JP7279488B2 - 導電性高分子水溶液、及び導電性高分子膜 - Google Patents

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Description

本発明は、耐水性、耐溶剤性に優れた塗膜を形成する導電性高分子水溶液、及び耐水性、耐溶剤性に優れた導電性高分子膜に関するものである。
ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等に代表されるπ共役系高分子に、電子受容性化合物をドーパントとしてドープした導電性高分子材料が開発され、例えば、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、電磁波シールド、エレクトロクロミック素子、電極材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサ、アクチュエータ等への応用が検討されている。これらの中でも、化学的安定性の面からポリチオフェン系導電性高分子材料が実用上有用である。
ポリチオフェン系導電性高分子材料としては、ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)の水溶液中で、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を重合させることで得られるPEDOT:PSS水分散体溶液や、水溶性の付与とドーピング作用を兼ね備えた置換基(スルホ基、スルホネート基等)を直接又はスペーサを介してポリマー主鎖中に有する、いわゆる自己ドープ型導電性高分子があり、例えば、スルホン化ポリアニリン、PEDOT-S等が知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。
導電性高分子の用途としては、特に帯電防止剤や固体電解コンデンサの固体電解質への利用が多く検討されている。
上記したPEDOT:PSS水分散体溶液から得られる導電性高分子膜の導電率は高く、例えば、アルミ電解コンデンサの固体電解質への応用が盛んに検討されている。しかしながら、元来数十nm以上の水分散体溶液であることから、誘電体である酸化アルミ(陽極酸化被膜)の微細孔に浸透しづらいため、コンデンサの高容量化・低ESR化(ESR:等価直列抵抗)には必ずしも十分ではなかった。
一方、自己ドープ型の導電性高分子は、その優れた水溶性のため、粒径が極めて小さい特徴があり、そのため微細な構造への浸透性に優れている。そのため、例えば、アルミ電解コンデンサの凹凸のある陽極酸化被膜への浸透性も良いと考えられており、コンデンサの高容量化への寄与が期待されている。このような固体電解コンデンサでは、コンデンサ素子中に搭載された導電性高分子の搭載量及び/又は膜厚を増やすことで、コンデンサの静電容量やESRなどが改善することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
近年、導電性高分子による低ESR特性と、電解液による高い誘電体酸化皮膜修復性を併せ持つコンデンサを得るため、導電性高分子と電解液の両方を用いる、いわゆるハイブリッド型電解コンデンサに関する開発が進んでいる(例えば、特許文献2、3参照)。
電解液の溶媒には、エチレングリコール、プロピレングリコール、スルホラン、γ-ブチロラクトン、N-メチルアセトアミド等の溶媒が用いられている。
しかしながら、従来の導電性高分子からなるハイブリッド型固体電解コンデンサでは、ドーパントとして機能する酸成分が容易に脱ドープして電解液に溶出し、導電性高分子の導電性が低下することが原因でESRが上昇する課題を有している(例えば、特許文献4参照)。
特開2011-152667号公報 特開2008-235645号公報 特開2014-195116号公報 特開2012-109635号公報
Journal of American Chemical Society,112,2801-2803(1990) Advanced Materials,Vol.23(38)4403-4408(2011)
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、電解液との接触による導電性低下が少ない導電性高分子膜を得ることであり、当該導電膜を得るための導電性高分子水溶液を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を含み、且つ水溶性樹脂化合物(B)を0.001~10重量%含む導電性高分子水溶液が、上記の課題を解決することを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に示す導電性高分子水溶液、及び導電性高分子膜に関するものである。本組成物から得られる導電性高分子膜は例えば、帯電防止機能を有するフィルムや透明導電膜、固体電解コンデンサの固体電解質としての使用が可能となる。
[1] 下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01~10重量%含み、且つ水溶性樹脂化合物(B)を0.001~10重量%含む導電性高分子水溶液。
Figure 0007279488000001
[上記式(1)及び式(2)中、mは1~10の整数を表し、nは0又は1を表す。Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。Rは水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基、又はフッ素原子を表す。]
[2] 水溶性樹脂化合物(B)が、水溶性ポリエステル樹脂化合物、及び水溶性ポリウレタン樹脂化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする[1]に記載の導電性高分子水溶液。
[3] 水溶性樹脂化合物(B)が、水溶性ポリエステル樹脂化合物であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の導電性高分子水溶液。
[4] 導電性高分子水溶液中の水以外の全成分の濃度が、0.1~30重量%の範囲であることを特徴とする、[1]乃至[3]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
[5] [1]乃至[4]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液を乾燥させることを特徴とする膜の製造方法。
[6] 下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と水溶性樹脂化合物(B)を含む膜。
Figure 0007279488000002
[上記式(1)及び式(2)中、mは1~10の整数を表し、nは0又は1を表す。Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。Rは水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基、又はフッ素原子を表す。]
本発明の導電性高分子水溶液は、コンデンサの陽極酸化被膜微細孔への浸透性に優れるため、高容量のコンデンサを提供することができるという効果を奏する。
また、本発明の導電性高分子水溶液を用いて作製した導電性高分子膜は、水、アルコール又は電解液による膜の劣化が少なく、尚且つ水、アルコール又は電解液への導電性高分子の溶出が抑えられるため、ESR上昇が少なく、耐久性や信頼性の高いハイブリッド型電解コンデンサを提供することができるという効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の高分子水溶液は、下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01~10重量%含み、且つ水溶性樹脂化合物(B)を0.001~10重量%含む導電性高分子水溶液である。
Figure 0007279488000003
[上記式(1)及び式(2)中、mは1~10の整数を表し、nは0又は1を表す。Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。Rは水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基、又はフッ素原子を表す。]
上記式(1)又は(2)中、Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。
前記のアルカリ金属イオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、Liイオン、Naイオン、Kイオン、Rbイオン、又はCsイオンが挙げられるが、これらのうち、Liイオン、Naイオン、又はKイオンが好ましい。
前記のアミン化合物の共役酸としては、アミン化合物にヒドロン(H)が付加してカチオン種になったものを示す。当該アミン化合物については、スルホン酸基と反応して共役酸を形成するものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、sp3混成軌道を有するN(Rで表されるアミン化合物[共役酸としては[NH(Rで表される。]、又はsp2混成軌道を有するアミン化合物(例えば、ピリジン類化合物、イミダゾール類化合物等)が挙げられる。
置換基Rは、特に限定するものではないが、例えば、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又は置換基を有する炭素数1~6のアルキル基を表す。
炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
上記の置換基を有する炭素数1~6のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有するメチル基、置換基を有するエチル基、置換基を有する炭素数3~6の鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、当該置換基を有する炭素数3~6の鎖状又は分岐状のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有するn-プロピル基、置換基を有するイソプロピル基、置換基を有するn-ブチル基、置換基を有するイソブチル基、置換基を有するsec-ブチル基、置換基を有するtert-ブチル基、置換基を有するn-ペンチル基、置換基を有するイソペンチル基、置換基を有するネオペンチル基、置換基を有するtert-ペンチル基、置換基を有するシクロペンチル基、置換基を有するn-へキシル基、置換基を有する2-エチルブチル基、又は置換基を有するシクロヘキシル基等が挙げられる。
また、上記の置換基を有する炭素数1~6のアルキル基における置換基としては、特に限定するものではないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アミノ基、及びヒドロキシ基からなる群より選ばれる基が挙げられ、当該置換基を有する炭素数1~6のアルキル基としては、具体的には、特に限定するものではないが、トリフルオロメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は2-ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
これらのうち、置換基Rとしては、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は2-ヒドロキシエチル基が好ましい。
前記N(Rで表されるアミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ノルマル-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、ターシャリーブチルアミン、ヘキシルアミン、エタノールアミン化合物(例えば、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン)、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール、又は1,4-ブタンジアミン等が挙げられる。
また、前記sp2混成軌道を有するアミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、イミダゾール化合物(例えば、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、1、2-ジメチルイミダゾール)、ピリジンピコリン、又はルチジン等が挙げられる。
これらのうち、アミン化合物の共役酸に用いるアミン化合物としては、アンモニア、エタノールアミン化合物(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、又はトリエタノールアミン)、又はイミダゾール化合物(例えば、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、又は1,2-ジメチルイミダゾール等)が好ましい。
すなわち、アミン化合物の共役酸としては、導電性に優れる点で、アンモニウム、エタノールアミン化合物(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、又はトリエタノールアミン)の共役酸、又はイミダゾール化合物(例えば、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、又は1,2-ジメチルイミダゾール等)の共役酸等が好ましい。
前記の第4級アンモニウムカチオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラノルマルプロピルアンモニウムカチオン、テトラノルマルブチルアンモニウムカチオン、又はテトラノルマルヘキシルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。入手の観点から、好ましくは、テトラメチルアンモニウムカチオン、又はテトラエチルアンモニウムカチオンである。
上記一般式(1)又は一般式(2)中、mは、1~10の整数を表し、導電性に優れる点で、好ましくは、1~6の整数である。
上記一般式(1)又は一般式(2)中、nは、0又は1を表し、導電性に優れる点で、好ましくは、0である。
上記一般式(1)又は一般式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基、又はフッ素原子を表す。
炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基を有する炭素数1~6のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有するメチル基、置換基を有するエチル基、置換基を有する炭素数3~6の鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、当該置換基を有する炭素数3~6の鎖状又は分岐状のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有するn-プロピル基、置換基を有するイソプロピル基、置換基を有するn-ブチル基、置換基を有するイソブチル基、置換基を有するsec-ブチル基、置換基を有するtert-ブチル基、置換基を有するn-ペンチル基、置換基を有するイソペンチル基、置換基を有するネオペンチル基、置換基を有するtert-ペンチル基、置換基を有するシクロペンチル基、置換基を有するn-へキシル基、置換基を有する2-エチルブチル基、又は置換基を有するシクロヘキシル基等が挙げられる。
また、上記の置換基を有する炭素数1~6のアルキル基における置換基としては、特に限定するものではないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アミノ基、及びヒドロキシ基からなる群より選ばれる基が挙げられ、当該置換基を有する炭素数1~6のアルキル基としては、具体的には、特に限定するものではないが、トリフルオロメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は2-ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
上記一般式(1)又は一般式(2)のRについては、成膜性の点で、水素原子、メチル基、エチル基、フッ素原子、又は2-ヒドロキシエチル基であることが好ましい。
上記式(2)で表される構造単位は、上記式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表す。
ドーピングにより絶縁体-金属転移を引き起こすドーパントは、アクセプタとドナーに分けられる。前者は、ドーピングにより導電性ポリマーの高分子鎖の近くに入り主鎖の共役系からπ電子を奪う。結果として、主鎖上に正電荷(正孔、ホール)が注入されるため、p型ドーパントとも呼ばれる。また、後者は、逆に主鎖の共役系に電子を与えることになり、この電子が主鎖の共役系を動くことになるため、n型ドーパントとも呼ばれる。
本発明におけるドーパントは、ポリマー分子内に共有結合で結びついたスルホ基又はスルホナート基であり、p型ドーパントである。このように外部からドーパントを添加することなく導電性を発現するポリマーは自己ドープ型高分子と呼ばれている。
本発明のポリチオフェン(A)は、下記式(6)で表されるチオフェンモノマーを、水又はアルコール溶媒中、酸化剤の存在下に重合させることで製造することができる。
Figure 0007279488000004
[上記一般式(6)中、m、n、及びRの定義及び好ましい範囲は、上記の定義及び好ましい範囲と同じである。Mは、金属イオンを表わす。]
一般式(6)におけるMで表される金属イオンとしては、特に限定するものではないが、遷移金属イオン、貴金属イオン、非鉄金属イオン、アルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン、及びKイオン)、又はアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
重合後のポリマーは金属塩であるため、必要に応じて、得られたポリマーを酸処理することでMを水素イオンへ変換可能であり、さらにこれをアミン化合物と反応させることで、Mをアミン化合物の共役酸へ変換可能である。
上記一般式(1)又は一般式(2)で表される、本発明のポリチオフェンを得るためのチオフェンモノマー(一般式(6))としては、特に限定するものではないが、具体的には、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸ナトリウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸リチウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸カリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸ナトリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ヘキシル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソプロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸アンモニウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、又は4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム等が例示される。
本発明においてポリチオフェン(A)の導電率は、特に限定するものではないが、フィルム状態での導電率(電気伝導度)として、10S/cm以上であることが好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液中のポリチオフェン(A)の濃度は0.001~10重量%の範囲である。なお、導電率及び操作性に優れる点で、本発明の導電性高分子水溶液中のポリチオフェン(A)の濃度は、0.005~7重量%の範囲であることが好ましく、0.01~5重量%の範囲であることがより好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液には、水溶性樹脂化合物(B)を含有する。これにより、耐水性・耐溶剤性などの塗膜性能をより優れたものにすることができる。
前記化合物(B)としては、特に限定するものではないが、具体的には、水溶性ポリエステル樹脂化合物、又は水溶性ポリウレタン樹脂化合物が好ましく、これらの化合物を組み合わせて使用してもよい。
水溶性ポリエステル樹脂化合物としては、多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコールとの重縮合体であれば特に制限はなく、例えばポエチレンテレフタラートやポリトリメチレンテレフタラート等を使用することができる。当該水溶性ポリエステル樹脂化合物については、自己乳化型であってもよいし、強化乳化型であってもよいが、耐水性、耐溶剤性の観点から自己乳化型水溶性ポリエステル樹脂化合物であることが好ましい。
水溶性ポリエステル樹脂化合物は、例えば、東洋紡株式会社製、商品名:バイロナール、や、高松油脂株式会社製、商品名:ペスレジン、互応化学株式会社製、商品名:プラスコート、東亞合成株式会社製、商品名:アロンメルト、高松油脂株式会社製、商品名:ぺスレジンA、DIC株式会社製、商品名:ウォーターゾールなどが商業的に容易に入手することができる。
水溶性ポリエステル樹脂化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
水溶性ポリウレタン樹脂化合物は、ウレタン樹脂エマルションとして主に産業用途に用いられており、自己乳化型であってもよいし、強化乳化型であってもよいが、耐水性、耐溶剤性の観点から自己乳化型水溶性ポリウレタン樹脂化合物であることが好ましい。自己乳化型としては、アニオン型、カチオン型、非イオン型特が挙げられるが、いずれであってもよい。また、当該水溶性ポリウレタン樹脂化合物については、特に限定するものではないが、ポリエーテル型、ポリエステル型、ポリカーボネート型等が挙げられる。
水溶性ポリウレタン樹脂化合物は、例えば、三洋化成工業株式会社製、商品名:ユーコート、パーマリン、ユープレンや、楠本化成株式会社製、商品名:NeoRez、株式会社ADEKA製、商品名:アデカボンタイター、明成化学工業株式会社製、商品名:パスコール、DIC株式会社製、商品名:ハイドランなどが商業的に容易に入手することができる。
水溶性ポリウレタン樹脂化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記化合物(B)としては、導電性高分子との相溶性に優れ、耐水性、耐溶剤性の観点から水溶性ポリエステル樹脂化合物がより好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液は、水溶性樹脂化合物(B)を0.001~10重量%含む。当該含有量については、樹脂そのものの含有量を表す。本発明を実施するに当たり、操作上、含水状態の水溶性樹脂化合物を用いる場合、当該含有量については、水などの成分を除いた樹脂固形物のみの使用量に基づいて見積もられる。
前記化合物(B)の含有量については、導電性高分子との相溶性が高く、高い導電性を維持することができるという点で、好ましくは0.01~5重量%であり、より好ましくは0.1~3重量%である。
本発明の導電性高分子水溶液は、さらに、非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の界面活性剤(C)を含んでいてもよく、導電性高分子水溶液における当該界面活性剤(C)の含有量としては、0.001~10重量%が好ましく、0.1~5重量%がより好ましい。
界面活性剤(C)としては、特に限定するものではないが、例えば、アニオン界面活性剤(例えば、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、カチオン界面活性剤(例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド等)、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤等が使用できるが、より好ましくは非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
非イオン界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレングリコール型界面活性剤、アセチレングリコール型界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤、高分子型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
前記のポリエチレングリコール型界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、又はポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
アセチレングリコール型界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、サーフィノール(エアプロダクツ社製)、オルフィン(日信化学工業社製)等が挙げられる。
多価アルコール型界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、高アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。ベタイン型両性界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、アルキルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するものであれば特に限定されないが、例えば、プラスコート RY-2、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、又はパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、又はシリコーン変性アクリル化合物などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤はレベリング剤として塗膜の平坦性を改善するのに有効である。
本発明において、界面活性剤(C)は、水への溶解度が0.01重量%以上であることが好ましく、且つグリフィン法HLBが7~20の範囲である界面活性剤であることが好ましい。
また、グリフィン法HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)は界面活性剤の親水性を表す数値である。値が大きいほど親水性が大きいことを示し、次式で表される。
非イオン界面活性剤のグリフィン法HLB
=(親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)×100/5
=(親水基重量)/(疎水基重量+親水基重量)×100/5
=(親水基の重量%)/5。
界面活性剤(C)の導電性高分子水溶液への添加方法は、固体で添加しても良く、あらかじめ水溶液として調整したものを添加しても良い。その際、導電性高分子水溶液に単独で添加してもよいし、2種以上を混合して添加してもよい。
本発明の導電性高分子水溶液が界面活性剤(C)を含む場合、当該導電性高分子水溶液は、ポリチオフェン(A)を0.01~10重量%、水溶性樹脂化合物(B)を0.001~10重量%、界面活性剤(C)を0.001~10重量%含むことが好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液のpHは、10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましい。さらに、本発明の導電性高分子水溶液のpHは、1.5以上9.5以下の範囲が好ましく、1.5以上9以下の範囲内がより好ましく、1.5以上6以下の範囲がより好ましい。ここで、pHを調整する手順としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリチオフェン(A)の水溶液に予めアミン化合物(D)を添加することによってpH調整することができる。また、pHが2以下の酸性領域で使用する場合には、必ずしもアミンを添加する必要はない。
アミン化合物(D)としては、特に限定するものではないが、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ノルマル-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、ターシャリーブチルアミン、ヘキシルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジアミン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、1、2-ジメチルイミダゾール、ピリジン、ピコリン、又はルチジン等が挙げられる。添加する際には、ニートでも水溶液でも良い。
本発明の導電性高分子水溶液には粘度調整等で必要に応じてアルコールを添加してもよい。当該アルコールとしては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、又はブトキシエタノール等が好ましい。より好ましくは、エタノール、プロパノール、又はブトキシエタノールである。
本発明の導電性高分子水溶液に添加するアルコールの添加量としては、添加前の水溶液中に溶解している成分がアルコール添加により析出しない範囲の添加量であれば特に問題ないが、導電性高分子水溶液中において、0.1重量%~60重量%であることが好ましく、より好ましくは1重量%~40重量%である。
本発明の導電性高分子水溶液を調製する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明のポリチオフェン(A)の水溶液又は固体と、水溶性樹脂化合物(B)と、必要に応じて界面活性剤(C)と、必要に応じて水と、必要に応じてその他添加剤を混合する方法が挙げられる。これらの材料を任意の順で混合することにより本発明の導電性高分子水溶液を調製することができる。
ここで、混合する際の温度は、特に限定するものではないが、例えば、室温~加温下で行うことができる。0℃以上100℃以下が好ましい。
混合する際の雰囲気は、特に限定するものではないが、大気中でも、不活性ガス中でもよい。
本発明の導電性高分子水溶液を混合する際には、スターラーチップ、攪拌羽根等による一般的な混合溶解操作に加えて、超音波照射、ホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。ホモジナイズ処理する場合には、ポリマーの熱劣化を防ぐため、冷温しながら行うことが好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液の粘度(20℃)は、200mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは50mPa・s以下である。
本発明の導電性高分子水溶液の濃度は、配合比で調整しても良いし、配合後に濃縮又は希釈により調整しても良い。濃縮の方法は、減圧下に溶媒を留去する方法であっても、限外ろ過膜を利用する方法であっても良い。
本発明の導電性高分子水溶液については、水以外の全成分の濃度が、0.1~60重量%の範囲であることが好ましく、0.1~45重量%の範囲であることがより好ましく、0.1~30重量%の範囲であることがより好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液中の固形分の粒径は、特に限定するものではないが、小さいほど水溶性が良好であり、導電性や成膜時の均一な膜形成の観点からも望ましい。例えば、室温又は加温下で調製した導電性高分子水溶液の固形分濃度が10重量%以下の場合、固形分の粒子径(D50)が0.02μm以下であれば、水溶性がより良好となる。
本発明の導電性高分子水溶液から導電性高分子膜を形成する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明の導電性高分子水溶液を、支持体に塗布し乾燥することで支持体上に導電性高分子膜が簡便に得られる。
支持体としては、本発明の導電性高分子水溶液が塗布可能なものであれば特に限定するものではないが、例えば、高分子基材又は無機基材が挙げられる。高分子基材としては、例えば、熱可塑性樹脂、不織布、紙、レジスト膜基板等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、又はポリカーボネート等が挙げられる。不織布としては、例えば、天然繊維、合成繊維、又はガラス繊維製のいずれでもよい。紙としては一般的なセルロースを主成分とするものでよい。無機基材としては、ガラス、セラミックス、酸化アルミニウム、又は酸化タンタル等が挙げられる。
導電性高分子水溶液の塗布方法としては、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ディスペンサ法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷、スクリーン印刷法、又はオフセット印刷法等が挙げられる。
塗膜の乾燥温度は、均一な導電性高分子膜が得られる温度及び基材の耐熱温度以下であれば特に限定するものではないが、室温~300℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは室温~250℃の範囲であり、さらに好ましくは室温~200℃の範囲である。
乾燥雰囲気は大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
得られる導電性高分子膜の膜厚としては特に限定するものではないが、10-3~10μmの範囲が好ましい。より好ましくは10-3~10-1μmである。
本発明の導電性組成物、及びそれを含むコーティング液から得られた塗工フィルムは耐水性、耐溶剤性に優れる。
本発明の被覆物品は、例えば、帯電防止フィルム、透明電導膜に加え、固体電解コンデンサ用の固体電解質として使用される。
以下に本発明に関する実施例を示す。
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
[GC測定]
装置:Shimadzu製、GC-2014。
[NMR測定]
装置:VARIAN製、Gemini-200。
[表面抵抗率測定]
装置:三菱化学社製ロレスタGP MCP-T600。
[膜厚測定]
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT。
[粘度測定]
コンプリート型粘度計/BROOKFIELD VISCOMETER DV-1 Prime。
[粒径測定]
装置:日機装社製、Microtrac Nanotrac UPA-UT151。
[自己ドープ型導電性高分子の導電率測定]
自己ドープ型導電性ポリマーを含む水溶液 0.5mlを25mm角の無アルカリガラス板に塗布し、室温で一晩乾燥した後、150℃にて30分加熱して導電性高分子膜を得た。膜厚及び表面抵抗値から、以下の式に基づき算出した。
導電率[S/cm]=10/(表面抵抗率[Ω/□]×膜厚[μm])。
[導電膜の耐水性評価]
導電性高分子水溶液を大気下ガラス上に0.7mLキャストし、大気下室温で一晩乾燥した後、大気下、ホットプレート上で150℃にて30分加熱して導電性高分子膜を得た。放冷後、導電性高分子膜をガラスごと撹拌水中に吊り下げ、24時間後の様子を目視で確認した。浸漬前後で様子が変わらない場合を◎とし、一部剥離を確認した場合を○とし、液中に導電性高分子の溶出が確認できた場合を×とした。また浸漬前後の表面抵抗値を測定し、浸漬前後で比較した。
[導電膜の耐アルコール性評価]
導電性高分子水溶液を大気下ガラス上に0.7mLキャストし、大気下室温で一晩乾燥した後、大気下、ホットプレート上で150℃にて30分加熱して導電性高分子膜を得た。放冷後、導電性高分子膜をガラスごと撹拌50%エタノール水溶液中に吊り下げ、24時間後の様子を目視で確認した。浸漬前後で様子が変わらない場合を◎(変化無)とし、一部剥離を確認した場合を○(一部剥離)とし、液中に導電性高分子の溶出が確認できた場合を×(溶出有)とした。また浸漬前後の表面抵抗値を測定し、浸漬前後で比較した。
合成例1(3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムの合成)
Figure 0007279488000005
窒素雰囲気下、100mLナス型フラスコに60%水素化ナトリウム 0.437g(10.9mmol)、及びトルエン 37mLを仕込んだ後、(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メタノール 1.52g(8.84ml)を添加した。その後、撹拌しながら還流温度に昇温させ、本還流温度で1時間攪拌した。その後、還流を継続しながら、2,4-ブタンスルトン 1.21g(8.89mmol)とトルエン 10mLとからなる混合液を滴下し、次いで還流温度でさらに2時間攪拌した。冷却後、得られた反応液をアセトン 160mLに滴下し再沈を行った。得られた粉末を濾過し、真空乾燥させることで1.82gの淡黄色粉末を収率62%で得た。NMR測定から、これが上記の式(6)で表される3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムであることを確認した。
合成例2 ポリチオフェン(A)の合成[下記式(7)及び(8)で表される構造単位を含むポリマー].
Figure 0007279488000006
Figure 0007279488000007
500mLセパラブルフラスコに、合成例1に準じて合成した3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム 10g(30mmol)と水 150gを加えた。溶解後、室温下、無水塩化鉄(III) 2.94g(18.1mmol)を加えて20分攪拌した。その後、過硫酸ナトリウム 14.5g(60.4mmol)と水 100gからなる混合溶液を反応液温度が30℃以下を保持しながら滴下した。次いで、室温で3時間攪拌したのち、反応液を800gのアセトンに滴下させ黒色のNa型のポリマーを析出させた。ポリマーを濾過・真空乾燥することで、18.0gの3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムの粗ポリマーを得た。
次に、この粗ポリマー 14.5gに水を加え固形分2重量%に調製した水溶液 725gのうち700gを、陽イオン交換樹脂Lewatit MonoPlus S100(H型) 200mLを充填したカラムに通液(空間速度=1.1)することによりH型のポリマー水溶液を738g得た。更に、本ポリマー水溶液をクロスフロー式限外ろ過(ろ過器=ビバフロー200,分画分子量=5,000、透過倍率=5)により精製することにより上記式(7)及び(8)で表される構造単位を含むポリマー(ポリチオフェン(A))の濃群青色水溶液(ポリチオフェン水溶液(A0))を698g取得した。前記ポリチオフェン水溶液(A0)に含まれるポリマー量(固形物含量)は0.74重量%であった。また、ICP-MS分析を行ったところ、前記ポリチオフェン水溶液(A0)は、その固形物量を基準として、鉄イオンを44ppm、ナトリウムイオンを12ppm、含んでいた。
合成例3.
合成例2の方法で得られたポリチオフェン水溶液(A0)を脱溶媒してポリチオフェン(A)を1.31重量%含む水溶液 301.13gを調製し、これに50%モノエタノールアミン水溶液 2.19gを加えてよく撹拌混合した。得られたポリチオフェン水溶液(A1)のpHは5.3であった。
実施例1.
合成例2で得られたポリチオフェン水溶液(A0)を脱溶媒してポリチオフェン(A)を1.3重量%含む水溶液 7.49gを調製し、これに、水溶性樹脂化合物(B)として東洋紡株式会社製のバイロナールMD-1245(水溶性ポリエステル樹脂、固形分濃度30重量%の水分散液)を0.10g、水 2.47gを加えてよく攪拌混合し、固形分濃度が1.29%の導電性高分子水溶液を得た。この導電性高分子水溶液を、大気下ガラス上に0.7gキャストし、大気下室温で一晩乾燥した後、大気下、ホットプレート上で150℃にて30分加熱して導電性高分子膜を得た。得られた導電膜の評価結果を表1に示す。
実施例2.
実施例1において、水溶性樹脂化合物(B)の東洋紡株式会社製のバイロナールMD-1245(水溶性ポリエステル樹脂、固形分濃度30重量%の水分散液) 0.10gに代えて、高松油脂株式会社製のペスレジンA-615GE(水溶性ポリエステル樹脂、固形分濃度25重量%の水溶液) 0.10gを使用した以外は実施1の方法に準じて導電性高分子水溶液及び導電性高分子膜を得、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例3.
実施例1において、水溶性樹脂化合物(B)の東洋紡株式会社製のバイロナールMD-1245(水溶性ポリエステル樹脂、固形分濃度30重量%の水分散液) 0.10gに代えて、高松油脂株式会社製のペスレジンA-645GH(水溶性ポリエステル樹脂、固形分濃度30重量%の水溶液) 0.10gを使用した以外は実施1の方法に準じて導電性高分子水溶液及び導電性高分子膜を得、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例4.
合成例3の方法で調製したポリチオフェン水溶液(A1) 7.49gに、水溶性樹脂化合物(B)として東洋紡株式会社製のバイロナールMD-1245(水溶性ポリエステル樹脂、固形分濃度30重量%の水分散液)を0.10g、水 2.47gを加えてよく攪拌混合し、固形分濃度が1.29%の導電性高分子水溶液を得た。この導電性高分子水溶液を、大気下ガラス上に0.7gキャストし、大気下室温で一晩乾燥した後、大気下、ホットプレート上で150℃にて30分加熱して導電性高分子膜を得た。得られた導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例5.
実施例4において、水溶性樹脂化合物(B)の東洋紡株式会社製のバイロナールMD-1245(水溶性ポリエステル樹脂、固形分濃度30重量%の水分散液) 0.10gに代えて、高松油脂株式会社製のペスレジンA-615GE(水溶性ポリエステル樹脂、固形分濃度25重量%の水溶液) 0.10gを使用した以外は実施例4の方法に準じて導電性高分子水溶液及び導電性高分子膜を得、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例6.
実施例4において、水溶性樹脂化合物(B)の東洋紡株式会社製のバイロナールMD-1245(水溶性ポリエステル樹脂、固形分濃度30重量%の水分散液) 0.10gに代えて、高松油脂株式会社製のペスレジンA-645GH(水溶性ポリエステル樹脂、固形分濃度30重量%の水溶液) 0.10gを使用した以外は実施例4の方法に準じて導電性高分子水溶液及び導電性高分子膜を得、評価を行った。結果を表2に示す。
比較例1.
合成例2で得られたポリチオフェン水溶液(A0)を脱溶媒してポリチオフェン(A)を1.30重量%含む導電性高分子水溶液を得た。この導電性高分子水溶液を、大気下ガラス上に0.7gキャストし、大気下室温で一晩乾燥した後、大気下、ホットプレート上で150℃にて30分加熱して導電性高分子膜を得た。得られた導電膜の評価結果を表1に示す。
Figure 0007279488000008
Figure 0007279488000009
本発明の導電性高分子水溶液は、良好な導電性高分子膜を形成し、優れた耐水性、耐アルコール性に加え、固体電解液に用いられる耐エチレングルコール性を有していることから、各種導電性コーティング剤(帯電防止剤)、透明導電膜に留まらず、固体電解コンデンサの固体電解質(陰極材料)、さらにはハイブリッド型固体電解コンデンサの固体電解質等への応用も期待できる。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01~10重量%含み、且つ水溶性ポリエステル樹脂化合物(B)を0.001~10重量%含む導電性高分子水溶液。
    Figure 0007279488000010
    [上記式(1)及び式(2)中、mは1~10の整数を表し、nは0又は1を表す。Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。Rは水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基、又はフッ素原子を表す。]
  2. 導電性高分子水溶液中の水以外の全成分の濃度が、0.1~30重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性高分子水溶液。
  3. 請求項1に記載の導電性高分子水溶液を乾燥させることを特徴とする膜の製造方法。
  4. 下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と水溶性ポリエステル樹脂化合物(B)を含む膜。
    Figure 0007279488000011
    [上記式(1)及び式(2)中、mは1~10の整数を表し、nは0又は1を表す。Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。Rは水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基、又はフッ素原子を表す。
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