JP6639806B2 - 皮膜および該皮膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、皮膜および該皮膜の形成方法に関し、より詳細には、無機酸化物粒子を含む皮膜および該皮膜の形成方法に関する。
従来より、無機酸化物粒子を含む皮膜を基材上に形成し、該基材の特性を改質することが知られている。前記皮膜を形成する方法の中に溶射法がある。該溶射法としては、例えば、放電によって溶射炎を形成し、該溶射炎中に無機酸化物粒子を供給して該無機酸化物粒子を溶融状態(換言すれば液状)にし、溶融状態の無機酸化物粒子を基材の被処理面に衝突させ、基材上で該溶融状態の無機酸化物粒子を冷却・固化させることにより、該基材上に無機酸化物粒子を含む皮膜を形成するプラズマ溶射法が挙げられる。
溶射法には、(i)成膜速度が速く、(ii)乾式プロセスなので環境負荷が小さく、(iii)大面積の成膜にも適用できるという利点がある。一方で、(I)成膜前後で無機酸化物粒子の結晶相が相転移する場合があるので、基材上に成膜された皮膜が耐食性および機械特性に劣るようになることがある、(II)液状の無機酸化物粒子の急冷に起因して皮膜にクラックや気孔が生じる、すなわち、急冷によるクラックや気孔の発生、(III)無機酸化物粒子の凝集による流動性の悪化を防止するために無機酸化物粒子の粒子径をマイクロオーダーにする必要があるので、粒間の空隙が大きくなって、皮膜にクラックや気孔が生じる、すなわち、粒間の空隙に依存するクラックや気孔の発生という欠点もある。
また、前記基材上に前記皮膜を形成する方法として、サスペンションプラズマ溶射法(SPS法またはSPPS法)が提案されている。
SPS法は、アルコールなどの液状媒体に、溶射材料であるナノオーダーの無機酸化物粒子が懸濁された懸濁液と、該懸濁液中に懸濁された前記無機酸化物粒子を溶射するSPS装置と、を用いて行われる。
前記SPS装置は、中心軸が前記基材の被処理面に対して直交するように配されるノズルを備え、かつ前記ノズルの前端部から前記基材の被処理面に向けて放電により形成された溶射炎を前記中心軸方向に沿って放出するプラズマ発生部と、前記懸濁液を貯蔵するタンクと、前記ノズルの中心軸に直交する方向から、前記タンク内に貯蔵された前記懸濁液を前記溶射炎中に供給するように配される懸濁液供給部と、を備えるものである(特許文献1参照)。
SPS法では、前記溶射炎中に前記懸濁液が供給されると、前記液状媒体が燃焼されて、前記無機酸化物粒子が溶融状態にされる。そして、この溶融状態の前記無機酸化物粒子が、前記溶射炎によって加速されて前記基材の被処理面に衝突され、前記基材上で冷却・固化される。これにより、前記基材上に前記無機酸化物粒子を含む皮膜が形成される。
特表2014−502670号公報
上記のSPS法によれば、前記プラズマ発生部から放出される前記溶射炎中に、ナノオーダーの無機酸化物粒子を供給できるので、従来よりも小径の無機酸化物粒子を基材上に堆積させることができる。そのため、粒間の空隙に依存するクラックや気孔の発生は少なくなる。すなわち、上記のSPS法によれば、上記の(III)を解決できる。
しかしながら、上記のSPS法においても、前記無機酸化物粒子は溶融状態で前記基材の被処理面に衝突し、前記基材上で冷却・固化されるので、急冷に起因するクラックや気孔の発生という欠点(上記の(II))は依然として解決されていない。
また、この冷却・固化中に前記無機酸化物粒子の結晶相が相転移する場合がある(例えば、前記無機酸化物粒子がα相を有する酸化アルミニウムの場合、結晶相はα相からγ相に変化する)ので、基材上に成膜された皮膜が耐食性および機械特性に劣るようになることがあるという欠点(上記の(I))についても依然として解決されていない。
さらに、前記懸濁液中において前記無機酸化物粒子を分散させた状態を維持するためには、前記液状媒体中の前記無機酸化物粒子の割合、つまり、前記液状媒体における前記無機酸化物粒子の濃度を低くする必要がある。そのため、前記液状媒体における前記無機酸化物粒子の濃度は、通常、数質量%〜10質量%程度にされる。
上述の理由により、SPS法により前記基材上に前記皮膜を形成すると、前記プラズマ溶射法の場合と比べて成膜速度が低下するという問題が生じる、すなわち上記の(i)の利点が失われるという側面がある。
上記問題点に鑑み、本発明は、クラックや気孔が少なく、かつ耐食性および機械特性が低下する虞が少ない無機酸化物粒子を含む皮膜およびその形成方法を提供することを課題とする。
本発明に係る皮膜の形成方法は、
基材上に無機酸化物粒子を含む皮膜を形成する皮膜の形成方法であって、
前記無機酸化物粒子を非溶融状態に維持しつつ加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された前記無機酸化物粒子を非溶融状態で前記基材の被処理面に吹き付ける吹き付け工程と、
前記吹き付け工程で前記基材の被処理面に吹き付けられた前記無機酸化物粒子を前記基材上で焼結させて、前記基材上に前記無機酸化物粒子の皮膜を形成する皮膜形成工程と、を有し、
前記加熱工程では、前記無機酸化物粒子の原料として前記無機酸化物粒子が樹脂中に分散された樹脂組成物を用い、前記樹脂を燃焼させることにより前記無機酸化物粒子を加熱する。
かかる構成によれば、非溶融状態の無機酸化物粒子を用いて基材上に皮膜を形成するので、液状の無機酸化物粒子の急冷に起因して生じるクラックや気孔の影響を少なくできる。
また、前記無機酸化物粒子を前記樹脂に分散させることにより前記無機酸化物粒子の凝集を抑制できるので、粒間の空隙に依存するクラックや気孔の影響を少なくできる。
また、非溶融状態の無機酸化物粒子を用いるので、成膜前後で前記無機酸化物粒子の結晶相が相転移する虞が少ない。そのため、上記形成方法で形成された皮膜は耐食性および機械特性が低下する虞が少ない。
また、前記皮膜の形成方法においては、
前記加熱工程では、前記無機酸化物粒子を炎と接触させて加熱し、前記無機酸化物粒子の表面の温度は、融点−150℃〜融点+150℃の範囲の温度であるものとすることができる。
かかる構成によれば、無機酸化物粒子を非溶融状態で維持しつつ焼結可能な温度とすることができる。したがって、液状の無機酸化物粒子の急冷に起因して生じるクラックや気孔の影響を好適に低減できる。また、上記形成方法で形成された皮膜において、耐食性および機械特性の低下する虞を好適に抑制することができる。
また、前記皮膜の形成方法においては、
加熱前の前記無機酸化物粒子の粒子径は、10〜1000nmであるものとすることができる。
粒子径が1000nm以下であれば、粒子径に依存して生じる粒間の空隙を小さくできる。そのため、粒間の空隙に起因して、皮膜に生じるクラックや気孔の影響を小さくできる。粒子径が10nm以上であれば、前記無機酸化物粒子の凝集を抑制することができる。
また、前記皮膜の形成方法においては、
前記樹脂組成物は、前記無機酸化物粒子を10〜60体積%含むものとすることができる。
10体積%以上であれば、前記樹脂組成物中に高濃度で無機酸化物粒子を含有させることができるので、基材上での成膜速度を向上させることができる。
60体積%以下であれば、前記樹脂組成物中での前記無機酸化物粒子の分散性が低下する虞を抑制できる。
また、前記皮膜の形成方法においては、
前記無機酸化物粒子は酸化アルミニウム粒子であるものとすることができる。
かかる構成によれば、成膜前後で前記無機酸化物粒子の結晶相の相転移をより好適に抑制できる。そのため、上記方法で形成された皮膜において、耐食性および機械特性が低下する虞をより好適に抑制できる。
本発明に係る皮膜は、
無機酸化物粒子が樹脂中に分散された樹脂組成物を用い、前記樹脂を燃焼させることにより、非溶融状態を維持しつつ前記無機酸化物粒子を加熱し、前記無機酸化物粒子を非溶融状態で基材の被処理面に吹き付け、前記無機酸化物粒子を前記基材上に焼結させてなる。
かかる構成によれば、非溶融状態の無機酸化物粒子を基材上に堆積させた皮膜とすることができるので、液状の無機酸化物粒子の急冷に起因して生じるクラックや気孔が少ないものとなる。
また、前記無機酸化物粒子を前記樹脂に分散させることにより前記無機酸化物粒子の凝集を抑制できるので、粒間の空隙に依存するクラックや気孔の影響を少ないものとなる。
また、非溶融状態の無機酸化物粒子を用いるので、成膜前後で前記無機酸化物粒子の結晶相が相転移する虞が少ない。そのため、上記皮膜は耐食性および機械特性が優れたものとなりうる。
以上のように、本発明によれば、クラックや気孔が少なく、かつ耐食性および機械特性が低下する虞が少ない無機酸化物粒子を含む皮膜を形成する皮膜、およびその形成方法が提供される。
本発明の一実施形態に係る皮膜の形成方法のフロー図。 本実施形態の加熱工程および吹き付け工程に用いる吹き付け装置を示す断面図。 熱硬化性のアクリル樹脂に酸化アルミニウム粒子を40体積%となるように加えた樹脂組成物の、撹拌時間ごとのせん断速度とせん断応力との関係を示すグラフ。(a)は樹脂組成物を5分撹拌したときのグラフ。(b)は樹脂組成物を10分撹拌したときのグラフ。(c)は樹脂組成物を15分撹拌したときのグラフ。 熱硬化性のアクリル樹脂に酸化アルミニウム粒子を20〜40体積%となるように加えた各樹脂組成物の、せん断速度とせん断応力との関係を示すグラフ。 酸化アルミニウム粒子の表面の温度および酸化アルミニウム粒子の吹き付け速度の測定結果を示す図。 水盤に捕集した酸化アルミニウム粒子の表面を撮像した図。 基材上に形成された皮膜を撮像した図。(a)は、本発明の方法により形成された皮膜を撮像した図。(b)はプラズマ溶射により形成された皮膜を撮像した図。 基材上に形成された皮膜について粉末X線回折法による測定結果を示す図。(a)は本発明の皮膜の形成方法により形成された皮膜の測定結果を示す図。(b)はプラズマ溶射により形成された皮膜の測定結果を示す図。
まず、本発明の一実施形態に係る皮膜について説明する。本実施形態に係る皮膜は、無機酸化物粒子が樹脂中に分散された樹脂組成物を用い、前記樹脂を燃焼させることにより、非溶融状態を維持しつつ前記無機酸化物粒子を加熱し、前記無機酸化物粒子を非溶融状態で基材の被処理面に吹き付け、前記無機酸化物粒子を前記基材上に焼結させてなる。換言すれば、本実施形態に係る皮膜は、前記基材上に前記無機酸化物粒子を焼結させてなる層を有して形成される。本明細書で使用する「非溶融状態」とは、前記無機酸化物粒子が固体状態を維持していること、または粒子状態を保てる程度に前記無機酸化物粒子の表面部分のみが溶融している状態を意味する。本実施形態に係る皮膜は、非溶融状態の無機酸化物粒子を基材上に堆積させた皮膜であるので、液状の無機酸化物粒子の急冷に起因して生じるクラックや気孔の影響が少ないものである。また、前記無機酸化物粒子を前記樹脂に分散させることにより前記無機酸化物粒子の凝集を抑制できるので、粒間の空隙に依存するクラックや気孔の影響を少ないものである。さらに、成膜前後で前記無機酸化物粒子の結晶相が相転移する虞が少ないので、耐食性および機械特性が優れたものとなりうる。
無機酸化物粒子には、例えば、酸化アルミニウム粒子(アルミナ、Al)、二酸化ジルコニウム粒子(ジルコニア、ZrO)、酸化チタン(チタニア、TiO)、アルミナとジルコニアとの混合材料であって、アルミナおよびジルコニア質原料を溶融・凝固してなるアルミナジルコニア粒子(Al/ZrO)、アルミナチタニア(Al/TiO)などが挙げられる。これらの中でも、酸化アルミニウム粒子を用いるのが好ましい。酸化アルミニウム粒子であれば、成膜前後で前記結晶相の相転移をより好適に抑制でき、前記皮膜において、耐食性および機械特性が優れたものとなりうる。酸化アルミニウム粒子としては、α相を有するのが好ましい。γ相よりも耐食性および機械特性に優れるからである。
無機酸化物粒子の粒子径は、10〜1000nmの範囲にあるのが好ましい。1000nm以下であれば、粒間の空隙に起因して、皮膜に生じるクラックや気孔の影響を小さくでき、10nm以上であれば、前記無機酸化物粒子の凝集を抑制することができる。前記無機酸化物粒子の粒子径は、150〜190nmの範囲にあるとさらに好ましい。なお、前記無機酸化物粒子の粒子径は、加熱前に走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定する。具体的には、走査型電子顕微鏡で撮像した画像を用いて、画像中の任意の100個の粒子の粒子径を測定し、その平均値を算出することにより測定する。
基材の材質は特に限定されない。SUS、セラミックス、プラスチックス等からなる従来公知の種々のものを採用することができる。
次に、本実施形態に係る皮膜の形成方法について、図1および図2を参照しながら説明する。
本実施形態に係る皮膜の形成方法は、基材上に無機酸化物粒子を含む皮膜を形成する皮膜の形成方法であって、前記無機酸化物粒子を非溶融状態に維持しつつ加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された前記無機酸化物粒子を非溶融状態で前記基材の被処理面に吹き付ける吹き付け工程と、前記吹き付け工程で前記基材の被処理面に吹き付けられた前記無機酸化物粒子を前記基材上で焼結させて、前記基材上に前記無機酸化物粒子の皮膜を形成する皮膜形成工程と、を有し、前記加熱工程では、前記無機酸化物粒子の原料として前記無機酸化物粒子が樹脂中に分散された樹脂組成物を用い、前記樹脂を燃焼させることにより前記無機酸化物粒子を加熱する。
(加熱工程)
本工程において、前記無機酸化物粒子は、非溶融状態を維持できる温度で加熱される。前記無機酸化物粒子の加熱は、可燃性ガスと助燃性ガスとの混合ガス(例えば、酸素−アセチレンガス)を燃焼させたときに生じる燃焼炎中に前記無機酸化物粒子を接触させることによって実行する。好ましくは、前記無機酸化物粒子の加熱は、前記無機酸化物粒子の表面の温度が融点−150℃〜融点+150℃となる範囲の温度で実行する。前記無機酸化物粒子の加熱を上記の範囲の温度で実行すると、前記無機酸化物粒子を非溶融状態で維持しつつ焼結可能な温度とすることができる。これにより、液状の無機酸化物粒子の急冷に起因して生じるクラックや気孔の影響を好適に低減でき、かつ耐食性および機械特性の低下する虞を好適に抑制することができる。
前記無機酸化物粒子の表面の温度は、前記燃焼炎に接触したときに前記無機酸化物粒子から放出される赤外線強度を測定し、この測定された赤外線強度を温度に変換することにより求めることができる。
本工程では、前記無機酸化物粒子の原料として前記無機酸化物粒子が樹脂中に分散された樹脂組成物を用い、前記樹脂を燃焼させることにより前記無機酸化物粒子を加熱する。これにより、前記無機酸化物粒子の凝集を抑制できるので、粒間の空隙に依存するクラックや気孔の影響を少なくできる。
前記樹脂としては、前記無機酸化物粒子の分散状態を維持できる粘度を有するものであれば特に限定されない。前記樹脂組成物は、前記無機酸化物粒子を分散させた状態で硬化させてなる硬化体の形態であってもよい。この場合、前記樹脂は熱硬化性樹脂であるのが好ましい。例えば、熱硬化性のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの各種の樹脂を用いるのが好ましい。前記樹脂組成物として流動性のない硬化体を用いることにより、SPS法の場合のように吹き付け前に原料が流れ落ちることを防止でき、成膜効率が向上する。
前記樹脂組成物が前記硬化体にされるときの加熱条件(加熱温度および加熱時間)は、前記樹脂の種類を参照し、硬化中の前記樹脂組成物に大きな収縮や割れが生じない条件を選んで適宜設定することができる。前記硬化体は、モールド加工されて、ロッド状などに成形されてもよい。なお、前記硬化体中においては、前記無機酸化物粒子は分散された状態を維持している。
前記樹脂組成物は、前記無機酸化物粒子を10〜60体積%含むと好ましい。10体積%以上であれば、前記樹脂組成物中に高濃度で前記無機酸化物粒子を含有させることができるので、基材上での成膜速度を向上させることができる。60体積%以下であれば、前記樹脂組成物中での前記無機酸化物粒子の分散性が低下する虞を抑制できる。前記樹脂組成物は、前記無機酸化物粒子を20〜40体積%含むとさらに好ましい。前記無機酸化物粒子は、事前に決定された割合で前記樹脂組成物中に配合される。前記無機酸化物粒子の体積は、前記樹脂組成物中に配合される前記無機酸化物粒子の質量を測定し、測定された前記無機酸化物粒子の質量を前記無機酸化物粒子の密度で除して求める。
前記樹脂組成物は、例えば、自転公転撹拌装置を用いて調製する。自転公転撹拌装置は、前記無機酸化物粒子と前記樹脂とを収容する容器と、該容器を装着可能であって、装着された該容器を自転・公転運動させる撹拌部とを備える。自転公転撹拌装置は、前記容器を公転運動(遊星運動)させることによって生じる遠心力により、前記樹脂中の空気を脱泡し、前記容器を自転運動させることにより、前記容器中において前記無機酸化物粒子および前記樹脂を混合する。つまり、自転公転撹拌装置は、自転運動と公転運動との両者を行うことにより、前記樹脂中の空気の脱泡と前記無機酸化物粒子および前記樹脂の混合とを同時に行うことができる。自転公転撹拌装置の自転速度、公転速度、および運転時間などの運転条件は、前記無機酸化物粒子および前記樹脂の種類、前記樹脂組成物中の前記無機酸化物粒子の濃度などに応じて、適宜設定することができる。
(吹き付け工程)
本工程では、例えば、前記燃焼炎が噴き出すときに生じる圧によって前記無機酸化物粒子を基材の被処理面に向けて加速し、該基材の被処理面に吹き付ける。つまり、前記無機酸化物粒子を前記燃焼炎で加熱し非溶融状態を維持させながら、前記燃焼炎が噴き出すときに生じる圧によって、前記基材の被処理面に吹き付ける。
前記加熱工程および前記吹き付け工程は、図2に示すような吹き付け装置10を用いて実行することができる。以下では、基材20に近づく方向を前方とし、基材20から遠ざかる方向を後方として吹き付け装置10の構成を説明する。なお、本実施形態では、吹き付け装置10に用いる吹き付け原料として、モールド加工により形成された樹脂ロッド30中に分散された無機酸化物粒子を用いる例について説明する。
吹き付け装置10は、図2に示すように、内部に樹脂ロッド30を収容する収容部11と収容部11から樹脂ロッド30が内部に供給され、かつ供給された樹脂ロッド30を燃焼炎によって加熱し、無機酸化物粒子を前記燃焼炎と接触させ、無機酸化物粒子を噴出する加熱・噴出部12とを備える。収容部11の内部と加熱・噴出部12の内部とは直線状に配され、互いに連通している。詳しくは、収容部11は、樹脂ロッド30を内部に収容し、かつ樹脂ロッド30を加熱・噴出部12に向けて順次送出するように構成されている。加熱・噴出部12は、収容部11から順次送出された樹脂ロッド30の樹脂を燃焼させながら無機酸化物粒子を加熱し、加熱された無機酸化物粒子を噴出するように構成されている。収容部11および加熱・噴出部12は、中空円筒状に形成され、各中心軸が一致するよう配される。収容部11の前端側は加熱・噴出部12の後端側と接続されている。加熱・噴出部12の前端には原料である無機酸化物粒子を噴出するための開口部12’が形成されている。吹き付け装置10は、開口部12’が基材20の被処理面に対向し、かつ開口部12’が基材20の被処理面と所定の間隔を空けるように配される。
収容部11は、その内部に収容された樹脂ロッド30を加熱・噴出部12に向けて順次送出するためのロッド送出部11aを備えている。加熱・噴出部12は、樹脂ロッド30の樹脂を燃焼させることにより無機酸化物粒子を加熱し、かつ加熱された無機酸化物粒子を噴出するための燃焼炎を生じる混合ガス(助燃性ガスと可燃性ガスとの混合物。例えば、酸素−アセチレンガス)を供給する混合ガス供給部12aと、前記燃焼炎によって加熱された無機酸化物粒子を加速し、かつ加熱・噴出部12を冷却するための圧縮空気を供給する圧縮空気供給部12bとを備えて構成される。
ロッド送出部11aは、中心軸に対して対称となる位置に、所定の間隔を空けて配される一対のローラ部11aa、11abを備える。ローラ部11aaとローラ部11abとの間には、樹脂ロッド30がローラ11aa、11abとの両方に当接するように装填され、ローラ部11aa、11abを回転させることによって、加熱・噴出部12に樹脂ロッド30を順次送出するようになっている。樹脂ロッド30の送出速度は、目的とする成膜速度等に応じて適宜設定されうる。
混合ガス供給部12aは、前端側に向かって混合ガスを供給するように配されている。例えば、円筒状に形成されていて、加熱・噴出部12の中心部において中心軸方向に沿って配されている。前端側まで供給された前記混合ガスは、燃焼されて燃焼炎を生ずる。混合ガス供給部12aの中心部には、樹脂ロッド30を受け入れて、混合ガス供給部12aの前端側まで樹脂ロッド30を送出する経路が形成されている。この経路は、収容部11の内部と一直線状に連通される。
圧縮空気供給部12bは、混合ガス供給部12aの外側に備えられていて、前端側に向かって圧縮空気を供給する。圧縮空気の供給速度は、目的とする成膜速度等に応じて適宜設定されうる。
吹き付け装置10において、収容室11内に装填された樹脂ロッド30は、ロッド送出部11aによって加熱・噴出部12に向かって順次送出され、加熱・噴出部12の前端側まで順次送出される。加熱・噴出部12の前端側まで送出された樹脂ロッド30は、混合ガス供給部12aの前端縁から吹き出される燃焼炎と接触する。これにより、樹脂が焼失され、無機酸化物粒子は燃焼炎と接触されて加熱される。無機酸化物粒子は、燃焼炎および圧縮空気によって加速されて、開口部13’を通って基材20の被処理面に向けて吹き付けられる。
(皮膜形成工程)
皮膜形成工程では、前記無機酸化物粒子を基材20の被処理面に衝突させ、基材20上で焼結させる。これにより、基材20上に前記無機酸化物粒子の皮膜を形成する。
なお、吹き付け装置10においては、燃焼炎によって加熱された加熱・噴出部12は、圧縮空気によって冷却される。
上述のように、本実施形態に係る皮膜の形成方法によれば、非溶融状態の無機酸化物粒子を用いて基材上に皮膜を形成するので、液状の無機酸化物粒子の急冷に起因して生じるクラックや気孔の影響を少なくできる。また、前記無機酸化物粒子を前記樹脂に分散させることにより前記無機酸化物粒子の凝集を抑性できるので、粒間の空隙に依存するクラックや気孔の影響を少なくできる。また、非溶融状態の無機酸化物粒子を用いるので、成膜前後で前記無機酸化物粒子の結晶相が相転移する虞が少ない。そのため、該皮膜の形成方法で形成された皮膜は耐食性および機械特性が低下する虞が少ない。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
(樹脂組成物の流体特性の評価)
熱硬化性のアクリル樹脂(JSR社製、製品名:KC1278)に、α相を有する平均粒子径170nmの酸化アルミニウム粒子(大明化学工業社製、製品名:TM−DAR)を40体積%となるように加えた。自転公転撹拌装置(写真化学社製、製品名:SK−350T)を用いて、前記酸化アルミニウム粒子と前記熱硬化性のアクリル樹脂とを含む樹脂組成物を脱泡しながら撹拌して、撹拌時間ごと(5分、10分、15分)に、該樹脂組成物の流体特性を評価した。流体特性の評価は、粘度−粘弾性測定器(BROOKFIELD社製、製品名:MRVT115)を用いて、せん断速度の値を変化させたときのせん断応力の値の変化を調べることにより行った。具体的には、前記樹脂組成物について、せん断速度の値を連続的に増加させた後、連続的に減少させたときのせん断応力の値の変化を調べた。
なお、前記自転公転撹拌装置の運転条件は、自転速度が700rpm、公転速度が300rpm、撹拌時間が15分となるように設定した。
また、前記酸化アルミニウム粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定した。具体的には、走査型電子顕微鏡で撮像した画像を用いて、画像中の任意の100個の粒子の粒子径を測定し、その平均値を算出することにより測定した。前記酸化アルミニウム粒子は、事前に決定された割合で前記樹脂組成物中に配合された。前記酸化アルミニウム粒子の体積は、前記樹脂組成物中に配合される前記酸化アルミニウム粒子の質量を測定し、測定された前記酸化アルミニウム粒子の質量を前記酸化アルミニウム粒子の密度(3.9g/cm)で除して求めた。撹拌時間ごとに、前記樹脂組成物の流体特性を評価した結果を図3に示した。
撹拌時間が5分のときは、図3(a)に示すように、ニュートン流体に近い直線状の曲線が描かれることが分かった。このような曲線が描かれるときは、前記熱硬化性のアクリル樹脂中に、前記酸化アルミニウム粒子はほとんど分散されていない。撹拌時間が10分になると、図3(b)に示すように、描かれる曲線はヒステリシスループを示すようになることが分かった。このような曲線が描かれるときは、前記熱硬化性のアクリル樹脂中において、前記酸化アルミニウム粒子はやや分散された状態になっている。撹拌時間が15分になると、図3(c)に示すように、せん断速度の値を連続的に増加させた場合、あるせん断速度の値(図3(c)中のA)を境にせん断応力の値が減少し、せん断速度の値を連続的に減少させた場合、あるせん断速度の値(図3(c)中のB)において、せん断速度を連続的に増加させた場合のせん断応力の値と、せん断速度を連続的に減少させた場合のせん断応力の値とがほぼ同じになることが分かった。これは、15分撹拌後の前記樹脂組成物がマヨネーズなどのような軟塑性体になっていて、せん断速度の値を連続的に増加させた場合は、該樹脂組成物の存在状態は固体状から固体と液体とが混在する状態、さらには液体状へと変化するので、該樹脂組成物の存在状態が液体状になったときにせん断応力の値が減少するようになり、せん断速度の値を連続的に減少させた場合は、上記とは逆の挙動になるので、あるせん断速度の値(図3(c)中のB)のときに該樹脂組成物の存在状態が固体状になったためだと考えられる。図3(c)に示すような曲線は、良好なチキソ性を示す軟塑性体の場合に描かれる曲線であり、該軟塑性体においては、液状の媒体中に固体の媒体が高分散されている。
上記の結果から、前記酸化アルミニウム粒子と前記熱硬化性のアクリル樹脂とを含む前記樹脂組成物においては、前記自転公転撹拌装置の撹拌時間を15分に設定すれば、前記熱硬化性のアクリル樹脂中に前記酸化アルミニウム粒子が高分散されることが分かった。
次に、前記酸化アルミニウム粒子の含有率(濃度)を変えた複数の樹脂組成物について、流体特性を調べた。前記複数の樹脂組成物は、熱硬化性のアクリル樹脂(JSR社製、製品名:KC−1278)に、α相を有する平均粒子径170nmの酸化アルミニウム粒子(大明化学工業社製、製品名:TM−DAR)を、それぞれ20および30体積%となるように加えて、上記の自転公転撹拌装置を用いて作製した。前記自転公転撹拌装置の運転条件は、上記と同様にし、撹拌時間15分後の各樹脂組成物について流体特性をそれぞれ評価した。流体特性は、上記の粘度−粘弾性測定器を用いて、せん断速度の値を変化させたときのせん断応力の値の変化を調べることにより行った。前記酸化アルミニウム粒子は、事前に決定された割合で前記樹脂組成物中に配合された。前記酸化アルミニウム粒子の体積は、前記樹脂組成物中に配合される前記酸化アルミニウム粒子の質量を測定し、測定された前記酸化アルミニウム粒子の質量を前記酸化アルミニウム粒子の密度(3.9g/cm)で除して求めた。前記各樹脂組成物の流体特性を評価した結果を図4に示した。
図4に示すように、いずれの樹脂組成物についても、前記熱硬化性のアクリル樹脂に前記酸化アルミニウム粒子を40体積%加えてなる前記樹脂組成物の場合に描かれた曲線と同様な傾向を示す曲線が描かれることが分かった。したがって、前記熱硬化性のアクリル樹脂に前記酸化アルミニウム粒子を20および30体積%加えてなる樹脂組成物についても、前記熱硬化性のアクリル樹脂中に前記酸化アルミニウム粒子が高分散されることが分かった。
(皮膜の形成)
前述したように、前記熱硬化性のアクリル樹脂に前記酸化アルミニウム粒子を40体積%加えてなる樹脂組成物を作製し、内径4mm、高さ200mmの真鍮モールド(セイワマシン社製、製品名:モールド)内に該樹脂組成物を充填し、該真鍮モールドを電気炉(山田電機社製、製品名:NF型マッフル電気炉MF−215−P)を用いて120℃で60分間加熱して該樹脂組成物を硬化させて、樹脂ロッドを作製した。そして、図2に示す吹き付け装置(東興精工社製、製品名:ロッドガン)の収容部内に中心軸方向に沿って該樹脂ロッドを装填し、前記収容部から加熱・噴出部の前端側まで前記樹脂ロッドを順次送出し、前記加熱・噴出部の前端側において酸素−アセチレンガスが燃焼されて生じる燃焼炎に前記樹脂ロッドを接触させて前記熱硬化性のアクリル樹脂を燃焼させ、前記酸化アルミニウム粒子を加熱した。そして、燃焼炎および圧縮空気によって、前記吹き付け装置の開口部から50×50×1mmのSUS304ステンレス鋼基材(以下、SUS304基材と呼ぶ)の被処理面に向けて、前記酸化アルミニウム粒子を吹き付けて、SUS304基材の被処理面に前記酸化アルミニウム粒子の皮膜を形成した。前記SUS304基材は、その被処理面と前記開口部との間隔が100mmとなる位置に配置された。前記吹き付け装置の運転条件は、以下のように設定した。

運転条件
・ロッド送り速度:2.5〜6.0mm/s
・圧縮空気圧:3.0〜6.0kg/cm
・酸素圧力:6.0〜8.0kg/cm
・アセチレン圧力:1.0〜2.6kg/cm

また、前記酸素−アセチレンガスが燃焼されて生じる燃焼炎に接触したときの前記酸化アルミニウム粒子の表面の温度および前記SUS304基材に向けて吹き付けられる前記酸化アルミニウム粒子の吹き付け速度についても、溶射監視装置(スルザーメテコ社製、製品名:アキュラスプレイ−G3C)を用いて測定した。前記酸化アルミニウム粒子の表面の温度は、前記燃焼炎に接触したときに前記酸化アルミニウム粒子から放出される赤外線強度を測定し、この測定された赤外線強度を温度に変換することにより求めた。
さらに、前記開口部から吹き付けられた前記酸化アルミニウム粒子の存在状態を調査するために、直径500mm×深さ400mmの円筒状に形成され、深さ200mmまで水を収容した水盤に、図2に示す吹き付け装置から噴射した酸化アルミニウム粒子を捕集した。具体的には、前記吹き付け装置の前記開口部から550mm離間した位置に水面が位置するように水盤を配し、前記吹き付け装置の前記開口部から前記水盤に向けて前記酸化アルミニウム粒子を吹き付けて、前記水盤中に前記酸化アルミニウム粒子を捕集した。前記吹き付け装置の運転条件は、上記と同条件に設定した。
前記溶射監視装置を用いて、前記酸素−アセチレンガスが燃焼されて生じる燃焼炎に接触したときの前記酸化アルミニウム粒子の表面の温度および前記酸化アルミニウムの吹き付け速度を測定した結果を図5に示した。図5において、図中の水平方向に延在する白抜き部分が前記酸素−アセチレンガスが燃焼されて生じる燃焼炎を示していて、図中の下部に表示された4個のメーターの内、図中の左から2番目のメーターが前記酸化アルミニウム粒子の吹き付け速度を測定した結果を示し、図中の左から3番目のメーターが前記燃焼炎に接触したときの前記酸化アルミニウム粒子の表面の温度を測定した結果を示している。前記溶射監視装置は、図中の丸で囲んだ位置において、上記の各種パラメータを測定している。図5より、前記酸化アルミニウム粒子は、吹き付け速度375m/sでSUS304基材に向けて吹き付けられていて、前記酸化アルミニウム粒子の表面の温度は2080℃であることが分かった。ここで、前記酸化アルミニウム粒子の融点は2055℃なので、前記酸化アルミニウム粒子の表面の温度は、前記酸化アルミニウム粒子の融点とほぼ同じ値であることが分かった。この結果から、前記燃焼炎によって前記樹脂ロッドを燃焼した場合、前記酸化アルミニウム粒子は非溶融状態を保っていることが分かった。
前記燃焼炎によって前記樹脂ロッドを燃焼した後の前記酸化アルミニウム粒子を撮像した結果を図6に示した。該酸化アルミニウム粒子は、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名6010LA)を用いて撮像した。撮像条件は以下の通りであった。

撮像条件
・加速電圧:20kV
・撮影倍率:2万倍

図6の拡大図において、結晶表面を区画する線が結晶粒界を示していて、粒状部(白丸で囲んだ部分)が一次粒子を示している。図6に示すように、捕集された前記酸化アルミニウム粒子の表面にはマイクロバルク状に結晶粒界が観察でき、かつ前記酸化アルミニウム粒子の表面に一次粒子が残存していることが観察された。この結果から、前記燃焼炎による前記樹脂ロッドの燃焼後において、前記酸化アルミニウム粒子は溶融されずに焼結によりマイクロバルク状に結合されていることが分かった。つまり、図6により、前記燃焼炎による前記樹脂ロッドの燃焼後においても、前記酸化アルミニウム粒子は非溶融状態を維持していることが裏付けられた。また、前記酸化アルミニウム粒子は、焼結状態で前記基材の被処理面に衝突することも分かった。
図7(a)に、本発明の方法により前記SUS304基材の被処理面に形成された前記酸化アルミニウム粒子の皮膜を撮像した結果を示し、比較のために、図7(b)に、プラズマ溶射により前記SUS304基材の被処理面に形成された前記酸化アルミニウム粒子の皮膜を撮像した結果を示した。図7(a)、(b)に示した各酸化アルミニウム粒子の皮膜は、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、製品名:VHX−1000)を用いて撮像した。撮像条件は以下の通りであった。

撮像条件
・倍率:400倍
・画像モード:鮮鋭モード
・シャッタースピード:オート

図7(b)の前記酸化アルミニウム粒子の皮膜の形成には、α相を有する平均粒子径21.3μmの酸化アルミニウム粒子(コーワ研磨材工業社製、製品名:KCP−WA)を用いた。該酸化アルミニウム粒子の平均粒子径は、電気抵抗法により測定した。
また、プラズマ溶射は溶射装置(スルザーメテコ社製、製品名:9MB)を用いて、以下の条件で行った。

プラズマ溶射の条件
・1次ガス:アルゴン、圧力100psi、流量80scfh
・2次ガス:水素、圧力80psi、流量15scfh
・電流:500A
・電圧:70V
・溶射距離:120mm

図7(a)、(b)において、図中の下側に白色で示された部分が前記SUS304基材であり、白色で示された部分の図中上方側に積層された部分が前記酸化アルミニウム粒子の皮膜を示している。また、前記酸化アルミニウム粒子の皮膜中の黒色で示された部分が気孔やクラックを示している。図7(a)から、本発明の方法により前記SUS304基材の被処理面に形成された前記酸化アルミニウム粒子の皮膜には、気孔やクラックが殆ど確認されず、緻密に形成されていることが分かった。一方で、図7(b)から、プラズマ溶射により前記SUS304基材の被処理面に形成された前記酸化アルミニウム粒子の皮膜には、気孔やクラックが明確に確認されることが分かった。
図8(a)に、本発明の皮膜の形成方法により前記SUS304基材の被処理面に形成された皮膜を粉末X線回折法で評価した結果を示した。
粉末X線回折法は、粉末X線回折装置(リガク社製、製品名:Ultima IV)を用いて、以下の条件で行った。

粉末X線回折法の測定条件
・エックス線:40kV/40mA
・発散スリット:2/3°
・発散縦制限スリット:10mm
・散乱スリット:2/3°
・受光スリット:0.3mm

図8(b)には、α相を有する酸化アルミニウム粒子を用いてプラズマ溶射により形成された皮膜を、粉末X線回折法により測定した一般的な測定結果を示した。
図8(a)に示すように、本発明の皮膜の形成方法で形成された皮膜にはα相に由来するピークが顕著に見られ、図8(b)に示すように、プラズマ溶射により形成された皮膜にはγ相に由来するピークが顕著に見られることが分かった。この結果から、プラズマ溶射により形成された皮膜は、成膜前後で結晶相がα相からγ相に相転移するが、本発明の皮膜の形成方法で形成された皮膜は、成膜前後でα相を維持していることが分かった。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態および変形が可能とされたものである。また、上述の実施形態および実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態および実施例ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。

Claims (5)

  1. 基材上に無機酸化物粒子を含む皮膜を形成する皮膜の形成方法であって、
    前記無機酸化物粒子を非溶融状態に維持しつつ加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程で加熱された前記無機酸化物粒子を非溶融状態で前記基材の被処理面に吹き付ける吹き付け工程と、
    前記吹き付け工程で前記基材の被処理面に吹き付けられた前記無機酸化物粒子を前記基材上で焼結させて、前記基材上に前記無機酸化物粒子の皮膜を形成する皮膜形成工程と、を有し、
    前記加熱工程では、前記無機酸化物粒子の原料として前記無機酸化物粒子が樹脂中に分散された樹脂組成物を用い、前記樹脂を燃焼させることにより前記無機酸化物粒子を加熱する、
    皮膜の形成方法。
  2. 前記加熱工程では、前記無機酸化物粒子を炎と接触させて加熱し、前記無機酸化物粒子の表面の温度は、融点−150℃〜融点+150℃の範囲の温度である、
    請求項1に記載の皮膜の形成方法。
  3. 加熱前の前記無機酸化物粒子の粒子径は、10〜1000nmである、
    請求項1または2に記載の皮膜の形成方法。
  4. 前記樹脂組成物は、前記無機酸化物粒子を10〜60体積%含む、
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の皮膜の形成方法。
  5. 前記無機酸化物粒子は酸化アルミニウム粒子である、
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載の皮膜の形成方法。
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