JP2018199855A - 溶射材料の製造方法、溶射材料、溶射方法および溶射製品 - Google Patents

溶射材料の製造方法、溶射材料、溶射方法および溶射製品 Download PDF

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華子 得津
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Abstract

【課題】緻密な被膜を形成することが可能な溶射材料を提供する。【解決手段】平均粒径が1μmよりも大きく、かつ、10μm以下であるセラミックスまたは金属の微粒子と、液状の熱硬化性樹脂とを混合することにより、微粒子が均一に分散した混合物が得られる(ステップS11)。混合物は加熱により硬化され(ステップS12)、硬化物は、微粒子よりも粒径が大きい粒子に粉砕される(ステップS13)。これにより、プラズマ溶射、フレーム溶射またはレーザ溶射において、緻密な被膜を形成することが可能な溶射材料が得られる。【選択図】図2

Description

本発明は、溶射に関する。
プラズマ溶射やフレーム溶射、レーザ溶射では、金属やセラミックス等の粉末材料を高温のプラズマ流や火炎流、集光したレーザビーム中に導入し、溶融した材料粒子を基材表面に吹き付けて堆積させることによって被膜を形成する。これらの溶射法は、工業的な製造技術として確立しており、対象物を密閉空間内に配置する必要がなく、また、大面積、長尺物への適用が可能である。
近年、ナノ粒子を材料として既存の溶射法を利用する技術が提案されている。例えば、特許文献1では、平均粒径が25nm以上1000nm以下のセラミックスまたは金属の微粒子と樹脂とを混合した混合物を硬化し、微粒子よりも粒径が大きい粒子に粉砕することにより、溶射材料を製造する手法が開示されている。特許文献1の手法では、従来、エア搬送にて取り扱いが困難であった微粒子を用いて、プラズマ溶射、フレーム溶射またはレーザ溶射を行うことが実現される。
特開2015−45068号公報
ところで、特許文献1の溶射材料では、緻密な被膜を形成することができない場合がある。したがって、緻密な被膜を形成することが可能な溶射材料が求められている。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、緻密な被膜を形成することが可能な溶射材料を提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明は、プラズマ溶射、フレーム溶射またはレーザ溶射に用いられる溶射材料の製造方法であって、a)セラミックスまたは金属の微粒子を液状の樹脂中に分散させる工程と、b)前記a)工程で得られた混合物を硬化させる工程と、c)前記b)工程で得られた硬化物を、前記微粒子よりも粒径が大きい粒子に粉砕して溶射材料を得る工程とを備え、前記微粒子の平均粒径が、1μmよりも大きく、かつ、10μm以下である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の溶射材料の製造方法であって、前記微粒子の平均粒径が、2μm以上、かつ、7μm以下である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の溶射材料の製造方法であって、前記混合物における前記微粒子の体積比率が、45%以上かつ75%以下である。
請求項4に記載の発明は、プラズマ溶射、フレーム溶射またはレーザ溶射に用いられる溶射材料であって、平均粒径が1μmよりも大きく、かつ、10μm以下であるセラミックスまたは金属の微粒子と、前記微粒子間に存在する樹脂とにより形成された粒子である。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の溶射材料であって、前記微粒子の体積比率が、45%以上かつ75%以下である。
請求項6に記載の発明は、溶射方法であって、d)請求項1ないし3のいずれか1つに記載の製造方法にて製造された溶射材料を準備する工程と、e)前記溶射材料を用いてプラズマ溶射、フレーム溶射またはレーザ溶射を行うことにより、加熱された前記微粒子を基材上にて結合させて被膜を形成する工程とを備える。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の溶射方法であって、前記e)工程においてフレーム溶射が行われ、前記溶射材料の加熱温度が、前記微粒子の融点よりも低い。
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の溶射方法により、基材上に被膜が形成されたものである。
本発明によれば、緻密な被膜を形成することが可能な溶射材料を提供することができる。
溶射装置の構成を示す図である。 溶射材料の製造の流れを示す図である。 溶射材料を示す図である。 溶射装置による溶射の流れを示す図である。 被膜の断面を示す図である。 被膜の断面を示す図である。 比較例の溶射材料を用いて形成された被膜の断面を示す図である。 溶射装置の他の例を示す図である。 被膜の断面を示す図である。 腐食試験装置の構成を示す図である。 腐食試験前の基材の断面を示す図である。 腐食試験後の基材の断面を示す図である。
図1は、溶射装置1の構成を示す図である。溶射装置1は、基材9上にプラズマ溶射を行う装置である。溶射装置1は、溶射ガン11と、プラズマガス供給部12と、材料貯溜部13と、搬送ガス供給部14と、材料搬送部15とを備える。溶射ガン11は、プラズマフレア8を発生する。プラズマガス供給部12は、プラズマガスを溶射ガン11に供給する。プラズマガスは、例えばアルゴンガスおよび水素ガスである。プラズマガスは、ヘリウムガスや他のガスであってもよい。材料貯溜部13は、溶射に用いられる溶射材料を貯溜する。搬送ガス供給部14は、材料搬送部15に搬送ガスを供給する。搬送ガスは、例えばアルゴンガスである。搬送ガスは、アルゴンガス以外のガスであってもよい。材料搬送部15は、搬送ガス供給部14からの搬送ガスを利用して溶射材料をプラズマフレア8内へと供給する。
溶射ガン11は、溶射を行う噴出ノズルである。溶射ガン11内には、プラズマガスの流路21が設けられる。流路21の中央に陰極22が配置され、陰極22の下流側に流路を囲うように陽極23が配置される。陰極22と陽極23との間の放電により、噴出口24からプラズマフレア8が噴出される。
材料搬送部15は、定量供給部31と、搬送管32とを備える。定量供給部31は、材料貯溜部13から単位時間当たり一定の量の溶射材料を取り出し、搬送ガスに合流させる。搬送管32の端部は噴出口33となっており、噴出口33から溶射材料が搬送ガスと共に噴出される。溶射材料は、プラズマフレア8の進行方向側方からプラズマフレア8の中央に向かって垂直に導入される。
溶射材料は粉体であり、各粒子(以下、「溶射用粒子」という。)は搬送管32を詰まらせない大きさを有する。後述するように、各溶射用粒子は、さらに微細な微粒子を含む樹脂の粒子である。溶射用粒子に含まれる微粒子は、セラミック粒子または金属粒子である。プラズマフレア8により溶射材料(溶射用粒子)の樹脂が焼失し、溶融状態または半溶融状態の微粒子が基材9に向かってプラズマフレア8と共に流れる。その結果、基材9上に微粒子が堆積し、被膜(すなわち、溶射被膜)が形成される。
次に、実際に溶射材料を製造した例(以下、「製造例」という。)を参照しつつ溶射材料の製造について説明する。図2は、溶射材料の製造の流れを示す図である。まず、セラミックスまたは金属の微粒子が準備され、さらに、熱硬化性を有する液状の樹脂が準備される。製造例にて使用された微粒子は、平均粒径が3.6μm(マイクロメートル)の安定化ジルコニア微粒子(第一希元素化学工業株式会社製、品番「UZY−8H」)である。ここでの平均粒径は、レーザ回折・散乱法により求めた粒度分布から算出されるメジアン径(d50)である。
微粒子の材料は、上述のジルコニア(ZrO)には限定されず、様々に変更されてよい。例えば、微粒子のセラミックス材料としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ムライト(Al・SiO)、酸化ジルコニウム、ジルコン(ZrO・SiO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化銀、酸化コバルト、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化バリウム、等を含む酸化物および複合酸化物群;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、等を含む窒化物群;炭化ケイ素等を含む炭化物群;WC/C、WC/Ni、WC/CrC/Ni、WC/Cr/Co、CrC/NiCr、サイアロン(SiN・Al)等を含むサーメット群の中から選択された一種または複数種が利用可能である。
金属の場合の微粒子の材料としては、アルミニウム、銅等の様々な金属が利用可能である。微粒子の材料として、複数種類の金属が混合されてもよい。さらに、微粒子の材料として、セラミックスと金属とが混合されてもよい。
微粒子の平均粒径も様々に変更されてよい。レーザ回折・散乱法により得られる微粒子の平均粒径は、例えば10μm以下であり、好ましくは7μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。また、微粒子の平均粒径は、1μmよりも大きく、好ましくは2μm以上であり、より好ましくは2.5μm以上である。上記範囲が好ましい理由については後述する。なお、微粒子の平均粒径についてレーザ回折・散乱法による測定が困難な場合は、動的光散乱法により測定が行われてもよい。平均粒径は微粒子の製造メーカが示すものをそのまま採用してもよい。
製造例にて使用された液状の熱硬化性樹脂は、アクリル系の樹脂(JSR株式会社製、品番「KC1280」)である。液状の樹脂は、有機物を主体とするものであれば様々なものが採用されてよく、光硬化性であってもよい。もちろん、他の硬化性樹脂でもよい。硬化性樹脂としては様々なものが利用可能である。例えば、フェノール、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド、ポリアミノビスマレイミド、カゼイン樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂等を含む熱硬化性プラスチック群の中から選択された一種または複数種が利用可能である。
微粒子および熱硬化性樹脂が準備されると、これらの混合が行われる(ステップS11)。製造例では、液状の樹脂が貯溜された150cmの容器内に微粒子を投入しつつ、当該樹脂と微粒子の混合物がスパチュラを用いて混合される。ここで、粒径が1μmよりも大きい微粒子は、液状の樹脂中で沈降しやすい。したがって、混合物における微粒子の量が少ない状態では、微粒子の分散状態を保持することが困難であり、容器内において、沈殿した微粒子の層と、液状の樹脂の上澄み層とが形成される。ここから、混合物における微粒子の量をさらに増やすと、液状の樹脂中において微粒子がある程度密に充填された状態、換言すると、微粒子が均一に分散した状態となる。
微粒子の分散状態では、混合物においてダイラタンシーが発現する。すなわち、ダイラタンシーが発現する微粒子の最小の体積比率(混合物全体に対する体積比率)が、混合物において微粒子の分散状態が十分に保持される最小の体積比率である。ダイラタンシーの発現により、スパチュラを速く動かすことができなくなるが、スパチュラをゆっくりと動かして混合物をかき混ぜることは可能である。実際には、攪拌・脱泡装置を用いることなく、微粒子を均一に分散させた状態が形成される。製造例では、混合物においてダイラタンシーが発現する微粒子の最小の体積比率は、50.4vol%であった。また、微粒子の体積比率が65vol%(質量比率が90wt%)となるまで、微粒子を増量した。
後述する混合物の硬化では、混合物において微粒子の分散状態がある程度保持されることが好ましく、このような観点では、混合物における微粒子の体積比率は、45vol%以上であることが好ましい。また、微粒子が理想的な球体であり、かつ、混合物において微粒子が単純立方構造をとると仮定する。この場合、単純立方構造の充填率は約52.4%となるため、微粒子の体積比率が52vol%以上であれば、混合物において微粒子の分散状態が適切に保持されるといえる。微粒子の分散状態をより確実に保持するには、微粒子の体積比率は、60vol%以上であることが好ましい。溶射材料の溶射では、微粒子の体積比率が高いほど成膜速度が大きくなり、成膜効率(生産性)が向上する。
一方、六方最密構造の充填率は約74%であり、面心立方構造の充填率も約74%である。実際には、微粒子はある程度の幅の粒度分布を有するため、混合物における微粒子の体積比率は、例えば75vol%以下となる。微粒子間に入り込む樹脂の存在を考慮すると、微粒子の体積比率は、例えば70vol%以下である。微粒子間に入り込む樹脂の量を多くする場合、微粒子の体積比率は、65vol%以下であることが好ましい。
続いて、微粒子および液状の樹脂の混合物は、ホットプレート等により加熱される。これにより、微粒子の分散状態を保ったまま、当該混合物が硬化し、硬化物が得られる(ステップS12)。製造例では、ペースト状の混合物が約150℃で30分間加熱される。当該硬化物は、室温まで自然冷却される。液状の樹脂として光硬化性の樹脂が使用される場合は、混合物に紫外線等の光を照射することにより、硬化物が得られる。液状の樹脂は、硬化性を有すればよく、例えば、放置することにより自然に硬化する樹脂であってもよい。
その後、硬化物は、振動式のミル(いわゆる、高速振動試料粉砕機)を用いて粉砕される(ステップS13)。粉砕後の硬化物は、篩を用いて分画される。これにより、微粒子よりも粒径が大きい粒子(すなわち、溶射用粒子)である溶射材料が得られる。製造例では、粉砕後の硬化物は、45μm以上106μm以下の粒度範囲で分画される。なお、篩上に残留した粒子(すなわち、上記粒度範囲よりも粒径が大きい粗大粒子)は、例えば、上述のミルに戻されて再度粉砕されてもよい。また、当該粒度範囲よりも粒径が小さい過粉砕粒子は、例えば、ステップS11において微粒子と共に液状の樹脂に混合されてもよい。
図3は、製造例の溶射材料を示す図であり、走査型電子顕微鏡を用いて撮像した写真である(後述の図5A、図5B、図6、図8、図10Aおよび図10Bにおいて同様である。)。図3では、複数の微粒子が樹脂により互いに結合されて溶射用粒子が形成されていることが判る。このように、各溶射用粒子は、複数の微粒子と、当該複数の微粒子を保持する樹脂部とを備える。溶射用粒子は、微粒子よりも粒径が大きい樹脂の粒子であると捉えることもでき、この場合、複数の微粒子は、当該樹脂の粒子の内部に分散して存在しているといえる。溶射用粒子における微粒子の体積比率(平均的な体積比率)は、上記混合物における体積比率とほぼ同じであり、例えば、45vol%以上かつ75vol%以下である。
溶射用粒子の粒度範囲は、溶射装置1にて利用可能であれば様々に変更されてよい。粒度範囲は、分級に使用する篩の目開きにより定義可能である。硬化物の粉砕により得られる溶射用粒子の粒径は、含有する微粒子よりも大きいのであれば様々に決定されてよい。ここで、10μm以下の粒径を有する粉末については、ガス搬送を安定して行うことが容易ではない。したがって、溶射装置1にて容易にガス搬送を行うには、溶射用粒子の粒径は、10μmよりも大きいことが好ましい。また、各溶射用粒子において、ある程度の個数の微粒子を含ませるという観点では、溶射用粒子の粒径は、微粒子の平均粒径の5倍以上であることが好ましい。溶射装置1の搬送管32において、溶射用粒子が詰まることを防止するには、溶射用粒子の粒径は、搬送管32の内径未満であり、例えば1500μm以下である。好ましくは、溶射用粒子の粒径は、350μm以下である。
図4は、溶射装置1による溶射の流れを示す図である。上述のステップS11〜S13の製造方法にて製造された溶射材料(溶射用粒子の集合)が準備されると(ステップS21)、当該溶射材料が材料貯溜部13に充填される(ステップS22)。その後、当該溶射材料を用いてプラズマ溶射が行われる(ステップS23)。これにより、加熱された微粒子が基材9上で結合し、基材9上に被膜が形成される。実際には、基材9上への被膜の形成により、溶射製品が製造される。溶射製品は、例えば、焼却炉の炉壁等に利用される部材であり、この場合における被膜は防食コートである。
図5Aおよび図5Bは、上記製造例の溶射材料を用いて溶射装置1により基材9上に形成された被膜の断面を拡大して示す図である。ここでは、基材9として、50mm×50mm×6mmのステンレス鋼(SUS316)の板を用い、当該板の表面に予めブラスト処理を施した。また、溶射ガン11として、スルザーメテコ社製の溶射ガン(商品名「F4 Spray Gun」)を用い、材料搬送部15として、スルザーメテコ社製の粉末供給装置(商品名「TWIN−120」)を用いた。溶射ガン11への印加電力は33.6kWとし、材料搬送部15による粉末供給速度は、28g/minとした。プラズマガスとして、アルゴンガスおよび水素ガスを用い、搬送ガスとして、アルゴンガスを用いた。溶射ガン11と基材9との間の距離を50mmに設定し、基材9の表面に沿う方向への溶射ガン11の相対移動(トラバース)を、速度9.9m/minで11回繰り返すことにより、基材9上に被膜を形成した。被膜の厚さは170μmであり、溶射ガン11の1回の相対移動により形成される被膜の厚さ、すなわち、成膜速度は、15.5μmであった。
図5Aおよび図5Bでは、微粒子が溶融結合し、均質な被膜が形成されている。図5Aの写真から求められる被膜の気孔率は、0.815%であり、図5Bの写真から求められる被膜の気孔率は、0.776%である。このように、上記製造例の溶射材料を用いることにより、気孔率が1%未満となる緻密な被膜が得られている。また、当該被膜のビッカース硬さ(HV0.1)は、996〜1132であり、ジルコニア粒子を用いた焼結体と同等の硬度である。実際には、溶射ガン11と基材9との間の距離が小さいほど、緻密な被膜が得られるが、当該距離が短すぎると基材9が損傷する。溶射装置1において、基材9を冷却する機構を設けることにより、溶射ガン11と基材9との間の距離を上記距離よりもさらに短くして、より緻密な被膜が形成されてもよい。
ここで、比較例の溶射材料について述べる。比較例の溶射材料の製造では、平均粒径が200nm(ナノメートル)の安定化ジルコニア微粒子を微粒子として用いて、図2と同様の処理を行った。また、混合物における微粒子の体積比率を57vol%とした。比較例の溶射材料は、平均粒径が200nmの微粒子が樹脂により結合されて形成された粒子となる。図6は、比較例の溶射材料を用いて溶射装置1により基材9上に形成された被膜の断面を拡大して示す図である。比較例の溶射材料における成膜速度は、13.0μmであった。図6から判るように、比較例の溶射材料から得られる被膜では、比較的大きい気孔(粗な部分)が存在している。なお、当該被膜のビッカース硬さ(HV0.1)は、858〜1267である。
これに対し、図2の溶射材料の製造では、平均粒径が1μmよりも大きい微粒子と、微粒子間に存在する樹脂とにより形成された溶射用粒子が、溶射材料として得られる。当該溶射材料では、比較例の溶射材料と比較して、微粒子が十分に大きく、溶射の際に基材9に衝突する微粒子の運動エネルギーを高くすることができる。その結果、比較例の溶射材料よりも緻密な被膜を形成することが可能となる。緻密な被膜をより確実に形成するには、微粒子の平均粒径は、2μm以上であることが好ましく、2.5μm以上であることがより好ましい。
既述のように、10μm以下の粒径を有する粉末は、通常の粉末供給装置においてガス搬送を安定して行うことが容易ではなく、搬送管を詰まらせることがある。一方、図2の溶射材料の製造では、微粒子よりも大きい溶射用粒子が溶射材料として製造されるため、平均粒径が10μm以下である微粒子を用いても、粉末供給装置において問題は生じない。このように、そのままのサイズではガス搬送が困難な微粒子を溶射材料に利用するという観点では、微粒子の平均粒径は、10μm以下であることが好ましい。搬送管の詰まり易さは、粒径が小さくなるに従って顕著となるが、微粒子よりも大きい溶射用粒子を製造する上記製造方法では、平均粒径が7μm以下である微粒子を用いることができ、平均粒径が5μm以下である微粒子も利用可能である。
ところで、微粒子を溶媒に混合させたペーストまたはサスペンションを熱源へ供給するペースト溶射およびサスペンション溶射では、粒径が10μm以下である微粒子も容易に取り扱うことが可能となる。一方、成膜速度を大きくするという観点では、ペーストまたはサスペンションにおける微粒子の体積比率は高いことが好ましい。しかしながら、微粒子の体積比率が高くなると、ペーストまたはサスペンションがダイラタント流体と化し、熱源への噴霧が困難となる。
これに対し、図2の溶射材料の製造方法では、粒径が10μm以下である微粒子を液状の樹脂と混合したペーストを硬化し、さらに、硬化物を微粒子よりも粒径が大きい溶射用粒子に粉砕して溶射材料が得られる。したがって、ペースト(混合物)における微粒子の体積比率を高くして(たとえば、45vol%以上として)、ペーストがダイラタント流体となる場合であっても、最終的に得られる溶射材料の搬送、および、熱源への供給に問題は生じない。以上のように、微粒子が樹脂により互いに結合した溶射材料では、平均粒径が10μm以下の微粒子を利用することができるとともに、微粒子の体積比率を高くして溶射における成膜速度を大きくすることも可能となる。また、当該溶射材料が、微粒子が分散した状態で硬化した樹脂の粒子(溶射用粒子)であるため、ペースト溶射およびサスペンション溶射のように溶媒中の微粒子の分散状態を維持するための装置も不要であり、一般的な粉末供給装置および溶射装置を用いて溶射を行うことができる。
図7は、溶射装置の他の例を示す図である。図7の溶射装置1aは、基材9上にガスフレーム溶射を行う装置である。溶射装置1aは、溶射ガン16と、燃料ガス供給部17と、圧縮空気供給部18と、材料搬送部15とを備える。溶射ガン16は、材料搬送路25と、燃料ガス流路26と、圧縮空気流路27とを備える。材料搬送路25は、所定の中心軸J1に沿って延びる。燃料ガス流路26は、中心軸J1に沿って延びる筒状の流路であり、材料搬送路25の周囲を囲む。圧縮空気流路27は、中心軸J1に沿って延びる筒状の流路であり、燃料ガス流路26の周囲を囲む。
燃料ガス供給部17は、燃料ガスを燃料ガス流路26に供給する。燃料ガスは、例えば酸素およびアセチレンの混合ガスである。燃料ガスは、プロパン等の他のガスであってもよい。燃料ガス流路26の先端から噴出される燃料ガスにより、燃焼フレーム8aが発生する。材料搬送部15は、図1の溶射装置1と同様の構造であり、搬送ガス供給部14(図1参照)からの搬送ガスを利用して溶射材料を燃焼フレーム8a内へと供給する。溶射装置1aでは、溶射材料が、燃焼フレーム8aの中心に向かって、燃焼フレーム8aの噴射方向と同じ方向に導入される。燃焼フレーム8aにより溶射材料の樹脂が焼失し、微粒子が溶融状態または半溶融状態となる。圧縮空気供給部18は、圧縮空気を圧縮空気流路27に供給する。圧縮空気流路27の先端から噴出される圧縮空気により、溶融状態または半溶融状態の微粒子が基材9に向かって流れる。その結果、基材9上に微粒子が堆積し、被膜が形成される。
図8は、上記製造例の溶射材料を用いて溶射装置1aにより基材9上に形成された被膜の断面を拡大して示す図である。フレーム溶射を行う溶射装置1aでは、溶射材料の加熱温度がプラズマ溶射を行う溶射装置1よりも低く、上記製造例の溶射材料における微粒子の融点よりも低い。しかしながら、図8に示すように、溶射装置1aでは、溶射装置1により形成された図5Aおよび図5Bの被膜よりも、緻密な被膜が形成されている。この理由は明確ではないが、溶射材料がプラズマフレア8の進行方向側方から垂直に導入される溶射装置1では、一部の溶射材料がプラズマフレア8の外縁付近における温度が低い領域のみで加熱されるのに対し、溶射装置1aでは、燃焼フレーム8aの中心付近に溶射材料が集中して供給され、全ての溶射材料が高い温度で加熱されることが一因であると考えられる。
次に、溶射装置1aにより形成された被膜の腐食試験について述べる。図9は、腐食試験装置7の構成を示す図である。腐食試験装置7は、筒状体71と、保持部72と、ガス導入部73と、模擬ガス供給部74と、加熱部75とを備える。模擬ガス供給部74は、ごみ焼却炉内のガスの組成を模擬したガス(以下、「模擬ガス」という。)を生成する。ガス導入部73は筒状体71の一端に設けられ、模擬ガス供給部74からの模擬ガスが、ガス導入部73を介して筒状体71の内部に供給される。表1では、模擬ガスの組成を示している。
加熱部75は、筒状体71の周囲を囲む筒状のヒータである。保持部72は、筒状体71の内部に配置される。保持部72内には、エア流路721が設けられ、外部から供給されるエアがエア流路721を流れる。保持部72上には、基材9が載置される。基材9の大きさは、10mm×15mm×2mmである。基材9には、ボンドコート91と、トップコート92とが形成される。ボンドコート91は、所定の材料(例えば、CoNiCrAlY)にて形成された被膜であり、基材9の表面に設けられる。トップコート92は、上記製造例の溶射材料を用いて溶射装置1aにより形成された被膜であり、ボンドコート91上に設けられる。基材9において、ボンドコート91およびトップコート92が形成されていない面が保持部72に接する。トップコート92上には、ボイラ装置の煙道から採取した灰93が3mmの厚さで載せられる。表1には、当該灰93の組成も示している。
腐食試験では、模擬ガス供給部74から筒状体71の内部に模擬ガスを供給しつつ、筒状体71の内部の温度を750℃で維持した。保持部72内を流れるエアによる冷却により、基材9の温度は560℃であった。上記環境下で基材9を100時間放置し、その後、基材9の断面を観察した。
図10Aは、腐食試験前の基材9の断面を示す図であり、図10Bは、腐食試験後の基材9の断面を示す図である。腐食試験後の基材9では、基材9の表面までCl成分が浸透していることが分析により確認されたが、基材9の腐食は認められなかった。このように、上記製造例の溶射材料を用いて溶射装置1aにより形成した被膜は、優れた耐食性を示す。
上述の溶射材料の製造および溶射装置1,1aでは、様々な変更が可能である。
溶射装置1,1aでは、互いに異なる溶射材料を貯溜する複数の材料貯溜部13を設け、溶射ガン11,16に供給する溶射材料を順次変更することにより、2種類以上の被膜が積層されてもよい。もちろん、2種類以上の被膜を繰り返し積層してもよい。
上記実施の形態における溶射は、基材上に被膜が形成された様々な溶射製品の製造に利用することができる。さらには、被膜部分のみを製品として利用することも可能である。微粒子を溶融させて結合することにより緻密な構造を形成する上記溶射は、例えば、防食コーティング、機械加工部品(カッター等)、耐熱部品(るつぼやボイラ管等)等の製造に適している。
溶射装置は、レーザ溶射を行う装置であってもよい。上述の製造方法にて製造された溶射材料は、プラズマ溶射、フレーム溶射またはレーザ溶射に用いることが可能である。いずれの溶射方法であっても、既存の装置をほとんど変更することなく、または、全く変更することなく、溶射被膜を形成することができる。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
1,1a 溶射装置
9 基材
S11〜S13,S21〜S23 ステップ

Claims (8)

  1. プラズマ溶射、フレーム溶射またはレーザ溶射に用いられる溶射材料の製造方法であって、
    a)セラミックスまたは金属の微粒子を液状の樹脂中に分散させる工程と、
    b)前記a)工程で得られた混合物を硬化させる工程と、
    c)前記b)工程で得られた硬化物を、前記微粒子よりも粒径が大きい粒子に粉砕して溶射材料を得る工程と、
    を備え、
    前記微粒子の平均粒径が、1μmよりも大きく、かつ、10μm以下であることを特徴とする溶射材料の製造方法。
  2. 請求項1に記載の溶射材料の製造方法であって、
    前記微粒子の平均粒径が、2μm以上、かつ、7μm以下であることを特徴とする溶射材料の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の溶射材料の製造方法であって、
    前記混合物における前記微粒子の体積比率が、45%以上かつ75%以下であることを特徴とする溶射材料の製造方法。
  4. プラズマ溶射、フレーム溶射またはレーザ溶射に用いられる溶射材料であって、
    平均粒径が1μmよりも大きく、かつ、10μm以下であるセラミックスまたは金属の微粒子と、前記微粒子間に存在する樹脂とにより形成された粒子であることを特徴とする溶射材料。
  5. 請求項4に記載の溶射材料であって、
    前記微粒子の体積比率が、45%以上かつ75%以下であることを特徴とする溶射材料。
  6. 溶射方法であって、
    d)請求項1ないし3のいずれか1つに記載の製造方法にて製造された溶射材料を準備する工程と、
    e)前記溶射材料を用いてプラズマ溶射、フレーム溶射またはレーザ溶射を行うことにより、加熱された前記微粒子を基材上にて結合させて被膜を形成する工程と、
    を備えることを特徴とする溶射方法。
  7. 請求項6に記載の溶射方法であって、
    前記e)工程においてフレーム溶射が行われ、前記溶射材料の加熱温度が、前記微粒子の融点よりも低いことを特徴とする溶射方法。
  8. 請求項6または7に記載の溶射方法により、基材上に被膜が形成されたことを特徴とする溶射製品。
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