JP7018177B2 - 導電性高分子含有インク及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、良好な正孔輸送性と耐久性を両立した導電性高分子膜を作製できる新規な導電性高分子含有インクに関する。
ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等に代表されるπ共役系高分子に、電子受容性化合物をドーパントとしてドープした導電性高分子材料が開発され、例えば、帯電防止材、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、電磁波シールド、エレクトロクロミック素子、電極材料、正孔注入材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサ、アクチュエータ等への応用が検討されている。これらの導電性高分子材料の中でも、化学的安定性の面からポリチオフェン系導電性高分子材料が実用上有用である。
ポリチオフェン系導電性高分子材料としては、(i)ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)又はパーフルオロエチレンスルホン酸の水溶液中で、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を重合させることで得られるPEDOT/PSS、PEDOT/パーフルオロエチレンスルホン酸を含む水性分散液や、(ii)水溶性の付与とドーピング作用を兼ね備えた置換基(スルホ基、スルホネート基等)を直接又はスペーサを介してポリマー主鎖中に有する、いわゆる自己ドープ型導電性高分子(例えば、スルホン化ポリアニリン、PEDOT-S、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸 ポリマー等)等が知られている(例えば、非特許文献1、2、特許文献1参照)。
導電性高分子の用途は、従来の帯電防止剤や固体電解コンデンサの固体電解質への利用のみならず、有機エレクトロルミネセンス素子、有機薄膜太陽電池などの正孔注入層として開発が進められている。
正孔注入層は、上記導電性高分子を含有するインクを透明電極上に塗布・乾燥して得られる数十~百数十nmの有機薄膜であり、適度な導電率(10-3S/cm未満)と平滑性が必要とされる。上記導電性高分子を含有するインクの報告例としては、例えば、PEDOT/PSSの場合、エチレングリコール等の水より高い沸点を有する溶媒を10~50重量%、典型的には30重量%を含む水性分散液であるインクが報告されている(特許文献2)。又、メタノール、エタノール、1-プロパノール等のアルコール溶剤、2-ブトキシエタノール等のアルコールエーテル溶剤を5~50重量%を含む水性分散液が報告されている(特許文献3)。更に、PEDOT/パーフルオロエチレンスルホン酸の場合、イソプロパノール等のアルコールを含み、且つHOを少なくとも40重量%含む水性分散液が報告されている(特許文献4)。
また、自己ドープ型ポリチオフェン系導電性高分子の正孔注入層の応用例としては、具体的な実施例がないものの、0.001~10重量%の1価値又は2価値のアルコールを含有してもよい水溶性インクの記載が明細書に書かれている。
このように、従来の正孔注入層に供するポリチオフェン系導電性高分子含有インクは、50重量%以上の水を含有している。水は、有機EL等の有機デバイスにおいては劣化因子でもあり、所謂ダークスポット(非発光領域)の発生確率を増大させ、その結果、有機デバイスの耐久性及び製品歩留まりが低下する恐れがある。
一方で、上記の導電性高分子含有インクを透明電極上に塗布する方法としては、通常、スピンコート法等が頻繁に利用されるが、材料利用効率・大型基板への適用を考慮するとインクジェット法での塗布が望ましい。インクジェット法は、目的の画素上に滴下したインクを画素内に均一に広げ、均一膜厚の薄膜を形成させるものであるが、しばしば、周辺の膜厚が厚くなる(Coffee Strain Effect)等の問題を生じる。従って、適度なインク粘度(25mPa・s以下)と表面張力(40mN/m以下)を有することが必要であり、現状、満足できるものではない。
国際公開第2014/007299号パンフレット 登録特許5235660号公報 特表2006-520994号公報 特表2006-500463号公報 特開2017-222831号公報
Journal of American Chemical Society,112,2801-2803(1990) Advanced Materials,Vol.23(38)4403-4408(2011)
上述のように、公知のポリチオフェン系導電性高分子を含有するインクは、水を50重量%以上含有するためダークスポットの発生確率が向上し、素子の耐久性・デバイス作製時の歩留まりに課題がある。このため、水含有量が50%未満であるポリチオフェン系導電性高分子を含有するインクが求められている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、後述する導電性高分子含有インクが、水含有量40重量%以下でありながら、適度な粘度と表面張力を有してインクとして優れた物性を示すこと、自己ドープ型導電性高分子が沈殿或いはゲル化せずに安定して溶解できること、更に、該導電性高分子含有インクから作製される導電性高分子膜が、適度な正孔輸送性と高い耐久性を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下[1]~[14]に存する。
[1] 下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)、ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)、グリコール(C)、沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)、沸点が150℃~240℃のグリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる少なくとも一つの溶媒(E)、及び水を含む導電性高分子含有インクであって、その組成が、(A)が0.01~1.0重量%、(B)が0.1~10重量%、(C)が1~50重量%であり、尚且つ(C)、(D)及び(E)の合計が60~99重量%である、ことを特徴とする導電性高分子含有インク。
Figure 0007018177000001
[式(1)において、Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは1~10の整数を表し、nは0又は1を表す。]
[2] (C)、(D)及び(E)の合計が70~98重量%であることを特徴とする[1]記載の導電性高分子含有インク。
[3] (C)、(D)及び(E)の合計が80~98重量%であることを特徴とする[1]記載の導電性高分子含有インク。
[4] ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)を、ポリチオフェン(A)1重量部に対して、5~40重量部含有することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の導電性高分子含有インク。
[5] グリコール(C)が、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の導電性高分子含有インク。
[6] グリコール(C)が5~40重量%であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の導電性高分子インク。
[7] 沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)が、エチレングリコール モノメチルエーテル、エチレングリコール モノエチルエーテル、エチレングリコール モノイソプロピルエーテル、エチレングリコール モノn-プロピルエーテル、プロピレングリコール モノメチルエーテル、プロピレングリコール モノエチルエーテル、プロピレングルコール モノイソプロピルエーテル、及びプロピレングリコール モノn-プロピルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の導電性高分子含有インク。
[8] 沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)濃度が20~70重量%であることを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の導電性高分子インク。
[9] 非プロトン性極性溶媒が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びジエチルアセトアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]に記載の導電性高分子含有インク。
[10] 20℃での粘度が25mPa・s以下であり、尚且つ表面張力が20~40mN/mであることを特徴とする[1]乃至[9]のいずれか1つに記載の導電性高分子含有インク。
[11] ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸―スチレンスルホン酸)共重合体、又はポリ(メタクリル酸―スチレンスルホン酸)共重合体であることを特徴とする[1]乃至[10]のいずれか1つに記載の導電性高分子含有インク。
[12] ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)の重量平均分子量が1千~50万であることを特徴とする[1]乃至[11]のいずれか1つに記載の導電性高分子含有インク。
[13] [1]に記載の導電性高分子含有インクを乾燥させることを特徴とする導電性膜の製造方法。
[14] [1]に記載の導電性高分子含有インクを乾燥させて得られる導電性膜を含むことを特徴とする、有機エレクトロルミネセンス素子又は有機光電変換素子のいずれかの有機電子素子。
本発明の新規な導電性高分子含有インクから作製される導電性高分子膜は、従来公知の導電性高分子含有組成物から作製されるものに比べてデバイス寿命に悪影響を及ぼすインク中の水の含有量が小さいため、高耐久性化及び高性能化という予想し得ない顕著な効果を奏する。
また、本発明の新規な導電性高分子含有インクは、適度なインク粘度と表面張力を有するため、大型基板の印刷法としてプロセス上有利なインクジェット法に適したインク特性を有する。
本願発明の導電性高分子含有インクは、含水率を低く制御することによって、表面張力をより低く調整できるために、PEDOT/PSSを含有する導電性インクに比べて、インクジェット法での塗膜均一性を向上させることができるという効果を奏する。
本願発明の導電性高分子含有インクは、PEDOT/PSSを含有する導電性インクに比べて耐熱性、耐分解性が高く、保存安定性に優れるという効果を奏する。また、このような耐久性に基づいて、本願発明の導電性高分子含有インクは、PEDOT/PSSを含有する導電性インクに比べてインクジェットノズル先端での目詰まりを起こしにくいという顕著な効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)、ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)、グリコール(C)、沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)、沸点が150℃~240℃のグリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる少なくとも一つの溶媒(E)、及び水を含む導電性高分子含有インクであって、その組成が、(A)が0.01~1.0重量%、(B)が0.1~10重量%、(C)が1~50重量%であり、尚且つ(C)、(D)及び(E)の合計が60~99重量%である、ことを特徴とする導電性高分子含有インクである。
Figure 0007018177000002
[式(1)において、Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは1~10の整数を表し、nは0又は1を表す。]
上記式(1)において、Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。
前記のアルカリ金属イオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、Liイオン、Naイオン、又はKイオンが好ましい。
前記のアミン化合物の共役酸としては、アミン化合物にヒドロン(H+)が付加してカチオン種になったものを示す。当該アミン化合物としては、スルホン酸基と反応して共役酸を形成するアミン化合物であればよく、例えば、sp3混成軌道を有するN(Rで表されるアミン化合物[共役酸としては[NH(Rで表される。]、又はsp2混成軌道を有するアミン化合物(例えば、ピリジン類化合物、イミダゾール類化合物)等が挙げられる。
上記の置換基Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は置換基を有する炭素数1~6のアルキル基を表す。
上記の炭素数1~6のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
上記の置換基を有する炭素数1~6のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、又はヒドロキシ基を有する炭素数1~6のアルキル基が挙げられ、具体的には、トリフルオロメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基等が例示される。
これらのうち、置換基Rとしては、独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は2-ヒドロキシエチル基が好ましい。
上記のsp3混成軌道を有するアミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ノルマル-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、ターシャリーブチルアミン、ヘキシルアミン、エタノールアミン化合物(例えば、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン)、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール、又は1,4-ブタンジアミン等が挙げられる。
また、上記のsp2混成軌道を有するアミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、イミダゾール化合物(例えば、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、1、2-ジメチルイミダゾール)、ピリジン、ピコリン、又はルチジン等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、又はイミダゾールである。
すなわち、アミン化合物の共役酸としては、導電性に優れる点で、アンモニウム、モノエタノールアミンの共役酸、ジエタノールアミンの共役酸、トリエタノールアミンの共役酸、又はイミダゾールの共役酸が好ましい。
上記の第4級アンモニウムカチオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラノルマルプロピルアンモニウムカチオン、テトラノルマルブチルアンモニウムカチオン、又はテトラノルマルヘキシルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。これらのうち、入手の観点から好ましくは、テトラメチルアンモニウムカチオン、又はテトラエチルアンモニウムカチオンである。
上記式(1)及び式(2)中、Rは、水素原子、炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。
上記の炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
上記の式(1)及び式(2)のRについては、成膜性の点で、水素原子、メチル基、エチル基、又はフッ素原子であることが好ましい。
上記の式(1)及び式(2)中、mは1~10の整数を表し、好ましくは、1~4の整数であり、より好ましくは2である。
上記の式(1)及び式(2)中、nは0又は1を表し、好ましくは、1である。
上記の式(2)で表される構造単位は、上記の式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表す。
ドーピングにより絶縁体-金属転移を引き起こすドーパントは、アクセプタとドナーに分けられる。前者は、ドーピングにより導電性ポリマーの高分子鎖の近くに入り主鎖の共役系からπ電子を奪う。結果として、主鎖上に正電荷(正孔、ホール)が注入されるため、p型ドーパントとも呼ばれる。また、後者は、逆に主鎖の共役系に電子を与えることになり、この電子が主鎖の共役系を動くことになるため、n型ドーパントとも呼ばれる。
本発明におけるドーパントは、ポリマー分子主鎖に共有結合で結びついたスルホ基又はスルホナート基であり、p型ドーパントである。このように外部からドーパントを添加することなく導電性を発現するポリマーは自己ドープ型導電性高分子と呼ばれている。
本発明のポリチオフェン(A)は、下記式(5)で表されるチオフェンモノマーを、水又はアルコール溶媒中、酸化剤の存在下に重合させることで製造することができる。
Figure 0007018177000003
[上記式(5)中、R、m、及びnは上記式(1)と同じ定義である。Mは、金属イオンを表わす。]
式(5)におけるMで表される金属イオンとしては、特に限定するものではないが、遷移金属イオン、貴金属イオン、非鉄金属イオン、アルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン、及びKイオン)、アルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
上記式(5)で表されるチオフェンモノマーを重合して得られるポリチオフェン(A)は金属塩となる。当該金属塩については、必要に応じて、酸で処理することでMを水素イオンへ変換可能であり、さらにこれ(水素イオン変換物)をアミン化合物で処理することで、Mがアミン化合物の共役酸であるポリチオフェン(A)が得られる。
上記式(5)で表されるチオフェンモノマーとしては、具体的には、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸ナトリウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸リチウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸カリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸ナトリウム、及び8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ヘキシル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソプロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸アンモニウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、又は4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム等が例示される。
本発明において使用するポリチオフェン(A)については、特に限定するものではないが、その導電率が、フィルム状態での導電率(電気伝導度)として、10S/cm以上であることが好ましい。
本発明の導電性高分子含有インクにおけるポリチオフェン(A)の含有量(組成)は、0.01~1.0重量%である。当該ポリチオフェン(A)の含有量(組成)については、正孔注入材料として優れた性能を示す点で、0.02重量%~0.5重量%であることが好ましく、0.05重量%~0.3重量%であることがより好ましい。
本発明におけるポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)は、特に限定するものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等のαβ不飽和カルボン酸化合物の単一重合物、又は共重合物を挙げることができる。前記の単一重合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等が挙げられる。また前記の共重合物としては、少なくとも1種類のαβ不飽和カルボン酸モノマーとコモノマーを用いて共重合させたものを例示することができ、当該コモノマーとしては当該αβ不飽和カルボン酸モノマーと共重合可能なものを用いることができる。当該共重合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリ(アクリル酸-メタクリル酸)共重合体、ポリ(アクリル酸-ヒドロキシエチルアクリレート)共重合体、ポリ(アクリル酸―マレイン酸)共重合体、ポリ(アクリル酸―ビニルスルホン酸)共重合体、ポリ(アクリル酸-スチレンスルホン酸)共重合体、ポリ(メタクリル酸-スチレンスルホン酸)共重合体、又はポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート-スチレンスルホン酸)共重合体等が挙げられる。当該共重合物については、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよいし、交互重合体であってもよい。
前記ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)としては、導電性高分子の耐久性に優れる点で、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸―スチレンスルホン酸)共重合体、又はポリ(メタクリル酸―スチレンスルホン酸)共重合体であることが好ましい。
本発明のポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)については、特に限定されないが、その分子量が1千~500万であることが好ましく、1万~30万であることがより好ましい。
本発明の導電性高分子含有インクにおけるポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)の含有量(組成)は、0.1~10重量%である。当該ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)の含有量(組成)については、導電性高分子含有インクの粘度を適正に制御しやすい点で、1.0~8.0重量%であることが好ましく、1.0~4.0重量%であることがより好ましい。
なお、本発明の導電性高分子含有インクにおいて、ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)とポリチオフェン(A)の重量比については、有機電気素子用正孔注入材として導電性を適切に制御しやすい点で、(B)/(A)で表される重量比(重量/重量)が1~40を満たすものが好ましく、5~30を満たすものがより好ましく、8~20を満たすものがより好ましい。
本発明は、グリコール(C)を含むことを特徴とする。
当該グリコール(C)としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、又は1,2,6-ヘキサントリオール等が挙げられる。
これらの中でも、導電性高分子含有インクからの乾燥速度が早いという点で、沸点が220℃以下のグリコール(C)が好ましく、具体的には、エチレングリコール(沸点197℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、1,3-プロパンジオール(沸点210℃)、1,3-ブチレングリコール(沸点207℃)、2,3-ブタンジオール(沸点182℃)、又は2-メチル-2,4-ペンタンジオール(沸点197℃)が好ましい。
本発明の導電性高分子含有インクにおけるグリコール(C)の含有量(組成)は、1.0~50重量%である。当該グリコールの含有量(組成)については、導電性高分子含有インクの成膜時の平滑性に優れる点で、5~40重量%であることが好ましく、10~35重量%であることがより好ましい。
本発明は、沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)を含有することを特徴とする。当該、沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)としては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール等の低級アルコール、エチレングリコール モノメチルエーテル(沸点124℃)、エチレングリコール モノエチルエーテル(沸点135℃)、エチレングリコール モノn-プロピルエーテル(沸点150℃)、エチレングリコール モノiso-プロピルエーテル(沸点140℃)等のエチレングリコール モノアルキルエーテル、プロピレングリコール モノメチルエーテル(沸点120℃)、プロピレングリコール モノエチルエーテル(沸点132℃)、プロピレングリコール モノn-プロピルエーテル(沸点150℃)、プロピレングリコール モノiso-プロピルエーテル(沸点138℃)等のプロピレングリコール モノアルキルエーテル等が挙げられる。なお、沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)として、上述の2種以上のアルコールの組み合わせであってもよい。
これらの中でも、導電性高分子含有インクの長期保存による乾燥の抑制、又は導電性高分子含有インクの粘度を下げる観点から、沸点が100℃以上のエチレングリコール モノアルキルエーテル又はプロピレングリコール モノアルキルエーテルが好ましいく、具体的には、エチレングリコール モノメチルエーテル、エチレングリコール モノエチルエーテル、エチレングリコール モノイソプロピルエーテル、エチレングリコール モノn-プロピルエーテル、プロピレングリコール モノメチルエーテル、プロピレングリコール モノエチルエーテル、プロピレングリコール モノイソプロピルエーテル、及びプロピレングリコール モノn-プロピルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の導電性高分子含有インクにおいて、沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)の含有量(組成)は、導電性高分子含有インクの長期保存による乾燥の抑制、又は導電性高分子含有インクの粘度を下げる観点から、20~70重量%であることが好ましく、20~60重量%であることがより好ましく、20~50重量%であることがより好ましい。
本発明は、沸点が150~240℃のグリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる少なくとも一つの溶媒(E)を含有することを特徴とする。
上記の沸点が150~240℃のグリコールエーテルとしては、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール モノn-ブチルエーテル、エチレングリコール モノiso-ブチルエーテル、エチレングリコール モノsec-ブチルエーテル、エチレングリコール モノtert-ブチルエーテル、エチレングリコール モノn-ペンチルエーテル等のエチレングリコール モノアルキルエーテル ; ジエチレングリコール モノメチルエーテル、ジエチレングリコール モノエチルエーテル、ジエチレングリコール モノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコール モノiso-プロピルエーテル、ジエチレングリコール モノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコール モノiso-ブチルエーテル、ジエチレングリコール モノsec-ブチルエーテル、ジエチレングリコール モノtert-ブチルエーテル等のジエチレングリコール モノアルキルエーテル ; プロピレングリコール モノn-ブチルエーテル、プロピレングリコール モノiso-ブチルエーテル、プロピレングリコール モノsec-ブチルエーテル、プロピレングリコール モノtert-ブチルエーテル等のプロピレングリコール モノアルキルエーテル ; ジプロピレングリコール モノメチルエーテル、ジプロピレングリコール モノエチルエーテル、ジプロピレングリコール モノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール モノiso-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール モノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール モノiso-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール モノsec-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール モノtert-ブチルエーテル等のジプロピレングリコール モノアルキルエーテルが挙げられる。
上記の非プロトン性極性溶媒としては、沸点で限定されるものではなく、特に限定するものではないが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、又はジメチルスルホキシド等が挙げられる。なお、非プロトン性極性溶媒については、ポリチオフェン(A)の溶解性の観点から、沸点が150~240℃の非プロトン性極性溶媒が好ましい。
沸点が150~240℃のグリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる少なくとも一つの溶媒(E)については、ポリチオフェン(A)の溶解性の観点から、ジエチレングリコール モノメチルエーテル、ジエチレングリコール モノエチルエーテル、ジプロピレングリコール モノメチルエーテル、ジプロピレングリコール モノエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、又はこれらの混合物が好ましい。
本発明の導電性高分子含有インクにおいて、沸点が150~240℃のグリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる少なくとも一つの溶媒(E)の含有量(組成)は、ポリチオフェン(A)の溶解性の観点から、20~70重量%であることが好ましく、20~60重量%であることがより好ましく、20~50重量%であることがより好ましい。
本発明の導電性高分子含有インクは、ポリチオフェン(A)、ポリアクリル酸系水溶液樹脂(B)、グリコール(C)、沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)、沸点が150℃~240℃のグリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる少なくとも一つの溶媒(E)、及び水を含む組成物であり、且つ、グリコール(C)を1~50重量%含み、更に(C)、(D)、及び(E)の総含有量が60~99重量%であることを特徴とする。なお、(C)、(D)、及び(E)の総含有量が、70~98重量%であることが好ましく、80~98重量%であることがより好ましい。
また、本発明の導電性高分子含有インクについては、基材への濡れ性に優れる点で、20℃における粘度、及び表面張力が、各々、25mPa・s以下、及び15~50mN/mであることが好ましく、各々、20mPa・s以下、及び20~40mN/mであることがより好ましい。
本発明の導電性高分子含有インクは、必要に応じて、界面活性剤を含んでいてもよい。当該界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、高分子型非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
前記高分子型非イオン界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドンの共重合体等が挙げられる。本発明に使用されるポリビニルピロリドンの平均分子量は1千~200万であることが好ましく、好ましくは1万~150万である。当該ポリビニルピロリドンの共重合体としては、特に限定するものではないが、親水性部と疎水性部をポリマー鎖中に併せ持つものが好ましく、例えば、ポリビニルピロリドンをポリビニルアルコールにグラフトしたコポリマーや、[ビニルピロリドン-酢酸ビニル]ブロック共重合体、[ビニルピロリドン-メチルメタクリレート]共重合体、[ビニルピロリドン-ノルマルブチルメタクリレート]共重合体、又は[ビニルピロリドン-アクリルアミド]共重合体などが例示できる。
前記両性界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。当該ベタイン型両性界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、アルキルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、又はラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するものであれば特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、又はパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、又はシリコーン変性アクリル化合物などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤については、レベリング剤として本発明の導電性高分子含有インクの塗膜の平坦性を改善するのに有効である。
また、上記以外の界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、アセチレングリコール型界面活性剤が挙げられる。
本発明の導電性高分子含有インクを調製する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明のポリチオフェン(A)の水溶液又は固体と、ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)の水溶液又は固体と、グリコールエーテル(C)、沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)、沸点が150℃~240℃のグリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる少なくとも一つの溶媒(E)、必要に応じて水と、必要に応じてその他添加剤を、本発明の範囲で任意に、混合する方法を挙げることができる。各成分を混合するに当たり特に順番に限定はなく、各成分を任意の順で混合することにより本発明の導電性高分子含有インクを調製することができる。
ここで、各成分を混合する際の温度は、特に限定するものではないが、例えば、室温~加温下で行うことができ、0℃以上100℃以下であることが好ましい。
混合する際の雰囲気は、特に限定するものではないが、大気中でも、不活性ガス中でも良い。
本発明の導電性高分子含有インクを混合する際には、スターラーチップ、攪拌羽根等による一般的な混合溶解操作に加えて、超音波照射、ホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。
ホモジナイズ処理する場合には、ポリマーの熱劣化を防ぐため、冷温しながら行うことが好ましい。
本発明の導電性高分子含有インクの濃度調整は、配合比で調整しても良いし、配合後に濃縮により調整しても良い。濃縮の方法は、減圧下に溶媒を留去する方法であっても、限外ろ過膜を利用する方法であっても良い。
本発明の導電性高分子含有インクから導電性高分子膜を形成する方法としては、特に限定するものではない。例えば、本発明の導電性高分子含有インクを、支持体に塗布し乾燥することで支持体上に導電性高分子膜を形成させることができる。
支持体としては、本発明の導電性高分子含有インクが塗布可能なものであれば特に限定するものではなく、例えば、高分子基材又は無機基材が挙げられる。高分子基材としては、特に限定するものではないが、例えば、熱可塑性樹脂、不織布、紙、又はレジスト膜基板等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、又はポリカーボネート等が挙げられる。不織布としては、特に限定するものではないが、例えば、天然繊維不織布、合成繊維不織布、又はガラス繊維不織布等が挙げられる。紙としては一般的なセルロースを主成分とするものでよい。無機基材としては、特に限定するものではないが、例えば、ガラス、ITOなどの金属酸化物、セラミックス、酸化アルミニウム、又は酸化タンタル等が挙げられる。
導電性高分子含有インクの塗布方法としては、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ディスペンサ法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、スピンコート法、又はインクジェット法等が挙げられる。好ましくは、バーコート法、スピンコート法、又はインクジェット法である。
塗膜の乾燥温度は、均一な導電性高分子膜が得られる温度及び基材の耐熱温度以下であれば特に限定するものではないが、室温~300℃の範囲であり、好ましくは室温~240℃の範囲であり、さらに好ましくは室温~220℃の範囲である。
乾燥雰囲気は大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
得られる導電性高分子膜の膜厚としては特に限定するものではないが、20~200nmの範囲が好ましい。より好ましくは30~80nmである。
当該導電性高分子膜の導電率としては、10-2S/cm以下であれば特に限定するものではないが、例えば、有機エレクトロニクス素子、有機光電変換素子等の正孔注入剤として用いる場合、10-8S/cm~10-3S/cmであり、より好ましくは、10-6~10-4S/cmである。
本発明の導電性高分子含有インクを乾燥させて得られる導電性膜については、特に限定するものではないが、例えば、有機電子阻止の正孔注入材料、又は正孔輸送材料として用いることが可能である。そのため、当該導電性膜については、特に限定するものではないが、例えば、有機エレクトロルミネセンス素子又は有機光電変換素子のいずれかの有機電子素子に包含されて用いられることが好ましい。
以下に本発明に関する実施例を示す。
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
[表面抵抗率測定]
装置:三菱化学社製ロレスタGP MCP-T600
装置:三菱化学社製ハイレスタUX MCP-HT8000
[膜厚測定]
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT
[導電性高分子の導電率測定]
本発明の導電性高分子含有インク約0.4mlを縦横それぞれ33mm角の無アルカリガラス板に塗布後、MIKASA製スピンコーターMS-A150を用いて成膜した(条件=2000rpm(2分))。その後、ホットプレート上で200℃にて20分加熱して導電性高分子膜を得た。膜厚及び表面抵抗値から、以下の式に基づき算出した。
導電率[S/cm]=10/(表面抵抗率[Ω/□]×膜厚[μm])
[表面張力測定]
装置:毛管上昇方式表面張力計DG-1(表面側器製)
[平滑性評価]
イソプロパノール洗浄、O洗浄した縦横それぞれガラス33mm角のガラス基板に、導電性高分子含有インクを塗布後、2000rpm(2分)でスピンコートし(MIKASA製スピンコーターMS-A150使用)、得られた数十nmの薄膜の状態(不均一性、又は凹凸の有無)を目視により観察した。
[粘度測定]
コンプリート型粘度計/BROOKFIELD VISCOMETER DV-1 Prime
[ポリアクリル酸系水溶性樹脂のGPC測定]
装置:ビルドアップGPCシステム
カラム:TSKgel GMPWXL(7.8mmID×30cm)×2本
検出器:RI検出器
溶離液:0.2M-リン酸緩衝液(pH=7.0)/アセトニトリル=9/1
流速 :1.0ml/min
濃度 : 0.05wt%
注入量:100μl
カラム温度:40℃。
合成例1.
3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム[下記式(6)で表される化合物]の合成.
窒素雰囲気下、1000mlナス型フラスコに60%水素化ナトリウム 4.4g(109mmol)、トルエン 400mlを仕込んだ後、(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メタノール 15.2g(88.4ml)を添加した。その後、反応液を還流温度に昇温させ同温度で1時間攪拌した。その後、2,4-ブタンスルトン 12.1g(89mmol)とトルエン 100mlとからなる混合液を滴下し、同温度で2時間攪拌した。冷却後、得られた反応液をアセトン 1500mlに滴下し再沈を行った。得られた粉末を濾過し、真空乾燥させることで18.0gの淡黄色粉末を収率62%で得た。NMR測定から、これが下記式(6)で表される3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムであることを確認した。
Figure 0007018177000004
1H-NMR(DO)δ(ppm);6.67(s,2H),4.54-4.60(m,1H),4.45(dd,1H,J=12.0,2.2Hz),4.26(dd,1H,J=12.0,6.8Hz),3.90-3.81(m,4H),3.10-3.18(m,1H),2.30-2.47(m,1H),1.77-1.92(m,1H),1.45(d,3H)
13C-NMR(DO)δ(ppm);14.91,31.22,53.13,66.18,69.18,73.29,73.36,100.81,100.94,140.88,141.06。
合成例2.
ポリチオフェン(A)[下記式(7)又は下記式(8)で表される構造単位を含む重合体]の合成.
500mlセパラブルフラスコに、合成例1に準じて合成した3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム 10g(30mmol)と水 150gを加えた。溶解後、室温下、無水塩化鉄(III) 2.94g(18.1mmol)を加えて20分攪拌した。その後、過硫酸ナトリウム 14.5g(60.4mmol)と水 100gからなる混合溶液を反応液温度が30℃以下を保持しながら滴下した。室温で3時間攪拌したのち、反応液を800gのアセトンに滴下させ黒色のNa型のポリマーを析出させた。ポリマーを濾過・真空乾燥することで、18.0gの3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムの粗ポリマーを得た。
次に、この粗ポリマー 14.5gに水を加え1重量%溶液に調製した水溶液 1450gを、陽イオン交換樹脂Lewatit MonoPlus S100(H型) 350mlを充填したカラムに通液(空間速度=1.1)することによりH型のポリマー水溶液を1550g得た。更に、本ポリマー水溶液をクロスフロー式限外ろ過(分画分子量=10,000、透過倍率=20)により精製することにより下記式(7)又は式(8)で表される構造単位を含む重合体(ポリチオフェン(A))の濃群青色水溶液 414gを得た。
ポリチオフェン(A)水溶液に含まれるポリマー量は2.1重量%であった。又、鉄イオン、及びナトリウムイオンを、各々44ppm、及び12ppm(対ポリマー)含有していた。本ポリマー水溶液を用いて薄膜を作成し、導電率を測定したところ、230S/cmであった。
Figure 0007018177000005
Figure 0007018177000006
合成例3(スチレンスルホン酸/メタクリル酸共重合体(モル比 10/90)の合成)
300mlナス型フラスコに、スチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー・ファインケム製、純分=88.2wt%) 2.50g(10.7mmol)、メタクリル酸ナトリウム 10.5g(97.2mmol)及び水 142gを加えたのち、窒素雰囲気下、均一になるまで室温下撹拌した。その後、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩 59mg(0.21mmol)を加え、80℃で20時間撹拌した。冷却後、得られた反応液をアセトン 2Lに再沈させた。濾過・乾燥の後、12.5gのポリスチレン酸ナトリウム/メタクリル酸ナトリウム共重合体(モル比 10/90)を得た。GPC測定の結果、共重合体の重量平均分子量は170,000(Mw/Mn=1.8)であった。
得られた共重合体を水で希釈後、イオン交換樹脂Lewatit S108H 120mlに通液しイオン交換することにより、スチレンスルホン酸/メタクリル酸共重合体(モル比 10/90) (共重合体Aと略す)を2.7wt%の水溶液として298g得た(収率=76%,粘度=8.3mPa・s(20℃))。
合成例4(スチレンスルホン酸/メタクリル酸共重合体(モル比 25/75)の合成)
スチレンスルホン酸ナトリウム、及びメタクリル酸ナトリウムを各々6.57g(28.1mmol)、9.10g(84.2mmol)に変更した以外は合成例3と同様な操作を行い15.5gのスチレンスルホン酸ナトリウム/メタクリル酸ナトリウム共重合体(モル比 25/75)を得た。GPC測定の結果、共重合体の重量平均分子量は220,000(Mw/Mn=2.0)であった。
合成例3と同様にイオン交換処理を行うことによりスチレンスルホン酸/メタクリル酸共重合体(モル比 25/75) (共重合体Bと略す)を2.5wt%の水溶液として301g得た(収率=77%,粘度=9.3mPa・s(20℃)。
実施例1.
30mlサンプル瓶に、35重量%のポリアクリル酸(分子量250,000)水溶液 1.26g、プロピレングリコール モノメチルエーテル 6.99g、ジメチルアセトアミド 6.99g、及びエチレングリコール 4.80gを加えて均一溶液(溶液-1)を得た。その均一溶液 18.1gに、合成例2で得られたポリチオフェン(A)[前記式(7)又は前記式(8)で表される構造単位を含む重合体][導電率230S/cm]を2.1重量%含む水溶液 1.90gを加えて一晩室温にて撹拌し、導電性高分子含有インク(HIM01)を得た。得られたHIM01中のポリチオフェン(A)、ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)、エチレングリコール(C)、プロピレングリコール モノメチルエーテル(D)、及びジメチルアセトアミド(E)の各濃度は、各々、0.2重量%、2.0重量%、21.7重量%、31.9重量%、及び31.9重量%であった。
HIM01の粘度、表面張力は、各々、23.5mPa・s、33mN/mであった。
実施例2
30mlサンプル瓶に、35重量%のポリアクリル酸(分子量250,000)水溶液 1.26g、プロピレングリコール モノメチルエーテル 8.0g、ジメチルアセトアミド 8.0g、及びエチレングリコール 4.0gを加えて均一溶液(溶液-2)を得た。実施例1における溶液-1 18.1gを前記の溶液-2 18.1gに変えて、実施例1と同様な操作を行い、導電性高分子含有インクHIM02を得た。HIM02中のポリチオフェン(A)、ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)、エチレングリコール(C)、プロピレングリコール モノメチルエーテル(D)、及びジメチルアセトアミド(E)の各濃度は、各々、0.2重量%、2.0重量%、17.0重量%、34.0重量%、及び34.0重量%であった。HIM02の粘度、表面張力の測定結果を表1に示す。
実施例3
エチレングリコール 4.0gをプロピレングリコール 4.0gに変えた以外は実施例2と同様な操作を行い、導電性高分子含有インクHIM03を得た。HIM03の粘度、表面張力の測定結果を表1に示す。
実施例4
30mlサンプル瓶に、35重量%のポリアクリル酸(分子量250,000)水溶液 1.26g、プロピレングリコール モノメチルエーテル 10.0g、ジメチルアセトアミド 6.0g、及びエチレングリコール 4.0gを加えて均一溶液(溶液-3)を得た。実施例1における溶液-1 18.1gを前記の溶液-3 18.1gに変えて、実施例1と同様な操作を行い、導電性高分子含有インクHIM04を得た。HIM04中のポリチオフェン(A)、ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)、エチレングリコール(C)、プロピレングリコール モノメチルエーテル(D)、及びジメチルアセトアミド(E)の各濃度は、各々、0.2重量%、2.0重量%、17.0重量%、42.5重量%、及び25.5重量%であった。HIM04の粘度、表面張力の測定結果を表1に示す。
実施例5
エチレングリコール 4.0gをプロピレングリコール 4.0gに変えた以外は実施例4と同様な操作を行い、導電性高分子含有インクHIM05を得た。HIM05の粘度、表面張力の測定結果を表1に示す。
実施例6
30mlサンプル瓶に、35重量%のポリアクリル酸(分子量250,000)水溶液 1.14g、プロピレングリコール モノメチルエーテル 6.74g、ジメチルアセトアミド 6.74g、及びプロピレングリコール 4.43gを加えて均一溶液(溶液-4)を調製した。当該均一溶液(溶液-4) 18.1gに、合成例2で得られたポリチオフェン(A)[前記式(7)又は前記式(8)で表される構造単位を含む重合体][導電率230S/cm]を2.1重量%含む水溶液 0.95gを加えて一晩室温にて撹拌し、導電性高分子含有インク(HIM06)を得た。得られた導電性高分子含有インクHIM06の組成、粘度、及び表面張力の測定結果を表1に示す。
実施例7
プロピレングリコール 4.43gをエチレングリコール 4.43gに変更し、ジメチルアセトアミド 6.74gをジエチレングリコール モノメチルエーテル 6.74gに変更した以外は、実施例6と同様な操作を行い、導電性高分子含有インクHIM07を得た。HIM07の組成、粘度、及び表面張力の測定結果を表1に示す。
実施例8
エチレングリコール 4.43gを1,3-ブタンジオール 4.43gに変更した以外は、実施例7と同様な操作を行い、導電性高分子含有インクHIM08を得た。HIM08の組成、粘度、及び表面張力の測定結果を表1に示す。
実施例9
エチレングリコール 4.43gを1,3-ブタンジオール 4.43gに変更し、プロピレングリコール モノメチルエーテル 6.74gをイソプロパノール 6.74gに変更した以外は、実施例7と同様な操作を行い、導電性高分子含有インクHIM09を得た。HIM09の組成、粘度、及び表面張力の測定結果を表1に示す。
実施例10
合成例3で合成した共重合体Aを濃縮し、15重量%のスチレンスルホン酸/メタクリル酸共重合体(共重合体A)の水溶液を得た。15重量%のスチレンスルホン酸/メタクリル酸共重合体(共重合体A)の水溶液 2.66g、プロピレングリコール モノメチルエーテル 6.74g、ジメチルアセトアミド 6.74g、及びプロピレングリコール 4.43gを加えて均一溶液(溶液-5)を調製した。当該均一溶液に、合成例2で得られたポリチオフェン(A)[前記式(7)又は前記式(8)で表される構造単位を含む重合体][導電率230S/cm]を2.1重量%含む水溶液 0.95gを加えて一晩室温にて撹拌し、導電性高分子含有インク(HIM10)を得た。得られた導電性高分子含有インクHIM10の各成分の濃度、並びに粘度、及び表面張力の測定結果を表1に示す。
実施例11
合成例4で合成した共重合体Bを濃縮し、15重量%のスチレンスルホン酸/メタクリル酸共重合体(共重合体B)の水溶液を調製した。15重量%のスチレンスルホン酸/メタクリル酸共重合体(共重合体A)の水溶液 2.66gを15重量%のスチレンスルホン酸/メタクリル酸共重合体(共重合体B)の水溶液 2.66gに変更した以外は、実施例10と同様な操作を行い、導電性高分子含有インクHIM11を得た。HIM11の各成分の濃度、並びに粘度、及び表面張力の測定結果を表1に示す。
実施例12
30mlサンプル瓶に、35重量%のポリアクリル酸(分子量250,000)水溶液 1.71g、エタノール 13.48g、プロピレングリコール モノメチルエーテル 9.05g、ジメチルアセトアミド 4.43g、及びプロピレングリコール 8.86g、水 1.65gを加えて均一溶液(溶液-6)を調製した。当該均一溶液(溶液-6) 39.2gに、合成例2で得られたポリチオフェン(A)[前記式(7)又は前記式(8)で表される構造単位を含む重合体][導電率230S/cm]を2.1重量%含む水溶液 0.81gを加えて一晩室温にて撹拌し、導電性高分子含有インク(HIM12)を得た。得られた導電性高分子含有インクHIM12の組成、粘度、及び表面張力の測定結果を表1に示す。
実施例13
ジメチルアセトアミドをジエチレングリコール モノメチルエーテルに変更した以外は、実施例12と同様な操作を行い、導電性高分子含有インクHIM13を得た。HIM13の組成、粘度、及び表面張力の測定結果を表1に示す。
Figure 0007018177000007
比較例1
30mlサンプル瓶に、35重量%のポリアクリル酸(分子量250,000)水溶液 1.26gにジエチレングリコール モノメチルエーテル(E) 18.7gを添加して20gの均一溶液(溶液-6)を得た。その後、その均一溶液 18.1gと合成例2で得られたポリチオフェン(A)[前記式(7)又は前記式(8)で表される構造単位を含む重合体][導電率230S/cm]を2.1重量%含む水溶液 1.90gを加えて一晩室温にて撹拌し、導電性ポリマー含有インク(REF1)を得た。REF1のポリチオフェン(A)、ポリアクリル酸(B)、及びジエチレングリコール モノメチルエーテル(E)の濃度は、其々、0.2重量%、2.0重量%、及び84.8重量%であり、REF1の粘度、及び表面張力の測定結果は表2に記載したように35mPa・s、37mN/mであった。
REF1について、平滑性評価を行った。REF1は、乾燥前の有機薄膜が目視により不均一であり平滑性はないと判断した(表2にて「×」で表現した)。
比較例2
ジエチレングリコール モノメチルエーテル(E) 18.7gをジメチルアセトアミド(E) 18.7gに変更した以外は比較例1と同様な操作を行い、導電性ポリマー含有インク(REF2)を調整した。
粘度、表面張力は表2に記載した通りであった。
REF2について、平滑性評価を行ったとろ、薄膜の平滑性はなかった(表2にて「×」で表現した)。
比較例3~6
ジエチレングリコール モノメチルエーテル(E) 18.7gをN,N-ジメチルホルムアミド(E) 18.7gに変更した以外は比較例1と同様な操作を行い、導電性ポリマー含有インク(REF3)を調整した。
ジエチレングリコール モノメチルエーテル(E) 18.7gをプロピレングリコール モノメチルエーテル(D) 18.7gに変更した以外は比較例1と同様な操作を行い、導電性ポリマー含有インク(REF4)を調整した。
ジエチレングリコール モノメチルエーテル(E) 18.7gをジメチルアセトアミド(E) 9.35gとプロピレングリコール モノメチルエーテル(D) 9.35gの混合物に変更した以外は比較例1と同様な操作を行い、導電性ポリマー含有インク(REF5)を調整した。
ジエチレングリコール モノメチルエーテル(E) 18.7gをプロピレングリコール モノメチルエーテル(D) 9.35gとジエチレングリコール モノメチルエーテル(E) 9.35g混合物に変更した以外は比較例1と同様な操作を行い、導電性ポリマー含有インクREF6を調整した。
REF3~6の粘度、表面張力は表2に記載した通りであった。
REF3~6について、平滑性評価を行ったとろ、薄膜の平滑性はなかった(表2にて「×」で表現した)。
比較例7
ジエチレングリコール モノメチルエーテル(E) 18.7gをエチレングリコール(C) 18.7gに変更した以外は比較例1と同様な操作を行い、導電性ポリマー含有インク(REF7)を調整した。表2に示す通り、REF7の粘度は100mPa・sを超える値であり、且つ、薄膜の平滑性はなかった。
比較例8
ジメチルアセトアミド 9.0g、ジエチレングリコール モノメチルエーテル 9.0g、及びプロピレングリコール 2.0gを混合し均一溶液を得た。
次に、ジエチレングリコール モノメチルエーテル(E) 18.7gを上記均一溶液 20.0gに変更した以外は、比較例1と同様な操作を行い、導電性ポリマー含有インクREF8を調製した。
粘度、表面張力は表2に記載した通りであった。薄膜の平滑性はなかった。
Figure 0007018177000008
実施例14(平滑性、膜厚及び導電率測定)
実施例1で調製した導電性高分子含有インクHIM01について、平滑性評価及び導電性高分子の導電性測定を行った。
その結果、表3に示すように得られた薄膜の平滑性は良好であり、導電率は8.6×10-4S/cmを示した。
実施例15~26(平滑性、膜厚及び導電率測定)
実施例2~13で調製した導電性高分子含有インクHIM02~13について、平滑性評価及び導電性高分子の導電性測定を行った。結果を表3に示す。なお、平滑性評価の結果はいずれも良好であり、表3では「○」として表現した。
Figure 0007018177000009
実施例27.(素子の作製と評価)
厚さ200nmのITO透明電極(陽極)を積層したガラス基板をアセトンおよび純水による超音波洗浄、イソプロピルアルコールによる沸騰洗浄を行った。さらに紫外線オゾン洗浄を行った。
実施例1で調製した導電性高分子含有インクHIM01を孔径0.4μmのフィルターでろ過し、スピンコート法(1000rpm、120秒)によって塗布し、180℃で30分間乾燥した。その結果、63nmの正孔注入層が成膜された。
次に、真空蒸着装置へ設置後、装置内が1.0×10-4Pa以下になるまで真空ポンプにて排気した。続いて、正孔輸送層用材料であるN,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD)を真空蒸着法により50nmの膜厚で成膜し、正孔輸送層を形成した。更に、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq)を真空蒸着法により50nmの膜厚で成膜し、発光層兼電子輸送層を形成した。
引き続き、陰極としてLiFを1nm、アルミニウムを100nm成膜して金属電極を形成した。なお、それぞれの膜厚は触針式膜厚測定計(DEKTAK)で測定した。
更に、窒素雰囲気下、封止用のガラス板をUV硬化樹脂で接着し、評価用の有機EL素子とした。
このように作製した素子に10mA/cmの電流を印加し、駆動電圧を測定した。また、一定電流印加して初期輝度を1000cd/mとし、輝度が初期輝度の70%まで低下した時間をLT70として評価した。なお、LT70の値が大きい程、耐久性が良好であることを意味する。評価結果を表4に示した。
実施例28~39(素子の作製と評価)
実施例27において、導電性高分子含有インクHIM01の代わりに実施例2~13で調製したHIM02~13を用いた他は、実施例27と同様に有機EL素子を作製して、その駆動電圧およびLT70を測定した。評価結果を表4に示した。
実施例40(素子の作製と評価)
実施例6で調製したHIM06に極微量のアンモニア水をマイクロシリンジにて加えて、インクのpHを5.0に調製した。これを導電性高分子含有インクHIM14とした。電性高分子含有インクHIM01の代わりにHIM14を用いて、実施例27と同様に有機EL素子を作製して、その駆動電圧およびLT70を測定した。評価結果を表4に示した。
比較例9.(素子の作製と評価)
実施例27において、導電性高分子含有インクHIM01の代わりに、PEDOT:PSS溶液(ヘレウス社製Clevios P VP AI4083)を用いた他は、実施例27と同様に素子を作製して駆動電圧およびLT70を測定した。評価結果を表4に示した。
なお、実施例27~実施例40における測定結果については、比較例9の測定値を100として規格化して表示した。駆動電圧は発光に必要な電圧を表し、低ければ低いほど産業利用上優れる。LT70は発光素子寿命を表し、高ければ高いほど長寿命で産業利用上優れる。
Figure 0007018177000010
本発明の導電性高分子含有インクは、良好な正孔輸送性(注入性)と耐久性を有する高分子膜を形成可能であり、それらを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子、有機光電変換素子は素子寿命が改善された耐久性のある素子が作製可能である。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子においては、蛍光発光性の有機EL素子だけでなく、消費電力の少ない燐光発光性の有機EL素子も提供することができる。
この導電性高分子含有インクは、ガラスや金属などの基材以外にも、高分子基材への濡れ性が良く、ハジキや斑なく塗布が可能である。従って、各種基材への導電性コーティング剤(帯電防止剤)、固体電解コンデンサの固体電解質(陰極材料)などに使用できる。またこの導電性高分子膜で被覆された高分子基材からなる被覆物品は、帯電防止フィルム、固体電解コンデンサの固体電解質、巻回型アルミ電解コンデンサ用のセパレータへの利用が可能である。その他、エレクトロクロミック素子、透明電極、透明導電膜、熱電変換材料、化学センサ、アクチュエータ、電磁波シールド材、有機ELや太陽電池等の電極材料であるITO等の金属酸化物の表面コーティング材等への応用も期待できる。

Claims (14)

  1. 下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)、ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)、グリコール(C)、沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)、沸点が150℃~240℃のグリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる少なくとも一つの溶媒(E)、及び水を含む導電性高分子含有インクであって、その組成が、(A)が0.01~1.0重量%、(B)が0.1~10重量%、(C)が1~50重量%であり、尚且つ(C)、(D)及び(E)の合計が60~99重量%である、ことを特徴とする導電性高分子含有インク。
    Figure 0007018177000011
    [式(1)において、Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは1~10の整数を表し、nは0又は1を表す。]
  2. (C)、(D)及び(E)の合計が70~98重量%であることを特徴とする請求項1記載の導電性高分子含有インク。
  3. (C)、(D)及び(E)の合計が80~98重量%であることを特徴とする請求項1記載の導電性高分子含有インク。
  4. ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)を、ポリチオフェン(A)1重量部に対して、5~40重量部含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の導電性高分子含有インク。
  5. グリコール(C)が、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の導電性高分子含有インク。
  6. グリコール(C)が5~40重量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の導電性高分子インク。
  7. 沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)が、エチレングリコール モノメチルエーテル、エチレングリコール モノエチルエーテル、エチレングリコール モノイソプロピルエーテル、エチレングリコール モノn-プロピルエーテル、プロピレングリコール モノメチルエーテル、プロピレングリコール モノエチルエーテル、プロピレングリコール モノイソプロピルエーテル、及びプロピレングリコール モノn-プロピルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の導電性高分子含有インク。
  8. 沸点が150℃以下の1価のアルコール(D)濃度が20~70重量%であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の導電性高分子インク。
  9. 非プロトン性極性溶媒が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びジエチルアセトアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子含有インク。
  10. 20℃での粘度が25mPa・s以下であり、尚且つ表面張力が20~40mN/mであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の導電性高分子含有インク。
  11. ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸―スチレンスルホン酸)共重合体、又はポリ(メタクリル酸―スチレンスルホン酸)共重合体であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載の導電性高分子含有インク。
  12. ポリアクリル酸系水溶性樹脂(B)の重量平均分子量が1千~50万であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1つに記載の導電性高分子含有インク。
  13. 請求項1に記載の導電性高分子含有インクを乾燥させることを特徴とする導電性膜の製造方法。
  14. 請求項1に記載の導電性高分子含有インクを乾燥させて得られる導電性膜を含むことを特徴とする、有機エレクトロルミネセンス素子又は有機光電変換素子のいずれかの有機電子素子。
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