアミン化合物(例えば、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン)、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジアミン等があり、N(Rで表されるアミン化合物以外の化合物としては、イミダゾール化合物(例えば、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、1、2−ジメチルイミダゾール)、ピリジンピコリン、ルチジン等が例示される。これらのうち、好ましくは、エタノールアミン化合物、イミダゾール化合物である。
本発明において界面活性剤(B)としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤等が使用できるが、より好ましくは非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
非イオン界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレングリコール型界面活性剤、アセチレングリコール型界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤、高分子型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
前記のポリエチレングリコール型界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、又はポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
アセチレングリコール型界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、サーフィノール(エアプロダクツ社製)、オルフィン(日信化学工業社製)等が挙げられる。
多価アルコール型界面活性剤としては、例えば、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、高アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
高分子型非イオン界面活性剤としては、特に限定するものではないが、ポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドンの共重合体等が挙げられる。本発明に使用されるポリビニルピロリドンの平均分子量は1千〜200万であり、好ましくは1万〜150万である。ポリビニルピロリドンの共重合体としては、特に限定するものではないが、親水性部と疎水性部をポリマー鎖中に併せ持つものが好ましく、例えば、ポリビニルピロリドンをポリビニルアルコールにグラフトしたコポリマーや、[ビニルピロリドン−酢酸ビニル]ブロック共重合体、[ビニルピロリドン−メチルメタクリレート]共重合体、[ビニルピロリドン−ノルマルブチルメタクリレート]共重合体、[ビニルピロリドン−アクリルアミド]共重合体などが例示できる。
両性界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。ベタイン型両性界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、アルキルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するものであれば特に限定されないが、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、又はパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては特に限定されないが、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、又はシリコーン変性アクリル化合物などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤はレベリング剤として塗膜の平坦性を改善するのに有効である。
本発明において、高分子型界面活性剤以外の界面活性剤(B)は、水への溶解度が0.01重量%以上であり、且つHLBが7〜20の範囲である界面活性剤であることが好ましい。
ここで、界面活性剤(B)の水への溶解度は80℃以下での測定値であり、好ましくは10℃〜30℃での測定値である。また、グリフィン法HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)は界面活性剤の親水性を表す数値である。値が大きいほど親水性が大きいことを示し、次式で表される。
非イオン界面活性剤のグリフィン法HLB
=(親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)×100/5
=(親水基重量)/(疎水基重量+親水基重量)×100/5
=(親水基の重量%)/5。
例えば、親水基がないパラフィンではHLB=0、親水基のみで疎水基のないポリエチレングリコールはHLB=20となり、非イオン界面活性剤のHLBは0〜20の間にある。界面活性剤(B)としてより好ましくは、アセチレングリコール型界面活性剤、又は高分子型界面活性剤である。界面活性剤(B)の導電性高分子水溶液への添加方法は、固体で添加しても良く、あらかじめ水溶液として調整したものを添加しても良い。単独で使用しても、2種以上を混合してよい。
本発明の導電性高分子水溶液は、pHが1.5〜5.0の範囲である。導電性に優れる点で、1.5〜4.5の範囲が好ましく、2.0〜4.5の範囲がより好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液は、さらにアルコール及び水溶性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の水溶性化合物(C)を含んでもよい。
アルコールとしては、特に限定するものではないが、例えば、エタノール、2価のアルコール、3価のアルコール、及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコールが挙げられる。
2価アルコールとしては特に限定するものではないが、入手の観点から、エチレングリコールが好ましい。3価アルコールとしては、特に限定するものではないが、例えば、グリセロールが好ましい。糖アルコールとしては、特に限定するものではないが、例えば、エリトリトール、ソルビトール、アラビトール等が好ましい。より好ましくはソルビトールである。
また、水溶性樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、水溶性ポリエステル、又は水溶性ポリウレタン等が好ましい。なおこれらの水溶性樹脂については、金属量低減の観点から、顆粒状、膜状の陽イオン交換樹脂、ゼータ電位を利用した金属除去フィルター処理を行ったものを用いることが好ましい。
水溶性樹脂の分子量は、水溶性が良好であれば特に制限されないが、好ましくはMw=1千〜200万、より好ましくは1万〜150万、更に好ましくはMw=1千〜25万、更に好ましくは1千〜5万の範囲である。
本発明の導電性高分子水溶液が、水溶性化合物(C)を含む場合、ポリチオフェン(A)を0.1〜10重量%、界面活性剤(B)を0.001〜10重量%、及び水溶性化合物(C)を0.001〜10重量%含むことが好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液を調製する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明のポリチオフェン(A)の水溶液又は固体と、界面活性剤(B)と、必要に応じて水溶性化合物(C)と、必要に応じて水とを使用する。これらを任意の順で混合することにより本発明の導電性高分子水溶液を調製することができる。
ここで、混合する際の温度は、特に限定するものではないが、例えば、室温〜加温下で行うことができる。好ましくは0℃以上100℃以下が好ましい。
混合する際の雰囲気は、特に限定するものではないが、大気中でも、不活性ガス中でも良い。
本発明の導電性高分子水溶液は、さらにアミン化合物(D)を含んでもよい。この場合、アミン化合物(D)の含有量は、導電性高分子水溶液のpHが1.5〜5.0の範囲であれば、特に限定するものではないが、例えば、導電性高分子水溶液の0.01重量%〜50重量%の範囲が好ましく、0.01〜30重量%であることがより好ましく、0.01〜20重量%であることがさらに好ましい。
アミン化合物(D)としては、特に限定するものではないが、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ノルマル−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、ターシャリーブチルアミン、ヘキシルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジアミン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、1、2−ジメチルイミダゾール、ピリジン、ピコリン、ルチジン等が挙げられる。添加する際には、ニートでも水溶液でも良い。
本願発明の好ましい態様として、特に限定するものではないが、以下の組み合わせが挙げられる。
本発明の導電性高分子水溶液を混合する際には、スターラーチップ、攪拌羽根等による一般的な混合溶解操作に加えて、超音波照射、ホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。ホモジナイズ処理する場合には、ポリマーの熱劣化を防ぐため、冷温しながら行うことが好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液の濃度調整は、配合比で調整しても良いし、配合後に濃縮により調整しても良い。濃縮の方法は、減圧下に溶媒を留去する方法であっても、限外ろ過膜を利用する方法であっても良い。
本発明の導電性高分子水溶液の中のポリチオフェン(A)の濃度は0.001重量%以上であれば特に限定するものではないが、好ましくは0.01重量%〜10重量%の範囲である。なお、本願発明のポリチオフェン(A)及び界面活性剤(B)を含む導電性高分子水溶液は、塗布後、乾燥・脱水されるため、前記の濃度範囲で良好な均一膜を得ることができる。
本発明の導電性高分子水溶液中の固形分の粒径は、特に限定するものではないが、小さいほど水溶性が良好であり、導電性や成膜時の均一な膜形成の観点からも望ましい。例えば、室温又は加温下で調製した導電性高分子水溶液の固形分濃度が10重量%以下の場合、固形分の粒子径(D50)が0.02μm以下であれば、水溶性がより良好となる。
本発明の導電性高分子水溶液の粘度(20℃)は、200mPa・s以下であれば特に限定されないが、好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは50mPa・s以下である。
本発明の導電性高分子水溶液から導電性高分子膜を形成する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明の導電性高分子水溶液を、支持体に塗布し乾燥することで支持体上に導電性高分子膜が簡便に得られる(以下、その支持体と導電性高分子膜を合わせて「被覆物品」と称する。)
支持体としては、本発明の導電性高分子水溶液が塗布可能なものであれば特に限定するものではないが、例えば、高分子基材又は無機基材が挙げられる。高分子基材としては、例えば、熱可塑性樹脂、不織布、紙、レジスト膜基板等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート等が挙げられる。不織布としては、例えば、天然繊維、合成繊維、又はガラス繊維製のいずれでもよい。紙としては一般的なセルロースを主成分とするものでよい。無機基材としては、ガラス、セラミックス、酸化アルミニウム、酸化タンタル等が挙げられる。
導電性高分子水溶液の塗布方法としては、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ディスペンサ法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、スピンコート法、インクジェット法等が挙げられる。好ましくはスピンコート法である。
塗膜の乾燥温度は、均一な導電性高分子膜が得られる温度及び基材の耐熱温度以下であれば特に限定するものではないが、室温〜300℃の範囲であり、好ましくは室温〜250℃の範囲であり、さらに好ましくは室温〜200℃の範囲である。
乾燥雰囲気は大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
得られる導電性高分子膜の膜厚としては特に限定するものではないが、10−3〜10μmの範囲が好ましい。より好ましくは10−3〜10−1μmである。この導電性高分子膜の導電率としては特に限定するものではないが高い方が好ましい。また、導電性高分子膜の導電率は添加する界面活性剤又は水溶性樹脂の種類や添加量により変化するので一義的には決められないが、例えば、90S/cmのポリチオフェン(A)を3.1%、界面活性剤(B)として、アセチレングリコール型界面活性剤を0.1%、水溶性化合物(C)としてソルビトールを0.8%含む導電性高分子水溶液から得られる導電性高分子膜の導電率は、導電率が90S/cm以上となる。
また、得られる導電性高分子膜の表面抵抗値としては特に限定するものではないが、1.0E+11Ω/□以下が好ましく、より好ましくは1.0E+9Ω/□以下であり、さらに好ましくは1.0E+7Ω/□以下である。表面抵抗値を測定する際の印加電圧は特に限定されないが、10V又は500Vで測定する。
本発明の被覆物品は、例えば、帯電防止フィルム、固体電解コンデンサ用の固体電解質、巻回型アルミ固体電解コンデンサ用のセパレータとして使用される。
以下に本発明に関する実施例を示す。
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
[GC測定]
装置:Shimadzu製、GC−2014。
[NMR測定]
装置:VARIAN製、Gemini−200。
[表面抵抗率測定]
装置:三菱化学社製ロレスタGP MCP−T600。
装置:三菱化学社製ハイレスタUX MCP−HT8000。
[膜厚測定]
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT。
[粘度測定]
コンプリート型粘度計/BROOKFIELD VISCOMETER DV−1 Prime。
導電率[S/cm]=10/(表面抵抗率[Ω/□]×膜厚[μm])。
[粒径測定]
装置:日機装社製、Microtrac Nanotrac UPA−UT151。
[自己ドープ型導電性高分子の導電率測定]
自己ドープ型導電性ポリマーを含む水溶液0.5mlを25mm角の無アルカリガラス板に塗布し、室温で一晩乾燥した後、ホットプレート上で120℃にて20分、さらに160℃にて10分加熱して導電性高分子膜を得た。膜厚及び表面抵抗値から、以下の式に基づき算出した。
[塗布性&帯電防止評価]
(1)高分子基材(熱可塑性樹脂)への塗布性評価.
導電性高分子水溶液をPETフィルム(2.5cm角)全体に広がるようにキャストした後、スピンコート(MIKASA社製:スピナー1H−D2)して成膜した(1200rpm×40秒、次いで100℃×60秒真空乾燥)。得られた塗膜の表面抵抗値を測定した。表面抵抗値が安定していれば塗布性良好とし、さらに得られた導電性高分子膜の表面抵抗値が1.0E+9Ω/□以下であれば帯電防止能が良好と判断した。
(2)高分子基材(紙)への塗布性評価.
横1cm×縦4cmの中性紙を2秒間導電性高分子水溶液に浸漬した。その後、紙を垂直にしたまま引き上げて数秒保持した後、乾燥して状態を目視で観察した。塗布斑(濃淡)がない均一なものを塗布性が良好とし、斑のあるものを塗布性が不良とした。
[ろ過性評価]
調製した導電性高分子水溶液を、除粒子孔径0.22μmの疎水性PVDFシリンジフィルター(Membrane Solutions社製)で通液試験を行い、通液した場合にろ過性良好とし、通液しない又は途中で詰まる場合にはろ過性不良とした。特に、4バール以下の圧力で通液した場合には非常に良好と判定した。
[塗膜の透明性評価(透過率、ヘイズ率)]
・装置:日本電色社製 ヘイズメーター NDH4000
・条件:基材ブランク
[塗膜の耐久性評価]
・耐熱性評価
装置:ETTAS社製 定温乾燥機 EOP−450B(自然対流方式)
条件:80℃、300時間
評価:試験前に対する試験後の表面抵抗率の上昇率が10倍未満である場合を良好とした。10倍以上を不良とした。
・耐湿性評価
装置:ESPEC社製 SH−241
条件:60℃、95%RH、300時間
評価:試験前に対する試験後の表面抵抗率の上昇率が100倍未満である場合を良好とした。100倍以上を不良とした。
実施例1.
特開2014−065898に基づいて得られたポリチオフェン(A)[下記式(6)又は式(7)で表される構造単位を含む重合体]を2重量%含む水溶液60.0gに、界面活性剤(B)として非イオン界面活性剤の一種であるポリビニルピロリドンの共重合体(BASF製 SokalanVA64)を12.4%水溶液として4.9g、水15.1gを加えてよく攪拌混合した後、0.45μmのメンブレンフィルターに通液した。このようにして得られたpH=1.5の導電性高分子水溶液を無アルカリガラス板にキャストして得た膜の導電率は165S/cmであった。結果を表6に纏める。
実施例2.
上記ポリチオフェン(A)を2重量%含む水溶液60.0gに、界面活性剤(B)として非イオン界面活性剤の一種であるポリビニルピロリドンの共重合体(BASF製 SokalanVA64)を12.4%水溶液として4.9g、アミン化合物(D)としてイミダゾール(和光純薬工業製)を50%水溶液として0.27g、水15.1gを加えてよく攪拌混合した後、0.45μmのメンブレンフィルターに通液した。このようにして得られたpH=1.8の導電性高分子水溶液を無アルカリガラス板にキャストして得た膜の導電率は97S/cmであった。結果を表6に纏める。
実施例3〜5.
実施例2に準じて、アミン化合物(D)の添加量を変えてpH=2.1(実施例3)、2.4(実施例4)、4.0(実施例5)に調製した導電性高分子水溶液について、それぞれ実施例1と同様に無アルカリガラス板にキャストして得た膜について導電率を測定した。結果をした表6に纏める。
本発明の導電性高分子水溶液は、高分子基材への濡れ性が良く、ハジキや斑なく塗布が可能である。さらに本導電性高分子水溶液は、良好な導電性高分子膜を形成することから、導電性コーティング剤(帯電防止剤)、固体電解コンデンサの固体電解質(陰極材料)に使用できる。またこの導電性高分子膜で被覆された高分子基材からなる被覆物品は、帯電防止フィルム、固体電解コンデンサの固体電解質、巻回型アルミ電解コンデンサ用のセパレータへの利用が可能である。その他、エレクトロクロミック素子、透明電極、透明導電膜、熱電変換材料、化学センサ、アクチュエータ、電磁波シールド材等への応用も期待できる。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01〜10重量%、並びにポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンの共重合体、ポリエチレングリコール型界面活性剤、アセチレングリコール型界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤、及びベタイン型両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を0.001〜10重量%含み、pHが1.5〜5.0の範囲であることを特徴とする、導電性高分子水溶液。
    [上記式(1)及び式(2)中、Lは下記一般式(4)を表し、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。]
    [上記式(4)中、mは1〜6の整数を表す。R は、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。]
  2. アミン化合物の共役酸が、イミダゾール化合物の共役酸又は[NH(Rを表し、Rは各々独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表す請求項1に記載の導電性高分子水溶液。
  3. アミン化合物の共役酸が[NH(Rを表し、Rは各々独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルキル基、アミノ基、若しくはヒドロキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表す請求項1に記載の導電性高分子水溶液。
  4. 第4級アンモニウムカチオンが、テトラメチルアンモニウムカチオン、又はテトラエチルアンモニウムカチオンであることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子水溶液。
  5. さらに、アルコール、ポリビニルアルコール、水溶性ポリエステル、及び水溶性ポリウレタンからなる群より選ばれる少なくとも一種の水溶性化合物(C)を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
  6. 水溶性化合物(C)を、0.001〜10重量%含むことを特徴とする請求項に記載の導電性高分子水溶液。
  7. アルコールが、エタノール、2価のアルコール、3価のアルコール、及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコールであることを特徴とする請求項又は請求項に記載の導電性高分子水溶液。
  8. さらに、アミン化合物(D)を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
  9. 請求項1乃至のいずれかに記載の導電性高分子水溶液を塗布し乾燥させることを特徴とする導電性高分子膜の製造方法。
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